(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966804
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】除塵減臭システムおよび除塵減臭方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/92 20060101AFI20160728BHJP
B01D 53/38 20060101ALI20160728BHJP
B01D 53/75 20060101ALI20160728BHJP
B01D 53/81 20060101ALI20160728BHJP
B01D 53/34 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
B01D53/92 111
B01D53/92 310
B01D53/92 350
B01D53/38 110
B01D53/75
B01D53/81
B01D53/34ZAB
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-207678(P2012-207678)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2014-61475(P2014-61475A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年5月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年3月23日に、株式会社ジェイアール西日本テクノス下関支店(山口県山口市小郡下郷古林124)において、株式会社東洋製作所が、株式会社ジェイアール西日本テクノス下関支店に、山下貴久、海老名 聡、田中 禎浩および安住剛が発明した蒸気機関車用排気除塵減設備を引き渡した。 平成24年3月25日に、株式会社ジェイアール西日本テクノス設備事業部(京都府京都市下京区歓喜寺町)において、株式会社東洋製作所が、株式会社ジェイアール西日本テクノス設備事業部に、山下 貴久、海老名 聡、田中 禎浩および安住剛が発明した蒸気機関車用排気除塵減設備を引き渡した。
(73)【特許権者】
【識別番号】391007242
【氏名又は名称】三菱重工冷熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102738
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】海老名 聡
(72)【発明者】
【氏名】安住 剛
(72)【発明者】
【氏名】田中 禎浩
(72)【発明者】
【氏名】山下 貴久
【審査官】
山田 貴之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−126550(JP,A)
【文献】
特開平10−263507(JP,A)
【文献】
特開2001−029737(JP,A)
【文献】
特開2009−216898(JP,A)
【文献】
特開平10−249126(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/078721(WO,A1)
【文献】
特開平05−180478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34
F01N 3/00
F01N 9/00−11/00
F23J 13/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気機関車またはディーゼル機関車の高温排煙を加熱するヒーターと、該ヒーターの下流側に設置されたセラミックフィルターにより、100℃以上の高温排煙から塵および煤を除去するとともに、高温排煙から予備減臭する集塵機と、該集塵機の下流側にダクトを介して接続され、塵および煤が除去された高温排煙を所定温度まで冷却する冷却器と、該冷却器の下流側にダクトを介して接続され、化学吸着フィルターにより冷却された高温排煙から減臭する減臭ユニットと、該減臭ユニットの下流側にダクトを介して接続され、高温排煙を、フードを介して、前記集塵機、前記冷却器および前記減臭ユニットに亘って、吸引する排気ファンとを有する、ことを特徴とする除塵減臭システム。
