(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
缶蓋のカール部の外面に当接するアウター治具の押圧面と、前記カール部のエッジ部に当接するインナー治具の押圧面とを用いて前記カール部を押圧して前記エッジ部の全周を立ち上げる第1工程と、
アウター治具の押圧面がカール部の外面に当接する位置を押圧力に応じて変更させ、第1工程で立ち上げられた前記エッジ部の全周を外周側に折り曲げる第2工程と、
インナー治具の押圧面を第1工程と角度が異なる押圧面に変更して、第2工程で折り曲げられた前記エッジ部の全周を押し広げる第3工程と、
を有することを特徴とする缶蓋のカール部オープン方法。
缶蓋のカール部の外面に当接する傾斜角度の異なる一対の押圧面を有するアウター治具と、前記カール部のエッジ部に当接する傾斜角度の異なる一対の押圧面を有するインナー治具とを用いて前記カール部を外周側に折曲する方法であって、
アウター治具の一方の押圧面とインナー治具の一方の押圧面とを用いて前記カール部を押圧して前記エッジ部の全周を立ち上げる第1工程と、
アウター治具の他方の押圧面とインナー治具の一方の押圧面とを用いて前記カール部を押圧して第1工程で立ち上げられた前記エッジ部の全周を外周側に折り曲げる第2工程と、
アウター治具の他方の押圧面とインナー治具の他方の押圧面とを用いて第2工程で折り曲げられた前記エッジ部の全周を押し広げる第3工程と、
を有することを特徴とする缶蓋のカール部オープン方法。
前記アウター治具の一方の開口部の内径と、前記インナー治具の一方の開口部の外径とが相違することを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の缶蓋のカール部オープン装置。
【背景技術】
【0002】
周知のように、内容物を含む缶容器は、内容物の充填後、缶胴部のフランジ部に缶蓋を取り付け、缶蓋のカール部と前記フランジ部とを巻き締めることにより製造される。
図17(a)及び(b)に基づき缶蓋の一例を説明すれば、缶蓋1の外周は全周に亙り内周側に折曲して丸められたカール部2に形成されている。このカール部2の内周側にはL字状の折曲部3を有し、折曲部3のフラット部3aおよびカール部2には缶蓋1と缶胴部のフランジ部とを密着させるシーリングコンパウンドが塗布されている。
前記缶蓋はその品質管理の観点から、製造工程にて所定時間毎にサンプル抽出され、カールクリアランス、オーバラップ、プレースメント等の測定作業が実施されている。従来、前記測定作業時には、あらかじめ缶蓋のカール部を所望の状態に外周側へ開く(オープン)必要があるため、オープナー工具を用いて手作業でカール部を開いていた。このため、カール部の開き具合にばらつきが生じ、測定精度に影響を与えるおそれがあった。また、測定枚数の増加に伴って作業負担が増加し、さらにカール部のエッジ部などで作業員が負傷するおそれもあった。
そこで、缶蓋1のカール部2を所望の状態に開く方法として、特許文献1の缶蓋検査方法及び装置が提案されている。
図18(a)乃至(c)に基づき説明すれば、特許文献1には、缶蓋1の裏面を上にして図示省略のステージ上に載置し、該ステージと同軸回転可能に固定し、その後にカール部2の内側に爪5を降下させ、爪5を缶蓋1の外周方向に移動させてカール部2を起こし、この状態のまま前記ステージを回転させてカール部2の全周を略水平上に起こし、その後にローラ6によってカール部2を押圧して略水平に延ばすことが開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の缶蓋検査方法及び装置は、爪4で缶蓋1を起こした状態のままステージを回転させるため、エッジ部4から切り粉などが発生し、また、シーリングコンパウンドを傷つけて測定精度に影響を与えるおそれがある。
【0004】
また、ローラ6でカール部2を押圧する際にもシーリングコンパウンドを傷つけ易いため、ローラ6の位置決めや制御が難しく、却って作業性を悪化させるおそれもある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る缶蓋のカール部オープン方法及び装置を説明する。ここでは背景技術と同一構成は同一符号を用いて説明する。
