【文献】
大橋正治、外3名,単一モード光ファイバのモードフィールド径の測定,電気通信研究所研究実用化報告,1986年 7月22日,第35巻第7号,第731頁−第738頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定の値は前記Rを10mm≦R1<R2である半径R1から半径R2まで変化させたときの前記実効断面積又は前記モードフィールド径の変化の割合であって、3%であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実効断面積Aeffが大きくなるとFFP分布の幅が狭くなる。FFP分布の幅が狭くなると、FFP測定結果の僅かな差がFFPの測定結果から導かれるAeffの値に大きく影響を与えることになる。したがって、Aeffが大きな光ファイバについて、MFDやAeffを測定する場合には、FFPの測定精度を高める必要がある。FFPの測定精度に影響を与える要素の1つとして、光ファイバの端面を中心として回転しながら光ファイバの当該端面から出射される光を検出する検出器の回転角のずれがある。この回転角のずれは測定対象の光ファイバの位置ずれ等に由来する。従来の測定方法では、検出器の回転中心位置にピン等を置くことで目印をつけ、カメラや顕微鏡等を用いて上方から観察をしつつ回転中心と測定対象の光ファイバとの位置を合わせる方法が用いられている。この方法では、光ファイバの位置合わせを高精度に行うことは困難であり、特にAeffが大きい光ファイバに係るFFPの測定精度を高めることが困難であった。
【0007】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、FFPの測定精度を高めることが可能な光ファイバの測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る光ファイバ測定方法は、移動可能な検出器を有する測定装置に光ファイバをセットし、検出器を半径Rの円弧に沿って回転させながら前記光ファイバの出射端面から出射される光の強度を測定することで当該光ファイバのファーフィールドパターンを求め、このファーフィールドパターンから実効断面積又はモードフィールド径を求める光ファイバ測定方法であって、準備工程と測定工程とを備え、準備工程は、半径Rを変動させても実効断面積又はモードフィールド径が変化しない出射端面のセット位置を求める工程を含み、測定工程は、セット位置に光ファイバの出射端面をセットした状態で、検出器を半径Rの円弧に沿って回転させながら光ファイバの出射端面から出射される光の強度を測定することで当該光ファイバのファーフィールドパターンを求め、このファーフィールドパターンから実効断面積又はモードフィールド径を求める工程を含むことを特徴とする。
【0009】
上記の光ファイバ測定方法によれば、準備工程においてRを変動させても実効断面積又はモードフィールド径が変化しない出射端面のセット位置を求める工程を含み、この結果得られたセット位置に光ファイバの出射端面をセットすることで、ファーフィールドパターン(FFP)の測定が行われる。このような準備工程を設けることで、光ファイバの設置位置のずれを抑制することができるため、FFPの測定精度を向上することができる。
【0010】
ここで、上記作用を効果的に奏する構成として、具体的には、準備工程は、第1の位置に出射端面を配置して、互いに異なる複数のRにおけるファーフィールドパターンをそれぞれ求め、これらのファーフィールドパターンから実効断面積又はモードフィールド径をそれぞれ求めることで、Rを変化させたときの実効断面積又はモードフィールド径の変化の割合を調べ、Rを変化させたときの実効断面積又はモードフィールド径の変化の割合が所定の値より小さい場合には、第1の位置をセット位置とし、Rを変化させたときの前記実効断面積又はモードフィールド径の変化の割合が所定の値より大きい場合には、第1の位置とは異なる第2の位置に出射端面を配置して、Rを変化させたときの実効断面積又はモードフィールド径の変化の割合を調べ、Rを変化させたときの実効断面積又はモードフィールド径の変化の割合が所定の値より小さくなるまで出射端面の位置を変更して変化の割合を調べることを繰り返すことで、セット位置を求める態様が挙げられる。
【0011】
この場合、所定の値は、半径Rを10mm≦R1<R2である半径R1から半径R2まで変化させたときの実効断面積又はモードフィールド径の変化の割合であって、この割合を3%とすることで、実効断面積Aeffが大きい光ファイバであってもFFPの測定を十分な精度で行うことができる。
【0012】
