特許第5966651号(P5966651)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966651
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】主軸装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20160728BHJP
   B23B 19/02 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   B23Q11/00 A
   B23B19/02 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-137526(P2012-137526)
(22)【出願日】2012年6月19日
(65)【公開番号】特開2014-637(P2014-637A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】松永 茂
(72)【発明者】
【氏名】沖田 俊之
(72)【発明者】
【氏名】棚瀬 良太
【審査官】 五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−060492(JP,A)
【文献】 特開昭61−252044(JP,A)
【文献】 特開平06−008005(JP,A)
【文献】 特開2011−079078(JP,A)
【文献】 特開2011−235363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B23B 19/02
B24B 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転工具を保持して回転駆動される主軸と、
前記主軸を回転可能に支持する転がり軸受と、
前記主軸を回転可能に支持し、前記転がり軸受における減衰係数より大きな減衰係数を有する減衰付加軸受と、
を備え、
前記減衰付加軸受における減衰係数を仮想的に前記転がり軸受と同一の減衰係数とした場合に、1,500Hz以下の周波数帯域において発生する共振点を仮想低次共振点と定義し、かつ、当該仮想低次共振点におけるコンプライアンスを仮想コンプライアンスと定義し、
前記減衰付加軸受における減衰係数は、
10,000〜1,000,000 N・s/mの範囲とし、
かつ、前記仮想低次共振点における実際のコンプライアンスを、仮想コンプライアンスより小さくする範囲とし、
かつ、前記仮想低次共振点より高くかつ1,500Hz以下の周波数帯域において前記仮想低次共振点に対して新たな共振点を誘起しない範囲とする、主軸装置。
【請求項2】
回転工具を保持して回転駆動される主軸と、
前記主軸を回転可能に支持する転がり軸受と、
前記主軸を回転可能に支持し、前記転がり軸受における減衰係数より大きな減衰係数を有する減衰付加軸受と、
を備え、
前記減衰付加軸受における減衰係数を仮想的に前記転がり軸受と同一の減衰係数とした場合に、1,500Hz以上の周波数帯域において発生する共振点を仮想高次共振点と定義し、
前記減衰付加軸受における減衰係数は、
10,000〜1,000,000 N・s/mの範囲とし、
かつ、1,500Hz以上の周波数帯域において前記仮想高次共振点に対して新たな共振点を誘起しない範囲とする、主軸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に使用される主軸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、主軸の前側(工具側)に配置された前側転がり軸受と前側ハウジングとの間に中間ハウジングを介装し、減衰性を付加した静圧軸受で中間ハウジングを支承して加工中の主軸のびびり振動を抑制する主軸装置が開示されている。また、特許文献2には、主軸の前側(工具側)に配置された玉軸受に対し空気静圧軸受を併設して加工中の主軸のびびり振動を抑制する主軸装置が開示されている。また、特許文献3には、主軸の前側(工具側)に複数のラジアル磁気軸受および複数のラジアル変位センサを設け、ラジアル変位センサで検出した径方向の変位に基づいてラジアル磁気軸受の電磁石を制御し、主軸の共振を抑制する主軸装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−8005号公報
