(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
TD印刷の手順は概略以下の通りである。まず、TD用紙に発泡用TD画像を、カーボンブラックを含むトナーで印刷して発泡用グレー画像を生成する。そして、そのTD用紙をハロゲンランプ等の光源で加熱し、発泡用グレー画像を隠すために発泡したTD用紙を白で印刷する。最後に、その上に仕上げ用のカラー画像を印刷し、凹凸を有する質感が表現されたカラー画像を生成する。
【0006】
ところで、上記した従来のTD印刷によれば、発泡の凹凸により画像が歪むことがある。したがって、その上に仕上げ用のカラー画像を印刷すれば、発泡してカラー画像がずれてしまうといった問題があった。例えば、
図13(a)にその印刷ずれのイメージが示されている。比較対象の意味で
図13(b)に印刷ずれが無い場合のイメージを示している。
図13(a)(b)ともに、TD印刷で印刷ずれが比較的発生しやすい文字の「イ」が例示されている。
【0007】
図13(a)において、グレーの部位が発泡後の凸部のイメージであり、黒の部位が発泡後の仕上げ印刷である。
図13(c)に、
図13(a)に示すイメージの断面が示されているように、仕上げ印刷と発泡部位がずれていることが理解できる。これに対し、
図13(b)に示した比較例では、仕上げ印刷と発泡部位とが重なるため、発泡(グレー)の部位が出現しない。
【0008】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、発泡性シートを発泡させた後に印刷された画像に歪みが発生した場合にその歪みを解消することで印刷品位の向上をはかった、印刷装置、および方法、ならびにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、本発明の印刷方法は、あるデータに基づくパターンであって少なくとも複数の多角形
領域を含む第1のパターンを発泡前の発泡性シートに印刷し、前記第1のパターンが印刷された前記発泡性シートを発泡させ、前記あるデータと同じデータに基づくパターンであって少なくとも複数の多角形
領域を含む第2のパターンを発泡後の発泡性シートに印刷し、前記第1のパターンと前記第2のパターンとの間のずれ量を算出し、前記算出したずれ量に基づいて決まる変形量だけ原画像を変形し、前記変形した原画像を印刷用画像として前記発泡性シートに印刷することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の印刷装置は、発泡性シートに印刷を行う印刷部と、前記発泡性シートの発泡を行う熱膨張加工部と、前記印刷部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、あるデータに基づくパターンであって少なくとも複数の多角形
領域を含む第1のパターンを発泡前の発泡性シートに前記印刷部によって印刷させ、前記熱膨張加工部によって前記発泡性シートを発泡させ、前記あるデータと同じデータに基づくパターンであって少なくとも複数の多角形
領域を含む第2のパターンを発泡後の発泡性シートに前記印刷部によって印刷させ、前記第1のパターンと前記第2のパターンとの間のずれ量を算出し、前記算出したずれ量に基づいて決まる変形量だけ原画像を変形し、前記変形した原画像を印刷用画像として前記発泡性シートに前記印刷部によって印刷させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の制御プログラムは、印刷部及び熱膨張加工部を有する印刷装置の制御プログラムであって、前記制御プログラムは、コンピュータに、あるデータに基づくパターンであって少なくとも複数の多角形
領域を含む第1のパターンを発泡前の発泡性シートに前記印刷部によって印刷させ、前記予め定めた模様が印刷された前記発泡性シートを
前記熱膨張加工部によって発泡させ、前記あるデータと同じデータに基づくパターンであって少なくとも複数の多角形
領域を含む第2のパターンを発泡後の発泡性シートに前記印刷部によって印刷させ、前記第1のパターンと前記第2のパターンとの間のずれ量を算出させ、前記算出したずれ量に基づいて決まる変形量だけ原画像を変形させ、前記変形した原画像を印刷用画像として前記発泡性シートに前記印刷部によって印刷させる、処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発泡性シートを発泡させた後に印刷された画像に歪みが発生した場合にその歪みを解消することで印刷品位の向上をはかった、印刷装置、および方法、ならびにプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、本実施形態という)について詳細に説明する。なお、本実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0015】
