(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円筒内面、部分凸球面状面並びに部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面により規定された球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えている排気管継手に用いられる球帯状シール体であって、円筒内面には、当該円筒内面によって規定された貫通孔に挿入される排気管によって削り取り可能な膨張黒鉛からなると共に大径側の環状端面と小径側の環状端面との間において円周方向に互いに間隔をもって軸方向に伸びた少なくとも三つの突部が当該円筒内面から軸心方向に突出して一体的に設けられている球帯状シール体。
大径側の環状端面は、円環状の大径縁で部分凸球面状面の大径側の円環状端縁に連接していると共に円環状の小径縁で円筒内面の軸方向の円環状の一端縁に連接した円環状平坦端面からなり、突部は、円筒内面の軸方向の一端縁とその他端縁との間において軸方向に伸びている請求項1に記載の球帯状シール体。
大径側の環状端面は、円環状の大径縁で部分凸球面状面の大径側の円環状端縁に連接した円環状平坦端面部と、この円環状平坦端面部の円環状の小径縁に大径縁で連接していると共に小径縁で円筒内面の軸方向の円環状の一端縁に連接した円環状の凹状端面部とを具備しており、突部は、円筒内面の軸方向の一端縁とその他端縁との間において軸方向に伸びている請求項1に記載の球帯状シール体。
大径側の環状端面は、円環状の大径縁で部分凸球面状面の大径側の円環状端縁に連接している円環状の第一の凹状端面部と、この第一の凹状端面部の円環状の小径縁に円環状の大径縁で連接した円環状平坦端面部と、この円環状平坦端面部の円環状の小径縁に大径縁で連接していると共に小径縁で円筒内面の軸方向の円環状の一端縁に連接した円環状の第二の凹状端面部とを具備しており、突部は、円筒内面の軸方向の一端縁とその他端縁との間において軸方向に伸びている請求項1に記載の球帯状シール体。
突部は、円筒内面の軸方向の一端縁とその他端縁とのうちの一方の手前で終端していると共に円筒内面の軸方向の一端縁とその他端縁とのうちの他方まで伸びている請求項1から4のいずれか一項に記載の球帯状シール体。
円筒内面は、挿入された排気管の円筒外面との間に嵌め合い隙間以上の隙間が生じないように、当該円筒外面の外径に対しての内径を有している請求項1から10のいずれか一項に記載の球帯状シール体。
球帯状基体は、金網からなる補強材と、この補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されていると共に圧縮された膨張黒鉛を含む耐熱材とを具備しており、外層は、膨張黒鉛を含む耐熱材と、少なくとも、六方晶窒化硼素及びアルミナ水和物を含む潤滑組成物からなる固体潤滑剤と、金網からなる補強材とが圧縮されて補強材の網目に固体潤滑剤及び耐熱材が充填されて当該固体潤滑剤及び耐熱材と補強材とが混在一体化されてなり、該外層の外表面は、補強材からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在した平滑な面又は固体潤滑剤からなる平滑な面に形成されている請求項1から11のいずれか一項に記載の球帯状シール体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、斯かる球帯状シール体を鉛直方向又は斜め下方に伸びた排気管の端部に配置する場合に、当該球帯状シール体の円筒内面と排気管の端部の外周面との間のクリアランス(嵌め合い隙間)が大きいと、作業において球帯状シール体が排気管から脱落して、落下する虞があり、組み付け作業性が悪く、斯かる脱落、落下を防止するために、クリアランスが小さいと、製造誤差等により排気管の端部への球帯状シール体の配置が困難となり、いずれにしても組み付け作業性の向上が望まれている。
【0006】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、鉛直方向又は斜め下方に伸びた排気管の端部から落下する虞をなくすことができて、組み付け作業性を向上させることのできる球帯状シール体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
排気管継手に用いられる本発明の球帯状シール体は、円筒内面、部分凸球面状面並びに部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面により規定された球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えており、円筒内面には、当該円筒内面によって規定された貫通孔に挿入される排気管によって削り取り可能な膨張黒鉛からなると共に大径側の環状端面と小径側の環状端面との間において円周方向に互いに間隔をもって軸方向に伸びた少なくとも三つの突部が当該円筒内面から軸心方向に突出して一体的に設けられている。
【0008】
