特許第5967075号(P5967075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5967075投射スクリーン、投射型画像表示装置およびマルチプロジェクションシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967075
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】投射スクリーン、投射型画像表示装置およびマルチプロジェクションシステム
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/60 20140101AFI20160728BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20160728BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20160728BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   G03B21/60
   G03B21/00 Z
   G03B21/14 Z
   H04N5/74 C
【請求項の数】39
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2013-502417(P2013-502417)
(86)(22)【出願日】2012年3月2日
(86)【国際出願番号】JP2012055383
(87)【国際公開番号】WO2012118181
(87)【国際公開日】20120907
【審査請求日】2015年2月10日
(31)【優先権主張番号】特願2011-46727(P2011-46727)
(32)【優先日】2011年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-211615(P2011-211615)
(32)【優先日】2011年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】青木 一彦
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 想
(72)【発明者】
【氏名】柳田 美穂
(72)【発明者】
【氏名】石橋 修
(72)【発明者】
【氏名】奥村 藤男
【審査官】 田辺 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−089525(JP,A)
【文献】 特開2008−170674(JP,A)
【文献】 特表2009−539120(JP,A)
【文献】 特表2010−533307(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/116836(WO,A1)
【文献】 特表2008−538145(JP,A)
【文献】 特開平02−221995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B26/10−27/64
G02F1/21−1/25
G03B21/00−21/30、21/56−21/64
33/00−33/16
G09G3/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域の面内方向に周期的に配置され、それぞれが光を受けて拡散光を出射する複数の拡散領域と、
前記表示領域内の特定の位置に設けられた読み出し可能な光情報を形成する光情報形成部と、
前記表示領域を前記複数の拡散領域に区画する複数のブラックストライプと、を有し、
前記複数のブラックストライプは、前記特定の位置を検出するための基準となる少なくとも1つの基準ブラックストライプを含み、
前記光情報形成部は、前記基準ブラックストライプ以外の各ブラックストライプ上に形成された、光を反射する複数の反射領域を含む、投射スクリーン。
【請求項2】
前記複数のブラックストライプのそれぞれと直交する複数の基準走査ラインを、さらに有し、
前記複数の反射領域は、前記基準ブラックストライプ以外の各ブラックストライプ上の、前記複数の基準走査ライン以外の領域に形成されている、請求項に記載の投射スクリーン。
【請求項3】
前記光情報形成部は、前記基準ブラックストライプ上に形成された1/4波長層を、さらに有する、請求項またはに記載の投射スクリーン。
【請求項4】
前記光情報形成部は、前記基準ブラックストライプ上に形成された、特定の波長の光を反射する、または、該特定の波長の光を減衰し、該特定の波長以外の波長の光を反射する波長選択層を、さらに有する、請求項またはに記載の投射スクリーン。
【請求項5】
前記光情報形成部は、前記基準ブラックストライプ上に形成された、光により励起されて所定波長の蛍光を放出する蛍光体領域を、さらに有する、請求項またはに記載の投射スクリーン。
【請求項6】
表示領域の面内方向に周期的に配置され、それぞれが光を受けて拡散光を出射する複数の拡散領域と、
前記表示領域内の特定の位置に設けられた読み出し可能な光情報を形成する光情報形成部と、
前記表示領域を前記複数の拡散領域に区画する複数のブラックストライプと、を有し、前記複数のブラックストライプは、前記特定の位置を検出するための基準となる少なくとも1つの基準ブラックストライプを含み、
前記光情報形成部は、
前記基準ブラックストライプ以外の各ブラックストライプ上に形成された、光を反射する複数の第1の反射領域と、
前記基準ブラックストライプ上に形成された、光を反射する第2の反射領域と、を有し、
前記第1の反射領域それぞれの幅が、前記第2の反射領域の幅と異なる、投射スクリーン。
【請求項7】
表示領域の面内方向に周期的に配置され、それぞれが光を受けて拡散光を出射する複数の拡散領域と、
前記表示領域内の特定の位置に設けられた読み出し可能な光情報を形成する光情報形成部と、
前記表示領域を前記複数の拡散領域に区画する複数のブラックストライプと、を有し、
前記複数のブラックストライプは、前記特定の位置を検出するための基準となる少なくとも1つの基準ブラックストライプを含み、
前記光情報形成部は、
前記基準ブラックストライプ以外の各ブラックストライプ上に形成された、光を反射する複数の第1の反射領域と、
前記基準ブラックストライプ上に形成された、光を反射する第2の反射領域と、を有し、
前記第2の反射領域は、特定の反射パターン形成する、投射スクリーン。
【請求項8】
表示領域の面内方向に周期的に配置され、それぞれが光を受けて拡散光を出射する複数の拡散領域と、
前記表示領域内の特定の位置に設けられた読み出し可能な光情報を形成する光情報形成部と、を有し、
前記光情報形成部は、前記複数の拡散領域のうちの特定の拡散領域上に設けられた、光により励起されて所定波長の蛍光を放出する蛍光体領域を含む、投射スクリーン。
【請求項9】
前記特定の拡散領域の長さ方向と直交する方向における前記蛍光体領域の幅が、前記特定の拡散領域の幅と一致する、請求項に記載の投射スクリーン。
【請求項10】
前記特定の拡散領域の長さ方向と直交する方向における前記蛍光体領域の幅が、前記特定の拡散領域の幅と異なる、請求項に記載の投射スクリーン。
【請求項11】
表示領域の面内方向に周期的に配置され、それぞれが光を受けて拡散光を出射する複数の拡散領域と、
前記表示領域内の特定の位置に設けられた読み出し可能な光情報を形成する光情報形成部と、
前記表示領域を前記複数の拡散領域に区画する複数のブラックストライプと、を有し、
前記複数のブラックストライプは、前記特定の位置を検出するための基準となる少なくとも1つの基準ブラックストライプを含み、
前記光情報形成部は、前記基準ブラックストライプ上に形成された、光により励起されて所定波長の蛍光を放出する蛍光体領域を含む、投射スクリーン。
【請求項12】
前記蛍光体領域は、赤外の蛍光を放出する蛍光体を含む、請求項から11のいずれかに記載の投射スクリーン。
【請求項13】
前記光情報形成部は、前記表示領域の範囲を示す光パターンを発生する、請求項1から12のいずれかに記載の投射スクリーン。
【請求項14】
前記複数の拡散領域は、
蛍光色が赤色の蛍光体が形成された第1の蛍光体領域と、
蛍光色が緑色の蛍光体が形成された第2の蛍光体領域と、
蛍光色が青色の蛍光体が形成された第3の蛍光体領域と、を有し、
