(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通行注意地点特定手段は、前記通行困難地点特定手段によって前記通行困難地点に特定された地点と同一地点であって進行方向の異なる地点を前記通行注意地点として特定することを特徴とする請求項2に記載の路面状態特定システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に記載された技術では、スリップした車両の台数が所定数を越えた地点では、一律にスリップし易い路面状態の地点として特定する。しかしながら、スリップし易いと特定される地点においても、実際にはスリップの生じ易さの程度に大きな差があり、運転手はスリップし易さの程度によって走行時に注意する内容も異なる。しかし、上記特許文献1に記載された技術では、スリップし易い路面状態の地点については特定することが可能であるが、その地点がどの程度スリップの生じ易い地点であるのかを具体的に特定することは出来なかった。
【0006】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、車両がスリップする虞のあるスリップ地点に加えて、該スリップ地点におけるスリップのし易さの程度についても特定することを可能にした路面状態特定システム、路面状態特定装置、路面状態特定方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る路面状態特定システム(1)は、
道路上を走行する各車両に搭載された車載器と、各車両から情報の収集を行うサーバとを有する路面状態特定システムであって、前記サーバは、各車両のスリップ履歴に関する情報をスリップ履歴情報として取得するスリップ履歴取得手段(
11)と、前記スリップ履歴取得手段によって取得した各車両の前記スリップ履歴情報を統計することによって、同一車両が複数回スリップせず、且つ複数の車両がスリップしたスリップ地点を通行注意地点として特定する通行注意地点特定手段(
11)と、前記スリップ履歴取得手段によって取得した各車両の前記スリップ履歴情報を統計することによって、同一車両が複数回スリップしたスリップ地点を前記通行注意地点よりもスリップし易い通行困難地点として特定する通行困難地点特定手段(
11)と、前記通行注意地点に関する情報と前記通行困難地点に関する情報とを前記車両に配信する情報配信手段(
11)と、
を有し、前記車載器は、前記情報配信手段によって前記サーバから前記情報が配信された場合に、前記通行注意地点に関する情報と前記通行困難地点に関する情報とを異なる態様で案内する情報案内手段(
33)を有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る路面状態特定システム(1)は、請求項1に記載の路面状態特定システムであって、前記スリップ履歴取得手段(
11)は、前記車両(3)が前記スリップ地点でスリップした際の前記車両の進行方向についても前記スリップ履歴情報として取得し、前記通行注意地点特定手段(
11)は、進行方向毎に前記通行注意地点を特定し、前記通行困難地点特定手段(
11)は、進行方向毎に前記通行困難地点を特定することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る路面状態特定システム(1)は、請求項2に記載の路面状態特定システムであって、前記通行注意地点特定手段(
11)は、前記通行困難地点特定手段(
11)によって前記通行困難地点に特定された地点と同一地点であって進行方向の異なる地点を前記通行注意地点として特定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る路面状態特定システム(1)は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の路面状態特定システムであって、前記スリップ履歴取得手段(
11)は、前記車両(3)が前記スリップ地点でスリップする直前又は直後の車速についても前記スリップ履歴情報として取得し、前記通行困難地点特定手段(
11)は、同一車両が直前又は直後の車速が0の状態で複数回繰り返しスリップしたスリップ地点を前記通行困難地点として特定することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る路面状態特定装置(
2)は、
道路上を走行する各車両に搭載された車載器と通信可能に接続され、各車両から情報の収集を行う路面状態特定装置であって、各車両のスリップ履歴に関する情報をスリップ履歴情報として取得するスリップ履歴取得手段(
11)と、前記スリップ履歴取得手段によって取得した各車両の前記スリップ履歴情報を統計することによって、同一車両が複数回スリップせず、且つ複数の車両がスリップしたスリップ地点を通行注意地点として特定する通行注意地点特定手段(
11)と、前記スリップ履歴取得手段によって取得した各車両の前記スリップ履歴情報を統計することによって、同一車両が複数回スリップしたスリップ地点を前記通行注意地点よりもスリップし易い通行困難地点として特定する通行困難地点特定手段(
11)と、前記通行注意地点に関する情報と前記通行困難地点に関する情報とを
前記車両で案内する為の案内情報として前記車両に配信する情報配信手段(
11)と
、を有することを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る路面状態特定方法は、
