特許第5966926号(P5966926)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966926
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】撮像レンズユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20060101AFI20160728BHJP
   G02B 3/00 20060101ALN20160728BHJP
【FI】
   G02B7/02 B
   G02B7/02 Z
   !G02B3/00
【請求項の数】6
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-534996(P2012-534996)
(86)(22)【出願日】2011年9月9日
(86)【国際出願番号】JP2011070630
(87)【国際公開番号】WO2012039303
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2014年4月25日
(31)【優先権主張番号】特願2010-223142(P2010-223142)
(32)【優先日】2010年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-212901(P2010-212901)
(32)【優先日】2010年9月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】森 基
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 岳美
【審査官】 小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−155577(JP,A)
【文献】 特開2004−066773(JP,A)
【文献】 特開2004−098547(JP,A)
【文献】 実開昭59−118517(JP,U)
【文献】 特公昭50−014126(JP,B1)
【文献】 特開2009−300626(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3019804(JP,U)
【文献】 特開平01−317734(JP,A)
【文献】 特開昭63−057213(JP,A)
【文献】 特開2006−341412(JP,A)
【文献】 特開2008−221565(JP,A)
【文献】 特開2009−242456(JP,A)
【文献】 特開2009−053530(JP,A)
【文献】 特開2007−313767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
B29C 33/12
B29C 45/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光学面が形成された第1表面及び該第1表面とは反対側に第2光学面が形成された第2表面を有するレンズと、前記第1及び第2光学面を露出させた状態で前記レンズを内部に保持するための一体成形されたホルダー部材と、を備える撮像レンズユニットの製造方法であって、
前記ホルダー部材を成形するための成形空間を有する金型内に、前記レンズの第1表面を押圧するための押圧部材と、前記レンズの第2表面に当接するように前記金型内に設けられた保持部材と、が設けられ、
前記保持部材を前記レンズの第2表面の屈曲部に当接させることにより、前記金型に対する前記レンズの位置決めを行い、
前記レンズを前記金型に対して固定する際に、前記保持部材と、前記押圧部材との少なくとも一方は、前記第1又は第2表面の少なくとも一部を被覆して弾性変形する表面保護層を介して支持し、
前記レンズが前記金型に対して位置決めされかつ固定された状態で、前記金型の成形空間内に樹脂を充填して固化させることにより、前記レンズを内部に保持した前記ホルダー部材を成形する、撮像レンズユニットの製造方法。
【請求項2】
前記レンズは、複数のレンズ要素を一体化した組レンズである、請求項1に記載の撮像レンズユニットの製造方法。
【請求項3】
前記組レンズは、複数のレンズ要素と前記複数のレンズ要素間に配置される絞りとを一体化したものである、請求項に記載の撮像レンズユニットの製造方法。
【請求項4】
前記レンズは、四角柱状の側面を有する、請求項1からまでのいずれか一項に記載の撮像レンズユニットの製造方法。
【請求項5】
前記ホルダー部材と前記レンズとは、リフロー耐熱材で形成される、請求項1からまでのいずれか一項に記載の撮像レンズユニットの製造方法。
【請求項6】
前記レンズを位置決めした状態で前記金型側から前記レンズを吸引する、請求項1からまでのいずれか一項に記載の撮像レンズユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホルダー内にレンズを組み込んだ撮像レンズユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等に組み込まれる撮像レンズユニットは、結像用の光学レンズの周囲をホルダーによって保持する構造を有している。光学レンズのホルダーへの組み付けは、非常に位置決め精度が厳しく、画像認識技術を取り入れた自動組立システムで行われるのが通常である。しかし、かかるシステムは、非常に高価であるとともに、ホルダーへのレンズの挿入工程やホルダーへのレンズの接着工程等に工程を分けて製造ラインが構成されるため非常に広い敷地を必要とし、レンズの種類変更ごとに行われる設備の交換が非常に大掛かりになり、多くの工数が必要となる。
【0003】
このような不具合を解決するための製造方法として、光学ガラスレンズと絞りとを予め金型内で位置決めしてセットしたのち、光学ガラスレンズ等の周囲に射出成形にてホルダーを形成することで、撮像レンズユニットを一括して組み立てる技術が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
上記特許文献1の製造方法では、レンズや絞りの側面に沿うように金型内に形成された位置決め部材に沿って、レンズや絞りをセットすることで金型に対して位置決めが行われる。そのため、ホルダーとレンズとの間の位置決め作業が不要となり、また、部品点数を少なくすることもできる。しかし、成形品の、光学レンズ等の側面に対向する部位に、成形前に光学レンズや絞りに当接して位置決めした際の位置決め形状が深い窪みとして残ってしまうため、その箇所に不要光が入り込みゴーストやフレアー等の光学的な不具合が発生する可能性がある。また、撮像装置等の製品に装着することを想定した場合に要求される外観仕様を満たせなくなるおそれがある。また、携帯電話等の携帯機器に組み込まれる撮像レンズユニットとして求められる小型の撮像レンズユニットを作製することができない。また、このような位置決め形状のために離型時の変形が生じて、寸法精度を悪化させる原因となる。さらに、上記製造方法では、光学ガラスレンズ等を金型で挟み込むことによって位置決めしつつ固定するので、かかる固定に際して光学ガラスレンズが破損するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−300626号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ホルダーとレンズとの位置決め作業が不要であるとともに、少ない部品でホルダー部材を形成することができ、撮像レンズユニットを小型化でき、位置決め形状に起因するゴーストやフレアーの発生、外観仕様上の問題、寸法精度の悪化等を回避することができる撮像レンズユニットの製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、金型内にレンズをセットする際にレンズが破損することを防止できる撮像レンズユニットの製造方法を提供することを目的とする。
【0016】
上記課題を解決するため、本発明に係る撮像レンズユニットの製造方法は、第1光学面が形成された第1表面及び該第1表面とは反対側に第2光学面が形成された第2表面を有するレンズと、第1及び第2光学面を露出させた状態でレンズを内部に保持するための一体成形されたホルダー部材と、を備える撮像レンズユニットの製造方法であって、ホルダー部材を成形するための成形空間を有する金型内に、レンズの第1表面を押圧するための押圧部材とレンズの第2表面に当接するように金型内に設けられた保持部材と、が設けられ、保持部材をレンズの第2表面の屈曲部に当接させることにより、金型に対するレンズの位置決めを行い、レンズを金型に対して固定する際に、保持部材と、押圧部材との少なくとも一方は、第1又は第2表面の少なくとも一部を被覆して弾性変形する表面保護層を介して支持し、レンズが金型に対して位置決めされかつ固定された状態で、金型の成形空間内に樹脂を充填して固化させることにより、レンズを内部に保持したホルダー部材を成形する。
【0017】