【0020】
前記缶蓋のカール部オープン方法及び装置は、主に缶蓋製造工程中で抽出されたサンプルの缶蓋1のカール部2に対するカールクリアランス,オーバラップ,プレースメントの測定時に使用される。
【0021】
そして、前記缶蓋のカール部オープン装置は、前記各測定時にカール部2を所望状態(測定作業の観点からやや裏返り気味の状態)に開くカール部のオープン作業に使用されるプレス式カールオープナーである。また、前記カール部オープン装置は、缶蓋1を挟む一対の治具と、該両治具を加圧してカール部2を開くオープナー本体とを主体に構成されている。
【0022】
≪オープナー本体≫
図1〜
図3に基づきオープナー本体を説明する。このオープナー本体10は、エアープッシュ式に構成され、ほぼ五角形状のベースプレート11と、ベースプレート上に配置された三つの加圧シリンダー12、エア圧に応じて上下動する加圧シリンダー12内のピストン13,ピストン13の上昇により押し出されるプッシュプレート14,プッシュプレート14にプッシャーカバー15を介して押されて上昇するプッシャー16と、からなる加圧手段を備え、更に、プッシャー16の動作を制約するストッププレート17と、ストッププレート17の両サイドに立設された左右一対のポスト18と、各ポスト18に支持されてプッシャー16と対向する規制手段としてのトッププレート19と、加圧シリンダー12内のエア圧を加圧してピストン3を上昇させる図示省略のエア制御機構と、プッシャー16を戻す両プレート14,19間のリターンピストン20とを備えている。
このエア制御機構は、前記オープナー本体10のレギュレータと所定のエアタンクとを接続するホースと、エアタンクとレギュレータとの間のエアーオペレートバルブと、エアーオペレートバルブを開閉する開閉つまみと、レギュレータの圧力計と、レギュレータと加圧シリンダー12との間のメカニカルバルブと、メカニカルバルブを開閉する操作ボタン21とを有している。
【0023】
このエア制御機構によれば、前記開閉つまみを手動で一方向に回して前記エアーオペレートバルブを開けた後に前記圧力計の圧力が所定値か否か確認し、確認の結果、所定値以上であれば前記操作ボタンを押す。これにより前記メカニカルバルブが開いてエア圧でピストン13が上昇するため、プッシュプレート14が押し出され、プッシャー16を押して上昇させる。一方、操作ボタン21を離すと、メカニカルバルブが閉じてエア圧が抜けてピストン13が下降する。このときリターンピストン20にプッシュプレート14が下方向に押され、プッシャー16が同方向に引戻される。
プッシャー16は、
図1および
図3に示すように、円柱状を呈しており、外側のアウタープッシュ22と、内側のインナープッシュ23と、インナープッシュ23を弾支する弾性体としてのスプリング24とを有している。このアウタープッシュ22は円筒状に形成されている一方、インナープッシュ23は有底筒状に形成され、アウタープッシュ22内にインナープッシュ23が上下動自在に装着され、インナープッシュ23内にはスプリング24が軸方向に沿って配置されている。したがって、インナープッシュ23は、スプリング24に付勢されている一方、スプリング24が圧縮により弾性変形すればそれに追従して降下する。
【0024】
また、アウタープッシュ22は、下側の開口端部がプッシャーカバー15にボルト止めされ、該開口端部の内周には係合凹部(下端部側が切り欠かれている)25が周設されている一方、インナープッシュ23の開口端部の外周には係合凹部25に係合する係合凸部26が周設されている。この係合凸部26の軸方向の長さは係合凹部25の軸方向の長さよりも小さく形成され、係合凸部26が壁面25aに係合することでインナープッシュ23の動作範囲を制約している。
【0025】
≪各治具≫
図4乃至
図7に基づきカール部2の折曲に用いる治具を説明する。ここでは嵌脱自在な
図4(a)のアウター治具27と
