(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、製鉄プロセスにおける還元材、及び、熱源として使用される高炉用コークスは、複数の銘柄の原料炭を、それぞれ粉砕し、所定の割合で配合し、所定の粒度を有する配合炭を形成した後、その配合炭をコークス炉に装入して、所定時間、乾留することで製造される。
【0003】
この際、コークス強度DI
15015は、配合炭を構成する複数の銘柄の原料炭の性状と、配合炭の粒度との影響を受ける。ここで、DI
15015は、JIS K 2151で規定されたドラム試験機による150回転後の15mm篩上の割合(−)であり、コークスの強度(ドラム強度ともいう。)を表す指標である。
【0004】
コークス強度DI
15015に影響する石炭の性状として、石炭の粘結性が挙げられる。石炭の粘結性は、JIS M 8801のギーセラープラストメーターを用いた流動性試験によって測定される最高流動度や、JIS M 8801のディラトメーターを用いた膨張性試験によって測定される全膨張率により評価することができる。これらの測定値が高くなるほど、石炭の軟化溶融時の流動性及び膨張性は高くなる。
【0005】
原料炭は、石炭の粘結性に基づいて、粘結性が高い粘結炭と、粘結性が低い非微粘結炭とに分けられる。粘結炭は、軟化溶融時の流動性及び膨張性が高いので、石炭粒子間の接着を容易にし、コークス強度を高める。一方、非微粘結炭は、軟化溶融時の流動性及び膨張性が低いので、石炭粒子間の接着が不十分となる。そのため、非微粘結炭を多量に配合すると、コークス強度が低下する。
【0006】
また、コークス強度DI
15015に影響する石炭の性状として、石炭の加熱時に軟化溶融しない不活性成分からなる組織(以下、「イナート組織」という。)が挙げられる。このイナート組織は、粘結炭及び非微粘結炭を問わず、石炭中に存在する。
【0007】
石炭中のイナート組織は、石炭の軟化溶融時に膨張しないため、石炭の膨張による石炭粒子間の接着を阻害する。また、イナート組織は、石炭の再固化時に収縮し難いので、石炭の収縮時に亀裂を発生させる。そのため、石炭中のイナート組織は、コークス強度を低下させる原因となる。また、本発明者らの検討結果によれば、コークス強度は、イナート組織の合計量ではなく、特定サイズ以上の粗大なイナート組織(以下、「粗大イナート組織」という)に支配されることが確認されている。
【0008】
特許文献1は、粗大イナート組織を多く含有する石炭(以下、「高イナート炭」という)を優先的に細粒化することにより、配合炭中の粗大イナート組織を低減する方法を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1の工程図および
図2の各工程のマテリアルバランスの代表例を参照しながら、高イナート炭の処理方法の概要を説明する。本明細書における高イナート炭とは、粗大イナート組織の含有量が5体積%以上の石炭のことである。
【0016】
ここで、粗大イナート組織の含有量は、例えば、特開2011−162724号公報に開示されている方法により、算出することができる。すなわち、石炭を粒径3mm以下の累積比率が70〜85質量%に粉砕し、粉砕後の石炭を乾留してコークスを作成し、X線CTを用いてコークス試料の断層像におけるCT値の空間分布を求め、CT値に対応する見掛け密度が所定の閾値以上である領域をイナート組織として判定し、判定されたイナート組織のうち、最大長さが1.5mm以上であるものを粗大イナート組織として特定する。粗大イナート組織の含有率Xは、以下の式(1)で示されるように、気孔部分の体積Vpを除いた断層像全領域の体積における、粗大イナート組織が占める体積Viの割合X(%)を求めることにより算出することができる。
【0017】
X(%)=Vi/(100−Vp)×100・・・・・・(1)
なお、本発明で対象としている高イナート炭に関して、灰分は限定しないものの、通常コークス用原料炭として使用しうる灰分11質量%未満程度が例示できる。
【0018】