また、上記作用を効果的に奏する他の構成として、具体的には、準備工程は、第1の位置に出射端面を配置して、互いに異なる2つのRであるR1,R2におけるファーフィールドパターンをそれぞれ求め、これらのファーフィールドパターンから、実効断面積又はモードフィールド径をそれぞれ求める第1の工程と、第1の位置とは異なる第2の位置に出射端面を配置して、R1及びR2におけるファーフィールドパターンをそれぞれ求め、これらのファーフィールドパターンから実効断面積又はモードフィールド径のうち第1の工程で求めたものと同じものをそれぞれ求める第2の工程と、第1の位置における2つの実効断面積又はモードフィールド径と第2の位置における2つの実効断面積又はモードフィールド径とに基づいて、セット位置を求める態様が挙げられる。
【0013】
また、準備工程において、回転中心位置と光ファイバの出射端面のセット位置とが重なって見えるような位置に光学系を設け、測定工程において、光学系を利用して光ファイバの出射端面をセット位置にセットする態様とすることができる。
【0014】
この場合、光学系を利用して、光ファイバをセット位置にセットすることが可能となるので、光ファイバをセットし直す場合であっても好適な位置にセットすることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、FFPの測定精度を高めることが可能な光ファイバの測定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(A)は、本実施形態に係るFFP測定装置の概略構成を説明する平面図である。
図1(B)はFFP測定装置の概略構成を説明する正面図である。
【
図2】AeffによるFFPの分布の違いについて説明する図である。
【
図3】
図3(A)は、光ファイバの出射端面の位置がずれた場合の回転角について説明する図であり、
図3(B)は、出射端面付近の拡大図である。
【
図4】測定に用いた光ファイバの屈折率を示す図である。
【
図5】水平方向の位置ずれに由来するAeffの変動について説明する図である。
【
図6】垂直方向の位置ずれに由来するAeffの変動について説明する図である。
【
図7】光軸方向の位置ずれに由来するAeffの変動について説明する図である。
【
図8】本実施形態に係る光ファイバ測定方法のうち準備工程について説明するフローチャートである。
【
図9】Rを変更した場合の光軸方向の位置ずれとAeffとの関係を示す図である。
【
図10】zを変更した場合のRとAeffとの関係を示す図である。
【
図11】xを変更した場合のRとMFDとの関係を示す図である。
【
図12】xを変更した場合のRとAeffとの関係を示す図である。
【
図13】両側のFFPを用いてAeffを求めた場合の結果を示す図である。
【
図14】左側のFFPを用いてAeffを求めた場合の結果を示す図である。
【
図15】右側のFFPを用いてAeffを求めた場合の結果を示す図である。
【
図16】yを変更した場合のRとMFDとの関係を示す図である。
【
図17】yを変更した場合のRとAeffとの関係を示す図である。
【
図18】zを変更した場合のRとMFDとの関係を示す図である。
【
図19】zを変更した場合のRとAeffとの関係を示す図である。
【
図20】互いに異なる測定機を用いてAeff測定を行った場合の機器間差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る光ファイバ測定方法を実施するためのFFP測定装置の概略構成図であり、
図1(A)はFFP測定装置の平面図であり、
図1(B)はFFP測定装置の正面図である。
図1に示すように、FFP測定装置1は、光源10と、測定対象の光ファイバ100を取り付けるための固定台20と、回転ステージ30と、回転ステージ30に取り付けられた検出器40と、パワーメータ50と、コンピュータ60と、を含んで構成される。なお、
図1(B)では、パワーメータ50及びコンピュータ60は図示していない。また、FFP測定装置1には、光ファイバ100の位置を確認するための光学系として、カメラ等をさらに取り付けることもできる。
【0019】
光源10は、光ファイバ100のFFPを測定するための光(レーザ光)を出射する。光ファイバ100のFFP測定には、例えば波長が1.55μmのレーザ光が用いられる。光ファイバ100の一端側の端面101は光源10側に接続され、他端側の出射端面102が回転ステージ30の回転中心位置31と一致するように固定台20に取り付けられる。これにより、光源10から出射された光は、光ファイバ100の端面101から入射し、光軸方向に伝播した後に他方の出射端面102から出射される。回転ステージ30の周縁には、検出器40が回転中心位置31を軸として回転できるように設けられている。
