特許第5966992号(P5966992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5966992リチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5966992
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20160728BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20160728BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20160728BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20160728BHJP
【FI】
   H01M4/58
   H01M4/48
   H01M4/36 E
   H01M4/485
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-65310(P2013-65310)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-229318(P2013-229318A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2014年7月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-70961(P2012-70961)
(32)【優先日】2012年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大槻 佳太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐野 篤史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 友彦
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−231206(JP,A)
【文献】 特表2008−519399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li(POで表される第一の化合物と、バナジウム酸化物およびリン酸リチウムバナジウムから選ばれる第二の化合物を1種以上含み、前記第二の化合物の粒径は、前記第一の化合物よりも小さく、前記第二の化合物の含有量が前記第一の化合物に対して0.1wt%以上5wt%以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極材料。
【請求項2】
前記第二の化合物はV、LiV、LiV、LiVOPOであることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
【請求項3】
前記第二の化合物は、V、LiV、LiVから選ばれる少なくとも一種以上であり、前記第二の化合物の含有量が前記第一の化合物の含有量に対して0.1wt%以上5wt%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
【請求項4】
請求項1からのいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極材料を用いたことを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極。
【請求項5】
請求項に記載のリチウムイオン二次電池用正極を用いたことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池に関する。
【0002】
近年、高温においても結晶安定性及び熱的安定性に優れた正極活物質として、リン酸鉄リチウム(LiFePO)に代表されるポリアニオン系正極活物質が検討されている。LiFePOを正極活物質として用いた非水電解質電池は、電動工具用途に実用化されており、放電容量は160mAh/gと高く、正極活物質表面への電子電導性炭素質担持技術によりハイレート性能にも優れたものとなっている。
【0003】
しかしながら、LiFePOの作動電位はLi/Li基準に対して3.42Vであり、汎用電池に用いられている正極活物質の作動電位に比べて低いため、エネルギー密度や出力特性の点で不十分である。
【0004】
そこで、LiFePOよりも作動電位の高いポリアニオン正極活物質として、Li(POが提案されている。
【0005】
Li(POを正極活物質として用いた非水電解質電池は、低レート放電において130mAh/gと大きな容量を示すことが知られている。(例えば、特許文献1および2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2001−500665号公報
【特許文献2】特表2002−530835号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Y. Q. Qiao. et. al., Electrochem. Acta 56 (2010) 510−516
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、Li(POを正極活物質として用いた非水電解質電池は、高レート放電における特性に問題があった。(例えば非特許文献1)
【0009】
そこで、本発明では高レート放電における特性、特に高レート放電における容量維持率に優れたリチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極材料は、Li(POで表される第一の化合物と、バナジウム酸化物およびリン酸リチウムバナジウムから選ばれる第二の化合物を1種類以上含むことを特徴とする。
