特許第5966637号(P5966637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966637
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】マイクロリアクタ
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20160728BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20160728BHJP
   F28D 7/00 20060101ALI20160728BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALN20160728BHJP
【FI】
   B01J19/00 321
   B01J35/02 F
   F28D7/00 Z
   !H01M8/06 G
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-129627(P2012-129627)
(22)【出願日】2012年6月7日
(65)【公開番号】特開2013-252487(P2013-252487A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 行貴
【審査官】 増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−192798(JP,A)
【文献】 実開昭57−132971(JP,U)
【文献】 特開2005−36671(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/054689(WO,A1)
【文献】 特表2002−522214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
B01J 35/02
F28D 7/00
F28F 13/08
H01M 8/0612
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応対象となる流体である反応流体が流通する反応流路と、
前記反応流路と並行して設けられ、該反応流路を流通する反応流体と熱交換する熱媒体が流通する媒体流路と、
を備え、
前記反応流路のうち、反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分に熱伝壁を介して隣接する前記媒体流路の流通方向に垂直な断面積は、該反応による発熱または吸熱が相対的に小さい部分に熱伝壁を介して隣接する前記媒体流路の流通方向に垂直な断面積より小さいことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項2】
前記反応流路における反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分から小さい部分にかけて、前記媒体流路の流通方向に垂直な断面積が漸増するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロリアクタ。
【請求項3】
前記反応流路のうち、前記反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分に熱伝壁を介して隣接する前記媒体流路の部分から流通方向において近い側に位置する該媒体流路の開口面積は、該反応による発熱または吸熱が相対的に小さい部分に熱伝壁を介して隣接する該媒体流路の部分から流通方向において近い側に位置する該媒体流路の開口面積より小さいことを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロリアクタ。
【請求項4】
前記反応流路のうち、前記反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分の流通方向に垂直な断面積は、該反応による発熱または吸熱が相対的に小さい部分の流通方向に垂直な断面積より大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のマイクロリアクタ。
【請求項5】
前記反応流路における反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分から小さい部分にかけて、流通方向に垂直な断面積が漸減するように形成されていることを特徴とする請求項4に記載のマイクロリアクタ。
【請求項6】
前記反応流路のうち、前記反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分から流通方向において近い側に位置する該反応流路の開口面積は、該反応による発熱または吸熱が相対的に小さい部分から流通方向において近い側に位置する該反応流路の開口面積より大きいことを特徴とする請求項4または5に記載のマイクロリアクタ。
【請求項7】
前記反応流路の内壁の少なくとも一部には、触媒層が配され、
前記反応流路のうち、前記反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分における触媒層の厚みは、該反応による発熱または吸熱が相対的に小さい部分の触媒層の厚みより大きいことを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載のマイクロリアクタ。
【請求項8】
前記媒体流路における前記熱媒体の流通方向は、前記反応流路における前記反応流体の流通方向と対向していることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のマイクロリアクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な空間を反応場とするマイクロリアクタに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロリアクタ(microreactor)は、微小な空間を反応場とする反応装置であり、このような小さな空間を反応場とすることで分子同士の衝突頻度や熱の移動速度を高め、反応速度や収率を向上させることができる。
