特許第5966786号(P5966786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966786
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】可変容量型過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/24 20060101AFI20160728BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   F02B37/24
   F02B39/00 D
   F02B39/00 N
   F02B39/00 T
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-198085(P2012-198085)
(22)【出願日】2012年9月10日
(65)【公開番号】特開2014-51942(P2014-51942A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】植田 隆文
(72)【発明者】
【氏名】岩上 玲
(72)【発明者】
【氏名】吉田 能成
(72)【発明者】
【氏名】徳江 直樹
(72)【発明者】
【氏名】西岡 将
(72)【発明者】
【氏名】石井 幹人
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−144545(JP,A)
【文献】 特開2010−190092(JP,A)
【文献】 特開2010−112195(JP,A)
【文献】 特開2006−125588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンハウジング内におけるタービンスクロール流路とガス排出口との間にタービンインペラを囲むように配設されかつ前記タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積を可変とする可変ノズルユニットを装備した可変容量型過給機において、
前記可変ノズルユニットは、
前記タービンハウジングの内壁面に取付ボルトによって一体的に設けられ、複数の第1支持穴が円周方向に等間隔に貫通形成され、前記タービンインペラにおける複数のタービンブレードの外縁を覆うシュラウドリングと、
前記シュラウドリングに対して前記タービンインペラの軸方向に離隔した位置に前記シュラウドリングと一体的に設けられ、複数の第2支持穴が前記シュラウドリングの複数の前記第1支持穴に整合するように円周方向に等間隔に貫通形成されたノズルリングと、
前記シュラウドリングの対向面と前記ノズルリングの対向面との間に円周方向に等間隔に配設され、前記タービンインペラの軸心に平行な軸心回りに正逆方向へ回動可能であって、前記軸方向一方側の側面に前記シュラウドリングの対応する前記第1支持穴に回動可能に支持される第1ノズル軸が一体形成され、前記軸方向他方側の側面に前記ノズルリングの対応する前記第2支持穴に回動可能に支持される第2ノズル軸が前記第1ノズル軸と同軸状に一体形成された複数の可変ノズルと、を備え、
前記ノズルリングの対向面の反対面側が前記タービンスクロール流路に連通し、前記タービンハウジングの前記内壁面が前記取付ボルトの締結力によって前記シュラウドリングの対向面の反対面における前記第1支持穴の径方向外側に密着する連続した環状の密着部を有し、前記シュラウドリングの複数の前記第1支持穴が前記タービンインペラの出口側に連通するようなっていることを特徴とする可変容量型過給機。
【請求項2】
前記タービンハウジングの前記内壁面における前記ガス排出口の入口側に環状の嵌合凹部が前記タービンインペラと同心状に形成され、前記シュラウドリングの対向面の反対面の内周縁側に前記タービンハウジングの前記嵌合凹部に嵌合する環状の嵌合凸部が前記ガス排出口側へ突出して形成され、前記タービンハウジングの前記密着部が前記嵌合凹部の径方向外側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の可変容量型過給機。
【請求項3】
前記タービンハウジングの前記内壁面における前記密着部の径方向内側と前記シュラウドリングの対向面の反対面との間に前記シュラウドリングの複数の前記第1支持穴に連通した連絡通路が区画形成され、前記タービンハウジングの前記嵌合凹部及び前記シュラウドリングの前記嵌合凸部のうち少なくともいずれかに前記連絡通路及び前記タービンインペラの出口側に連通した切欠が形成されるか、又は前記シュラウドリングの前記嵌合凸部及び前記タービンハウジングの前記嵌合凹部の周縁のうち少なくともいずれかに前記連絡通路及び前記タービンインペラの出口側に連通した連絡穴が形成され、前記シュラウドリングの複数の前記第1支持穴が前記連絡通路及び前記切欠又は前記連絡穴を介して前記タービンインペラの出口側に連通するようになっていることを特徴とする請求項2に記載の可変容量型過給機。