【請求項2】
前記集塵機は、空気圧縮機からの圧縮空気をセラミックフィルターの煤が付着した面と反対側から噴射することにより、付着した煤を除去する、請求項1に記載の除塵減臭システム。
【請求項3】
さらに、前記排気ファンは、吸音材により取り囲まれたスペース内に設置され、前記排気ファンの下流には、サイレンサーが配置され、排気音を所定レベルまで低減する、請求項1または請求項2に記載の除塵減臭システム。
【請求項4】
前記除塵減臭システムは、蒸気機関車またはディーゼル機関車の点検整備工場に隣接して配置され、前記冷却器により50℃以下まで高温排煙を冷却する、請求項3に記載の除塵減臭システム。
【請求項5】
点検整備工場内で、蒸気機関車の予熱運転、乾燥運転を含む運転モードに応じて、前記排気ファンによる排気量をインバータ制御する、請求項4に記載の除塵減臭システム。
【請求項6】
さらに、前記排気ファンの下流側と前記集塵機の上流側との間を連通するダクトを有し、前記集塵機、前記冷却器、前記減臭ユニットおよび前記排気ファンを接続する循環路を形成する、請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載の除塵減臭システム。
【請求項7】
さらに、高温排煙を冷却する冷却水から排熱する冷却塔と、前記冷却器から前記冷却塔までの冷却水の往管路と、前記冷却塔から前記冷却器までの冷却水の復管路と、前記往管路と前記復管路とを接続するバイパス管路と、前記復管路と前記バイパス管路との接続部に設けた三方弁とを有し、該三方弁を比例制御することにより、冷却水の流量を調整し、高温排煙の温度を制御する、請求項1に記載の除塵減臭システム。
【請求項8】
フードを介して、蒸気機関車またはディーゼル機関車の高温排煙を最下流側から排気ファンにより吸引する段階と、蒸気機関車またはディーゼル機関車の高温排煙を加熱する段階と、100℃以上に加熱後の高温排煙をセラミックフィルターにより除塵するとともに高温排煙から予備減臭する段階と、
除塵後の吸引される高温排煙を所定温度まで冷却する段階と、
冷却後の吸引される高温排煙を化学吸着フィルターにより減臭する段階と、を有することを特徴とする、排煙の除塵減臭方法。
【請求項9】
排煙の除塵減臭を行う前に、集塵機、冷却器、減臭ユニットおよび排気ファンを接続する循環路を利用して、予熱を行い、排煙の除塵減臭を行った後に、外気を取り入れて、乾燥を行う、請求項8に記載の排煙の除塵減臭方法。
【請求項10】
前記排気ファンは、吸音材により取り囲まれたスペース内に設置され、前記排気ファンの下流には、サイレンサーが配置され、排気音を所定レベルまで低減する、請求項9に記載の排煙の除塵減臭方法。
【請求項11】
前記セラミックフィルターにより捕捉された煤を圧縮空気を強制的に流すことにより除去する段階をさらに有する、請求項8に記載の排煙の除塵減臭方法。
【請求項12】
高温排煙を所定温度まで冷却する前記段階は、高温排煙を冷却する冷却水の流量を比例制御により調整する、請求項8に記載の排煙の除塵減臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除塵減臭システムおよび除塵減臭方法に関し、より詳細には、安価な小型設備でありながら、保守点検の手間を軽減しつつ、排煙の除塵とともに減臭を行うことが可能な除塵減臭システムおよび除塵減臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、蒸気機関車は、操車場等の整備工場において、保守点検され、その際、蒸気機関車は、停止状態で着火、昇圧、保火されることから、煙突から排出される排煙が工場内を充満し、工場内の作業員の作業環境とともに、近隣住民の生活環境にも悪影響を及ぼす恐れがあった。
このため、工場内の排煙は、除塵処理する必要があり、従来、以下のような方式で処理されてきた。
【0003】
第1に、特許文献1に開示されているような水洗式を蒸気機関車の排煙に適用する場合である。特許文献1においては、火力発電所や産業廃棄物を焼却処理する工場等の煙突から大気中に放出される煤煙を浄化するのに、このような煤煙を水等の液体に接触させるように構成している。
第2に、特許文献2に開示されているようなバグフィルターを蒸気機関車の排煙に適用する場合である。特許文献2においては、ゴミ焼却炉あるいは重油、石炭を燃焼し発生する排煙を対象に、バグフィルターにより乾式濾過するように構成している。
