【実施例】
【0045】
本発明に使用した物性値の評価法を記載する。
(物性値の評価法)
(1)層厚み、積層数、積層構造
ハーフミラー材である積層フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件でフィルムの断面を10000〜40000倍に拡大観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。尚、場合によっては、コントラストを高く得るために、公知のRuO
4やOsO
4などを使用した染色技術を用いた。
【0046】
上記装置から得た約4万倍のTEM写真画像を、プリント倍率6.2万倍の処理で、画像を圧縮画像ファイル(JPEG)でパーソナルコンピューターに保存し、次に、画像処理ソフト Image-Pro Plus ver.4(販売元 プラネトロン(株))を用いて、このファイルを開き、画像解析を行った。画像解析処理は、垂直シックプロファイルモードで、厚み方向位置と幅方向の2本のライン間で挟まれた領域の平均明るさとの関係を数値データとして読み取った。表計算ソフト(Excel 2000)を用いて、位置(nm)と明るさのデータに対してサンプリングステップ6(間引き6)でデータ採用した後に、3点移動平均の数値処理を施した。さらに、この得られた周期的に明るさが変化するデータを微分し、VBA(ビジュアル・ベーシック・フォア・アプリケーションズ)プログラムにより、その微分曲線の極大値と極小値を読み込み、隣り合うこれらの間隔を1層の層厚みとして算出した。この操作を写真毎に行い、全ての層の層厚みを算出した。得られた層厚みのうち、薄膜層は500nm以下の厚みの層とした。一方、500nmを越える層を厚膜層とした。
(2)反射率の測定
ハーフミラー材である積層フィルムのフィルム幅方向中央部から5cm四方のサンプルを切り出した。次いで、日立製作所製 分光光度計(U−4100 Spectrophotomater)を用いて、入射角度φ=10度における相対反射率を測定した。付属の積分球の内壁は、硫酸バリウムであり、標準板は、酸化アルミニウムである。測定波長は、250nm〜1200nm、スリットは5nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲインは2と設定し、走査速度を600nm/分で測定した。サンプル測定時は、サンプルの裏面からの反射による干渉をなくすために、サンプルの裏面を油性インキで黒塗りした。次いで、波長範囲400〜700nmの平均反射率を求めた。
【0047】
一方、フィルムの面内方位における反射率は、付属のグランテーラ社製偏光子を設置して、偏光成分を0〜180°において、10度刻みで回転させた方位角で波長250〜1200nmの反射率を測定した。測定結果での波長400〜700nmの反射率の最大値と最小値の差を求めた。
(3)光線透過率
光線透過率の測定は、23℃、相対湿度65%の条件下で、積層フィルムをスガ試験機(株)製全自動直読ヘイズコンピューター「HGM−2DP」を用いて行った。3回測定した平均値を該サンプルの光線透過率(%)とした。
(4)表示部の欠点輝度分布むら
Leica社製光学顕微鏡DMLMを用いて、表示部を観察した。撮影条件は、反射モード、対物レンズ:×5、分解能 1300×1030standard、 color mode B/W、Automatic Exposure、光量メモリを5〜8で鮮明な画像が得られるように適宜調整した。さらにハーフミラー材と接着層間の柚子肌となっている界面の像が得られるように焦点距離を調整した。撮影した画像は、付属のソフトAxioVision3.0で画像データとしてコンピュータへ保存した。撮影画像の一例としては、
図2(b)である。
次に、保存した画像データを用いて、画像処理ソフト Image-Pro Plus ver.4(販売元 プラネトロン(株))により、欠点輝度分布むらを評価した。解析モードは、