本発明の球帯状シール体によれば、特に、円筒内面には、当該円筒内面によって規定された貫通孔に挿入される排気管によって削り取り可能な膨張黒鉛からなると共に大径側の環状端面と小径側の環状端面との間において円周方向に互いに間隔をもって軸方向に伸びた少なくとも三つの突部が当該円筒内面から軸心方向に突出して一体的に設けられているために、当該突部を介して円筒内面で排気管の一端部の外周面に密に接触させることができ、これにより、排気管から落下する虞をなくすことができ、組み付け作業性を向上させることができる上に、排気管の外周面と円筒内面との間を介する排気ガスの漏出の危険を極力低減し得る。
【0009】
本発明の球帯状シール体では、大径側の環状端面は、円環状の大径縁で部分凸球面状面の大径側の円環状端縁に連接していると共に円環状の小径縁で円筒内面の軸方向の円環状の一端縁に連接した円環状平坦端面からなっていてもよく、円環状の大径縁で部分凸球面状面の大径側の円環状端縁に連接した円環状平坦端面部と、この円環状平坦端面部の円環状の小径縁に大径縁で連接していると共に小径縁で円筒内面の軸方向の円環状の一端縁に連接した円環状の凹状端面部とを具備していてもよく、また、円環状の大径縁で部分凸球面状面の大径側の円環状端縁に連接している円環状の第一の凹状端面部と、この第一の凹状端面部の円環状の小径縁に円環状の大径縁で連接した円環状平坦端面部と、この円環状平坦端面部の円環状の小径縁に大径縁で連接していると共に小径縁で円筒内面の軸方向の円環状の一端縁に連接した円環状の第二の凹状端面部とを具備していてもよく、円筒内面の軸方向の円環状の一端縁に連接した円環状の凹状端面部は、円筒内面によって規定された貫通孔への排気管の一端部の挿入において、排気管の一端部に対する球帯状シール体の位置決め案内部となり、当該排気管の一端部の貫通孔への挿入作業性を向上させる。斯かる場合において、突部は、円筒内面の軸方向の一端縁とその他端縁との間において軸方向に伸びていてもよい。
【0010】
本発明の球帯状シール体では、突部は、円筒内面の軸方向の一端縁とその他端縁とのうちの少なくとも一方まで伸びていてもよく、円筒内面の軸方向の一端縁とその他端縁とのうちの少なくとも一方の手前で終端していてもよく、また、円筒内面の軸方向の一端縁とその他端縁とのうちの一方の手前で終端していると共に円筒内面の軸方向の一端縁とその他端縁とのうちの他方まで伸びていてもよく、好ましい例では、円筒内面の軸方向の一端縁で終端していると共に円筒内面の軸方向の他端縁の手前まで伸びている。
【0011】
本発明の球帯状シール体では、突部は、軸方向において連続的に又は断続的に伸びていてもよく、また、軸方向において平行に直線状に、軸方向に対して傾斜して螺旋状に又は軸方向において波線状に伸びていてもよい。
【0012】
上述の少なくとも三つの突部は、円周方向において互いに等間隔をもって配されていてもよく、突部は、軸方向に直交する断面において、丸みをもった三角形若しくは台形又は半円形の形状をもっているとよく、好ましくは、半円形の形状をもっており、これら突部は、軸方向に直交する方向において、好ましい例では、1mm以下、より好ましい例では、0.5mm以下の高さを有している。
【0013】
上述の円筒内面は、挿入された排気管の円筒外面との間に嵌め合い隙間以上の隙間が生じないように、当該円筒外面の外径に対しての内径を有していてもよい。
【0014】
本発明の球帯状シール体では、球帯状基体は、金網からなる補強材と、この補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されていると共に圧縮された膨張黒鉛を含む耐熱材とを具備しており、外層は、膨張黒鉛を含む耐熱材と、少なくとも、六方晶窒化硼素及びアルミナ水和物を含む潤滑組成物からなる固体潤滑剤と、金網からなる補強材とが圧縮されて補強材の網目に固体潤滑剤及び耐熱材が充填されて当該固体潤滑剤及び耐熱材と補強材とが混在一体化されてなり、外層の外表面は、補強材からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在した平滑な面又は固体潤滑剤からなる平滑な面に形成されていてもよい。斯かる球帯状シール体によれば、固体潤滑剤の外表面からの脱落を回避し得、結果として相手材とは固体潤滑剤と補強材との混在した平滑な面又は固体潤滑剤からなる平滑な面で摺動するので、摩擦異常音の発生を極力防止することができ、特に、固体潤滑剤と補強材との混在した平滑な面に形成されていると、相手材に移着した固体潤滑剤及び耐熱材を補強材で適宜掻き取ることができるために、より効果的に摩擦異常音の発生を防止できる。上記固体潤滑剤において、六方晶窒化硼素は、特に高温領域において優れた潤滑性を発揮するものである。また、成分中のアルミナ水和物はそれ自体は何らの潤滑性を示すものではないが、固体潤滑剤の耐熱材表面への被着性を改善し、強固な被着層の形成に効果を発揮すると共に六方晶窒化硼素の板状結晶の層間の滑りを助長して六方晶窒化硼素の潤滑性を引出す役割を発揮する。
【0015】