【0020】
検出器40は、光源10から出射されて光ファイバ100内を伝播した後に、光ファイバ100の端面102から出射される光を検出する機能を有する。検出器40は回転ステージ30に取り付けられることで、回転半径がRとなるように回転可能とされている。これにより、出射端面102からの距離がRとなる位置で光ファイバ100の出射端面102から出射される光の強度を測定することが可能となる。検出器40により検出された光は、検出器40に接続されたパワーメータ50によりその強度が測定される。コンピュータ60は、回転ステージ30の回転を制御する。これにより、回転ステージ30は指定の角度ステップで回転し、回転ステージ30に取り付けられた検出器40は、各ステップにおいて、光ファイバ100の出射端面102から出射された光を検出する。そして、パワーメータ50により測定された光の強度と当該強度の検出が行われた時点での回転ステージ30の回転角とに基づいてFFPを算出する。また、得られたFFPから、MFD又はAeffの算出も行われる。なお、以下の説明では、FFPからAeffを算出する構成について基本的に説明をするが、AeffではなくMFDを算出する場合でも同様の構成を有することにより、同様の作用・効果が得られる。
【0021】
ここで、Aeffが異なる場合のFFPの変動について、
図2を用いて示す。
図2は、Aeffが80μm
2の場合と135μm
2の場合とについてのFFPを示したものである。
図2では、横軸を角度とし縦軸を強度として示した。
図2に示すように、Aeffが大きくなると、各ピークの幅が狭くなる。したがって、FFPの測定誤差がAeffの算出に大きく影響を与えることになる。
【0022】
FFPの測定誤差が生じる主な要因としては、(1)回転角のずれ、(2)検出器において検出された光の強度のずれ、が考えられる。このうち(1)回転角のずれは、(A)測定対象の光ファイバの固定位置のずれ、(B)検出器の位置ずれ、(C)FFP測定装置1における位置決め精度(ステップモーターのバックラッシュ等)に由来することが考えられる。また、(2)検出器における検出強度のずれは、検出器の特性に由来すると考えられる。本実施形態に係るFFP測定装置1を用いた測定では、(1)回転角のずれのうち測定対象の光ファイバの固定位置のずれ、すなわち測定毎に改めて固定台20に対して固定される光ファイバ100の出射端面102と回転中心位置31との位置ずれをより小さくすることで、FFPの測定誤差を小さくすることを目的とする。
【0023】
図3は、光ファイバ100の位置が回転中心位置31からずれた場合を説明する図である。
図3(A)は、光ファイバ100の出射端面102の位置がずれた場合の回転角について説明する図であり、
図3(B)は、出射端面102付近の拡大図である。
図3では、回転ステージ30はX,Z軸に沿った平面上で回転するものとし、XZ平面に対して垂直な方向(回転ステージ30に対して垂直な方向)をY軸とする。光ファイバ100の光軸はZ軸に平行に伸びるものとする。また、
図3(A)では、検出器40が回転ステージの回転中心位置31を軸に回転移動するときの動線L0を示している。また、回転中心位置31からZ軸に沿って伸ばした線をL1とし、L1とL0との交点をL2とする。光ファイバ100の出射端面102は、通常は出射された光線がZ軸に平行となるように調整されるが、
図3(A)においては、検出器40が交点L2にあるときに最大のパワーを検出するようにその角度が調整されている。
【0024】
ここで、回転中心位置31を(0,0,0)としたときに、光ファイバ100の出射端面102の位置が(x,y,z)となるようにずれた位置にあるとする。検出器40が
図3(A)に示す位置にある場合、回転中心位置31と検出器40とを結ぶ直線と直線L1とがなす角はθである。一方、光ファイバ100の出射端面102の中心と交点L2とを結ぶ直線(検出器40が最大のパワーを検出する方向)と、光ファイバ100の出射端面102と検出器40とを結ぶ直線と、のなす角φはφ1+φ2となる。回転中心位置31と検出器40との距離(検出器40が移動する動線L1の半径)をRとすると、φは、R,x,y,z,θを用いて、以下の数式(1)のように表すことができる。
【0025】
【数1】
このうち、第1項は、光ファイバ100の位置ずれに由来する測定角度のずれを示す項であり、第2項は、検出器40が交点L2にあるときに最大のパワーを検出するように光ファイバ100の出射端面102の角度を調整したことに由来する項である。
【0026】