図2(b)の26に示すラインプロファイルを用いて、画像中央部に、幅方向に延びる破線26上の輝度データを採取した。
得られた長さ2mm間の輝度データをExcelのVBA(ビジュアル・ベーシック・フォア・アプリケーションズ)プログラムにより、平均化処理を行った。データサンプリングは、6点毎に行い、採取したデータに対して10点移動平均処理を行った(
図2(c)参照。)。これらのデータの平均値を求め、最大値と最小値の差を平均値で除し、100を乗じることにより、欠点輝度分布むらを算出した。ラインプロファイルモードの画像上において、等間隔に3箇所の輝度データを採取し、それぞれに付いて、欠点輝度分布むらを算出し、その平均値を欠点輝度分布むらとした。なお、画像から輝度データを採取する過程において、表面やラミネート界面にある微少な異物起因の黒点や輝点などは、欠点輝度分布むらの対象としないため、除外とした。
(5)α緩和温度
積層フィルムの動的粘弾性測定を、以下の条件でセイコーインスツルメント社製DMS−6100を利用して測定した。
【0048】
サンプル長:20mm(幅5mm)
最小荷重:50mN
周波数 :1Hz
変位 :5μm
温度プログラム:25℃start→250℃end 5min保持 (2℃/min)
次いで得られたtanδの温度依存性の図からα緩和温度を求めた。本発明の積層フィルムのα緩和温度は、樹脂A層とB層のガラス転移点近傍にみられるピークの事であり、α緩和温度が2つ確認される場合は、低い方をα緩和温度として採用した。
(6)彩度C*
積層フィルムの幅方向中央部から5cm×5cmで切り出し、次いでサンプル裏面をマジックインキ(登録商標)で黒く塗り、コニカミノルタ(株)製CM−3600dを用いて、測定径φ8mmのターゲットマスク(CM−A106)条件下で、正反射光を除去したSCE方式、および正反射光を含めたSCI方式でそれぞれ、L*,a*,b*値を測定し、n数5の平均値を求めた。なお、白色校正板、およびゼロ校正ボックスは下記のものを用いて校正を行った。さらに、彩度C*は、SCIのa*,b*のそれぞれの2乗の和の平方根として求めた。なお、測色値の計算に用いる光源はD65を選択した。
白色校正板 :CM−A103
ゼロ校正ボックス:CM−A104
(7)腰の強さ
引っ張り弾性率は、インストロンタイプの引張試験機(オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”)を用いて、25℃、65%RHの環境下にてJIS−K7127に準拠して測定した。フィルム幅方向中央部からフィルム長手方向(MD方向:Machine Direction)およびフィルム幅方向(TD方向:Transevers Direction)それぞれについて、幅10mmの試料フィルムを、試長間100mm、引張り速度200mm/分の条件で引張り、フィルム長手方向および幅方向の引っ張り弾性率(ヤング率)を求めた。なお、試行回数であるn数は5回とし、その平均値を採用した。ヤング率は、長手方向と幅方向の平均値を採用した。次いで、下記式(3)に基づき、積層フィルムの腰の強さ(N・(mm)
2)を求めた。
X = 1/12×E×W×t^3 (3)式
E:積層フィルムのMDとTDのヤング率の平均値(GPa(=10^9 N/m
2))
W:フィルム幅=10mm
t:フィルム厚み(mm)
(8)外観検査
光源種がF10である蛍光灯を用いて、表示部への光の入射角度が45°近辺になるように配置し、その正反射光として、表示部の表面に映し出される蛍光灯の映り込み像を下記の基準で評価を行った。
◎:像の歪みが、全ての視野角からみても全くない。
○:像の歪みが、ある視野角で少しある。
△:像の歪みが、全ての視野角で少しある。
×:像に柚子肌状の歪が、全ての視野角で強くある。
(9)成形性
ハーフミラー材である積層フィルムの成形性を評価するために、縦80mm×横80mm×高さ10mmの四角柱の金型を用いて、IRヒータの予熱温度280℃、金型温度70℃、圧空10MPaの条件で超高圧成形を行った。得られた成形品を目視確認して、下記指標で成形性を判断した。金型の四角柱の四隅のエッジ部のテーパ角5°,10°、15°、20°とした。