上述の潤滑組成物には、四ふっ化エチレン樹脂が含有されていてもよい。四ふっ化エチレン樹脂は、それ自身低摩擦性を有するものであり、潤滑組成物に含有されることにより、潤滑組成物の低摩擦性を向上させ、潤滑組成物からなる固体潤滑剤に低摩擦性を付与し、相手材との摩擦において、スティックスリップ(付着−すべり)を生じることなく摩擦異常音の発生を極力回避し得る。また、潤滑組成物に圧縮成形時の展延性を高める作用を付与し、結果として薄い被着層の形成を可能とする。
【0016】
アルミナ水和物は、組成式Al
2O
3・nH
2O(組成式中、0<n<3)で表される化合物である。該組成式において、nは、通常、0(零)を超えて3未満の数、好ましくは0.5〜2、さらに好ましくは0.7〜1.5程度である。アルミナ水和物としては、例えばベーマイト(Al
2O
3・H
2O)やダイアスポア(Al
2O
3・H
2O)などのアルミナ一水和物(水酸化酸化アルミニウム)、ギブサイト(Al
2O
3・3H
2O)やバイヤライト(Al
2O
3・3H
2O)などのアルミナ三水和物、擬ベーマイトなどが挙げられ、これらの少なくとも一つが使用されて好適である。
【0017】
本発明の球帯状シール体において、球帯状基体及び外層には、金網からなる補強材が40〜65重量%、膨張黒鉛を含む耐熱材及び固体潤滑剤が35〜60重量%の割合で含有されており、球帯状基体及び外層における耐熱材及び固体潤滑剤が1.20〜2.00Mg/m
3の密度を有しているのが好ましく、また外層には、金網からなる補強材が60〜75重量%、膨張黒鉛を含む耐熱材及び固体潤滑剤が25〜40重量%の割合で含有されているのが好ましい。
【0018】
球帯状基体及び外層に、補強材が65重量%よりも多く、耐熱材が35重量%よりも少ない割合で含有されていると、補強材の周りに生じる多数の微小通路(隙間)に対する耐熱材による封止(充填)が完全になされなくなる結果、排気ガスの初期漏洩を惹起し、仮に微小通路に対する封止が偶々完全になされていたとしても、高温下における耐熱材の酸化消耗等により、斯かる封止が早期に消失して、而して早期の排気ガスの漏洩が生じる一方、補強材が40重量%よりも少なく、耐熱材が60重量%よりも多く含有されていると、外層及び外層の近傍において補強材が極めて少なくなり、外層及び外層の近傍における耐熱材に対する補強が好ましくなされなくなり、耐熱材の剥離(脱落)が顕著に生じる上に、補強材による補強効果が期待し難くなる。
【0019】
また、球帯状基体及び外層における耐熱材及び固体潤滑剤では、耐熱材が1.20Mg/m
3よりも小さい密度であると、長期の使用において排気ガスの漏洩を惹起する一方、耐熱材が2.00Mg/m
3よりも大きい密度であると、相手材との摩擦において、往々にして摩擦異常音を発生し易くなる。
【0020】
本発明の球帯状シール体において、外層は補強材からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在した露出面により構成された外表面を有しているために、外層の外表面と接触(摺動)する相手材との更なる滑らかな摺動を確保でき、また、外表面における固体潤滑剤からなる面を補強材からなる面でもって保持し得る上に、外層の外表面からの固体潤滑剤の相手材の表面への移着と相手材の表面へ移着した過度の固体潤滑剤の掻き取りとを適宜に行い得る結果、長期に亘る滑らかな摺動を確保でき、相手材との摺動において摩擦異常音の発生のないものとなる。
【0021】
本発明の球帯状シール体において、耐熱材は、酸化抑制剤としての五酸化リン0.05〜5.0重量%及びリン酸塩1.0〜16.0重量%のうちの少なくとも一方と、膨張黒鉛とを含んでいてもよい。
【0022】
酸化抑制剤としての五酸化リン及びリン酸塩の少なくとも一方と膨張黒鉛とを含む耐熱材は、球帯状シール体自体の耐熱性及び耐酸化消耗性を向上させることができ、球帯状シール体の高温領域での使用を可能とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、排気管から落下する虞をなくすことができて、組み付け作業性を向上させることのできる球帯状シール体を提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に本発明の実施の形態を、図に示す好ましい例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0026】
図1及び
図2において、本例の排気管継手に用いられる球帯状シール体35は、円筒内面29、部分凸球面状面30並びに部分凸球面状面30の大径側及び小径側の環状端面31及び32により規定された球帯状基体33と、球帯状基体33の部分凸球面状面30に一体的に形成された外層34とを備えている。
【0027】
図3に示すように円筒内面29によって規定される貫通孔28に挿入された上流側排気管100の円筒外面46との間に嵌め合い隙間以上の隙間が生じないように、円筒外面46の外径に対しての内径を有している円筒内面29には、挿入される上流側排気管100によって削り取り可能な膨張黒鉛からなると共に大径側の環状端面31と小径側の環状端面32との間において円周方向Rに互いに等間隔をもって軸方向Xと平行に直線状に且つ連続的に伸びた三つの突部41、42及び43が円筒内面29から軸心方向に突出して一体的に設けられている。円筒内面29の軸方向Xの他端縁59の手前で終端44している突部41、42及び43は膨張黒鉛のみからなっていてもよい。