スリップ履歴取得手段が、道路上を走行する複数の車両(3)について各車両のスリップ履歴に関する情報をスリップ履歴情報として取得す
るステップと、
通行注意地点特定手段が、前記スリップ履歴取得
手段によって取得した各車両の前記スリップ履歴情報を統計することによって、同一車両が複数回スリップせず、且つ複数の車両がスリップしたスリップ地点を通行注意地点として特定す
るステップと、
通行困難地点特定手段が、前記スリップ履歴取得
手段によって取得した各車両の前記スリップ履歴情報を統計することによって、同一車両が複数回スリップしたスリップ地点を前記通行注意地点よりもスリップし易い通行困難地点として特定す
るステップと、
情報配信手段が、前記通行注意地点に関する情報と前記通行困難地点に関する情報とを前記車両に配信す
るステップと、
情報案内手段が、配信された前記車両において、前記通行注意地点に関する情報と前記通行困難地点に関する情報とを異なる態様で案内す
るステップと、を有することを特徴とする。
【0013】
更に、請求項7に係るコンピュータプログラムは、
道路上を走行する各車両に搭載された車載器と通信可能に接続され、各車両から情報の収集を行う路面状態特定装置を、各車両のスリップ履歴に関する情報をスリップ履歴情報として取得するスリップ履歴取得
手段と、前記スリップ履歴取得
手段によって取得した各車両の前記スリップ履歴情報を統計することによって、同一車両が複数回スリップせず、且つ複数の車両がスリップしたスリップ地点を通行注意地点として特定する通行注意地点特定
手段と、前記スリップ履歴取得
手段によって取得した各車両の前記スリップ履歴情報を統計することによって、同一車両が複数回スリップしたスリップ地点を前記通行注意地点よりもスリップし易い通行困難地点として特定する通行困難地点特定
手段と、前記通行注意地点に関する情報と前記通行困難地点に関する情報とを
前記車両で案内する為の案内情報として前記車両に配信する情報配信
手段と、
して機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
前記構成を有する請求項1に記載の路面状態特定システムによれば、道路上を走行する各車両から取得した車両のスリップ履歴に基づいて、車両がスリップする虞のあるスリップ地点を、スリップのし易さを考慮して“通行を注意すべき通行注意地点”と“通行注意地点よりもスリップし易く通行が困難な通行困難地点”とに区分して特定し、ユーザに案内することが可能となる。その結果、ユーザは、車両がスリップする虞のあるスリップ地点について、スリップのし易さの程度についても併せて把握することが可能となり、スリップを避ける為のより効率の良い運転を行うことが可能となる。
【0015】
また、請求項2に記載の路面状態特定システムによれば、進行方向毎に通行注意地点と通行困難地点とを特定するので、例えば複数の車線から構成される道路において、一方の進行方向の車線にのみスリップし易い事象が生じている場合において、より正確に通行注意地点と通行困難地点とを特定し、案内することが可能となる。
【0016】
また、請求項3に記載の路面状態特定システムによれば、通行困難地点に特定された地点と同一地点であって進行方向の異なる地点を通行注意地点として特定するので、各車両から取得するスリップ履歴情報が不足している場合であっても、スリップし易いと予測される地点を適切に通行注意地点として特定することが可能となる。
【0017】
また、請求項4に記載の路面状態特定システムによれば、同一車両が直前又は直後の車速が0の状態で複数回繰り返しスリップしたスリップ地点を通行困難地点として特定するので、坂道の路面が凍結している地点等の特に車両がスリップし易いと予測される地点を、適切に通行困難地点として特定することが可能となる。
【0018】
また、請求項5に記載の路面状態特定装置によれば、道路上を走行する各車両から取得した車両のスリップ履歴に基づいて、車両がスリップする虞のあるスリップ地点を、スリップのし易さを考慮して“通行を注意すべき通行注意地点”と“通行注意地点よりもスリップし易く通行が困難な通行困難地点”とに区分して特定し、
車両に配信することが可能となる。その結果、ユーザは、車両がスリップする虞のあるスリップ地点について、スリップのし易さの程度についても併せて把握することが可能となり、スリップを避ける為のより効率の良い運転を行うことが可能となる。
【0019】
また、請求項6に記載の路面状態特定方法によれば、道路上を走行する各車両から取得した車両のスリップ履歴に基づいて、車両がスリップする虞のあるスリップ地点を、スリップのし易さを考慮して“通行を注意すべき通行注意地点”と“通行注意地点よりもスリップし易く通行が困難な通行困難地点”とに区分して特定し、ユーザに案内することが可能となる。その結果、ユーザは、車両がスリップする虞のあるスリップ地点について、スリップのし易さの程度についても併せて把握することが可能となり、スリップを避ける為のより効率の良い運転を行うことが可能となる。
【0020】
更に、請求項7に記載のコンピュータプログラムによれば、道路上を走行する各車両から取得した車両のスリップ履歴に基づいて、車両がスリップする虞のあるスリップ地点を、スリップのし易さを考慮して“通行を注意すべき通行注意地点”と“通行注意地点よりもスリップし易く通行が困難な通行困難地点”とに区分して特定させ、
