(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966642
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】皮膚洗浄料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/36 20060101AFI20160728BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20160728BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20160728BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
A61K8/36
A61Q19/10
A61K8/02
A61K8/81
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-130784(P2012-130784)
(22)【出願日】2012年6月8日
(65)【公開番号】特開2013-253057(P2013-253057A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2014年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(72)【発明者】
【氏名】宮島 幸
(72)【発明者】
【氏名】小八木 友子
【審査官】
松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−172166(JP,A)
【文献】
特開2007−091968(JP,A)
【文献】
特開平06−087721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/36
A61K 8/02
A61K 8/81
A61Q 19/10
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)R1COOM (1)
(式中、R1は直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基であり、炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい。Mはアルカリ金属原子又はアルカノールアミンを示す。)
で表される脂肪酸塩であって、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、イソステアリン酸塩、ベヘン酸塩、パルミトレイン酸塩、オレイン酸塩及びヤシ油脂肪酸塩から選ばれるものと、
(B)ベタイン基を有するカチオン性ポリマーと
を含有し、(B)/(A)で示される(A)成分に対する(B)成分の含有質量比が0.01〜10であり、25℃における粘度が15mPa・s以下であって、フォーマー容器充填用である、ボディソープ、ハンドソープ又は洗顔料用皮膚洗浄料。
【請求項2】
(A)成分の配合量が0.1〜10質量%、(B)成分の配合量が0.005〜5質量%である請求項1記載の皮膚洗浄料。
【請求項3】
(A)成分が、ラウリン酸塩と、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ベヘン酸塩、パルミトレイン酸塩、オレイン酸塩及びヤシ油脂肪酸塩から選ばれるものとの組み合わせである請求項1又は2記載の皮膚洗浄料。
【請求項4】
(A)成分における、(R1が炭素数11以下の一価炭化水素基である脂肪酸塩)/(R1が炭素数13以上の一価炭化水素基である脂肪酸塩)で示される比率が、質量比で1.5〜5である請求項1〜3のいずれか1項記載の皮膚洗浄料。
【請求項5】
(B)成分が、メタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール共重合体、メタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、及び2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの共重合体から選ばれる請求項1〜4のいずれか1項記載の皮膚洗浄料。
【請求項6】
更に、(C)多価アルコール10〜20質量%を含む請求項1〜5のいずれか1項記載の皮膚洗浄料。
【請求項7】
フォーマー容器と、このフォーマー容器に充填されてなる請求項1〜6のいずれか1項記載の皮膚洗浄料とからなる皮膚洗浄剤製品。
【請求項8】
フォーマー容器が多孔質膜体を有し、この多孔質膜体のメッシュサイズが100〜400メッシュである請求項7記載の皮膚洗浄剤製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸塩の使用量を低減しても泡性能に優れ、肌に対してマイルドな皮膚洗浄料及び皮膚洗浄剤製品に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚洗浄分野における泡は、一種の演出効果として洗浄した満足感を与えるという点から重要視され、泡質のきめ細かさ、洗浄力等の観点から、高級脂肪酸塩が多く使用されている。また、より上質な泡を得るため、高級脂肪酸塩を主基材とした洗浄剤組成物にカチオン性高分子を添加することにより、泡質や泡の持続性の向上が図られてきた。
【0003】