記製造方法によれば、レンズの第2表面に金型の保持部材を当接させて位置決めを行うので、レンズ側面においてホルダー部材の成形を妨げずホルダー部材の形状に影響を与えない状態で、ホルダー部材を成形することができる。これにより、ホルダー部材に大きな位置決め形状が残って、ゴーストやフレアー等の光学的な不具合が発生したり、求められる外観仕様を満たせなくなったり、寸法精度が劣化することを回避できる。また、ホルダー部材がレンズを固定した状態で一体成形されるので、ホルダー部材の成形と固定とを一括して確実に行うことができ、ホルダー組み立てのための部品点数の増加を回避でき、複数の部品を接合してホルダー部材を構成する必要がなくなる。
【0018】
さらに、上記製造方法によれば、レンズを金型に対して固定する際に、レンズと金型とを弾性的な付勢力によって当接させるので、レンズに与える衝撃を抑えて、レンズの破損、変形等をより低減することができる。
【0030】
本発明の具体的な側面では、上記第1及び第2の製造方法において、レンズが、複数のレンズ要素を一体化した組レンズである。この場合、ホルダー部材内にレンズを挿入して位置決めする工程が簡単になる。
【0031】
本発明の別の側面では、組レンズが、複数のレンズ要素と複数のレンズ要素間に配置される絞りとを一体化したものである。この場合、ホルダー部材内にレンズを挿入して位置決めする工程が簡単になる。
【0032】
本発明のさらに別の側面では、レンズが、四角柱状の側面を有する。この場合、多数のレンズを一括形成したウェハー状の母材から個々のレンズ要素を簡易に切り出して利用することができる。
【0034】
本発明のさらに別の側面では、ホルダー部材とレンズとが、リフロー耐熱材で形成される。この場合、耐熱性を有する撮像レンズユニットをリフロー工程で処理することが可能になる。
【0035】
本発明のさらに別の側面では、レンズを位置決めした状態で金型側からレンズを吸引することでレンズの移動を防止する。この場合、金型内に設置されたレンズを成形中に安定して固定することができ、成形の精度をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】第1実施形態に係る撮像レンズユニットの構造を示す側方断面図である。
図2】(A)は、撮像レンズユニットの斜視図であり、(B)は、レンズの斜視図である。
図3図1に示す撮像レンズユニットの製造手順を説明するフロー図である。
図4】レンズを保持するインサート治具の機能等を説明するための断面図である。
図5】インサート治具による固定金型へのレンズのセットを説明する断面図である。
図6】インサート治具の除去後を説明する断面図である。
図7】(A)は、製造装置におけるキャビティの形成を説明する断面図であり、(B)は、ホルダー部材の成形を説明する断面図である。
図8】(A)は、製造装置における型開きを説明する断面図であり、(B)は、撮像レンズユニットの取り出しを説明する断面図である。
図9】(A)、(B)は、第2実施形態の撮像レンズユニット及びその製造方法を説明する断面図である。
図10】(A)、(B)は、第3実施形態の撮像レンズユニット及びその製造方法を説明する断面図である。
図11】(A)、(B)は、第4実施形態の撮像レンズユニット及びその製造方法を説明する断面図である。
図12】(A)、(B)は、第5実施形態の撮像レンズユニット及びその製造方法を説明する断面図である。
図13】(A)、(B)、(C)は、第5実施形態の撮像レンズユニット及びその製造方法の変形例を説明する部分断面図である。
図14】第6実施形態の撮像レンズユニット及びその製造方法を説明する断面図である。
図15】第7実施形態のレンズを保持するインサート治具の機能等を説明するための断面図である。
図16】第7実施形態のインサート治具による固定金型へのレンズのセットを説明する断面図である。
図17】第7実施形態のインサート治具の除去後を説明する断面図である。
図18】(A)は、第7実施形態の製造装置におけるキャビティの形成を説明する断面図であり、(B)は、ホルダー部材の成形を説明する断面図である。
図19】(A)は、第7実施形態の製造装置における型開きを説明する断面図であり、(B)は、撮像レンズユニットの取り出しを説明する断面図である。
図20】(A)、(B)は、第8実施形態の撮像レンズユニットの製造方法を説明する断面図である。
図21】(A)、(B)は、第9実施形態の撮像レンズユニットの製造方法を説明する断面図である。
図22】(A)、(B)は、第10実施形態の撮像レンズユニットの製造方法を説明する断面図である。
図23】(A)、(B)は、第11実施形態の撮像レンズユニットの製造方法を説明する断面図である。
図24】(A)、(B)は、第12実施形態の撮像レンズユニットの製造方法を説明する断面図である。
図25】(A)、(B)は、第13実施形態の撮像レンズユニットの製造方法を説明する断面図である。
図26】第14実施形態の撮像レンズユニット及びその製造方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態に係る撮像レンズユニットの構造やその製造方法について説明する。
【0045】
図1図2(A)、2(B)に示すように、撮像レンズユニット100は、積層型の組レンズであるレンズ10と、レンズ10を収納する箱状の部材であるホルダー部材40とを備える。
【0046】
ここで、レンズ10は、例えば多数のレンズを配列したレンズウェハー(ウェハー状母材)からダイシングによって切り出されたものであり、平面視方形の輪郭を有しており、四角柱状の側面を有している。レンズ10は、物体側の第1レンズ要素11と、像側の第2レンズ要素12と、これらの間に挟まれた絞り15とを有する。
【0047】
レンズ10のうち第1レンズ要素11は、光軸OA周辺の中央部に設けられた円形輪郭のレンズ本体11aと、このレンズ本体11aの周辺に延在する方形輪郭の枠部11bとを有する。レンズ本体11aは、例えば非球面型のレンズ部であり、一対の光学面11d,11eを有している。ここで、上側の第1光学面11dと後述する第1枠面10aとは、レンズ10における第1表面となっている。第1レンズ要素11は、例えばリフロー耐熱性を有する硬化性樹脂で形成されるが、全体を樹脂で形成する必要はなく、ガラス板を樹脂成形体で挟んだ構造とすることもできる。さらに、第1レンズ要素11の全体をガラスで形成することもできる。なお、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂等が挙げられる。
【0048】
第2レンズ要素12も、光軸OA周辺の中央部に設けられる円形輪郭のレンズ本体12aと、このレンズ本体12aの周辺に延在する方形輪郭の枠部12bとを有する。レンズ本体12aは、例えば非球面型のレンズ部であり、一対の光学面12d,12eを有している。ここで、下側の第2光学面12eと後述する第2枠面10bとは、レンズ10における第2表面となっている。第2レンズ要素12は、例えば硬化性樹脂で形成されるが、ガラス板を樹脂成形体で挟んだ構造とすることもでき、全体をガラスで形成することもできる。なお、第2レンズ要素12の枠部12bの外周側は、第1レンズ要素11の枠部11bの外周側に対して、例えば接着剤によって接着されて固定されることによって一体化されている。そのため、両レンズ要素11,12を含むレンズ10は、単レンズのように取り扱い可能になっている。レンズ10は、第1レンズ要素11と第2レンズ要素12との間にスペーサーを挟んで接着されたものであってもよい。なお、レンズ10は、ガラス基板の一方の面に樹脂製の第1レンズ要素11が形成され、このガラス基板の他方の面に樹脂製の第2レンズ要素12が形成された構成を持つレンズであってもよい。
【0049】
絞り15は、中央に開口OP3を有する輪帯状の部材である。絞り15は、第1レンズ要素11の枠部11bの内周側と、第2レンズ要素12の枠部12bの内周側との間に挟まれて固定されている。絞り15は、例えば遮光性の金属板や樹脂フィルム、黒色等の不透明なフォトレジスト材料で形成されている。絞り15もリフロー耐熱性を有する材料で形成されていることが望ましい。
【0050】
レンズ10を収納するホルダー部材40は、リフロー耐熱性を有する熱可塑性樹脂(例えばLCP(Liquid Crystal Polymer)、PPA(Polyphthalamide)等)で形成されている。ホルダー部材40は、方形板状の輪郭を有する上部41と、方形板状の輪郭を有する底部42と、方形筒状の輪郭を有する側壁部43とを備える。ホルダー部材40の内部には、レンズ10を嵌め込んで保持するための四角柱状の収納空間HSが形成されている。ホルダー部材40は、後に詳述するが、樹脂の射出成形によって一体成形され、一体的な単一部材として形成される。
【0051】
なお、レンズ10及びホルダー部材40がリフロー耐熱性を有する材料で形成されることにより、耐熱性を有する撮像レンズユニット100をリフロー工程で処理することが可能となる。
【0052】
