特許第5966862号(P5966862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン・エィ・ダブリュ株式会社の特許一覧

特許5966862レーン変更案内システム、サーバ、方法およびプログラム
<>
  • 特許5966862-レーン変更案内システム、サーバ、方法およびプログラム 図000002
  • 特許5966862-レーン変更案内システム、サーバ、方法およびプログラム 図000003
  • 特許5966862-レーン変更案内システム、サーバ、方法およびプログラム 図000004
  • 特許5966862-レーン変更案内システム、サーバ、方法およびプログラム 図000005
  • 特許5966862-レーン変更案内システム、サーバ、方法およびプログラム 図000006
  • 特許5966862-レーン変更案内システム、サーバ、方法およびプログラム 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966862
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】レーン変更案内システム、サーバ、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20160728BHJP
   G08G 1/137 20060101ALI20160728BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   G01C21/36
   G08G1/137
   G09B29/10 A
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-239733(P2012-239733)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-89131(P2014-89131A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners 特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100167254
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 貴亨
(72)【発明者】
【氏名】後藤 広彦
(72)【発明者】
【氏名】高原 昌俊
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 豪
【審査官】 岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−123840(JP,A)
【文献】 特開2006−313519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00−21/36
G08G 1/137
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーン変更を行った際の車速である変更車速とレーン変更の所要期間とを、レーン変更を行った地点から分岐地点までの残距離である変更残距離に対応付けて示す履歴情報を取得する履歴情報取得手段と、
前記履歴情報に基づいて、レーン変更の案内を行う地点である案内地点を特定する案内地点特定手段と、
前記案内地点においてレーン変更の案内を案内部に行わせる案内制御手段と、
を備え
前記案内地点特定手段は、前記変更車速が閾値以上となり、かつ、前記所要期間が閾値以下となる前記変更残距離を基準距離として特定し、前記基準距離に基づいて前記案内地点を特定する、
レーン変更案内システム。
【請求項2】
前記案内地点特定手段は、前記変更車速が閾値以上となる前記変更残距離の最小値と、前記所要期間が閾値以下となる前記変更残距離の最小値とのうち大きい方を前記基準距離として特定する、
請求項に記載のレーン変更案内システム。
【請求項3】
前記履歴情報取得手段は、前記変更車速と前記所要期間とレーン変更後におけるハザードランプの点灯率とを、前記変更残距離に対応付けて示す前記履歴情報を取得し、
前記案内地点特定手段は、前記変更車速が閾値以上となり、前記所要期間が閾値以下となり、かつ、前記点灯率が閾値以下となる前記変更残距離を前記基準距離として特定する、
請求項または請求項のいずれかに記載のレーン変更案内システム。
【請求項4】
前記案内地点特定手段は、前記変更車速が閾値以上となる前記変更残距離の最小値と、前記所要期間が閾値以下となる前記変更残距離の最小値と、前記点灯率が閾値以下となる前記変更残距離の最小値とのうち最も大きい距離を前記基準距離として特定する、
請求項に記載のレーン変更案内システム。
【請求項5】
前記案内地点特定手段は、レーン変更の案内を開始してからレーン変更を行うまでに車両が走行する距離である空走距離と前記基準距離との合計値が、前記案内地点から前記分岐地点までの距離と一致するように前記案内地点を特定する、
前記案内制御手段は、前記案内地点においてレーン変更の案内を案内部に開始させる、
請求項から請求項のいずれかに記載のレーン変更案内システム。
【請求項6】
前記案内地点特定手段は、車両の現在の車速が大きいほど、大きい前記空走距離を設定する、
請求項に記載のレーン変更案内システム。
【請求項7】
前記履歴情報取得手段は、複数の車両が行ったレーン変更についての前記変更車速と前記所要期間とを、前記変更残距離ごとに統計処理することにより作成された前記履歴情報を取得する、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のレーン変更案内システム。
【請求項8】
レーン変更を行った際の車速である変更車速とレーン変更の所要期間とを、レーン変更を行った地点から分岐地点までの残距離である変更残距離に対応付けて示す履歴情報を取得する履歴情報取得手段と、
前記履歴情報に基づいて、車両にレーン変更の案内を行わせる地点である案内地点を特定する案内地点特定手段と、
前記案内地点を示す情報を車両に送信する送信手段と、
を備え
前記案内地点特定手段は、前記変更車速が閾値以上となり、かつ、前記所要期間が閾値以下となる前記変更残距離を基準距離として特定し、前記基準距離に基づいて前記案内地点を特定する、
レーン変更案内サーバ。
【請求項9】
レーン変更を行った際の車速である変更車速とレーン変更の所要期間とを、レーン変更を行った地点から分岐地点までの残距離である変更残距離に対応付けて示す履歴情報を取得する履歴情報取得工程と、
前記履歴情報に基づいて、レーン変更の案内を行う地点である案内地点を特定する案内地点特定工程と、
前記案内地点においてレーン変更の案内を案内部に行わせる案内制御工程と、
を含み、
前記案内地点特定工程では、前記変更車速が閾値以上となり、かつ、前記所要期間が閾値以下となる前記変更残距離を基準距離として特定し、前記基準距離に基づいて前記案内地点を特定する、
レーン変更案内方法。
【請求項10】
レーン変更を行った際の車速である変更車速とレーン変更の所要期間とを、レーン変更を行った地点から分岐地点までの残距離である変更残距離に対応付けて示す履歴情報を取得する履歴情報取得機能と、
前記履歴情報に基づいて、レーン変更の案内を行う地点である案内地点を特定する案内地点特定機能と、
前記案内地点においてレーン変更の案内を案内部に行わせる案内制御機能と、
をコンピュータに実行させ、
前記案内地点特定機能によりコンピュータは、前記変更車速が閾値以上となり、かつ、前記所要期間が閾値以下となる前記変更残距離を基準距離として特定し、前記基準距離に基づいて前記案内地点を特定する、
レーン変更案内プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーン変更を案内するレーン変更案内システム、サーバ、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、推奨経路にしたがって車両が走行できるように経路誘導を行う際に、推奨経路が通過する車線(変更先の車線)への車線変更を指示するナビゲーション装置が知られている(特許文献1、参照。)。特許文献1において、変更先の車線で渋滞が発生している場合、変更先の車線で渋滞が発生していない場合よりも、車線変更を指示する際における分岐地点までの距離を長くしている。これにより、渋滞によって車線変更が困難となる地点よりも手前の地点にて車線変更を行うように指示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−47491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、変更先の車線で渋滞が発生していない場合において、必ずしもレーン変更が容易であるとは限らないという問題があった。例えば、分岐地点よりも手前に信号機があり、変更先の車線に信号待ちの車両が存在する場合、変更先の車線で渋滞が発生していなくても車線変更が困難となるという問題があった。また、分岐地点よりも手前に車線変更の禁止区間(例えば他の分岐地点の手前の区間)が設けられている場合、変更先の車線で渋滞が発生していなくても車線変更が困難となる。従って、特許文献1において、レーン変更が容易となる地点においてレーン変更の案内を行うことができないという問題があった。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、レーン変更が容易となる地点においてレーン変更の案内を行うことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するため、本発明において、履歴情報取得手段は、レーン変更を行った際の車速である変更車速とレーン変更の所要期間とを、レーン変更を行った地点から分岐地点までの残距離である変更残距離に対応付けて示す履歴情報を取得する。案内地点特定手段は、履歴情報に基づいて、レーン変更の案内を行う地点である案内地点を特定する。案内制御手段は、案内地点においてレーン変更の案内を案内部に行わせる。
