特許第5966881号(P5966881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966881
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】自動車の脚払い構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/54 20060101AFI20160728BHJP
   B60R 19/12 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   B60R19/54
   B60R19/12
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-257069(P2012-257069)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-104781(P2014-104781A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(72)【発明者】
【氏名】安藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】田代 邦芳
【審査官】 森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−246040(JP,A)
【文献】 特開2012−020684(JP,A)
【文献】 特開2007−246044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/54
B60R 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンパ部材よりも下方位置で前方に延設されたロアスティフナを備えた自動車の脚払い構造であって、
上記ロアスティフナがバンパ部材よりも後方の支持部材に支持され、
該ロアスティフナには、軽衝突時に前後方向の折れ起点となる弱部が車幅方向に延設され、
該弱部よりも前方に離間して、車幅方向に延びる補強部が延設形成されており、
該補強部は、上記弱部に対し車両前後方向に傾斜して形成された傾斜リブで構成されており、
該傾斜リブの前後方向に延び、かつ車幅方向に並ぶ複数の前後リブを設け、
上記傾斜リブで隣り合う上記前後リブを連結すると共に、
上記傾斜リブが前方頂部と後方頂部とを有し、
前方頂部周辺に上記前後リブが設けられ、
上記後方頂部周辺は上記前方頂部周辺に対して上記前後リブの配置数が多くされており、
上記弱部と上下方向で一致するロアスティフナ下面側には、車幅方向に延びる横リブを一体形成しており、
該横リブよりも後側の部分は、当該横リブよりも前側の部分に対して上記前後リブの配置数が相対的に少ないことを特徴とする
自動車の脚払い構造。
【請求項2】
上記傾斜リブは弱部に対して前方に凸状に湾曲、または逆V字状のアーチ形状に形成された
請求項1記載の自動車の脚払い構造。
【請求項3】
上記傾斜リブは、複数のアーチ状部が連続して、弱部の前方全域に車幅方向にジグザグ形状に延設された
請求項2記載の自動車の脚払い構造。
【請求項4】
上記弱部は、上記ロアスティフナの上面に形成された溝部で構成され、
上記ロアスティフナの下面側に複数の前後リブが形成された
請求項1〜の何れか一項に記載の自動車の脚払い構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者衝突時の安全性を向上するため、バンパ部材(バンパレインフォースメント、または、バンパレインフォースメントとクラッシュカンとの組合せ)よりも下方位置で前方に延設された脚払い部材としてのロアスティフナを備えたような自動車の脚払い構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両が歩行者と接触衝突した際、歩行者の脚を払って、当該歩行者の上体をボンネット上に傾倒させて、歩行者を二次障害から守ることを目的として、脚払い部材としてのロアスティフナを、バンパ部材よりも下方位置において車体側のシュラウドサポート等の支持部材に支持させた構造が知られている。
【0003】
上述のロアスティフナは、歩行者の脚を払うのに必要な脚払い反力を発生させるための適度な高剛性、強度が求められる一方で、軽衝突時においてはシュラウドサポート等の支持部材が破損しないように、該支持部材への荷重伝達を低減させるために、低剛性化が求められる。
つまり、上述のロアスティフナには適度な高剛性化と低剛性という相反する要求があり、これらの要求を満たすようにロアスティフナを構成することは困難であった。