【特許文献2】特開2004−106091号公報
【特許文献3】特開2008−229806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、びびり振動をより確実に抑制することができる主軸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(請求項1)本手段に係る主軸装置は、回転工具を保持して回転駆動される主軸と、前記主軸を回転可能に支持する転がり軸受と、前記主軸を回転可能に支持し、前記転がり軸受における減衰係数より大きな減衰係数を有する減衰付加軸受と、を備える。
ここで、前記減衰付加軸受における減衰係数を仮想的に前記転がり軸受と同一の減衰係数とした場合に、1,500Hz以下の周波数帯域において発生する共振点を仮想低次共振点と定義し、かつ、当該仮想低次共振点におけるコンプライアンスを仮想コンプライアンスと定義する。
そして、前記減衰付加軸受における減衰係数は、10,000〜1,000,000 N・s/mの範囲とし、かつ、前記仮想低次共振点における実際のコンプライアンスを、仮想コンプライアンスより小さくする範囲とし、かつ、前記仮想低次共振点より高くかつ1,500Hz以下の周波数帯域において前記仮想低次共振点に対して新たな共振点を誘起しない範囲とする。
【0006】
(請求項2)本手段に係る主軸装置は、回転工具を保持して回転駆動される主軸と、前記主軸を回転可能に支持する転がり軸受と、前記主軸を回転可能に支持し、前記転がり軸受における減衰係数より大きな減衰係数を有する減衰付加軸受と、を備える。
ここで、前記減衰付加軸受における減衰係数を仮想的に前記転がり軸受と同一の減衰係数とした場合に、1,500Hz以上の周波数帯域において発生する共振点を仮想高次共振点と定義する。
そして、前記減衰付加軸受における減衰係数は、10,000〜1,000,000 N・s/mの範囲とし、かつ、1,500Hz以上の周波数帯域において前記仮想高次共振点に対して新たな共振点を誘起しない範囲とする、主軸装置。
また、前記減衰付加軸受における減衰係数は、30,000〜700,000 N・s/mの範囲とするとよい。
また、前記減衰付加軸受における減衰係数は、30,000〜100,000 N・s/mの範囲とするとよい。
【0007】
また、前記主軸は、前記転がり軸受および前記減衰付加軸受を含む複数の軸受により支持され、前記減衰付加軸受は、全ての軸受の中で最も前記回転工具側に配置されるようにしてもよい。
【0011】
また、前記減衰付加軸受における減衰係数は、前記回転工具にMAS BT-30〜BT-50またはHSK-40〜HSK-100の工具ホルダを適用したときに前記範囲としてもよい。
また、前記減衰付加軸受は、流体静圧軸受としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
(請求項1)本手段によれば、減衰付加軸受における減衰係数を10,000〜1,000,000 N・s/mの範囲とすることにより、主軸のコンプライアンスを小さくでき、結果としてびびり振動をより抑制できる。さらに、1,500Hz以下の周波数帯域における仮想低次共振点における実際のコンプライアンスを、仮想コンプライアンスより小さくすることにより、当該周波数帯域におけるびびり振動の発生を抑制できる。さらに、仮想低次共振点より高くかつ1,500Hz以下の周波数帯域において、新たな共振点を誘起しないようにすることで、減衰を付加することによる悪影響を抑制しつつ、全体としてびびり振動の発生を抑制できる。
【0013】
(請求項2)本手段によれば、減衰付加軸受における減衰係数を10,000〜1,000,000 N・s/mの範囲とすることにより、主軸のコンプライアンスを小さくでき、結果としてびびり振動をより抑制できる。さらに、1,500Hz以上の周波数帯域において、新たな共振点を誘起しないようにすることで、減衰を付加することによる悪影響を抑制しつつ、全体としてびびり振動の発生を抑制できる。
なお、減衰付加軸受における減衰係数を30,000〜700,000 N・s/mの範囲とすることにより、主軸のコンプライアンスをより確実に小さくでき、結果としてびびり振動をより確実に抑制できる。