【0006】
前記の構成において、案内地点特定手段は、履歴情報が示すレーン変更の変更車速と所要期間とに基づいて、レーン変更が容易となる変更車速と所要期間とに対応する分岐地点までの変更残距離を特定できる。従って、案内地点特定手段は、レーン変更が容易となる変更車速と所要期間とに対応する変更残距離に基づいて、レーン変更が容易となる案内地点を特定できる。従って、案内地点においてレーン変更の案内を行うことにより、レーン変更の案内を認知した運転者が容易にレーン変更を行うことができる。
【0007】
履歴情報取得手段は、過去におけるレーン変更の変更車速と所要期間とを変更残距離に対応付けて示す履歴情報を取得すればよく、変更車速と所要期間とが変更残距離ごとに記録された履歴情報を取得すればよい。分岐地点ごとにレーン変更が容易となる地点が異なるため、履歴情報取得手段は、分岐地点ごとに変更車速と所要期間とを変更残距離に対応付けて示す履歴情報を取得してもよい。さらに、同一の分岐地点であっても分岐地点における経路(分岐地点に対する進入道路と退出道路との組み合わせ)ごとにレーン変更が容易となる地点が異なるため、履歴情報取得手段は、分岐地点における経路ごとに変更車速と所要期間とを変更残距離に対応付けて示す履歴情報を取得してもよい。また、履歴情報取得手段は、レーン変更前のレーンとレーン変更先のレーンとの組み合わせごとに変更車速と所要期間とを変更残距離に対応付けて示す履歴情報を取得してもよい。さらに、履歴情報取得手段は、レーン変更を行った時間帯や天候や渋滞度や曜日等の環境条件ごとに変更車速と所要期間とを変更残距離に対応付けて示す履歴情報を取得してもよい。
【0008】
変更車速は、レーン変更を行った際における減速の状況が特定できる車速情報であればよく、レーン変更中における平均車速や最小車速等であってもよいし、レーン変更の終了時刻における車速であってもよい。なお、変更車速が大きいほど小さい車速の減少量でレーン変更ができるため、変更車速が大きいほど容易にレーン変更ができると言うことができる。レーン変更の所要期間とは、レーン変更の開始時刻からレーン変更の終了時刻までの期間である。なお、所要期間が短いほど容易にレーン変更ができると言うことができる。
【0009】
分岐地点とは、車両が退出できる退出道路が複数接続している地点であり、到達するまでにレーン変更が必要な地点である。変更残距離とは、車両から分岐地点までの距離であり、車両と分岐地点との間の直線距離であってもよいし、分岐地点に到達するまでに車両が走行する距離であってもよい。案内地点特定手段は、変更残距離ごとの変更車速と所要期間とに基づいて案内地点を特定すればよく、レーン変更が容易であることを表す変更車速と所要期間に対応する変更残距離に基づいて案内地点を特定すればよい。案内地点とは、レーン変更の案内を行う地点であり、レーン変更の案内を開始させる地点であってもよいし、レーン変更の案内を終了させる地点であってもよい。
【0010】
さらに、案内地点特定手段は、変更車速が閾値以上となり、かつ、所要期間が閾値以下となる変更残距離を基準距離として特定し、基準距離に基づいて案内地点を特定してもよい。変更車速が閾値以上となり、かつ、所要期間が閾値以下となる基準距離に基づいて案内地点を特定することにより、レーン変更における減速の少なさと、所要期間の短さとを両立できる案内地点でレーン変更の案内を行うことができる。案内地点特定手段は、基準距離に基づいて案内地点を特定するとは、分岐地点までの変更残距離が基準距離となる地点を案内地点として特定することであってもよいし、分岐地点までの変更残距離が基準距離よりも長くなる地点を案内地点として特定することであってもよい。
【0011】
さらに、案内地点特定手段は、変更車速が閾値以上となる変更残距離の最小値と、所要期間が閾値以下となる変更残距離の最小値とのうち大きい方を基準距離として特定してもよい。これにより、変更車速が閾値以上となり、かつ、所要期間が閾値以下となる変更残距離のうちの最小値を基準距離として特定することができる。すなわち、レーン変更における減速の少なさと、所要期間の短さとを両立させ、かつ、できるだけ分岐地点に近い位置を基準位置として特定できる。従って、分岐地点から遠すぎる地点にてレーン変更が案内され、運転者に違和感を与えることを防止できる。
【0012】
また、履歴情報取得手段は、変更車速と所要期間とレーン変更後におけるハザードランプの点灯率とを変更残距離に対応付けて示す履歴情報を取得してもよい。そして、案内地点特定手段は、変更車速が閾値以上となり、所要期間が閾値以下となり、かつ、点灯率が閾値以下となる変更残距離を基準距離として特定してもよい。ここで、ハザードランプは、レーン変更先のレーンにおいて他車両に進路を譲ってもらった場合に点灯される可能性が高く、ハザードランプの点灯率が高いほどレーン変更先のレーンにおいて他車両が存在していた可能性が高いと考えられる。すなわち、ハザードランプの点灯率が高いほど、レーン変更が困難であったと考えることができる。従って、ハザードランプの点灯率が小さくなる地点を案内地点として特定することにより、レーン変更が容易となる案内地点でレーン変更の案内を行うことができる。
【0013】
さらに、案内地点特定手段は、変更車速が閾値以上となる変更残距離の最小値と、所要期間が閾値以下となる変更残距離の最小値と、点灯率が閾値以下となる変更残距離の最小値とのうち最も大きい距離を基準距離として特定してもよい。これにより、レーン変更における減速の少なさと、所要期間の短さと、ハザードランプの点灯率の小ささとを実現し、かつ、できるだけ分岐地点に近い位置を基準位置として特定できる。
【0014】
さらに、案内地点特定手段は、レーン変更の案内を開始してからレーン変更を行うまでに車両が走行する距離である空走距離と基準距離との合計値が、案内地点から分岐地点までの距離と一致するように案内地点を特定してもよい。すなわち、レーン変更の案内を開始してからレーン変更を行うまでに車両が走行する距離だけ、基準距離から手前側の案内地点にてレーン変更の案内を開始してもよい。これにより、残距離が基準距離となる地点、すなわちレーン変更が容易となる地点を走行するまでに、運転者はレーン変更の案内を認知してレーン変更の運転操作に備えることができる。
【0015】
また、案内地点特定手段は、車両の現在の車速が大きいほど、大きい空走距離を設定してもよい。ここで、車両の現在の車速が大きいほど、レーン変更の案内を開始してから、残距離が基準距離となる地点を車両が走行するまでの期間が短くなる。従って、車両の現在の車速が大きいほど、運転者がレーン変更の必要性を認知してレーン変更の運転操作に備えるよりも前に、残距離が基準距離となる地点を車両が通過してしまう可能性が高くなる。これに対して、車両の現在の車速が大きいほど空走距離を大きくすることにより、レーン変更の運転操作に備えるよりも前に、残距離が基準距離となる地点、すなわちレーン変更が容易となる地点を車両が通過してしまうことを防止できる。
【0016】
さらに、履歴情報取得手段は、複数の車両が行ったレーン変更についての変更車速と所要期間とを、変更残距離ごとに統計処理することにより作成された履歴情報を取得してもよい。これにより、多数のレーン変更における変更車速と所要期間とを反映させた履歴情報を取得することができ、信頼度の大きい履歴情報を取得することができる。例えば、レーン変更の変更車速と所要期間と変更残距離とを示すプローブデータを複数の車両から受信し、当該プローブデータを統計処理することにより履歴情報が作成されてもよい。ただし、履歴情報は、レーン変更の案内を行う車両が過去に行ったレーン変更の結果に基づいて作成されてもよく、必ずしも複数の車両が行ったレーン変更の結果に基づいて作成されなくてもよい。
【0017】