このような問題点を解決するために既に特許文献1に開示された自動車の脚払い構造が発明されている。
【0004】
この特許文献1に開示された構造は、ロアスティフナの下面側に車幅方向に延びる横リブと、車両前後方向に延びる縦リブとで格子状リブを形成し、この格子状リブにおける縦リブの車両前後方向の中間部位にV字状の切欠きによる弱部を形成し、軽衝突時に該弱部によりロアスティフナを下方に折曲げ変形させて、シュラウドサポート等の支持部材への荷重伝達を低減し、該シュラウドサポートの破損を防止したものである。
【0005】
特許文献1に開示された従来構造において、ロアスティフナの前後長が短い場合には、上記横リブが多いため、早期に変形しにくくなる底付きが発生して支持部材への伝達荷重が高まり、この底付きをなくして、ロアスティフナを折曲げ変形しやすく構成すると、脚払い反力が不充分となる問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5034639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、軽衝突時においてはロアスティフナを確実に折れ変形させて、支持部材のダメージを低減しつつ、歩行者との接触衝突時には歩行者脚払い時の荷重を、車幅方向の広い範囲に分散させ、脚払い反力が低下することを防止することができる自動車の脚払い構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による自動車の脚払い構造は、バンパ部材よりも下方位置で前方に延設されたロアスティフナを備えた自動車の脚払い構造であって、上記ロアスティフナがバンパ部材よりも後方の支持部材に支持され、該ロアスティフナには、軽衝突時に前後方向の折れ起点となる弱部が車幅方向に延設され、該弱部よりも前方に離間して、車幅方向に延びる補強部が延設形成されており、該補強部は、上記弱部に対し車両前後方向に傾斜して形成された傾斜リブで構成されており、該傾斜リブの前後方向に延び、かつ車幅方向に並ぶ複数の前後リブを設け、上記傾斜リブで隣り合う上記前後リブを連結すると共に、上記傾斜リブが前方頂部と後方頂部とを有し、前方頂部周辺に上記前後リブが設けられ、上記後方頂部周辺は上記前方頂部周辺に対して上記前後リブの配置数が多くされており、上記弱部と上下方向で一致するロアスティフナ下面側には、車幅方向に延びる横リブを一体形成しており、該横リブよりも後側の部分は、当該横リブよりも前側の部分に対して上記前後リブの配置数が相対的に少ないものである。
上述のバンパ部材は、バンパレインフォースメントに設定してもよく、バンパレインフォースメントとクラッシュカンとの組合せ構成に設定してもよい。
また、上述の支持部材は、シュラウドサポートに設定してもよい。
【0009】
上記構成によれば、軽衝突時には上記弱部によってロアスティフナを確実に折れ変形させることができ、このためシュラウドサポート等の支持部材のダメージ低減を図ることができる。
また、歩行者との接触衝突時には、上記補強部(傾斜リブ)が歩行者脚払い時の荷重を弱部の車幅方向に広い範囲で分散することができ、弱部の折れを抑制して脚払い反力の低下を防止することができる。
要するに、脚払い時には、脚払い反力の低下を防止し、軽衝突時には支持部材のダメージ低減を図ることができる。
【0010】
さらに、上記補強部(傾斜リブ)は、上記弱部よりも前方に離間しているので、次の如き効果がある。
すなわち、補強部が弱部から離間せず、補強部が弱部に接していると、剛性や断面形状が急激に変化して、応力が集中して当該弱部が折れやすくなるが、補強部を弱部から離間させたので、応力の集中を防止することができ、脚払い反力確保のための補強部の剛性をより一層高めることができると共に、支持部材ダメージ低減のための弱部の剛性をより一層低下させることができる。
【0011】
加えて、上記ロアスティフナは、車幅方向に並ぶ複数の前後リブを有すると共に、上記補強部は、隣り合う前後リブを連結し、上記弱部に対し車両前後方向に傾斜して形成された傾斜リブで構成されたものであり、このように、上述の斜め方向に延びる上述の傾斜リブで、荷重を車幅方向に効果的に分散することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記傾斜リブは弱部に対して前方に凸状に湾曲、または逆V字状のアーチ形状に形成されたものである。
【0013】
上記構成によれば、アーチ形状の傾斜リブにより効果的に荷重を分散することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記傾斜リブは、複数のアーチ状部が連続して、弱部の前方全域に車幅方向にジグザグ形状に延設されたものである。