また、本発明で、粗大イナート組織の含有量を5体積%以上の石炭を対象としているのは、細粒化によるコークス強度向上効果を享受できる下限であることによる。ちなみに、粗大イナート組織の含有量の上限は特に限定されないが、20体積%程度が例示できる。
【0019】
図1に示すように、本発明における高イナート炭の処理方法は、高イナート炭を粉砕する第1の粉砕工程と、第1の粉砕工程において粉砕された高イナート炭を粗粒子と微粒子とにサイズ分けをする第1の分離工程と、第1の分離工程によりサイズ分けされた粗粒子を重液により、粗大イナート組織をより多く含むイナートリッチな沈降粒子と、ビトリニット組織をより多く含むビトリニットリッチな浮遊粒子とに比重分離する第2の分離工程と、第2の分離工程において分離された沈降粒子を粉砕する第2の粉砕工程とを含む。以下、各工程について詳細に説明する。
【0020】
(第1の粉砕工程について)
第1の粉砕工程における粉砕粒度(以下、「一次粉砕粒度」と称する場合がある。)は、第2の粉砕工程においてイナートリッチな沈降粒子を強粉砕する必要があるため、所定の目標粒度よりも粗く設定される。
図2の代表例では、所定の目標粒度が粒径3mm以下の石炭粒子が83質量%に対して、一次粉砕粒度を粒径3mm以下の石炭粒子が75質量%と粗めに設定している。
【0021】
一次粉砕の目的は、イナート組織とビトリニット組織の分離である。
図3は、高イナート炭に関して、原炭の状態での石炭粒子と一次粉砕後における石炭粒子を模式的に示している。原炭の状態では石炭の粉砕粒度が粗いため、イナート組織とビトリニット組織との分離性が悪く、イナート組織とビトリニット組織とが混在した石炭粒子の比率が高くなっている。一方、一次粉砕後は、粉砕粒度が細かくなることにより、イナート組織とビトリニット組織との分離性が良くなり、イナート組織とビトリニット組織とが混在した石炭粒子の比率が低くなっている。したがって、一次粉砕粒度が粗くなりすぎると、イナート組織とビトリニット組織との分離性が悪くなる。
【0022】
そこで、本発明者らが検討したところ、一次粉砕粒度の数値範囲を、「所定の目標粒度よりも粒径3mm以下の石炭粒子の比率が3質量%以上少ない粉砕粒度から、粒径3mm以下の石炭粒子が65質量%以上の粉砕粒度の範囲で粉砕する」ことが重要であることが判った。
【0023】
すなわち、本発明で対象とする性状の種々の石炭について、一次粉砕粒度とイナート組織およびビトリニット組織の分離性の関係について調べたところ、一次粉砕粒度が粒径3mm以下の石炭粒子が65質量%未満と粗すぎる場合、石炭粒子内部にイナート組織とビトリニット組織が混在している混在粒子の比率が高いことが判明した。
【0024】
そのため、イナート組織とビトリニット組織の分離性が悪く、比重分離後の沈降粒子中に粗大イナート組織を十分に濃縮することができないことが分かった。その結果、第2の粉砕工程で沈降物を強粉砕しても、粗大イナート組織を十分に細粒化することができないため、粒径3mm以下の石炭粒子が65質量%以上の粉砕粒度とする必要がある。
【0025】
ちなみに、
図5に一例として、後述のA炭を用いて、一次粉砕粒度と浮遊粒子および沈降粒子中の粗大イナート組織比率の関係を示す。このとき、サイズ分けのカットポイントは1.5mm、比重分離のカットポイントは比重1.35とした。
【0026】
その結果、
図5に示すように、一次粉砕粒度が粒径3mm以下の石炭粒子が65質量%未満の場合では、沈降粒子および浮遊粒子中の粗大イナート組織比率はほとんど変化していないことがわかった。これは、粉砕によってイナート組織とビトリニット組織の分離性が改善していないことを表している。
【0027】
一方で、一次粉砕粒度が細かいほど、沈降物の粗大イナート組織比率は上昇し、浮遊物の粗大イナート組織比率は低下する。これは、一次粉砕粒度が細かいほど、イナート組織とビトリニット組織との分離性が良くなっているためである。
【0028】
一方、一次粉砕粒度が、所定の目標粒度との粒度差として、粒径3mm以下の石炭粒子の比率で3質量%未満である場合、イナート組織とビトリニット組織の分離性は良好であるものの、所定の目標粒度を満足させるために、後述の第2粉砕工程では、ほとんど粉砕することができない。このため、本発明を用いるメリットがほとんど享受できないことから、一次粉砕粒度を、所定の目標粒度よりも粒径3mm以下の石炭粒子の比率が3質量%以上少ない粉砕粒度と規定した。