(実施形態の構成)
図1は、本実施形態の印刷装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の印刷装置1は、例えば、マイクロプロセッサが実装される制御部11を制御中枢とし、この制御部11に、それぞれデータバスを介して、インタフェースコントローラ12、プリンタコントローラ13が接続されている。
【0016】
また、制御部11には、ROM(Read Only Memory)15、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)16、各部に配置されたセンサからの出力が入力されるセンサ部17、及び操作パネル18が接続されている。ROM15には後述する本実施形態のプログラムが、EEPROM16にはプログラムが使用する定数やデータ等が格納されている。なお、操作パネル18はタッチ式の表示画面を備えたマンマシンインタフェースである。
【0017】
制御部11は、ROM15に格納されているプログラムを逐次読出し実行することにより各ブロックを制御して以下の処理を行う。すなわち、制御部11は、発泡後の発泡性シートに印刷されるずれ算出パターン(青色メッシュ)に基づいて発泡性シートの発泡に伴うずれ量を測定し、ここで測定したずれ量だけ画像を変形処理して発泡性シートに印刷する制御を行う。ここで、ずれ算出パターンは、カーボンブラックを含まないトナーで印刷された、発泡前の発泡性シートに印刷されるメッシュパターンを含む。
【0018】
制御部11は、図示省略したカメラ等の撮像により得られる青色メッシュと、青色メッシュとは異なる例えば赤色メッシュとに基づいて画像処理によりずれ量を算出することができる。また、制御部11は、印刷する画像の少なくとも一部を複数の多角形領域に分割し、ここで分割した領域毎に、ずれ量に基づく台形補正により発泡後の発泡シートに印刷する画像の変形処理を実行する。なお、制御部11は、発泡後の発泡シートに印刷する画像の空間周波数の高い部位を選択して変形処理を行なってもよく、また、発泡後の発泡シートに印刷する画像の種類によって決まる変形の程度の大きな部位を選択して変形処理を行なってもよい。
【0019】
インタフェースコントローラ12は、図示省略した、例えばパーソナルコンピュータ等のホスト機器から供給される印刷データをビットマップデータに変換し、フレームメモリ120に展開する。フレームメモリ120には、黒トナーKの印字データ、ホワイトW、シアンC、マゼンタM、イエローYの色インクそれぞれの印刷データに対応する記憶エリアが設定されており、この記憶エリアに各色の画像の印刷データが展開される。展開された印刷データは、プリンタコントローラ13に出力され、プリンタコントローラ13からプリンタ印刷部14に出力される。
【0020】
なお、プリンタ印刷部14は、プリンタエンジンであり、プリンタコントローラ13による制御にしたがい、図示省略した感光体ドラムや一次転写ローラ等を含む回転駆動系、初期化帯電器、光書込ヘッド等の被駆動部を有する画像形成ユニットの印加電圧や、転写ベルト、定着部の駆動などのプロセス負荷への駆動出力を制御する。また、同じく図示省略した搬送ローラ対の駆動、熱光線放射部の発光駆動と、そのタイミングを制御する。更に、インクジェットプリンタ部20の各部の動作を制御する。プリンタコントローラ13から出力された黒トナーKの画像データは、プリンタ印刷部14から図示省略した光書込ヘッドに供給される。また、ホワイトW、シアンC、マゼンタM、イエローYの色インクそれぞれの画像データは、印刷ヘッドに供給される。
【0021】
(実施形態の動作)
図2は、本実施形態の印刷装置1(制御部11)の処理動作を示すフローチャートである。以下、本実施形態の印刷装置1(制御部11)の処理動作について、
図2以降を参照して詳細に説明する。以降の説明では、画像全体にずれ算出パターンを印刷するケースを実施例1として、
図2〜
図8を参照しながら説明を行う。また、歪みが目立つ領域に着目してずれ算出パターンを印刷するケースを実施例2として、
図2のフローチャート、および
図9〜
図12を参照しながら説明を行う。
【0022】
まず、実施例1から説明する。
図2において、制御部11は、まず、ずれ算出領域の範囲選択の有無を判定する(ステップS101)。ずれ算出領域の範囲選択は、ユーザがタッチ式の画面に表示されたTD画像を見ながら操作パネル18を操作することにより実行される。
【0023】
実施例1では、ずれ算出領域の範囲指定が無いため(ステップS101”NO”)、制御部11は、例えば、