ホルダー部材40のうち上部41は、収納空間HS内に保持されたレンズ10の上側の第1枠面10aに対向してレンズ10の光軸OAに沿った上方向への移動を制限している。底部42は、レンズ10の下側の第2枠面10bに対向してレンズ10の光軸OAに沿った下方向への移動を制限している。側壁部43は、レンズ10の4つの側面10cに対向してレンズ10の光軸OAに垂直な横方向に関する移動を制限している。このように、単一の部材であるホルダー部材40が、その上部41、底部42、及び、側壁部43でレンズ10に密着しているため、ホルダー部材40に対するレンズ10の移動を確実に防止している。
【0053】
上部41の中央には、円形の開口OP1が形成されている。この開口OP1を囲む環状の縁部40iは、レンズ10の光学面11dの周囲を遮蔽するように配置されることにより、一種の絞りとして機能している。また、底部42の中央には、円形の開口OP2が形成されている。この開口OP2を囲む環状の縁部40jは、レンズ10の光学面12eの周囲を遮蔽するように配置されることにより、一種の絞りとして機能している。つまり、開口OP1を囲む縁部40i及び開口OP2を囲む縁部40jは、レンズ10の光軸OAに垂直な方向に関するレンズの移動を制限する部材としての機能と、絞りとしての機能とを兼ねている。
【0054】
なお、レンズ10の表面のうち、最終的に露出する光学面11d,12e、及び、ホルダー部材40の成形時に金型が接する光学面11d,12e近傍の領域を除いた表面は、ホルダー部材40の射出成形に際して、固化前の液体状の樹脂に接することになる。そのため、樹脂が固化することによって、例えばレンズ10の第1枠面10aにホルダー部材40の上部41の内面40eが付着した状態となっていたり、レンズ10の第2枠面10bに底部42の内面40fが付着した状態となっていたりする。特に、レンズ10の表面が樹脂製である場合、例えばレンズ10の第1枠面10aとホルダー部材40の上部41の内面40eとは、ホルダー部材40の射出成形の際の熱によってレンズ10の第1枠面10aの表面が軟化し互いに溶着によって強固に接合され、接着剤を用いることなく直接接合された状態とし得る。同様に、レンズ10の表面が樹脂製である場合は、レンズ10の第2枠面10bとホルダー部材40の底部42の内面40fと、及び、レンズ10の側面10cとホルダー部材40の側壁部43の内面40gとが、溶着によって接合され接着剤を用いることなく直接接合された状態とし得る。レンズ10がホルダー部材40と溶着しにくい樹脂材料の場合やレンズ10がガラス製の場合は、樹脂の射出成形の過程でレンズと樹脂とが溶着することはないが、液状の樹脂がレンズ10の枠面10a,10bに密に接した状態で固化するので、ホルダー部材40がレンズ10に付着した状態となり、ホルダー部材40をレンズ10に密着させることができる。
【0055】
このような構成を備える撮像レンズユニット100は、ホルダー部材40がレンズ周囲に隙間なく密着しているため、レンズ側面からの光の入射に起因するゴーストやフレアーの発生を防止することができる。また、レンズ側面に不要な隙間がないため、撮像レンズユニット100が小型化され、撮像装置等の最終製品に装着することを想定した場合に要求される外観仕様を満たしやすくなる。離型時の変形に起因する寸法精度の悪化も抑制される。
【0056】
以下、図3等に示す製造手順を参照して、図1に示す撮像レンズユニット100の製造方法について説明する。
【0057】
まず、図4に示すように、固定側の第1金型51と可動側の第2金型52とを備える金型装置50を適宜動作させて第2金型52を退避状態にすることで両金型51,52を開状態にするとともに、第1金型51に設けた第1成形部61の上方位置にレンズ10を保持したインサート治具70を移動させる(図3のステップS11)。インサート治具70の移動先である第1成形部61は、第1金型51のパーティング面51aから突起するように設けられている。なお、この第1成形部61に対向して、第2金型52側にはパーティング面52aから窪むように第2成形部62が設けられている。両金型51,52の少なくとも一方には図示しない樹脂注入口が設けられている。また、金型51,52を加熱するための加熱機構や金型51,52を背後から押圧するためのプラテン等も設けられているが、理解を容易にするため図示を省略している。
【0058】
インサート治具70は、環状の部材であり、中央の貫通孔71内にレンズ10を一時的に保持している。インサート治具70は、不図示の制御駆動装置によって遠隔的に駆動されレンズ10を搬送する。また、インサート治具70は、レンズ10の側面10cに向けて進退する複数の押圧部材又は係止部材を有する流体駆動型のチャック部材72を内蔵している。インサート治具70は、チャック部材72によってレンズ10の側面10cを複数の方向から押圧する。これにより、図示のセット状態で貫通孔71の中心にレンズ10を支持することができ、後述するリリース状態で貫通孔71内のレンズ10を光軸OA方向に可動な状態とすることができる。なお、インサート治具70には、上記のようなチャック部材72に代えてエアーの流れでレンズ10を保持する機構を採用することもできる。また、インサート治具70の下部には、第1金型51と嵌合するためのテーパーを有する環状の嵌合面73aが設けられている。
【0059】
次に、図5に示すように、第1金型51にインサート治具70を降下させてインサート治具70の下部内側の嵌合面73aを、第1成形部61上にテーパーをつけて立設された嵌合部材61gの嵌合面61fと嵌合させる。これにより、インサート治具70に保持されたレンズ10の光軸OAと、第1金型51の第1成形部61の軸AXとを略一致させることができる。この状態でインサート治具70をリリース状態に切り替えると、チャック部材72による把持が解除されたレンズ10は、下方に移動して第1成形部61の凹部RE内に挿入されるとともに、凹部RE内でアライメントされた状態で保持される(設置工程;図3のステップS12)。
【0060】
この際、レンズ10は、第1成形部61の底部に形成された保持部材58上に載置されている。保持部材58は、円筒状の突起61dからなる。突起61dは、レンズ10を下方から支持するとともに、横方向に位置決めする。つまり、保持部材58は、レンズ10を光軸OAに垂直な方向に関して精密に位置決めするための位置決め部材でもある。ここで、レンズ本体12aの外周面と枠部12bとの間には、光学面12eを囲むように屈曲部としての斜面12fが設けられており、保持部材58の突起61dの上端側には、枠部12bに対向する当接平面AB2と、斜面12fに対向する当接斜面AB1とが設けられている。突起61dの当接斜面AB1は、レンズ10を受け取る際に、第2レンズ要素12の斜面12fと接することで、第1成形部61の軸AXとレンズ10の光軸OAとを精密に一致させる役割を有する(拡大図参照)。なお、保持部材58の突起61dは、後述する成形に際して、レンズ10の光学面12eに隣接する空間S1への流動樹脂MPの流れ込みを阻止する役割も有する(図7参照)。
【0061】
なお、第1金型51に対するレンズ10の位置決めは、第2レンズ要素12の光学面12eであるレンズ本体12aの面内であって有効領域よりも外の領域の傾斜部(屈曲部)に対向する当接面を保持部材58に形成し、この当接面をレンズ10の傾斜部に当接させることによって実現してもよい。この場合は、第2レンズ要素12の光学面12eが形成された表面に位置決めのための斜面等の屈曲部を別に設けなくても済む。いずれにしても、レンズ10の光学面12eに形成された屈曲部を利用して位置決めを行うことにより、レンズ10の側面又は斜面12fでの位置決めを不要とすることができる。従って、レンズ10の側面でホルダー部材40の成形が妨げられずにホルダー形状に影響を与えない状態でホルダー部材40を形成することができる。また、レンズ10の光学面12eの近くにまでホルダー部材40を存在させることによって、ホルダー部材40の遮光性を高め、絞りのように機能させることができるようになる。
【0062】
第1金型51には、第1成形部61の底面中央に連通する排気管51dが形成されている。排気管51dは、金型装置50に付随する駆動機構によって適当なタイミングで外部に排気可能になっており、光学面12eに隣接する空間S1を減圧することで、保持部材58の突起61d上に載置されたレンズ10を吸引して突起61d上に所望の吸着力で固定することができる。なお、保持部材58の突起61dに対するレンズ10の固定を解除したい場合には、空間S1の減圧を停止すればよい。
【0063】
この後、図6に示すように、インサート治具70を第1金型51から取り去る(図3のステップS13)。
【0064】