図4(b)のインナー治具28とを用いる。このアウター治具27は、リング状(環状)で、該治具27の内周面に図示省略のピンを介して上下動自在に取り付けられたインサート部材30を有している。
【0026】
なお、
図5乃至
図7中では矢印P側(以下、P側とする。)が同図の状態における治具27,28の上側を示し、矢印Q側(以下、Q側とする。)が同状態の治具27,28の下側を示している。
【0027】
(1)アウター治具27
アウター治具27の内周は、
図5(a)(b)に示すように、二段の段差縮径状に形成され、
図5(b)に示すように、P側の段差には外周側から内周側に向かって下り勾配の傾斜面31が周設されている。この傾斜面31の傾斜角度は約25度に設定されている。
【0028】
また、アウター治具27は、Q側の開口端部41の肉厚が大きく設定され、該開口端部41には断面凹状の溝部32aが周設されている。この溝部32aの底壁33には前記ピンを挿通する一対の挿通孔34が対向する位置に形成されている。また、溝部32aの溝底は外周側から内周側に向かって下り勾配の傾斜面(押圧面)35となっている。この傾斜面35の傾斜角度は約5度に設定されている。尚、Q側の溝部32aの外径はP側の開口端部40の内径よりも大きくなるよう設定されている。
(2)インサート部材30
インサート部材30は、
図6(a)(b)に示すように、リング状に形成され、P側の開口端部の外縁には缶蓋1の折曲部3と相似形の受部36が形成されている。この受部36は、P側の開口端部から外周側に弧状に下り傾斜し、さらに外周側に延設され、アウター治具27に取り付けられて用いる際、この受部36とアウター治具27のP側の開口端部40との間には、
図4(a)に示すように、断面凹状の溝部32bが形成される。
【0029】
インサート部材30の内周には、
図6(b)に示すように、前記挿通孔34と連通する連通孔37が対向する位置にそれぞれ貫通形成されている。この各連通孔37は縦長の楕円形状に形成されているため、前記ピンが前記各孔34,37に連通されることにより、インサート部材30がアウター治具27の軸方向(P−Q方向)に沿って上下動自在となっている。
(3)インナー治具28
インナー治具28は、リング状に形成され、加圧時に両端開口端部がアウター治具27のQ側の溝部32a或いはP側の溝部32bのいずれかに嵌脱自在に嵌入する。このインナー治具28は、P側の開口端部の外径がQ側の開口端部の外径よりも大きく設定されて両開口端部の外径が相違し、その両開口端部にはそれぞれ傾斜面38,39が周設されている。
【0030】
詳細には、インナー治具28のP側の開口端部は、すり鉢状に形成され、開口端面が外周側から内周側に向かって下り勾配の傾斜面38となっている。一方、Q側の開口端部は切頭円錐状に形成され、外縁には外周側から内周側に向かって下り勾配の傾斜面39が周設されている。この傾斜面38の傾斜角度は約10度に設定されている一方、傾斜面39の傾斜角度は約45度に設定されている。
【0031】
≪カール部オープン方法≫
図8乃至
図12に基づき前記カール部オープン装置によるカール部オープン方法を説明する。本発明のカール部オープン方法は、
図8(a)に示すカール部オープン前の缶蓋1のカール部2に対して、上述した治具27,28のP,Q側の開口端部を反転させて段階的に押圧し、カール部2の全周を次第に外周側に折曲して開いていく方法である。
【0032】
図8に基づきカール部オープン方法の前処理(準備段階)を説明すれば、アウター治具27をプッシャー16上に溝部32aを下側として載置し、溝部32bにインナー治具28の傾斜面39を有するQ側の開口端部を嵌入させ、カール部2を挟み込んだ状態で両治具27,28を嵌合させる。
【0033】
このとき溝部32b内では、インサート部材30が進出しているため、受部36上面と傾斜面31との間に段差が生じ、カール部2の根元2aが受部36の上面36a(インサート部材30の平面)に当接している。すなわち、カール部2の根元2aは前記段差の近傍に位置し、カール部2の外周側(カール部2と傾斜面31との間)には空隙Eが発生している。なお、インナー治具28はP側とQ側の両開口端部の外径が相違しているため、反対側(P側)の開口端部を溝部32aに嵌入させることはできず、この点で誤使用・誤嵌合が防止できる。