第3に、特許文献3に開示されているような電気集塵機を蒸気機関車の排煙に適用する場合である。特許文献3においては、化石燃料であるたとえば石炭を燃焼して生じる排ガスを対象に、静電気を利用して集塵するように構成している。
【0004】
しかしながら、このような従来の排煙の処理方式によれば、蒸気機関車の排煙は、特に、高温で火の粉を含み、酸性であることから、以下のような特有の技術的問題点が存する。
【0005】
第1に、水洗式の場合、水に含有させる形態で捕集した粉煤の処理について、水ごと排水溝に廃棄していたため、側溝の詰まりが引き起こされ、その保守点検コストがかさむとともに、詰まりを放置することにより、作業環境の悪化が生じていた。
第2に、電気式集塵の場合、静電気による捕集のため、煤塵の電気抵抗に応じて捕集率が左右されるとともに、電極の汚れ、腐食による保守点検コストがかかり、火花放電により粉塵爆発を引き起こす危険性があり、一方で捕集原理に起因して、設備自体が大型化する。
第3に、バグフィルター式の場合、排煙は、高温で火の粉を含み、酸性であることから、フィルターの寿命が短く、フィルターの交換頻度が高くなるとともに、濾布に対する火の粉対策が必要であり、総じて、保守点検コストがかさむ。
【0006】
以上のように、それぞれの従来の方式には、固有の技術的問題点が存するが、それに加えて、これらの従来の方式に共通に、工場内の作業員の作業環境あるいは近隣の生活環境の保全が欠如していた。
すなわち、特に蒸気機関車の排煙の場合、その臭気は強烈であるところ、このような臭気濃度の管理が行われず、一方において、集塵処理に伴う騒音に対しても管理不足であった。
このような臭気および騒音管理も含め、設備の大型化を生じずに、保守点検コストを軽減する除塵減臭システムおよび除塵減臭方法が業界内で要望されていた。
【特許文献1】特開2011−41936号公報
【特許文献2】特開2010−69463号公報
【特許文献3】特開平7−171323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、安価な小型設備でありながら、保守点検の手間を軽減しつつ、排煙の除塵とともに減臭を行うことが可能な除塵減臭システムおよび除塵減臭方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明の除塵減臭システムは、
セラミックフィルターにより、100℃以上の高温排煙から塵および煤を除去するとともに、高温排煙から予備減臭する集塵機と、
該集塵機の下流側にダクトを介して接続され、塵および煤が除去された高温排煙を所定温度まで冷却する冷却器と、
該冷却器の下流側にダクトを介して接続され、化学吸着フィルターにより冷却された高温排煙から減臭する減臭ユニットと、
該減臭ユニットの下流側にダクトを介して接続され、高温排煙を、前記集塵機、前記冷却器および前記減臭ユニットに亘って、吸引する排気ファンとを有する、構成としている。
【0009】
以上の構成を有する除塵減臭システムによれば、従来の水冷式によれば、回収した塵煤が排水溝に詰まって、その保守点検が必要になっており、また従来のバグフィルターによれば、フィルターの寿命が短いことから、同様に、保守点検コストがかかっており、さらに従来の電気集塵機のように、電極の汚れ、腐食による保守点検コストがかかる一方、煤塵の電気抵抗に応じて捕集効率が左右されていたところ、集塵機のセラミックフィルターにより塵煤とともにある程度の臭気も予備回収するとともに、ガス冷却器により化学吸着フィルターの適用可能温度まで塵煤を所定温度まで冷却した後に、化学吸着フィルターにより臭気を本回収することで、化学吸着フィルターの交換頻度を少なくするとともに、集塵機内で塵煤を処理回収することにより屋内で飛散することなく、煤塵のガス冷却器への付着を防止することも可能であり、以て、安価な小型設備でありながら、保守点検の手間を軽減しつつ、排煙の除塵とともに減臭を行うことが可能である。
【0010】
また、前記集塵機は、空気圧縮機からの圧縮空気をセラミックフィルターの煤が付着した面と反対側から噴射することにより、付着した煤を除去するのがよい。
さらにまた、前記排気ファンは、吸音材により取り囲まれたスペース内に設置され、前記排気ファンの下流には、サイレンサーが配置され、排気音を所定レベルまで低減するのがよい。