○:問題なく成形されている。
△:成形されているが、フィルム破れがある。
×:成形できない。
(10)耐湿熱密着性
作製した表示部を70℃、湿度90%の雰囲気下にて72時間放置した後、積層フィルムの面に1mm^2のクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製セロハンテープをその上に貼り付け、1.5kg/cm 2 の荷重で押し付けた後、90°方向に剥離した。残存した個数により評価以下の基準により評価した。
○:95〜100個残存
△:50〜94残存
×:0〜49残存
(11)粗大異物の数
表示部の100cm
2当りの領域中に存在する平均粒径50μm以上の粗大異物を透明PET製の一般用ドットゲージ(きょう雑物測定図表:参考規格 JIS P8208/P8145)を用いて観察し、数えた。透過粗大異物の平均粒径としては、長軸を採用し、測長した。下記の基準で評価した。
○:平均粒径50μm以上の粗大異物の数が10個未満
△:平均粒径50μm以上の粗大異物の数が10個以上49個未満
×:平均粒径50μm以上の粗大異物の数が50個以上
(12)ヘッドアップディスプレイの性能
蛍光灯42、作成した表示部25、ノートパソコン40(10インチの画面サイズ/Gateway社製LTseries)、視力検査表41を
図4に示したように配置した。観測者は、ノートパソコンの液晶パネルの画像と視力検査表の記号を同時に目視し、下記の評価基準でヘッドアップディスプレイの性能を判断した。
◎:液晶パネルの画像、及び視力検査表の記号が非常に鮮明に見える。
○:液晶パネルの画像、及び視力検査表の記号が鮮明に見える。
△:液晶パネルの画像は鮮明に見えるが、視力検査表の記号は、やや見えにくい。
または、液晶パネルの画像は、やや見えにくいが、視力検査表の記号は、鮮明に見える。
×:液晶パネルの画像、及び視力検査表の記号も像がぼけて、見えにくい。
(熱可塑性樹脂)
樹脂Aとして、以下のものを準備した。
(樹脂A−1)テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部の混合物に、テレフタル酸ジメチル量に対して酢酸マグネシウム0.09重量部、三酸化アンチモン0.03重量部を添加して、常法により加熱昇温してエステル交換反応を行う。次いで、該エステル交換反応生成物に、テレフタル酸ジメチル量に対して、リン酸85%水溶液0.020重量部を添加した後、重縮合反応層に移行する。さらに、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1mmHgの減圧下、290℃で常法により重縮合反応を行い、IV=0.61のポリエチレンテレフタレートを得た。
(樹脂A−2)
IV=0.57のポリエチレンナフタレート。
【0049】
一方、樹脂Bとしては、以下のものを準備した。
(樹脂B−1)IV=0.72シクロヘキサンジメタノール(CHDM 30モル%)を共重合したポリエチレンテレフタレート。
(樹脂B−2)樹脂A−1と樹脂B−1を1:3で混合した共重合ポリエチレンテレフタレート。
(樹脂B−3)樹脂A−1と樹脂B−1を1:1で混合した共重合ポリエチレンテレフタレート。
(樹脂B−4)IV=0.73 シクロヘキサンジメタノール(CHDM 60モル%)を共重合したポリエチレンテレフタレートとポリカーボネート(出光興産A1700)を85:15で混合したポリエステル樹脂。
(樹脂B−5)IV=0.73 ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF 5モル%)を共重合したポリエチレンテレフタレート。
(樹脂B−6)IV=0.73 スピログリコール(SPG 30モル%)を共重合したポリエチレンテレフタレート。
(樹脂B−7)IV=0.63 テレフタル酸(TPA 30モル%)を共重合したポリエチレンナフタレート。