【0034】
(1)第1工程
図10(a)及び(b)に基づきカール部オープン方法のカール部2のエッジ部4を立ち上げる第1工程を説明する。ここでは
図9の前処理の完了後に操作ボタン21を押し、両治具27,28が規制手段としてのトッププレート19(
図1参照)に押し当たるまで加圧手段のプッシャー16を上昇させ、プッシャー16,トッププレート19間で両治具27,28を挟んで加圧する。
【0035】
尚、この時、インナープッシュ23のスプリング24は、弾性変形で圧縮することなくインサート部材30を支え続け、前処理段階の状態のままインナー治具28のQ側の開口端部がアウター治具27の溝部32b内に入り込み、インナー治具28の傾斜面39に沿ってカール部2を全周に亙って押し広げる。
【0036】
この場合に
図10(b)に示すように、エッジ部4には矢印F方向の押圧力が加わるものの、カール部2の外周側には空隙Eが発生しているため、その根元2aを支点にエッジ部4が立ち上がるように押し広げられ、
図8(b)に示すように立ち上がった状態に折曲される。
【0037】
(2)第2工程
図11(a)及び(b)に基づきカール部オープン方法のエッジ部4を外周側に折曲する第2工程を説明する。ここでは、第1工程後にインナー治具28のQ側の開口端部がインサート部材30を更に押し込むことで、
図11(a)の矢印Gに示すように、インナープッシュ23内のスプリング24が圧縮されてインナープッシュ23が降下し、アウター治具27の溝部32b内の空隙Eが解消され、アウター治具27の傾斜面31とインサート部材30の受部36上面とが連続面となる。
【0038】
その結果、
図11(b)に示すように、カール部2は両治具27,28の傾斜面31,39間に挟まれるため、カール部2の外面に当接する位置が受部30の上面36aから傾斜面31に変位し、該傾斜面39によりエッジ部4には矢印F´の押圧力が加わる。このときカール部2の外周側はアウター治具27の傾斜面31に抑えられているため、折曲の支点がエッジ部4側にずれて押し広げられる。
【0039】
したがって、カール部2は、傾斜面39,31の角度差(約45度−約25度=約20度)から生じた隙間に応じた高さまで外周側に折曲される。これによりカール部2の全周が、
図8(c)に示すように、第1工程後のエッジ部が立ち上がった状態から外周側に折曲される。
【0040】
(3)第3工程
図12(a)(b)に基づきカール部オープン方法の第3工程を説明する。この工程は、操作ボタン21を離してプッシャー16を引戻した後に両治具27,28を取り出し、それぞれのP,Q側の開口端部を反転させて再度缶蓋1を挟んで実行される。
【0041】
すなわち、
図12(a)に示すように、アウター治具27をプッシャー16上に開口端部40を下側として載置し、缶蓋1のカール部2およびフラット部3aを傾斜面35に沿ってセットする。その後にインナー治具28の傾斜面38を有するP側の開口端部をアウター治具27の溝部32aに嵌入させ、カール部2を挟んだ状態で両治具27,28を嵌合させ、操作ボタン21を押す。この場合にインナー治具28は、両開口端部(P側,Q側)の外径が相違しているため、反転時の誤使用による加工順序の誤りも防止できる。
【0042】
ここでカール部2は、
図12(b)に示すように、インナー治具28の傾斜面38によってアウター治具27の傾斜面35に押し付けられるため、エッジ部4の全周が外周側に折曲されて延ばされる。このとき両傾斜面38,35の角度差(15度−5度=10度)から傾斜面38は、カール部2のシーリングコンパウンドRを避けてエッジ部4のみを押圧する。この点でカール部2は、
図8(d)に示すように、全周に亙って外周側に折曲されて開かれる。
【0043】
また、カール部2は、アウター治具27の傾斜面35の角度(5度)に沿って折曲されるため、フラット面で折曲された場合よりも測定時に作業性のよい形状に曲げることができる。
【0044】