前記第1乃至第3の蛍光体領域は、所定の順番で周期的に配置されている、請求項1から13のいずれかに記載の投射スクリーン。
【請求項15】
前記複数の拡散領域は、
蛍光色が赤色の蛍光体が形成された第1の蛍光体領域と、
蛍光色が緑色の蛍光体が形成された第2の蛍光体領域と、
光を拡散する光拡散領域と、を有し、
前記第1および第2の蛍光体領域および光拡散領域は、所定の順番で周期的に配置されている、請求項1から13のいずれかに記載の投射スクリーン。
【請求項16】
投射スクリーンと、
励起光源と、
前記励起光源からの光ビームで前記投射スクリーン上を走査する走査手段と、
前記投射スクリーンの前記走査が行われる面と対向して配置された光検出手段と、
前記走査手段を制御するとともに、前記励起光源の発光タイミングを制御して前記投射スクリーン上に画像を表示させる制御手段と、を有し、
前記投射スクリーンは、
表示領域の面内方向に周期的に配置され、それぞれが光を受けて拡散光を出射する複数の拡散領域と、
前記表示領域内の特定の位置に設けられた読み出し可能な光情報を形成する光情報形成部と、を有し、
前記光検出手段は、前記光ビームで前記投射スクリーン上を走査した際に前記光情報形成部が形成した光のパターンに応じた信号を出力し、
前記制御手段は、前記光検出手段の出力信号に基づいて、前記投射スクリーン上の前記特定の位置を取得し、該取得した特定の位置に基づいて前記投射スクリーン上の前記表示領域を特定し、該特定した表示領域に前記画像を表示させる、投射型画像表示装置であって、
前記投射スクリーンは、前記表示領域を前記複数の拡散領域に区画する複数のブラックストライプを、さらに有し、
前記複数のブラックストライプは、前記特定の位置を検出するための基準となる少なくとも1つの基準ブラックストライプを含み、
前記光情報形成部は、前記基準ブラックストライプ以外の各ブラックストライプ上に形成された、前記光ビームを前記光検出手段側の方向へ反射する複数の反射領域を含む、投射型画像表示装置。
【請求項17】
前記投射スクリーンは、前記複数のブラックストライプのそれぞれと直交する複数の基準走査ラインを、さらに有し、
前記複数の反射領域は、前記基準ブラックストライプ以外の各ブラックストライプ上の、前記複数の基準走査ライン以外の領域に形成されている、請求項16に記載の投射型画像表示装置。
【請求項18】
前記光情報形成部は、前記基準ブラックストライプ上に形成された1/4波長層を、さらに有する、請求項16または17に記載の投射型画像表示装置。
【請求項19】
前記光情報形成部は、前記基準ブラックストライプ上に形成された、特定の波長の光を反射する、または、該特定の波長の光を減衰し、該特定の波長以外の波長の光を反射する波長選択層を、さらに有する、請求項16または17に記載の投射型画像表示装置。
【請求項20】
前記光情報形成部は、前記基準ブラックストライプ上に形成された、前記光ビームにより励起されて所定波長の蛍光を放出する蛍光体領域を、さらに有し、
前記光検出手段の受光面または該受光面と対向する位置に設けられ、前記蛍光を透過し、該蛍光以外の光を反射または吸収するフィルタ手段を、さらに有する、請求項16または17に記載の投射型画像表示装置。
【請求項21】
投射スクリーンと、
励起光源と、
前記励起光源からの光ビームで前記投射スクリーン上を走査する走査手段と、
前記投射スクリーンの前記走査が行われる面と対向して配置された光検出手段と、
前記走査手段を制御するとともに、前記励起光源の発光タイミングを制御して前記投射スクリーン上に画像を表示させる制御手段と、を有し、
前記投射スクリーンは、
表示領域の面内方向に周期的に配置され、それぞれが光を受けて拡散光を出射する複数の拡散領域と、
前記表示領域内の特定の位置に設けられた読み出し可能な光情報を形成する光情報形成部と、を有し、
前記光検出手段は、前記光ビームで前記投射スクリーン上を走査した際に前記光情報形成部が形成した光のパターンに応じた信号を出力し、
前記制御手段は、前記光検出手段の出力信号に基づいて、前記投射スクリーン上の前記特定の位置を取得し、該取得した特定の位置に基づいて前記投射スクリーン上の前記表示領域を特定し、該特定した表示領域に前記画像を表示させる、投射型画像表示装置であって、
前記投射スクリーンは、前記表示領域を前記複数の拡散領域に区画する複数のブラックストライプを、さらに有し、
前記複数のブラックストライプは、前記特定の位置を検出するための基準となる少なくとも1つの基準ブラックストライプを含み、
前記光情報形成部は、
前記基準ブラックストライプ以外の各ブラックストライプ上に形成された、前記光ビームを前記光検出手段側の方向へ反射する複数の第1の反射領域と、
前記基準ブラックストライプ上に形成された、前記光ビームを前記光検出手段側の方向へ第2の反射領域と、を有し、
前記第1の反射領域それぞれの幅が、前記第2の反射領域の幅と異なる、投射型画像表示装置。
【請求項22】
投射スクリーンと、
励起光源と、
前記励起光源からの光ビームで前記投射スクリーン上を走査する走査手段と、
前記投射スクリーンの前記走査が行われる面と対向して配置された光検出手段と、
前記走査手段を制御するとともに、前記励起光源の発光タイミングを制御して前記投射スクリーン上に画像を表示させる制御手段と、を有し、
前記投射スクリーンは、
表示領域の面内方向に周期的に配置され、それぞれが光を受けて拡散光を出射する複数の拡散領域と、
前記表示領域内の特定の位置に設けられた読み出し可能な光情報を形成する光情報形成部と、を有し、
前記光検出手段は、前記光ビームで前記投射スクリーン上を走査した際に前記光情報形成部が形成した光のパターンに応じた信号を出力し、
前記制御手段は、前記光検出手段の出力信号に基づいて、前記投射スクリーン上の前記特定の位置を取得し、該取得した特定の位置に基づいて前記投射スクリーン上の前記表示領域を特定し、該特定した表示領域に前記画像を表示させる、投射型画像表示装置であって、
前記投射スクリーンは、前記表示領域を前記複数の拡散領域に区画する複数のブラックストライプを、さらに有し、
前記複数のブラックストライプは、前記特定の位置を検出するための基準となる少なくとも1つの基準ブラックストライプを含み、
前記光情報形成部は、
前記基準ブラックストライプ以外の各ブラックストライプ上に形成された、前記光ビームを前記光検出手段側の方向へ反射する複数の第1の反射領域と、
前記基準ブラックストライプ上に形成された、前記光ビームを前記光検出手段側の方向へ反射する第2の反射領域と、を有し、
前記第2の反射領域は、特定の反射パターンを形成する、投射型画像表示装置。
【請求項23】
投射スクリーンと、
励起光源と、
前記励起光源からの光ビームで前記投射スクリーン上を走査する走査手段と、
前記投射スクリーンの前記走査が行われる面と対向して配置された光検出手段と、
前記走査手段を制御するとともに、前記励起光源の発光タイミングを制御して前記投射スクリーン上に画像を表示させる制御手段と、を有し、
前記投射スクリーンは、
表示領域の面内方向に周期的に配置され、それぞれが光を受けて拡散光を出射する複数の拡散領域と、
前記表示領域内の特定の位置に設けられた読み出し可能な光情報を形成する光情報形成部と、を有し、
前記光検出手段は、前記光ビームで前記投射スクリーン上を走査した際に前記光情報形成部が形成した光のパターンに応じた信号を出力し、
前記制御手段は、前記光検出手段の出力信号に基づいて、前記投射スクリーン上の前記特定の位置を取得し、該取得した特定の位置に基づいて前記投射スクリーン上の前記表示領域を特定し、該特定した表示領域に前記画像を表示させる、投射型画像表示装置であって、
前記光情報形成部は、前記複数の拡散領域のうちの特定の拡散領域上に設けられた、前記光ビームにより励起されて所定波長の蛍光を放出する蛍光体領域を含む、投射型画像表示装置。
【請求項24】
前記特定の拡散領域の長さ方向と直交する方向における前記蛍光体領域の幅が、前記特定の拡散領域の幅と一致する、請求項23に記載の投射型画像表示装置。
【請求項25】
前記特定の拡散領域の長さ方向と直交する方向における前記蛍光体領域の幅が、前記特定の拡散領域の幅と異なる、請求項23に記載の投射型画像表示装置。
【請求項26】
投射スクリーンと、
励起光源と、
前記励起光源からの光ビームで前記投射スクリーン上を走査する走査手段と、
前記投射スクリーンの前記走査が行われる面と対向して配置された光検出手段と、
前記走査手段を制御するとともに、前記励起光源の発光タイミングを制御して前記投射スクリーン上に画像を表示させる制御手段と、を有し、