(樹脂B−8)IV=0.75 アジピン酸15モル%を共重合したポリエチレンテレフタレート。
(樹脂B−9)IV=0.77 イソフタル酸(IPA 15モル%)を共重合したポリエチレンテレフタレート。
(樹脂B−10)樹脂A−2と樹脂B−7を1:3で混合した共重合ポリエチレンナフタレート。
(樹脂B−11)ポリカーボネート(出光興産A1700)
易接着層と以下のものを準備した。
(易接着I)
粒径80nmのコロイダルシリカ5重量部に対して、下記組成のアクリル・ウレタン共重合樹脂および架橋剤125重量部の水系塗剤
「組成」
アクリル・ウレタン共重合樹脂(A):アクリル・ウレタン共重合樹脂アニオン性水分散体(山南合成化学製“サンナロン”WG−353(試作品))。アクリル樹脂成分/ウレタン樹脂成分(ポリカーボネート系)の固形分重量比が12/23、トリエチルアミンを2重量部用いて水分散体化。
オキサゾリン化合物(B):
オキサゾリン含有ポリマー水系分散体(日本触媒製“エポクロス”WS−500)
カルボジイミド化合物(C):
カルボジイミド水系架橋剤(日清紡ケミカル(株)“カルボジライト”V−04)
ポリチオフェン樹脂(D):
ポリエチレンジオキシチオフェン(化研産業製Bytron PEDOT)
固形分重量比:
(A)/(B)/(C)/(D)=100重量部/30重量部/30重量部/8重量部
(易接着II)
易接着Iの組成において、前記ポリチオフェン樹脂のみ取り除いた組成
(易接着III)
粒径100nmのコロイダルシリカを5重量部に対して、下記組成の酢酸ビニル・アクリル系樹脂および架橋剤125重量部の水系塗剤
「組成」
酢酸ビニル・アクリル系水性分散体 1 0 0 重量部
メラミン系架橋剤 2 5 重量部
(接着層)
接着層の材料として以下の透明粘着剤を準備した。
【0050】
・ 3M社製アクリル系粘着剤(OCA)8172 厚み50μm
・ 3M社製アクリル系粘着剤(OCA)8171 厚み25μm
・ 3M社製アクリル系粘着剤(OCA)8146−2 厚み50μm
・ 3M社製アクリル系粘着剤(OCA)8146−3 厚み75μm
・ 3M社製アクリル系粘着剤(OCA)8146−4 厚み100μm
・ 巴川製紙製アクリル系粘着剤TD06A 厚み50μm
・ 巴川製紙製アクリル系粘着剤TD06A 厚み25μm
・ 巴川製紙製アクリル系粘着剤TD06A 厚み10μm
・ リンテック製MO−3006G 厚み50μm
[実施例1]
(ハーフミラー材の製膜)
樹脂A−1を180℃、3時間の真空乾燥後、一方、樹脂B−1を100℃の窒素下の乾燥後、それぞれ閉鎖系の搬送ラインにて、2台の二軸押出機に投入し、280℃で溶融させて、混練した。なお、ホッパー下部には、窒素パージを行った。次いで、2つのベント孔で、その真空圧を0.1kPa以下で真空ベントにより、オリゴマーや不純物などの異物を除去した。また、二軸押出機への供給原料とスクリュー回転数の比であるQ/Nsを、それぞれ、2と1.5に設定した。それぞれ、濾過精度6μmのFSSタイプのリーフディスクフィルタを10枚介した後、ギアポンプにて吐出比(積層比)が熱可塑性樹脂A/熱可塑性樹脂B=3/1になるように計量しながら、特許番号4552936記載の積層装置と同じ方法で801層積層装置にて合流させて、厚み方向に交互に801層積層された積層体とした。但し、層厚み分布は、特開2011−129110公報〔0034〕〜〔0036〕に記載した、A層、B層それぞれについて、3つの傾斜構造を有する積層体とし、最表層を厚膜層とした。一つの傾斜構造には、A層とB層が交互に267層積層されており、積層フィルムの両表面近傍が、最も層厚みが薄くなるように、3つの傾斜構造を配置する設計とした。また、3つの傾斜構造において、A層、もしくはB層の傾斜構造の薄膜層の設計において、最大層厚み/最小厚みの比である傾斜度を2.8とするスリット設計を採用した。