車両に配信させることが可能となる。その結果、ユーザは、車両がスリップする虞のあるスリップ地点について、スリップのし易さの程度についても併せて把握することが可能となり、スリップを避ける為のより効率の良い運転を行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る路面状態特定システムについて具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係る路面状態特定システム1の概略構成について
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は本実施形態に係る路面状態特定システム1を示した概略構成図である。
図2は本実施形態に係る路面状態特定システム1の構成を示したブロック図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る路面状態特定システム1は、ナビゲーション装置2を搭載した各車両3と、各車両3からプローブ情報を収集し、収集したプローブ情報に基づく交通情報等の作成・配信を行うプローブセンタ4とから基本的に構成されている。
【0024】
車両3は全国の各道路を走行する車両であり、プローブカーとして後述のプローブセンタ4とともにプローブカーシステムを構成する。ここで、プローブカーシステムとは、車両をセンサとして情報を収集するシステムである。具体的には、車両3が速度データをはじめ、ステアリング操作やシフト位置等の各システムの作動状況をGPSの位置情報とともに予め車両3に搭載された携帯電話機やDCM等の車両用の通信モジュール(以下、単に通信モジュールという)を介してプローブセンタ4に送信し、センタ側でその収集データを様々な情報として再利用するシステムをいう。
【0025】
また、プローブセンタ4は、全国各地を走行する各車両3から送信された現在時刻や走行情報等を含むプローブ情報を収集して蓄積するとともに、蓄積されたプローブ情報から渋滞情報等の交通情報や車両3がスリップする虞のあるスリップ地点に関するスリップ地点情報等の配信情報(プローブ統計情報)を生成し、生成された配信情報を車両3に対して配信する情報配信センタである。また、本実施形態に係る路面状態特定システム1では、特にプローブ情報として、車両3がスリップしたことを検出した際のスリップ地点や車両の挙動を示す情報(具体的にはスリップした地点の位置座標、スリップ直前の車速、スリップ直後の車速、スリップした際の車両の進行方向等のスリップ履歴に関する情報であり、以下、スリップ履歴情報という)についても取得する。そして、プローブセンタ4は、取得したスリップ履歴情報に基づいて、車両3がスリップする虞のあるスリップ地点を特定し、上記したスリップ地点情報を生成する。
【0026】
また、車両3にはナビゲーション装置2が設置されている。ナビゲーション装置2は格納する地図データに基づいて自車位置周辺の地図を表示したり、地図画像上において車両の現在位置を表示したり、設定された目的地までの経路の探索及び案内を行う車載機である。また、ナビゲーション装置2はプローブセンタ4から受信した渋滞情報等の交通情報やスリップ地点情報を利用者に対して案内することも行う。尚、ナビゲーション装置2の詳細については後述する。
【0027】
また、車両3には、ブレーキ操作において車輪のロックによる滑走発生を低減する装置であるABS(Antilock Brake System)、発進・加速時のタイヤの空転を防止する装置であるTRC(Traction Control)、車体の横滑りを防止する装置であるVSC(Vehicle Stability Control)等の各種車両制御装置が設置されている。そして、本実施形態の路面状態特定システム1では、上記ABS、TRC、VSCの動作を検出することによって、車両3がスリップしたことを検出する。尚、ABS、TRC、VSCの詳細については既に公知であるので省略する。
【0028】
続いて、路面状態特定システム1を構成するプローブセンタ4の構成について
図2を用いてより詳細に説明する。
【0029】
プローブセンタ4は、
図2に示すようにサーバ11と、サーバ11に接続された情報記録手段としてのプローブ情報DB12と、プローブ統計情報DB13と、センタ通信装置14とから基本的に構成されている。
【0030】
サーバ11は、プローブセンタ4における各種制御を行う電子制御ユニットである。そして、演算装置及び制御装置としてのCPU21、並びにCPU21が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるRAM22、制御用のプログラムのほか、後述のプローブ情報収集処理プログラム(
図6)、路面状態特定処理プログラム(
図7)等が記憶されたROM23等の内部記憶装置を備えている。尚、サーバ11は、ナビゲーション装置2のECUとともに処理アルゴリズムとしての各種手段を構成する。例えば、スリップ履歴取得手段は、道路上を走行する複数の車両について各車両のスリップ履歴に関する情報をスリップ履歴情報として取得する。通行注意地点特定手段は、スリップ履歴取得手段によって取得した各車両のスリップ履歴情報を統計することによって、同一車両が複数回スリップせず、且つ複数の車両がスリップしたスリップ地点を通行注意地点として特定する。通行困難地点特定手段は、スリップ履歴取得手段によって取得した各車両のスリップ履歴情報を統計することによって、同一車両が複数回スリップしたスリップ地点を通行注意地点よりもスリップし易い通行困難地点として特定する。情報配信手段は、通行注意地点に関する情報と通行困難地点に関する情報とを車両に配信する。情報案内手段は、配信された車両において、通行注意地点に関する情報と通行困難地点に関する情報とを異なる態様で案内する。
【0031】