【0028】
環状端面31は、本例では、円環状の大径縁51で部分凸球面状面30の大径側の円環状端縁52に連接した円環状平坦端面部53と、円環状平坦端面部53の円環状の小径縁54に大径縁55で連接していると共に小径縁56で円筒内面29の軸方向Xの円環状の一端縁57に連接した円環状の凹状端面部58とを具備している。
【0029】
球帯状シール体35は、上述の円環状平坦端面部53及び凹状端面部58を具備した環状端面31に代えて、例えば、円環状の大径縁51で部分凸球面状面30の大径側の円環状端縁52に連接していると共に円環状の小径縁54で円筒内面29の軸方向Xの円環状の一端縁57に連接した円環状平坦端面からなっていてもよい。
【0030】
軸方向Xに対して直交する断面において半円形の形状をもった突部41、42及び43は、円筒内面29の軸方向Xの一端縁57とその他端縁59との間で軸方向Xに伸びている。突部41、42及び43は、円筒内面29の軸方向Xの他端縁59の手前で終端していると共に円筒内面29の軸方向Xの一端縁57まで伸びているが、これに代えて、例えば一端縁57及び他端縁59の夫々まで伸びていてもよく、また、一端縁57の手前及び他端縁59の手前で終端していてもよい。
【0031】
突部41及び42の突出端45と軸心Oとを結ぶ線で形成される中心角θ、突部42及び43の突出端45と軸心Oとを結ぶ線で形成される中心角θ及び突部43及び41突出端45と軸心Oとを結ぶ線で形成される中心角θは、夫々互いに等しい角度である。
【0032】
球帯状シール体35が上流側排気管100に装着される際には、貫通孔28には上流側排気管100が挿入され、突出端45を含む突部41、42及び43の夫々は、上流側排気管100によって削り取られることになる。この結果、上流側排気管100の円筒外面46に接触する円筒内面29のうち、特に、突部41、42及び43において上流側排気管100の円筒外面46に特に密に接触するので、球帯状シール体35が上流側排気管100から落下する虞をなくすことができ、而して、組み付け作業性を向上させることができる。
【0033】
球帯状シール体35は、例えば
図1に示すように、軸方向Xと平行に直線状に且つ連続的に伸びた突部41、42及び43を有しているが、これらに代えて、例えば、軸方向Xと平行に直線状に且つ断続的に伸びた突部を有していてもよく、また、軸方向Xにおいて軸方向Xに対して傾斜して螺旋状に又は軸方向において波線状に且つ連続的に又は断続的に伸びた突部を有していてもよい。また、球帯状シール体35は、本例では三つの突部41、42及び43を有しているが、これらに代えて、円周方向Rにおいて互いに等間隔をもって配された三つ以上の突部を有していてもよい。更に、球帯状シール体35は、上述の構成に代えて又は加えて、
図4の(a)及び(b)に示すように、小径縁61で大径縁51に連接していると共に大径縁62で部分凸球面状面30の円環状端縁52に連接した円環状の凹状端面部63を具備していてもよい。斯かる場合において、円環状平坦端面部53の小径縁54は、円筒内面29の一端縁57に凹状端面部58を介して又は直接に連接されるようになっていてもよい。
【0034】
以下、球帯状シール体35における構成材料及び球帯状シール体35の製造方法について説明する。
【0035】
<耐熱シート材Iについて>
濃度98%の濃硫酸を攪拌しながら、酸化剤として過酸化水素の60%水溶液を加え、これを反応液とする。この反応液を冷却して10℃の温度に保持し、これに粒度30〜80メッシュの鱗片状天然黒鉛粉末を添加して30分間反応を行う。反応後、吸引濾過した酸処理黒鉛粉末を分離し、当該酸処理黒鉛粉末を水で10分間攪拌して吸引濾過するという洗浄作業を2回繰り返し、酸処理黒鉛粉末から硫酸分を充分除去する。ついで、硫酸分を充分除去した酸処理黒鉛粉末を110℃の温度に保持した乾燥炉で3時間乾燥し、これを酸処理黒鉛粉末とする。
【0036】
上記酸処理黒鉛粉末を、950〜1200℃の温度で1〜10秒間加熱(膨張)処理を施して分解ガスを発生せしめ、そのガス圧により黒鉛層間を拡張して膨張させた膨張黒鉛粒子(膨張倍率240〜300倍)を形成する。この膨張黒鉛粒子を所望のロール隙間に調整した双ローラ装置に供給してロール成形し、所望の厚さの膨張黒鉛シートを作製し、この膨張黒鉛シートを耐熱シート材Iとする。
【0037】
<耐熱シート材II及びIIIについて>
上記酸処理黒鉛粉末を攪拌しながら、当該酸処理黒鉛粉末にリン酸として濃度84%のオルトリン酸水溶液及びリン酸塩として濃度50%の第一リン酸アルミニウム水溶液のうちの少なくとも一方をメタノールで希釈した溶液を噴霧状に配合し、均一に攪拌して湿潤性を有する混合物を作製する。この湿潤性を有する混合物を、120℃の温度に保持した乾燥炉で2時間乾燥する。ついで、これを950〜1200℃の温度で1〜10秒間加熱(膨張)処理して分解ガスを発生せしめ、そのガス圧により黒鉛層間を拡張して膨張させた膨張黒鉛粒子(膨張倍率240〜300倍)を形成する。この膨張処理工程において、成分中のオルトリン酸は脱水反応を生じて五酸化リンを生成し、第一リン酸アルミニウムは構造式中の水が脱離する。この膨張黒鉛粒子を所望のロール隙間に調整した双ローラ装置に供給してロール成形し、所望の厚さの膨張黒鉛シートを作製し、この膨張黒鉛シートを耐熱シート材II及びIIIとする。