次いで、該積層体をTダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度が25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、縦延伸機でラジエーションヒータで加熱し、延伸温度105℃、フイルム長手方向に3.3倍の延伸を行い、コロナ処理を施し、#4のメタバーで易接着層Iを両面に付与した。次いで、両端部をクリップで把持するテンターに導き110〜130℃、フイルム幅方向に4.2倍横延伸した後、次いで230℃の熱処理を施し、150℃で約3%のフイルム幅方向に弛緩処理を実施し、厚み95μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの層厚み分布は、A層、およびB層それぞれについて、3つの傾斜構造を含んでおり、薄膜層について、表層側から267層番目まで、A層およびB層とも表層側から層厚みが単調増加していく傾斜構造を有していた。フィルム厚み方向中央部の残りの267層分についても、同様に傾斜構造を有していた。また、表層の厚膜層は、1.5μmであった。適度な光沢感および腰の強いハーフミラー材を得ることができた。分光光度計による相対反射率は、波長400〜900nmの範囲において均一であり、無色であった。
また、α緩和温度は、メインピークが110℃に確認され、その肩となるところの高温側に146℃のピークが確認された。
(表示部の作製)
寸法40cm×30cm×厚み3mmのポリカーボネートでできた透明基材を準備し、粘着層に3M社製アクリル系粘着剤(OCA)8172を準備した。粘着層の厚みは、50μmである。クリーンルームで、シートラミネート機を用いて、最初に粘着層とハーフミラー材である積層フィルムと貼り合わせ、次いで、粘着層が付いた積層フィルムと透明基材との貼り合わせを行った。得られた表示部は、外観検査において、柚子肌はなく、粗大異物もなく、湿熱試験後の層間剥離および発泡などもない透明な表示部が得られた。さらに、ヘッドアップディスプレイとしての性能についても、良好な結果が得られた。ハーフミラー材、表示部、ヘッドアップディスプレイの評価結果を表1に示す。
【0051】
[実施例2]
実施例1から積層比と熱可塑性樹脂Bを、それぞれ1とB−1に変更し、縦延伸機での延伸温度95℃に変更する以外は、実施例1と同様にして、ハーフミラー材である積層フィルムを製膜した。得られたハーフミラー材、表示部、ヘッドアップディスプレイの評価結果を表1に示す。反射光による液晶パネルの画像は鮮明に見えるが、透過光でみる視力検査表の記号は、柚子肌が影響して、やや見えにくい程度のものであるが、ヘッドアップディスプレイ性能として、問題ないものであった。
【0052】
[実施例3〜4]
実施例2の樹脂B―1をそれぞれ、樹脂B−2、樹脂B−3に変更して、実施例2と同様にして、ハーフミラー材である積層フィルムを製膜した。得られたハーフミラー材、表示部、ヘッドアップディスプレイの評価結果を表1に示す。実施例3の表示部は、ある視野角で像が少し歪むものの、ヘッドアップディスプレイの性能としては、反射光による液晶パネルの画像、透過光でみる視力検査表の記号ともに鮮明に見え、ヘッドアップディスプレイ性能として良好な結果が得られた。一方、実施例4については、反射率が低いため液晶パネルの画像がやや見えにくいが、ヘッドアップディスプレイとして問題ないものであった。
【0053】
[実施例5]
次に実施例4の樹脂B―3を樹脂B−4へ変更し、実施例4と同様にして未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、縦延伸機で105℃、フイルム長手方向に3.3倍の延伸を行い、コロナ処理を施し、#4のメタバーで易接着層Iを両面に付与した。次いで、両端部をクリップで把持するテンターに導き110℃、フイルム幅方向に4.2倍横延伸した後、次いで230℃の熱処理を施し、150℃で約3%のフイルム幅方向に弛緩処理を実施し、厚み95μmの積層フィルムを得た。得られた表示部は、外観検査において、柚子肌はなく、粗大異物もなく、湿熱試験後の層間剥離および発泡などもない表示部が得られた。さらに、ヘッドアップディスプレイとしての性能についても、良好な結果が得られた。ハーフミラー材、表示部、ヘッドアップディスプレイの評価結果を表1に示す。