さらに、本発明のように履歴情報に基づいてレーン変更の案内を行う案内地点を特定する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合や、複数の装置によって実現される場合、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合が想定可能であり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えたナビゲーションシステムや方法、プログラムを提供することが可能である。さらに、本発明は、案内地点を特定し、当該案内地点を車両に提供するレーン変更案内サーバにおいても実現可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】レーン変更案内サーバのブロック図である。
図2】(2A)は変更車速のグラフ、(2B)は所要期間のグラフ、(2C)はハザードランプの点灯率のグラフである。
図3】道路の平面図である。
図4】ナビゲーション装置のブロック図である。
図5】レーン変更案内処理のフローチャートである。
図6】履歴情報更新処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)レーン変更案内サーバの構成:
(2)ナビゲーション装置の構成:
(3)レーン変更案内処理:
(4)履歴情報更新処理:
(5)他の実施形態:
【0020】
(1)レーン変更案内サーバの構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかるレーン変更案内システムの一部を構成するレーン変更案内サーバ10の構成を示すブロック図である。レーン変更案内サーバ10は、制御部20と記録媒体30と通信部40を備えている。制御部20は、CPUとRAMとROM等を備え、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを実行する。記録媒体30は、地図情報30aと履歴情報データベース(DB)30bとを記録する。地図情報30aは、道路上に設定されたノードの位置等を示すノードデータと、ノード同士を接続する道路に対応するリンクの情報を示すリンクデータと、ノード同士を接続する道路の幅方向の中央線上に設定された形状補間点の位置等を示す形状補間点データとを含んでいる。また、リンクデータには、各道路を構成するレーンを示す情報と、分岐地点において各レーンから退出可能な道路を示す情報とが含まれる。3本以上のリンクが接続するノードは分岐地点に対応する。
【0021】
履歴情報DB30bは、レーン変更を行った際の車速である変更車速とレーン変更の所要期間とハザードランプの点灯率とを、レーン変更を行った地点から分岐地点までの残距離である変更残距離に対応付けて示す履歴情報を記録したデータベースである。本実施形態において、変更車速は、レーン変更の開始時刻から終了時刻までの間における車速の平均値である。所要期間は、レーン変更の開始時刻から終了時刻までの期間である。ハザードランプの点灯率とは、レーン変更の開始時刻からレーン変更の終了時刻までの期間と、レーン変更の終了時刻から所定期間経過するまでの期間との少なくとも一方においてハザードランプが点灯された確率(点灯された回数/レーン変更の回数)である。レーン変更の開始時刻とは車両の車輪がレーンの区画線を跨ぎ始めた時刻であり、レーン変更の終了時刻とは車両の車輪がレーンの区画線を跨ぎ終わった時刻である。残距離とは、車両から分岐地点までの距離である。
【0022】
図2Aは、履歴情報において変更残距離ごとに記録された変更車速を示すグラフである。図2Aの横軸は変更残距離Yを示し、縦軸は変更車速を示す。図1図2Aに示すように、履歴情報において複数の変更残距離Yのそれぞれについて変更車速が記録されており、履歴情報に基づいて任意の変更残距離Yについての変更車速が取得可能となっている。図2Bは、履歴情報において変更残距離Yごとに記録された所要期間を示すグラフである。図2Aの横軸は変更残距離Yを示し、縦軸は所要期間を示す。図1図2Bに示すように、履歴情報において複数の変更残距離Yのそれぞれについて所要期間が記録されており、履歴情報に基づいて任意の変更残距離Yについての所要期間が取得可能となっている。図2Cは、履歴情報において変更残距離Yごとに記録された所要期間を示すグラフである。図2Cの横軸は変更残距離Yを示し、縦軸はハザードランプの点灯率を示す。図1図2Cに示すように、履歴情報において複数の変更残距離Yのそれぞれについてハザードランプの点灯率が記録されており、履歴情報に基づいて任意の変更残距離Yについてのハザードランプの点灯率が取得可能となっている。
【0023】
また、図1に示すように、履歴情報DB30bにおいて、履歴情報は分岐経路ごとに記録されている。分岐経路とは、分岐地点と、当該分岐地点を走行する直前に車両が走行していた進入道路と、当該分岐地点を走行した直後に車両が走行していた退出道路との組み合わせを意味する。図3は、道路の平面図である。図3の例では、車両が道路aの中央のレーンを紙面上方に進行し、道路(進入道路)aから分岐地点Q1に進入し、当該分岐地点Q1から右折道路(退出道路)bに退出する場合の例を示す。例えば、図3に示す進入道路aから分岐地点Q1に進入した場合であっても、当該分岐地点Q1から右折道路bに退出するために行ったレーン変更と、当該分岐地点Q1から左折道路(退出道路)cに退出するために行ったレーン変更とでは、互い異なる分岐経路(a−Q1−b,a−Q1−c)となる。
【0024】
また、図1に示すように、履歴情報DB30bの履歴情報ごとに案内残距離が記録されている。案内残距離とは、車両にてレーン変更の案内を開始させる際の分岐地点までの残距離を意味する。すなわち、分岐地点までの残距離が案内残距離となる地点が案内地点であり、当該案内地点を車両が走行するタイミングでレーン変更の案内が開始される。
通信部40は、車両と無線通信を行うための通信回路である。本実施形態において、レーン変更案内サーバ10は、道路上を走行する複数の車両と双方向に通信することが可能となっている。
【0025】
制御部20は、レーン変更案内プログラム21を実行する。レーン変更案内プログラム21は、履歴情報取得部21aと履歴情報統計部21bと案内地点特定部21cと送信部21dとを含む。
【0026】
履歴情報取得部21aは、変更車速と所要期間とハザードランプの点灯率とを変更残距離Yに対応付けて示す履歴情報を取得する機能を制御部20に実行させるモジュールである。具体的に、履歴情報取得部21aの機能により制御部20は、履歴情報DB30bから更新対象の履歴情報を取得する。更新対象の履歴情報とは、履歴情報DB30bに記録された履歴情報のうち、車両から受信したプローブデータPが示す分岐経路と同一の分岐経路が対応付けられた履歴情報である。例えば、分岐経路(a−Q1−b)を示すプローブデータPを受信した場合、履歴情報DB30bの履歴情報のうち、分岐経路(a−Q1−b)が対応付けられた履歴情報が更新対象の履歴情報として取得される。プローブデータPは、車両が行ったレーン変更についての情報を示すデータであり、車両がレーン変更するごとに当該車両からレーン変更案内サーバ10に送信されるデータである。具体的に、プローブデータPは、レーン変更についての変更車速と所要期間とハザードランプの点灯有無と分岐経路と変更残距離Yとを示すデータである。図1に示すように、履歴情報において、同一の分岐経路かつ同一の変更残距離YについてのプローブデータPが受信された受信回数Nが記録されている。
【0027】
履歴情報統計部21bは、プローブデータPに基づいて統計処理を行うことにより、履歴情報を更新する機能を制御部20に実行させるモジュールである。履歴情報統計部21bは、車速統計部21b1と期間統計部21b2と点灯率統計部21b3とを含む。
【0028】
車速統計部21b1は、更新対象の履歴情報が示す変更車速を統計処理する機能を制御部20に実行させるモジュールである。具体的に、車速統計部21b1の機能により制御部20は、更新対象の履歴情報が示す変更車速のうち、プローブデータPが示す変更残距離Yと同一の変更残距離Yが対応付けられている変更車速を更新対象の変更車速として選択する。なお、制御部20は、履歴情報において、更新対象として選択した変更車速に対応する回数受信Nに1を加算する。ここで、履歴情報が示す更新対象の変更車速をVoldとし、プローブデータPが示す変更車速をVとすると、制御部20は、新たな変更車速VnewをVnew={(N−1)×Vold+V}/Nによって算出する。前記の式が示すように、変更車速は、過去における変更車速の平均値を意味する。
【0029】
期間統計部21b2は、更新対象の履歴情報が示す所要期間を統計処理する機能を制御部20に実行させるモジュールである。具体的に、車速統計部21b1の機能により制御部20は、更新対象の履歴情報が示す所要期間のうち、プローブデータPが示す変更残距離Yと同一の変更残距離Yが対応付けられている所要期間を更新対象の所要期間として選択する。ここで、更新対象の履歴情報が示す所要期間をToldとし、プローブデータPが示す所要期間をTとすると、制御部20は、新たな所要期間TnewをTnew={(N−1)×Told+T}/Nによって算出する。前記の式が示すように、所要期間は、過去における所要期間の平均値を意味する。
【0030】