更に、簡単にきめ細かい泡立てができるという観点から、フォーマーポンプにより泡で吐出する方法等が提案されてきた。
【0004】
しかしながら、高級脂肪酸塩は、上質な泡の質感を持つ一方、洗浄後に肌にべたつきやかさつきを与える等の問題点があり、また、カチオン性高分子は、ポンプフォーマーに充填した際には、泡形成部の詰まりや製剤の粘度上昇から正常に泡で吐出できない等の問題点があった。
【0005】
このような問題点を解消するため、フォーマーポンプで正常に泡の吐出ができ、従って低濃度の脂肪酸でも容易に泡立てることができ、泡の持続性も良く、更に洗浄後の肌のべたつきのなさ及びかさつきのなさに優れた皮膚洗浄料が望まれていた。
なお、本発明に関連する先行技術文献としては、下記のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−172166号公報
【特許文献2】特開2004−204087号公報
【特許文献3】国際公開第2004/098558号
【特許文献4】特開2001−181354号公報
【特許文献5】特開平10−237490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、低濃度の脂肪酸塩でもフォーマー容器から吐出させることで起泡性に優れ、泡の持続性が良く、フォーマー容器の泡形成部の詰まりや、製剤の粘度上昇によって泡の吐出が妨げられることもなく、しかも洗浄後の肌のべたつき及びかさつきのない皮膚洗浄料及び皮膚洗浄剤製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、(A)脂肪酸塩を含む皮膚洗浄料に、(B)ベタイン基を有するカチオン性ポリマーを、特定の割合で配合することで、通常であれば破泡するような低濃度まで脂肪酸塩の使用量を少なくしても、目詰まり等することなくフォーマー容器から吐出させることができるため泡の形成が容易であって、泡の持続性にも優れ、しかも洗浄後の肌のべたつき及びかさつきを防ぐことができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記皮膚洗浄料及び皮膚洗浄剤製品を提供する。
[1]
(A)R
1COOM (1)
(式中、R
1は直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基であり、炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい。Mはアルカリ金属原子又はアルカノールアミンを示す。)
で表される脂肪酸塩
であって、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、イソステアリン酸塩、ベヘン酸塩、パルミトレイン酸塩、オレイン酸塩及びヤシ油脂肪酸塩から選ばれるものと、
(B)ベタイン基を有するカチオン性ポリマーと
を含有し、(B)/(A)で示される(A)成分に対する(B)成分の含有質量比が0.01〜10であり、25℃における粘度が15mPa・s以下であって、フォーマー容器充填用である、ボディソープ、ハンドソープ又は洗顔料用皮膚洗浄料。
[2]
(A)成分の配合量が0.1〜10質量%、(B)成分の配合量が0.005〜5質量%である[1]記載の皮膚洗浄料。
[3]
(A)成分が、ラウリン酸塩と、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ベヘン酸塩、パルミトレイン酸塩、オレイン酸塩及びヤシ油脂肪酸塩から選ばれるものとの組み合わせである[1]又は[2]記載の皮膚洗浄料。
[4]
(A)成分における、(R
1が炭素数11以下の一価炭化水素基である脂肪酸塩)/(R
1が炭素数13以上の一価炭化水素基である脂肪酸塩)で示される比率が、質量比で1.5〜5である[1]〜[3]のいずれかに記載の皮膚洗浄料。
[5]
(B)成分が、メタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール共重合体、メタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、及び2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの共重合体から選ばれる[1]〜[4]のいずれかに記載の皮膚洗浄料。
[6]
更に、(C)多価アルコール10〜20質量%を含む[1]〜[5]のいずれかに記載の皮膚洗浄料。
[7]
フォーマー容器と、このフォーマー容器に充填されてなる[1]〜[6]のいずれかに記載の皮膚洗浄料とからなる皮膚洗浄剤製品。
[8]
フォーマー容器が多孔質膜体を有し、この多孔質膜体のメッシュサイズが100〜400メッシュである[7]記載の皮膚洗浄剤製品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の皮膚洗浄料は、フォーマーポンプで正常な泡の吐出ができ、かつ低濃度の脂肪酸で泡の起泡性及び持続性があり、しかも洗浄後の肌のべたつきのなさ及びかさつきのなさに優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の皮膚洗浄料は、
(A)脂肪酸塩と、
(B)ベタイン基を有するカチオン性ポリマーと
を含有する。
【0012】
<(A)脂肪酸塩>
本発明において、(A)成分は、良好な起泡性、泡の持続性を得るために配合する。本発明の(A)成分の下記式
R
1COOM
(R