【0054】
[実施例6]
実施例5から積層比を、3.5に変更する以外は、実施例5と同様にして、ハーフミラー材である積層フィルムを製膜した。得られたハーフミラー材、表示部、ヘッドアップディスプレイの評価結果を表1に示す。柚子肌は全くみられず、ヘッドアップディスプレイとしての性能についても、良好な結果が得られた。
【0055】
[実施例7]
実施例5の樹脂B−4を樹脂B−5へ変更し、実施例5と同様にして、ハーフミラー材である積層フィルムを製膜した。得られたハーフミラー材、表示部、ヘッドアップディスプレイの評価結果を表1に示す。柚子肌は全くみられず、ヘッドアップディスプレイとしての性能についても、良好な結果が得られた。
【0056】
[実施例8]
実施例5の樹脂B−4を樹脂B−6へ変更し、実施例5と同様にして、ハーフミラー材である積層フィルムを製膜した。得られたハーフミラー材、表示部、ヘッドアップディスプレイの評価結果を表1に示す。反射光による液晶パネルの画像は鮮明に見えるが、透過光でみる視力検査表の記号は、見えにくくなっているが、ヘッドアップディスプレイ性能として、問題ないものであった。
【0057】
[実施例9]
樹脂A−1を180℃、3時間の真空乾燥後、一方、樹脂B−10を100℃の窒素下の乾燥後、それぞれ閉鎖系の搬送ラインにて、2台の二軸押出機に投入し、280℃で溶融させて、混練した。なお、ホッパー下部には、窒素パージを行った。次いで、2つのベント孔で、その真空圧を0.1kPa以下で真空ベントにより、オリゴマーや不純物などの異物を除去した。また、二軸押出機への供給原料とスクリュー回転数の比であるQ/Nsを、それぞれ、2と1.5に設定した。それぞれ、濾過精度6μmのFSSタイプのリーフディスクフィルタを10枚介した後、ギアポンプにて吐出比(積層比)が熱可塑性樹脂A/熱可塑性樹脂B=1/1になるように計量しながら、特許番号4552936記載の積層装置と同じ方法で801層積層装置にて合流させて、厚み方向に交互に801層積層された積層体とした。但し、層厚み分布は、特開2011−129110公報〔0034〕〜〔0036〕に記載した、A層、B層それぞれについて、3つの傾斜構造を有する積層体とし、最表層を厚膜層とした。一つの傾斜構造には、A層とB層が交互に267層積層されており、積層フィルムの両表面近傍が、最も層厚みが薄くなるように、3つの傾斜構造を配置する設計とした。また、3つの傾斜構造において、A層、もしくはB層の傾斜構造の薄膜層の設計において、最大層厚み/最小厚みの比である傾斜度を2.8とするスリット設計を採用した。次いで、該積層体をTダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度が25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、縦延伸機で145℃、フイルム長手方向に3.3倍の延伸を行い、コロナ処理を施し、#4のメタバーで易接着層Iを両面に付与した。次いで、両端部をクリップで把持するテンターに導き155℃、フイルム幅方向に4.2倍横延伸した後、次いで240℃の熱処理を施し、150℃で約3%のフイルム幅方向に弛緩処理を実施し、厚み95μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの層厚み分布は、A層、およびB層それぞれについて、3つの傾斜構造を含んでおり、薄膜層について、表層側から267層番目まで、A層およびB層とも表層側から層厚みが単調増加していく傾斜構造を有していた。フィルム厚み方向中央部の残りの267層分についても、同様に傾斜構造を有していた。また、表層の厚膜層は、1.5μmであった。適度な光沢感および腰の強いハーフミラー材を得ることができた。分光光度計による相対反射率は、波長400〜900nmの範囲において均一であり、無色であった。また、α緩和温度は、メインピークが144℃に確認され、その肩となるところに110℃のピークが確認された。ハーフミラー材の成形性においては、成形後に過度に伸ばされたところに破れがみられた。