【0015】
上記構成によれば、適切な強度を確保し得る角度で、弱部の前方全域にアーチ形状を形成することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記弱部は、上記ロアスティフナの上面に形成された溝部で構成され、上記ロアスティフナの下面側に複数の前後リブが形成されたものである。
上述の溝部は、V字溝に設定してもよい。
【0017】
上記構成によれば、上述の複数の前後リブはロアスティフナの下面側に形成されており、ロアスティフナの上面側には複数の前後リブが存在しないか、あるいは格段に少なくすることができるので、該ロアスティフナ上面への汚れの堆積を抑制しつつ、軽衝突時にはロアスティフナ上面の溝部により、車幅方向の何れの部位においても、当該ロアスティフナを円滑に折れ変形させることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、上記ロアスティフナがバンパ部材よりも後方の支持部材に支持され、該ロアスティフナには、軽衝突時に前後方向の折れ起点となる弱部が車幅方向に延設され、該弱部よりも前方に、車幅方向に延びる補強部が延設されているので、軽衝突時においてはロアスティフナを確実に折れ変形させて、支持部材のダメージを低減しつつ、歩行者との接触衝突時には歩行者脚払い時の荷重を、車幅方向の広い範囲に分散させ、脚払い反力が低下することを防止することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の自動車の脚払い構造を示す斜視図
図2図1から緩衝部材、バンパレインフォースメント、フロントサイドフレームを取外して示す斜視図
図3図2の正面図
図4図3の右側面図
図5図3の底面図
図6】バンパフェース部の正面図
図7図6のA−A線矢視断面図
図8図6のB−B線矢視断面図
図9図6のC−C線矢視断面図
図10図6のD−D線矢視断面図
図11図6のE−E線矢視断面図
図12】(a)はフルラップ軽衝突時のロアスティフナの変形を示す側面図、(b)はオフセット軽衝突時のロアスティフナの変形を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
軽衝突時においてはロアスティフナを確実に折れ変形させて、支持部材のダメージを低減しつつ、歩行者との接触衝突時には歩行者脚払い時の荷重を、車幅方向の広い範囲に分散させ、脚払い反力が低下することを防止するという目的を、バンパ部材よりも下方位置で前方に延設されたロアスティフナを備えた自動車の脚払い構造において、上記ロアスティフナがバンパ部材よりも後方の支持部材に支持され、該ロアスティフナには、軽衝突時に前後方向の折れ起点となる弱部が車幅方向に延設され、該弱部よりも前方に離間して、車幅方向に延びる補強部が延設形成されており、該補強部は、上記弱部に対し車両前後方向に傾斜して形成された傾斜リブで構成されており、該傾斜リブの前後方向に延び、かつ車幅方向に並ぶ複数の前後リブを設け、上記傾斜リブで隣り合う上記前後リブを連結すると共に、上記傾斜リブが前方頂部と後方頂部とを有し、前方頂部周辺に上記前後リブが設けられ、上記後方頂部周辺は上記前方頂部周辺に対して上記前後リブの配置数が多くされており、上記弱部と上下方向で一致するロアスティフナ下面側には、車幅方向に延びる横リブを一体形成しており、該横リブよりも後側の部分は、当該横リブよりも前側の部分に対して上記前後リブの配置数が相対的に少なくされるという構成にて実現した。
【実施例】
【0021】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は自動車の脚払い構造を示し、図1は当該脚払い構造を示す斜視図、図2図1から緩衝部材、バンパレインフォースメント、フロントサイドフレームを取外した状態で示す要部の斜視図である。
図1において、エンジンルームの車幅方向両サイドを車両の前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム1,1を設けている。このフロントサイドフレーム1は、フロントサイドフレームインナとフロントサイドアウタとを接合固定して、車両の前後方向に延びる閉断面を有する車体強度部材である。
上述のフロントサイドフレーム1の前端には、クロージングプレート2およびメインクラッシュカン側のベースプレート3を介してメインクラッシュカン4を取付けている。
【0022】