点灯率統計部21b3は、更新対象の履歴情報が示すハザードランプの点灯率を統計処理する機能を制御部20に実行させるモジュールである。具体的に、車速統計部21b1の機能により制御部20は、更新対象の履歴情報が示すハザードランプの点灯率のうち、プローブデータPが示す変更残距離Yと同一の変更残距離Yが対応付けられているハザードランプの点灯率を更新対象のハザードランプの点灯率として選択する。ここで、履歴情報が示す更新対象のハザードランプの点灯率をFoldとする。期間統計部21b2の機能により制御部20は、プローブデータPがハザードランプが点灯されたことを示す場合には、新たなハザードランプの点灯率FnewをFnew={(N−1)×Fold+1}/Nによって算出する。
一方、制御部20は、プローブデータPがハザードランプが点灯されなかったことを示す場合には、新たなハザードランプの点灯率FnewをFnew={(N−1)×Fold}/Nによって算出する。
【0031】
以上のようにして、新たな変更車速Vnewと所要期間Tnewとハザードランプの点灯率Fnewとを算出すると、履歴情報統計部21bの機能により制御部20は、新たな変更車速Vnewと所要期間Tnewとハザードランプの点灯率Fnewとを履歴情報に更新記録する。
【0032】
案内地点特定部21cは、履歴情報に基づいて、レーン変更の案内を行う地点である案内地点を特定する機能を制御部20に実行させるモジュールである。すなわち、案内地点特定部21cの機能により制御部20は、更新対象の履歴情報において変更車速と所要期間とハザードランプの点灯率とが更新された場合に、更新後の変更車速と所要期間とハザードランプの点灯率とに基づいて新たな案内地点を特定する。
【0033】
以下、案内地点の特定手法について説明する。案内地点特定部21cは、車速判定部21c1と期間判定部21c2と点灯率判定部21c3とを含む。車速判定部21c1は、変更車速が閾値以上となる変更残距離Yの最小値を取得する機能を制御部20に実行させるモジュールである。すなわち、車速判定部21c1の機能により制御部20は、更新対象の履歴情報に記録されている変更車速が閾値以上であるか否かを判定し、変更車速が閾値以上となる変更残距離Yの範囲の最小値を取得する。変更車速が閾値以上の変更残距離Yの範囲は、大きく減速することなく容易にレーン変更ができた範囲であると言うことができる。図2Aの例の場合、制御部20は、変更車速が閾値以上となる変更残距離Yの最小値Y1として110mを取得する。
【0034】
期間判定部21c2は、所要期間が閾値以下となる変更残距離Yの最小値を取得する機能を制御部20に実行させるモジュールである。すなわち、期間判定部21c2の機能により制御部20は、更新対象の履歴情報に記録されている所要期間が閾値以下であるか否かを判定し、所要期間が閾値以下となる変更残距離Yの範囲の最小値を取得する。所要期間が閾値以下の変更残距離Yの範囲は、短期間でスムーズにレーン変更ができた範囲であり、容易にレーン変更ができた範囲であると言うことができる。図2Bの例の場合、制御部20は、所要期間が閾値以下となる変更残距離Yの最小値Y2として100mを取得する。
【0035】
点灯率判定部21c3は、ハザードランプの点灯率が閾値以下となる変更残距離Yの最小値を取得する機能を制御部20に実行させるモジュールである。すなわち、点灯率判定部21c3の機能により制御部20は、更新対象の履歴情報に記録されているハザードランプの点灯率が閾値以下であるか否かを判定し、ハザードランプの点灯率が閾値以下となる変更残距離Yの範囲の最小値を取得する。ハザードランプの点灯率が閾値以下の変更残距離Yの範囲は、レーン変更において他の車両に進路を譲ってもらうことなくレーン変更ができる可能性が高い範囲であり、容易にレーン変更ができる範囲であると言うことができる。図2Cの例の場合、制御部20は、ハザードランプの点灯率が閾値以下となる変更残距離Yの最小値Y3として90mを取得する。
【0036】
変更車速の閾値と所要期間が閾値とハザードランプの点灯率の閾値とは、それぞれ記録媒体30に記録されている。本実施形態において、変更車速が閾値と所要期間が閾値は、それぞれ運転者がスムーズにレーン変更ができたと感じた変更車速(例えば30km/h)と所要期間(例えば3秒)であり、実験やアンケートによって設定されている。本実施形態において、ハザードランプの点灯率の閾値は、所定の点灯率(例えば0.3)以下、かつ、ハザードランプの点灯率が収束する値であり、変更残距離1mあたりのハザードランプの点灯率の変化量の絶対値が所定値(例えば0.05)となるハザードランプの点灯率である。従って、ハザードランプの点灯率の閾値以下となる変更残距離Yの範囲の最小値Y3は、これ以上変更残距離Yが大きくなってもハザードランプの点灯率が小さくならないと見なすことができる変更残距離Yを意味する。なお、制御部20は、変更車速が閾値以上の変更残距離Yの範囲が複数存在する場合、制御部20は、当該複数の範囲のうち、最も変更残距離Yが大きい範囲における変更残距離Yの最小値Y1を取得してもよい。同様に、制御部20は、所要期間が閾値以下となる変更残距離Yの複数の範囲のうち、最も変更残距離Yが大きい範囲における変更残距離Yの最小値Y2を取得してもよい。さらに、制御部20は、ハザードランプの点灯率が閾値以下となる変更残距離Yの複数の範囲のうち、最も変更残距離Yが大きい範囲における変更残距離Yの最小値Y3を取得してもよい。変更車速の閾値と所要期間が閾値とハザードランプの点灯率の閾値は、運転者が設定した値であってもよい。
【0037】
案内地点特定部21cの機能により制御部20は、変更車速が閾値以上となる変更残距離Yの最小値Y1と、所要期間が閾値以下となる変更残距離Yの最小値Y2と、ハザードランプの点灯率が閾値以下となる変更残距離Yの最小値Y3とのうち最も大きい距離を基準距離YSとして特定する。すなわち、制御部20は、変更車速が閾値以上となり、所要期間が閾値以下となり、かつ、ハザードランプの点灯率が閾値以下となる変更残距離Yの最小値を基準距離YSとして特定する。
【0038】
案内地点特定部21cの機能により制御部20は、レーン変更の案内を開始してからレーン変更を行うまでに車両が走行する距離である空走距離と基準距離YSとの合計値が、案内地点から分岐地点までの距離と一致するように案内地点を特定する。すなわち、制御部20は、分岐地点までの変更残距離Yが、空走距離と基準距離YSとの合計値(案内残距離)となる地点を案内地点として特定する。図3に示すように、分岐地点Q1(例えばノード)までの変更残距離Yが基準距離YSと空走距離Xとの合計値である案内残距離となる地点が案内地点Zとして特定されている。空走距離Xは、車両にて行われるレーン変更の案内の開始時刻から、レーン変更の開始時刻までに車両が平均的に走行する距離であり、実験に基づいて設定されている。また、空走距離Xは、記録媒体30に記録されている。レーン変更の案内は、例えば"右端のレーンにレーン変更をして下さい"というメッセージを音声出力することにより行われ、当該メッセージの出力開始時刻がレーン変更の案内の開始時刻となる。
【0039】
以上の構成により、案内地点特定部21cの機能により制御部20は、履歴情報において変更車速と所要期間とハザードランプの点灯率とが更新された場合に、更新後の変更車速と所要期間とハザードランプの点灯率とに基づいて案内残距離を特定し、当該特定した案内残距離を更新対象の履歴情報に更新記録する。これにより、プローブデータPが受信されるごとに、プローブデータPが示す分岐経路に対応する更新対象の履歴情報が示す変更車速と所要期間とハザードランプの点灯率とを更新するとともに、当該更新対象の履歴情報が示す案内残距離を更新することができる。
【0040】
送信部21dは、案内地点Zを示す情報を車両に送信する機能を制御部20に実行させるモジュールである。すなわち、制御部20は、案内地点Zを示す案内地点データGを、通信部40を介して車両に送信する。送信部21dは、分岐経路取得部21d1とデータ生成部21d2とを含む。分岐経路取得部21d1は、車両から受信した要求データRを取得し、当該要求データRに示されている分岐経路を取得する機能を制御部20に実行させるモジュールである。図3の例の場合、制御部20は、分岐経路(a−Q1−b)を取得する。要求データRの詳細については後述する。データ生成部21d2は、分岐経路(a−Q1−b)に対応する履歴情報が示す案内残距離を示す案内地点データGを生成し、当該案内地点データGを要求データRの送信元の車両に送信する。なお、案内残距離に基づいて案内地点Zを一意に特定できるため、案内残距離を示す案内地点データGは実質的に案内地点Zを示す情報である。
【0041】