また、プローブ情報DB12は、全国を走行する各車両3から収集したプローブ情報を累積的に記憶する記憶手段である。尚、本実施形態においては、車両3から収集されるプローブ情報として、車両3がスリップを検出した際のスリップ地点や車両の挙動等のスリップ履歴(具体的には(a)スリップした地点の位置座標、(b)スリップ直前の車速、(c)スリップした際の車両の進行方向等)に関する情報が含まれる。尚、“スリップ直前の車速”に代えて“スリップ直後の車速”を用いても良い。
【0032】
以下に、
図3を用いてプローブ情報DB12に記憶されるプローブ情報についてより詳細に説明する。
図3はプローブ情報DB12に記憶されるプローブ情報の一例を示した図である。
【0033】
図3に示すように、プローブ情報は、車両3においてスリップを検出した時刻と、送信元の車両を識別する車両IDと、上記(a)〜(c)に関する情報等が含まれる。例えば、
図3に示すプローブ情報は、10:00:00にID“A”の車両3がID“100001”のリンクの上り方向を時速40km/hで走行中に、座標(x1,y1)でスリップを検出したことが記憶されている。同様にして、他のプローブ情報についても記憶されている。尚、“スリップ直前の車速”や“リンクID”に関する情報はプローブ情報として収集しない構成としても良い。
【0034】
そして、プローブセンタ4は、プローブ情報DB12に記憶されるプローブ情報を統計することによって、車両3がスリップする虞のあるスリップ地点を特定する。具体的には、同一車両が複数回スリップせず、且つ複数の車両がスリップしたスリップ地点を通行注意地点として特定し、同一車両が複数回スリップしたスリップ地点を通行注意地点よりもスリップし易い通行困難地点として特定する。そして、特定された通行注意地点及び通行困難地点に関する情報をスリップ地点情報としてプローブ統計情報DB13に記憶する。
【0035】
次に、
図4を用いてプローブセンタ4によって作成され、プローブ統計情報DB13に記憶されるスリップ地点情報について詳細に説明する。
図4はプローブ統計情報DB13に記憶されるスリップ地点情報の一例を示した図である。
【0036】
図4に示すようにスリップ地点情報は、特定された通行注意地点又は通行困難地点のいずれかを含むリンクのリンクIDと、そのリンクにおいて特定された通行注意地点又は通行困難地点の位置する進行方向及び位置座標と、通行注意地点か通行困難地点かを特定する属性情報とから構成される。例えば、
図4に示すスリップ地点情報では、リンクID『100001』のリンクの上り方向の地点(X1、Y1)において、“通行困難地点”に特定されるスリップ地点があることを示している。また同地点の下り方向において“通行注意地点”に特定されるスリップ地点が有ることを示している。同様にして、他のスリップ地点情報についても記憶されている。
【0037】
また、センタ通信装置14は、車両3やVICS(登録商標)センタとネットワーク15を介して通信を行う為の通信装置である。本実施形態では、センタ通信装置14を介してプローブ情報や配信情報を各車両3との間で送受信する。
【0038】
次に、車両3に搭載されたナビゲーション装置2の概略構成について
図5を用いて説明する。
図5は本実施形態に係るナビゲーション装置2を示したブロック図である。
【0039】
図5に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置2は、ナビゲーション装置2が搭載された車両3の現在位置を検出する現在位置検出部31と、各種のデータが記録されたデータ記録部32と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU33と、ユーザからの操作を受け付ける操作部34と、ユーザに対して車両周辺の地図や施設の関する施設情報を表示する液晶ディスプレイ35と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ36と、記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ37と、プローブセンタ4やVICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール38と、から構成されている。また、ナビゲーション装置2はCAN等の車載ネットワークを介して、ナビゲーション装置2の搭載された車両3に対する各種車両制御を行うABS、TRC、VSCと通信可能に接続されている。
【0040】
以下に、ナビゲーション装置2を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部31は、GPS41、車速センサ42、ステアリングセンサ43、ジャイロセンサ44等からなり、現在の車両の位置、方位、車両の走行速度、現在時刻等を検出することが可能となっている。ここで、特に車速センサ42は、車両の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両の駆動輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU33に出力する。そして、ナビゲーションECU33は発生するパルスを計数することにより駆動輪の回転速度や移動距離を算出する。尚、上記4種類のセンサをナビゲーション装置2が全て備える必要はなく、これらの内の1又は複数種類のセンサのみをナビゲーション装置2が備える構成としても良い。
【0041】