【0029】
ちなみに、所定の目標粒度とは、本発明の工程の最終目標粒度を意味しており、粒径3mm以下の石炭粒子が70〜95質量%程度が例示できる。本発明の工程により、所定の目標粒度に調整された粉砕炭は、他の粉砕工程で得られた粉砕炭と配合して、最終的な粒度調整を行った後に、コークス炉に装入される。但し、本発明の工程により得られた粉砕炭を、他の粉砕炭と配合することなくコークス炉に装入しても良い。
(第1の分離工程について)
第1の分離工程では、一次粉砕工程において粉砕された粒子を粗粒子と微粒子とにサイズ分けして、分離する。ここで、一次粉砕工程で粉砕された高イナート炭を粗粒子と微粒子にサイズ分けする際に、0.5〜3mmの範囲のいずれかのサイズのカットポイントとする必要があることがわかった。
【0030】
その理由としては、高イナート炭をサイズ分けするカットポイントが3mm超である場合、カットポイント未満の微粒子中に、コークス強度低下の原因となる最大長で1.5mm以上の粗大イナート組織が多く混入する。このため、微粒子中の1.5mm以上の粗大イナート組織が粉砕されずにコークス中に多く残存するため、コークス強度を高めることができないことを、実験的に知見した。
【0031】
一方、高イナート炭をサイズ分けするカットポイントが0.5mm未満である場合、後述の第2の分離工程において、重液から石炭粒子を回収することが難しくなり、重液内に粒径の小さい石炭粒子が残存する。そのため、重液のリサイクルが難しくなり、重液サイクロンの操業性が悪化するためである。
【0032】
以上の通り、サイズ分けのカットポイントは、石炭中の粗大イナート組織とそれ以外の組織とを分離可能なサイズとするために、0.5〜3mmの範囲のいずれかのサイズのカットポイントとする必要がある。
【0033】
ちなみに、
図2の代表例では、サイズ分けのカットポイントを1.5mmに設定し、一次粉砕された高イナート炭は、粒径が1.5mm以上の粗粒子と、粒径が1.5mm未満の微粒子とに分離されている。通常サイズ分けには篩を用いるが、風力を用いてサイズ分けしてもよい。
【0034】
ここで、サイズ分けのポイントである1.5mmは、コークス強度低下の原因となる粗大イナート組織の最大長に対応している。すなわち、最大長が1.5mm以上である粗大イナート組織はコークス強度低下の原因となるため、この粗大イナート組織を分離するために、1.5mmでサイズ分けを行うことが最も好適である。
図2の代表例では、1.5mm以上の粗粒子の質量比率が42.8%、1.5mm未満の微粒子の質量比率が57.2%である。なお、1.5mm以上の粗大イナート組織は全て粗粒子側に移行する。
(第2の分離工程について)
第2の分離工程において、前記の粗粒子は適切な比重に調節した溶液(重液)とともに、例えば重液サイクロン装置に投入される。重液には、水にマグネタイトの微粒子が分散した溶液、有機溶媒、重油などを用いることができる。
【0035】
前記の粗粒子には、イナートリッチな石炭粒子と、ビトリニットリッチな石炭粒子とが含まれており、イナートリッチな石炭粒子は、ビトリニットリッチな石炭粒子よりも比重が重い。よって、イナートリッチな石炭粒子は重液サイクロンの底部から排出され、ビトリニットリッチな石炭粒子は重液に浮遊して、重液サイクロンの上部から排出される。イナートリッチな石炭粒子には、粗大イナート組織が多く含まれているため、沈降物を回収することにより粗大イナート組織が濃縮した石炭粒子を取り出すことができる。
【0036】
なお、本発明者らは、種々の石炭について、比重分離のカットポイントとイナート組織およびビトリニット組織の分離性の関係について調べ、比重分離のカットポイントを検討したところ、「1.27以上1.40未満」とする必要があることがわかった。
【0037】
ちなみに、比重分離のカットポイントは、重液の比重を調整することで変えることができる。但し、工業的に広く使用されている重液サイクロンにおいて、重液の比重と実際の比重分離のカットポイントには、比重で0.02〜0.05程度のバイアスがある。よって、所望のカットポイントで比重分離するためには、通常カットポイントよりも比重が0.02〜0.05程度低めの重液を用いることが推奨される。