図1図11に示すように、左右一対のメインクラッシュカン4,4の前部相互間には、車幅方向に延びるバンパレインフォースメント5を取付けている。図11に示すように、該バンパレインフォースメント5は、バンパレインフロントパネル6と、断面ハット形状のバンパレインリヤパネル7とを接合固定して、車幅方向に延びるバンパレイン閉断面8を有するバンパ部材である。
上述のバンパレインフォースメント5におけるバンパレインフロントパネル6の前面には、該バンパレインフロントパネル6に沿って、車幅方向に延びる緩衝部材としてのEA部材9を取付けている。このEA部材9は歩行者の膝荷重を受け止めるものである。図1図10に示すように、該EA部材9におけるメインクラッシュカン4対応部位よりも若干車幅方向内側には、取付け穴9a,9aを形成し、左右一対の取付け穴9a,9aにてクリップ等の取付け部材10を用いて当該EA部材9をバンパレインフロントパネル6に取付けたものである。
【0023】
図1図2に示すように、フロントサイドフレーム1の下方部にはロアアーム等のサスペンションアーム(図示せず)を介して前輪を支持するサブフレーム11を設けている。
このサブフレーム11は、車幅方向に延びるセンタクロスメンバ12と、このセンタクロスメンバ12の左右両側部からフロントサイドフレーム1の下方部において車両の前後方向に延びるフロントサイドメンバ13,13と、左右のフロントサイドメンバ13,13の前部相互間を車幅方向に連結するフロントクロスメンバ14と、上述のセンタクロスメンバ12の左右両側部から車両の前後方向に延びるリヤサイドメンバ(図示せず)と、左右のリヤサイドメンバ間を車幅方向に連結するリヤクロスメンバ(図示せず)と、を備えている。
【0024】
図1図11に示すように、フロントサイドフレーム1の前部下面には支持部材としてのブラケット15を結合固定し、サブフレーム11のフロントサイドメンバ13前部と上述のブラケット15とを、上下方向に延びる取付け部材16で連結している。
また、図1に示すように、フロントサイドメンバ13の後部には、該フロントサイドメンバ13から上方に立上がるタワー部17(車体取付け部材)を設け、このタワー部17の上端部を図示しないマウント部材にて、フロントサイドフレーム1の下面部に連結している。
【0025】
図2図11に示すように、上述のフロントサイドメンバ13の前端部には、クロージングプレート18およびサブクラッシュカン側のベースプレート19を介してサブクラッシュカン20を取付けている。
【0026】
図1図11に示すように、該サブクラッシュカン20はメインクラッシュカン4の下方に位置すると共に、サブクラッシュカン20の前端位置はバンパレインフォースメント5と上下方向で対応する位置に設定されている。
図3図2の正面図、図4図3の右側面図、図5図3の底面図である。
【0027】
図1図5に示すように、バンパレインフォースメント5よりも後方で車幅方向に延びる車体側の支持部材としてのシュラウドサポート21を設けている。図2に示すように、このシュラウドサポート21は、上側において車幅方向に略直線状に延びるシュラウドアッパ21Uと、下側において車幅方向に略直線状に延びるシュラウドロア21Lと、側部において、シュラウドアッパ21Uおよびシュラウドロア21Lを上下方向に連結する左右のシュラウドサイド21S,21Sと、を合成樹脂により一体形成して、略方形枠状に成したものである。
【0028】
支持部材としてのシュラウドサポート21は、図7に示すように、熱交換器としてのラジエータ22およびコンデンサ23(またはインタクーラ)を保持するもので、この実施例では、図1に示すように、該シュラウドサポート21は左右一対のブラケット24,24を介してバンパレインフォースメント5に支持されており、軽衝突時において、メインクラッシュカン4が変形すると、バンパレインフォースメント5が後退し、シュラウドサポート21はブラケット24,24を介してバンパレインフォースメント5と共に後退するように構成されている。
【0029】
図6はバンパフェース部の正面部、図7図6のA−A線矢視断面図、図8図6のB−B線矢視断面図、図9図6のC−C線矢視断面図、図10図6のD−D線矢視断面図、図11図6のE−E線矢視断面図である。
図6において、25はバンパフェース、26はバンパフェース25の車幅方向中間に位置するアッパガーニッシュ、27はグリル、28はセンタメンバ、29はガーニッシュ、30は導風口、31はアンダカバーである。
【0030】
図2図5に示すように、バンパ部材としてのバンパレインフォースメント5よりも下方位置で前方に延設された脚払い部材としてのロアスティフナ40を設けている。詳しくは、該ロアスティフナ40は、シュラウドサポート21の左右端部に支持されるように車幅方向に延設され、かつバンパレインフォースメント5よりも下方から車両前方に延設されたものである。