【0003】
かかるマイクロリアクタでは、例えば、断面が小さな反応流路を設け、反応流路内に触媒を配し、その反応流路に反応対象となる反応流体を流通させて反応を促進する。このような反応によって生じた熱は、反応流路に並行して設けられた媒体流路を流通する熱媒体を通じて回収される。
【0004】
例えば、特許文献1には、反応流路に接して設けられた媒体流路に冷却ガスを流通させ、反応流路を流通する改質ガスを効率よく冷却する技術が開示されている。また、特許文献1の技術では、媒体流路における、反応流路の出口に対応する領域にのみ伝熱促進材を充填することで、反応流路の入口と出口の冷却効率を異ならせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3900570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のマイクロリアクタでは、反応流路や媒体流路の断面が流通方向に一定となるように形成されているため、発熱反応において、反応流路の発熱による温度推移によっては、発熱が低い部分に隣接する媒体流路の部分では、熱媒体の吸熱能力に余力を残し、発熱が高い部分に隣接する媒体流路の部分では、熱媒体が熱を吸収しきれず過度に温度上昇が生じ、マイクロリアクタにおける温度分布が偏ってしまっていた。かかる状況下では、温度対策を余儀なくされたり、マイクロリアクタの耐久性に影響を及ぼすことがある。
【0007】
また、吸熱反応においては、吸熱が低い部分に隣接する媒体流路の部分では、熱媒体の伝熱能力に余力を残し、吸熱が高い部分に隣接する媒体流路の部分では、熱媒体が伝熱しきれず吸熱反応を効率よく進行させることができないおそれがあった。
【0008】
そこで本発明は、このような課題に鑑み、媒体流路の形状を工夫することで、反応流路の発熱または吸熱を適切にバランスさせ、反応流体と熱媒体との熱交換の効率向上を図ることが可能なマイクロリアクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のマイクロリアクタは、反応対象となる流体である反応流体が流通する反応流路と、反応流路と並行して設けられ、反応流路を流通する反応流体と熱交換する熱媒体が流通する媒体流路と、を備え、反応流路のうち、反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分に熱伝壁を介して隣接する媒体流路の流通方向に垂直な断面積は、反応による発熱または吸熱が相対的に小さい部分に熱伝壁を介して隣接する媒体流路の流通方向に垂直な断面積より小さいことを特徴とする。
【0010】
反応流路における反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分から小さい部分にかけて、媒体流路の流通方向に垂直な断面積が漸増するように形成されていてもよい。
【0011】
反応流路のうち、反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分に熱伝壁を介して隣接する媒体流路の部分から流通方向において近い側に位置する媒体流路の開口面積は、反応による発熱または吸熱が相対的に小さい部分に熱伝壁を介して隣接する媒体流路の部分から流通方向において近い側に位置する媒体流路の開口面積より小さいとしてもよい。
【0012】
反応流路のうち、反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分の流通方向に垂直な断面積は、反応による発熱または吸熱が相対的に小さい部分の流通方向に垂直な断面積より大きいとしてもよい。
【0013】
反応流路における反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分から小さい部分にかけて、流通方向に垂直な断面積が漸減するように形成されていてもよい。
【0014】
反応流路のうち反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分から流通方向において近い側に位置する反応流路の開口面積は、反応による発熱または吸熱が相対的に小さい部分から流通方向において近い側に位置する反応流路の開口面積より大きいとしてもよい。
【0015】
反応流路の内壁の少なくとも一部には、触媒層が配され、反応流路のうち、反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分における触媒層の厚みは、反応による発熱または吸熱が相対的に小さい部分の触媒層の厚みより大きいとしてもよい。
【0016】
媒体流路における熱媒体の流通方向は、反応流路における反応流体の流通方向と対向していてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、媒体流路の形状を工夫することで、反応流路の発熱または吸熱を適切にバランスさせ、反応流体と熱媒体との熱交換の効率向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態におけるマイクロリアクタの概略的な構成を示した横断面図である。
図2】反応流路における発熱反応を説明するための説明図である。
図3】反応流路における吸熱反応を説明するための説明図である。
図4】第2の実施形態におけるマイクロリアクタの概略的な構成を示した横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
(第1の実施形態:マイクロリアクタ100)
マイクロリアクタ100では、微細加工により形成された管(筒)形状のマイクロチャンネル流路を反応場とすることで反応速度や収率を向上させることができる。また、対流や拡散態様を任意に構成することで迅速混合や能動的に濃度分布をつける等が可能になり、反応条件の厳密な制御ができる。
【0021】