【請求項4】
前記ノズルリングの対向面の反対面側から前記タービンインペラの入口側への排気ガスの漏れを抑えるシール手段が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の可変容量型過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積(流量)を可変とする可変ノズルユニットを装備した可変容量型過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可変容量型過給機のタービンハウジング内におけるタービンスクロール流路とガス排出口との間にタービンインペラを囲むように配設される可変ノズルユニットについて種々の開発がなされており、本願の出願人も既に可変ノズルユニットについて開発して出願している(特許文献1等参照)。そして、その先行技術に係る可変ノズルユニットの具体的な構成は、次のようになる。
【0003】
タービンハウジング内には、タービンインペラにおける複数のタービンブレードの外縁を覆うシュラウドリングが設けられており、このシュラウドリングには、複数の第1支持穴が円周方向に等間隔に貫通形成されている。また、シュラウドリングに対してタービンインペラの軸方向に離隔対向した位置には、ノズルリングがシュラウドリングと一体的に設けられており、このノズルリングには、複数の第2支持穴がシュラウドリングの複数の第1支持穴に整合するように円周方向に等間隔に貫通形成されている。
【0004】
シュラウドリングの対向面とノズルリングの対向面との間には、複数の可変ノズルが円周方向に等間隔に配設されており、各可変ノズルは、タービンインペラの軸心に平行な軸心回りに正逆方向(開閉方向)へ回動可能である。また、各可変ノズルの前記軸方向一方側の側面には、第1ノズル軸が一体形成されており、各可変ノズルの第1ノズル軸は、シュラウドリングの対応する第1支持穴に回動可能に支持されている。更に、可変ノズルの前記軸方向他方側の側面には、第2ノズル軸が第1ノズル軸と同軸状に一体形成されており、各可変ノズルの第2ノズル軸は、ノズルリングの対応する第2支持穴に回動可能に支持されている。ここで、複数の可変ノズルを正方向(開方向)へ同期して回動させると、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積が大きくなると共に、複数の可変ノズルを逆方向(閉方向)へ同期して回動させると、前記排気ガスの流路面積が小さくなるようになっている。
【0005】
ノズルリングの対向面の反対面側は、タービンスクロール流路に連通してある。また、シュラウドリングの外縁部とタービンハウジングの内壁面との間には、シュラウドリングの対向面の反対面側(各可変ノズルの第1ノズル軸の端面側)とタービンスクロール流路を気密にシール(遮断)する環状のシールカバーが設けられてあって、シュラウドリングの対向面の反対面側は、タービンインペラの出口側に連通してある。
【0006】
従って、ノズルリングの対向面の反対面側がタービンスクロール流路に連通し、シュラウドリングの対向面の反対面側とタービンスクロール流路をシールカバーによって気密にシール(遮断)した状態で、シュラウドリングの対向面の反対面側がタービンインペラの出口側に連通してあるため、可変容量型過給機の運転中、各可変ノズルにおける第1ノズル軸の端面に働く圧力を第2ノズル軸の端面に働く圧力よりも十分に小さくすることができる。これにより、各可変ノズルをその圧力差によってシュラウドリングの対向面側に寄せて、各可変ノズルの前記軸方向一方側の側面とシュラウドリングの対向面との間のサイドクリアランスを極力小さくすることができる。よって、各可変ノズルの前記軸方向一方側の側面とシュラウドリングの対向面との間からの漏れ流れを抑えて、タービンブレードのチップ側部分(ミッドスパン側からチップ側にかけての部分)に沿う排気ガスの流れを安定させて、可変容量型過給機のタービン効率を十分に高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−144545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、先行技術に係る可変ノズルユニットにおいては、前述のように、各可変ノズルをシュラウドリングの対向面側に寄せて、可変容量型過給機のタービン効率を十分に高めることができるものの、シュラウドリングの対向面の反対面側とタービンスクロール流路を気密にシールする環状のシールカバーが可変ノズルユニットの必須の構成要素、換言すれば、可変容量型過給機の必須の構成要素になる。