1は直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基であり、炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基で置換されていてもよい。Mはアルカリ金属原子又はアルカノールアミンを示す。)
で示される脂肪酸塩のR
1としては、炭素数5〜25の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基等の一価炭化水素基が挙げられる。脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、ゴンドイン酸、エルカ酸、セラコレイン酸、リノール酸、リノエライジン酸、リノレン酸、アラキドン酸、2−エチルブタン酸、イソペンタン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、テトラメチルノナン酸、2−ヘキシルデカン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、また、これらの混合物であるヤシ油脂肪酸、硬化ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、硬化パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、硬化パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸等が挙げられる。これらのうち、好ましいものの具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸であり、より好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、ヤシ油脂肪酸である。起泡性、泡の持続性の点から、R
1は炭素数11〜17の直鎖のものが好ましく、その対となる塩(M)は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミンが挙げられ、析出抑制の点からカリウム塩が望ましい。
【0013】
脂肪酸塩はそのものを配合しても良いし、皮膚洗浄料中に脂肪酸と塩をそれぞれ別々に配合して、中和して用いても良く、これら(A)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。均一に気泡ができ、洗浄後のかさつきのなさを抑える点から2種以上を組み合わせることがより好ましい。例えば、ラウリン酸塩と、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ベヘン酸塩、パルミトレイン酸塩及びオレイン酸塩から選ばれるものとを組み合わせて用いることが好ましく、特にラウリン酸カリウムとミリスチン酸カリウムとを併用することが好ましい。
【0014】
(A)成分の配合割合として望ましいのは、(R
1が炭素数11以下の一価炭化水素基である脂肪酸塩)/(R
1が炭素数13以上の一価炭化水素基である脂肪酸塩)で示される比率が、質量比で1.5〜5であり、より好ましくは、起泡性、泡の持続性及び洗浄後のかさつきを抑える点から、1.5〜4である。1.5未満では、低温安定性に劣る場合があり、5を超えると肌にかさつきを与える場合がある。
【0015】
(A)成分の含有量としては、起泡性と皮膚刺激性の観点から、特に脂肪酸塩として皮膚洗浄料中0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは、起泡性の点から、0.5〜5質量%である。0.1質量%未満では容器からの吐出性、起泡性、泡の持続性が悪くなる場合があり、10質量%を超えると吐出性や、肌のかさつきのなさの低下、皮膚刺激性が高まる場合がある。一方、前記含有量が、好ましい範囲内であると、起泡性、洗浄後の肌のかさつきのなさにおいて、より優れた皮膚洗浄料を提供できる点で有利である。
【0016】
<(B)ベタイン基を有するカチオン性ポリマー>
本発明において、(B)成分は、フォーマー容器での泡立てを助け、泡の持続性を良くすると共に、洗浄後の肌のべたつきを抑制するために配合する。ベタイン基を有するカチオン性ポリマーとしては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール共重合体(商品名:プラスサイズL−440[互応化学工業(株)製]等)、メタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体(商品名:プラスサイズL−450[互応化学工業(株)製]等)、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの共重合体(商品名:Lipidure−C[日油(株)製]等)が挙げられる。これらの中でも、ベタイン基を有するメタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール共重合体、メタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの共重合体が好ましい。より好ましくは、泡の持続性の点から、メタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール共重合体、メタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体である。これらのベタイン基を有するカチオン性ポリマーは1種単独で又は2種以上を混合して使用しても良い。