前記投射スクリーンは、
表示領域の面内方向に周期的に配置され、それぞれが光を受けて拡散光を出射する複数の拡散領域と、
前記表示領域内の特定の位置に設けられた読み出し可能な光情報を形成する光情報形成部と、を有し、
前記光検出手段は、前記光ビームで前記投射スクリーン上を走査した際に前記光情報形成部が形成した光のパターンに応じた信号を出力し、
前記制御手段は、前記光検出手段の出力信号に基づいて、前記投射スクリーン上の前記特定の位置を取得し、該取得した特定の位置に基づいて前記投射スクリーン上の前記表示領域を特定し、該特定した表示領域に前記画像を表示させる、投射型画像表示装置であって、
前記投射スクリーンは、前記表示領域を前記複数の拡散領域に区画する複数のブラックストライプを、さらに有し、
前記複数のブラックストライプは、前記特定の位置を検出するための基準となる少なくとも1つの基準ブラックストライプを含み、
前記光情報形成部は、前記基準ブラックストライプ上に形成された、前記光ビームにより励起されて所定波長の蛍光を放出する蛍光体領域を含む、投射型画像表示装置。
【請求項27】
前記複数の拡散領域は、
蛍光色が赤色の蛍光体が形成された第1の蛍光体領域と、
蛍光色が緑色の蛍光体が形成された第2の蛍光体領域と、
蛍光色が青色の蛍光体が形成された第3の蛍光体領域と、を有し、
前記第1乃至第3の蛍光体領域は、所定の順番で配置されており、
前記所定波長の蛍光が赤外の蛍光である、請求項23から26のいずれかに記載の投射型画像表示装置。
【請求項28】
前記複数の拡散領域は、
蛍光色が赤色の蛍光体が形成された第1の蛍光体領域と、
蛍光色が緑色の蛍光体が形成された第2の蛍光体領域と、
光を拡散する光拡散領域と、を有し、
前記第1および第2の蛍光体領域および光拡散領域は、所定の順番で配置されており、
前記所定波長の蛍光が赤外の蛍光である、請求項23から26のいずれかに記載の投射型画像表示装置。
【請求項29】
前記赤色および赤外の波長域を透過し、それ以外の波長域の光を吸収または反射する特性を備えたフィルタ手段を、さらに有
前記フィルタ手段は、前記光検出手段の受光面上または該受光面と対向する位置に設けられている、請求項27または28に記載の投射型画像表示装置。
【請求項30】
前記光検出手段は、第1および第2のフォトダイオードを有し、
前記第1のフォトダイオードの受光面上または該受光面と対向する位置に設けられた、前記赤色の波長域の光を透過し、それ以外の波長域の光を吸収または反射する特性を備えた第1のフィルタと、
前記第2のフォトダイオードの受光面上または該受光面と対向する位置に設けられた、前記赤外の波長域の光を透過し、それ以外の波長域の光を吸収または反射する特性を備えた第2のフィルタと、をさらに有する、請求項27または28に記載の投射型画像表示装置。
【請求項31】
前記光情報形成部は、前記表示領域の範囲を示す光のパターンを発生する、請求項16から30のいずれかに記載の投射型画像表示装置。
【請求項32】
請求項16から31のいずれか1項に記載の投射型画像表示装置よりなる複数のプロジェクタユニットと、
入力映像信号に基づいて前記複数のプロジェクタユニットそれぞれに画像を表示させる主制御部と、を有する、マルチプロジェクションシステム。
【請求項33】
前記複数の拡散領域が形成された面上に、前記蛍光体それぞれを励起する励起光の波長域を透過し、それ以外の波長域の光を吸収または反射する特性を備えたフィルタ手段を、さらに有する、請求項14または15に記載の投射スクリーン。
【請求項34】
前記複数の拡散領域が形成された面上に、前記蛍光体それぞれを励起する励起光を透過し、可視光を反射する波長選択反射層を、さらに有する、請求項14または15に記載の投射スクリーン。
【請求項35】
前記投射スクリーンの走査面側に、励起光と赤外光および赤色光の一部を透過し、可視光を反射する波長選択反射層を、さらに有する、請求項29または30に記載の投射型画像表示装置。
【請求項36】
投射スクリーンと、
励起光源と、
前記励起光源からの光ビームで前記投射スクリーン上を走査する走査手段と、
前記投射スクリーンの前記走査が行われる面と対向して配置された光検出手段と、
前記走査手段を制御するとともに、前記励起光源の発光タイミングを制御して前記投射スクリーン上に画像を表示させる制御手段と、を有し、
前記投射スクリーンは、
表示領域の面内方向に周期的に配置され、それぞれが光を受けて拡散光を出射する複数の拡散領域と、
前記表示領域内の特定の位置に設けられた読み出し可能な光情報を形成する光情報形成部と、を有し、
前記光検出手段は、前記光ビームで前記投射スクリーン上を走査した際に前記光情報形成部が形成した光のパターンに応じた信号を出力し、
前記制御手段は、前記光検出手段の出力信号に基づいて、前記投射スクリーン上の前記特定の位置を取得し、該取得した特定の位置に基づいて前記投射スクリーン上の前記表示領域を特定し、該特定した表示領域に前記画像を表示させる、投射型画像表示装置であって、
前記投射スクリーンは、前記表示領域内に、複数のブラックストライプと、前記特定の位置を検出するための基準となる複数の基準ブラックストライプを含み、
前記光情報形成部は、前記基準ブラックストライプ以外の各ブラックストライプ上に形成された、前記光ビームを前記光検出手段側の方向へ反射する複数の反射領域を含み、
前記複数の基準ブラックストライプが、前記走査手段の走査範囲内に非線対称に配置されている、投射型画像表示装置。
【請求項37】
前記複数の基準ブラックストライプは周期的に配置されており、該基準ブラックストライプの間隔が、前記表示領域の走査方向における長さを正の整数で割った値である、請求項36に記載の投射型画像表示装置。
【請求項38】
前記複数の基準ブラックストライプは周期的に配置されており、該基準ブラックストライプの間隔が、前記表示領域の走査方向における長さの3分の1の長さである、請求項37に記載の投射型画像表示装置。
【請求項39】
繰り返される基準ブラックストライプのパターンが、前記走査方向に垂直な所定の線に対して非対称なパターンである、請求項37または38に記載の投射型画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投射スクリーンおよび投射型画像表示装置に関し、特に、マルチプロジェクションシステムに適用される投射スクリーンおよび投射型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、励起光を走査して蛍光スクリーン上に画像を表示させる投射型画像表示装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の投射型画像表示装置は、蛍光スクリーン、レーザモジュール、光検知ユニットおよびフィードバック調整手段を有する。
【0004】
蛍光スクリーンは、面内方向に一定の間隔で形成された複数の蛍光ストライプと、これら蛍光ストライプが設けられた領域の外側に配置された、蛍光ストライプの開始位置を示す基準マークとを有する。
【0005】
レーザモジュールは、レーザビーム(励起光)で蛍光スクリーン上を走査する。光検知ユニットは、基準マークで反射されたレーザビームを検出する。光検知ユニットの出力信号(基準マークの検出信号)は、フィードバック信号としてフィードバック調整手段に供給されている。
【0006】
フィードバック調整手段は、光検知ユニットからの基準マークの検出信号に基づいて、レーザビームの基準マークへの照射タイミングを取得し、該取得した照射タイミングに基づいて、レーザモジュールの発光タイミングを調整する。
【0007】
上記の投射型画像表示装置では、変調信号に基づいて変調されたレーザビーム(光パルス)で、蛍光スクリーン上を、蛍光ストライプと直交する方向に走査して、各蛍光ストライプの蛍光体を励起することで画像を表示する。
【0008】
フィードバック調整手段は、レーザビームが蛍光ストライプに適切なタイミングで照射されるように、光検知ユニットからの基準マークの検出信号に基づいて、レーザモジュールの発光タイミングを制御する。
【0009】
特許文献2には、投射型画像表示装置に用いられる蛍光スクリーンが記載されている。
【0010】
特許文献2に記載の蛍光スクリーンは、面内方向に一定の間隔で形成された複数の蛍光体ストライプと、蛍光体ストライプ間に形成された複数のストライプデバイダとを有する。複数のストライプデバイダのそれぞれは、光学反射性または拡散性の材料で形成され、入射光の一部を反射する。