このような装置によれば、プッシャー16上でカール部2を挟んだ状態で両治具27,28を嵌合させた後に操作ボタン21を押す作業を治具27,28のP側とQ側とを反転させて繰り返すだけで、カール部2の各測定が可能な状態に広げることができる。したがって、従来のように手作業で缶蓋1のカール部2を開く必要がなく、簡単かつ安全にカール部のオープン作業ができ、この点で作業負担が軽減され、作業員の負傷などが防止される。
【0045】
このとき各治具27,28の傾斜面31,35,38,39でカール部の全周を押し広げているため、カール部2の開き具合のばらつきも防止できる。また、両治具27,28にそれぞれ傾斜面31,35,38,39が形成されているため、カールオープンに使用する治具数を少なくすることでき、この意味でコストの抑制にも貢献できる。
【0046】
さらに特許文献1のようにエッジ部4を擦る、またはローラ6でカール部2を押圧することなくカール部2を開くことができるので、切り粉の発生やシールコンパウンドの損傷による測定精度の低下などを生じるおそれもない。
【0047】
(4)その他
尚、
図12に示す第3工程では傾斜面35,38間で缶蓋1のカール部2を挟み込んでいるが、シーリングコンパウンドRが厚めに塗布されている場合などは、傾斜面38がシーリングコンパウンドRに強く当たってカール部2の開きが悪化し、カールクリアランスの測定などに支障を来すおそれがある。
【0048】
そこで、必要に応じて第3工程後に操作ボタン21を離した後に両治具27,28間から缶蓋1を取り出し、両治具27,28のP側とQ側とを再度反転させた
図13に示す第4工程を必要に応じて実施してもよい。
【0049】
すなわち、第4工程では、アウター治具27をプッシャー16上に溝部32aを下側として載置し、溝部32b内にインナー治具28の傾斜面39を有するQ側の開口端部を嵌入する。この嵌入後にインナー治具28の傾斜面38に、
図8(d)に示すカール部2およびフラット部3aを載せ、その後に操作ボタン21を再度押す。
【0050】
この操作により両治具27,28がプッシャー16に押し出され、トッププレート19に押し当てられて加圧される。このときトッププレート19の底面はフラット(傾斜角度0度)なため、傾斜面38との角度差(15度)が第3工程よりも大きく、エッジ部4を押圧しやすい。
【0051】
したがって、この第4工程により、エッジ部4の全周をさらに外周側に折曲して延ばすことができ、この点でカールクリアランスの測定が可能な状態までカール部2の全周を広げることができる。
【0052】
≪他の実施形態≫
図14乃至
図16に基づき、本発明の他の実施形態を説明する。この
図14および
図15中、矢印P側(以下、P側とする。)が同図の状態におけるアウター治具45,インナー治具52の上側を示し、矢印Q側(以下、Q側とする。)が同状態の治具45,52の下側を示している。尚、本実施形態では上述したインサー部材30は使用しない。
【0053】
図14のアウター治具45は、リング状(環状)に形成されており、内周にフランジ部46が周設されている。このフランジ部46のP側と開口端部47との間には外周側から内周側に向かって下り勾配の傾斜面(押圧面)49が周設されている。この傾斜面49の傾斜角度は約25度に設定されている。また、フランジ部46のQ側には断面凹状の溝部50が周設され、該溝部50の溝底は外周側から内周側に向かった下り勾配の傾斜面(押圧面)51となっている。この傾斜面51の傾斜角度は約5度に設定されている。
一方、
図15のインナー治具52は、リング状(環状)に形成され、上下の開口端部に傾斜面(押圧面)53,54が周設されている。すなわち、インナー治具52のP側の開口端部はすり鉢状に形成され、開口端面が外周側から内周側に向かって下り勾配の傾斜面53となっている。一方、Q側の開口端部は切頭円錐状に形成され、開口端面が外周側から内周側に向かって下り勾配の傾斜面54となっている。この傾斜面53の傾斜角度は10度に設定され、傾斜面54の傾斜角度は45度に設定されている。
【0054】
図16に基づき両治具45,52を用いたカール部オープン方法を説明する。ここでも前記オープナー本体10を用いて、