【0017】
(B)成分の配合量は、皮膚洗浄料中、好ましくは0.005〜5質量%であり、0.05〜1質量%が、吐出性、起泡性及び泡の持続性の点からより好ましい。0.005質量%未満では起泡性が低下し、泡の持続性の機能を発現しない場合があり、5質量%を超えると吐出性の低下や、タオルドライ直後の肌にべたつきを引き起こす場合がある。
【0018】
本発明で用いられる(A)成分と(B)成分の配合割合は、(B)/(A)で表される含有質量比が0.01〜10であり、泡の持続性と洗浄後に肌にべたつきを与えない点から、好ましくは0.01〜5であり、特に0.01〜2が好ましい。上記質量比が0.01未満では起泡性や泡の持続性の機能を発現しない場合があり、10を超えると容器からの吐出性、起泡性の低下や、タオルドライ直後の肌にべたつきを引き起こす場合がある。
【0019】
<(C)多価アルコール>
本発明において、多価アルコールは、フォーマー容器に充填したときの吐出性の改善、メッシュ閉塞の抑制、より良好な起泡性のために配合する。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリン、1,3−ブチレングリコール、トリメチルプロパノール、多価アルコールのEO付加物等が挙げられる。また、本発明の(C)成分には、糖分子のカルボニル基を還元して得られる糖アルコールも含まれるものとし、具体例としては、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、アラビトール、マルチトール、ラクチトール等が挙げられる。これらの中でも、(C)成分としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、マルトテトラオースが好ましく、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マルトテトラオースが、良好な泡を吐出できる点でより好ましい。また、これらはそれぞれ1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明の皮膚洗浄料をフォーマー容器で使用する際、より具体的には、例えば、ノズル部を押し下げることによって泡を吐出できるポンプフォーマー容器と、200メッシュと305メッシュの2枚を使用する際において、配合成分によるメッシュの閉塞は吐出性に影響を与えるという観点から、多価アルコールの含有量は、皮膚洗浄料中10〜35質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。10質量%に満たないと、十分なメッシュ閉塞抑制効果が発揮できないことがあり、吐出性が悪くなる場合があり、35質量%を超えると、起泡性、泡の持続性が悪くなり、使用感を損なうことがある。
【0021】
<任意成分>
本発明の皮膚洗浄料には、前記(A)〜(C)の各成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で任意成分を配合することができる。任意成分としては、皮膚洗浄料に通常用いられているものの中から適宜選択することができ、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等のアニオン界面活性剤、アミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、油分、シリコーン類、低級又は高級アルコール等のアルコール類、ラノリン誘導体、蛋白誘導体、アクリル樹脂分散液、(A)成分を除くカチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー、ビタミン等の薬剤、殺菌剤、防腐剤、pH調整剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、紫外線吸収剤、動植物抽出物又はその誘導体、色素、香料、顔料、無機粉体、粘土鉱物、ナイロン、ポリエチレン等の水不溶性ポリマー粉体、水等が挙げられる。
【0022】
<pH>
本発明の皮膚洗浄料のpH(25℃)としては、安定性の点から、9〜11が好ましい。製剤のpHは、すべての成分を混合した後、最後にpHを確認しながら水酸化カリウム、クエン酸等を加えることで調整できる。より詳しくは、水酸化カリウム、クエン酸等以外の成分の合計が約98質量%となるように精製水をバランスして混合撹拌する。なお、本発明において、pHの測定法は、医薬部外品原料規格2006一般試験法pH測定法に準拠して測定することができる。必要なら加温してもよい。混合撹拌中に水酸化カリウム、クエン酸等を徐々に添加し、それぞれpHを測定しながら目標とするpHまで添加する。目標pHとなったところで、最後に残りの精製水を加えて、全体で100質量%となるように水をバランスする。
【0023】
<容器>
本発明の皮膚洗浄料は、容器泡形成部の詰まりが生じることなく容器から吐出させることができるため、フォーマー容器に充填して用いるのが有効であり、フォーマー容器充填用皮膚洗浄料、皮膚洗浄料をフォーマー容器に充填してなる皮膚洗浄剤製品、フォーマー容器と、このフォーマー容器に充填されてなる皮膚洗浄料とからなる皮膚洗浄剤製品とすることができる。フォーマー容器としては、ノンガス型の泡吐出容器等が挙げられる。
【0024】