【0011】
上記の蛍光スクリーンを備えた投射型画像表示装置において、蛍光スクリーン上の蛍光体ストライプと交差する方向に励起ビームを走査する。各ストライプデバイダは、入射した励起ビームの一部を反射する。この反射光を、蛍光スクリーンの走査面と対向する位置に設けられた受光器で検出する。
【0012】
受光器の出力信号に基づいて、水平走査における励起ビームの各ストライプデバイダへの照射タイミングを取得し、その照射タイミングに基づいて、蛍光体ストライプに対する励起ビームの相対位置を決定することで、励起ビームを蛍光ストライプに適切なタイミングで照射することができる。この場合、各ストライプデバイダは、蛍光体ストライプに対する励起ビームの相対位置を適切に維持するためのサーボマークとして機能する。
【0013】
なお、各ストライプデバイダは、赤外の蛍光を放出する蛍光材料、または、蛍光体ストライプが放出する可視光(蛍光)とは波長が異なる他の光(可視光)を放出する蛍光材料により形成してもよい。この場合は、ストライプデバイダからの蛍光(赤外または他の光)のみ通過させるフィルタを受光器の受光面に設ける。
【0014】
最近では、プロジェクタとして特許文献1や特許文献2に記載のものを複数用いて、それぞれが励起光を走査することで蛍光スクリーン上に画像を表示し、各プロジェクタにて表示された画像が繋ぎ合わされることで1つの画像が形成されるマルチプロジェクションシステムが提供されている。
【0015】
マルチプロジェクションシステムにおいて、各プロジェクタの表示画像を継ぎ目なく繋ぎ合わせるためには、蛍光スクリーン上の、各プロジェクタが表示する範囲を、正確に規定する必要がある。
【0016】
上記規定した表示範囲に合わせて各プロジェクタや蛍光スクリーンを正確に取り付けるためには、高い取り付け精度が要求される。高い取り付け精度を実現するには高度な技術が要求され、取り付け作業における作業者への負担が大きい。
【0017】
また、一般に、蛍光スクリーン上を励起光で走査して画像を表示する画像表示装置においては、蛍光スクリーンの設置や交換、振動や歪み、温度や湿度などの環境変化、重力の影響、経年変化といった様々な要因によって、走査系と蛍光スクリーンとの相対的な位置関係が変化する。このため、マルチプロジェクションシステムにおいて、各プロジェクタの表示画像を継ぎ目なく繋ぎ合わせた状態を維持するためには、定期的に、または、任意のタイミングで、各プロジェクタが、自身が表示する画像の表示範囲を特定し、その特定した表示範囲が上記規定した表示範囲になるように調整することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特表2009−539120号公報
【特許文献2】特表2009−537868号公報
【発明の概要】
【0019】
特許文献1に記載のものにより各プロジェクタを構成したマルチプロジェクションシステムにおいては、自身が表示する画像の表示範囲を特定することは可能であるが、以下のような問題がある。
【0020】
図1に、各プロジェクタによって蛍光スクリーン上に表示された画像を模式的に示す。
【0021】
図1に示す例では、6台のプロジェクタが用いられている。それぞれのプロジェクタが画像101を蛍光スクリーン100上に表示する。各画像101周辺には、基準マーク102が設けられている。
【0022】
各プロジェクタは、基準マーク102を検出することで、自身が表示する画像101の表示範囲を特定することができる。このため、隣接するプロジェクタ間で、それぞれが表示した画像の一部が互いに重なることを防止することができる。
【0023】
しかし、基準マーク102が設けられた領域が、画像の繋ぎ目として視認されるため、表示品質が大幅に劣化してしまう。
【0024】
特許文献2に記載のものにより各プロジェクタを構成したマルチプロジェクションシステムにおいては、各プロジェクタは、自身が表示する画像の表示範囲を特定することができない。このため、前述した要因(蛍光スクリーンの設置や交換、振動や歪み、温度や湿度などの環境変化、重力の影響、経年変化など)によって、走査系と蛍光スクリーンとの相対的な位置関係が変化し、各プロジェクタの表示画像を継ぎ目なく繋ぎ合わせた状態を維持することが困難となる。
【0025】
加えて、プロジェクタと蛍光スクリーンの取り付けに高い精度が要求されるため、取り付け作業における作業者への負担も大きい。
【0026】
本発明の目的は、マルチプロジェクションシステムに適用した場合に、取り付け作業における作業者への負担を軽減することができ、各画像を継ぎ目なく繋ぎ合わせて表示することができる、投射スクリーンおよび投射型画像表示装置を提供することにある。
【0027】
本発明のさらなる目的は、その投射型画像表示装置を用いたマルチプロジェクションシステムを提供することにある。
【0028】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、
表示領域の面内方向に周期的に配置され、それぞれが光を受けて拡散光を出射する複数の拡散領域と、
前記表示領域内の特定の位置に設けられた読み出し可能な光情報を形成する光情報形成部と、を有する、投射スクリーンが提供される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、
投射スクリーンと、
励起光源と、
前記励起光源からの光ビームで前記投射スクリーン上を走査する走査手段と、
前記投射スクリーンの前記走査が行われる面と対向して配置された光検出手段と、
前記走査手段を制御するとともに、前記励起光源の発光タイミングを制御して前記投射スクリーン上に画像を表示させる制御手段と、を有し、
前記投射スクリーンは、
表示領域の面内方向に周期的に配置され、それぞれが光を受けて拡散光を出射する複数の拡散領域と、
前記表示領域内の特定の位置に設けられた読み出し可能な光情報を形成する光情報形成部と、を有し、
前記光検出手段は、前記光ビームで前記投射スクリーン上を走査した際に前記光発生部が発生した光のパターンに応じた信号を出力し、
前記制御手段は、前記光検出手段の出力信号に基づいて、前記投射スクリーン上の前記特定の位置を取得し、該取得した特定の位置に基づいて前記投射スクリーン上の前記表示領域を特定し、該特定した表示領域に前記画像を表示させる、投射型画像表示装置が提供される。
【0030】
本発明のさらに別の態様によれば、
上記の投射型画像表示装置よりなる複数のプロジェクタユニットと、
入力映像信号に基づいて前記複数のプロジェクタユニットそれぞれに画像を表示させる主制御部と、を有する、マルチプロジェクションシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】特許文献1に記載のものを適用したマルチプロジェクションシステムにて表示される画像の一例を示す模式図である。
図2】本発明の第1の実施形態である投射型画像表示装置の構成を示すブロック図である。
図3図2に示す投射型画像表示装置にて用いられる、水平方向の画面境界を検出するための蛍光スクリーンの一部を示す模式図である。
図4図3に示す蛍光スクリーンの再帰反射領域の一例を示す模式図である。
図5図2に示す投射型画像表示装置において、一定強度の励起光を水平方向に一定の走査速度で走査した場合の光検出手段の出力信号を示す図である。
図6図2に示す投射型画像表示装置において、一定強度の励起光を水平方向に一定の走査速度で走査した場合の光検出手段の出力信号に含まれるインターバル時間を説明するための図である。
図7】走査角度と1水平ラインの描画時間との対応関係を示すルックアップテーブルの一例を示す図である。
図8図2に示す投射型画像表示装置の主要な構成を示すブロック図である。
図9図8に示す投射型画像表示装置のキャリブレーション時に行われるストライプ境界位置情報の作成の一手順を示すフローチャートである。
図10】本発明の第2の実施形態の投射型画像表示装置にて用いられる蛍光スクリーンの一部を示す模式図である。
図11図10に示す蛍光スクリーンを励起光で走査する場合の走査軌跡を示す模式図である。
図12図10に示す走査軌跡で走査が行われた場合の光検出手段の出力信号を示す図である。
図13】本発明の第2の実施形態の投射型画像表示装置にて用いられる蛍光スクリーンの一部を示す模式図である。
図14図13に示す蛍光スクリーンに対して一定強度の励起光を水平方向に一定の走査速度で走査した場合の光検出手段の出力信号を示す図である。