そのため、可変容量型過給機の部品点数が増えて、可変容量型過給機の構成が複雑化すると共に、可変容量型過給機の組立性が低下するという問題がある。つまり、可変容量型過給機の構成の簡略化及び組立性の向上を図りつつ、可変容量型過給機のタービン効率を十分に高めることが困難であるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成の可変容量型過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴は、タービンハウジング内におけるタービンスクロール流路とガス排出口との間にタービンインペラを囲むように配設されかつ前記タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積(流量)を可変とする可変ノズルユニットを装備した可変容量型過給機において、前記可変ノズルユニットは、前記タービンハウジングの内壁面(前記タービンハウジング内における前記タービンスクロール流路と前記ガス排出口との間の内壁面)に取付ボルト(締結ボルト)によって一体的に設けられ、複数の第1支持穴が円周方向に等間隔に貫通形成され、前記タービンインペラにおける複数のタービンブレードの外縁を覆うシュラウドリングと、前記シュラウドリングに対して前記タービンインペラの軸方向に離隔した位置に前記シュラウドリングと一体的に設けられ、複数の第2支持穴が前記シュラウドリングの複数の前記第1支持穴に整合するように円周方向に等間隔に貫通形成されたノズルリングと、前記シュラウドリングの対向面と前記ノズルリングの対向面との間に円周方向に等間隔に配設され、前記タービンインペラの軸心に平行な軸心回りに正逆方向(開閉方向)へ回動可能であって、前記軸方向一方側の側面に前記シュラウドリングの対応する前記第1支持穴に回動可能に支持される第1ノズル軸が一体形成され、前記軸方向他方側の側面に前記ノズルリングの対応する前記第2支持穴に回動可能に支持(貫通支持)される第2ノズル軸が前記第1ノズル軸と同軸状に一体形成された複数の可変ノズルと、を備え、前記ノズルリングの対向面の反対面側が前記タービンスクロール流路に連通し、前記タービンハウジングの前記内壁面が前記取付ボルトの締結力によって前記シュラウドリングの対向面の反対面における前記第1支持穴の径方向外側に密着する連続した環状の密着部を有し、前記シュラウドリングの複数の前記第1支持穴が前記タービンインペラの出口側に連通するようなっていることを要旨とする。
【0011】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「配設され」とは、直接的に配設されたことの他に、別部材を介して間接的に配設されたことを含む意であって、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、別部材を介して間接的に設けられたことを含む意である。
【0012】
本発明の特徴によると、エンジン回転数が高回転域にあって、排気ガスの流量が多い場合には、複数の前記可変ノズルを正方向(開方向)へ同期して回動させることにより、前記タービンインペラ側へ供給される排気ガスのガス流路面積を大きくして、多くの排気ガスを供給する。一方、エンジン回転数が低回転域にあって、排気ガスの流量が少ない場合には、複数の前記可変ノズルを逆方向(閉方向)へ同期して回動させることにより、前記タービンインペラ側へ供給される排気ガスのガス流路面積を小さくして、排気ガスの流速を高める。これにより、排気ガスの流量の多少に関係なく、前記タービンインペラによって回転力を十分かつ安定的に発生させることができる。
【0013】