図3(a)に示した発泡前のTD画像に対し、
図3(b)に示した青色のメッシュMbからなるずれ算出用パターンを印刷する(ステップS102)。ここで、青色のメッシュパターンMbの大きさは任意である。
【0024】
次に、制御部11は、TD用紙の発泡加熱処理を実行する(ステップS104)。例えば、
図4(b)に示すように発泡加熱により青色のメッシュMbが印刷されたTD画像に歪む部位が出現する。ここで、発泡は、カーボンブラックを含んだグレーの印刷部位のみであり、青色は発泡しない。そのため、青色のメッシュMbの歪み(ずれ量)は、発泡シートの歪み量そのものである。
図4(a)は、青色のメッシュMbが印刷された発泡前のTD画像である。続いて制御部11は、発泡後のTD用紙に赤色のメッシュMrを印刷する制御を行う(ステップS105)。なお、赤色のメッシユMrと青色のメッシュMbは同一のデータとし、青色はカーボンブラックを含まないトナーとする。
【0025】
図5に青色のメッシュMbと赤色のメッシュMrが印刷されたTD画像が示されている。青色は加熱しても発泡しないため、赤色のメッシュMrと青色のメッシュMbのずれ量が歪み量になる。
図5の右端にこのずれの部分拡大図が示されている。ここでいうずれ量とは、青色メッシュMbの交点Mbcと近傍に位置する赤色メッシュMrの交点Mrcとの間の距離Mbc−Mrcをいう。ずれ量の算出は、製品出荷前の製造段階において、例えば、カメラを用いて行う(ステップS106)。すなわち、制御部11は、撮像により得られる青色メッシュMbの交点Mbcと赤色メッシュMrの交点Mrcとから画像処理によりずれ量を算出する。制御部11は、撮像に用いるカメラの解像度によって決まる単位距離(インチ)当たりのドット数により、ドット数を距離Mbc−Mrcに変換することによりずれ量の算出が可能である。
【0026】
次に、制御部11は、算出したずれ量だけカラー元画像を変形処理し、ここで変形処理して得られるカラー画像を発泡後のTD用紙に印刷すると歪みの無い画像を生成することができる(ステップS107)。
図6(a)にカラー元画像、
図6(c)に算出したずれ量を反映した最終的な印刷画像が示されている。発泡後のTD用紙にこのカラー画像を印刷することで歪みの無い画像を表現する。
【0027】
図7,
図8は、上記した変形処理に用いられる台形歪み補正を示す原理図である。例えば、
図7において、矩形領域内の注目点xが、水平方向または垂直方向、もしくはその両方に傾きを有して配置された場合、投写される画像には台形歪みが生じる。すなわち、補正前画像は矩形であるのに対して、投写される画像は水平方向および垂直方向のそれぞれに歪んでおり、当初の矩形とは異なる形状になっている。そこで台形歪み補正後画像では、補正前画像と逆方向に歪ませた補正後画像を形成することでその画像の形状が元の矩形になる。このように、台形歪みが生じた画像を矩形に投写されるように補正することを台形歪み補正と呼ぶ。
【0028】
例えば、
図7(a)に示すように、注目点xが、水平方向または垂直方向、もしくはその両方に傾きを有して配置された場合、投写される画像には台形歪みが生じる。制御部11は、まず、
図7(b)に示すように、注目点xを水平方向(X)へのみ線形拡大縮小変形する(x')。次に、
図7(c)に示すように、x'を垂直方向(Y)へのみ線形拡大し、あるいは縮小を行う。なお、ここで行われる拡大縮小は、バイリニアかバイキュービック補間を用いる。制御部11は、変形の影響範囲を、注目点xを含む最小の四角形内に留め、これをメッシュの数だけ繰り返し実行することで変形処理を実行する。
【0029】
また、
図8に示す台形歪み補正を行ってもよい。すなわち、
図8(b)に示すように、まず、
図8(a)に示す画像を矩形領域(1)〜(4)に領域分割して、X方向に平行に台形変形する(x')。次に、
図8(c)に示すように、変形された(1')〜(4')の矩形領域をY軸に平行に台形補正を行う。そして、
図8(d)に示すように、変形された画像x''に対して矩形領域(1')〜(4')の再定義を行う。
【0030】
より詳しくは、補正後画像の各座標の画素値は、補正前画像の一部の画素値とフィルター係数によって算出される算出画素として求められる。補正後画像を作成することは、補正後画像のすべての座標について算出画素を算出することに相当し、これがすなわち台形歪み補正処理に相当する。算出画素は、補正後画像の座標(X,Y)を座標変換することによって補正後画像の座標(X,Y)に対応する補正前画像の座標(x,y)を算出して、近傍画素とフィルター係数の畳み込み演算により算出画素の画素値を算出する。
【0031】