図8(a)に示すオープン作業前における缶蓋1のカール部2を加工する。
【0055】
まず、アウター治具45を、
図14の状態から反転させプッシャー16上に傾斜面49を下側にして載置し、その後に
図16(a)に示すように、缶蓋1のフラット部3aをアウター治具45の傾斜面51に沿ってセットし、インナー治具52のQ側の開口端部を、アウター治具45の傾斜面51に嵌入させて、カール部2を挟んだ状態で両治具45,52を嵌合させる。この状態のまま操作ボタン21を押してプッシャー16とトッププレート19との間で加圧する。
【0056】
このときアウター治具45の傾斜面51は、外周側から内周側に向かった上り勾配となり、前記第1工程と同様に、缶蓋1のカール部2の外周側には空隙Eが発生する。したがって、カール部2の全周が、根元2aを支点にインナー治具52の傾斜面54によってエッジ部4が立ち上がるように押し広げられ、上述した
図8(b)に示す第1工程の立ち上がった状態に折曲される。この後に操作ボタン21を離してプッシャー16を戻し、両治具45,52を取り出す。
次に、
図16(b)に示すように、再度、アウター治具45のP側とQ側とを反転させてアウター治具45の傾斜面49に缶蓋1のカール部2の外周を当てるとともに、インナー治具52の傾斜面54を缶蓋1のエッジ部4に当てて、カール部2を挟んだ状態で両治具45,52を嵌合させる。この状態のまま操作ボタン21を押してプッシャー16とトッププレート19との間で再度加圧する。
【0057】
この場合には缶蓋1のカール部2の外周が傾斜面49に抑えられるため、折曲の支点がエッジ部4側に変位して押し広げられ、カール部2の全周が上述した
図8(c)に示すように、第1工程後のエッジ部が立ち上がった状態から、上述した第2工程と同様にさらに外周側に折曲される。この後に操作ボタン21を離してプッシャー16を戻し、両治具45,52を取り出す。
最後に、
図16(c)に示すように、両治具45,52のP側とQ側とを再度反転させて缶蓋1のフラット部3aをアウター治具45の傾斜面51に載置し、インナー治具52のP側の開口端部を溝部50に嵌入させ、カール部2を挟んだ状態で両治具45,52を嵌合させる。その後に操作ボタン21を押してプッシャー16とトッププレート19との間で再度加圧する。この場合、両傾斜面51,53の角度差(15度−5度=10度)が、上述した第3工程の傾斜面35、38の角度差と同等なため、カール部2のシーリングコンパウンドRを避けてエッジ部4のみを押圧し、上述した
図8(d)に示す缶蓋1のカール部2の全周が外周側に折曲されて開かれる。
【0058】
したがって、本例のアウター治具45,インナー治具52によれば、P側とQ側の反転回数がアウター治具27,インナー治具28よりも増えるものの、上述した実施形態と同様な加工が缶蓋1のカール部2に施され、その結果、簡単かつ安全にカール部のオープン作業ができ、作業負担が軽減され、作業員の負傷などが防止される。
【0059】
ここでカール部2の開きが悪ければ両治具45,52のP側とQ側とを再度反転させて、両治具45,52を重ねてインナー治具52の傾斜面53に缶蓋1のカール部2およびフラット部3aを載せ、上述した
図13に示す工程を行うことも可能である。
【0060】
尚、本発明の他の実施形態の場合、アウター治具45の両開口端部47,48の内径、及びインナー治具52の両開口端部53,54の外径は同径となっているが、本実施形態に示すように、前記内径及び外径を相違させて、反転時の誤使用による加工順序の誤りを防止することもできる。
【0061】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載された範囲内で変更して実施することができる。例えば前記治具27,28の各傾斜面31,35,38,39を有する4個の治具を用いて缶蓋1のカール部2を加工することもできる。この場合には前記各工程に応じて治具を交換する必要があるが、各治具の傾斜面を変更しながら前記各工程が実行され、前記治具27,28と同様に缶蓋1のカール部2の全周を、段階的に外周側に折曲することができる。