【0011】
上記第一の化合物及び第二の化合物を含む正極材料を用いることによりリチウムイオン二次電池の高レート放電特性を向上させることができる。
【0012】
これは、第二の化合物であるバナジウム酸化物、またはリン酸リチウムバナジウムによって、第一の化合物(Li(PO)粒子間における電気伝導ネットワークパスが形成されるためであると考えられる。
【0013】
本発明リチウムイオン二次電池用正極材料は、第二の化合物がV、LiV、LiV、LiVOPOであることが好ましい。
【0014】
上記第二の化合物のいずれかを含有することによって第一の化合物Li(POの高レート充放電特性をより向上させることができる。
【0015】
本発明リチウムイオン二次電池用正極材料は、第二の化合物の含有量が第一の化合物に対して0.1wt.%以上5wt.%以下であることがさらに好ましい。
【0016】
これにより、第一の化合物Li(POの高レート充放電特性をさらに向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高レート放電における特性、特に高レート放電における容量維持率に優れたリチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1のリチウムイオン二次電池用正極材料のX線回折図である。
図2】リチウムイオン二次電池の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
【0020】
<リチウムイオン二次電池>
図2に示すように、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100は、互いに対向する板状の負極20及び板状の正極10と、負極20と正極10との間に隣接して配置される板状のセパレータ18と、を備える発電要素30と、リチウムイオンを含む電解質溶液と、これらを密閉した状態で収容するケース50と、負極20に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部がケースの外部に突出される負極リード62と、正極10に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部がケースの外部に突出される正極リード60とを備える。
【0021】
負極20は、負極集電体22と、負極集電体22上に形成された負極活物質層24と、を有する。また、正極10は、正極集電体12と、正極集電体12上に形成された正極活物質層14と、を有する。セパレータ18は、負極活物質層24と正極活物質層14との間に位置している。
【0022】
正極活物質層14は、Li(POで表される第一の化合物と、バナジウム酸化物およびリン酸リチウムバナジウムより選ばれる第二の化合物を1種類以上含むリチウムイオン二次電池用正極材料と導電助剤、バインダーとを備える。
【0023】
<リチウムイオン二次電池用正極材料>
本発明のリチウムイオン二次電池用正極材料は、Li(POで表される第一の化合物と、バナジウム酸化物およびリン酸リチウムバナジウムから選ばれる第二の化合物を1種類以上含む。第一の化合物は、一般式がLi(POで表されるNASICON型リン酸リチウムバナジウムである。
【0024】
第一の化合物Li(POは、Vの一部が5wt.%程度Fe,Mnなどに代表される遷移金属に置換、またはVの一部が欠損してもよい。
【0025】
前記第二の化合物であるバナジウム酸化物およびリン酸リチウムバナジウムは従来から知られた材料でよく、特にV、LiV、LiV、LiVOPOなどが挙げられる。これらから選ばれる少なくとも1つ以上のものが含まれていればよく、複数種が同時に含まれていてもよい。
【0026】
前記第二の化合物は前記第一の化合物の1次粒子と共に混在し、2次粒子と混在した状態でもよく、1次粒子または2次粒子の表面上に付着した状態でもよい。
【0027】
また、前述第二の化合物は第一の化合物の1次粒子または2次粒子の表面を完全に被覆している状態でもよく、これらの表面の一部分を被覆している状態でもよい。
【0028】
前述第一の化合物の粒径は100nmから10μmの範囲であることが好ましく、前述第二の化合物の粒径は10nmから1μmの範囲であることが好ましい。また、前述第二の化合物の粒径は、第一の化合物よりも小さいことが望ましい。
【0029】
前記第二の化合物として選ばれるバナジウム酸化物およびリン酸リチウムバナジウムは前記第一の化合物に対して0.1wt.%以上5wt.%以下の範囲で含まれることが望ましい。
【0030】
<リチウムイオン二次電池用正極材料の製造方法>
次に、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極材料の製造方法について説明する。本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極材料の製造方法は、リチウム源とリン酸源とバナジウム源と還元剤と水とを混合物を全量乾燥することにより前駆体を得る前駆体合成工程と、得られた前駆体を熱処理する熱処理工程とを備える。また、固相法、水熱法、ゾルゲル法、気相法などの例に挙げられる既存のあらゆる方法を用いても合成することができる。本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極材料の製造方法によって、上述した本実施形態に係る正極材料を製造することができる。
【0031】
<前駆体合成工程>
前駆体合成工程では、まず、上述したリチウム源、リン酸源、バナジウム源、還元剤及び水を投入して、これらが分散した混合物(水溶液)を調製する。なお、混合物を調製する際は、例えば、最初に、リン酸源、マンガン源及び水を混合したものを還流した後、これにリチウム源を加えてもよい。
【0032】