次に、図7(A)に示すように、第2金型52を移動させて型締めを行うことによって、第1金型51と第2金型52との間にホルダー部材40用の型空間であるキャビティCAを形成する(図3のステップS14)。この際、第1金型51に設けた第1成形部61と、第2金型52に設けた第2成形部62とが嵌合する。ここで、第1成形部61には、図1に示すホルダー部材40の裏面40bと外周側面40cとをそれぞれ成形するための転写面61b,61cが形成されている。また、第2金型52側の第2成形部62には、ホルダー部材40の上面40a等を成形するための転写面62aが形成されている。また、第2成形部62には、円筒状の突起62dを有する固定部材56が形成されている。突起62dは、レンズ10の光学面11dに隣接する空間S2への流動樹脂MPの流れ込みを阻止する。また、この突起62dは、型締めによって成形空間としてのキャビティCAを形成した際に、レンズ10のうち枠部11bの最内周部分に接してレンズ10を下方に優しく押すことで、レンズ10をキャビティCA内で安定させてガタツキを防止している。つまり、固定部材56は、押圧部材でもある。
【0065】
なお、第2成形部62の内周には、微小なテーパーを設けた嵌合面62fが形成されているので(図5参照)、第2成形部62を第1成形部61に嵌合させるだけで、第1金型51の嵌合部材61gの嵌合面61fと第2金型52の嵌合面62fとが係合する。これにより、両成形部61,62間で横方向の精密なアライメントが達成される。また、両成形部61,62を嵌合させたとき、第1成形部61の嵌合部材61gの上面61pと第2成形部62の外周底面62pとが近接又は密着して配置される。これらの面61p,62pは、ホルダー部材40の成形に関してパーティングラインのように機能する。以上により、第1成形部61延いてはレンズ10に対して第2成形部62を精密にアライメントすることができる。
【0066】
次に、図7(B)に示すように、成形空間であるキャビティCA中にホルダー部材40の材料となるべき流動樹脂MPを充填することにより、第2レンズ要素12の枠部12bの下面、レンズ10の側面10c、第1レンズ要素11の枠部11bの上面をそれぞれ樹脂で覆う。そして、温度調節によって固化させることで、ホルダー部材40を成形する(成形工程;図3のステップS15)。これにより、図1に示したような、ホルダー部材40の開口OP1,OP2間にレンズ10を支持した状態でホルダー部材40内にレンズ10を収納して固定した撮像レンズユニット100が完成する。この際、第1及び第2成形部61,62に設けた保持部材58及び固定部材56は、空間S1,S2に流動樹脂MPが流れ込むことを防止することで、ホルダー部材40に開口OP1,OP2を形成する役割を有する。
【0067】
なお、成形工程においてキャビティCA内に流動樹脂MPを充填した段階で、排気管51dからの排気を中止し空間S1の減圧を終了する。特に支障がなければ、金型の型締め後にすぐ排気を中止してもよいし、樹脂が固化するまで排気を継続してもよい。
【0068】
次に、図8(A)に示すように、第2金型52を第1金型51から離間させる型開きによって第2金型52を退避状態にし(図3のステップS16)、図8(B)に示すように、第1金型51に設けた不図示のエジェクターピン等を利用して撮像レンズユニット100を突き出して離型することにより、第1金型51から完成品としての撮像レンズユニット100を取り出すことができる(図3のステップS17)。
【0069】
上記第1実施形態の撮像レンズユニット100によれば、設置工程で、金型51によって開口OP2に対応する位置に設けた保持部材58によってレンズ10を位置決めする。そのため、レンズ10の側面に対向する部位でホルダー部材40の成形を妨げられずレンズ10の側面全体を樹脂で覆うことができ、レンズ10を金型51,52内に確実に固定することができる。これにより、ホルダー部材40に大きな位置決め形状が残って寸法精度が劣化することを回避できる。また、レンズ10を固定した状態でホルダー部材40が一体成形されるので、ホルダー部材40の成形と固定とを一括して確実に行うことができ、ホルダー部材40の組み立てのための部品点数の増加を回避でき、複数の部品を接合してホルダー部材を構成する必要がなくなる。保持部材58によってレンズ10を位置決めすることができるので、画像認識装置を設置したり金型装置に位置決め機構を設けたりする必要がなくなり、撮像レンズユニット100の製造装置を簡易に高精度化することができる。
【0070】
なお、以上の説明では、第1成形部61と第2成形部62とのアライメントのために、それ自体に設けた嵌合面61f,62fを利用しているが、これら成形部61,62とは別に金型51,52上に設けたテーパーピン等によって同様のアライメントを行うことができる。
【0071】
また、以上の説明では、レンズ10が接合された一体型の組レンズであるものとした。この場合、レンズ10の金型への挿入と位置決めの工程が簡単になるが、第1レンズ要素11と第2レンズ要素12と絞り15とを別体とすることもできる。このように複数のレンズ要素と絞りとを別体にする場合は、予め、第1レンズ要素11、第2レンズ要素12、絞り15には、それぞれの間で互いに位置決めを実現するための凹凸等を設けておくとよい。そして、図3のステップS11〜S13を実行して第2レンズ要素12を金型51上に設置・位置決めした後、絞り15、次いで、第1レンズ要素11を積層し、上記凹凸等によって位置決めする。その後、図3のステップS14以降の工程を実行すればよい。
【0072】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等を説明する。なお、第2実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等は、第1実施形態の撮像レンズユニット100の製造方法等を一部変更したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様であるものとする。
【0073】
図9(A)に示すように、第1金型51において、第3成形部63の奥に設けた保持部材158は、円柱状の突起であり、当接面である端面161eがレンズ10の光学面12e(図1参照)と同一又は略同一の曲率を有しており、レンズ10の光学面12eに面状に接し得るように構成されている。これにより、保持部材158の端面161eとレンズ10の光学面12eとが面状に密着し、流動樹脂MPが光学面12eに漏れ出すことを防止でき、結果的に、ホルダー部材40に開口OP2を形成することができる。なお、保持部材158上に載置されたレンズ10を吸引することにより、保持部材158の端面161eとレンズ10の光学面12eとをより密着させることができる。また、光学面12eと保持部材158とを全面的に密着させることが難しい場合、少なくとも光学面12eの有効領域外の領域に面状に接触させるようにする。
【0074】
第2金型52において、第4成形部64の奥に設けた固定部材156は、円柱状の突起であり、当接面である端面162eがレンズ10の光学面11dと同一又は略同一の曲率を有しており、レンズ10の光学面11dに面状に接し得るように構成されている。これにより、型締めによってキャビティCAを形成した際に、固定部材156の端面162eとレンズ10の光学面11dとが密着し、流動樹脂MPが光学面11dに漏れ出すことを防止でき、結果的に、ホルダー部材40に開口OP1を形成することができる。
【0075】
図9(B)に示すように、流動樹脂MPを充填するとともに温度調節によって固化させることで、ホルダー部材40を成形する(成形工程;図3のステップS15)。これにより、ホルダー部材40の開口OP1,OP2間にレンズ10を支持した状態でホルダー部材40内にレンズ10を収納して固定した撮像レンズユニット100が完成する。
【0076】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等を説明する。なお、第3実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等は、第1実施形態の撮像レンズユニット100の製造方法等を一部変更したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様であるものとする。
【0077】
図10(A)に示すように、第1金型51において、第3成形部63の奥に設けた保持部材158は、円柱状の突起であり、当接面である端面161eがレンズ10の光学面12e(図1参照)と同一又は略同一の曲率を有しており、レンズ10の光学面11dに面状に接し得るように構成されている。これにより、保持部材158の端面161eとレンズ10の光学面12eとが密着し、流動樹脂MPが光学面12eに漏れ出すことを防止でき、結果的に、ホルダー部材40に開口OP2を形成することができる。なお、保持部材158上に載置されたレンズ10を吸引することにより、保持部材158の端面161eとレンズ10の光学面12eとがより密着する。
【0078】
第2金型52において、第2成形部62の奥に設けた固定部材56は、円筒状の突起であり、レンズ10の光学面11dに隣接する空間S2への流動樹脂MPの流れ込みを阻止する。これにより、ホルダー部材40に開口OP1を形成することができる。
【0079】
図10(B)に示すように、流動樹脂MPを充填するとともに温度調節によって固化させることで、ホルダー部材40を成形する(成形工程;図3のステップS15)。これにより、ホルダー部材40の開口OP1,OP2間にレンズ10を支持した状態でホルダー部材40内にレンズ10を収納して固定した撮像レンズユニット100が完成する。