【0038】
比重分離のカットポイントが比重1.27未満と低すぎる場合、沈降粒子中に粗大イナート組織を十分に濃縮することができないため、沈降粒子を細粒化しても粗大イナート組織を優先的に細粒化することができないことが分かった。
【0039】
図7に一例として、A炭を用いて、カットポイントとなる比重と浮遊粒子および沈降粒子中の粗大イナート組織比率の関係を示す。
図7に示すように、カットポイントとなる比重が1.27未満では、比重分離前と沈降粒子中の1.5mm以上の粗大イナート組織比率に大差がない。すなわち、沈降粒子中に粗大イナート組織を濃縮することができていない。
【0040】
一方で、カットポイントとなる比重を高めていくと、沈降粒子中の1.5mm以上の粗大イナート組織比率が上昇し、沈降粒子中に粗大イナート組織を濃縮する。しかし、比重分離のカットポイントが比重1.40以上と高すぎる場合、
図7に示す通り沈降粒子中に粗大イナート組織を濃縮することができても、
図6に示す通り沈降粒子自体の比率が低下する。そのため、沈降粒子を細粒化しても、粗大イナート組織比率を十分に低下させることができない。
【0041】
ちなみに、
図2の代表例では、比重1.35で比重分離を行い、比重1.35未満の浮遊粒子の質量比率が23.1%(対粗粒子では54%)、比重1.35以上の沈降粒子の質量比率が19.7%(対粗粒子では46%)となっている。
【0042】
また、
図2より、比重1.35以上の沈降粒子は、比重1.35未満の浮遊粒子に比べて1.5mm以上の粗大イナート組織の比率が高くなっており、沈降粒子には粗大イナート組織が濃縮されていることが分かる。
(第2の粉砕工程について)
第2の粉砕工程では、前記の第2の分離工程において比重分離された沈降粒子を粉砕する。これにより、沈降粒子中に濃縮された粗大イナート組織が優先的に細粒化されるため、コークス強度が向上する。なお沈降粒子の二次粉砕粒度は、前記微粒子や前記浮遊粒子と配合後の粉砕粒度が、あらかじめ設定した所定の目標粒度となるように設定される。
【0043】
図2の代表例では、沈降粒子を粒径3mm以下の石炭粒子が39.0質量%から74.6質量%に細粒化し、最終的な目標粒度である粒径3mm以下の石炭粒子が83.0質量%に調整されている。最終的な1.5mm以上の粗大イナート組織の比率は6.5%となっている。
【0044】
ちなみに、
図4に同一炭種の高イナート炭である「A炭」を、従来方法である1回の粉砕(以下、「ワンパス粉砕」という)によって、粒径3mm以下の累積比率83.0質量%に粉砕したときの1.5mm以上の粗大イナート組織の比率を示す。このとき、1.5mm以上の粗大イナート組織の比率は9.7体積%である。
【0045】
したがって、高イナート炭の最終的な目標粒度を粒径3mm以下の累積比率83.0質量%と設定した場合、本実施形態では従来方法に比べて1.5mm以上の粗大イナート組織の比率を3.2体積%低減することができた。
[実施例]
実機の比重分離工程をシミュレートすることができる試験用重液サイクロン、実機のコークス炉をシミュレートすることができる試験用コークス炉を用いて、石炭の比重分離試験、乾留試験および乾留後コークスの評価試験を行った。石炭の嵩密度は、ASTM D−291−86に記載されている方法で測定し、測定された嵩密度に調整して石炭をコークス炉に装入した。石炭試料は、表1に示すような2銘柄(A炭、B炭)を使用した。A炭およびB炭の粗大イナート組織の含有量は5体積%以上であり、いずれも高イナート炭に分類される。配合比率はA炭50質量%、B炭50質量%とした。コークス炉に装入する水分は全て2%に調整した。
【0047】
なお、石炭の全膨張率TD、最大膨張率MDは、JIS M 8801のディラトメーターによる膨張性試験装置によって測定した。石炭の平均反射率R
Oは、JIS M8816の石炭の微細組織成分及び反射率測定方法に記載の方法で測定されるビトリニットの平均最大反射率の加重平均とした。
【0048】