上記工程にて得られた混合水溶液を全量乾燥することにより前駆体を得ることができる。乾燥方法は既存の乾燥機や電気炉など外部から熱を加えることが出来る既存のあらゆる装置を用いることができる。
【0033】
リチウム源としては、例えば、LiNO、LiCo、LiOH、LiCl、LiSO及びCHCOOLiからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
【0034】
リン酸源としては、例えば、HPO、NHPO、(NHHPO及びLiPOからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
【0035】
バナジウム源としては、例えば、V、VO、V及びNHVOからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。なお、二種以上のリチウム源、二種以上のリン酸源又は二種以上のバナジウム源を併用してもよく、適宜各原料の混合比を調整して用いることができる。
【0036】
還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ヒドラジンからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。なお、二種以上の還元剤を併用してもよく、適宜各還元剤の混合比を調整して用いることができる。
【0037】
上記前駆体合成工程は常温で混合してもよく、オイルバスなどを用いて常温以上の温度で混合してもよい。
【0038】
<複合工程>
複合工程では電子伝導性炭素材料と上記前駆体合成工程により得られたアモルファス前駆体と電子伝導性炭素材料との複合を行うことができる。
【0039】
複合方法としては、例えばビーズミルやボールミルなど公知の装置を用いて行うことができる。
【0040】
用いられる電子伝導性炭素材料としては、例えば、アセチレンブラックやカーボンブラック、ケッチェンブラックなどからなる炭素材料の少なくとも一種を用いることができる。
【0041】
<熱処理工程>
熱処理工程では、水熱合成工程により得られた前駆体を還元雰囲気中で熱処理することでLi(POを合成することができる。
【0042】
熱処理雰囲気としては、例えば窒素、アルゴンなどの不活性ガス、または水素のような還元性ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種、または一種以上の混合状態を用いることができる。
【0043】
熱処理の温度は450℃〜650℃で行うことが好ましく、550℃〜600℃で行うことがより好ましい。熱処理温度が低すぎる場合Li(PO相が生成せず、前駆体の構造を維持し、活物質の充放電特性が低下する傾向がある。熱処理温度が高すぎる場合Li(PO相が分解して目的化合物が得られなくなる。熱処理の温度を上記の範囲内とすることによって、これらの傾向を抑制できる。
【0044】
<第二化合物混合工程>
バナジウム酸化物、リン酸リチウムバナジウム酸化物より選ばれる第二化合物混合工程では、前述の工程により得られた第一の化合物Li(POにバナジウム酸化物およびリン際リチウムバナジウム酸化物より選ばれる第二化合物を混合することができる。
【0045】
混合方法は瑙乳鉢による混合、ボールミルやビーズミルなどの既存の混合装置を用いて行うことができる。
【0046】
前記第二の化合物として選ばれるバナジウム酸化物およびリン酸リチウムバナジウムは前述した前駆体合成工程、複合工程、熱処理工程のいずれかの工程にて第一の化合物に追加で添加、混合することができる。
【0047】
また、前駆体合成工程にてリチウム源、バナジウム源、リン酸源の比率を第一の化合物Li(POの化学量論組成からずらして任意にバナジウム酸化物およびリン際リチウムバナジウム酸化物より選ばれる第二の化合物を生成させることにより混合することができる。
【0048】
バナジウム酸化物およびリン際リチウムバナジウム酸化物より選ばれる第二の化合物の混合量は0.1wt.%以上5wt.%以下が好ましく、0.5wt.%以上1.5wt.%以下がより好ましい。第二の化合物が上記範囲の量あることにより、第一の化合物粒子間の導電性ネットワークが形成されることにより第一の化合物のレート特性が向上すると考えられる。第二の化合物量が上記0.1wt.%より少ない場合量が少ない過ぎるため効果が見られず、5wt.%より多い場合、第一の化合物の電気化学的反応を阻害するためレート特性が低下するものと考えられる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
<リン酸リチウムバナジウム合成>
POを0.3mol、蒸留水を180mlに入れ、20℃で攪拌を行った。この溶液に、Vを0.1mol加え攪拌を継続した。その後、ヒドラジンを添加し攪拌を継続した。その後LiOH・HOを0.3mol加えた。この混合溶液を20℃で24時間攪拌を行い原料混合溶液とした。得られた内容物を90℃の乾燥機で24時間乾燥した。
【0051】
乾燥後に得られた固体を粉砕し、粉末状の前駆体を得た。
【0052】
得られた前駆体とカーボンブラックを84重量部:8重量部の比率で3分混合し、Li−V−P−C混合粉末を得た。
【0053】
得られたLi−V−P−C混合粉末にLi(POに対して1wt.%の、LiVOPOを混合し、アルゴン気流中600℃で4時間熱処理することにより、図1に表されるようにX線回折図からはほぼLi(POのピークしか見られないが、18°、29°付近に第二の化合物を示す弱いピークが確認された。その結果より、第二の化合物としてLiVOPOを1wt.%含む第一の化合物Li(POを得た。
【0054】
<ハーフセルの作製>
熱処理後の正極用材料92重量部と、PVDF(ポリふっ化ビニリデン)8重量部とを、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)に添加して、正極用塗料を調製した。正極用塗料中の固形分であるLi(PO、カーボンブラック及びPVDFの比率は、Li(PO:カーボンブラック:PVDF=84重量部:8重量部:8重量部に調整した。