【0080】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等を説明する。なお、第4実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等は、第1実施形態の撮像レンズユニット100の製造方法等を一部変更したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様であるものとする。
【0081】
図11(A)に示すように、レンズ410は、上側と下側にそれぞれ環状の絞り部材16,17が設けられている。具体的には、絞り部材16は、光学面11dの外縁付近であり、第1枠面10aの一部に設けられている。また、絞り部材17は、第2枠面10b全体に設けられている。絞り部材16,17は、例えば樹脂製であり、光学面11d,12eが露出するような開口を有する輪帯状の部材である。絞り部材16,17は、レンズ410の第1及び第2枠面10a,10bの形状に沿った状態で、予めレンズ410にアライメントして接着されている。絞り部材16,17は、わずかな弾性を有しており、型締めの際にレンズ410と保持部材258、固定部材256とを接触させることに伴うレンズ410の損傷を防ぐことができる。
【0082】
本実施形態において、第1金型51の第5成形部65、及び、第2金型52の第2成形部62は、それぞれ、第1実施形態の第1成形部61、及び、第2成形部62と同様の構成を持つものであるが、保持部材258、固定部材256は、型締めの際に絞り部材16,17に接触する位置にある。このうち第5成形部65の保持部材258は、絞り部材17の内周斜面と接することでレンズ410を位置決めしている(拡大図参照)。
【0083】
図11(B)に示すように、流動樹脂MPを充填するとともに温度調節によって固化させることで、ホルダー部材40を成形する(成形工程;図3のステップS15)。これにより、ホルダー部材40の開口OP1,OP2間にレンズ410を支持した状態でホルダー部材40内にレンズ410を収納して固定した撮像レンズユニット100が完成する。この撮像レンズユニット100は、レンズ410とホルダー部材40との間であり、かつホルダー部材40の開口OP1,OP2の内側に絞り部材16,17を有する構成となる。
【0084】
本実施形態においては、ホルダー部材40の開口の内側に絞り部材16,17を設けることにより、遮光性を高めることができる。また、絞り部材16,17が例えば樹脂製等の弾性を有する材料で形成されている場合、型締めの際にレンズ410と位置決め部材である保持部材258とを接触させることに伴うレンズ410の損傷を防ぐことができる。
【0085】
〔第5実施形態〕
以下、第5実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等を説明する。なお、第5実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等は、第1実施形態の撮像レンズユニット100の製造方法等を一部変更したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様であるものとする。
【0086】
図12(A)に示すように、レンズ510は、ガラス基板21が樹脂製の第1レンズ層22及び第2レンズ層23で挟まれた複合レンズである。ガラス基板21と第1レンズ層22との間には第1絞り24が、ガラス基板21と第2レンズ層23との間には第2絞り25が設けられている。絞り24,25は第2レンズ層23側の光学面12eに干渉せず、ホルダー部材40の開口OP1,OP2の縁に沿った形状を備えた開口を有する輪帯状の部材である。絞り24,25は、例えば金属膜や遮光性の樹脂膜で形成されている。遮光性の樹脂膜として、黒色ペイントや、黒色のフォトレジストを用いることができる。レンズ510は、例えばガラス基板21の両面に絞り24,25として金属膜や樹脂膜を成膜し、或いは貼り付けた後に、第1及び第2レンズ層22,23を成形することによって得られる。
【0087】
本実施形態において、第1金型51の第6成形部66、及び、第2金型52の第7成形部67は、それぞれ、第1実施形態の第1成形部61、及び、第2成形部62に対応しているが、保持部材及び固定部材の位置が異なっている。第6成形部66の保持部材358は、第2レンズ層23の枠部12bを支持し、第7成形部67の固定部材356は、第1レンズ層22の枠部11bに設けられた斜面と接することでレンズ510を位置決めしている。レンズ510の位置決めは、レンズ510を第1金型51の保持部材358上に載置した上で、第2金型52の第7成形部67を第1金型51の第6成形部66に嵌め合わせ、第2金型52の固定部材356を、第1レンズ層22の表面に形成された斜面に当接させ下方に押圧することで行われる。
【0088】
図12(B)に示すように、流動樹脂MPを充填するとともに温度調節によって固化させることで、ホルダー部材40を成形する(成形工程;図3のステップS15)。これにより、ホルダー部材40の開口OP1,OP2間にレンズ510を支持した状態でホルダー部材40内にレンズ510を収納して固定した撮像レンズユニット100が完成する。
【0089】
本実施形態に示すように、上側の金型52に設けられた固定部材356によってレンズ510の位置決めを行うこともできる。なお、本実施形態においては、第1レンズ層22の表面の光学面から離れた位置に形成された斜面を利用して位置決めを行っているが、これに限らず、種々の態様を採り得る。例えば、第1レンズ層22の表面の光学面から離れた位置に形成された、斜面及び垂直面(図13(A)、図13(B)参照)や、断面が円弧状のアール面(図13(C))を利用して位置決めを行うこともできる。前者の場合、第2金型52の位置決め部材として固定部材356を、第1レンズ層22の斜面及び垂直面に倣った2つの面を有するものとし、斜面及び垂直面を利用して位置決めすることで、偏芯方向のアライメントをより確実に行うことができる。特に、図13(B)のように、垂直面と斜面との間及び斜面と水平面との間がラウンド状に面取りされた形状である場合、固定部材356もこれに倣った形状とすることで、第1レンズ層22が第2金型52の固定部材356へ挿入されやすくなり、また、第2レンズ層22と第2金型52とが互いに接触して損傷することも防止しやすくなる。後者(図13(C))の場合、第2レンズ層22の位置決めに利用する部位に角部がなく、固定部材356をこれに倣った形状とすることで、固定部材356に第2レンズ層22を挿入しやすくなり、第2レンズ層22に傷がつきにくくなる。また、これらに代えて、第1実施形態で説明したように、光学面の外周に隣接して形成した斜面を利用したり、光学面の周縁部の傾斜を利用したりしても構わない。
【0090】
〔第6実施形態〕
以下、第6実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等を説明する。なお、第6実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等は、第1実施形態の撮像レンズユニット100の製造方法等を一部変更したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様であるものとする。
【0091】
図14に示すように、レンズ610のような単一の樹脂製レンズ部品の場合、金型装置650で連続して形成することもできる。
【0092】
この金型装置650は、固定側の第1金型651と可動側の第2金型652とを備える。第1金型651には、レンズ成形用の第8成形部664が設けられており、第2金型652には、レンズ成形用の第9成形部665が設けられている。第8成形部664及び第9成形部665の少なくとも一方には、樹脂注入口が設けられている。第2金型652を成形位置で型締することによって、第1金型651と第2金型652との間に、第8成形部664及び第9成形部665とによってレンズ610用の型空間であるキャビティCA3を形成する。そして、レンズ成形用のキャビティCA3に溶融樹脂(流動樹脂)MPを充填して固化させることにより、レンズ610を成形した後、第1金型からレンズ610を離型し、レンズ610を第2金型652に保持したまま第2金型652を退避させて、第1成形部61上で図示しないイジェクト機構を用いて第2金型652からレンズ610を離型し、第1成形部61の凹部REにレンズ610を嵌め込む。この際、レンズ610を側部から保持し第1成形部61の凹部REに精度よく案内するような機構を設けることが好ましい。その後、第2金型652を元の成形位置に戻して再度型締めし、キャビティCAに溶融樹脂(流動樹脂)MPを充填して固化することにより、ホルダー部材40を成形する。これにより、ホルダー部材40内にレンズ610を収納して固定した撮像レンズユニット100が完成する。なお、ホルダー部材40の成形に合わせてキャビティCA3に溶融樹脂(流動樹脂)MPを充填することにより、ホルダー部材40の成形と並行して新たなレンズ610の成形を行うことができる。従って、上述した工程を繰り返すことにより、短時間で撮像レンズユニット100を多数作製することができる。また、レンズ610を成形するための成形空間が、同一金型内において、ホルダー部材40を成形するための成形空間とは別の部位に設けられているため、撮像レンズユニット100の製造装置の省スペース化を図ることができる。