また、データ記録部32は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB45、配信情報DB46及び所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。尚、データ記録部32をハードディスクの代わりにメモリーカードやCDやDVD等の光ディスクにより構成しても良い。
【0042】
ここで、地図情報DB45は、例えば、道路(リンク)に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、各分岐点に関する分岐点データ、施設等の地点に関する地点データ、地図を表示するための地図表示データ、経路を探索するための探索データ、地点を検索するための検索データ等が記憶された記憶手段である。
【0043】
また、配信情報DB46は、プローブセンタ4から配信される渋滞情報やスリップ地点情報(
図4参照)等の配信情報が記憶された記憶手段である。
【0044】
そして、ナビゲーションECU33は、後述のように地図情報DB45に記憶された地図情報に基づいて、車両周辺の道路や施設を液晶ディスプレイ35に表示するとともに、案内経路が設定されている場合には案内経路に沿った車両の走行の案内を行う。更に、配信情報DB46に記憶された配信情報に基づいて、車両周辺にある渋滞やスリップ地点(通行注意地点、通行困難地点)についても案内する。
【0045】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)33は、ナビゲーション装置2の全体の制御を行う電子制御ユニットであり、演算装置及び制御装置としてのCPU51、並びにCPU51が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM52、制御用のプログラムのほか、後述のプローブ情報収集処理プログラム(
図6)やスリップ地点案内処理プログラム(
図11)等が記録されたROM53、ROM53から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ54等の内部記憶装置を備えている。
【0046】
操作部34は、走行開始地点としての出発地及び走行終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。そして、ナビゲーションECU33は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、操作部34は液晶ディスプレイ35の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。また、マイクと音声認識装置によって構成することもできる。
【0047】
また、液晶ディスプレイ35には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、出発地から目的地までの案内経路、案内経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。特に本実施形態では、スリップ地点である通行注意地点又は通行困難地点が車両3の進行方向前方の所定距離以内(例えば700m)に接近した場合には、通行注意地点や通行困難地点をユーザに報知する為の案内表示を出力する。更に、後述のように通行注意地点と通行困難地点とでは異なる態様の案内表示を出力する。
【0048】
また、スピーカ36は、ナビゲーションECU33からの指示に基づいて案内経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。特に本実施形態では、スリップ地点である通行注意地点又は通行困難地点が車両3の進行方向前方の所定距離以内(例えば700m)に接近した場合には、通行注意地点や通行困難地点をユーザに報知する為の案内音声を出力する。更に、後述のように通行注意地点と通行困難地点とでは異なる態様の案内音声を出力する。
【0049】
また、DVDドライブ37は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて音楽や映像の再生、地図情報DB45の更新等が行われる。
【0050】
また、通信モジュール38は、交通情報センタ、例えば、VICS(登録商標)センタやプローブセンタ4等から送信された渋滞情報、規制情報、交通事故情報等の各情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。また、プローブ情報や配信情報をプローブセンタ4との間で送受信するのにも用いられる。
【0051】
続いて、前記構成を有する路面状態特定システム1を構成するナビゲーション装置2及びプローブセンタ4において実行するプローブ情報収集処理プログラムについて
図6に基づき説明する。
図6は本実施形態に係るプローブ情報収集処理プログラムのフローチャートである。ここで、プローブ情報収集処理プログラムは車両3のACCがONされた後に所定間隔で実行され、車両3がスリップしたことを検出した際のスリップ地点や車両の挙動を示すスリップ履歴情報をプローブ情報としてプローブセンタ4へと送信するプログラムである。尚、以下の
図6、
図7及び
図11にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーションECU33が備えているRAM52やROM53又はサーバ11が備えているRAM22やROM23等に記憶されており、CPU51又はCPU21により実行される。
【0052】
先ず、ナビゲーション装置2において実行されるプローブ情報収集処理プログラムについて説明する。