以上説明したレーン変更案内サーバ10の構成において、制御部20は、履歴情報が示すレーン変更の変更車速と所要期間とハザードランプの点灯率とに基づいて、レーン変更が容易となる変更車速と所要期間とハザードランプの点灯率とに対応する分岐地点までの変更残距離Yを特定できる。すなわち、制御部20は、過去において容易にレーン変更ができた地点の変更残距離Yに基づいて、案内地点Zを特定することができる。従って、車両が案内地点Zにおいてレーン変更の案内を行うことにより、レーン変更の案内を認知した運転者が容易にレーン変更を行うことができる。例えば、図3のように、分岐地点Q1よりも手前側に信号機S2が設置されている場合、道路aが渋滞しているか否かに拘わらず信号機S2の手前側に他の車両が滞留する可能性が高くなり、当該信号機S2付近においてもレーン変更が困難となる。また、分岐地点Q1の手前側と同様に、信号機S2の手前側にもレーン変更が禁止される禁止区間が設けられ、当該信号機S2付近においてもレーン変更が困難となる。このような場合でも、履歴情報において、信号機S2付近の位置に対応する変更残距離Yについて、レーン変更が容易でないことを示す変更車速と所要期間とハザードランプの点灯率とが対応付けられるため、信号機S2付近にて案内地点Zが特定されることが防止できる。
【0042】
具体的に、制御部20は、変更車速が閾値以上となる変更残距離Yの最小値Y1と、所要期間が閾値以下となる変更残距離Yの最小値Y2と、ハザードランプの点灯率が閾値以下となる変更残距離Yの最小値Y3とのうち最も大きい距離を基準距離YSとして特定している。これにより、レーン変更における減速の少なさと、所要期間の短さと、ハザードランプの点灯率の小ささとを実現し、かつ、できるだけ分岐地点Q1に近い位置を案内地点Zとして特定できる。従って、分岐地点Q1から遠すぎる地点にてレーン変更が案内され、運転者に違和感を与えることを防止できる。
【0043】
さらに、制御部20は、レーン変更の案内を開始してからレーン変更を行うまでに車両が走行する距離である空走距離Xと基準距離YSとの合計値が、案内地点Zから分岐地点Q1までの距離と一致するように案内地点Zを特定している。このような案内地点Zにおいてレーン変更の案内を行うことにより、残距離が基準距離YSとなる地点を走行するまでに、運転者はレーン変更の案内を認知してレーン変更の運転操作に備えることができる。従って、運転者は、残距離が基準距離YSとなる地点にてレーン変更を行うことができ、変更車速等が良好となるタイミングでレーン変更を行うことができる。
【0044】
(2)ナビゲーション装置の構成:
図4は、本発明の一実施形態にかかるレーン変更案内システムの一部を構成するナビゲーション装置50の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置50は、車両に備えられている。ナビゲーション装置50は、制御部60と記録媒体80とを備えている。
制御部60は、CPUとRAMとROM等を備え、記録媒体80やROMに記憶されたプログラムを実行する。記録媒体80は、レーン変更案内サーバ10の地図情報30aと同様の地図情報80aを記録する。
【0045】
車両は、GPS受信部71と車速センサ72とジャイロセンサ73とカメラ74とハザードランプスイッチ75とユーザI/F部76と通信部77とを備える。GPS受信部71は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の位置を算出するための信号を出力する。車速センサ72は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。ジャイロセンサ73は、車両に作用する角加速度に対応した信号を出力する。
【0046】
カメラ74は、車両の前方の風景を撮影し、当該前方の風景を表す前方画像を生成するイメージセンサである。カメラ74が生成した前方画像は、図示しないインタフェースを介して制御部60に出力される。カメラ74は車両の幅方向の中央に備えられている。
ハザードランプスイッチ75は、車両に備えられた方向指示ランプを左右同時に点滅させるためスイッチである。方向指示ランプが左右同時に点滅している状態は、ハザードランプが点灯されている状態を意味する。
【0047】
ユーザI/F部76は、案内部としてのスピーカとディスプレイと入力装置とを含む。スピーカは、制御部60から出力された音声信号に基づいて音声を出力する。ディスプレイは、制御部60から出力された映像信号に基づいて映像を出力する。入力装置は、運転者の操作を受け付け、当該操作に対応する信号を制御部60に出力する。通信部77は、レーン変更案内サーバ10と無線通信を行うための通信回路である。
【0048】
制御部60は、ナビゲーションプログラム61を実行する。ナビゲーションプログラム61は、ナビゲーション部61aと画像認識部61bとプローブデータ生成部61cと案内制御部61dとを含む。
ナビゲーション部61aは、走行予定経路を案内する機能を制御部60に実行させるモジュールである。ナビゲーション部61aは、現在位置特定部61a1と経路探索部61a2と推奨レーン取得部61a3とレーン変更要否判定部61a4とを含む。現在位置特定部61a1は、車両の現在位置を特定するための機能を制御部60に実行させるモジュールである。現在位置特定部61a1の機能により制御部60は、GPS受信部71、車速センサ72、及びジャイロセンサ73等から出力された信号や地図情報80aに基づいて公知のマップマッチングを行うことにより、車両が現在走行している走行道路の幅方向の中央線上において車両の現在位置を特定する。また、現在位置特定部61a1の機能により制御部60は、ジャイロセンサ73から出力された信号等に基づいて車両の進行方向を特定する。
【0049】
経路探索部61a2は、走行予定経路を探索する機能を制御部60に実行させるモジュールである。すなわち、経路探索部61a2の機能により制御部60は、ユーザI/F部76の入力装置にて指定された目的地点に到達するための走行予定経路を公知の経路探索手法によって探索する。走行予定経路は、現在位置から目的地点までを接続する複数の道路によって構成される。図3において、走行予定経路Eの一部を一点鎖線の矢印で示す。
図3の走行予定経路Eは、車両が現在走行している道路aと、信号機S1が設けられた分岐地点Q1に接続する右折道路bとを含んでいる。なお、走行予定経路Eは、レーン変更案内サーバ10から通信部77を介して取得した経路であってもよいし、リムーバブルメモリから取得した経路であってもよい。
【0050】
推奨レーン取得部61a3は、走行予定経路Eに基づいて推奨レーンを取得する機能を制御部60に実行させるモジュールである。推奨レーン取得部61a3の機能により制御部60は、車両が分岐地点に接近している場合に、当該分岐地点から車両が退出すべき走行予定経路E上の退出道路を取得する。車両が分岐地点に接近しているとは、車両から分岐地点までの残距離が閾値(例えば300m)以下であることを意味する。なお、制御部60は、現在位置と分岐地点(例えばノード)までの直線距離を残距離として特定してもよい。閾値は記録媒体30に記録されている。制御部60は、車両が接近している分岐地点に進入する走行予定経路E上の進入道路を構成するレーンのうち、退出道路へと退出可能なレーンである推奨レーンを地図情報80aのリンクデータに基づいて取得する。図3の場合、車両が分岐地点Q1に接近しており、分岐地点Q1における退出道路である右折道路bへと退出可能な道路aの右端のレーンが推奨レーンW(ハッチング)として取得される。
【0051】
レーン変更要否判定部61a4は、レーン変更が必要であるか否かを判定する機能を制御部60に実行させるモジュールである。すなわち、レーン変更要否判定部61a4の機能により制御部60は、走行レーンと推奨レーンWとが異なる場合に、レーン変更が必要であると判定する。図3の場合、車両が道路aにおいて右端の推奨レーンW以外を走行している場合、レーン変更が必要であると判定されることとなる。
【0052】
さらに、レーン変更要否判定部61a4の機能により制御部60は、レーン変更が必要であると判定した場合、要求データRを生成し、当該要求データRをレーン変更案内サーバ10に送信する。制御部60は、車両に固有の識別符号と分岐経路とを示す要求データRをレーン変更案内サーバ10に生成する。図3の場合、制御部60は、分岐地点Q1を含む分岐経路(a−Q1−b)と車両の識別符号とを示す要求データRをレーン変更案内サーバ10に送信する。制御部60は、要求データRをレーン変更案内サーバ10に送信すると、当該要求データRに応答してレーン変更案内サーバ10から案内地点データGが送信されるまで待機する。以上の構成により、分岐地点までにレーン変更が必要である場合に、当該レーン変更の案内を開始させる案内地点Zを示す案内地点データGをレーン変更案内サーバ10に送信することができる。
【0053】
画像認識部61bは、前方画像を画像認識する機能を制御部60に実行させるモジュールである。画像認識部61bは、区画線認識部61b1と跨ぎ認識部61b2とを含む。区画線認識部61b1の機能により制御部60は、前方画像に対して公知のハフ変換を実行することにより、前方画像において道路上の区画線の像を認識する。画像認識部61bの機能により制御部60は、前方画像における区画線の像の位置に基づいて車両が現在走行している走行レーンを取得する。具体的に、制御部60は、車両の現在位置と進行方向とカメラ74の光学的な仕様(光軸位置、光軸方向、視野等)とに基づいて、前方画像における区画線の像の位置を、実空間における区画線の位置へと変換する。そして、制御部60は、車両よりも左側または右側に存在する区画線の数を取得し、地図情報80aのリンクデータが示す走行道路のレーンのうち、当該取得した区画線の数分だけ左端または右端から数えたレーンを走行レーンとして取得する。図3の場合、車両よりも左側に存在する区画線の数が2個となり、左端から2個目のレーンが走行レーンとして取得される。