加えて、処理対象ガスは、石炭由来の蒸気機関車の高温排煙であり、前記除塵減臭システムは、蒸気機関車の点検整備工場に隣接して配置され、前記冷却器により50℃以下まで高温排煙を冷却するのでもよい。
【0011】
さらに、点検整備工場内で、蒸気機関車の予熱運転、乾燥運転を含む運転モードに応じて、前記排気ファンによる排気量をインバータ制御するのでもよい。
さらにまた、前記排気ファンの下流側と前記集塵機の上流側との間を連通するダクトを有し、前記集塵機、前記冷却器、前記減臭ユニットおよび前記排気ファンを接続する循環路を形成するのがよい。
加えて、高温排煙を冷却する冷却水から排熱する冷却塔と、前記冷却器から前記冷却塔までの冷却水の往管路と、前記冷却塔から前記冷却器までの冷却水の復管路と、前記往管路と前記復管路とを接続するバイパス管路と、前記復管路と前記バイパス管路との接続部に設けた三方弁とを有し、該三方弁を比例制御することにより、冷却水の流量を調整し、高温排煙の温度を制御するのでもよい。
【0012】
上記課題を達成するために、本発明の排煙の除塵減臭方法は、
100℃以上の高温排煙を最下流側から排気ファンにより吸引する段階と、
吸引される高温排煙をセラミックフィルターにより除塵するとともに高温排煙から予備減臭する段階と、
除塵後の吸引される高温排煙を所定温度まで冷却する段階と、
冷却後の吸引される高温排煙を化学吸着フィルターにより減臭する段階と、
を有する構成としている。
【0013】
さらに、排煙の除塵減臭を行う前に、前記集塵機、前記冷却器、前記減臭ユニットおよび前記排気ファンを接続する循環路を利用して、予熱を行い、排煙の除塵減臭を行った後に、外気を取り入れて、乾燥を行うのがよい。
さらにまた、前記排気ファンは、吸音材により取り囲まれたスペース内に設置され、前記排気ファンの下流には、サイレンサーが配置され、排気音を所定レベルまで低減するのがよい。
加えて、前記セラミックフィルターにより捕捉された煤を圧縮空気を強制的に流すことにより除去する段階をさらに有するのがよい。
【0014】
さらに、前記冷却段階は、高温排煙を冷却する冷却水の流量を比例制御により調整するのでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る除塵減臭システムの実施形態について、ディーゼル機関車および蒸気機関車からの排煙を処理対象として、図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
図1に示すように、除塵減臭システム10は、ディーゼル機関車および蒸気機関車の点検整備工場に隣接して配置され、上流側から下流側に、集塵機12、ガス冷却器14、減臭ユニット16および排気ファン18がこの順に、互いにダクト20を介して接続されている。
【0016】
より詳細には、上部に蒸気機関車からの排煙を引くための既設フード22が設けられるSL車庫24と、上部にディーゼル機関車からの排煙を引くための既設フード22が設けられるDL車庫26とが並列して設けられ、それぞれの既設フード22は、ダクト20を介して集塵機12に接続され、最下流側に排気ファン18を駆動することにより、既設フード22を介して、ディーゼル機関車および蒸気機関車からの排煙をガス冷却器14、減臭ユニット16まで吸引するように構成している。
なお、後に説明する運転モードを行うために、ダクト20には、電磁調整弁71ないし77(MD―1ないしMD―7)が配置され、特に、電磁調整弁73(MD―3)は、外気を取り入れ、電磁調整弁75(MD―5)は、外気への逃がしを行う。
【0017】
ディーゼル機関車および蒸気機関車からの排煙は、石炭由来のほぼ140℃前後の高温排煙であり、水蒸気、塩化水素、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、硫化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物を主に含有し、特に酸性が強く、火の粉を含むものであり、臭気指数は30前後である。
このように、排煙には、窒素酸化物が含まれているので、除塵減臭システム10内で結露が発生すると硫酸水となり、機器に対する腐食性が問題となることから、ダクトについては、SUS304製とし、たとえば、アルミ箔付ロックウールで周囲から保温し、集塵機12の内部には、塗装対策を施し、ガス冷却器14については、冷却コイルをSUS304製としている。なお、ダクト20は、下方に設置された排水タンク15に接続され、ダクト20内の水分を排出するようにしている。