要するに、この実施例の自動車の脚払い構造は、車幅方向に延びて車体前部に支持されると共に、第1の荷重(フロントサイドフレーム1の耐力)以下の前突荷重(つまり軽衝突荷重)から車体を保護するバンパ部材であるバンパレインフォースメント5と、当該バンパレインフォースメント5よりも後方で車幅方向に延びると共に、上記第1の荷重よりも低い第2の荷重(シュラウドサポート21に求められる荷重)まで耐えられる車体側の支持部材としてのシュラウドサポート21と、このシュラウドサポート21の左右端部に支持されるよう、車幅方向に延設され、かつ、上記バンパレインフォースメント5よりも下方から前方に延設されると共に、上記第2の荷重よりも低い第3の荷重(脚払い反力)で変形する脚払い部材としての合成樹脂製のロアスティフナ40とを備えた構成を、前提構造とするものである。
【0031】
図5に底面図で示すように、上述のロアスティフナ40は、シュラウドサポート21の中央部に対応する中央部40Cと、この中央部40Cの車幅方向両外側に位置し、上記シュラウドサポート21の側部に対応する車幅方向側部40S,40S(以下単に側部と略記する)と、これら左右の側部40S,40Sから車幅方向外方に延びサブクラッシュカン20,20と前後方向に離間して対面する延長端部40E,40Eと、を一体形成したものである。
また、上述のロアスティフナ40は、側部40Sの前側の縁部から前方に前方凸部40F,40Fが一体に延設されると共に、側部40Sの後側の縁部から後方に後方凸部40R,40Rが一体に延設されており、該後方凸部40R,40Rと嵌合するように上述のシュラウドサポート21のシュラウドロア21Lにおける前面側部には凹部21aが形成されている。
【0032】
図7図10に示すように、上述のロアスティフナ40はバンパレインフォースメント5よりも後方において、ボルト41、ナット42等の取付け部材を用いて、支持部材としてのシュラウドサポート21に締結支持されている。
また、上述のロアスティフナ40は、図2に示すフラット形状(平滑面形状)の上面部40a,40bと、この上面部40aの左右両側端から下方に延びる左右の側片40d,40dと、上面部40aの前端から下方に延びる前片40e(但し、この前片40eは各部40C,40S,40Eの前端から下方に延びる車幅方向全体の垂下片を意味する)と、上面部40a,40bの後端から下方に延びる後片40f(但し、この後片40fは各部40C,40S,40Eの後端から下方に延びる車幅方向全体の垂下片を意味する)と、を備えている。
【0033】
しかも、図2図7図8図10に示すように、上述のロアスティフナ40には、軽衝突時に前後方向の折れ起点(ロアスティフナ40の折れ状態については図12参照)となる弱部としてのV字溝43が車幅方向に延設形成されている。このV字溝43はロアスティフナ40の上面に形成された溝部であって、該V字溝43により上面部40a,40bを当該V字溝43より前側に位置する前側上面部40aと、当該V字溝43より後側に位置する後側上面部40bとに区画している。
【0034】
ここで、前側上面部40aは略水平状に形成されており、後側上面部40bは、図7図8に示すように、前低後高状の傾斜状に形成され、導風ガイドの作用を奏し、導風口30から流入した走行風をコンデンサ23およびラジエータ22へ導くようになっている。
また、図5に底面図で示すように、ロアスティフナ40の下面側には車両前後方向に延びると共に、車幅方向に並ぶ複数の前後リブ44を一体形成すると共に、上述のV字溝43と上下方向で一致するロアスティフナ40下面側には中央部40Cから左右の側部40S,40Sの車幅方向端部まで車幅方向に延びる横リブ45を一体形成している。
【0035】
さらに、図5に示すように、弱部としてのV字溝43よりも前方には、該V字溝43より前方に離間して、車幅方向に延びる補強部である傾斜リブ46…が延設形成されている。
上述の傾斜リブ46は左側の側部40Sの左端近傍から右側の側部40Sの右端近傍までの車幅方向の範囲内において形成されており、該傾斜リブ46は、隣り合う前後リブ44を連結し、上述のV字溝43の前方において該V字溝43に対し車両前後方向に傾斜して形成されており、かつ、V字溝43に対して前方に凸に湾曲、または逆V字状のアーチ形状に形成されており、複数のアーチ状部が左右に連続して、V字溝43の前方全域に車幅方向にジグザグ形状に延設されたものである。
【0036】