【0093】
〔第7実施形態〕
以下、第7実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等を説明する。なお、第7実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等は、第1実施形態の撮像レンズユニット100の製造方法等を一部変更したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様であるものとする。なお、レンズ10の形状、材料等は第1実施形態と同様である。
【0094】
以下、撮像レンズユニット100の製造方法について説明する。
まず、図15に示すように、固定側の第1金型51と可動側の第2金型52とを備える金型装置50を適宜動作させて第2金型52を退避状態にすることで両金型51,52を開状態にするとともに、第1金型51に設けた第1成形部61の上方位置にレンズ10を保持したインサート治具70を移動させる(図3のステップS11)。インサート治具70の移動先である第1成形部61は、第1金型51のパーティング面51aから突起するように設けられている。なお、この第1成形部61に対向して、第2金型52側にはパーティング面52aから窪むように第10成形部68が設けられている。
【0095】
第1金型51は、パーティング面51aを有する本体53aと、本体53aを背後から支持する取付板53bとを備える。第2金型52は、パーティング面52aを有する本体54aと、本体54aを背後から支持する取付板54bとを備える。第2金型52において、第10成形部68の中央には、後述する固定部材456が埋め込まれている。固定部材456は、第2金型52の本体54aに形成した穴54dに埋め込まれており、固定部材456の背面は、弾性体57を介して取付板54bに支持されている。弾性体57以外の第1金型51及び第2金型52の各部は金属やセラミックス等の硬質材料で形成されている(後述する各実施形態でも同様)。これにより、固定部材456は、パーティング面52aに垂直な方向から押圧力を受けた場合、本体54aに対して弾性的に微小変位し、押圧力を受けなくなった場合、元の位置に復帰する。弾性体57は、ゴムその他の樹脂からなる弾性材料で形成することもできるが、バネ等の弾性部材で形成することもできる。
【0096】
次に、図16に示すように、第1金型51にインサート治具70を降下させてインサート治具70の下部内側の嵌合面73aを、第1成形部61上にテーパーをつけて立設された嵌合部材61gの嵌合面61fと嵌合させる。この状態でインサート治具70をリリース状態に切り替えると、チャック部材72による把持が解除されたレンズ10は、下方に移動して第1成形部61の凹部RE内に挿入されるとともに、凹部RE内でアライメントされた状態で保持される(設置工程;図3のステップS12)。
【0097】
この後、図17に示すように、インサート治具70を第1金型51から取り去る(図3のステップS13)。
【0098】
次に、図18(A)に示すように、第2金型52を移動させて型締めを行うことによって、第1金型51と第2金型52との間にホルダー部材40用のキャビティCAを形成する(図3のステップS14)。この際、第1金型51に設けた第1成形部61と、第2金型52に設けた第10成形部68とが嵌合する。ここで、第1成形部61には、図1に示すホルダー部材40の裏面40bと外周側面40cとをそれぞれ成形するための転写面61b,61cが形成されている。また、第2金型52側の第10成形部68には、ホルダー部材40の上面40a等を成形するための転写面62aが形成されている。また、第10成形部68には、円筒状の突起62dを有する固定部材56が形成されており、パーティング面52aに垂直な方向に弾性的に微小変位可能になっている。このため、突起62dは、レンズ10のうち枠部11bの最内周部分に密着する。突起62dは、レンズ10の光学面11dに隣接する空間S2への流動樹脂MPの流れ込みを阻止する。また、この突起62dは、型締めによって成形空間としてのキャビティCAを形成した際に、レンズ10のうち枠部11bの最内周部分に接してレンズ10を下方に優しく押すことで、レンズ10をキャビティCA内で安定させてガタツキを防止している。
【0099】
次に、図18(B)に示すように、成形空間であるキャビティCA中にホルダー部材40の材料となるべき流動樹脂MPを充填することにより、第2レンズ要素12の枠部12bの下面、レンズ10の側面10c、第1レンズ要素11の枠部11bの上面をそれぞれ樹脂で覆う。そして、温度調節によって固化させることで、ホルダー部材40を成形する(成形工程;図3のステップS15)。これにより、図1に示したような、ホルダー部材40の開口OP1,OP2間にレンズ10を支持した状態でホルダー部材40内にレンズ10を収納して固定した撮像レンズユニット100が完成する。
【0100】
次に、図19(A)に示すように、第2金型52を第1金型51から離間させる型開きによって第2金型52を退避状態にし(図3のステップS16)、図19(B)に示すように、第1金型51に設けた不図示のエジェクターピン等を利用して撮像レンズユニット100を突き出して離型することにより、第1金型51から完成品としての撮像レンズユニット100を取り出すことができる(図3のステップS17)。
【0101】
上記第7実施形態の撮像レンズユニット100の製造方法によれば、設置工程で、金型51によって開口OP2に対応する位置に設けた保持部材58によってレンズ10を位置決めする。そのため、レンズ10の側面10cに対向する部位でホルダー部材40の成形を妨げられずレンズ10の側面全体を樹脂で覆うことができ、レンズ10を金型51,52内に確実に固定することができる。これにより、ホルダー部材40に大きな位置決め形状が残って寸法精度が劣化することを回避できる。また、レンズ10を固定した状態でホルダー部材40が一体成形されるので、ホルダー部材40の成形と固定とを一括して確実に行うことができ、ホルダー組み立てのための部品点数の増加を回避でき、複数の部品を接合してホルダー部材を構成する必要がなくなる。保持部材58によってレンズ10を位置決めすることができる。そのため、画像認識装置を設置したり金型装置に位置決め機構を設けたりする必要がなくなり、撮像レンズユニット100の製造装置を簡易に高精度化することができる。さらに、本実施形態の製造方法によれば、レンズ10を金型51,52に対して固定する際に、固定部材456によって、レンズ10と金型51,52とを弾性的な付勢力によって当接させるので、レンズ10に与える衝撃を抑えて、レンズ10の破損、変形等をより低減することができる。
【0102】
〔第8実施形態〕
以下、第8実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等を説明する。なお、第8実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等は、第1実施形態の撮像レンズユニット100の製造方法等を一部変更したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様であるものとする。
【0103】
図20(A)及び20(B)に示すように、第1金型51において、第11成形部69の中央には、保持部材558が埋め込まれている。保持部材558は、第1金型51の本体53aに形成した穴53dに埋め込まれており、保持部材558の背面は、弾性体59を介して取付板53bに支持されている。これにより、保持部材558は、パーティング面51aに垂直な方向から押圧力を受けた場合、本体53aに対して弾性的に微小変位し、押圧力を受けなくなった場合、元の位置に復帰する。弾性体59は、ゴムその他の樹脂からなる弾性材料で形成することもできるが、バネ等の弾性部材で形成することもできる。
【0104】
なお、インサート治具70によって搬送されて第1金型51の第11成形部69に挿入されたレンズ10は、保持部材558の上部に設けた円筒状の突起61dに支持されるとともに、横方向に位置決めされる。つまり、保持部材558は、レンズ10を光軸OAに垂直な方向に関して精密に位置決めするための位置決め部材でもある。
【0105】
図20(A)に示すように、第1金型51と第2金型52とを型締めして、これらの間にホルダー部材40用のキャビティCAを形成する際には、第2金型52の第2成形部62に設けた固定部材56が保持部材558上のレンズ10を下方に押し付ける。ここで、保持部材558がパーティング面52aに垂直な方向に弾性的に微小変位可能になっているので、固定部材56の当接による衝撃が緩和され、保持部材558の突起61dは、レンズ10のうち光学面12eの最外周部分(又は枠部12bの最内周部分若しくはその近傍)に密着し、固定部材56の突起62dは、レンズ10のうち枠部11bの最内周部分に密着する。つまり、レンズ10を傷つけることなく、レンズ10をキャビティCA内で安定させてガタツキを防止できる。