前述の作用の他に、前記タービンハウジングの前記内壁面が環状の前記密着部を有しているため、前記タービンハウジングの前記密着部、及び前記シュラウドリングの対向面の反対面における前記タービンハウジングの前記密着部に密着(接触)する部位にシール面としての機能を発揮させて、前記シュラウドリングの対向面の反対面における前記密着する部位の径方向内側と前記タービンスクロール流路を気密にシール(遮断)することができる。換言すれば、シールカバーを用いることなく、前記シュラウドリングの対向面の反対面における前記密着する部位(前記密着部)の径方向内側と前記タービンスクロール流路を気密にシールすることができる。そして、前記ノズルリングの対向面の反対面側が前記タービンスクロール流路に連通し、前記シュラウドリングの複数の前記第1支持穴が前記タービンインペラの出口側に連通するようになっているため、前記可変容量型過給機の運転中、各可変ノズルにおける前記第1ノズル軸の端面に働く圧力を前記第2ノズル軸の端面に働く圧力よりも十分に小さくすることができる。これにより、シールカバーを用いることなく、各可変ノズルをその圧力差によって前記シュラウドリングの対向面側に寄せて、各可変ノズルの前記軸方向一方側の側面と前記シュラウドリングの対向面との間のサイドクリアランスを極力小さくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シールカバーを用いることなく、前記可変容量型過給機の運転中、各可変ノズルを前記シュラウドリングの対向面側に寄せて、各可変ノズルの前記軸方向一方側の側面と前記シュラウドリングの対向面との間のサイドクリアランスを極力小さくできるため、前記可変容量型過給機の部品点数を減らしつつ、各可変ノズルの前記軸方向一方側の側面とシュラウドリングの対向面との間からの漏れ流れを抑えることができる。そのため、前記可変容量型過給機の構成の簡略化及び組立性の向上を図りつつ、前記タービンブレードのチップ側部分(ミッドスパン側からチップ側にかけての部分)に沿う排気ガスの流れを安定させて、前記可変容量型過給機のタービン効率を十分に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、図3における矢視部Iの拡大図である。
図2図2は、図1におけるII-II線に沿った図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係る可変容量型過給機の正断面図である。
図4図4は、複数の取付ピンとガイドリングとストッパとの関係を示す斜視図である。
図5図5は、図1におけるV-V線に沿った図である。
図6図6は、図1におけるVI-VI線に沿った図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係る可変容量型過給機の部分正断面図である。
図8図8は、図7におけるVIII-VIII線に沿った図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1から図6を参照して説明する。なお、図面に示すとおり、「R」は、右方向、「L」は、左方向である。
【0017】
図3に示すように、本発明の第1実施形態に係る可変容量型過給機1は、エンジン(図示省略)からの排気ガスのエネルギーを利用して、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)するものである。そして、可変容量型過給機1の具体的な構成等は、以下のようになる。
【0018】
可変容量型過給機1は、ベアリングハウジング3を具備しており、ベアリングハウジング3内には、ラジアルベアリング5及び一対のスラストベアリング7が設けられている。また、複数のベアリング5,7には、左右方向へ延びたロータ軸(タービン軸)9が回転可能に設けられており、換言すれば、ベアリングハウジング3には、ロータ軸9が複数のベアリング5,7を介して回転可能に設けられている。
【0019】
ベアリングハウジング3の右側には、コンプレッサハウジング11が設けられており、このコンプレッサハウジング11内には、遠心力を利用して空気を圧縮するコンプレッサインペラ13がその軸心(換言すれば、ロータ軸9の軸心)C周りに回転可能に設けられている。また、コンプレッサインペラ13は、ロータ軸9の右端部に一体的に連結されたコンプレッサホイール(コンプレッサディスク)15と、このコンプレッサホイール15の外周面に周方向に等間隔に設けられた数枚のコンプレッサブレード17とを備えている。
【0020】
コンプレッサハウジング11におけるコンプレッサインペラ13の入口側(コンプレッサハウジング11の右側部)には、空気を導入するための空気導入口19が形成されており、この空気導入口19は、空気を浄化するエアクリーナ(図示省略)に接続可能である。また、ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング11との間におけるコンプレッサインペラ13の出口側には、圧縮された空気を昇圧する環状のディフューザ流路21が形成されている。更に、コンプレッサハウジング11の内部には、渦巻き状のコンプレッサスクロール流路23が形成されており、このコンプレッサスクロール流路23は、ディフューザ流路21に連通してある。そして、コンプレッサハウジング11の適宜位置には、圧縮された空気を排出する空気排出口25が形成されており、この空気排出口25は、コンプレッサスクロール流路23に連通してあって、エンジンの吸気マニホールド(図示省略)に接続可能である。