次に、光ファイバ100の出射端面102の位置がずれたことによるAeffの影響について検討する。ここでは、測定光として波長1550nmの光を用い、回転中心位置31と検出器40間の距離Rを20mmとし、
図4に示す屈折率分布を示すW型の光ファイバ100を用いた。出射端面102の位置がずれた状態におけるAeffの値を算出するため、まず、
図4の屈折率分布に基づいて数値計算により、ニアフィールドパターン(NFP:near-field pattern)を求め、非特許文献2記載の数式(3−2)を用いてNFPをFFPに変換し、これにX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の軸ずれの影響を式に含めて出射端面102の位置がずれた状態で観測されるFFPを求めた。その後に、非特許文献2記載の数式(3−3)を用いて再度NFPを算出した上で、非特許文献2記載の数式(2−2)を用いてAeffを算出した。また、MFDは、上記位置がずれた状態で観測されるFFPから非特許文献2記載の数式(2−5)を用いて計算するか、非特許文献2記載の数式(2−4)を用いて算出した。この結果を
図5〜7に示す。
【0027】
図5は、
図3(B)におけるX軸方向(水平方向)の位置ずれと計算されたAeffの変化を示す図であり、
図6は、
図3(B)におけるY軸方向(垂直方向)の位置ずれと計算されたAeffの変化を示す図であり、
図7は、
図3(B)におけるZ軸方向(光ファイバ100の光軸方向)の位置ずれと計算されたAeffの変化を示す図である。また、
図5〜7では、位置ずれが0であるときに対してAeffが0.1%変動する位置を示している。
図5〜7に示すように、Aeffが0.1%変動する光ファイバ100の出射端面102の位置ずれ量は、x=450μm、y=630μm、z=10μmであることが分かった。すなわち、光ファイバ100の光軸方向(Z軸方向)の位置ずれがAeffの測定結果に大きく影響することが確認された。
【0028】
ここで、Z軸方向の位置ずれがAeffの算出に当たって最も大きく影響することに基づいて、数式(1)のx及びyが0だったと仮定し、数式(1)を修正すると、数式(2)のようになる。
【数2】
【0029】
数式(2)によれば、z=0の場合φはRの値によらずθとなることから、Rを変動させた場合でもAeffは変動しないことが分かった。
【0030】
上記の結果に基づいて、発明者らは、光ファイバ100のFFPを測定する際に光軸方向の調整を事前に行ってFFPの測定精度を向上させる方法を見出した。以下では、光ファイバ100のFFPを測定する際に光軸方向の調整を行う方法を説明する。
【0031】
図8は、光ファイバの位置調整方法を説明するフローチャートである。本実施形態に係る光ファイバの測定方法は、(1)Rを変動させても実効断面積又はモードフィールド径が変化しない出射端面のセット位置を求める準備工程と、(2)セット位置に光ファイバの出射端面をセットして光ファイバの出射端面から出射される光の強度を測定することで、当該光ファイバのファーフィールドパターンを求め、このファーフィールドパターンから実効断面積又はモードフィールド径を求める測定工程と、が含まれるが、以下の位置調整方法は、このうちの(1)の準備工程に相当する。
【0032】
まず、固定台20に対して光ファイバ100を取り付ける(S01)。次に、その状態で光源10から測定光を出射することで、出射端面102から出射されて検出器40で検出する光の強度からFFPを測定しNFPへ変換し(S02)、NFPから、Aeffを算出する(S03)。次に、光ファイバ100を移動させずに検出器40の距離Rを変更する(S04)。その後移動後の検出器40を用いてFFPを測定しNFPへ変換し(S05)、NFPからAeffを算出する(S06)。
【0033】
ここで、検出器40の移動前のAeffと移動後のAeffとの差分が所定の閾値よりも小さいかどうかにより、光ファイバ100の出射端面102が回転中心位置31もしくはその近傍にあるか否かを判断する。ここで用いられる閾値は、移動前後のRの差分と誤差として許容されるべきAeffの変動幅とに基づいて決定されるが、例えば、Aeffに対して半径Rを10mm≦R1<R2である半径R1から半径R2まで変化させたときの変化の割合(R2−R1)/R2×100であって、3%というように設定をすることができる。なおこの割合を2%とすればより厳密な位置を保証することができ、1%以下とすればさらに厳密な位置を保証することができる。上記数式(2)に示したように、出射端面102が回転中心位置31にある場合、すなわちz=0の場合には計算されるAeffはRによらず一定であり、zが0ではない場合にはzの絶対値に応じてRの変動に対するAeffの変動が大きくなる。