【0018】
SL車庫24およびDL車庫26内に、整備用蒸気機関車および整備用ディーゼル機関車がそれぞれ収容される際、運転モードは、予熱運転モード、通常運転モードおよび乾燥運転モードに大別され(
図2参照)、予熱運転モードにおいては、通常運転モードに備えて、後に説明する循環路を利用して、排気ファン18により、集塵機12、ガス冷却器14および減臭ユニット16、さらにはこれら接続するダクト20の内部を予熱して、結露を防止し、通常運転モードにおいては、SL車庫24の既設フード22からのダクト20に設けられる電磁調整弁71および73およびDL車庫26の既設フード22からのダクト20に設けられる電磁調整弁72の開閉操作により、SL車庫24においては、煙突清掃工程、着火工程、昇圧工程、保火工程、停止工程、一方、DL車庫26においては、保火工程、停止工程を行っている。乾燥運転モードにおいては、電磁調整弁73から外気を取り入れ、排気ファン18で引くことにより、集塵機12、ガス冷却器14および減臭ユニット16、さらにはこれら接続するダクト20の内部を乾燥するようにしている。なお、電磁調整弁73をSL車庫24内に設けることにより、外気を取り入れる際の騒音に対して、サイレンサーを設けることなく、外部への騒音対策を可能としている。
【0019】
集塵機12は、セラミックフィルター28により、100℃以上の高温排煙から塵および煤を除去するとともに、高温排煙から予備減臭するように構成している。
より具体的には、
図1に示すように、濾過式集塵機12
は、集塵機本体30と集塵機本体30を載置する集塵機用架台32からなり、集塵機用架台32は床面(地面)に固定した台座上に固定するもので、
図1に示すように、集塵機用架台32を台座上に固定した後に、クレーン等によって吊り下げた集塵機本体30の載置部材を集塵機用架台32上面に設けた支持台上に載置、固定するようにしている。
【0020】
図3に示すように、集塵機本体30
内に多数のセラミックフィルター28を吊下した仕切板によって含塵空気室38と清浄空気室34に区分けし、矢印で示すように、清浄空気室34に開口した清浄空気排出口35に繋がる排気ファン18
によって塵埃等を含む処理ガスを処理ガス供給口37から含塵空気室38に導き、セラミックフィルター28によって濾過された後に清浄空気室34 、清浄空気排出口36を介しガス冷却器14に導くようにしている。
【0021】
図4に示すように、集塵機12は、空気圧縮機27からの圧縮空気をセラミックフィルター28の煤が付着した面と反対側から噴射することにより、付着した煤を除去する。
より詳細には、逆洗装置は、清浄空気室34と含塵空気室38との差圧が一定以上値になったとき、セラミックフィルター28に付着した塵埃等を除去するために設けられたもので、空気圧縮機27により圧力空気供給管(図示せず)から送られる圧縮空気を電磁開閉器(図示せず)の開閉によって、矢印で示すように、噴出ノズル(図示せず)からフィルター内面に向かって吹き付け、セラミックフィルター28に付着した塵埃等を除去し、一定量の溜まった塵埃等は集塵機本体30下方に備えたロータリーバルブ(図示せず)の開閉によって外部に排出する。
【0022】
セラミックフィルター28は、日本ガイシ(株)の商品名「セラレックフィルター」を用いており、このフィルターは、耐熱温度が900℃程度で、フィルターの粗粒層と細粒層との調整により高温時の効率的な集塵が可能であり、従来のバグフィルターのようなエレメント破損、後に説明する逆洗による目開き、あるいはガスの吹き抜けを防止可能であり、さらにハニカム状セラミックフィルターであることから、集塵機自体をコンパクト化することが可能である。なお、セラミックフィルター28の交換頻度は、後に説明する化学吸着フィルターに比べて長く、概ね1、2年である。
【0023】
特に、蒸気機関車からの排煙は水分含有率が高く、そのままセラミックフィルター28により濾過すると、フィルターの表面に水が付着して目詰まりの原因となることから、セラミックフィルター28の上流側、すなわち含塵空気室38には、電気ヒーター65を設置して、セラミックフィルター28により濾過される排煙を100℃以上に加熱することにより、セラミックフィルター28は高耐熱性であり加熱による破損の恐れなく、このような目詰まりを未然に防止している。