【0021】
図1及び図3に示すように、ベアリングハウジング3の左側には、タービンハウジング27が設けられており、このタービンハウジング27内には、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させるタービンインペラ29が軸心(タービンインペラ29の軸心、換言すれば、ロータ軸9の軸心)C周りに回転可能に設けられている。また、タービンインペラ29は、ロータ軸9の左端部に一体的に設けられたタービンホイール(タービンディスク)31と、このタービンホイール31の外周面に周方向に等間隔に設けられた複数のタービンブレード33とを備えている。
【0022】
タービンハウジング27の適宜位置には、排気ガスを導入するためのガス導入口35が形成されており、このガス導入口35は、エンジンの排気マニホールド(図示省略)に接続可能である。また、タービンハウジング27の内部には、渦巻き状のタービンスクロール流路37が形成されており、このタービンスクロール流路37は、ガス導入口35に連通してある。そして、タービンハウジング27におけるタービンインペラ29の出口側(タービンハウジング27の左側部)には、排気ガスを排出するガス排出口39が形成されており、このガス排出口39は、排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置(図示省略)に接続可能である。更に、タービンハウジング27内におけるタービンスクロール流路37とガス排出口39との間には、環状の収容凹部41が形成されている。
【0023】
タービンハウジング内におけるタービンスクロール流路37とガス排出口39との間には、タービンインペラ29側へ供給される排気ガスの流路面積(流量)を可変とする可変ノズルユニット43がタービンインペラを囲むように配設されている。そして、可変容量型過給機1に装備した可変ノズルユニット43の構成の詳細は、次のようになる。
【0024】
図1図3に示すように、タービンハウジング27内の収容凹部41の底面(タービンハウジング27の内壁面の1つ)41fには、シュラウドリング45が複数の取付ボルト(締結ボルト)47によって一体的に設けられており、このシュラウドリング45は、タービンインペラ29と同心状に位置してあって、複数のタービンブレード33の外縁(先端縁)を覆うようになっている。また、シュラウドリング45には、複数の第1支持穴49が円周方向に等間隔に貫通形成されている。なお、各取付ボルト47は、タービンハウジング27に貫通形成した挿通穴51に挿通してあって、シュラウドリング45に形成したねじ穴53に螺合してある。
【0025】
シュラウドリング45に対して左右方向(タービンインペラ29の軸方向)に離隔対向した位置には、ノズルリング55が複数の連結ピン57を介してシュラウドリング45と一体的かつ同心状に設けられている。また、ノズルリング55には、複数の第2支持穴59がシュラウドリング45の複数の第1支持穴49に整合するように円周方向に等間隔に貫通形成されている。なお、複数の連結ピン57は、シュラウドリング45の対向面とノズルリング55の対向面との間隔を設定する機能を有している。
【0026】
シュラウドリング45の対向面とノズルリング55の対向面との間には、複数の可変ノズル61が円周方向に等間隔に配設されており、各可変ノズル61は、タービンインペラ29の軸心Cに平行な軸心周りに正逆方向(開閉方向)へ回動可能である。また、各可変ノズル61の左側面(タービンインペラ29の軸方向一方側の側面)には、第1ノズル軸63が一体形成されており、各可変ノズル61の第1ノズル軸63は、シュラウドリング45の対応する第1支持穴49に回動可能に支持されている。更に、各可変ノズル61の右側面(タービンインペラ29の軸方向他方側の側面)には、第2ノズル軸65が第1ノズル軸63と同心状に一体形成されており、各可変ノズル61の第2ノズル軸65は、ノズルリング55の対応する第2支持穴59に回動可能に支持(貫通支持)されている。
【0027】
ノズルリング55の対向面の反対面側には、環状のリンク室67が形成されており、このリンク室67内には、複数の可変ノズル61を同期して正逆方向(開閉方向)へ回動させるためのリンク機構69が配設されてあって、リンク機構69は、複数の可変ノズル61の第2ノズル軸65に連動連結してある。そして、可変ノズルユニット43におけるリンク機構69の具体的な構成は、次のようになる。