基準となるコークス強度を求めるため、A炭およびB炭を、ワンパスで粒径3mm以下の石炭粒子が83.0質量%に粉砕し、粉砕後のA炭およびB炭を1:1(無水質量ベースで)で配合した配合炭を作成し、配合炭の嵩密度をASTM D−291−86に記載されている方法で測定し、測定した嵩密度に調整して試験用コークス炉に配合炭を装入してコークスを製造した。表2に、各サイズ区分毎のイナート組織の割合、石炭の粉砕粒度、装入密度およびコークス強度DI
15015を示す。
【0050】
表2より、A炭およびB炭を、ワンパスで粒径3mm以下の累積比率83.0質量%に粉砕したとき、1.5mm以上の粗大イナート組織比率は7.22体積%、コークス強度DI
15015は85.8であった。
下記の表3は、発明例1〜2、比較例1〜6の嵩密度測定結果、乾留後コークス強度の測定結果を示している。
【0052】
[発明例1]
発明例1では、高イナート炭であるA炭およびB炭の一次粉砕粒度を「粒径3mm以下の石炭粒子が75質量%」、サイズ分け工程におけるカットポイントは「1.5mm」、比重分離工程におけるカットポイントは「1.35」、最終的な高イナート炭の目標粉砕粒度は「粒径3mm以下の石炭粒子が83.0質量%」とした。以下、サイズ分けには篩を、比重分離には重液サイクロンを使用した。
【0053】
図8に発明例1のマテリアルバランスを示す。最終的に、粉砕粒度は粒径3mm以下の石炭粒子が83.0質量%、1.5mm以上の粗大イナート組織比率は5.34体積%となった。表3より、発明例1の粉砕粒度は粒径3mm以下の累積比率83.0質量%とワンパス粉砕と同一であるにもかかわらず、コークス強度DI
15015は86.4となり、ワンパス粉砕に比べてコークス強度DI
15015は0.6ポイント向上した。
[発明例2]
発明例2では、高イナート炭であるA炭およびB炭の一次粉砕粒度を「粒径3mm以下の石炭粒子が67質量%」、サイズ分け工程におけるカットポイントは「1.5mm」、比重分離工程におけるカットポイント「1.30」、最終的な高イナート炭の目標粉砕粒度は「粒径3mm以下の石炭粒子が83.0質量%」とした。
【0054】
図9に発明例2のマテリアルバランスを示す。最終的に、粉砕粒度は粒径3mm以下の石炭粒子が83.0質量%、1.5mm以上の粗大組織イナート比率は5.04体積%となった。表3より、発明例2の粉砕粒度は粒径3mm以下の石炭比率が83.0質量%とワンパス粉砕と同一であるにもかかわらず、コークス強度DI
15015は86.4となり、ワンパス粉砕に比べてコークス強度DI
15015は0.6ポイント向上した。
[比較例1]
比較例1では、ワンパス粉砕で、発明例1と同等の1.5mm以上の粗大イナート組織比率(5.34体積%)となるようにA炭およびB炭の粉砕粒度を調節した。
図10および表3に示すように、粉砕粒度は粒径3mm以下の石炭粒子が91質量%まで達し、その結果嵩密度は、0.83t/m
3から0.81t/m
3に低下した。コークス強度DI
15015は嵩密度低下影響により目減りし、85.9となった。
[比較例2]
比較例2では、高イナート炭であるA炭およびB炭の一次粉砕粒度を「粒径3mm以下の石炭粒子が60質量%」、サイズ分け工程におけるカットポイントは「1.5mm」、比重分離工程におけるカットポイントは「1.27」、最終的な高イナート炭の目標粉砕粒度は「粒径3mm以下の石炭粒子が83.0質量%」とした。
【0055】
図11に比較例2のマテリアルバランスを示す。
図11に示すように一次粉砕粒度が粗すぎる場合は、イナート組織とビトリニット組織の分離性が悪いため、沈降粒子中の1.5mm以上の粗大イナート組織比率が26.1体積%と低く、粗大イナート組織を十分に濃縮することができない。また、浮遊粒子中の1.5mm以上の粗大イナート組織比率も23.8%と高い。
【0056】
そのため、沈降粒子を細かく粉砕しても粗大イナート組織を十分に細粒化することができず、最終的な1.5mm以上の粗大イナート組織比率は6.98体積%にとどまっている。この結果、表3に示すように、比較例2のコークス強度DI
15015は86.0となり、ワンパス粉砕に比べてコークス強度DI
15015は0.2ポイントしか向上せず、高イナート炭の処理の効果が小さい。