【0055】
正極用塗料を、厚みが20μmのアルミニウム箔に塗布した。塗布した正極用塗料を乾燥した後、圧延することにより、正極を得た。次に、リチウム箔を所定の大きさに切断して銅箔(厚み15μm)に貼り付けることにより、負極とした。正極及び負極を、それらの間にポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを挟んで積層し、積層体(素体)を得た。正極、負極には、それぞれ、リードとしてアルミニウム箔(幅4mm、長さ40mm、厚み80μm)、ニッケル箔(幅4mm、長さ40mm、厚み80μm)を超音波溶接した。このリードには、前もって無水マレイン酸をグラフト化したポリプロピレン(PP)を巻き付け熱接着させた。これはリードとケースとのシール性を向上させるためである。ケースはアルミニウムラミネート材料からなり、その構成は、PET(12)/Al(40)/PP(50)のものを用意した。PETはポリエチレンテレフタレート、PPはポリプロピレンである。かっこ内は各層の厚み(単位はμm)を表す。なおこの時PPが内側となるように製袋した。上の積層体をケースに入れ、これに電解液である1M−LiPF/EC+DEC(30:70体積比)を注入した後、ケースを真空ヒートシールし、実施例1の電極評価用ハーフセルを作製した。
【0056】
<放電容量の測定>
実施例1のハーフセルを用いて、放電レートを0.1C(定電流放電を行ったときに10時間で放電終了となる電流値)から2Cとした場合の放電容量(単位:mAh/g)を測定した。結果を表1に示す。表1に示す放電容量は、活物質1グラム当たりの放電容量である。なお、測定では、正極活物質であるLi(POの理論容量を196mAh/gとして、0.1Cから2Cで充放電を行った。上限充電電圧は4.3V(VS.Li/Li)とし、下限放電電圧は2.8V(VS.Li/Li)とした。また、充電は、正極の電圧が上限充電電圧に達し、充電電流が1/20Cまで減衰するまで行った。測定温度は25℃であった。
【0057】
(実施例2)
原料であるリチウム源、リン酸源、バナジウム源の量を化学両論組成に対してそれぞれ0.00024mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて、実施例1と同様の方法で、実施例2の活物質及びハーフセルを作製した。X線回折測定(XRD)の結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVOPOであり、含有量は0.1wt.%であった。
【0058】
(実施例3)
原料であるリチウム源、リン酸源、バナジウム源の量をそのままとし、第二化合物としてLiVOPOの混合量を0.5wt.%としたこと以外は実施例1と同様の方法で、実施例3の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVOPOであり、含有量は0.5wt.%であった。
【0059】
(実施例4)
原料であるリチウム源、リン酸源、バナジウム源の量を化学両論組成に対してそれぞれ0.0048mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例4の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVOPOであり、含有量は2.0wt.%であった。
【0060】
(実施例5)
原料であるリチウム源、リン酸源、バナジウム源の量をそのままとし、第二化合物としてLiVOPOの混合量を3.0wt.%としたこと以外実施例1と同様の方法で、実施例5の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVOPOであり、含有量は3.0wt.%であった。
【0061】
(実施例6)
原料であるリチウム源、リン酸源、バナジウム源の量を化学両論組成に対してそれぞれ0.012mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例6の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVOPOであり、含有量は5.0wt.%であった。
【0062】
(実施例7)
原料であるリチウム源、リン酸源、バナジウム源の量を化学両論組成に対してそれぞれ0.00012mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例7の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVOPOであり、含有量は0.05wt.%であった。
【0063】
(実施例8)
原料であるリチウム源、リン酸源、バナジウム源の量を化学両論組成に対してそれぞれ0.0144mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例8の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVOPOであり、含有量は6.0wt.%であった。
【0064】
(実施例9)
原料であるバナジウム源としてVを用い、化学両論組成に対して0.00287mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例9の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はVであり、含有量は1.0wt.%であった。
【0065】
(実施例10)
原料であるバナジウム源としてVを用い、化学両論組成に対して0.000288mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例10の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はVであり、含有量は0.1wt.%であった。