ステップ(以下、Sと略記する)1においてCPU51は、車両3に搭載されたABS、TRC、VSCから出力される動作信号に基づいて、ABS、TRC、VSCの動作状態を取得する。
【0053】
次に、S2においてCPU51は、前記S1で取得したABS、TRC、VSCの動作状態に基づいて、車両3がスリップしたか否か判定する。
【0054】
そして、車両3がスリップしたと判定した場合(S2:YES)には、S3へと移行する。それに対して、車両3がスリップしていないと判定した場合(S2:NO)には、当該プローブ情報収集処理プログラムを終了する。
【0055】
S3においてCPU51は、車両3がスリップしたスリップ地点の位置を取得する。また、スリップ地点が含まれるリンクのリンク番号についても取得される。尚、スリップ地点の位置は、現在位置検出部31によって検出した車両の現在位置に基づいて特定される。更に、車両の現在位置は、高精度ロケーション技術を用いて詳細に特定することが望ましい。ここで、高精度ロケーション技術とは、車両後方のカメラから取り込んだ白線や路面ペイント情報を画像認識により検出し、更に、白線や路面ペイント情報を予め記憶した地図情報DBと照合することにより、走行車線や高精度な車両位置を検出可能にする技術である。尚、高精度ロケーション技術の詳細については既に公知であるので省略する。
【0056】
次に、S4においてCPU51は、スリップした際の自車両の挙動を特定する車両情報を取得する。ここで、前記S4で取得される車両情報としては、自車の進行方向、車速に関する情報である。尚、自車方位についてはステアリングセンサ43やジャイロセンサ44を用いて検出する。また、車速については車速センサ42を用いて検出する。
【0057】
続いて、S5においてCPU51は、前記S3で取得したスリップ地点の位置と前記S4で取得した車両情報とをプローブセンタ4へとプローブ情報として送信する。具体的には、“スリップを検出した時刻”と、“自車を識別する車両ID”と、“スリップした地点の位置座標”と、“スリップ直前の車速”と、“スリップした際の車両の進行方向”を送信する。尚、“スリップ直前の車速”に代えて“スリップ直後の車速”を送信しても良い。その後、当該プローブ情報収集処理プログラムを終了する。
【0058】
次に、プローブセンタ4において実行されるプローブ情報収集処理プログラムについて説明する。
先ず、S11においてCPU21は、全国を走行する各車両3からプローブ情報の送信があるか否か判定する。
【0059】
そして、プローブ情報の送信があると判定された場合(S11:YES)には、送信されるプローブ情報を受信する(S12)。そして、CPU21は受信したプローブ情報をプローブ情報DB12へと累積的に格納する(S13)。
【0060】
一方、プローブ情報の送信がないと判定された場合(S11:NO)には、当該プローブ情報収集処理プログラムを終了する。尚、前記S12で受信するプローブ情報は、車両3のスリップ履歴に関する情報であり、“スリップを検出した時刻”と、“送信元の車両を識別する車両ID”と、“スリップした地点の位置座標”と、“スリップ直前の車速”と、“スリップした際の車両の進行方向”等がある(
図3参照)。
【0061】
次に、路面状態特定システム1を構成するプローブセンタ4において実行する路面状態特定処理プログラムについて
図7に基づき説明する。
図7は本実施形態に係る路面状態特定処理プログラムのフローチャートである。ここで、路面状態特定処理プログラムは、前回プログラムを実行した時から所定期間(例えば1ヶ月)経過後に実行され、各車両3から送信されたプローブ情報に基づいて、車両3がスリップする虞のあるスリップ地点を特定するプログラムである。
【0062】
以下の、S21〜S24の処理はプローブ情報DB12に格納されたプローブ情報単位でループして実行し、プローブ情報DB12に格納された全てのプローブ情報に対する処理が終了するまで繰り返し行う。
【0063】
先ず、S21でCPU21は、処理対象のプローブ情報が、同一地点且つ同一進行方向で車両3が複数回スリップしたスリップ地点を示すプローブ情報か否かを、処理対象のプローブ情報に加えてプローブ情報DB12に格納された他のプローブ情報についても参照して判定する。
【0064】
そして、同一地点且つ同一進行方向で車両3が複数回スリップしたスリップ地点を示すプローブ情報であると判定された場合(S21:YES)には、S22へと移行する。それに対して、同一地点且つ同一進行方向で車両3が複数回スリップしたスリップ地点を示すプローブ情報でないと判定された場合(S21:NO)には、処理対象となるプローブ情報を変更した後にS21以降の処理を再度実行する。
【0065】
S22においてCPU21は、処理対象のプローブ情報が、同一地点且つ同一進行方向で、且つ同一車両3が複数回スリップしたスリップ地点を示すプローブ情報か否かを判定する。
【0066】
そして、同一地点且つ同一進行方向で、且つ同一車両3が複数回スリップしたスリップ地点を示すプローブ情報であると判定された場合(S22:YES)には、S23へと移行する。それに対して、同一車両3ではなく異なる複数の車両3が同一地点且つ同一進行方向で複数回スリップしたスリップ地点を示すプローブ情報であると判定された場合(S22:NO)には、S24へと移行する。
【0067】
S23においてCPU21は、処理対象のプローブ情報が示すスリップ地点を“通行困難地点”に特定する。
ここで、同一地点且つ同一進行方向で、且つ同一車両3が複数回スリップしたスリップ地点としては例えば以下のような地点がある。