図15】本発明の第4の実施形態である投射型画像表示装置の構成を示すブロック図である。
図16図15に示す投射型画像表示装置の蛍光スクリーンの構成を示す模式図である。
図17】SiのPDの代表的な感度特性を示す特性図である。
図18図15に示す投射型画像表示装置における、一定強度の励起光を水平方向に一定の走査速度で走査した場合の光検出手段の出力信号と蛍光体領域および基準パターンとの対応関係を示す模式図である。
図19】本発明の第5の実施形態である投射型画像表示装置の構成を示すブロック図である。
図20図19に示す投射型画像表示装置における、一定強度の励起光を水平方向に一定の走査速度で走査した場合の光検出手段の出力信号と蛍光体領域および基準パターンとの対応関係を示す模式図である。
図21】本発明の別の実施形態の投射型画像表示装置における、一定強度の励起光を水平方向に一定の走査速度で走査した場合の光検出手段の出力信号と蛍光体領域および基準パターンとの対応関係を示す模式図である。
図22】本発明の他の実施形態の投射型画像表示装置における、一定強度の励起光を水平方向に一定の走査速度で走査した場合の光検出手段の出力信号と蛍光体領域および基準パターンとの対応関係を示す模式図である。
図23】本発明の投射型画像表示装置を適用したマルチプロジェクションシステムにて表示される画像の一例を示す模式図である。
図24】本発明の第6の実施形態である投射型画像表示装置を説明するための説明図である。
図25】本発明の第6の実施形態である投射型画像表示装置を説明するための説明図である。
図26】本発明の第6の実施形態である投射型画像表示装置を説明するための説明図である。
図27】本発明の第6の実施形態である投射型画像表示装置を説明するための説明図である。
図28】本発明の第6の実施形態である投射型画像表示装置を説明するための説明図である。
図29A】本発明の第6の実施形態である投射型画像表示装置を説明するための説明図である。
図29B】本発明の第6の実施形態である投射型画像表示装置を説明するための説明図である。
図30】本発明の第7の実施形態である投射型画像表示装置の蛍光スクリーンを説明するための説明図である。
図31】本発明の第7の実施形態である投射型画像表示装置の蛍光スクリーンを説明するための説明図である。
図32】本発明の第7の実施形態である投射型画像表示装置の蛍光スクリーンを説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 制御手段
2 光検出手段
4 走査手段
5 励起光源
6 蛍光スクリーン
7 再帰反射光(もしくは拡散反射光)
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0034】
(第1の実施形態)
図2は、本発明の第1の実施形態である投射型画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【0035】
図2を参照すると、投射型画像表示装置は、制御手段1、光検出手段2、走査手段4、励起光源5および蛍光スクリーン6を有する。
【0036】
励起光源5は、蛍光スクリーン6上に形成された蛍光体を励起する励起光を出力するものであって、例えばレーザダイオード(LD)に代表されるレーザ光源である。 走査手段4は、励起光源5からの光ビーム(励起光)で蛍光スクリーン6を走査するものであって、ポリゴンミラーやガルバノミラー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー等からなる。走査手段4は、水平方向と垂直方向の両方向の走査可能な2軸走査素子であっても良く、また、水平方向に走査する走査素子と垂直方向に走査する走査素子の2つの素子を組み合わせた構成であっても良い。走査手段4は、励起光を水平方向に走査し、蛍光スクリーン6の左右の端部で走査方向を反転させる。この水平方向の走査と同時に、垂直方向にも走査することで、蛍光スクリーン6上を2次元走査させることが可能となる。
【0037】
蛍光スクリーン6は、面内方向に周期的に配置された複数の蛍光体領域を備えており、各蛍光体領域の間の領域が、各蛍光体領域からの蛍光の干渉を防ぐ黒色材領域(例えば、ブラックストライプ)となっている。蛍光体領域は、励起光を受けて蛍光(拡散光)を出射する拡散領域である。
【0038】
図3に、水平方向の画面境界を検出するための蛍光スクリーン6の一例を示す。
【0039】
図3に示すように、蛍光スクリーン6は、蛍光体領域61〜63、基準ブラックストライプ(BS)60−1およびブラックストライプ60−2を有する。
【0040】
蛍光体領域61は、例えば赤色の蛍光を発光する蛍光体が形成された領域である。蛍光体領域62は、例えば緑色の蛍光を発光する蛍光体が形成された領域である。蛍光体領域63は、例えば青色の蛍光を発光する蛍光体が形成された領域である。図3に示す例では、蛍光体領域61、62、63はこの順番で特定の方向に周期的に形成されている。
【0041】
基準ブラックストライプ60−1は、例えば画面中央付近の赤色の蛍光体領域61と緑色の蛍光体領域62の間に形成されている。画面中央付近以外の領域では、ブラックストライプ60−2が、蛍光体領域61、62、63の各領域の間に形成されている。
【0042】
なお、図3に示した例では、基準ブラックストライプ60−1は1本であるが、これに限定されない。複数の基準ブラックストライプ60−1が蛍光スクリーン6上に適宜に配置されてもよい。
【0043】
図4は、ブラックストライプ60−2の断面図である。
【0044】
図4を参照すると、反射領域64が、ブラックストライプ60−2の励起光が照射される面上に形成されている。反射領域64は、再帰反射材である複数のガラスビーズ64aからなる。ガラスビーズ64aは、球状であって、大凡その半球部分がブラックストライプ60−2の表面に埋め込まれている。ガラスビーズ64aの残りの半球部分は、ブラックストライプ60−2の表面から露出している。
【0045】
励起光源5からの光ビーム(励起光)がブラックストライプ60−2上を通過する際、光ビームがガラスビーズ64aの露出した表面に入射する。入射光は、表面側の境界面(ガラスビーズ64aの表面と空気との境界)で屈折する。
【0046】
ガラスビーズ64a内に入射した光は、ガラスビーズ64aとブラックストライプ60−2との境界面で反射され、その反射光が表面側の境界面から出射される。反射光が表面側の境界面を通過する際に屈折し、その境界面からの出射光は、再帰反射光7として、入射光とは反対の方向に進行する。
【0047】
ガラスビーズ64a内に入射した光をガラスビーズ64aとブラックストライプ60−2との境界面で反射させるために、例えば、ブラックストライプ60−2に反射性の材料が含まれていてもよい。あるいは、ガラスビーズ64aの球面全体が半透過・半反射性の膜で覆われていてもよい。
【0048】
ガラスビーズ64aとブラックストライプ60−2との境界面の一点において、焦点を結ぶように、ガラスビーズ64aを設計することで、確実に入射光とは反対の方向に、再帰反射光7を進行させることができる。
【0049】
このようなガラスビーズ64aよりなる反射領域64は、スクリーン印刷を用いて形成することができる。なお、反射領域64は、再帰反射プリズムなど、再帰反射性を持つ光学部材で形成されていてもよい。また、反射領域64は、光拡散材などにより形成されていてもよい。光拡散材は、例えば炭酸カルシウムや酸化チタン等の粒子を用いてもよい。
【0050】
再び、図2を参照する。光検出手段2は、例えばフォトダイオードより構成されるものであって、反射領域64からの反射光7を検出する。
【0051】
制御手段1は、キャリブレーション時において、一定強度の励起光を水平方向(蛍光体領域61〜63の長手方向と交差または直交する方向)に一定の走査速度で走査し、光検出手段2の出力信号に基づいて、ストライプ境界位置情報を取得する。キャリブレーションとは、走査手段4と蛍光スクリーン6との相対的な位置関係のずれを修正することを意味する。キャリブレーションは、投射型画像表示装置の電源投入時に実行されてもよく、また、一定期間毎に、または、任意のタイミングで実行されてもよい。
【0052】
図5に、一定強度の励起光を水平方向に一定の走査速度で走査した場合の光検出手段2の出力信号を模式的に示す。
【0053】