【0066】
(実施例11)
原料であるバナジウム源としてVを用い、化学両論組成に対して0.00143mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例11の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はVであり、含有量は0.5wt.%であった。
【0067】
(実施例12)
原料であるバナジウム源としてVを用い、化学両論組成に対して0.00566mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例12の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はVであり、含有量は2.0wt.%であった。
【0068】
(実施例13)
原料であるバナジウム源としてVを用い、化学両論組成に対して0.00864mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例13の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はVであり、含有量は3.0wt.%であった。
【0069】
(実施例14)
原料であるバナジウム源としてVを用い、化学両論組成に対して0.0144mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例14の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はVであり、含有量は5.0wt.%であった。
【0070】
(実施例15)
原料であるバナジウム源としてVを用い、化学両論組成に対して0.000144mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例15の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はVであり、含有量は0.05wt.%であった。
【0071】
(実施例16)
原料であるバナジウム源としてVを用い、化学両論組成に対して0.01728mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例16の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はVであり、含有量は6.0wt.%であった。
【0072】
(実施例17)
原料であるリチウム源を化学両論組成に対して0.00306mol過剰に、バナジウム源としてVを用い、化学両論組成に対して0.00306mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例17の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVであり、含有量は1.0wt.%であった。
【0073】
(実施例18)
原料であるリチウム源を化学両論組成に対して0.000306mol過剰に、バナジウム源としてVを用い、化学両論組成に対して0.000306mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例18の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVであり、含有量は0.1wt.%であった。
【0074】
(実施例19)
原料であるリチウム源を化学両論組成に対して0.00153mol過剰に、バナジウム源としてVを用い、化学両論組成に対して0.00153mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例19の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVであり、含有量は0.5wt.%であった。
【0075】
(実施例20)
原料であるリチウム源を化学両論組成に対して0.00612mol過剰に、バナジウム源としてVを用い、化学両論組成に対して0.00612mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例20の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVであり、含有量は2.0wt.%であった。
【0076】
(実施例21)
原料であるリチウム源を化学両論組成に対して0.00918mol過剰に、バナジウム源としてVを用い、化学両論組成に対して0.00918mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例21の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVであり、含有量は3.0wt.%であった。
【0077】
(実施例22)
原料であるリチウム源を化学両論組成に対して0.0153mol過剰に、バナジウム源としてVを用い、化学両論組成に対して0.0153mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例22の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVであり、含有量は5.0wt.%であった。
【0078】
(実施例23)
原料であるリチウム源を化学両論組成に対して0.000153mol過剰に、バナジウム源としてVを用い、化学両論組成に対して0.000153mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例23の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVであり、含有量は0.05wt.%であった。