したがって、移動前のAeffと移動後のAeffとの差分が所定の閾値よりも小さい場合には、光ファイバ100の出射端面102の固定位置が適切であると判断し位置調整を終了する。一方、検出器40の差分が所定の閾値よりも大きい場合には、光ファイバ100の出射端面102の位置が回転中心位置31から離れていてAeffの測定には適さないと判断し、光ファイバ100の出射端面102を光軸方向に前後に移動させる(S08)。その後、再度FFPの測定(S02)からを繰り返し実施する。この方法により、回転中心位置31と光ファイバ100の出射端面102との位置合わせを行うことができ、位置ずれに由来する測定誤差を低減することができる。
【0034】
次に、上記の方法を用いて、光ファイバの位置合わせを行った結果について説明をする。
図9は、R=10,20,30mmの場合について、光軸方向の位置ずれzを変化させた場合のAeffについて測定した結果である。また、
図10は、z=−10,0,10μmの場合について、Rを変化させた場合のAeffの変動を測定した結果である。
図9,10において、各点は実機を用いて測定した結果であり、破線は光ファイバの屈折率分布を元に算出したFFPから求められたAeffの計算値を示したものである。
図9及び
図10によれば、z=0μmの場合には、Rを10〜30に変化させてもAeffは一定であることが確認された。また、実機を用いた測定結果が計算値とほぼ同様の挙動を示していることも確認することができた。
【0035】
また、
図9の結果を利用して、上記の位置合わせ方法、すなわち
図8に示すフローチャートの順の位置合わせ方法とは異なる位置合わせの方法を行うことができる。すなわち、
図9では、R=10mm、R=20mm、R=30mmのそれぞれについて、位置ずれzとAeffとの対応関係を示す直線が得られた。そして、これらの3つの直線は、位置ずれがzの位置において交わる。したがって、2種類のR(R1,R2)と2種類のz(z1,z2)とを組み合わせることで得られる4種類の測定条件(R1z1、R1z2、R2z1、R2z2)の条件において、Aeffを測定することで、4つの測定結果(Aeff
11,Aeff
12,Aeff
21,Aeff
22)が得られるので、これらをプロットし、Aeff
11とAeff
12とを繋いで得られる直線とAeff
21とAeff
22とを繋いで得られる直線との交点がz=0となる位置となる。この方法を用いて光ファイバ100の位置合わせを行うことも可能である。この方法を用いても光ファイバ100の出射端面102の位置合わせを精度よく行うことができ、FFPを高い精度で測定することができる。
【0036】
(水平方向の位置合わせについて)
次に、光ファイバの端面の水平方向(X軸方向)の位置合わせについて検討する。上記の説明では、光軸方向(Z軸方向)の位置合わせについて説明したが、上記の位置合わせの方法は、光軸方向のみに適用されるのではなく、他の方向の位置合わせにも適用できると考えられる。ここで、
図11に光ファイバ100の出射端面102の水平方向の位置xが0μm、±500μm、±1000μm、±1500μmである場合の出射端面102と検出器40との間の距離Rに対応したMFDを算出した結果を示す。また、
図12では光ファイバ100の出射端面102の水平方向の位置xが0μm、±500μm、±1000μm、±1500μmの場合それぞれについて、出射端面102と検出器40との間の距離Rに対応したAeffを算出した結果を示す。これらの算出の過程では、簡単のためにY軸方向及びZ軸方向の位置ずれはない(y=z=0)と仮定した。この結果、MFD及びAeffのいずれについても、x=0である場合にはRに依存せず一定となることが確認できた。したがって光軸方向と同様に水平方向の位置合わせにおいても、上記の方法を利用することができると確認された。
【0037】
次に、水平方向(X軸方向)の位置合わせの場合は、同じくX軸方向に大きく移動する検出器40の回転方向の影響が大きくなる。FFPの測定を行うに際し、
図1で示す検出器40をθ=0の位置から図示上方(右側)又は図示下方(左側)に回転させて測定した結果を利用するか、或いは、双方の測定結果を利用するかによっても測定精度が変わることを以下に説明する。
図13は、xが0μm、±50μm、±100μm、±150μmの場合それぞれについて、出射端面102と検出器40との間の距離Rに対応したAeffを算出した結果である。ここでは、右側及び左側のFFP測定結果の平均値を利用してAeffを算出している。一方、
図14は、同じ条件において左側のFFP測定結果のみを利用してAeffを算出した結果を示している。また、