【0106】
なお、本実施形態において、第1金型51の保持部材558のように、第2金型52において、固定部材56を別部材として埋め込んでもよい。この場合、第1実施形態と同様に、固定部材56の背面は、弾性体を介して取付板54bに支持される。
【0107】
第1及び第2実施形態に係る撮像レンズユニット100の製造方法においては、弾性体57,59が固定部材56や保持部材558の背後に設けられており、硬質材料からなる金型51,52が直接レンズ10の表面に接するため、位置決めを正確に行いやすい。
【0108】
〔第9実施形態〕
以下、第9実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等を説明する。なお、第9実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等は、第1実施形態の撮像レンズユニット100の製造方法等を一部変更したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様であるものとする。
【0109】
図21(A)及び21(B)に示すように、第2金型52において、第2成形部62に設けた固定部材656は、円筒状の突起62dからなり、この突起62dの先端には、弾性体層657が取り付けられている。弾性体層657は、弾性だけでなく、流動樹脂MPの熱によって変形、変質等しないような耐熱性や化学的耐久性を有する。
【0110】
図21(A)等に示すように、第1金型51と第2金型52とを型締めして、これらの間にホルダー部材40用のキャビティCAを形成する際には、第2金型52の第2成形部62に設けた固定部材656が保持部材58上のレンズ10を下方に押し付ける。ここで、固定部材656の突起62dに設けた弾性体層657が微小変形可能になっているので、固定部材656の当接による衝撃が緩和され、第1成形部61側の保持部材58の突起61dは、レンズ10のうち枠部12bの最内周部分に密着し、固定部材656の突起62dは、レンズ10のうち光学面11dの最外周部分(又は枠部11bの最内周部分若しくはその近傍)に密着する。つまり、レンズ10を傷つけることなく、レンズ10をキャビティCA内で安定させてガタツキを防止できる。
【0111】
なお、本実施形態において、固定部材656と同様に、保持部材58の突起61d先端に弾性体を取り付けてもよい。
【0112】
〔第10実施形態〕
以下、第10実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等を説明する。なお、第10実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等は、第1実施形態の撮像レンズユニット100の製造方法等を一部変更したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様であるものとする。
【0113】
図22(A)及び22(B)に示すように、第1金型51において、第3成形部63に設けた保持部材158は、円柱状の突起であり、当接面である端面161eがレンズ10の光学面12e(図1参照)と同一又は略同一の曲率を有している。なお、光学面12eが一様な曲率ではない場合や非球面形状の場合は、端面161eは光学面12eと同一形状又は略同一形状とする。
【0114】
第2金型52において、第4成形部64に設けた固定部材756は、円柱状の突起であり、当接面である端面762eがレンズ10の光学面11dと同一又は略同一の曲率を有している。さらに、端面762eは、弾性体層757によって形成されており、レンズ10の光学面11dに密着し得るように構成されている。
【0115】
図22(A)等に示すように、第1金型51と第2金型52とを型締めして、これらの間にホルダー部材40用のキャビティCAを形成する際には、第2金型52の第4成形部64に設けた固定部材756が保持部材758上のレンズ10を下方に押し付ける。ここで、固定部材756の端面762eを形成する弾性体層757が微小変形可能になっているので、固定部材756の当接による衝撃が緩和され、第3成形部63側の保持部材158の端面161eは、レンズ10のうち光学面12eに密着し、固定部材756の端面762eは、レンズ10のうち光学面11dに密着する。つまり、レンズ10を傷つけることなく、レンズ10をキャビティCA内で安定させてガタツキを防止できる。
【0116】
なお、本実施形形態の場合、保持部材158の端面161eとレンズ10の光学面12eとが面状に密着し、流動樹脂MPが光学面12eに漏れ出すことを防止でき、結果的に、ホルダー部材40に開口OP2を形成することができる。また、固定部材756の端面762eとレンズ10の光学面11dとが密着し、流動樹脂MPが光学面11dに漏れ出すことを防止でき、結果的に、ホルダー部材40に開口OP1を形成することができる。
【0117】
なお、本実施形態において、固定部材756の弾性体層757と同様に、保持部材158に弾性体層を設けてもよい。
【0118】
〔第11実施形態〕
以下、第11実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等を説明する。なお、第11実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等は、第1実施形態の撮像レンズユニット100の製造方法等を一部変更したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様であるものとする。
【0119】
図23(A)及び23(B)に示すように、レンズ10の光学面11dの外縁付近の表面には、輪帯状の弾性体層857が貼り付けられている。弾性体層857は、弾性だけでなく、流動樹脂MPの熱によって変形、変質等しないような耐熱性や化学的耐久性を有する。
【0120】
図23(A)等に示すように、第1金型51と第2金型52とを型締めして、これらの間にホルダー部材40用のキャビティCAを形成する際には、第2金型52の第2成形部62に設けた固定部材856が保持部材58上のレンズ10を下方に押し付ける。ここで、固定部材856の突起62dとレンズ10の枠部11bとの間に弾性体層857が介在する。そのため、固定部材856の当接による衝撃が緩和され、第1成形部61側の保持部材58の突起61dは、レンズ10のうち光学面12eの最外周部分(又は枠部12bの最内周部分若しくはその近傍)に密着し、固定部材856の突起62dは、弾性体層857越しにレンズ10のうち枠部11bの最内周部分に密着する。つまり、レンズ10を傷つけることなく、レンズ10をキャビティCA内で安定させてガタツキを防止できる。
【0121】
なお、本実施形態において、固定部材856側の光学面11dの外縁付近に設けた弾性体層857と同様に、保持部材58側の光学面12eの外縁付近に弾性体層を設けてもよい。
【0122】
第9〜第11実施形態に係る撮像レンズユニット100の製造方法においては、硬質材料からなる金型51,52が弾性体層657や弾性体層757,857を介してレンズ10の表面に接するため、レンズ10損傷の可能性をより低減することができる。
【0123】
〔第12実施形態〕
以下、第12実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等を説明する。なお、第12実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等は、第1実施形態の撮像レンズユニット100の製造方法等を一部変更したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様であるものとする。
【0124】
図24(A)及び24(B)に示すように、レンズ1210は、ガラス基板21が樹脂製の第1レンズ層22及び第2レンズ層23で挟まれた複合レンズである。第1レンズ層22及び第2レンズ層23は、弾性を有しており、流動樹脂MPの熱によって変形、変質等しないような耐熱性や化学的耐久性を有する。
【0125】
本実施形態において、第1金型51の第1成形部61の保持部材958は、レンズ層23の光学面12eの最外周部分(又は枠部12bの最内周部分若しくはその近傍)を支持し、第2金型52の第2成形部62の固定部材956は、第1レンズ層22の枠部11bと接することでレンズ1210を位置決めしている。
【0126】