【0079】
(実施例24)
原料であるリチウム源を化学両論組成に対して0.01836mol過剰に、バナジウム源としてVを用い、化学両論組成に対して0.01836mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例24の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVであり、含有量は6.0wt.%であった。
【0080】
(実施例25)
原料であるリチウム源を化学両論組成に対して0.00178mol過剰に、バナジウム源としてVOを用い、化学両論組成に対して0.0052mol過剰に量を調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例25の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVであり、含有量は1.0wt.%であった。
【0081】
(実施例26)
原料であるリチウム源を化学両論組成に対して0.000178mol過剰に、バナジウム源としてVOを用い、化学両論組成に対して0.00052mol過剰に量を調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例26の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVであり、含有量は0.1wt.%であった。
【0082】
(実施例27)
原料であるリチウム源を化学両論組成に対して0.00089mol過剰に、バナジウム源としてVOを用い、化学両論組成に対して0.0026mol過剰に調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例27の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVであり、含有量は0.5wt.%であった。
【0083】
(実施例28)
原料であるリチウム源を化学両論組成に対して0.00356mol過剰に、バナジウム源としてVOを用い、化学両論組成に対して0.0104mol過剰に量を調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例28の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVであり、含有量は2.0wt.%であった。
【0084】
(実施例29)
原料であるリチウム源、リン酸源、バナジウム源の量をそのままとし、第二化合物としてLiVの混合量を3.0wt.%としたこと以外実施例1と同様の方法で、実施例29の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVであり、含有量は3.0wt.%であった。
【0085】
(実施例30)
原料であるリチウム源を化学両論組成に対して0.0089mol過剰に、バナジウム源としてVOを用い、化学両論組成に対して0.026mol過剰に量を調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例30の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVであり、含有量は5.0wt.%であった。
【0086】
(実施例31)
原料であるリチウム源を化学両論組成に対して0.000089mol過剰に、バナジウム源としてVOを用い、化学両論組成に対して0.00026mol過剰に量を調整し、第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、実施例31の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVであり、含有量は0.05wt.%であった。
【0087】
(実施例32)
原料であるリチウム源、リン酸源、バナジウム源の量をそのままとし、第二化合物としてLiVの混合量を6.0wt.%としたこと以外実施例1と同様の方法で、実施例32の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVであり、含有量は6.0wt.%であった。
【0088】
(実施例33)
実施例2により得られた第二化合物LiVOPOを0.1wt.%含む正極活物質に対して、Vを0.4wt.%添加することにより、実施例33の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVOPO及びVであり、合計含有量は0.5wt.%であった。
【0089】
(実施例34)
実施例2により得られた第二化合物LiVOPOを0.1wt.%含む正極活物質に対して、Vを0.9wt.%添加することにより、実施例34の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVOPO及びVであり、合計含有量は1.0wt.%であった。
【0090】
(実施例35)
実施例3により得られた第二化合物LiVOPOを0.5wt.%含む正極活物質に対して、Vを2.5wt.%添加することにより、実施例35の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVOPO及びVであり、合計含有量は3.0wt.%であった。
【0091】
(実施例36)
実施例4により得られた第二化合物LiVOPOを2.0wt.%含む正極活物質に対して、Vを4.0wt.%添加することにより、実施例36の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVOPO及びVであり、合計含有量は6.0wt.%であった。