【0038】
このようにして作製された耐熱シート材IIには、五酸化リン若しくは第一リン酸アルミニウムが含有されており、耐熱シート材IIIには、五酸化リンと第一リン酸アルミニウムとが含有されている。このリン酸及びリン酸塩のうちの少なくとも一つを含有した膨張黒鉛は、膨張黒鉛自体の耐熱性が向上されると共に酸化抑制作用が付与されるため、例えば500℃ないし500℃を超える高温領域での使用を可能とする。
【0039】
ここで、使用可能なリン酸としては、オルトリン酸のほかにメタリン酸、ポリリン酸、ポリメタリン酸などを挙げることができ、またリン酸塩としては、第一リン酸アルミニウムのほかに第一リン酸リチウム、第二リン酸リチウム、第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第二リン酸アルミニウムなどを挙げることができる。
【0040】
耐熱シート材は、密度が1.0〜1.15Mg/m
3程度で、厚さは、0.3〜0.6mm程度のシート材が使用されて好適である。
【0041】
<補強材について>
補強材は、鉄系としてオーステナイト系のSUS304、SUS310S、SUS316、フェライト系のSUS430などのステンレス鋼線若しくは鉄線(JISG3532)若しくは亜鉛メッキ鉄線(JISG3547)又は銅系として銅−ニッケル合金(白銅)線、銅−ニッケル−亜鉛合金(洋白)線、黄銅線、ベリリウム銅線からなる金属細線を1本又は2本以上を使用して織ったり、編んだりして形成された金網が使用される。
【0042】
金網を形成する金属細線において、線径は、0.28〜3.2mm程度のものが使用され、当該線径の金属細線で形成された球帯状基体の金網の網目の目幅(編組金網を示す
図7参照)は縦4〜6mm、横3〜5mm程度のものが使用されて好適であり、外層用の金網の網目の目幅(
図7参照)は縦2.5〜3.5mm、横1.5〜5mm程度のものが使用されて好適である。
【0043】
<固体潤滑剤について>
固体潤滑剤は、本例では、六方晶窒化硼素(以下「h−BN」と略称する。)70〜85重量%と酸化硼素0.1〜10重量%とアルミナ水和物5〜20重量%とを含む潤滑組成物又は当該潤滑組成物100重量部に対して、四ふっ化エチレン樹脂(以下「PTFE」と略称する。)粉末を200重量部以下、好ましくは50〜150重量部の割合で含有する潤滑組成物からなるものである。
【0044】
上述の固体潤滑剤には、六方晶窒化硼素に含有されることにより該窒化硼素の具有する潤滑性を引出し、特に高温領域での摩擦の低下に寄与する酸化硼素が含まれているが、当該固体潤滑剤は、例えばこれを含まずに構成されてもよく、斯かる場合においても、成分中のアルミナ水和物は、固体潤滑剤の耐熱材表面への被着性を改善し、強固な被着層の形成に効果を発揮すると共に六方晶窒化硼素の板状結晶の層間の滑りを助長して六方晶窒化硼素の潤滑性を引出す役割を発揮する。
【0045】
この固体潤滑剤は、製造過程においては、分散媒としての酸を含有する水にアルミナ水和物粒子を分散含有した水素イオン濃度(pH)が2〜3を呈するアルミナゾルに、h−BN粉末及び酸化硼素粉末を分散含有した水性ディスパージョンであって、h−BN粉末70〜85重量%と酸化硼素0.1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%とを含む潤滑組成物を固形分として30〜50重量%分散含有した水性ディスパージョンの形態で使用される。また、水性ディスパージョンは、h−BN70〜85重量%、酸化硼素0.1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%を含む潤滑組成物に、当該潤滑組成物100重量部に対し200重量部以下、好ましくは50〜150重量部の割合でPTFEを分散含有する潤滑組成物を固形分として30〜50重量%分散含有した水性ディスパージョンであってもよい。水性ディスパージョンを形成するh−BN、酸化硼素及びPTFEは、可及的に微粉末であることが好ましく、これらは平均粒径10μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下の微粉末が使用されて好適である。
【0046】
水性ディスパージョンにおけるアルミナゾルの分散媒としての水に含有される酸は、アルミナゾルを安定化させるための解膠剤として作用するものである。そして、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、アミド硫酸等の無機酸が挙げられるが、特に硝酸が好ましい。
【0047】
水性ディスパージョンにおけるアルミナゾルを形成するアルミナ水和物としては、組成式Al
2O
3・nH