図1は、マイクロリアクタ100の概略的な構成を示した横断面図である。マイクロリアクタ100は、反応流体(気液を問わない)が図1中実線矢印で示す方向に流通する、例えば、幅および高さの少なくとも1辺が1mm以下となる断面矩形の反応流路110と、熱媒体が図1中破線矢印で示す方向に流通する、例えば、幅および高さの少なくとも1辺が1mm以下となる断面矩形の媒体流路120とを含んで構成され、反応流路110と媒体流路120とは、流通する反応流体と熱媒体とが熱交換可能に、熱伝壁130を介し並行して設けられている。ただし、反応流体の流通方向と熱媒体の流通方向とは対向している。このように反応流路110と媒体流路120とを並行させる構成により、反応流体の発熱反応による熱を熱媒体で迅速に吸収したり、熱媒体から迅速に伝熱して反応流体の吸熱反応を促進したりすることができる。
【0022】
また、反応流路110の内壁の少なくとも一部、望ましくは、内壁全てに、反応を促進する触媒からなる触媒層112が配される。触媒層112の厚さは、反応流路110の熱伝壁距離が例えば200μm〜6mm(触媒層112を除く)程度であった場合に、50μm以上となる。以下、発熱反応と吸熱反応に分けて本実施形態の作用を説明する。
【0023】
図2は、反応流路110における発熱反応を説明するための説明図である。特に図2(a)には、隣接する反応流路110と媒体流路120との組み合わせを、図2(b)には各流路の温度勾配を示す。
【0024】
図2(a)を参照すると、反応流体は、反応流路110内を流通しつつ触媒層112に接触して発熱反応を起こす。発熱反応としては、例えば、下記の化学式1や化学式2の反応が挙げられる。
CO+3H→ CH+HO…(化学式1)
CO+HO → CO+H …(化学式2)
また、化学式1の発熱反応には、触媒層112にNiを担持したAlやRuを担持したAl等の触媒が用いられ、化学式2の発熱反応には、触媒層112にCu−Zn系の触媒やFe−Cr系の触媒等が用いられる。
【0025】
このとき、反応流路110における温度推移は、図2(b)に実線で示すように、反応流路110の入口(開口部110a)付近で最大となり、出口(開口部110b)付近で最小となる。これは、反応流路110に流入してきたばかりの反応流体には未反応の物質が多く含まれるため反応頻度が高くなるのに対し、反応流体が反応流路110を流通するに連れて反応が進行し、反応流路110から流出するころには、ほとんどの物質が反応しきって反応頻度が低くなるからである。
【0026】
したがって、反応頻度の高い反応流路110の入口付近で発熱が相対的に大きくなり、出口付近では相対的に小さくなる。このようにして生じた熱が図2(a)の白抜き矢印に示したように媒体流路120に伝達される(白抜き矢印の幅は伝熱の大きさを示す)。ただし、媒体流路120を単に流路断面が一定となるように形成してしまうと、反応流路110の反応熱が低い部分に隣接する媒体流路120の部分では、熱媒体の吸熱能力に余力を残し、反応流路110の反応熱が高い部分に隣接する媒体流路120の部分では、温度上昇を熱媒体が吸収しきれず、反応流路110において過度に温度上昇が生じてしまう。そこで、本実施形態では、反応流路110における温度推移に応じて、媒体流路120の吸熱の仕事推移を変化させ、熱のバランスをとる。
【0027】
具体的に説明すると、本実施形態にかかるマイクロリアクタ100は、反応流路110における発熱が相対的に大きい方から小さい方にかけて(開口部110aから開口部110bにかけて)、媒体流路120の断面積が漸増するように形成されている。すなわち、媒体流路120における熱媒体の入口(開口部120a)から出口(開口部120b)にかけて流路を徐々に狭くする。
【0028】
こうすることで、反応流路110における発熱が相対的に大きい部分に対応する媒体流路120の断面が、反応流路110における発熱が相対的に小さい部分に対応する媒体流路120の断面に対して狭くなり、流量が同一の場合、流速が高まるので、反応流路110における発熱が相対的に大きい部分に対応する媒体流路120では、伝熱容量の高い熱媒体と媒体流路120内面との接触頻度が高まり、図2(b)の破線で示すように、効率よく熱交換が為される。したがって、熱媒体が熱を吸収しきれずマイクロリアクタ100が過度に温度上昇するのを防止できる。
【0029】
一方、反応流路110における発熱が相対的に小さい部分に対応する媒体流路120の断面は、反応流路110における発熱が相対的に大きい部分に対応する媒体流路120の断面より広くなり流速は相対的に低くなるが、反応流路110における発熱が相対的に小さい部分に対応する媒体流路120では、もともと吸熱能力に余力を残しており、さほどの吸熱を要さないので、流速が低くても問題にならない。
【0030】
図3は、反応流路110における吸熱反応を説明するための説明図である。特に図3(a)には、隣接する反応流路110と媒体流路120との組み合わせを、図3(b)には各流路の温度勾配を示す。
【0031】
図3(a)を参照すると、反応流体は、反応流路110内を流通しつつ触媒層112に接触して吸熱反応を起こす。吸熱反応としては、例えば、下記の化学式3の反応が挙げられる。
CH+HO → CO+3H…(化学式3)
また、化学式3の発熱反応には、触媒層112にNiを担持したAlやRuを担持したAl等の触媒が用いられる。
【0032】
このとき、反応流路110における温度推移は、図3(b)に実線で示すように、流通方向に進むに連れて大きくなり、その温度勾配(単位移動距離における上昇温度)は、反応流路110の入口(開口部110a)付近で最大となり、出口(開口部110b)付近で最小となる。これは、発熱反応同様、反応流路110に流入してきたばかりの反応流体には未反応の物質が多く含まれるため反応頻度が高くなるのに対し、反応流体が反応流路110を流通するに連れて反応が進行し、反応流路110から流出するころには、ほとんどの物質が反応しきって反応頻度が低くなるからである。
【0033】
したがって、反応頻度の高い反応流路110の入口付近では、吸熱のため相対的に多くの伝熱量を要し、出口付近では伝熱量が相対的に少なくて済む。このようにして熱媒体の熱が図3(a)の白抜き矢印に示したように反応流路110に伝達される(白抜き矢印の幅は伝熱の大きさを示す)。また、ここでも、反応流路110における温度推移に応じて、媒体流路120の伝熱の仕事推移を変化させ、熱のバランスをとる。
【0034】