【0054】
跨ぎ認識部61b2は、車両が区画線を跨いでいるか否かを判定する機能を制御部60に実行させるモジュールである。すなわち、跨ぎ認識部61b2の機能により制御部60は、前方画像における区画線の像の位置に基づいて、カメラ74に最も近い区画線からカメラ74までの距離を取得し、当該距離が閾値以下である場合に車両が区画線を跨いでいると判定する。本実施形態において、カメラ74は車両の幅方向の中央に備えられているため、制御部60は、車幅の半分を閾値として設定する。車幅は、記録媒体30に記録されており、運転者が指定した車両の車種に対応する値が設定されてもよい。なお、車両が区画線を跨いでいない状態から、車両が区画線を跨いでいる状態へと転じた時刻がレーン変更の開始時刻となる。逆に、車両が区画線を跨いでいる状態から、車両が区画線を跨いでいない状態へと転じた時刻がレーン変更の終了時刻となる。
【0055】
プローブデータ生成部61cは、プローブデータPを生成する機能を制御部60に実行させるモジュールである。上述したように、プローブデータPは、レーン変更についての変更車速と所要期間とハザードランプの点灯有無と分岐経路と変更残距離Yとを示すデータである。プローブデータ生成部61cは、車速取得部61c1と期間取得部61c2と点灯判定部61c3と残距離取得部61c4とを含む。車速取得部61c1は、レーン変更における車速を変更車速として取得する機能を制御部60に実行させるモジュールである。
本実施形態において、制御部60は、レーン変更の開始時刻から終了時刻までの間における車速の平均値を変更車速として取得する。期間取得部61c2は、レーン変更の開始時刻から終了時刻までの期間を所要期間として取得する機能を制御部60に実行させるモジュールである。点灯判定部61c3は、レーン変更の開始時刻から終了時刻までの期間と、レーン変更の終了時刻から所定期間経過するまでの期間との少なくとも一方において、ハザードランプが点灯されたか否かを判定する機能を制御部60に実行させるモジュールである。点灯判定部61c3の機能により制御部60は、ハザードランプスイッチ75の操作状態を監視する。所定期間(例えば10秒)は、記録媒体80に記録されている。
例えば、所定期間は、レーン変更後にハザードランプが点灯され得る期間であり、実験に基づいて設定されている。残距離取得部61c4は、レーン変更の開始時刻における分岐地点までの残距離を変更残距離Yとして取得する機能を制御部60に実行させるモジュールである。
【0056】
プローブデータ生成部61cの機能により制御部60は、レーン変更における変更車速と所要期間とハザードランプの点灯有無と変更残距離Yとを取得すると、予めレーン変更要否判定部61a4の機能によって取得されている分岐経路を取得する。そして、制御部60は、レーン変更における変更車速と所要期間とハザードランプの点灯有無と変更残距離Yと分岐経路とを示すプローブデータPを生成し、当該プローブデータPをレーン変更案内サーバ10に送信する。
【0057】
以上の構成により、走行予定経路E上の分岐経路を走行するためにレーン変更を行った場合に、当該レーン変更についての変更車速と所要期間とハザードランプの点灯有無と分岐経路と変更残距離Yとを示すプローブデータPをレーン変更案内サーバ10に送信することができる。これにより、レーン変更案内サーバ10においては、当該プローブデータPに基づいて履歴情報を更新することができる。すなわち、プローブデータPと分岐経路が一致する履歴情報のうち、当該プローブデータPが示す変更残距離Yと同一の変更残距離Yに対応付けられている変更車速と所要期間とハザードランプの点灯率とを更新することができる。その結果、最新の履歴情報を作成することができる。
【0058】
案内制御部61dは、案内地点Zにおいてレーン変更の案内をユーザI/F部76に行わせる機能を制御部60に実行させるモジュールである。案内制御部61dの機能により制御部60は、レーン変更案内サーバ10が要求データRに応答して送信した案内地点データGを取得し、当該案内地点データGが示す案内残距離を取得する。そして、制御部20は、分岐経路を構成する分岐地点までの残距離が案内残距離と一致した場合に、レーン変更の案内音声を出力するための音声信号を生成し、ユーザI/F部76のスピーカに出力する。これにより、レーン変更の案内が開始する。以上の構成により、ナビゲーション装置50は、車両が案内地点Zを走行するタイミングでレーン変更の案内を開始させることができ、運転者は変更車速等が良好となるタイミングでレーン変更を行うことができる。
【0059】
(3)レーン変更案内処理:
図5は、レーン変更案内処理のフローチャートである。図5に示すようにレーン変更案内処理は、ナビゲーション装置50とレーン変更案内サーバ10とが連携して行う処理である。まず、ナビゲーション装置50におけるナビゲーション部61aの現在位置特定部61a1の機能により制御部60は、車両の現在位置を特定する(ステップS100)。次に、推奨レーン取得部61a3の機能により制御部60は、予め探索されている走行予定経路Eを取得する(ステップS105)。そして、推奨レーン取得部61a3の機能により制御部60は、走行予定経路E上の分岐地点に車両が接近しているか否かを判定する。具体的に、制御部60は、車両から分岐地点までの残距離が閾値(例えば300m)以下であるか否かを判定する(ステップS110)。
【0060】
走行予定経路E上の分岐地点に車両が接近していると判定されなかった場合(ステップS110:N)、制御部60は、ステップS100に戻る。すなわち、制御部60は、走行予定経路E上の分岐地点に車両が接近するまでステップS100〜S110の処理を繰り返して実行する。一方、走行予定経路E上の分岐地点に車両が接近していると判定された場合(ステップS110:Y)、区画線認識部61b1の機能により制御部60は、前方画像において道路上の区画線の像を認識する(ステップS115)。具体的に、制御部60は、前方画像に対して公知のハフ変換を実行することにより、道路上に存在する区画線の像の認識を行う。次に、区画線認識部61b1の機能により制御部60は、区画線の像の認識に成功したか否かを判定する(ステップS120)。例えば、制御部60は、ハフ変換における線認識の信頼度(例えば特徴量やエッジ量)が所定基準以上である場合に区画線の像の認識に成功したと判定してもよい。
【0061】
区画線の像の認識に成功したと判定されなかった場合(ステップS120:N)、制御部60は、ステップS100に戻る。すなわち、所定基準以上の信頼度で走行レーンが取得できず、レーン変更の要否が正確に判定できないとして、区画線の像の認識に成功するまでステップS100〜S120の処理を繰り返して実行する。一方、区画線の像の認識に成功したと判定された場合(ステップS120:Y)、区画線認識部61b1の機能により制御部60は、走行レーンを取得する(ステップS125)。具体的に、制御部60は、前方画像における区画線の像の位置に基づいて、車両よりも左側または右側に存在する区画線の数を取得する。そして、制御部60は、地図情報80aのリンクデータが示す走行道路のレーンのうち、車両よりも左側または右側に存在する区画線の数分だけ左端または右端から数えたレーンを走行レーンとして取得する。
【0062】
次に、推奨レーン取得部61a3の機能により制御部60は、推奨レーンWを取得する(ステップS130)。具体的に、制御部60は、車両が接近している分岐地点に対する走行予定経路E上の進入道路を構成するレーンのうち、走行予定経路E上の退出道路へと退出可能なレーンである推奨レーンを地図情報80aのリンクデータに基づいて取得する。
【0063】
さらに、レーン変更要否判定部61a4の機能により制御部60は、レーン変更が必要であるか否かを判定する(ステップS135)。すなわち、制御部60は、走行レーンと推奨レーンWとが異なる場合、レーン変更が必要であると判定する。レーン変更が必要であると判定しなかった場合(ステップS135:N)、制御部60は、ステップS100に戻る。すなわち、車両がすでに推奨レーンWを走行しており、レーン変更を案内する必要がないとして、ステップS100に戻る。
【0064】
一方、レーン変更が必要であると判定した場合(ステップS135:Y)、レーン変更要否判定部61a4の機能により制御部60は、要求データRを生成し、当該要求データRをレーン変更案内サーバ10に送信する(ステップS140)。具体的に、制御部60は、分岐経路と車両に固有の識別符号とを示す要求データRをレーン変更案内サーバ10に送信する。要求データRをレーン変更案内サーバ10に送信すると、制御部60は、要求データRに応答して案内地点データGがレーン変更案内サーバ10から送信されるまで待機する。