2O(組成式中、0<n<3)で表される化合物である。組成式において、nは、通常、0(零)を超えて3未満の数、好ましくは0.5〜2、さらに好ましくは0.7〜1.5程度である。アルミナ水和物としては、例えばベーマイト(Al
2O
3・H
2O)やダイアスポア(Al
2O
3・H
2O)などのアルミナ一水和物(水酸化酸化アルミニウム)、ギブサイト(Al
2O
3・3H
2O)やバイヤライト(Al
2O
3・3H
2O)などのアルミナ三水和物、擬ベーマイトなどが挙げられる。
【0048】
次に、上記した構成材料からなる球帯状シール体35の製造方法について、図面に基づき説明する。
【0049】
(第一工程)
図5に示すように、線径0.28〜0.32mmの金属細線を円筒状に編んで形成した網目の目幅が縦4〜6mm、横3〜5mm程度(
図7参照)の円筒状編組金網1をローラ2及び3間に通して所定の幅Dの帯状金網4を作製し、帯状金網4を所定の長さLに切断した補強材5を準備する。
【0050】
(第二工程)
図6に示すように、補強材5の幅Dに対して1.10×Dから2.10×Dの幅dを有すると共に、補強材5の長さLに対して1.30×Lから2.70×Lの長さlを有し、密度が1〜1.15Mg/m
3で、厚さが0.3〜0.6mmの耐熱材(膨張黒鉛又はリン酸及びリン酸塩のうちの少なくとも一方を含有する膨張黒鉛からなるシート)6を準備する。
【0051】
(第三工程)球帯状シール体35(
図1参照)において、部分凸球面状面30(
図2参照)の軸方向の少なくとも一方の端縁側の環状端面である大径側の環状端面31に全体的に耐熱材6が露出するようにすべく、
図8に示すように、部分凸球面状面30の大径側の環状端面31となる補強材5の幅方向の一方の端縁7から最大で0.1×Dから0.8×Dだけ耐熱材6が幅方向にはみ出すと共に端縁7からの耐熱材6の幅方向のはみ出し量δ1が部分凸球面状面30の小径側の環状端面32となる補強材5の幅方向の他方の端縁8からのはみ出し量δ2よりも多くなるようにすると共に補強材5の長さ方向の一方の端縁9から最大で0.3×Lから1.7×Lだけ耐熱材6が長さ方向にはみ出すと共に、補強材5の長さ方向の他方の端縁10と当該端縁10に対応する耐熱材6の長さ方向の端縁11を合致させて当該耐熱材6と補強材5とを互いに重ね合わせた重合体12を得る。
【0052】
(第四工程)重合体12を
図9に示すように耐熱材6を内側にしてうず巻き状であって耐熱材6が1回多くなるように捲回して、内周側及び外周側の両方に耐熱材6が露出した筒状母材13を形成する。耐熱材6としては、筒状母材13における耐熱材6の巻き回数が補強材5の巻き回数よりも多くなるように、補強材5の長さLに対して1.30×Lから2.70×Lの長さlを有したものが予め準備される。筒状母材13においては、
図10に示すように、耐熱材6は、幅方向の一方の端縁側において補強材5の一方の端縁7から幅方向にδ1だけはみ出しており、また耐熱材6の幅方向の他方の端縁側において補強材5の他方の端縁8から幅方向にδ2だけはみ出している。
【0053】
(第五工程)前記耐熱材6と同様であるが、補強材5の幅Dよりも小さい幅dを有すると共に筒状母材13を1回巻きできる程度の長さlを有した
図11に示すような耐熱材6を別途用意する。
【0054】
(第六工程)解膠剤として作用する硝酸を含有した分散媒としての水にアルミナ水和物が分散含有された水素イオン濃度(pH)が2〜3を呈するアルミナゾルに、h−BN粉末及び酸化硼素粉末を分散含有した水性ディスパージョンであって、h−BN70〜85重量%、酸化硼素0.1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%を含む潤滑組成物を固形分として30〜50重量%分散含有した水性ディスパージョン、又はh−BN70〜85重量%、酸化硼素0.1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%を含む潤滑組成物に、当該潤滑組成物100重量部に対し200重量部以下、好ましくは50〜150重量部のPTFE粉末を含有した潤滑組成物を固形分として30〜50重量%分散含有した水性ディスパージョンを準備する。
【0055】
図11に示す耐熱材6の一方の表面に、h−BN70〜85重量%、酸化硼素0.1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%を含む潤滑組成物を固形分として30重量%分散含有した水性ディスパージョン(h−BN21〜25.5重量%、酸化硼素0.03〜3重量%、アルミナ水和物1.5〜6重量%及び水分70重量%)を刷毛塗り、ローラ塗り、スプレー等の手段で被覆し、これを乾燥させて
図12に示すような該潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層14を形成する。
【0056】