(表示部の作製)
寸法40cm×30cm×厚み3mmのポリカーボネートでできた透明基材を準備し、粘着層に3M社製アクリル系粘着剤(OCA)8172を準備した。粘着層の厚みは、50μmである。クリーンルームで、シートラミネート機を用いて、最初に粘着層とハーフミラー材である積層フィルムと貼り合わせ、次いで、粘着層が付いた積層フィルムと透明基材との貼り合わせを行った。得られた表示部は、外観検査において、柚子肌はなく、粗大異物もなく、湿熱試験後の層間剥離および発泡などもない表示部が得られた。反射光による液晶パネルの画像は鮮明に見えるが、透過光でみる視力検査表の記号は、見えにくくなっているが、ヘッドアップディスプレイ性能として、問題ないものであった。ハーフミラー材、表示部、ヘッドアップディスプレイの評価結果を表1に示す。
【0058】
[実施例10]
実施例3の粘着層を厚み75μmの3M社製アクリル系粘着剤(OCA)8146―3へ変更する以外は、実施例3と同様にした。実施例3よりも柚子肌が、見えにくく、ヘッドアップディスプレイの性能としては、良好な結果が得られた。
【0059】
[実施例11〜12]
実施例2、3で得られた積層フィルムに、それぞれ、東レ製ポリエステルフィルム タイプU46の100μm、50μmのフィルムをポリエステル系熱硬化性接着剤を用いて、厚みが7μmとなるようにグラビア式のロールラミネータで貼り合わせを行い、60℃で乾燥し、貼り合わせ品でのハーフミラー材を作製した。以下、実施例2と同様にして、表示部を作製し、ヘッドアップディスプレイの性能を評価した。但し、粘着層との貼り合わせ面は、U46ポリエステルフィルム側とした。得られたハーフミラー材、表示部、ヘッドアップディスプレイの評価結果を表1に示す。柚子肌は全くみられず、ヘッドアップディスプレイとしての性能についても、良好な結果が得られた。
【0060】
[実施例13]
実施例2の積層フィルムの易接着Iを易接着IIに変更し、次いで、表示部作製時の粘着層を厚み25μm、巴川製紙製アクリル系粘着剤TD06Aに変更した。得られたハーフミラー材、表示部、ヘッドアップディスプレイの評価結果を表1に示す。柚子肌は少しみられ、異物、耐湿熱密着性の面で少し劣る結果となった。
【0061】
[実施例14〜16]
実施例5のハーフミラー材を用いて、透明基材をそれぞれ、実施例14は2mm厚のポリメチルメタクリレート板、実施例15は3mm厚のソーダガラス板に変更し、さらに、粘着層を、実施例15では、厚み50μmの3M社製アクリル系粘着剤(OCA)8146―2、実施例16では、厚み50μmの巴川製紙製アクリル系粘着剤TD06Aへ変更し、実施5と同様にして、表示部を作製した。得られたハーフミラー材、表示部、ヘッドアップディスプレイの評価結果を表1に示す。柚子肌は全くみられず、ヘッドアップディスプレイとしての性能についても、良好な結果が得られた。
【0062】
[実施例17]
積層装置を構成するスリット板において、積層フィルムの最表層が厚くなるようにスリットの間隙加工を行った積層装置を用いて、積層比を1.5と変更し、実施例5と同様にして、積層フィルムを得た。但し、易接着層を易接着IIへ変更。得られた積層フィルムの最表層厚みの厚膜層は、10μmの厚みを有していた。さらに、表示部の実施例5の粘着層を厚み50μmのリンテック製MO−3006Gへ変更して、表示部を作製した。得られたハーフミラー材、表示部、ヘッドアップディスプレイの評価結果を表1に示す。柚子肌は全くみられず、ヘッドアップディスプレイとしての性能についても、良好な結果が得られた。
【0063】
[参考例1]