【0092】
(実施例37)
実施例10により得られた第二化合物Vを0.1wt.%含む正極活物質に対して、LiVを0.9wt.%添加することにより、実施例37の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はV及びLiVであり、合計含有量は1.0wt.%であった。
【0093】
(実施例38)
実施例10により得られた第二化合物Vを0.1wt.%含む正極活物質に対して、LiVを0.4wt.%添加することにより、実施例38の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はV及びLiVであり、合計含有量は0.5wt.%であった。
【0094】
(実施例39)
実施例11により得られた第二化合物Vを1.0wt.%含む正極活物質に対して、LiVを2.0wt.%添加することにより、実施例39の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はV及びLiVであり、合計含有量は3.0wt.%であった。
【0095】
(実施例40)
実施例11により得られた第二化合物Vを1.0wt.%含む正極活物質に対して、LiVを5.0wt.%添加することにより、実施例40の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はV及びLiVであり、合計含有量は6.0wt.%であった。
【0096】
(実施例41)
実施例2により得られた第二化合物LiVOPOを0.1wt.%含む正極活物質に対して、LiVを0.9wt.%添加することにより、実施例41の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVOPO及びLiVであり、合計含有量は1.0wt.%であった。
【0097】
(実施例42)
実施例2により得られた第二化合物LiVOPOを0.1wt.%含む正極活物質に対して、LiVを0.4wt.%添加することにより、実施例42の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVOPO及びLiVであり、合計含有量は0.5wt.%であった。
【0098】
(実施例43)
実施例1により得られた第二化合物LiVOPOを1.0wt.%含む正極活物質に対して、LiVを2.0wt.%添加することにより、実施例43の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVOPO及びLiVであり、合計含有量は3.0wt.%であった。
【0099】
(実施例44)
実施例1により得られた第二化合物LiVOPOを1.0wt.%含む正極活物質に対して、LiVを5.0wt.%添加することにより、実施例44の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVOPO及びLiVであり、合計含有量は6.0wt.%であった。
【0100】
(実施例45)
実施例2により得られた第二化合物LiVOPOを0.1wt.%含む正極活物質に対して、Vを0.4wt.%、LiVを0.5wt.%添加することにより、実施例45の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVOPO及びV、LiVであり、合計含有量は1.0wt.%であった。
【0101】
(実施例46)
実施例2により得られた第二化合物LiVOPOを0.1wt.%含む正極活物質に対して、Vを0.3wt.%、LiVを0.1wt.%添加することにより、実施例46の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVOPO及びV、LiVであり、合計含有量は0.5wt.%であった。
【0102】
(実施例47)
実施例1により得られた第二化合物LiVOPOを1.0wt.%含む正極活物質に対して、Vを1.0wt.%、LiVを1.0wt.%添加することにより、実施例47の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVOPO及びV、LiVであり、合計含有量は3.0wt.%であった。
【0103】
(実施例48)
実施例3により得られた第二化合物LiVOPOを3.0wt.%含む正極活物質に対して、Vを1.2wt.%、LiVを1.8wt.%添加することにより、実施例48の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物はLiVOPO及びV、LiVであり、合計含有量は6.0wt.%であった。
【0104】
(比較例1)
第二化合物を混合しないことを除いて実施例1と同様の方法で、比較例1の活物質及びハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物は確認されず、Li(POの単一相であった。
【0105】
(比較例2)
参考文献1と同様の実験方法により比較例1の活物質を合成し、ハーフセルを作製した。XRDの結果から、活物質中に含まれる第二化合物は確認されず、Li(POの単一相であった。
【0106】
実施例1と同様の方法で、実施例2〜48及び比較例1〜2について、0.1Cにおける活物質1グラム当たりの放電容量に対する2Cにおける活物質1グラム当たりの放電容量の維持率をそれぞれ求めた。結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
実施例1〜48の容量維持率より、Li(POで表される第一の化合物と、バナジウム酸化物およびリン酸リチウムバナジウムから選ばれる第二の化合物を含むリチウムイオン二次電池用正極材料は、高レート放電においても容量維持率に優れていることが分かった。第二の化合物が0.1wt.%から5.0wt.%において優れた容量維持率であることが分かった。
図1
図2