座標変換を行うにあたり、補正前画像の4頂点座標(x0,y0)、(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)、補正後画像の4頂点座標(X0,Y0)、(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)の計8点の座標を、以下に示す演算式(1)、(2)で示される連立8元一次方程式に適用し、未知数である座標変換係数a1〜a8を決定する。
【0033】
そして、補正後画像の各整数座標(補正後座標)に対する補正前画像の座標(補正前座標)は、上記した座標変換係数a1〜a8と、以下に示す演算式(3)から計算することができる。
【0035】
実施例1によれば、発泡前の画像にずれ算出用のパターンを印刷し、発泡後にも同一のずれ算出用のパターンを印刷する。そして、発泡前と発泡後のずれ算出用パターンのずれ量を計測し、そのずれ量だけ元のカラー画像を変形し、変形したカラー画像を発泡後のTD用紙に印刷する。したがって、発泡の凹凸により画像が歪んだ場合でも歪みの分だけカラー画像を変形して印刷することができるため、発泡と仕上げのカラー印刷がずれるといった問題がなくなり、TD印刷における印刷品位の向上が図れる。
【0036】
次に、実施例2について、
図2、および
図9〜
図12を参照しながら説明を行う。実施例2では、
図2のフローチャート中、ステップS101において、ずれ量算出領域の範囲指定ありと判定されるため(ステップS101”YES”)、制御部11は、ユーザが操作パネル10を操作することにより選択されるずれ量算出領域を取り込み、発泡前のTD用紙の選択された領域に対し青色メッシュMbによるずれ量算出パターンを印刷する(ステップS103)。
【0037】
ここで、ずれ算出用のパターンは、実施例1のようにTD用紙全体に対して行うのではなく、
図9(b)ののTD画像に示すように、A点とB点とを対角とする矩形領域Qに印刷するものとする。ここで選択される領域は、凹凸の変化(TD画像の濃度の差)が著しく大きい領域、周りに発泡部が無い(TD画像がない)領域、例えば、人、月、山等、ブロックとして認識できる領域等である。また、印刷される青色メッシュはカーボンブラックを含まないトナーで印刷されるものとする。すなわち、青色は加熱しても発泡しない。
【0038】
次に、制御部11は、TD用紙の発泡加熱処理を実行する(ステップS104)。発泡は、カーボンブラックを含んだグレーの印刷部位のみであり、青色は発泡しないため、
図10(b)に示すように発泡加熱により青色のメッシュMbが印刷されたTD画像に歪む部位が出現する。
図10(a)は、青色のメッシュMbが印刷された発泡前のTD画像である。続いて制御部11は、発泡後のTD用紙に赤色のメッシュMrを印刷する制御を行う(ステップS105)。なお、赤色のメッシユMrと青色のメッシュMbは同一のデータとし、青色はカーボンブラックを含まないインクとする。
【0039】
図11に青色のメッシュMbと赤色のメッシュMrが印刷されたTD画像が示されている。青色は加熱しても発泡しないため、赤色のメッシュMrと青色のメッシュMbのずれ量が歪み量になる。
図11の右端にこのずれの部分拡大図が示されている。ずれ量の算出は、実施例1同様、例えば、カメラを用い、画像処理によって実行される(ステップS106)。すなわち、制御部11は、撮像により得られる青色メッシュMbと赤色メッシュMrとから画像処理によりずれ量を算出する。続いて制御部11は、算出したずれ量だけカラー元画像を変形処理し、ここで変形処理して得られるカラー画像を発泡後のTD用紙に印刷すると、例えば、
図12(b)に印刷画像として示すように、変形処理により歪みの無い画像が生成される(ステップS107)。変形処理は、実施例1同様、台形歪み補正を行うこととし、上記した演算式(1)(2)(3)により実行される。なお、
図12(a)は、発泡前のカラー元画像であり、
図12(a)(b)において、点線で囲った枠内が補正する範囲として選択された領域である。
【0040】
実施例2によれば、実施例1同様、発泡の凹凸により画像が歪んだ場合でも歪みの分だけカラー画像を変形して印刷するため、発泡と仕上げのカラー印刷がずれるといった問題がなくなる。
【0041】
また、補正する範囲を絞り込むことで測定ポイントを少なくすることができる。または測定間隔を密にすることで、よりきめ細かい補正が可能になる。
【0042】
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態の印刷装置1によれば、制御部11は、発泡後の発泡性シートに印刷されるずれ算出パターン(青色メッシュ)に基づいて発泡性シートの発泡に伴うずれ量を測定し、測定したずれ量だけ画像を変形処理して発泡性シートに印刷するため、発泡前の画像と発泡後の画像に歪みが発生した場合でもその歪みを解消することで印刷品位の向上がはかれる。したがって、例えば、発泡の凹凸により画像に歪みが発生した場合でも発泡と仕上げのカラー印刷のずれを解消し、TD印刷による印刷品位の向上がはかれる。