(A)
図8に示すように過去にスリップを経験している車両3が、その後に再度同一の道路を走行した際に、同一地点でスリップした地点。
(B)
図9に示すように同一車両3の発進時(即ち、スリップ直前の車速が0)に繰り返しスリップした地点。
【0068】
上記(A)のように過去にスリップを経験しているにもかかわらず、同一の車両3が再度同一地点でスリップしている地点は、注意して走行したにもかかわらずスリップする虞のある地点であり、非常にスリップし易く通行が困難な地点であると認定できる。従って、該スリップ地点は後述の“通行注意地点”よりもスリップし易い“通行困難地点”として特定するのが望ましい。
【0069】
一方、上記(B)のように、発進時等に車両3が繰り返しスリップする地点としては、例えば坂道において路面が凍結している地点が考えられ、そのような地点は非常にスリップし易く通行が困難な地点であると認定できる。従って、該スリップ地点についても後述の“通行注意地点”よりもスリップし易い“通行困難地点”として特定するのが望ましい。また、車両3が繰り返しスリップする地点として、スリップ直前の車速が0という条件に代えてスリップ直後の車速が0という条件でも同様の結果が得られる。
【0070】
尚、上記(A)と(B)の地点については異なるスリップ地点として区分して特定しても良い。その場合には、プローブ情報に含まれるスリップ直前(又はスリップ直後)の車速、によって(A)と(B)の地点を区分することが可能である。なお、スリップ直前(直後)の車速とはスリップ判定された時点より前(後)の所定期間の車速であり、例えばスリップ判定された時点の前(後)5秒間の車速が0であればスリップ直前(直後)の車速が0であるとする。
【0071】
一方、S24においてCPU21は、処理対象のプローブ情報が示すスリップ地点を“通行注意地点”に特定する。
ここで、同一車両3ではなく異なる複数の車両3が同一地点且つ同一進行方向で複数回スリップしたスリップ地点としては例えば以下のような地点がある。
(C)複数の車両3がスリップしているが、
図10に示すように過去にスリップを経験している車両3は、その後に再度同一の道路を走行した際にスリップしない地点。
【0072】
上記(C)のように過去にスリップを経験した車両がその後にスリップしない地点は、通常走行時ではスリップする虞があるが注意して走行することによってスリップを回避できる地点であり、スリップし易く通行に注意が必要な地点であると認定できる。従って、該スリップ地点は“通行困難地点”よりもスリップし難い“通行注意地点”として特定するのが望ましい。
【0073】
尚、上記S23及びS24では、進行方向毎に“通行注意地点”及び“通行困難地点”を特定する。従って、同一リンク上の同一地点であっても、一方の進行方向については“通行注意地点”又は“通行困難地点”に特定され、他方の進行方向については“通行注意地点”及び“通行困難地点”のいずれにも特定されない場合がある。但し、“通行困難地点”に特定された地点と同一地点であって進行方向の異なる地点については、上記S21の判定条件を満たさない場合であっても、“通行注意地点”として特定しても良い。非常にスリップし易い地点であると認定できる“通行困難地点”と進行方向のみが異なる地点についても、スリップし易いことが予想できるからである。
【0074】
その後、未処理のプローブ情報が残っている場合にはS21へと戻り、同様にしてS21〜S24の処理を行う。一方、プローブ情報DB12に格納される全てのプローブ情報に対するS21〜S24の処理が終了した場合にはS25へと移行する。
【0075】
S25でCPU21は、前記S23及びS24の判定結果に基づいて、特定された通行注意地点及び通行困難地点に関する情報をスリップ地点情報(
図4)として作成する。尚、作成されたスリップ地点情報は車両3に配信する配信情報としてプローブ統計情報DB13に格納される。
【0076】
次に、S26においてCPU21は、プローブ統計情報DB13に格納されているスリップ地点情報を、配信情報として要求のあったナビゲーション装置2に配信する。
【0077】
次に、路面状態特定システム1を構成するナビゲーション装置2において実行するスリップ地点案内処理プログラムについて
図11に基づき説明する。
図11は本実施形態に係るスリップ地点案内処理プログラムのフローチャートである。ここで、スリップ地点案内処理プログラムは車両のACCがONされた後に実行され、“通行注意地点”や“通行困難地点”として特定されたスリップ地点の案内を行うプログラムである。
【0078】
先ず、スリップ地点案内処理プログラムでは、S31においてCPU51は、プローブセンタ4から配信された配信情報を受信する。尚、受信された配信通情報は配信情報DB46に格納される。また、受信した配信情報には、前述の路面状態特定処理プログラム(
図7)において作成されたスリップ地点情報(
図4)が含まれる。
【0079】
次に、S32においてCPU51は、車両3に関する車両情報を取得する。ここで、前記S32で取得される車両情報としては、車両3の現在位置、方位に関する情報である。
【0080】
続いて、S33においてCPU51は、前記S32で取得した車両情報と前記S31で取得したスリップ地点情報とに基づいて、車両3の進行方向前方の所定距離(例えば700m)以内に“通行注意地点”又は“通行困難地点”に特定されたスリップ地点があるか否か判定する。尚、前記S33の判定処理では、“通行注意地点”又は“通行困難地点”に設定されたスリップ地点の進行方向と車両の進行方向についても考慮して判定する。即ち、車両3の進行方向前方の所定距離以内であって、且つ車両3の進行方向と対応する進行方向に“通行注意地点”又は“通行困難地点”があるか否かが判定される。