基準ブラックストライプ60−1およびブラックストライプ60−2のストライプ間隔は略一定であるので、蛍光スクリーン6の左端から右端に向かって励起光を略一定の走査速度で走査すると、光検出手段2は、各ブラックストライプ60−2上の反射領域64からの反射光7を略一定時間毎に検出する。一方、基準ブラックストライプ60−1上には反射領域64は設けられていないので、励起光が基準ブラックストライプ60−1に照射されても、光検出手段2にて反射光が検出されることはない。したがって、光検出手段2の出力信号は、図5に示すように、基準ブラックストライプ60−1への励起光の照射がなされた時間帯以外は、パルス状の波形が略一定時間毎に出力されたものとなる。
【0054】
図5に示した出力信号において、パルス状の波形の間隔が他の間隔よりも大きな部分が、基準ブラックストライプ60−1への励起光の照射がなされた部分(これは基準ブラックストライプ60−1の位置に対応する)である。よって、制御手段1は、光検出手段2の出力信号の波形の間隔に基づいて、基準ブラックストライプ60−1を特定することができる。
【0055】
また、1水平走査期間のパルス状の波形の数は予め決まっているので、基準ブラックストライプ60−1の位置からの波形の数に基づいて、水平方向の最外縁のブラックストライプ60−2を特定することができる。制御手段1は、1水平走査期間のパルス状の波形の数をカウントするカウンターを備え、基準ブラックストライプ60−1を特定すると、カウンターによる波形のカウントを開始する。そして、制御手段1は、カウンターのカウント値が所定値に達したときに、蛍光スクリーン6の水平方向の最外縁に位置するブラックストライプ60−2への励起光の照射がなされたと判断する。
【0056】
このようにして、制御手段1は、光検出手段2の出力波形に基づいて、基準ブラックストライプ60−1を検出し、該検出した基準ブラックストライプ60−1の位置から、励起光のビームスポットが通過する蛍光ストライプを所定回数カウントすることにより、水平方向の最外縁のブラックストライプ60−2を特定し、この特定した位置情報に基づいて、水平方向における表示範囲を決定する。ここで、表示範囲は、蛍光体領域61〜63、基準ブラックストライプ60−1およびブラックストライプ60−2を含む範囲である。制御手段1は、決定した表示範囲の情報をストライプ境界位置情報として保持する。そして、ストライプ境界位置情報に基づいて、励起光源5の発光タイミングを制御する。
【0057】
表示範囲の決定後、制御手段1は、水平走査において、ストライプ境界位置情報に基づく表示範囲内で励起光を照射し、また水平振幅を調整する。
【0058】
走査手段4の特性次第では、水平方向に一定の速度で走査することができない場合がある。例えば、共振型のデバイスを使用したときである。共振型のデバイスが正対したスクリーン上を走査した場合、その位置は以下の式で表される。
【0059】
【数1】
ここで、θmaxは水平走査の最大角、ωは水平走査角速度、θvは垂直入射角度、zはスクリーンまでの距離である。
【0060】
上記式が示すように、水平の走査角度が大きくなると単位長さ当たりの通過時間が大きくなるため、図5のような信号プロファイルを得ることができない。しかし、走査している近傍のみをみれば、略一定速度の走査と同等とみなすことが可能であり、上記説明したのと同様の方法で基準ブラックストライプ60−1の検出、ストライプ境界位置情報の取得、制御が可能である。
【0061】
水平走査では、最外縁のブラックストライプ60−2の近傍で走査が折り返しされる。この走査の折り返し期間中、反射光は生じないので、光検出手段2の出力波形は、非反射区間であるインターバル時間を含む。
【0062】
図6に、インターバル時間を含む光検出手段2の出力信号の一例を示す。最外縁のブラックストライプ60−2からの反射光を検出した後、励起光の照射が停止される。走査が折り返された後、再び、最外縁のブラックストライプ60−2の位置で励起光の照射が開始される。このため、光検出手段2の出力信号において、最外縁のブラックストライプ60−2への励起光の照射から、走査が折り返されて、再び最外縁のブラックストライプ60−2に励起光が照射されるまでの期間T1が、非照射区間であるインターバル時間とされる。
【0063】
制御手段1は、走査角と1水平ラインのインターバル時間との対応関係を示すルックアップテーブルを参照する。そのようなルックアップテーブルの一例として、図7に、走査角と1水平ラインの描画時間との対応関係を示すルックアップテーブルを示す。縦軸は正規化描画時間を示し、横軸は走査角度(°)を示す。ここで、正規化描画時間は1からインターバル時間T1を引いた値で与えられる。
【0064】
制御手段1は、ルックアップテーブルを参照し、インターバル時間T1が最適な値になるように、走査手段4の走査角を制御する。例えば、走査手段4がMEMSよりなる場合、制御手段1は、周波数を変化させることなくMEMSに供給する電圧を制御することで、走査角の制御を行う。
【0065】
なお、基準ブラックストライプ60−1は、必ずしも画面中央付近にある必要はない。基準ブラックストライプ60−1として、画面内のどのブラックストライプ60−2が用いられてもよい。
【0066】
次に、本実施形態の投射型画像表示装置の発光タイミング制御の動作について説明する。
【0067】
図8は、投射型画像表示装置の発光タイミング制御に関わる構成を示すブロック図である。
【0068】
図8を参照すると、投射型画像表示装置は、蛍光スクリーン6、クロック回路9、照射タイミング制御部10、照射光量制御部11、ピーク検出部12、メモリ13、レーザ制御部14、PD(フォトダイオード)20、レーザ走査部40およびLD(レーザダイオード)50を有する。メモリ13は、ストライプ境界位置情報を保持する。
【0069】
照射タイミング制御部10、照射光量制御部11、ピーク検出部12、メモリ13およびレーザ制御部14は、図2に示した制御手段1が備える各機能である。メモリ13は、制御手段1とは別に設けられても良い。
【0070】
PD20、レーザ走査部40およびLD50はそれぞれ、図2に示した光検出手段2、走査手段4、励起光源5に対応する。
【0071】
照射タイミング制御部10は、メモリ13に格納されたストライプ境界位置情報に基づいて、LD50の駆動タイミング(発光タイミング)を制御するための照射タイミング指示信号をレーザ制御部51へ出力するとともに、描画開始タイミング信号をピーク検出部12へ出力する。
【0072】
照射光量制御部11は、外部からの映像信号S1に基づいて、LD50に供給される駆動パワーの大きさ(光量に対応する)を制御するための照射光量指示信号をレーザ制御部51に出力する。
【0073】
レーザ制御部51は、照射タイミング制御部10からの照射タイミング指示信号に従ってLD50を駆動するとともに、照射光量制御部11からの照射光量指示信号に従ってLD50への駆動パワーを調整する。さらに、レーザ制御部51は、照射タイミング制御部10からの照射タイミング指示信号に従ってレーザ走査部40を制御する。
【0074】
キャリブレーションを行った後に、画像表示モードにおいて、上記の発光タイミングの制御が実施される。
【0075】
図9は、キャリブレーション時のストライプ境界位置情報の作成手順を示すフローチャートである。
【0076】
図9を参照すると、まず、照射光量制御部11が、照射光量を一定値とする旨の照射光量指示信号をレーザ制御部51に出力する。そして、レーザ制御部51が、その照射光量指示信号に従ってLD50の駆動パワーを一定値に設定する(ステップS20)。
【0077】
次に、照射タイミング制御部10が、描画開始タイミング信号をピーク検出部12へ出力するとともに、LD50の駆動タイミングを制御するための照射タイミング指示信号をレーザ制御部51へ出力する(ステップS21)。この場合の照射タイミング指示信号は、LD50を一定期間だけ連続して発光させる旨の信号である。ここで、一定期間は例えば1フレームに相当する期間である。
【0078】
次に、PD20が再帰反射光(もしくは拡散反射光)7を検出し(ステップS22)、ピーク検出部12が、PD20から出力波形のピークを検出する(ステップS23)。そして、ピーク検出部12が、ピーク出現タイミングに基づいてストライプ境界位置を検出する(ステップS24)。ストライプ境界位置は、例えば、描画開始時点からピークの出現時点までの時間をクロック回路9からのクロック信号に基づいてカウントした結果から求めることができる。
【0079】