【0043】
また、本実施形態の印刷装置1によれば、ずれ算出パターンが、カーボンブラックを含まないトナーで印刷された、発泡前の発泡性シートに印刷されることで、加熱しても発泡しない青色と、加熱により発泡する例えば赤色のメッシュパターンとの組み合わせにおいてずれ量を容易に測定することができる。また、発泡前の発泡性シートに印刷されたずれ算出パターン(青色メッシュ)と、発泡後の発泡性シートに印刷されたずれ算出パターン(赤色メッシュ)とに基づいて画像処理によりずれ量を算出することで自動的にずれ量を測定することができる。
【0044】
また、本実施形態の印刷装置1によれば、変形処理に台形歪み補正を用いることで、容易にずれ量を反映した最終的なカラー画像が生成でき、発泡後のTD用紙にこのカラー画像を印刷することで歪みの無い画像を表現することができる。また、印刷する画像の少なくとも一部を複数の多角形領域に分割し、分割した領域毎にずれ量に基づく台形補正により、発泡後の発泡性シートに印刷する画像の変形処理を実行することで、発泡の凹凸により画像に歪みが発生した場合でも発泡と仕上げのカラー印刷のずれを低い演算負荷で容易に解消することができる。
【0045】
また、本実施形態の印刷装置1によれば、発泡後の発泡性シートに印刷する画像の空間周波数の高い部位を選択して変形処理を行うことにより、あるいは、発泡後の発泡性シートに印刷する画像の種類によって決まる変形の程度の大きな部位を選択して変形処理を行うことにより、補正する範囲を絞り込むことができ、測定ポイントを少なくすることで演算負荷を一層低減できる。なお、発泡後の発泡性シートに印刷する画像の種類によって決まる変形の程度の大きな部位とは、例えば、凹凸の変化(TD画像の濃度の差)が著しく大きい領域、周りに発泡部が無い(TD画像がない)領域、例えば、人、月、山等、ブロックとして認識できる領域をいう。また、測定間隔を密にすればよりきめ細かな補正が可能になるといった効果が得られる。
【0046】
以下に本願出願時の特許請求の範囲を付記する。
[請求項1]
発泡性シートにトナーを付与して画像を印刷する印刷装置であって、
発泡前の前記発泡性シートに印刷されるずれ算出パターンに基づいて、前記発泡性シートの発泡に伴うずれ量を測定し、前記測定したずれ量だけ前記画像を変形処理して前記発泡性シートに印刷する制御部、
を有することを特徴とする印刷装置。
[請求項2]
前記ずれ算出パターンは、
カーボンブラックを含まないトナーで前記発泡前の発泡性シートに印刷されることを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
[請求項3]
前記ずれ算出パターンは、メッシュパターンであることを特徴とする請求項2記載の印刷装置。
[請求項4]
前記制御部は、
前記発泡前の発泡性シートに印刷された前記ずれ算出パターンと、前記発泡後の発泡性シートに印刷された前記ずれ算出パターンとに基づいて、画像処理により前記ずれ量を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の印刷装置。
[請求項5]
前記制御部は、
前記印刷する画像の少なくとも一部を複数の多角形領域に分割し、前記分割した領域毎に、前記ずれ量に基づく台形補正により、前記発泡後の発泡性シートに印刷する前記画像の変形処理を実行することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の印刷装置。
[請求項6]
前記制御部は、
前記画像の空間周波数の高い部位を選択して前記変形処理を行うことを特徴とする請求項1または5項記載の印刷装置。
[請求項7]
前記制御部は、
前記画像の種類によって決まる変形の程度の大きな部位を選択して前記変形処理を行うことを特徴とする請求項1または4記載の印刷装置。
[請求項8]
発泡性シートにトナーを付与して画像を印刷する印刷方法であって、
発泡前の前記発泡性シートに印刷されるずれ算出パターンに基づいて、前記発泡性シートの発泡に伴うずれ量を測定するステップと、
前記測定したずれ量だけ前記画像を変形処理して前記発泡性シートに印刷するステップと、
を有することを特徴とする印刷方法。
[請求項9]
コンピュータに、
発泡前の発泡性シートに印刷されるずれ算出パターンに基づいて、前記発泡性シートの発泡に伴うずれ量を測定する手順と、
前記測定したずれ量だけ前記画像を変形処理して前記発泡性シートに印刷する手順と、
を実行させるプログラム。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。