図24(A)等に示すように、第1金型51と第2金型52とを型締めして、これらの間にホルダー部材40用のキャビティCAを形成する際には、第2金型52の第2成形部62に設けた固定部材956が保持部材958上のレンズ1210を下方に押し付ける。ここで、第2レンズ層23が弾性を有するので、第1成形部61側の保持部材958の突起61dは、レンズ1210のうち光学面12eの最外周部分(又は枠部12bの最内周部分若しくはその近傍)に密着する。第1レンズ層22が弾性を有するので、第2成形部62側の固定部材956の突起62dは、レンズ1210のうち枠部11bの最内周部分に密着する。つまり、レンズ1210を傷つけることなく、レンズ1210をキャビティCA内で安定させてガタツキを防止できる。
【0127】
〔第13実施形態〕
以下、第13実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等を説明する。なお、第13実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等は、第1実施形態の撮像レンズユニット100の製造方法等を一部変更したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様であるものとする。
【0128】
図25(A)及び25(B)に示すように、レンズ1210は、第12実施形態の場合と同様に、ガラス基板21が樹脂製の第1レンズ層22及び第2レンズ層23で挟まれた複合レンズである。
【0129】
第1金型51において、第3成形部63に設けた保持部材1058は、円柱状の突起であり、当接面である端面161eがレンズ1210の光学面12e(図1参照)と同一又は略同一の曲率を有している。
【0130】
第2金型52において、第4成形部64に設けた固定部材1056は、円柱状の突起であり、当接面である端面162eがレンズ1210の光学面11dと同一又は略同一の曲率を有している。なお、光学面11d,12eが、一様な曲率ではない場合や非球面形状の場合は、端面162e,161eは光学面11d,12eと同一形状又は略同一形状とする。
【0131】
図25(A)等に示すように、第1金型51と第2金型52とを型締めして、これらの間にホルダー部材40用のキャビティCAを形成する際には、第2金型52の第4成形部64に設けた固定部材1056が保持部材1058上のレンズ1210を下方に押し付ける。ここで、第2レンズ層23が弾性を有するので、第3成形部63側の保持部材1058の端面161eは、レンズ1210のうち光学面12eに密着する。第1レンズ層22が弾性を有するので、第4成形部64側の固定部材1056の端面162eは、レンズ1210のうち光学面11dに密着する。つまり、レンズ1210を傷つけることなく、レンズ1210をキャビティCA内で安定させてガタツキを防止できる。
【0132】
なお、本実施形態において、固定部材1056及び保持部材1058の一方を第12実施形態のような突起状の固定部材956や保持部材958にしてもよい。
【0133】
第12及び第13実施形態に係る撮像レンズユニット100の製造方法においては、金型51,52の構成を簡単にすることができる。但し、レンズ1210自体の弾性を利用してレンズ1210に加わる衝撃を抑えるので、適度な弾性を有しつつレンズ1210に求められる光学性能を損なわないような樹脂材料を選択するようにする。
【0134】
〔第14実施形態〕
以下、第14実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等を説明する。なお、第14実施形態に係る撮像レンズユニットの製造方法等は、第1実施形態の撮像レンズユニット100の製造方法等を一部変更したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様であるものとする。
【0135】
図26に示すように、レンズ610のような単一の樹脂製レンズ部品の場合、金型装置1450で連続して形成することもできる。
【0136】
この金型装置1450は、固定側の第1金型1451と可動側の第2金型1452とを備える。第1金型1451には、レンズ成形用の第8成形部664が設けられており、第2金型1452には、レンズ成形用の第9成形部665が設けられている。第8成形部664及び第9成形部665の少なくとも一方には、樹脂注入口が設けられている。第2金型1452をレンズ用成形位置で型締することによって、第1金型1451と第2金型1452との間に、第8成形部664及び第9成形部665によってレンズ610用の型空間であるキャビティCA3を形成する。そして、レンズ成形用のキャビティCA3に樹脂を充填して固化させることにより、レンズ610を成形した後、第1金型1451からレンズ610を離型し、レンズ610を第2金型1452に保持したまま第2金型1452を退避させて、第1成形部61上で図示しないイジェクト機構を用いて第2金型1452からレンズ610を離型し、第1成形部61の凹部REにレンズ610を嵌め込む。この際、レンズ610を側部から保持し第1成形部61の凹部REに精度よく案内するような機構を設けることが好ましい。その後、第2金型1452を元の成形位置に戻して再度型締めし、キャビティCAに樹脂を充填して固化することにより、ホルダー部材40を成形する。これにより、ホルダー部材40内にレンズ610を収納して固定した撮像レンズユニット100が完成する。なお、ホルダー部材40の成形に合わせてキャビティCA3に樹脂を充填することにより、ホルダー部材40の成形と並行して新たなレンズ610の成形を行うことができる。従って、上述した工程を繰り返すことにより、短時間で撮像レンズユニット100を多数作製することができる。また、レンズ610を成形するための成形空間が、同一金型内において、ホルダー部材40を成形するための成形空間とは別の部位に設けられているため、撮像レンズユニット100の製造装置の省スペース化を図ることができる。
【0137】
以上、実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記第1〜第5、第7〜第13実施形態において、レンズ10,410,510は、ガラス製や樹脂製の単一のレンズを用いてもよい。
【0138】
また、上記各実施形態において、レンズ10,410,510,610の形状や構造は例示であり、適宜変更することができる。
【0139】
また、上記各実施形態において、第2金型側からレンズ10,410,510,610を吸引してレンズの移動を防止しているが、レンズ10等が成形中に安定して固定することができれば、レンズを吸引しなくてもよい。
【0140】
また、上記各実施形態においては、保持部材58,158,258,358,458,558,958,1058、及び、固定部材56,156,256,356,456,656,756,856,956,1056の一方を位置決め部材として用いているが、いずれが位置決め部材としての役割を担うかは適宜変更することができ、他方を位置決め部材として用いることも可能である。両方を使って位置決めするようにしても構わない。例えば、第1実施形態において、第1レンズ要素11と第2レンズ要素12とが別体であり、絞り15が第1レンズ要素11又は第2レンズ要素12に予め形成されたものを用いる場合は、次のようにして、第1金型の保持部材58と第2金型の固定部材56とにより、レンズ10の位置決めを行うことができる。まず、図3のステップS11〜S13までを実行して第2レンズ要素12の位置決めを行った後、インサート治具70で保持するレンズ要素を変えて再度ステップS11〜S13を実行する。そして、図3のステップS14を実行する、すなわち、可動側の第2金型52を固定側の第1金型51にセットすることで、第2金型52の固定部材56によって上側のレンズ要素11の位置決めを行う。
【0141】
また、上記実施形態においては、第2金型52を上下方向に移動させる縦型の金型装置50,650,1450としているが、可動側の金型が左右方向に移動する横型の金型装置としてもよい。この場合、レンズ10等の落下を防止するため、少なくとも一方の金型からレンズ10等を吸引して保持させる必要がある。
【0142】
また、上記実施形態において、ホルダー部材40を構成する樹脂材料としては熱可塑性樹脂を用いたが、これに限らず、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂などの硬化性樹脂を用いることも可能である。
【0143】
また、上記実施形態において、金型に複数の成形部を設けて複数のレンズに対して同時にホルダー成形を行うようにしてもよい。この場合、2つの金型のアライメントのための部材を各成形部に配置する必要はなく、成形部の数より少ないテーパーピン及びそれに嵌合する嵌合穴を各金型に設ける等して、複数の成形部に対して共通のアライメント部材を使用するようにすればよい。
【0144】
また、上記実施形態において、固定部材56,156,256,356,456,656,756,856,956,1056及び保持部材58,158,258,358,458,558,958,1058の組み合わせは例示であり、レンズ10等を突起で固定又は保持するか、端面で固定又は保持するかは適宜変更することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図26