図15は、同じ条件において右側のFFP測定結果のみを利用してAeffを算出した結果を示している。
図13と
図14,15とを比較すると、一方側のAeffを利用した場合のほうが、水平方向の位置ずれ(xの変化量)に対するAeffの変化量が大きい。したがって、一方側のFFPを利用して、Aeffを求めたほうがより正確に位置合わせをすることができると考えられる。
【0038】
(垂直方向の位置合わせについて)
次に、光ファイバの端面の垂直方向(Y軸方向)の位置合わせについて検討する。
図16に光ファイバ100の出射端面102の垂直方向の位置yが0μm、±500μm、±1000μm、±1500μmである場合の出射端面102と検出器40との間の距離Rに対応したMFDを算出した結果を示す。また、
図17では光ファイバ100の出射端面102の垂直方向の位置yが0μm、±500μm、±1000μm、±1500μmの場合それぞれについて、出射端面102と検出器40との間の距離Rに対応したAeffを算出した結果を示す。これらの算出の過程では、簡単のためにX軸方向及びZ軸方向の位置ずれはない(x=z=0)と仮定した。この結果、MFD及びAeffのいずれについても、y=0である場合にはRに依存せず一定となることが確認できた。したがって、光軸方向と同様に垂直方向の位置合わせにおいても上記の方法を利用することができると確認された。
【0039】
(光軸方向の位置合わせについて)
光ファイバの端面の光軸方向(Z軸方向)については既に上記説明したが、X軸方向・Y軸方向と同様の条件にて算出した結果を示す。
図18に光ファイバ100の出射端面102の光軸方向の位置zが0μm、±500μm、±1000μm、±1500μmである場合の出射端面102と検出器40との間の距離Rに対応したMFDを算出した結果を示す。また、
図19では光ファイバ100の出射端面102の光軸方向の位置zが0μm、±500μm、±1000μm、±1500μmの場合それぞれについて、出射端面102と検出器40との間の距離Rに対応したAeffを算出した結果を示す。これらの算出の過程では、簡単のためにX軸方向及びY軸方向の位置ずれはない(x=y=0)と仮定した。この結果、MFD及びAeffのいずれについても、z=0である場合にはRに依存せず一定となることが確認できた。
【0040】
(位置合わせ用カメラの位置・傾き合わせの方法)
実際には、光ファイバのMFD又はAeffを測定するには、上記の光ファイバ100の位置合わせが完了した後にFFP測定装置1の上方に設けられたカメラの位置合わせを行う。すなわち、光ファイバ100の出射側の出射端面102と回転中心位置31とが重なって映るように、カメラの位置及び傾きを調整する。これにより、光ファイバ100をFFP測定装置1の光学系から外したり移動したりすることがあっても、回転中心位置31と光ファイバ100の出射端面102とが重なるようにカメラで確認をしながら出射端面102を移動させることで、再度同じ位置に光ファイバ100の出射端面102の位置を合わせることが可能となる。
【0041】
(再現性確認)
上記の位置合わせを含む測定方法は特定の装置依存ではないことを確認する目的から、同じ構成を有する2つの異なるFFP測定装置を用いて、上記の位置合わせ方法で位置合わせをした後にFFPを測定し、Aeffを求めた結果を
図20に示す。測定対象の光ファイバとしては、Aeffが85,110,135,155μm
2と既知であるものを用いて、それぞれの測定装置(測定機1、測定機2)を用いて求められたAeffをプロットした。また、
図20ではそれぞれの光ファイバについて得られたAeffの測定機差を示している。この結果、Aeffの測定機差は±0.1%程度であることが分かった。Aeffが150μm
2の光ファイバにあっても測定機差が同程度であったことから、Aeffの大きな光ファイバにおいてもFFP精度良く測定することが可能であると言える。すなわち、本実施形態にかかる光ファイバ測定方法は、Aeffが大きな光ファイバに適用が可能することが好ましく、具体的には、Aeffが30μm
2以上の光ファイバに適用することが好ましく、60μm
2以上の光ファイバに適用することがさら好ましく、Aeffが90μm
2以上の光ファイバに適用することがより好ましく、Aeffが110μm
2以上の光ファイバに適用することが最も好ましい。
【0042】
以上、本発明に係る光ファイバ測定方法の実施形態について説明したが、本発明に係る光ファイバ測定方法は上記に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、FFP測定装置1の構成は、上記実施形態に限定されない。