【0065】
次に、要求データRを受信するレーン変更案内サーバ10の処理を説明する。まず、レーン変更案内サーバ10の送信部21dの機能により制御部20は、要求データRが受信されたか否かを判定する(ステップS145)。要求データRが受信されたと判定されなかった場合(ステップS145:N)、制御部20は、要求データRが受信されるまで待機する。一方、要求データRが受信されたと判定された場合(ステップS145:Y)、送信部21dの機能により制御部20は、要求データRが示す分岐経路に対応する履歴情報を履歴情報DB30bから取得し、当該履歴情報が示す案内残距離を取得する(ステップS150)。次に、データ生成部21d2の機能により制御部20は、案内地点データGを車両に送信する(ステップS155)。すなわち、制御部20は、ステップS150にて取得した案内残距離を示す案内地点データGを生成し、当該案内地点データGを要求データRの送信元の車両に送信する。要求データRの送信元の車両は、要求データRが示す識別符号に基づいて特定できる。
【0066】
次に、要求データRに応答して送信された案内地点データGを受信するナビゲーション装置50の処理を説明する。案内制御部61dの機能により制御部60は、案内地点データGを受信する(ステップS160)。そして、案内制御部61dの機能により制御部60は、分岐地点までの残距離が案内地点データGが示す案内残距離と一致したか否かを判定する(ステップS165)。分岐地点までの残距離が案内残距離と一致したと判定されなかった場合(ステップS165:N)、制御部20は、分岐地点までの残距離が案内残距離と一致するまで待機する。一方、分岐地点までの残距離が案内残距離と一致したと判定された場合(ステップS165:Y)、制御部20は、レーン変更の案内音声を出力するための音声信号を生成し、ユーザI/F部76スピーカに出力する(ステップS170)。以上の構成により、ナビゲーション装置50は、車両が案内地点Zを走行するタイミングでレーン変更の案内を開始させることができ、運転者はレーン変更が容易となる地点でレーン変更を行うことができる。
【0067】
(4)履歴情報更新処理:
図6は、履歴情報更新処理のフローチャートである。まず、ナビゲーション装置50の制御部60は、図5に示すレーン変更案内処理におけるステップS100〜S135の処理を実行する。レーン変更案内処理と履歴情報更新処理とはステップS100〜S135の処理が共通し、ステップS135においてレーン変更が必要であると判定された場合(ステップS135:Y)、レーン変更案内処理と履歴情報更新処理の残りの処理が並行して実行されることとなる。すなわち、レーン変更の案内と、プローブデータPの生成とが並行して行われる。図5のステップS135において、レーン変更が必要であると判定された場合、制御部60は、図6のステップS200を実行する。
【0068】
跨ぎ認識部61b2の機能により制御部60は、車両が区画線を跨ぎ始めたか否かを判定する(ステップS200)。具体的に、制御部60は、車両が区画線を跨いでいない状態から、車両が区画線を跨いでいる状態へと転じたか否かを判定する。具体的に、制御部60は、前方画像における区画線の像の位置に基づいて、カメラ74に最も近い区画線からカメラ74までの距離を取得し、当該距離が閾値よりも大きい状態から閾値以下に転じた場合に車両が区画線を跨ぎ始めたと判定する。なお、制御部60は、車両が推奨レーンと反対側の区画線を跨いだ場合には、車両が区画線を跨ぎ始めたと判定しないようにしてもよい。
【0069】
車両が区画線を跨ぎ始めたと判定されなかった場合(ステップS200:N)、制御部60は、車両が区画線を跨ぎ始めるまで待機する。一方、車両が区画線を跨ぎ始めたと判定された場合(ステップS200:Y)、残距離取得部61c4の機能により制御部60は、レーン変更の開始時刻における残距離を変更残距離Yとして取得する(ステップS205)。すなわち、制御部60は、車両が区画線を跨ぎ始めた時刻(レーン変更の開始時刻)における残距離を、レーン変更における変更残距離Yとして取得する。次に、期間取得部61c2の機能により制御部60は、所要期間の測定を開始する(ステップS210)。すなわち、制御部60は、レーン変更の開始時刻を始期とする所要期間の計測を開始する。次に、車速取得部61c1の機能により制御部60は、車速の計測を開始する(ステップS215)。すなわち、制御部60は、レーン変更の開始時刻以降における所定の時間周期ごとに車速を計測する。次に、点灯判定部61c3の機能により制御部60は、点灯判定部61c3の機能により制御部60は、ハザードランプスイッチ75の監視を開始する(ステップS220)。すなわち、制御部60は、レーン変更の開始時刻以降における所定の時間周期ごとにハザードランプスイッチ75の操作状態を監視する。
【0070】
次に、跨ぎ認識部61b2の機能により制御部60は、車両が区画線を跨ぎ終わったか否かを判定する(ステップS225)。具体的に、制御部60は、車両が区画線を跨いでいる状態から、車両が区画線を跨いでいない状態へと転じたか否かを判定する。すなわち、カメラ74に最も近い区画線からカメラ74までの距離が閾値以下の状態から閾値よりも大きい状態に転じた場合に車両が区画線を跨ぎ終わったと判定する。車両が区画線を跨ぎ終わったと判定されなかった場合(ステップS225:N)、制御部60は、車両が区画線を跨ぎ終わるまで車速等の計測を継続する。一方、車両が区画線を跨ぎ終わったと判定された場合(ステップS225:Y)、期間取得部61c2の機能により制御部60は、所要期間の測定を終了する(ステップS230)。すなわち、制御部60は、車両が区画線を跨ぎ終わった時刻(レーン変更の終了時刻)にて所要期間の計測を終了する。次に、車速取得部61c1の機能により制御部60は、車速の計測を終了し、変更車速を取得する(ステップS235)。すなわち、制御部60は、レーン変更の開始時刻から終了時刻までの期間における所定の時間周期ごとに測定した車速の平均値を変更車速として取得する。
【0071】
次に、点灯判定部61c3の機能により制御部60は、レーン変更の終了時刻から所定期間(例えば10秒)が経過したか否かを判定する(ステップS240)。レーン変更の終了時刻から所定期間が経過したと判定しなかった場合(ステップS240:N)、制御部60は、レーン変更の終了時刻から所定期間が経過するまで待機する。すなわち、制御部60は、レーン変更の終了時刻から所定期間が経過するまでハザードランプスイッチ75の操作状態の監視を継続する。そして、レーン変更の終了時刻から所定期間が経過したと判定した場合(ステップS240:Y)、点灯判定部61c3の機能により制御部60は、ハザードランプスイッチ75の監視を終了し、ハザードランプの点灯有無を取得する(ステップS245)。すなわち、制御部60は、レーン変更の開始時刻から終了時刻までの期間と、レーン変更の終了時刻から所定期間が経過するまでの期間との少なくとも一方において、一度でもハザードランプスイッチ75がONとなった場合にはハザードランプの点灯が有りであったと判定し、一度もハザードランプスイッチ75がONとならなかった場合にはハザードランプの点灯が無しであったと判定する。以上により、レーン変更についての変更車速と所要期間とハザードランプの点灯有無と変更残距離Yとが取得できたこととなる。
【0072】
次に、プローブデータ生成部61cの機能により制御部60は、プローブデータPを生成する(ステップS250)。すなわち、制御部60は、変更車速と所要期間とハザードランプの点灯有無と分岐経路と変更残距離Yとを示すプローブデータPを生成する。そして、プローブデータ生成部61cの機能により制御部60は、プローブデータPをレーン変更案内サーバ10に送信する(ステップS255)。以上により、ナビゲーション装置50の処理が終了する。
【0073】
次に、プローブデータPを受信するレーン変更案内サーバ10の処理を説明する。まず、レーン変更案内サーバ10の送信部21dの機能により制御部20は、プローブデータPが受信されたか否かを判定する(ステップS260)。プローブデータPが受信されたと判定されなかった場合(ステップS260:N)、制御部20は、ステップS260に戻り、プローブデータPが受信されるまで待機する。一方、プローブデータPが受信されたと判定された場合(ステップS260:Y)、履歴情報取得部21aの機能により制御部20は、プローブデータPが示す分岐経路と同一の分岐経路についての履歴情報を更新対象の履歴情報として取得する(ステップS265)。
【0074】