吸熱反応においても、発熱反応同様、反応流路110における吸熱が相対的に大きい方から小さい方にかけて(開口部110aから開口部110bにかけて)、媒体流路120の断面積が漸増するように形成する。すなわち、媒体流路120における熱媒体の入口(開口部120a)から出口(開口部120b)にかけて流路を徐々に狭くする。
【0035】
こうすることで、反応流路110における吸熱が相対的に大きい部分に対応する媒体流路120の断面が、反応流路110における吸熱が相対的に小さい部分に対応する媒体流路120の断面に対して狭くなり、流量が同一の場合、流速が高まるので、反応流路110における吸熱が相対的に大きい部分に対応する媒体流路120では、熱媒体と媒体流路120内面との接触頻度が高まり(熱伝達率が高まり)、図3(b)の破線で示すように、効率よく熱交換が為される。したがって、熱媒体が熱を放出しすぎてマイクロリアクタ100の部分温度が過度に低下するのを防止できる。
【0036】
上記では、媒体流路120の断面積が漸増するように形成するとしたが、反応流路110のうち反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分に隣接する媒体流路120の断面積を、発熱または吸熱が相対的に小さい部分に隣接する媒体流路120の断面積より小さくすること、すなわち、反応流路110の発熱や吸熱が大きい部分に対応する媒体流路120を狭くすることでも本実施形態の目的を達成することができる。
【0037】
また、結果的に、図2図3に示すように、反応流路110のうち反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分に近い媒体流路120の開口部120bの開口面積(出口面積)は、発熱または吸熱が相対的に小さい部分に近い媒体流路120の開口部120aの開口面積(入口面積)より小さくなる。
【0038】
(第2の実施形態:マイクロリアクタ200)
上述した第1の実施形態では、媒体流路120について、流通方向に対し断面の大きさを異ならせた。第2の実施形態では、媒体流路120のみならず、反応流路110についても流通方向に対し断面の大きさを異ならせている。
【0039】
図4は、マイクロリアクタ200の概略的な構成を示した横断面図である。マイクロリアクタ200は、第1の実施形態におけるマイクロリアクタ100同様、反応流路110と媒体流路120とを含んで構成され、反応流路110と媒体流路120とは、流通する反応流体と熱媒体とが熱交換可能に、熱伝壁130を介し並行して設けられている。ただし、第1の実施形態と異なり、反応流路110を、発熱または吸熱が相対的に大きい方から小さい方にかけて(開口部110aから開口部110bにかけて)断面積が漸減するように形成する。
【0040】
反応流路110の形状をこのように形成することで、反応流路110のうち、反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分における触媒層112の厚みを、発熱または吸熱が相対的に小さい部分の触媒層112の厚みより大きくすることができ、反応流体の流速を高めなくとも、反応をより促進させることが可能となる。
【0041】
ここでは、反応流路110の側面に触媒層112を配し、反応流路110の中心には触媒層112のない貫通路を設けているが、触媒を反応流路110に充填することもできる。この場合も、反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分において、触媒の絶対量を高めることができるので、反応をより促進させることができる。
【0042】
また、上記では、反応流路110の断面積が漸減するように形成するとしたが、反応流路110のうち反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分の断面積を、発熱または吸熱が相対的に小さい部分の断面積より大きくすること、すなわち、反応流路110の発熱や吸熱が大きい部分を広くすることでも本実施形態の目的を達成することができる。
【0043】
また、結果的に、図4に示すように、反応流路110のうち反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分に近い開口部110aの開口面積(入口面積)は、発熱または吸熱が相対的に小さい部分に近い開口部110bの開口面積(出口面積)より大きくなる。
【0044】
本実施形態では、上述したように、媒体流路120における熱媒体の流通方向と、反応流路110における反応流体の流通方向とが対向している。したがって、反応流路110の断面積が大きい部分と媒体流路120の断面積が小さい部分が対応し、また、反応流路110の断面積が小さい部分と媒体流路120の断面積が大きい部分が対応するので、図4に示すように、配置的なバランスがとれ、各流路を平行に設けることができる。そのため、かかるマイクロリアクタ200の設置や、流路開口と他の装置との接続にも有利である。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、媒体流路の形状を工夫することで、反応流路の発熱または吸熱を適切にバランスさせ、反応流体と熱媒体との熱交換の効率向上を図ることが可能となる。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0047】
例えば、上述した実施形態においては、各流路の断面積を漸増させたり、漸減させる例を挙げて説明したが、断面積の推移は、連続していなくてもよく、反応流路110のうち、反応による発熱または吸熱が相対的に大きい部分に、媒体流路120の断面積が相対的に小さい部分が対応し、反応による発熱または吸熱が相対的に小さい部分に、媒体流路120の断面積が相対的に大きい部分が対応しさえすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、微小な空間を反応場とするマイクロリアクタに利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
100、200 …マイクロリアクタ
110 …反応流路
112 …触媒層
120 …媒体流路
図1
図2
図3
図4