ノンガス型の泡吐出容器としては、皮膚洗浄料を空気と混合して発泡状態で吐出できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ボトル胴部を手で圧搾することによって泡を吐出できるスクイズフォーマー容器、ノズル部を押し下げることによって泡を吐出できるポンプフォーマー容器等が挙げられる。このようなフォーマー容器としては、大和製罐(株)製、(株)吉野工業所製などを使用することができる。
【0025】
ノンガス型の泡吐出容器は、通常、泡を形成するための多孔質膜体(材質はナイロン、ポリエステル、ポリオレフィン等のプラスチック材料が好ましい)を有し、皮膚洗浄料がこの多孔質膜体を通過することにより泡が形成されるものである。多孔質膜体のメッシュとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、100メッシュ以上が好ましく、100〜400メッシュがより好ましく、200〜350メッシュがより好ましい。
【0026】
多孔質膜体の枚数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、泡性能を向上させる観点から2〜4枚が好ましい。より具体的には、特開平7−315463号公報、特開平8−230961号公報、及び特開2005−193972号公報に記載されたフォーマー容器を好適に使用することができる。
【0027】
<性状>
本発明の皮膚洗浄料の性状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、常温で液体状が好ましい。また、フォーマー容器を使用する際、例えば、ノズル部を押し下げることによって泡を吐出できるポンプフォーマー容器と、200メッシュ2枚を使用する際において、使用する温度条件下で皮膚洗浄料の粘度は、15mPa・s以下が好ましく、1〜10mPa・sがより好ましい。なお、本発明において粘度は、BL型粘度計(ローターNo.1、60ppm、1分後、東京計器株式会社製)により、25℃で測定することができる。
【0028】
<製造方法>
本発明の皮膚洗浄料の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(A)、(B)成分、必要により(C)成分、任意成分、及び水(皮膚洗浄料の全体が100質量%となるように残部配合)を混合して、得ることができる。また、皮膚洗浄料を調製する装置としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、中でも剪断力と全体混合できる複数の撹拌羽根(プロペラ、タービン、ディスパー等)を備えた撹拌装置が好ましい。なお、(A)〜(C)成分及び任意成分は、皮膚洗浄料を調製するにあたり、それぞれ1種単独で使用してもよく、また、2種以上の成分を含む混合物の状態で使用してもよい。本発明の皮膚洗浄剤製品は、得られた皮膚洗浄料をフォーマー容器に充填して得ることができる。
【0029】
<用途>
本発明の皮膚洗浄料の用途としては、特に限定されず、例えば、ボディソープ、ハンドソープ、洗顔料等に適用することができる。中でも、本発明の皮膚洗浄料は、起泡性がキメ細かく、洗浄後の肌のかさつきのなさに優れ、敏感な肌に対してマイルドである点から、幼児や若い女性、年配の人や敏感肌の人用の皮膚洗浄料として好適であり、とりわけ乾燥肌の人用として好ましく用いられ、特にボディソープとしての使用が好ましい。
【実施例】
【0030】
次に、本発明を実施例及び比較例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において、実施例記載の成分量は全て純分換算である。
【0031】
[実施例1〜52、比較例1〜8]
下記表に示す組成の皮膚洗浄料を常法に準じて調製した。pHはクエン酸と水酸化カリウムで10.2に調整した。なお、pHの測定法は、医薬部外品原料規格2006一般試験法pH測定法に準拠して測定した。
得られた皮膚洗浄料は、(株)吉野工業所製の容量250mLのポンプフォーマー容器(200メッシュ2枚使用)に100mL充填し、下記評価方法により、吐出性、起泡性、泡の持続性、洗浄後の肌のかさつきのなさ、洗浄後の肌のべたつきのなさを評価した。
【0032】
−吐出性−
各皮膚洗浄料を25℃でフォーマーポンプから吐出し、吐出のし易さを評価した。評価は10回繰り返して行い、下記の基準に基づいて採点し、結果を平均値で示した。
<評価基準>
5:吐出が非常にし易い
4:吐出がし易い
3:吐出がややし易い
2:吐出がややし難い
1:吐出がし難い
<判断基準>
◎:4.5点以上
○:3点以上4.5点未満
△:2点以上3点未満
×:2点未満
【0033】
−起泡性−
各皮膚洗浄料をフォーマーポンプから硬質ガラスのバイアル瓶(容量50mL)に5回吐出し、吐出直後の起泡性を目視にて評価した。評価は10回繰り返して行い、下記の基準に基づいて採点し、結果を平均値で示した。
<評価基準>
5:キメ細い泡立である
4:わずかに粗い泡が存在し、ややキメの粗い泡立である
3:粗い泡が存在し、やや粗い泡立ちである
2:かなり粗い泡が存在し、泡立ちにくい
1:水っぽく、泡立たない
<判断基準>
◎:4.5点以上
○:3点以上4.5点未満
△:2点以上3点未満
×:2点未満
【0034】
−泡の持続性−
各皮膚洗浄料を25℃で硬質ガラスのバイアル瓶(容量50mL)にフォーマーポンプで5回吐出し、吐出直後と5分後の泡の高さを測定し、高さの変化を泡の持続率として評価した。評価は3回繰り返して行い、下記の基準に基づいて採点し、結果を平均値で示した。