【0024】
次に、冷却器14は、集塵機12の下流側にダクト20を介して配置され、塵および煤が除去された高温排煙を所定温度、たとえば50℃以下まで冷却する。
さらに、高温排煙を冷却する冷却水から排熱する冷却塔40と、冷却器14から冷却塔40までの冷却水の往管路42と、冷却塔40から冷却器14までの冷却水の復管路44と、往管路42と復管路44とを接続するバイパス管路46と、復管路44とバイパス管路46との接続部に設けた三方弁48と、復管路44に設けられたポンプ29とを有し、ポンプ29を作動しながら三方弁48を比例制御することにより、冷却水の流量を調整し、高温排煙の温度を制御する。これにより、冷却器14の直下流側の減臭ユニット16内の化学吸着フィルターに高温の排煙が導入されることにより、化学吸着フィルターが熱破損しないようにしている。
【0025】
次に、減臭ユニット16は、冷却器14の下流側にダクト20を介して配置され、化学吸着フィルター33により冷却された高温排煙から減臭する。
減臭ユニット16で用いる化学吸着フィルター33は、日本ピュアテック(株)の製品名「ピュアライト」であり、高性能活性炭やゼオライト、アルミナを基にしたペレットタイプであり、排煙中の硫化水素、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドを主な対象ガスとして、酸化還元反応、中和反応、触媒作用、物理吸着の4つの機能が相乗効果を奏する吸着剤である。たとえば、吸着剤は、排煙の流入口から流出口に向かって、2層直列に組み込み式に配置される。化学吸着フィルター33の交換頻度は、約6か月であり、これは、上述のように、上流側にセラミックフィルター28の集塵機12を配置し、それにより予備減臭を行うことから、集塵機12より下流側の配管内への煤の付着軽減、および減臭ユニット16の減臭作用の負担軽減が可能であることから、交換頻度を長期化して、設備の保守メンテナンス作業の負担を軽減している。
【0026】
次に、排気ファン18は、減臭ユニット16の下流側にダクト20を介して配置され、高温排煙を、集塵機12、冷却器14および減臭ユニット16に亘って、吸引する。
排気ファン18としては、例えばターボファン、ラジアルファン等の遠心ファンやシロッコファンなどの種々の送風機を用いることができ、点検整備工場内で、ディーゼル機関車および蒸気機関車それぞれの予熱運転、乾燥運転を含む運転モードに応じて、排気ファン18による排気量をインバータ周波数によりインバータ制御するようにしている。
さらに、排気ファン18は、吸音材50により取り囲まれたスペース内に設置され、排気ファン18の下流には、サイレンサー52が配置され、排気音を所定レベルまで低減するようにしてある。
【0027】
また、前述のように、通常運転モードを開始する前に、除塵減臭システム10内における結露を防止する目的で、予熱運転モードを行うために、排気ファン18の下流側と集塵機12の上流側との間を連通するダクト25が設けられ、集塵機12、ガス冷却器14、減臭ユニット16、排気ファン18およびダクト25からなる循環路67を形成し、ダクト25に設けた電磁調整弁76を開き、電磁調整弁77を閉じることにより、循環路67内を予熱するようにしてある。
【0028】
以上の構成を有する除塵減臭システム10について、その作用を以下に説明する。
まず、通常運転モードを開始する前に、除塵減臭システム10内における結露を防止するために、電磁調整弁74および76を開いて、循環路67を利用して、電気ヒーター65により予熱運転モードを行う。
次いで、電磁調整弁74および77は開き、電磁調整弁75および76は閉じ、通常運転モードに応じて、電磁調整弁71ないし73の開閉を調整して、整備用の蒸気機関車をSL車庫24および/DL車庫26内に搬入し着火し、100℃以上の高温排煙を既設フード22を介して最下流側から排気ファン18により吸引する。
次いで、集塵機12により、吸引される高温排煙をセラミックフィルター28により除塵するとともに高温排煙から予備減臭する。このとき、電気ヒーター65により、セラミックフィルター28により濾過される排煙を加熱しておく。
【0029】
次いで、冷却器14により、除塵後の吸引される高温排煙を50℃以下まで冷却する。
この場合、冷却段階は、高温排煙を冷却する冷却水の流量を比例制御により調整する。