【0028】
図1及び図4に示すように、ノズルリング55の対向面の反対面(右側面)には、3つの取付ピン71が円周方向に間隔を置いて配設されており、各取付ピン71は、ノズルリング55の第2支持穴59よりも径方向外側に位置している。また、複数の取付ピン71の右端面(タービンインペラ29の軸方向他方側の端面)に亘って、ガイドリング73が設けられており、このガイドリング73は、ノズルリング55と同心状に位置している。なお、本発明の実施形態にあっては、取付ピン71の個数は3つであるが、4つ以上であっても構わない。
【0029】
図1図5、及び図6に示すように、ガイドリング73の外周面には、駆動リング75が回動可能に設けられており、この駆動リング75は、電動モータ又は負圧シリンダ等の回動アクチュエータ77の駆動によって正逆方向へ回動するものである。また、駆動リング75の左側面には、可変ノズル61と同数の矩形の係合ジョイント(係合部)79が連結ピン81を介して円周方向に沿って等間隔に設けられており、駆動リング75の右側面には、矩形の別の係合ジョイント(別の係合部)83が連結ピン85を介して設けられている。
【0030】
図1及び図4に示すように、ガイドリング73の右側面には、複数の取付ピン71の右端面と協働して駆動リング75の左右方向の移動を規制するC字状のストッパ87が設けられている。なお、ストッパ87は、C字状を呈しているが、環状を呈するようにしても構わない。
【0031】
図1図5、及び図6に示すように、各可変ノズル61の第2ノズル軸65の先端部(右端部)には、同期リンク89が一体的に設けられており、各同期リンク89の先端側部分は、二股に分岐してあって、駆動リング75の対応する係合ジョイント79を挟むように係合してある。また、ベアリングハウジング3の左側部には、駆動軸91がタービンインペラ29の軸心に平行な軸心周りに回動可能にブッシュ93を介して設けられており、この駆動軸91の右端部は、動力伝達機構95を介して回動アクチュエータ77に接続されている。更に、駆動軸91の左端部には、駆動リンク97が一体的に設けられており、この駆動リンク97の先端側部分は、二股に分岐してあって、駆動リング75の別の係合ジョイント83を挟むように係合してある。
【0032】
続いて、可変ノズルユニット43の特徴部分を含めて、可変容量型過給機1の要部について説明する。
【0033】
図1に示すように、ノズルリング55の外周面とタービンハウジング27の内壁面(タービンスクロール流路37とリンク室67を区画する壁部の内周面)との間には、環状の連絡間隙99が形成されており、ノズルリング55の対向面の反対面側は、連絡間隙99を介してタービンスクロール流路37に連通するようになっている。また、ベアリングハウジング3の左側には、ハウジング突出部101が左方向へ突出して形成されており、このハウジング突出部101の先端側は、ノズルリング55の内側に位置してあって、ハウジング突出部101の先端側の外周面には、リング溝103が形成されている。更に、ノズルリング55の内周面には、シールリング105が自己の弾性力(シールリング105の弾性力)によって圧接して設けられており、シールリング105の内周縁部は、ベアリングハウジング3のハウジング突出部101のリング溝103内に嵌入してある。ここで、シールリング105は、ノズルリング55の対向面の反対面側(リンク室67側)からタービンインペラ29の入口側への排気ガスの漏れを防止するシール手段としての機能を持っている。
【0034】
図1及び図2に示すように、タービンハウジング27の収容凹部41の底面41fの中央側(ガス排出口39の入口側)には、環状の嵌合凹部107がタービンインペラ29と同心状に形成されており、シュラウドリング45の対向面の反対面の内周縁側には、タービンハウジング27の嵌合凹部107に嵌合する環状の嵌合凸部109がガス排出口39側(タービンインペラ29の軸方向一方側)へ突出して形成されている。また、タービンハウジング27の収容凹部41の底面41fは、嵌合凹部107の径方向外側に、複数の取付ボルト47の締結力によってシュラウドリング45の対向面の反対面における第1支持穴49の径方向外側に密着する連続した環状でかつランド状(凸状)の密着部111(図2において点ハッチングを施した部位)を有している。更に、タービンハウジング27の収容凹部41の底面41fにおける密着部111の径方向外側には、対応する連結ピン57の一端部に形成したかしめ頭57aを収容する円形の複数の窪み113が円周方向に間隔を置いて形成されている。なお、タービンハウジング27の密着部111がランド状を呈する代わりに、シュラウドリング45の対向面の反対面におけるタービンハウジング27の密着部111に密着(接触)する部位がランド状を呈するようにしても構わない。
