【実施例1】
【0010】
本発明による空気調和機の室外機1は、ビルや商業施設などに設置され、最大で70台程度の室内機に冷媒配管を介して接続するビル用マルチタイプの空気調和機に用いられるものである。
図1と
図2に示すように、室外機1は、側面から空気を吸い込んで冷媒と熱交換した後に天面から吹き出すタイプであり、筐体10と、筐体10の内部に収納された室外側冷媒回路3とを備えている。
【0011】
<室外機筐体>
筐体10は、大型で縦長な略直方体形状であり、ベース11と、ベース11の四方の角部または角部付近にそれぞれ配置され上端から下端まで鉛直に延びる支柱12a〜12dと、支柱12a〜12dの上端に固定される吹出口13備えた天板14と、前面側の支柱12aと支柱12dの間を連結する連結板15と、各支柱12a〜12dの上端を接続する4枚の連結パネル16からなる。ベース11の下面には、筐体10を設置場所に固定するための基礎脚11aが据え付けられている。これらは、鋼板材をプレス加工して形成される。
支柱12aと支柱12dの間には前面側を覆う前面パネル17が取り付けられている。前面パネル17は、連結パネル16の下側に配置される上部前面パネル170と、上部前面パネル170の下側に配置される下部前面パネル171とからなり、それぞれ支柱12aと支柱12dにネジで着脱自在に取り付けられ、
図2に示すように設置時やメンテナンス時には取り外すことができる。
【0012】
尚、以下、
図1において前面パネル17のある側を前面とし、支柱12a、12bのある側を左側面とし、支柱12c、12dのある側を右側面とし、支柱12b、支柱12cのある側を背面として説明する。
【0013】
天板14の中央が開口された吹出口13はファンガード18で覆われている。吹出口13の内部には図示しないが吹出口13を囲った筒状のベルマウスが設けられ、ベルマウス内に送風ファン19が配置されている。送風ファン19は図示しないが連結パネル16に固定されたモータ支持台に据付けられたファンモータにより回転駆動される。また、支柱12aと支柱12b、支柱12bと支柱12c、支柱12aと支柱12dの間はそれぞれ開口された吸込口20が形成されている。
【0014】
図2に示すように、設置時やメンテナンス時に前面パネル17を取り外すと、筺体10の内部には、室外側冷媒回路3と、電装品箱4と、連結板15が現れる。
【0015】
<室外側冷媒回路>
室外側冷媒回路3は、熱交換器31、圧縮機32、圧縮機用アキュムレータ33、オイルタンク(図示なし)、レシーバータンク(図示なし)、アキュムレータ34と、操作弁35などの機器およびこれらの機器を接続する冷媒配管36等とからなる。
熱交換器31は、ベース11上に背面と左右側面の三方の吸込口20に沿って設けられる。
圧縮機32と圧縮機用アキュムレータ33は、筺体10内の前面側中央に配置され、圧縮機32と圧縮機用アキュムレータ33の周囲は鋼板材を折り曲げ加工して形成した圧縮機室37で囲まれている。
【0016】
上記の構成により、送風ファン19の回転により筺体10の三方の吸込口20から吸い込まれた空気は、熱交換器31で冷媒と熱交換した後に、筐体10のベルマウスと送風ファン19で上部に導かれ吹出口13から吹き出される。
【0017】
<電装品箱>
電装品箱4は、
図2と
図3に示すように、鋼板材を折り曲げ加工して形成した前面が開口された箱体状の電装品箱本体40と、電装品箱本体40の開口を塞ぐように取り付けられる電装品箱蓋41とからなる。電装品箱本体40の左側面には把手42を備える。
【0018】
電装品箱4は、電装品箱本体40の右側面上端が連結パネル16に、右側面下端が連結板15に片持ちヒンジ21、22によってそれぞれ回動可能に軸支されており、
図4に示すように把手42により開き戸のように開閉するようになっている。これにより、筺体10内で電装品箱4の奥側に配置されている室外側冷媒回路20の各機器がメンテナンス可能となる。
【0019】
<電装品箱本体>
電装品箱本体40は、
図3に示すように、左右両端が前方に折れ曲がった背面板401と、背面板401の上端を塞ぐ箱体状の上面板402と、背面板401の左右両端の内側に背面板401を補強するために固着される側面板403、404とからなる。側面板403、404の前端は内側に向かいほぼ直角に折り曲げられ電装品箱蓋41がネジ止め固定される。