または、耐熱材6の一方の表面に、h−BN70〜85重量%、酸化硼素0.1〜10重量%及びアルミナ水和物5〜20重量%を含む潤滑組成物に、該潤滑組成物100重量部に対し200重量部以下、好ましくは50〜150重量部の割合でPTFE粉末を分散含有する潤滑組成物、すなわちh−BN23.3〜56.7重量%、酸化硼素0.03〜6.7重量%、アルミナ水和物1.7〜13.3重量%及びPTFE33.3〜66.7重量%を含む潤滑組成物を固形分として30重量%分散含有した水性ディスパージョン(h−BN7〜17重量%、酸化硼素0.009〜2重量%、アルミナ水和物0.5〜4重量%、PTFE10〜20重量%、水分70重量%)を刷毛塗り、ローラ塗り、スプレー等の手段で被覆し、これを乾燥させて該潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層14を形成する。
【0057】
(第七工程)
<第一の方法>
図13ないし
図15に示すように、線径が0.28〜0.32mmの金属細線を編み機(図示せず)で連続的に編んで得られる円筒状編組金網からなる外層用の補強材5の内部に、固体潤滑剤の被覆層14を備えた耐熱材6を連続的に挿入(
図13参照)し、耐熱材6を挿入した補強材5をその挿入開始端側から平滑な円筒状の外周面を有する一対の円筒ローラ15及び16間の隙間Δ1に供給し耐熱材6の厚さ方向に加圧(
図14参照)して一体化させ、外層用の補強材5の金網の網目に耐熱材6と耐熱材6の表面に形成された固体潤滑剤の被覆層14とを充填して、表面に外層用の補強材5からなる面17と固体潤滑剤からなる面18とが混在して露出した扁平状の外層形成部材19を作製する。
【0058】
<第二の方法> 前記第一工程で説明した帯状金網4からなる補強材5を別途用意し、
図16に示すように、帯状金網4からなる外層用の補強材5内に、固体潤滑剤の被覆層14を備えた耐熱材6を挿入すると共に、これらを
図17に示すように、円筒ローラ15及び16間の隙間Δ1に供給し耐熱材6の厚さ方向に加圧して一体化させ、外層用の補強材5の金網の網目に耐熱材6と耐熱材6の表面に形成された固体潤滑剤の被覆層14とを充填して、表面に外層用の補強材5からなる面17と固体潤滑剤からなる面18とが混在して露出した扁平状の外層形成部材19を作製する。
【0059】
<第三の方法> 線径が0.28〜0.32mmの金属細線を織って形成される織組金網として平織金網を用意し、この平織金網からなる外層用の補強材5を所定の長さと幅に切断し、補強材5を2枚用意する。2枚の外層用の補強材5間に固体潤滑剤の被覆層14を備えた耐熱材6を挿入すると共に一対の円筒ローラ15及び16間の隙間Δ1に供給し耐熱材6の厚さ方向に加圧して一体化させ、外層用の補強材5の金網の網目に耐熱材6と耐熱材6の表面に形成された固体潤滑剤の被覆層14とを充填して、表面に外層用の補強材5からなる面17と固体潤滑剤からなる面18とが混在して露出した扁平状の外面層形成部材19を作製する。
【0060】
上記第一、第二及び第三の方法において、一対の円筒ローラ間の隙間Δ1は、0.4〜0.6mm程度が適当である。
【0061】
(第八工程)このようにして得た外層形成部材19を被覆層14を外側にして筒状母材13の外周面に巻付け、
図18に示すような予備円筒成形体20を作製する。
【0062】
(第九工程)内面に円筒壁面21と円筒壁面21に連なる部分凹球面状壁面22と部分凹球面状壁面22に連なる貫通孔23とを備え、貫通孔23に突部41、42及び43に対応した凹部47が設けられた段付きコア24を嵌挿することによって内部に中空円筒部25と中空円筒部25に連なる球帯状中空部26とが形成された
図19に示すような金型27を準備し、金型27の段付きコア24に予備円筒成形体20を挿入する。
【0063】
金型27の中空円筒部25及び球帯状中空部26に配された予備円筒成形体20をコア軸方向に98〜294N/mm
2(1〜3トン/cm
2)の圧力で圧縮成形し、
図1及び
図2に示すような、中央部に貫通孔28を有すると共に円筒内面29と部分凸球面状面30と部分凸球面状面30の大径側及び小径側の環状端面31及び32とにより規定された球帯状基体33と、球帯状基体33の部分凸球面状面30に一体に形成された外層34とを備えた球帯状シール体35を作製する。
【0064】
この圧縮成形により、球帯状基体33は、耐熱材6と補強材5とが互いに圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成されており、外層34は、耐熱材6と、潤滑組成物からなる固体潤滑剤と、金網からなる補強材5とが圧縮されて補強材5の金網の網目に固体潤滑剤及び耐熱材6が充填されて当該固体潤滑剤及び耐熱材6と補強材5とが混在一体化されてなり、外層34の外表面36は、補強材5からなる面37と固体潤滑剤からなる面38とが混在した平滑な面39に形成されており、円筒内面29には、補強材5を除いて凹部47に圧入充填された耐熱材6からなる三つの突部41、42及び43が形成されている。
【0065】
作製された球帯状シール体35の球帯状基体33及び外層34は、金網からなる補強材5が40〜65重量%の割合で含有されていると共に膨張黒鉛を含む耐熱材6及び固体潤滑剤が35〜60重量%の割合で含有されており、球帯状基体33及び外層34における耐熱材6及び固体潤滑剤が1.20〜2.00Mg/m
3の密度を有している。
【0066】