【0035】
タービンハウジング27の収容凹部41の底面41fにおける密着部111の径方向内側(径方向内側部分)とシュラウドリング45の対向面の反対面との間には、環状の連絡通路115が区画形成(形成)されており、この連絡通路115は、シュラウドリング45の複数の第1支持穴49に連通してある。また、タービンハウジング27の嵌合凹部107には、切欠117が形成されており、この切欠117は、連絡通路115及びタービンインペラ29の出口側に連通してある。換言すれば、シュラウドリング45の複数の第1支持穴49は、連絡通路115及び切欠117を介してタービンインペラ29の出口側に連通するようになっている。なお、タービンハウジング27の嵌合凹部107に切欠117が形成される代わりに又は形成される他に、シュラウドリング45の嵌合凸部109に連絡通路115及びタービンインペラ29の出口側に連通した別の切欠(図示省略)が形成されるようにしても構わない。
【0036】
続いて、本発明の第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0037】
ガス導入口35から導入した排気ガスをタービンスクロール流路37を経由してタービンインペラ29の入口側から出口側へ流通させることにより、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させて、ロータ軸9及びコンプレッサインペラ13をタービンインペラ29と一体的に回転させることができる。これにより、空気導入口19から導入した空気を圧縮して、ディフューザ流路21及びコンプレッサスクロール流路23を経由して空気排出口25から排出することができ、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)することができる。
【0038】
エンジン回転数が高回転域にある場合には、回動アクチュエータ77の駆動によって駆動軸91を一方向(図6において時計回り方向)へ回動させて、駆動リンク97を一方向へ揺動させつつ、駆動リング75を正方向(図5において反時計回り方向、図6において時計回り方向)へ回動させる。これにより、複数の同期リンク89を正方向へ揺動させながら、複数の可変ノズル61を同期して正方向(開方向)へ回動させて、複数の可変ノズル61の開度を大きくすることができる。よって、タービンインペラ29側に供給される排気ガスの流路面積(流量)を大きくして、タービンインペラ29側に多くの排気ガスを供給することができる。
【0039】
エンジン回転数が低回転域にある場合には、回動アクチュエータ77の駆動によって駆動軸91を他方向(図6において反時計回り方向)へ回動させて、駆動リンク97を他方向へ揺動させつつ、駆動リング75を逆方向(図5において時計回り方向、図6において反時計回り方向)へ回動させる。これにより、複数の同期リンク89を逆方向へ揺動させながら、複数の可変ノズル61を同期して逆方向(閉方向)へ回動させて、複数の可変ノズル61の開度を小さくすることができる。よって、タービンインペラ29側に供給される排気ガスの流路面積を小さくして、排気ガスの流速を高くして、タービンインペラ29の仕事量を十分に確保することができる(可変容量型過給機1の通常の作用)。
【0040】
可変容量型過給機1の通常の作用の他に、タービンハウジング27の収容凹部41の底面41fが環状の密着部111を有しているため、タービンハウジング27の密着部111、及びシュラウドリング45の対向面の反対面におけるタービンハウジング27の密着部111に密着(接触)する部位にシール面としての機能を発揮させて、シュラウドリング45の対向面の反対面における前記密着する部位の径方向内側とタービンスクロール流路37を気密にシール(遮断)することができる。換言すれば、シールカバーを用いることなく、シュラウドリング45の対向面の反対面における前記密着する部位の径方向内側とタービンスクロール流路37を気密にシールすることができる。そして、ノズルリング55の対向面の反対面側がタービンスクロール流路37に連通し、シュラウドリング45の複数の第1支持穴49がタービンインペラ29の出口側に連通するようになっているため、可変容量型過給機1の運転中、各可変ノズル61における第1ノズル軸63の端面に働く圧力を第2ノズル軸65の端面に働く圧力よりも十分に小さくすることができる。これにより、シールカバーを用いることなく、各可変ノズル61をその圧力差によってシュラウドリング45の対向面側に寄せて、各可変ノズル61の左側面とシュラウドリング45の対向面との間のサイドクリアランスを極力小さくすることができる。