【0020】
<電装品箱本体−背面板>
背面板401は内側に基板取付台46を備える。基板取付台46には、
図3に示すように電装部品5が配置されている。電装部品5には、基板取付台46の中央で室外側冷媒回路3を制御するための各種電子部品が実装されたメイン制御基板50やトランス56、メイン制御基板50に商用電源から供給されるAC電源を供給する第2端子台57および右側上方のインバータ基板54、スイッチング素子58等がある。
従来の最大24台までの室内機を接続する室外機ではスイッチング素子はインバータ基板54の中に搭載されていたが、最大70台までの室内機を接続する本発明の室外機1では、圧縮機32に流れる電流が大きくなる。そのため大電流を切換えるスイッチング素子も大きくなりインバータ基板54に搭載できなくなる。そこでインバータ基板54の下に別途スイッチング素子58が設けられている。
【0021】
<電装品箱本体−導風板>
背面板401の下端には、
図3、
図5、
図6に示すようにL字状に折り曲げられた係止部401aが形成され、係止部401aの前方に導風板43が固定される。
導風板43は、係止部401aからほぼ垂直に立設される吸気部432を有し、吸気部432に電装品箱4内に空気を取り込むための吸気口44が形成されている。
図3に示すように、吸気口44は、吸気部432の延在方向(
図3では左右方向)に沿って所定間隔で多数穿設されている。吸気部432の天面は後述するガイド部433となる。また、導風板43には、吸気部432の下端が下方に延出した面に複数のケーブル取入孔431が設けられている。
【0022】
<電装品箱蓋>
電装品箱蓋41は、
図6に示すように電装品箱本体40の正面開口を塞ぐ大きさの板状に形成されている。電装品箱蓋41の下端側は、L字状に折り曲げられた折曲部411が形成されており、折曲部411に沿ってシール材60が一体的に貼り合わせられている。
シール材60は、例えばポリエチレンやポリスチレンなどの合成樹脂製の断面四角形の棒状を呈し、折曲部411の内面に沿って両面粘着テープまたは接着剤を介して貼り付けられている。
【0023】
これによれば、シール材60が導風板43の外側面に沿って当接することにより、電装品箱4の下面開口を確実に塞ぐことができるばかりでなく、電装品箱4がモータ振動などによってビビリ音を発生することを防止できる。さらには、導風板43とシール材60との間から引き出されるケーブル7にシール材60が密着するため、ケーブル7の隙間を塞いで虫などの侵入をより確実に塞ぐことができる。
【0024】
電装品箱4内の空気を排気する排気口45は、上面板402と電装品箱蓋41の間に形成された隙間を利用して電装品箱4内の空気を排気している。
【0025】
最大70台までの室内機を接続する本発明の室外機1は、圧縮機32に流れる大電流を切換えるためインバータ基板54の下に別途スイッチング素子58が設けられているが、スイッチング素子58はケーブル7を直接接続できる端子がないため圧縮機32との間を中継する専用の第1端子台53の増設が必要となる。
そこで第1端子台53の増設場所を確保するために、電装品箱本体40内では大型の電子部品であるコンデンサ52を電装品箱本体40内から電装品箱本体40の背面側に設置させる。
【0026】
<コンデンサケース>
電装品箱本体40は、
図4から
図6に示すように、背面にインバータ基板54に搭載されたパワーモジュールとスイッチング素子58等の発熱部品を冷却するヒートシンク51と、背面板401の一部に開口部401bを設け、開口部401bには開口部401bを覆い筺体10の背面側に向かって膨出する箱型のコンデンサケース47を備える。
コンデンサケース47の位置は圧縮機室37の上方で、圧縮機室37や室外側冷媒回路から引き出される冷媒配管36よりも前方にあたり、圧縮機32や操作弁35やファンモータと電装品箱4内の電装部品5を接続するケーブル7が納まっているだけで、スペース的にコンデンサケース47を設けても他の部品に影響を与えることはなく、コンデンサケース47を設けることで電装品箱4が従来と共通の筺体でも電装品箱に搭載する電装部品5(スイッチング素子58と第1端子台53)の増設に対応することができる。