実施例9の樹脂B−10を樹脂B−7へ変更し、易接着層を変更する以外は、実施例9と同様にして、未延伸フィルムを得た。次いで、この未延伸フィルムを、縦延伸機をパスし、両端部をクリップで把持するテンターに導き150℃、フイルム幅方向に4.2倍横延伸した後、次いで160℃の熱処理を施し、120℃で約3%のフイルム幅方向に弛緩処理を実施し、厚み95μmの積層フィルムを得た。得られたフィルムの面内方位における反射率を調べた結果、最大値と最小値の差が60%以上あったため、偏光反射体であることを確認した。なお、得られたフィルムは、フィルム幅方向中央部から切り出したため、主配向方位は、フィルム幅方向である。また、成形時にフィルム幅方向に裂けやすい特性を有していた。
(表示部の作製)
寸法40cm×30cm×厚み3mmのポリカーボネートでできた透明基材を準備し、粘着層に3M社製アクリル系粘着剤(OCA)8172を準備した。粘着層の厚みは、50μmである。クリーンルームで、シートラミネート機を用いて、透明基材において、ハーフミラー材の主配向方位が45°となるように、最初に粘着層とハーフミラー材である積層フィルムと貼り合わせ、次いで、粘着層が付いた積層フィルムと透明基材との貼り合わせを行った。得られた表示部は、外観検査において、線状の柚子肌が少し確認され、易接着層がないために帯電しやすく、粗大異物が少しみられた。
(ヘッドアップディスプレイ性能評価)
次いで、ヘッドアップディスプレイの性能評価を行った。本サンプルは、直線偏光の方位とハーフミラー材の偏光方位とでなす角度のうち狭角が10度以下のときは、画像が鮮明に見え、逆に80〜90度では、不鮮明に見える傾向がみられる傾向を示し、非常に設計し難いものであることを確認した。また、同じ基材、接着材料を用いて
図3に示した構成の表示部を作製したところ、色付きもみられた。偏光サングラスでの観察でも同様であった。一方、他の実施例においては、色付きは確認されなかった。ハーフミラー材、表示部、ヘッドアップディスプレイの評価結果を表1に示す。
【0064】
[実施例18]
実施例2の積層比を3に変更して、積層フィルムを得、さらに、粘着層をして厚み100μmの3M社製アクリル系粘着剤(OCA)8146―4へ変更して、表示部を作製した。
得られたハーフミラー材、表示部、ヘッドアップディスプレイの評価結果を表1に示す。ヘッドアップディスプレイとしての性能についても、良好な結果が得られた。
【0065】
[比較例1]
実施例4の積層比を3に変更して、積層フィルムを得、さらに、実施例4と同様にして、表示部を作製した。得られたハーフミラー材、表示部、ヘッドアップディスプレイの評価結果を表1に示す。ヘッドアップディスプレイとしての性能について、柚子肌はみられないが、液晶パネルの情報の視認性が悪く、良好な結果が得られなかった。
【0066】
[比較例2]
実施例2の樹脂B−1を樹脂B−8へ変更し、さらに、易接着Iを易接着IIへ変更して、実施例2と同様にして、積層フィルムを得た。粘着層の厚みを25μmへ変更した。得られたハーフミラー材、表示部、ヘッドアップディスプレイの評価結果を表1に示す。ヘッドアップディスプレイとしての性能について、柚子肌が酷く、液晶パネルの情報が正しく認識できないものであった。
【0067】
[比較例3]
実施例9の樹脂B−10を樹脂B−9へ変更し、さらに、易接着Iを易接着IIへ変更して、実施例9と同様にして、積層フィルムを得た。粘着層の厚みを25μmへ変更した。反射率が高すぎて、外部情報が認識できず、ヘッドアップディスプレイとして性能不良であった。また、輝度分布むらも測定不可能であった。
【0068】
[比較例4]
実施例2の表示部に用いる粘着層を変更し、得られたハーフミラー材、表示部、ヘッドアップディスプレイの評価結果を表1に示す。ヘッドアップディスプレイとしての性能について、50μm厚みの3M社製アクリル系粘着剤(OCA)8172から10μm厚みの巴川製紙製アクリル系粘着剤TD06Aに変更した。外観評価において、柚子肌が酷く、液晶パネルの情報が正しく認識できないものであった。
【0069】
【表1】
【0070】
【表1-1】