また、減衰付加軸受における減衰係数を30,000〜100,000 N・s/mの範囲とすることにより、新たな共振点を誘起することなく、主軸のコンプライアンスをより確実に小さくでき、結果としてびびり振動をより確実に抑制できる。
【0014】
また、減衰付加軸受を最も回転工具側に配置することで、当該軸受の減衰効果をより効果的に発揮でき、結果としてびびり振動をより効果的に抑制できる。
【0016】
また、回転工具にMAS BT-30〜BT-50またはHSK-40〜HSK-100の工具ホルダを適用したときに、確実にびびり振動を抑制できる。MASは、日本工作機械工業規格(Japan Machine Tool builder's Association Standard)の略称である。
また、減衰付加軸受を流体静圧軸受とすることにより、容易にかつ確実に高い減衰を付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態における主軸装置の軸方向断面図である。
図2図1の主軸装置の解析モデルである。
図3A図1の主軸装置を構成する回転工具のホルダのBTタイプの図である。
図3B図1の主軸装置を構成する回転工具のホルダのHSKタイプの図である。
図4図2に示す解析モデルの減衰係数C1を変化させた場合における共振点のコンプライアンスの最大値の関係を示すグラフである。
図5A図2に示す解析モデル周波数特性を示し、縦軸にコンプライアンス、すなわち付与する力に対する回転工具の先端の変位量を示す。減衰係数C1が7,000、70,000、1,000,000の3種類について示す。
図5B図5Aと同様に解析モデル周波数特性を示し、減衰係数C1が1,000〜70,000の間の6種類について示す。
図5C図5Aと同様に解析モデル周波数特性を示し、減衰係数C1が70,000〜1,000,000の間の6種類について示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の主軸装置を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。主軸装置の構成について、図1を参照して説明する。図1に示すように、主軸装置は、ハウジング10と、主軸20と、モータ30と、複数の転がり軸受41〜44と、減衰付加軸受50とを備える。
【0019】
ハウジング10は、中空筒状に形成され、その中に主軸20を挿通する。主軸20は、先端側(図1の左側)に、ホルダ22に保持された状態の回転工具21を保持する。モータ30は、ハウジング10の筒内に配置されており、ハウジング10に固定されたステータ31および主軸20に固定されたロータ32を備える。
【0020】
転がり軸受41〜44は、ハウジング10に対して主軸20を回転可能に支持する。転がり軸受41〜43は、例えば玉軸受を適用し、モータ30より回転工具21側(前側)に配置される。一方、転がり軸受44は、例えばころ軸受を適用し、モータ30より回転工具21の反対側(後側)に配置される。つまり、転がり軸受41〜44は、モータ30を軸方向中央に挟むように配置される。
【0021】
減衰付加軸受50は、例えば油などの流体静圧軸受を適用し、最も回転工具21側に位置する転がり軸受41よりもさらに回転工具21側に配置される。つまり、減衰付加軸受50は、全ての軸受41〜44,50の中で、最も回転工具21側に配置される。さらに、減衰付加軸受50は、転がり軸受41〜44における減衰係数よりも大きな減衰係数を有する。この減衰係数の詳細は、後述する。なお、減衰付加軸受50は、付加する減衰係数Cに応じて、油静圧軸受、空気静圧軸受、磁気軸受など適宜変更することができる。
【0022】
次に、図2を参照して、主軸装置の解析モデルについて説明する。図2に示すように、軸受は、ばね定数Kのばね成分と、減衰係数Cの減衰成分とにより表すことができる。ここで、減衰付加軸受50、転がり軸受41〜44のそれぞれのばね定数および減衰係数を、K1〜K5,C1〜C5と表す。
【0023】
そして、K1〜K5,C1〜C5を適宜付与した状態において、回転工具21の先端に対して主軸20の径方向への力を付与する。そうすると、主軸20は、二点鎖線となるように変形する。このときの回転工具21の先端の変位量を算出する。
【0024】