【0081】
そして、車両の進行方向前方の所定距離以内にスリップ地点があると判定された場合(S33:YES)には、S34へと移行する。それに対して、車両の進行方向前方の所定距離以内にスリップ地点が無いと判定された場合(S33:NO)には、当該スリップ地点案内処理プログラムを終了する。
【0082】
S34においてCPU51は、所定距離内に位置するスリップ地点に対する案内を行う。具体的には、液晶ディスプレイ35に表示された地図画像上のスリップ地点に該当する地点においてマークを表示したり、スピーカ36からスリップ地点の注意喚起を行う音声を出力する。尚、スリップ地点におけるスリップのし易さの程度をユーザに把握させる為に、“通行注意地点”に特定されたスリップ地点と、“通行困難地点”に特定されたスリップ地点とでは異なる態様で案内することが望ましい。
【0083】
例えば、“通行注意地点”に特定されたスリップ地点が所定距離以内に位置する場合には、「この先、スリップ注意地点です」との音声をスピーカ36から出力する。一方、“通行困難地点”に特定されたスリップ地点が所定距離以内に位置する場合には、より強い注意喚起を行う為に「この先、通行困難地点です。走行には十分注意して下さい。」との音声をスピーカ36から出力する。また、
図12に示すように液晶ディスプレイ35に表示された地図画像上において、“通行注意地点”に特定されたスリップ地点を示すマーク61と“通行困難地点”に特定されたスリップ地点を示すマーク62とを異なる種類のマークとする。その結果、ユーザは進行方向前方にあるスリップ地点におけるスリップのし易さの程度を把握することが可能となる。
【0084】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係る路面状態特定システム1及び路面状態特定システム1による路面状態特定方法及び路面状態特定システム1で実行されるコンピュータプログラムでは、道路上を走行する各車両3からプローブ情報として各車両のスリップ履歴を取得し(S12、S13)、取得したプローブ情報に基づいて、車両3がスリップする虞のあるスリップ地点を、スリップのし易さを考慮して“通行を注意すべき通行注意地点”と“通行注意地点よりもスリップし易く通行が困難な通行困難地点”とに区分して特定し(S21〜S24)、特定したスリップ地点に関するスリップ地点情報を各車両3に配信し(S26)、配信された車両3では“通行注意地点”と“通行困難地点”とを異なる対象で案内する(S34)ので、ユーザは、車両3がスリップする虞のあるスリップ地点について、スリップのし易さの程度についても併せて把握することが可能となる。その結果、スリップを避ける為のより効率の良い運転を行うことが可能となる。
また、進行方向毎に“通行注意地点”と“通行困難地点”とを特定するので、例えば複数の車線から構成される道路において、一方の進行方向の車線にのみスリップし易い事象が生じている場合において、より正確に“通行注意地点”と“通行困難地点”とを特定し、案内することが可能となる。
また、“通行困難地点”に特定された地点と同一地点であって進行方向の異なる地点を“通行注意地点”として特定するので、プローブ情報が不足している場合であっても、スリップし易いと予測される地点を適切に“通行注意地点”として特定することが可能となる。
また、同一車両が直前又は直後の車速が0の状態で複数回繰り返しスリップしたスリップ地点を通行困難地点として特定するので、坂道の路面が凍結している地点等の特に車両がスリップし易いと予測される地点を、適切に“通行困難地点”として特定することが可能となる。
【0085】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態ではプローブセンタ4が複数の車両3のスリップ履歴に基づいて、車両3がスリップする虞のあるスリップ地点を特定する構成としているが、ナビゲーション装置2が自車のスリップ履歴のみに基づいて特定する構成としても良い。その場合には、プローブセンタ4や他車のスリップ履歴を取得する構成は不要となる。
【0086】
また、本実施形態では
図7に示す路面状態特定処理プログラムの実行主体は、プローブセンタ4であったが、ナビゲーション装置2が実行する構成としても良い。また、複数の主体によって実行する構成としても良い。尚、路面状態特定処理プログラムをナビゲーション装置2が実行する場合には、他車両のスリップ履歴についてプローブセンタ4を介して取得するか、又は車車間通信により取得することが望ましい。
【0087】
また、本実施形態では“通行注意地点”と“通行困難地点”とを地点毎且つ進行方向毎に設定しているが、リンク毎且つ進行方向毎、或いはエリア毎且つ進行方向毎に設定しても良い。また、進行方向については考慮せずに地点毎に設定する構成としても良い。その場合には、プローブ情報として車両の進行方向に関する情報は不要となる。
【0088】
また、本実施形態では車両がスリップする虞のあるスリップ地点をスリップのし易さに基づいて“通行注意地点”と“通行困難地点”との2種類に区分しているが、より詳細(例えば3種類以上)に区分しても良い。
【0089】
また、スリップ地点情報を各車両3に配信する時期を限定する構成としても良い。例えば、路面の凍結や積雪によってスリップの生じる虞のある冬季(11月〜2月)にのみ、スリップ地点情報を配信する構成としても良い。