【0041】
また、タービンハウジング27の収容凹部41の底面41fの中央側に環状の嵌合凹部107がタービンインペラ29と同心状に形成され、シュラウドリング45の対向面の反対面の内周縁側にタービンハウジング27の嵌合凹部107に嵌合する環状の嵌合凸部109が形成されているため、シュラウドリング45の軸心とタービンインペラ29の軸心との芯出し、換言すれば、可変ノズルユニット43の軸心とタービンインペラ29の軸心との芯出しが簡単になる。
【0042】
従って、本発明の第1実施形態によれば、シールカバーを用いることなく、可変容量型過給機1の運転中、各可変ノズル61をシュラウドリング45の対向面側に寄せて、各可変ノズル61の左側面とシュラウドリング45の対向面との間のサイドクリアランスを極力小さくできるため、可変容量型過給機1の部品点数を減らしつつ、各可変ノズル61の左側面とシュラウドリング45の対向面との間からの漏れ流れを抑えることができる。そのため、可変容量型過給機1の構成の簡略化及び組立性の向上を図りつつ、タービンブレード33のチップ側部分(ミッドスパン側からチップ側にかけての部分)に沿う排気ガスの流れを安定させて、可変容量型過給機1のタービン効率を十分に高めることができる。特に、可変ノズルユニット43の軸心とタービンインペラ29の軸心との芯出しが簡単になるため、可変容量型過給機1の構成の組立性の向上をより一層図ることができる。
【0043】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について図7及び図8を参照して説明する。なお、図面に示すとおり、「R」は、右方向、「L」は、左方向である。
【0044】
図7及び図8に示すように、本発明の第2実施形態に係る可変容量型過給機119は、本発明の第1実施形態に係る可変容量型過給機1(図1参照)と同様の構成を有しており、タービンインペラ29側へ供給される排気ガスの流路面積を可変とする可変ノズルユニット121を装備している。以下、可容量型過給機119の構成のうち、可変容量型過給機1の構成と異なる部分についてのみ説明する。なお、可変容量型過給機119における複数の構成要素のうち、可変容量型過給機1における構成要素と対応するものについては、図面中に同一番号を付してある。
【0045】
タービンハウジング27の収容凹部41の底面41fにおける密着部111(図8において点ハッチングを施した部位)の径方向外側には、対応する連結ピン57のかしめ頭57aを収容する円弧状の複数の窪み123が円周方向に間隔を置いて形成されている。また、シュラウドリング45の嵌合凸部109には、複数の連絡穴(連通穴)125が周方向に間隔を置いて形成されており、各連絡穴125は、連絡通路115及びタービンインペラ29の出口側に連通してある。換言すれば、シュラウドリング45の複数の第1支持穴49は、連絡通路115及びシュラウドリング45の複数の連絡穴125を介してタービンインペラ29の出口側に連通するようになっている。なお、シュラウドリング45の嵌合凸部109に複数の連絡穴125が形成される代わりに又は形成される他に、タービンハウジング27の嵌合凹部107の周縁に連絡通路115及びタービンインペラ29の出口側に連通した複数の別の連絡穴(図示省略)が周方向に間隔を置いて形成されるようにしても構わない。
【0046】
そして、本発明の第2実施形態においても、本発明の第1実施形態と同様の作用及び効果を奏するものである。
【0047】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0048】
1 可変容量型過給機
3 ベアリングハウジング
9 ロータ軸
11 コンプレッサハウジング
13 コンプレッサインペラ
27 タービンハウジング
29 タービンインペラ
41 収容凹部
41f 底面
43 可変ノズルユニット
45 シュラウドリング
47 取付ボルト
49 第1支持穴
55 ノズルリング
57 連結ピン
59 第2支持穴
61 可変ノズル
63 第1ノズル軸
65 第2ノズル軸
99 連絡間隙
101 ハウジング突出部
103 リング溝
105 シールリング
107 嵌合凹部
109 嵌合凸部
111 密着部
115 連絡通路
117 切欠
119 可変容量型過給機
121 可変ノズルユニット
125 連絡穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8