<評価基準>
泡の持続率={5分後の泡の高さ(mm)/吐出直後の泡の高さ(mm)}×100
◎:泡の持続率が90%以上
○:泡の持続率が70%以上〜90%未満
△:泡の持続率が50%以上〜70%未満
×:泡の持続率が50%未満
【0035】
−洗浄後の肌のべたつきのなさ−
各皮膚洗浄料約1gを40℃の水道水でぬらした手に採り、腕を洗浄し、タオルドライ後の肌のべたつきのなさを評価した。評価は、評価精度の高い被験者10名で行い、べたつかないと回答した人数を調査した。
<評価基準>
◎:10名中8名以上がべたつきがないと回答
○:10名中6〜7名がべたつきがないと回答
△:10名中4〜5名がべたつきがないと回答
×:10名中3名以下がべたつきがないと回答
【0036】
−洗浄後の肌のかさつきのなさ−
各皮膚洗浄料約1gを40℃の水道水でぬらした手に採り、10時間内に10回腕を洗浄した後の肌のかさつきのなさを評価した。評価は、評価精度の高い被験者10名で行い、かさつかないと回答した人数を調査した。
<評価基準>
◎:10名中8名以上がかさつかないと回答
○:10名中6〜7名がかさつかないと回答
△:10名中4〜5名がかさつかないと回答
×:10名中3名以下がかさつかないと回答
【0037】
【表1】
*1 ヤシ油脂肪酸カリウムの脂肪酸組成:C11以下60質量%、C13以上40質量%
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】
【0044】
以下に示す実施例の皮膚洗浄料を各製剤の常法に基づいて調整した。次いで、上記と同様に評価を行った結果、泡の吐出性、起泡性、泡の持続性に優れ、かつ洗浄後の肌のべたつきのなさ及び洗浄後の肌のかさつきのなさについて良好な結果(全て◎)であった。
【0045】
[実施例53]フォーマー容器用身体洗浄剤組成物
組成(質量%)
ラウリン酸カリウム 2.0
ミリスチン酸カリウム 0.5
オレイン酸エタノールアミン 0.5
カチオン性ポリマー−1 0.5
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 0.5
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 0.3
プロピレングリコール 10.0
香料 1.0
色素 適量
精製水 残部
合計 100.0
(A)=3.0,(B)=0.5
(B)/(A)=0.17
C11以下/C13以上=2.0
【0046】
[実施例54]フォーマー容器充填用液体洗浄剤組成物
組成(質量%)
リンゴ酸モノラウラミドカリウム塩 3.0
ラウリン酸カリウム 1.5
ミリスチン酸カリウム 0.5
カチオン性ポリマー−2 0.5
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 0.5
プロピレングリコール 15.0
ローズマリーエキス 1.0
POE(5)硬化ヒマシ油 1.0
ホホバ油 0.5
メチルパラベン 0.3
エデト酸 0.1
ヒドロキシエタンジホスホン酸 0.1
香料 1.0
水酸化カリウム 適量
精製水 残部
合計 100.0
(A)=2.0,(B)=0.5
(B)/(A)=0.25
C11以下/C13以上=3.0
【0047】
[実施例55]フォーマー容器用ハンドソープ
組成(質量%)
ラウリン酸カリウム 4.0
ミリスチン酸カリウム 1.0
プロピレングリコール 6.0
ソルビトール 4.0
カチオン性ポリマー−3 0.7
ラウリルジメチルアミンオキサイド 0.7
アクリル酸アルキル重合体エマルション 5.0
ヒドロキシエタンジホスホン酸 0.1
エデト酸 0.2
トリクロサン 0.1
イソプロピルメチルフェノール 0.1
香料 1.0
水酸化カリウム 適量
精製水 残部
合計 100.0
(A)=5.0,(B)=0.7
(B)/(A)=0.14
C11以下/C13以上=4.0
【0048】
[実施例56]フォーマー容器用身体洗浄剤
組成(質量%)
ラウリン酸カリウム 3.5
ミリスチン酸カリウム 1.0
パルミチン酸カリウム 0.5
モノエタノールアミン 0.5
N−ラウロイル−N−メチル−β−アラニンナトリウム 3.0
プロピレングリコール 6.5
ソルビトール 3.5
カチオン性ポリマー−1 0.35
カチオン性ポリマー−3 0.2
ラウリルジメチルアミンオキサイド 3.0
エデト酸 0.2
香料 1.0
水酸化カリウム 適量
精製水 残部
合計 100.0
(A)=5.0,(B)=0.55
(B)/(A)=0.11
【0049】
実施例及び比較例で使用した原料を下記表に示す。
【表8】
【0050】
なお、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ヤシ油脂肪酸カリウムは、ラウリン酸:NAA−122(日本油脂(株)製)、ミリスチン酸:NAA−142(日本油脂(株)製)、パルミチン酸:NAA−171(日本油脂(株)製)、ステアリン酸:NAA−174(日本油脂(株)製)、オレイン酸:NAA−34(日本油脂(株)製)、ヤシ油脂肪酸:ヤシ脂肪酸(新日本理化(株)製)と、エタノールアミン(三井化学(株)製)、ジエタノールアミン(三井化学(株)製、トリエタノールアミン(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー)、水酸化カリウム(旭硝子(株)製、液体苛性カリ)とを、それぞれ適宜組み合わせて中和させて調製した。