[比較例3]
比較例3では、高イナート炭であるA炭およびB炭の一次粉砕粒度を「粒径3mm以下の石炭粒子が82質量%」、サイズ分け工程におけるカットポイントは「1.5mm」、比重分離工程におけるカットポイントは「1.35」、最終的な高イナート炭の目標粉砕粒度は「粒径3mm以下の石炭粒子が83.0質量%」とした。つまり、比較例3の一次粉砕粒度及び目標粒度は、僅か1.0質量%しか差がない。
【0057】
図12に比較例3のマテリアルバランスを示す。
図12に示すように一次粉砕粒度が細かすぎる場合は、イナート組織とビトリニット組織の分離性は良好であり、沈降粒子中の1.5mm以上の粗大イナート組織比率が36.2体積%と高いものの、最終的な目標粒度を満足させるために沈降粒子の二次粉砕粒度を粗くしなければならい。そのため、粗大イナート組織を十分に細粒化することができず、最終的な1.5mm以上の粗大イナート組織比率は7.44体積%にとどまっている。この結果、表3に示すように、比較例3のコークス強度DI
15015は85.9となり、ワンパス粉砕と比べてコークス強度DI
15015は向上しない。
[比較例4]
比較例4では、高イナート炭であるA炭およびB炭の一次粉砕粒度を「粒径3mm以下の石炭粒子が75質量%」、サイズ分け工程におけるカットポイントは「1.5mm」、比重分離工程におけるカットポイントは「1.25」、最終的な高イナート炭の目標粉砕粒度は「粒径3mm以下の石炭粒子が83.0質量%」とした。
【0058】
図13に比較例4のマテリアルバランスを示す。
図13に示すように比重分離のカットポイントが低すぎる場合は、沈降粒子中の1.5mm以上の粗大イナート組織比率が24.0体積%と低く、粗大イナート組織を十分に濃縮することができない。そのため、沈降粒子を細粒化しても粗大イナート組織を優先的に細粒化することができず、最終的な1.5mm以上の粗大イナート組織比率は6.82体積%にとどまっている。この結果、表3に示すように、比較例4のコークス強度DI
15015は86.0となり、ワンパス粉砕に比べてコークス強度DI
15015は0.2ポイントしか向上せず、高イナート炭の処理の効果が小さい。
[比較例5]
比較例5では、高イナート炭であるA炭およびB炭の一次粉砕粒度を「粒径3mm以下の石炭粒子が80質量%」、サイズ分け工程におけるカットポイントは「1.5mm」、比重分離工程におけるカットポイントは「1.45」、最終的な高イナート炭の目標粉砕粒度は「粒径3mm以下の石炭粒子が83.0質量%」とした。
【0059】
図14に比較例5のマテリアルバランスを示す。
図14に示すように比重分離のカットポイントが高すぎる場合は、沈降粒子中の1.5mm以上の粗大イナート組織比率が33.0体積%と高いものの、沈降粒子自体の原炭に対する比率が9.0体積%に低下する。そのため、沈降粒子を細粒化しても、最終的な1.5mm以上の粗大イナート組織比率は6.67体積%にとどまっている。この結果、比較例5のコークス強度DI
15015は86.0となり、ワンパス粉砕に比べてコークス強度DI
15015は0.2ポイントしか向上せず、高イナート炭の処理の効果が小さい。
[比較例6]
比較例6では、高イナート炭であるA炭およびB炭の一次粉砕粒度を「粒径3mm以下の石炭粒子が75質量%」、サイズ分け工程におけるカットポイントは「5mm」、比重分離工程におけるカットポイントは「1.27」、最終的な高イナート炭の目標粉砕粒度は「粒径3mm以下の石炭粒子が83.0質量%」とした。
【0060】
図15に比較例6のマテリアルバランスを示す。
図15に示すようにサイズ分けのカットポイントが5mmと高すぎる場合は、粗粒子の比率が10.8質量%に低下し、微粒子の比率が89.2質量%と多くなっている。
【0061】
また、沈降粒子自体の比率も8.4質量%に低下する。そのため、沈降粒子を細粒化しても、最終的な1.5mm以上の粗大イナート組織比率は7.00体積%にとどまっている。この結果、比較例6のコークス強度DI
15015は86.0となり、ワンパス粉砕に比べてコークス強度DI
15015は0.2ポイントしか向上せず、高イナート炭の処理の効果が小さい。