ここで、主軸20の先端側は、ホルダ22に相当する部分をモデル化した形状としている。このホルダ22は、図3Aに示すBTタイプのホルダの場合にはBT-30〜BT-50、または、図3Bに示すHSKタイプのホルダの場合にはHSK-40〜HSK-100を対象とし、モデル変更可能としている。つまり、解析モデルは、上記ホルダを適用できる主軸20の体格を意味する。
【0025】
解析結果について、図4を参照して説明する。図4は、ホルダ22にBT-40を適用したcase1、ホルダ22にBT-40を適用したcase2、ホルダ22にBT-50を適用したcase3、ホルダ22にHSKA-40を適用したcase4の4種類についての解析結果である。ここで、case1とcase2は、工具径/工具長を異なる値とした。また、case3は、case1に対して工具径を異なる値とした。このとき、解析モデルの減衰付加軸受50の減衰係数C1のみを適宜変更し、他の減衰係数C2〜C5は7,000N・s/mとした。また、ばね定数K1〜K5は同一とした。
【0026】
ここで、図4における領域Aは、転がり軸受のみにより主軸20を支持する場合の減衰係数の範囲を示し、およそ2,000〜7,000N・s/mの範囲である。つまり、他の減衰係数C2〜C5は、転がり軸受の減衰係数の相当値としている。また、図4における領域Bは、油静圧軸受のみにより主軸20を支持する場合の減衰係数の範囲を示し、およそ1,150,000〜7,000,000N・s/mの範囲である。
【0027】
図4に示すように、転がり軸受41〜44に加えて減衰付加軸受50により主軸20を支持することで、減衰係数を、転がり軸受のみの場合(領域A)と油静圧軸受のみの場合(領域B)の間に設定することができる。特に、減衰付加軸受50の減衰係数C1を10,000〜1,000,000N・s/mの範囲とすることで、共振点のコンプライアンスの最大値を極小値付近にすることができる。
【0028】
ここで、共振点のコンプライアンスの最大値が大きいほど、当該共振点付近においてびびりが発生しやすい状態となる。そこで、上記のように減衰係数C1を設定することにより
、共振点のコンプライアンスの最大値を小さくすることで、びびりの発生を抑制できる。特に、減衰付加軸受50の減衰係数C1を30,000〜70,000N・s/mの範囲にすることで、上記のケースの全てにおいて、極小値付近の範囲とすることができる。
【0029】
次に、横軸に周波数とし、縦軸にコンプライアンスとした解析結果のグラフである図5A図5Cを参照して説明する。当該解析は、ホルダ22にBT-40を適用したcase1とし、減衰係数C1を、1,000、7,000、10,000、30,000、50,000、70,000、100,000、300,000、500,000、700,000、1,000,000N・s/mに変化させた。
【0030】
図5Aには、見やすくするために、減衰係数C1を7,000、70,000、1,000,000N・s/mの3種類について図示している。図5Aによれば、減衰係数C1を7,000 N・s/mとした場合、すなわち転がり軸受の減衰係数と同一とした場合には、以下のようになっている。1,500Hz以下の周波数帯域において1次、2次、3次の共振点(図5Aの領域C)が存在する。これらの共振点を低次共振点(本発明における「仮想低次共振点」に相当する)を称する。低次共振点におけるコンプライアンスは、1.0E-06m/N程度である。さらに、全体として最も大きなコンプライアンスを示す共振点(図5Aの領域E)が1,500Hz以上の範囲に存在する。この共振点を高次共振点(本発明における「仮想高次共振点」に相当する)を称する。なお、図5Aにおいては、最も大きなコンプライアンスを示す共振点(領域E)は、1,500〜2,000Hzの範囲に存在するが、工具条件や仕様によっては、2,000Hz以上の範囲に当該共振点が存在する場合がある。
【0031】
ここで、びびりの発生を抑制するためには、コンプライアンスの最大値を小さくすることが効果的である。さらには、複数存在する共振点のコンプライアンスを小さくすることにより、幅広い周波数帯においてびびりの発生を抑制できるようになる。さらに、共振点の数が少ないほど、びびりの発生の抑制に効果的である。
【0032】