次いで、減臭ユニット16により、冷却後の吸引される高温排煙を化学吸着フィルター33により減臭する。
この場合、上流側にセラミックフィルター28の集塵機12を配置し、それにより予備減臭を行うことから、集塵機12より下流側のダクト内への煤の付着軽減、および減臭ユニット16の減臭作用の負担軽減が可能であることから、交換頻度を長期化して、設備の保守メンテナンス作業の負担を軽減している。
排気ファン18は、吸音材50により取り囲まれたスペース内に設置され、排気ファン18の下流には、サイレンサー52が配置され、排気音を所定レベルまで低減する。
なお、適宜、セラミックフィルター28により捕捉された煤を、圧縮空気を強制的に流すことにより除去する。
通常運転モードが完了したら、電磁調整弁73、74および77を開き、乾燥運転モードにより、外気を取り入れることにより、除塵減臭システム10内を乾燥させる。
【0030】
以上の構成を有する除塵減臭システム10によれば、従来の水冷式によれば、回収した塵煤が排水溝に詰まって、その保守点検が必要になっており、また従来のバグフィルターによれば、フィルターの寿命が短いことから、同様に、保守点検コストがかかっており、さらに従来の電気集塵機12のように、電極の汚れ、腐食による保守点検コストがかかる一方、煤塵の電気抵抗に応じて捕集効率が左右されていたところ、集塵機12のセラミックフィルター28により塵煤とともにある程度の臭気も予備回収するとともに、ガス冷却器14により化学吸着フィルターの適用可能温度まで塵煤を所定温度まで冷却した後に、化学吸着フィルターにより臭気を本回収することで、化学吸着フィルターの交換頻度を少なくするとともに、集塵機12内で塵煤を処理回収することにより屋内で飛散することなく、煤塵のガス冷却器14への付着を防止することも可能であり、以て、安価な小型設備でありながら、保守点検の手間を軽減しつつ、排煙の除塵とともに減臭を行うことが可能である。
【0031】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変更が可能である。
たとえば、本実施形態において、除塵減臭の対象ガスとして、ディーゼル機関車および蒸気機関車の排煙である場合を説明したが、それに限定されることなく、溶解炉、火力発電、ディーゼル発電、廃棄物加熱炉等から発生する排気ガスでもよい。
【0032】
たとえば、本実施形態において、として説明したが、それに限定されることなく、である限り、フィルタ媒体は、酸性物質、アルカリ性物質、有機物の少なくとも1つを除去する性質を有すればよく、カチオン成分及びアニオン成分の一方を活性炭、セラミック及びこれらに準ずる部材のいずれかに添着させた添着型、あるいは、イオン交換基を有する繊維、樹脂シート及びこれらに準ずる部材のいずれかからなるイオン交換型、あるいは粒状活性炭、粉末状活性炭、セラミック及びこれらに準ずる部材のいずれかからなる物質吸着型でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施形態に係る除塵減臭システム10の全体図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る除塵減臭システム10の運転モードを示す表である。
【
図3】本発明の実施形態に係る除塵減臭システム10の集塵機の概略図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る除塵減臭システム10の集塵機の逆洗時の状況を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
10 除塵減臭システム
12 集塵機
14 冷却器
15 排水タンク
16 減臭ユニット
18 排気ファン
20 ダクト
22 フード
24 SL車庫
25 ダクト
26 DL車庫
27 空気圧縮機
29 ポンプ
28 セラミックフィルター
30 本体
32 架台
33 化学吸着フィルター
34 清浄空気室
35 清浄空気排出口
36 清浄空気排出口
37 処理ガス供給口
38 含塵空気室
40 冷却塔
42 往管路
44 復管路
46 バイパス管路
48 三方弁
50 吸音材
52 サイレンサー
65 電気ヒーター
67 循環流路
71 電磁調整弁
72 電磁調整弁
73 電磁調整弁
74 電磁調整弁
75 電磁調整弁
76 電磁調整弁
77 電磁調整弁