上述の傾斜リブ46は前方頂部46Aと後方頂部46Bとを有するように形成されており、後方頂部46Bの周辺は、前方頂部46Aの周辺に対して、前後リブ44の配置数を相対的に多くして補強されていて、これにより、車幅方向での前後剛性を平均化すると共に、軽量高剛性化を図るように構成している。
また、図5に示すように、前方頂部46Aの直後部には、箱形のアンダカバー取付け部47を設けると共に、この箱形のアンダカバー取付け部47のコーナ部2辺を切欠いて脆弱化するように水抜き孔48を形成し、ロアスティフナ40の剛性、生産性、機能性を確保するように構成している。
【0037】
図5に示すように、車幅方向左端のアンダカバー取付け部47と、これに隣設するアンダカバー取付け部47との間に略対応して、上記横リブ45の後部には、該横リブ45と略平行に延びる追加横リブ49を設けている。同様に、車幅方向右端のアンダカバー取付け部47と、これに隣設するアンダカバー取付け部47との間に略対応して、上記横リブ45の後部にも、該横リブ45と略平行に延びる追加横リブ49を設けて、ロアスティフナ40の強度を調整すべく構成している。
つまり、合計4つのアンダカバー取付け部47…のうち、車幅方向中央側に位置するアンダカバー取付け部47,47間と対応する位置には、上記追加横リブ49を設けないように構成している。
【0038】
図5に示すジグザグ状の傾斜リブ46により、ロアスティフナ40は前後方向の剛性が高くなり、これにより特許文献1に開示された構造に対して、横リブの数量を低減し、ロアスティフナ40のクラッシュ時における変形底付きを遅らせるように構成している。
【0039】
また図2に示すように、合計4つのアンダカバー取付け部47…のうち、車幅方向中央側に位置するアンダカバー取付け部47,47間と対応するV字溝43の上面側には、車幅方向に間隔を隔てて複数の上面側リブ50…を一体形成している。
つまり、ロアスティフナ40の車幅方向中央側は、車両デザインの関係上、クラッシュ時に変形残り代が大きいので、上面側にリブ50を設けて、剛性を高め、軽量高剛性化を図りつつ、通常時(非衝突時)の上下振動を防止すべく構成したものである。
さらに、図5に示すように、サブクラッシュカン20の前端と、ロアスティフナ40における延長端部40Eの後片40fとの間には隙間Gが設けられており、組付け性と、走行時の両者40E,20の干渉防止との両立を図るように構成している。
【0040】
図12の(a)はフルラップ軽衝突(中央衝突)時のロアスティフナ40の車幅方向中央部位の変形状態を示す側面図、図12の(b)はオフセット軽衝突(側部衝突)時のロアスティフナ40の車幅方向側部の変形状態を示す側面図である。
通常時、ロアスティフナ40前端は図7図11に示すように、バンパレインフォースメント5よりも車両前方に位置しており、車両デザインの関係上、バンパレインフォースメント5はその車幅方向中央が車幅方向両サイドと比較して前方へ湾曲状に突出している。このため、軽衝突時におけるロアスティフナ40の変形後の前後長は、ロアスティフナ中央部に対し、ロアスティフナ側部の方が短くなり、伝達荷重が高まりやすいのが一般的である。
【0041】
図12の(a)で示す左右のメインクラッシュカン4,4に均等に荷重が分散されるフルラップ軽衝突時においては、折れ起点となる弱部としてのV字溝43を起点としてロアスティフナ40を側面視略V字状にコンパクトに折り曲げ、図12の(b)で示す衝突側のメインクラッシュカン4に荷重が集中するオフセット軽衝突時においては、上述のV字溝43に加えて水抜き孔48による脆弱部でロアスティフナ40の剛性を低下させることで、より一層コンパクトにロアスティフナ40を折り曲げるように構成したものである。
なお、図8図9図10において、51はアッパガーニッシュ26およびグリル27と、シュラウドサポート21のシュラウドアッパ21Uとを連結するシュラウドアッパパネルである。また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示す。
【0042】
このように上記実施例の自動車の脚払い構造は、バンパ部材(バンパレインフォースメント5参照)よりも下方位置で前方に延設されたロアスティフナ40を備えた自動車の脚払い構造であって、上記ロアスティフナ40がバンパ部材(バンパレインフォースメント5)よりも後方の支持部材(シュラウドサポート21参照)に支持され、該ロアスティフナ40には、軽衝突時に前後方向の折れ起点となる弱部(V字溝43参照)が車幅方向に延設され、該弱部(V字溝43参照)よりも前方に、車幅方向に延びる補強部(傾斜リブ46参照)が延設形成されているものである(図1図5参照)。
【0043】
この構成によれば、軽衝突時には上記弱部(V字溝43参照)によってロアスティフナ40を確実に折れ変形(図12参照)させることができ、このためシュラウドサポート21等の支持部材のダメージ低減を図ることができる。