最後に、ピーク検出部12が、ストライプ境界位置の検出結果に基づいて、ストライプ境界位置情報を作成し、そのストライプ境界位置情報をメモリ13に格納する(ステップS25)。
【0080】
なお、ピーク検出部12は検出波形のピーク出現のタイミングではなく、任意の閾値以上の信号波形の立ち上がりもしくは立ち下がりのタイミングを検出してもよい。立ち上がりもしくは立ち下がりを検出後は、ピーク検出と同様にストライプ境界位置を検出し、検出結果に基づいて、ストライプ境界位置情報を作成し、そのストライプ境界位置情報をメモリ13に格納することで同等の制御を行うことが可能となる。
【0081】
本実施形態の投射型画像表示装置において、ブラックストライプは、縦ストライプのものであるが、これに代えて、横ストライプのもの(横ブラックストライプ)を用いてもよい。横ブラックストライプは、縦ブラックストライプと交差または直交する。この場合は、蛍光スクリーン6上で、光ビームが横ブラックストライプを斜めに横断するような走査が行われる。
【0082】
本実施形態の投射型画像表示装置によれば、励起光源5からの光ビームで蛍光スクリーン6上を走査して画像を表示しながら、表示領域の境界を検出し、その検出した境界に基づいて、次回の走査(次入力フレームの画像表示)の際の励起光源5の発光タイミングを制御することができる。この制御によれば、常に、最適なタイミングで光ビームを表示領域に照射することができる。
【0083】
本実施形態の投射型画像表示装置を用いてマルチプロジェクションシステムを構成する場合は、図2に示した構成を有する複数のユニットを用意する。各ユニットの蛍光スクリーン6を繋ぎ合わせて1枚の蛍光スクリーンとする。この場合、ユニットそれぞれの表示範囲は、図3に示した蛍光スクリーン6全体である。
【0084】
また、図3に示した構成の1枚の蛍光スクリーンを複数の画面に分割し、それぞれの画面に対応してユニットを設けてもよい。この場合、ユニットそれぞれの表示範囲は、対応する分割画面全体である。
【0085】
本実施形態によれば、基準ブラックストライプ60−1およびブラックストライプ60−2が形成された領域上に、表示範囲を特定するための、反射領域64よりなる読み取り可能な光を発生する発生部が形成されている。励起光を走査しながら、光発生部が発生した特定パターンの光を読み取ることで、表示範囲を特定することができ、その特定した表示範囲内で、入力映像信号に基づく画像が投射される。
【0086】
このように、基準マークなどを各蛍光スクリーンの繋ぎ目の部分に設ける必要がなく、ブラックストライプが形成された領域上に形成された光発生部(特定パターン)に基づいて表示範囲を正確に特定することができるので、マルチプロジェクションシステムに適用した場合に、隣接画像間の繋ぎ目が視認され難いという効果がある。
【0087】
また、表示範囲の自動検出が可能となったことで、マルチプロジェクションシステムを組み立てる際のプロジェクタや蛍光スクリーンの取り付けに要求される精度を低くすることが可能となり、その結果、取り付け作業における作業者への負担を軽減することができる。
【0088】
本実施形態の投射型画像表示装置において、表示範囲の境界部のブラックストライプを基準ブラックストライプ60−1としてもよい。この場合は、表示範囲をカバーするような水平振幅が予め与えられる。
【0089】
また、基準ブラックストライプ60−1が表示範囲の中央以外の領域に設定された場合は、インターバル時間に代えて、基準ブラックストライプ60−1からの反射光の検出タイミングに基づいて水平振幅を調整してもよい。
【0090】
(第2の実施形態)
本実施形態の投射型画像表示装置は、蛍光スクリーン6に垂直方向の表示範囲を特定するためのパターンを設けた点で、第1の実施形態のものと異なる。
【0091】
図10に、蛍光スクリーン6の一例を示す。図10を参照すると、垂直方向の表示範囲を特定するためのパターンとして、水平基準ライン65−1、65−2が設けられている。水平基準ライン65−1、65−2は、水平走査方向に沿って平行に形成されている。
【0092】
反射領域64は、各ブラックストライプ60−2上の、水平基準ライン65−1、65−2以外の領域に形成されている。すなわち、水平基準ライン65−1、65−2は、各ブラックストライプ60−2上の、反射領域64が無い領域により形成されており、水平基準ライン65−1、65−2に入射した励起光は、ブラックストライプ60−2により吸収される。水平基準ライン65−1、65−2の幅(垂直方向の幅)はいずれも、1画素以上の幅とされる。
【0093】
なお、反射領域64は、第1の実施形態と同様に、再帰反射性を持つ光学部材、もしくは光拡散材などにより形成されている。
【0094】
本実施形態の投射型画像表示装置の各部は、第1の実施形態のものと基本的に同じであるので、ここでは、垂直方向の表示範囲を特定する動作について詳細に説明し、水平方向の表示範囲を特定する動作は省略する。
【0095】
図11に示すように、走査手段4は、励起光源5からの励起光で蛍光スクリーン6を波線状の走査軌跡1aのように走査する。走査軌跡1aによれば、水平基準ライン65−1の上側の水平走査ラインに沿って、左端から右端に向かって励起光を水平方向に走査する。その後、蛍光スクリーン6の右端部で走査方向が反転する。
【0096】
走査方向の反転後、水平基準ライン65−1に沿って、右端から左端に向かって励起光を水平方向に走査する。その後、蛍光スクリーン6の左端部で走査方向が反転する。
【0097】
走査方向の反転後、水平基準ライン65−1の下側の水平走査ラインに沿って、左端から右端に向かって励起光を水平方向に走査する。その後、蛍光スクリーン6の右端部で走査方向が反転する。
【0098】
このように、水平方向の走査と同時に垂直方向にも走査することで、蛍光スクリーン6上を2次元走査させることができる。
【0099】
図12に、水平基準ライン65−1とその上下に位置する水平走査ラインとを含む領域において、略一定強度の励起光を一定の走査速度で走査した場合の、光検出手段2の出力信号を模式的に示す。この例では、水平基準ライン65−1の幅は、1画素に相当する幅とされている。
【0100】
水平基準ライン65−1の上下の水平走査ラインでは、光検出手段2は、基準ブラックストライプ60−1を除く領域において、各ブラックストライプ60−2上の反射領域64からの反射光7を略一定時間毎に検出する。一方、水平基準ライン65−1上には反射領域64が設けられていないので、光検出手段2では、水平基準ライン65−1全体に渡って反射光7は検出されない。したがって、制御手段1は、光検出手段2の出力信号における反射光7の検出の有無に基づいて、垂直方向における水平基準ライン65−1を特定することができる。
【0101】
水平基準ライン65−2についても、水平基準ライン65−1と同様にして特定することができる。
【0102】
また、水平走査ラインの数は予め決まっているので、制御手段1は、水平基準ライン65−1、65−2の位置から水平走査ラインの数をカウントすることで、蛍光スクリーン6の垂直方向の最外縁に位置する水平走査ラインを特定することができる。
【0103】
本実施形態の投射型表示装置では、制御手段1は、光検出手段2の出力波形に基づいて、水平基準ライン65−1、65−2を検出し、該検出した水平基準ライン65−1、65−2の位置から、励起光が通過した水平走査ラインを所定回数カウントすることにより、垂直方向の最外縁の水平走査ラインを特定し、この特定した位置情報に基づいて、垂直方向における表示範囲を決定する。制御手段1は、第1の実施形態と同様にして、水平方向における表示範囲も決定する。
【0104】
制御手段1は、決定した水平方向および垂直方向における表示範囲の情報を境界位置情報として保持する。そして、境界位置情報に基づいて、励起光源5の発光タイミングを制御する。
【0105】
表示範囲の決定後、制御手段1は、水平走査および垂直走査のそれぞれにおいて、境界位置情報に基づく表示範囲内で励起光を照射し、水平および垂直の振幅を調整する。
【0106】
本実施形態の投射型表示装置によれば、第1の実施形態のものにおける効果に加えて、水平方向だけでなく、垂直方向についても、表示範囲を正確に特定することができるので、マルチプロジェクションシステムに適用した場合における隣接画像間の繋ぎ目が、さらに視認され難くなるという効果がある。
【0107】