図5Aにおいて、減衰係数C1を1,000,000 N・s/mとした場合には、以下のようになっている。1,500Hz以下の周波数帯域において、低次共振点(図5Aの領域C)のコンプライアンスが小さくなっているのに対して、1,000Hz付近に新たな共振点を誘起している(領域D)。一方、1,500Hz以上の周波数帯域において、高次共振点(図5Aの領域E)のコンプライアンスは、減衰係数C1を7,000 N・s/mとした場合に比べて、小さくなっている。ただし、2,000Hz付近において、新たな共振点が誘起されている(領域F)。全体として見ると、減衰係数C1を1,000,000 N・s/mとした場合には、7,000 N・s/mとした場合に対して、コンプライアンスの最大値が小さくなっている一方、新たな共振点として、1,000Hz付近と2,000Hz付近とに誘起している(領域D,F)。
【0033】
図5Aにおいて、減衰係数C1を70,000 N・s/mとした場合には、以下のようになっている。1,500Hz以下の周波数帯域において、減衰係数C1を7,000 N・s/mとした場合に比べて、低次共振点(図5Aの領域C)のコンプライアンスが小さくなっている。また、1,500Hz以下の周波数帯において、領域Dのような新たな共振点が誘起されていることもない。さらに、1,500 Hz以上の周波数帯域において、高次共振点(図5の領域E)のコンプライアンスは、減衰係数C1を7,000 N・s/mとした場合に比べて、小さくなっている。また、1,500Hz以上の周波数帯において、領域Fのような新たな共振点が誘起されていることもない。
【0034】
次に、図5Bを参照して、減衰係数C1を1,000〜70,000 N・s/mの範囲について詳細に検討する。減衰係数C1を1,000 N・s/mとすると、7,000 N・s/mとした場合に比べて、低次共振点および高次共振点のコンプライアンスが大きくなる。
【0035】
一方、減衰係数C1を7,000 N・s/mから70,000 N・s/mへ大きくするにつれて、低次共振点および高次共振点のコンプライアンスが小さくなる。さらに、減衰係数C1を7,000〜70,000 N・s/mの範囲とした場合において、1,500Hz以下の誘起共振点(図5Aの領域D)および1,500Hz以上の誘起共振点(図5Aの領域F)は、どちらも発生しない。
【0036】
次に、図5Cを参照して、減衰係数C1を70,000〜1,000,000 N・s/mの範囲について詳細に検討する。減衰係数C1を7,000 〜1,000,000 N・s/mの範囲において、低次共振点(図5Aの領域C)および高次共振点(図5Aの領域E)のコンプライアンスは、それほど変化しない。
【0037】
減衰係数C1を100,000 N・s/mとした場合には、70,000 N・s/mの場合に比べると、1,000Hz付近および2,000Hz付近において、コンプライアンスが大きくなっているが、共振点の発生はない。
【0038】
一方、減衰係数C1を100,000 N・s/mからさらに大きくすると、1,500Hz以下において低次共振点以外の新たな誘起共振点(図5Aの領域D)および1,500Hz以上の高次共振点以外の新たな誘起共振点(図5Aの領域F)が発生している。そして、減衰係数C1を100,000 N・s/mからさらに大きくするにつれて、それらのコンプライアンスが大きくなっている。
【0039】
図5A図5Cによれば、減衰係数C1を10,000〜1,000,000 N・s/mの範囲とすることで、コンプライアンスの最大値を小さくすることができる。さらに、当該範囲により、低次共振点(図5Aの領域C)および高次共振点(図5Aの領域E)のコンプライアンスを小さくできる。
【0040】
さらに、減衰係数C1を30,000 N・s/m以上とすることで、高次共振点(図5Aの領域E)のコンプライアンスを極めて小さくすることができる。すなわち、上記範囲により、高次共振点のコンプライアンスを、減衰係数C1を最適な70,000 N・s/mとした場合とほぼ同程度とすることができる。
【0041】
さらに、減衰係数C1を100,000 N・s/m以下とすることで、1,500Hz以下における新たな誘起共振点(図5Aの領域D)および1,500Hz以上における誘起共振点(図5Aの領域F)を発生させないようにできる。
【符号の説明】
【0042】
41〜44:転がり軸受、 20:主軸、 21:回転工具、 22:ホルダ、 50:減衰付加軸受
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C