次に、履歴情報統計部21bの機能により制御部20は、更新対象の履歴情報が示す変更車速と所要期間とハザードランプの点灯率とを更新する(ステップS270)。具体的に、制御部20は、更新対象の履歴情報が示す変更車速と所要期間とハザードランプの点灯率のうち、プローブデータPが示す変更残距離Yと同一の変更残距離Yに対応する変更車速Voldと所要期間Toldとハザードランプの点灯率Foldとを、新たな変更車速Vnewと所要期間Tnewとハザードランプの点灯率Fnewとに更新する。車速統計部21b1の機能により制御部20は、新たな変更車速VnewをVnew={(N−1)×Vold+V}/Nによって算出する。期間統計部21b2の機能により制御部20は、新たな所要期間TnewをTnew={(N−1)×Told+T}/Nによって算出する。点灯率統計部21b3の機能により制御部20は、プローブデータPがハザードランプが点灯されたことを示す場合には、新たなハザードランプの点灯率FnewをFnew={(N−1)×Fold+1}/Nによって算出する。一方、制御部20は、プローブデータPがハザードランプが点灯されなかったことを示す場合には、新たなハザードランプの点灯率FnewをFnew={(N−1)×Fold}/Nによって算出する。
【0075】
次に、車速判定部21c1の機能により制御部20は、変更車速が閾値以上となる変更残距離Yの最小値Y1を取得する(ステップS275)。続いて、期間判定部21c2の機能により制御部20は、所要期間が閾値以下となる変更残距離Yの最小値Y2を取得する(ステップS280)。さらに、点灯率判定部21c3は、ハザードランプの点灯率が閾値以下となる変更残距離Yの最小値Y3を取得する(ステップS285)。図2A〜2Cの例の場合、変更車速が閾値以上となる変更残距離Yの最小値Y1として110mが取得され、所要期間が閾値以下となる変更残距離Yの最小値Y2として100mが取得され、ハザードランプの点灯率が閾値以下となる変更残距離Yの最小値Y3として90mが取得される。
【0076】
次に、案内地点特定部21cの機能により制御部20は、変更車速が閾値以上となる変更残距離Yの最小値Y1と、所要期間が閾値以下となる変更残距離Yの最小値Y2と、ハザードランプの点灯率が閾値以下となる変更残距離Yの最小値Y3とのうち最も大きい距離を基準距離YSとして特定する(ステップS290)。すなわち、制御部20は、変更車速が閾値以上となり、所要期間が閾値以下となり、かつ、ハザードランプの点灯率が閾値以下となる変更残距離Yの最小値を基準距離YSとして特定する(図2A〜2C)。
【0077】
さらに、案内地点特定部21cの機能により制御部20は、基準距離YSに基づいて案内残距離を特定する(ステップS295)。具体的に、制御部20は、レーン変更の案内を開始してからレーン変更を行うまでに車両が走行する空走距離Xと基準距離YSとの合計値を新たな案内残距離として特定する。すなわち、制御部20は、分岐地点までの変更残距離Yが、空走距離Xと基準距離YSとを合計値である案内残距離となる地点を案内地点Zとして特定する(図3)。最後に、案内地点特定部21cの機能により制御部20は、新たな案内残距離を更新対象の履歴情報に更新記録する(ステップS300)。これにより、プローブデータPが取得されるごとに、当該プローブデータPが示す分岐経路に対応する履歴情報について案内残距離を更新することができる。
【0078】
(5)他の実施形態:
案内地点特定部21cの機能により制御部20は、車両の現在の車速が大きいほど、空走距離Xを大きい値に設定してもよい。例えば、制御部20は、車両の現在の車速を走行道路における車両の平均車速で除算した補正係数を算出し、当該補正係数を記録媒体30に記録された空走距離Xに乗算することより、車両の現在の車速に応じて補正した空走距離Xを算出してもよい。この場合、レーン変更案内サーバ10にて車両の現在の車速が取得できるように、現在の車速を示す要求データRをナビゲーション装置50が送信するようにしてもよい。このようにすることにより、車両の現在の車速が大きくなった場合でも、運転者は残距離が基準距離YSとなる地点よりも手前にてレーン変更を行うことができ、変更車速等が良好となるタイミングでレーン変更を行うことができる。なお、空走距離Xは履歴情報に基づいて設定されてもよく、例えば制御部20は、履歴情報が示す案内残距離とレーン変更の開始時刻における変更残距離Yの平均値や最頻値との差分を空走距離Xとして設定してもよい。案内残距離は、案内の開始時刻における残距離を意味し、変更残距離Yはレーン変更の開始時刻における残距離を意味するからである。
【0079】
前記実施形態においては、履歴情報DB30bにおいて、分岐経路(進入道路と分岐地点と退出道路との組み合わせ)ごとに履歴情報が記録されるようにしたが、レーン変更前のレーンとレーン変更先のレーンとの組み合わせごとに履歴情報が記録されてもよい。これにより、レーン変更前のレーンに適した案内地点Zを特定することができ、車両が走行している走行レーンからのレーン変更に適したタイミングでレーン変更を案内できる。さらに、履歴情報DB30bにおいて、レーン変更を行った時間帯や天候や渋滞度や曜日等の環境条件ごとにレーン変更の変更車速と所要期間とを変更残距離Yに対応付けて示す履歴情報が記録されてもよい。これにより、レーン変更の環境条件に適した案内地点Zを特定することができ、分岐地点に接近している車両の環境条件に適したタイミングでレーン変更を案内できる。また、履歴情報DB30bにおいて、退出道路を区別することなく進入道路と分岐地点と退出道路との組み合わせごと履歴情報が記録されるようにしてもよい。さらに、履歴情報DB30bにおいて、少なくとも変更車速と所要期間とが変更残距離Yに対応付けて履歴情報に記録されればよく、必ずしもハザードランプの点灯率が記録されなくてもよい。すなわち、案内地点特定部21cの機能により制御部20は、変更車速と所要期間とが良好となる案内地点Zを特定してもよい。
【0080】
変更車速は、レーン変更を行った際における減速の状況が特定できる車速情報であればよく、レーン変更中における最小車速等であってもよいし、レーン変更の開始時刻における車速からレーン変更の終了時刻における車速を減算した車速の減少量であってもよい。レーン変更の開始時刻とは、レーン変更を開始させるための所定の運転操作が行われた時刻であってもよく、方向指示器の操作、ステアリング操作、減速操作等が行われた時刻であってもよい。レーン変更の開始時刻は、レーンの方向に対する車両の進行方向の傾きが閾値以上となることであってもよい。また、レーン変更の終了時刻とは、レーン変更の終了時に行われる所定の運転操作が行われた時刻であってもよいし、レーンの方向に対する車両の進行方向の傾きが閾値未満となることであってもよい。
【0081】
また、案内地点特定部21cの機能により制御部20は、変更車速が閾値以上となる変更残距離Yの最小値Y1と、所要期間が閾値以下となる変更残距離Yの最小値Y2と、ハザードランプの点灯率が閾値以下となる変更残距離Yの最小値Y3との平均値を基準距離YSとして特定してもよい。前記実施形態においては、音声によってレーン変更を案内したが、案内制御部61dの機能により制御部60は、映像によってレーン変更を案内してもよい。例えば、車両の前方の風景を表す画像をディスプレイに表示させ、当該画像における推奨レーンの像上に矢印等のオブジェクトを重畳することにより、推奨レーンへのレーン変更を案内してもよい。
【0082】
また、ナビゲーション装置50のみによってレーン変更案内システムが構成されてもよい。例えば、履歴情報DB30bがナビゲーション装置50に記録されてもよく、当該履歴情報DB30bはナビゲーション装置50が備えられた車両が行ったレーン変更についての履歴情報を記録してもよい。この場合、運転者の運転操作の傾向に相応するタイミングでレーン変更を案内することができる。また、複数の車両から送信されたプローブデータPに基づいてレーン変更案内サーバ10が作成した履歴情報DB30bをナビゲーション装置50の記録媒体80に記録(プリインストール)しておいてもよい。さらに、初期の履歴情報DB30bと、最新の履歴情報DB30bとの差分データをレーン変更案内サーバ10からナビゲーション装置50に送信してもよい。さらに、走行予定経路Eをレーン変更案内サーバ10が探索し、レーン変更案内サーバ10がレーン変更の必要性を判定してもよい。そして、レーン変更が必要である場合、レーン変更の案内内容とともに案内地点Zを示す案内地点データGを車両のナビゲーション装置50に送信してもよい。
【符号の説明】
【0083】
10…レーン変更案内サーバ、20…制御部、21…レーン変更案内プログラム、21a…履歴情報取得部、21b…履歴情報統計部、21c…案内地点特定部、21c1…車速判定部、21d…送信部、30…記録媒体、30a…地図情報、30b…履歴情報DB、40…通信部、50…ナビゲーション装置、60…制御部、61…ナビゲーションプログラム、61a…ナビゲーション部、61b…画像認識部、61c…プローブデータ生成部、61c1…車速取得部、61d…案内制御部、80…記録媒体、71…GPS受信部、72…車速センサ、73…ジャイロセンサ、74…カメラ、75…ハザードランプスイッチ、76…ユーザI/F部、77…通信部、80…記録媒体、80a…地図情報、G…案内地点データ、P…プローブデータ、Z…案内地点、Q1…分岐地点、R…要求データ、X…空走距離、Y…変更残距離、YS…基準距離。
図1
図2
図3
図4
図5
図6