【0027】
コンデンサケース47は、
図5に示すように、背面板471と上面板472と底面板473とを組み合わせて前面側(電装品箱側)が開口された箱型状に形成され、背面板471にコンデンサ取付台474がスポット溶接される。
コンデンサケース47内には2台のコンデンサ52を有する。コンデンサ52はコンデンサ端子521が開口部401bよりも前面寄りになるようにバンド522でコンデンサ取付台474に固定される。
コンデンサケース47の奥行きは、コンデンサ端子521が開口部401bよりも前面寄りに位置するようにコンデンサ52の奥行きとコンデンサ取付台474の奥行きに合わせてある。
【0028】
<端子台支持台>
背面板401の開口部401bに合わせ基板取付台46にも開口部46aを設ける。開口部46aの前面側には、
図5と
図6に示すように、コンデンサ52のコンデンサ端子521の絶縁に必要な空間を設けてコンデンサ端子521を囲うように板金を折り曲げ加工した端子台支持台48が固定されている。
端子台支持台48は、前面に第1端子台53を備え、前面よりも一段下がった面にコネクタ551で固定された電流センサ55を備える。
また、端子台支持台48は、前面側から基板取付台46に向かい脚部481を備え、この脚部481が基板取付台46の開口部46aの周囲に固定される。脚部481の底面には導風板43の吸気口44に対応する位置に複数箇所の切欠が設けられている。この切欠が空気の入口用の通風口482となる。
尚、端子台支持台48の天面側には脚部481はなく、通風口482から流れた空気の出口用の通風口483となるとともに、トランス56やインバータ基板54とコンデンサ52のコンデンサ端子521とを繋ぐケーブル70の経路ともなる。
【0029】
第1端子台53は、スイッチング素子58と圧縮機32の間を中継し圧縮機32を駆動するモータに三相電源を供給する端子台である。
図3と
図6に示すように、スイッチング素子58から引き出されたケーブル71が電流センサ55を介して第1端子台53の上部に接続され、第1端子台53の下部に接続されたケーブル72はケーブル取入孔431を通り圧縮機32のモータへ接続される。
【0030】
室外機と接続する室内機の台数が少ない従来例の場合は第1端子台53は不要であり、インバータ基板から圧縮機へケーブルで直接接続される。本発明はスイッチング素子58と第1端子台53が増設されても、従来と共通の電装品箱4の筺体で対応できるものである。
【0031】
<通風経路>
次に、電装品箱4内の放熱について説明する。
図6に示すように、導風板53には、吸気口531から吸い込まれた空気Sをメイン制御基板50の裏面側や端子台取付台48の通風口482へと導くガイド部433が設けられている。ガイド部433は、吸気口44の軸線の延長線上に、その一部が張り出すように形成されており、吸気口44から入った空気Sがガイド部433に衝突することで、降雨時などに空気に含まれるミスト状の水を分離することができるばかりでなく、空気の流速を一定にすることができる。
導風板43とガイド部433を通り抜けた空気Sは、一部が端子台支持台48の脚部481の通風口482に流れ込む。空気Sは開口部401b、46aからコンデンサケース47へ流れ込みコンデンサ52から放熱された熱を冷却する。温められた空気は開口部401b、46aから抜け、通風口483から電装品箱4内に出る。空気Sは、電装品箱4の中の熱を吸収しながら電装品箱4の中を上に上昇してゆき、最後に電装品箱4の前面上部に形成される排気口45から箱外に排気される。
これによれば、空気の自然な対流によって冷たい空気Sが電装品箱4の下部から吸気され、電装品類によって温められた空気が電装品箱4の上部から排気されるため、冷却効率がよい。
【0032】
また、電装品箱4で場所を占めるコンデンサ52を電装品箱4の背面側に膨出させ、その手前に第1端子台53を設けられたことで、電装品箱を従来と共通の筺体で低能力機種から高能力機種や高性能機種まで補える室外機となる。