また、歩行者との接触衝突時には、上記補強部(傾斜リブ46参照)が歩行者脚払い時の荷重を弱部(V字溝43参照)の車幅方向に広い範囲で分散することができ、弱部(V字溝43)の折れを抑制して脚払い反力の低下を防止することができる。
要するに、脚払い時には、脚払い反力の低下を防止し、軽衝突時には支持部材(シュラウドサポート21参照)のダメージ低減を図ることができる。
また、上記補強部(傾斜リブ46参照)は、上記弱部(V字溝43参照)よりも前方に離間しているものである(図1図5参照)。
【0044】
この構成によれば、次の効果がある。
すなわち、補強部が弱部から離間せず、補強部が弱部に接していると、剛性や断面形状が急激に変化して、応力が集中して当該弱部が折れやすくなるが、補強部(傾斜リブ46)を弱部(V字溝43)から離間させたので、応力の集中を防止することができ、脚払い反力確保のための補強部(傾斜リブ46)の剛性をより一層高めることができると共に、支持部材(シュラウドサポート21)ダメージ低減のための弱部(V字溝43)の剛性をより一層低下させることができる。
さらに、上記ロアスティフナ40は、車幅方向に並ぶ複数の前後リブ44を有すると共に、上記補強部(傾斜リブ46)は、隣り合う前後リブ44,44を連結し、上記弱部(V字溝43)に対し車両前後方向に傾斜して形成された傾斜リブ46で構成されたものである(図5参照)。
【0045】
この構成によれば、上述の斜め方向に延びる傾斜リブ46で、荷重を車幅方向に効果的に分散することができる。
さらにまた、上記傾斜リブ46は弱部(V字溝43)に対して前方に凸状に湾曲、または逆V字状のアーチ形状に形成されたものである(図5参照)。
【0046】
この構成によれば、アーチ形状の傾斜リブ46により効果的に荷重を分散することができる。
加えて、上記傾斜リブ46は、複数のアーチ状部が連続して、弱部(V字溝43参照)の前方全域に車幅方向にジグザグ形状に延設されたものである(図5参照)。
【0047】
この構成によれば、適切な強度を確保し得る角度で、弱部(V字溝43)の前方全域にアーチ形状を形成することができる。また傾斜リブ46が弱部(V字溝43)の前方全域に車幅方向にジグザグ形状に延びるので、脚払い荷重を、V字溝43の脚衝突部位に集中しないように車幅方向に分散することができ、折れを小さくして脚払い反力の低下を防止することができる。
また、上記弱部(V字溝43)は、上記ロアスティフナ40の上面に形成された溝部で構成され、上記ロアスティフナ40の下面側に複数の前後リブ44が形成されたものである(図1図5参照)。
【0048】
この構成によれば、上述の複数の前後リブ44はロアスティフナ40の下面側に形成されており、ロアスティフナ40の上面側には複数の前後リブ44が存在しないので、該ロアスティフナ40上面への汚れの堆積を抑制しつつ、軽衝突時にはロアスティフナ40上面の溝部(V字溝43)により、車幅方向の何れの部位においても、当該ロアスティフナ40を円滑に折れ変形(図12参照)させることができる。
【0049】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のバンパ部材は、実施例のバンパレインフォースメント5に対応し、
以下同様に、
支持部材は、シュラウドサポート21に対応し、
弱部は、V字溝43に対応し、
補強部は、傾斜リブ46に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
上記実施例においては、支持部材としてのシュラウドサポート21を、ブラケット24を介してバンパレインフォースメント5に連結したが、この構成に限定されるものではなく、シュラウドサポート21をフロントサイドフレーム1等の車体側部材に連結してもよいことは勿論である。
また、支持部材はシュラウドサポートに限らず、左右フロントサイドフレーム1の前部間に架け渡されたクロスメンバであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本発明は、バンパ部材よりも下方位置で前方に延設されたロアスティフナ(脚払い部材)を備えた自動車の脚払い構造について有用である。
【符号の説明】
【0051】
5…バンパレインフォースメント(バンパ部材)
21…シュラウドサポート(支持部材)
40…ロアスティフナ
43…V字溝(弱部)
44…前後リブ
45…横リブ
46…傾斜リブ(補強部)
46A…前方頂部
46B…後方頂部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12