また外層34のみに着目すると、外層34は、金網からなる補強材5が60〜75重量%、膨張黒鉛を含む耐熱材6及び固体潤滑剤が25〜40重量%の割合で含有されている。
【0067】
前記第四工程において、重合体12を耐熱材6を内側にしてうず巻き状に捲回する代わりに、帯状金網4からなる補強材5を内側にしてうず巻き状に捲回して筒状母材13を形成すると、球帯状基体33の円筒内面29において金網からなる補強材5が露出する球帯状シール体35を作製することができる。
【0068】
球帯状シール体35は、
図20に示す排気管球面継手に組込まれて使用される。すなわち、
図20に示す排気管球面継手において、エンジン側に連結された上流側排気管100の外周面には、管端部101を残してフランジ200が立設されており、管端部101には、球帯状シール体35が貫通孔28を規定する円筒内面29において嵌合されており、大径側の環状端面31において球帯状シール体35がフランジ200に当接されて着座せしめられており、上流側排気管100と対峙して配されていると共にマフラー側に連結された下流側排気管300には、凹球面部302と凹球面部302に連接されたフランジ部303とを一体に備えた径拡大部301が固着されており、凹球面部302の内面304が球帯状シール体35の外層34の外表面36における補強材5からなる面37と固体潤滑剤からなる面38とが混在した平滑な面39に摺接されている。
【0069】
図20に示す排気管球面継手において、一端がフランジ200に固定され、他端が径拡大部301のフランジ部303を挿通して配された一対のボルト400とボルト400の膨大頭部及びフランジ部303の間に配された一対のコイルバネ500とにより、下流側排気管300には、常時、上流側排気管100方向にバネ力が付勢されている。そして、排気管球面継手は、上、下流側排気管100、300に生じる相対角変位に対しては、球帯状シール体35の外層34のすべり面としての平滑な面39と下流側排気管300の端部に形成された径拡大部301の凹球面部302の内面304との摺接でこれを許容するように構成されている。
【0070】
本例の球帯状シール体35によれば、円筒内面29、部分凸球面状面30並びに部分凸球面状面30の大径側及び小径側の環状端面31及び32により規定された球帯状基体33と、球帯状基体33の部分凸球面状面30に一体的に形成された外層34とを備えており、円筒内面29には、当該円筒内面29によって規定される貫通孔28に挿入される上流側排気管100によって削り取り可能な膨張黒鉛からなると共に大径側の環状端面31と小径側の環状端面32との間において円周方向Rに互いに間隔をもって軸方向Xに伸びた少なくとも三つの突部41、42及び43が円筒内面29から軸心方向に突出して一体的に設けられているために、突部41、42及び43を上流側排気管100の円筒外面46に密に接触させることができ、これにより、上流側排気管100から落下する虞をなくすことができ、組み付け作業性を向上させることができる。
【0071】
球帯状シール体35によれば、球帯状基体33は、金網からなる補強材5と、補強材5の金網の網目を充填し、かつこの補強材5と混在一体化されていると共に圧縮された膨張黒鉛を含む耐熱材6とを具備しており、外層34は、膨張黒鉛を含む耐熱材6と、少なくとも、六方晶窒化硼素及びアルミナ水和物を含む潤滑組成物からなる固体潤滑剤と、金網からなる補強材5とが圧縮されて補強材5の網目に固体潤滑剤及び耐熱材6が充填されて当該固体潤滑剤及び耐熱材6と補強材5とが混在一体化されてなり、外層34の外表面36は、補強材5からなる面37と固体潤滑剤からなる面38とが混在した平滑な面39に形成されているために、固体潤滑剤の外表面36からの脱落を回避し得、結果として相手材とは固体潤滑剤と補強材5との混在した平滑な面39で摺動するので、摩擦異常音の発生を極力防止することができる。上記固体潤滑剤において、六方晶窒化硼素は、特に高温領域において優れた潤滑性を発揮する。また、成分中のアルミナ水和物はそれ自体は何らの潤滑性を示すものではないが、固体潤滑剤の耐熱材表面への被着性を改善し、強固な被着層の形成に効果を発揮すると共に六方晶窒化硼素の板状結晶の層間の滑りを助長して六方晶窒化硼素の潤滑性を引出す役割を発揮する。
【0072】
上記の製造方法では、補強材5からなる面37と固体潤滑剤からなる面38とが混在した平滑な面39に形成された外表面36をもって外層34が形成されるが、固体潤滑剤からなる平滑な面に形成された外表面36をもって外層34を形成する場合には、例えば、第三の方法における2枚の外層用の補強材5を、一方の面に固体潤滑剤の被覆層14を備えた耐熱材6の他方の面に重ね合わせ、共にこれを一対の円筒ローラ15及び16間の隙間Δ1に供給し耐熱材6の厚さ方向に加圧して一体化させ、裏面において外層用の補強材5の金網の網目に耐熱材6を充填して、表面に固体潤滑剤の被覆層14からなる面18を有する一方、裏面に補強材5と耐熱材6とが混在して露出した扁平状の外面層形成部材19を作製し、このようにして得た外層形成部材19を被覆層14を外側にして筒状母材13の外周面に巻付け、予備円筒成形体20を作製するとよい。