なお、本実施形態の投射型画像表示装置では、2本の水平基準ライン65−1、65−2を用いて垂直方向の表示範囲を特定しているが、水平基準ラインの数はこれに限定されない。水平基準ラインは、3本以上設けられても良い。
【0108】
また、水平基準ラインのそれぞれにおいて、水平基準ラインを形成するのに必要とされるブラックストライプ60−2の数は1つ以上であればよい。
【0109】
水平基準ラインは、垂直方向の表示範囲の境界近傍に形成される。より具体的には、水平基準ラインは、境界水平走査ラインの1つ内側の水平走査ラインに形成される。
【0110】
なお、走査手段4の特性により水平走査速度が一定でない場合であっても、走査地点近傍で略一定速度とみなすことで、同様の方法で基準ブラックストライプ60−1の検出、ストライプ境界位置情報の取得、制御が可能である。
【0111】
(第3の実施形態)
本実施形態の投射型画像表示装置は、蛍光スクリーン6の青色の蛍光体領域63に代えて光拡散領域63−1を用い、反射領域64を、ブラックストライプ60−2ではなく、基準ブラックストライプ60−1上に形成した点で、第1の実施形態のものと異なる。
【0112】
なお、反射領域64は、第1の実施形態および第2の実施形態と同様に、再帰反射性を持つ光学部材、もしくは光拡散材などにより形成されている。
【0113】
図13に、蛍光スクリーン6の一例を示す。図13を参照すると、青色の蛍光体領域63に代えて光拡散領域63−1が設けられている。
【0114】
励起光源5は、青色の波長帯域にピーク波長を有する青色の励起光を出射する。光拡散領域63−1は、励起光源5からの青色の励起光を受けて、青色の拡散光を出射する。青色の拡散光は、蛍光スクリーン6の両面から出射される。
【0115】
本実施形態の投射型画像表示装置においても、制御手段1は、一定強度の励起光を水平方向に一定の走査速度で走査し、光検出手段2の出力信号に基づいて、ストライプ境界位置情報を取得する。
【0116】
図14に、一定強度の励起光を水平方向に一定の走査速度で走査した場合の光検出手段2の出力信号を模式的に示す。
【0117】
光拡散領域63−1のストライプ間隔は略一定であるので、蛍光スクリーン6の左端から右端に向かって励起光を略一定の走査速度で走査すると、光検出手段2は、各光拡散領域63−1からの拡散光を略一定時間毎に検出する。
【0118】
また、基準ブラックストライプ60−1は、画面中央付近の光拡散領域63−1の間に配置されており、その上には反射領域64が形成されている。励起光が基準ブラックストライプ60−1に照射された場合は、光検出手段2にて再帰反射光(もしくは拡散反射光)が検出される。
【0119】
光拡散領域63−1からの拡散光の検出波形のピーク値は、基準ブラックストライプ60−1からの再帰反射光(もしくは拡散反射光)の検出波形のピーク値よりも十分に小さい場合が多い。よって、制御手段1は、検出波形のピーク値に基づいて、基準ブラックストライプ60−1を特定することができる。
【0120】
また、基準ブラックストライプ60−1上に形成した反射領域64の幅が狭い場合や、反射領域64に光拡散材を用いた場合は、再帰反射光(もしくは拡散反射光)の検出波形のピーク値はそれほど高くない場合がある。その場合、制御手段1は、周囲の光拡散領域63−1とは異なるタイミングで検出される波形のピーク、もしくは波形の立ち上がり・立ち下がりを用いて、基準ブラックストライプ60−1を特定することができる。また、基準ブラックストライプ60−1からの再帰反射光(もしくは拡散反射光)の検出パルスのパルス幅は、光拡散領域63−1からの拡散光の検出パルスのパルス幅より小さい。よって、パルス幅の違いにより、再帰反射光(もしくは拡散反射光)の検出パルスと光拡散領域63−1からの拡散光の検出パルスを判別することもできる。
【0121】
また、水平方向における光拡散領域63−1の数は予め決まっているので、基準ブラックストライプ60−1の位置からの波形の数に基づいて、水平方向の最も外側の光拡散領域63−1を特定し、その位置に基づいて、最外縁のブラックストライプ60−2を特定することができる。
【0122】
制御手段1は、最外縁のブラックストライプ60−2の位置に基づいて、水平方向における表示範囲を決定する。制御手段1は、決定した表示範囲の情報をストライプ境界位置情報として保持する。そして、ストライプ境界位置情報に基づいて、励起光源5の発光タイミングを制御する。
【0123】
表示範囲の決定後、制御手段1は、水平走査において、ストライプ境界位置情報に基づく表示範囲内で励起光を照射し、水平振幅を調整する。水平振幅の調整は、第1の実施形態と同様である。
【0124】
本実施形態の投射型画像表示装置においても、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0125】
なお、基準ブラックストライプ60−1は、蛍光スクリーン6のどのブラックストライプに設けられても良く、また、その数は1つ以上であればよい。
【0126】
また、基準ブラックストライプ60−1として、赤色の蛍光体領域61と緑色の蛍光体領域62の間のブラックストライプを用いることが望ましい。この場合は、基準ブラックストライプ60−1からの再帰反射光(もしくは拡散反射光)の検出波形と光拡散領域63−1からの拡散光の検出波形とのクロストークがなくなるため、より正確にピーク値や立ち上がり・立ち下がりタイミングを取得できる。特に、周囲の光拡散領域63−1とは異なるタイミングで検出される波形のピーク、波形の立ち上がり・立ち下りを用いて、基準ブラックストライプ60−1を特定する場合に有効である。
【0127】
本実施形態の投射型画像表示装置は、第2の実施形態のものにも適用することができる。具体的には、図10に示した水平基準ライン65−1、65−2を図13に示した投射スクリーン上に形成し、反射領域64を、各ブラックストライプ60−2上の水平基準ライン65−1、65−2が形成された領域に形成する。
【0128】
上記の場合、例えば、一定強度の励起光を一定の走査速度で水平基準ライン65−1に沿って走査した場合、光検出手段2の出力信号は、図14に示した出力波形において、各光拡散領域63−1からの拡散光の検出波形の間に、反射領域64からの再帰反射光(もしくは拡散反射光)の検出波形が挿入されたものとなる。拡散光の検出波形のピーク値は、再帰反射光(もしくは拡散反射光)の検出波形のピーク値より十分に低いので、拡散光および再帰反射光(もしくは拡散反射光)の検出波形を区別することができる。
【0129】
水平基準ライン65−2においても、光検出手段2の出力信号は、上記と同様の出力波形となる。
【0130】
一方、水平基準ライン65−1、65−2以外の領域では、光検出手段2の出力信号は、図14に示したような出力波形となる。
【0131】
したがって、制御手段1は、再帰反射光(もしくは拡散反射光)の検出波形の有無に基づいて、水平基準ライン65−1、65−2を特定し、その特定した位置からの水平ライン数をカウントすることで、垂直方向の最外周のブラックストライプ60−2を特定することができる。そして、制御手段1は、その特定したブラックストライプ60−2の位置に基づいて垂直方向の表示範囲を特定することができる。
【0132】
本実施形態においても、水平基準ラインは、3つ以上設けられても良い。
【0133】
以上説明した第1乃至第3の実施形態の投射型画像表示装置は、本発明の一例であり、その構成は適宜に変更することができる。
【0134】
例えば、位相差層(例えば1/4波長層)を基準ブラックストライプ60−1に設け、反射領域64をブラックストライプ60−2に形成してもよい。この場合は、1/4波長層を設けた領域では、反射光の偏光方向をp偏光からs偏光に変換する、または、s偏光からp偏光に変換することができる。光検出手段2は、互いの偏光成分が異なる第1および第2の偏光光のうちの一方を検出する。この場合の光検出手段2の出力信号において、反射領域64からの反射光の受光量が、1/4波長層からの反射光(s偏光またはp偏光)の受光量と異なるので、基準ブラックストライプ60−1とブラックストライプ60−2の区別が可能である。よって、基準ブラックストライプ60−1の位置からブラックストライプ60−2の数をカウントすることで表示範囲を特定することができる。
【0135】
上記の場合、光検出手段2は、入射光を互いの偏光成分が異なる第1および第2の偏光光(p偏光およびs偏光)に分離する偏光ビームスプリッタと、偏光ビームスプリッタで分離された第1の偏光光を検出する第1の光検出器と、偏光ビームスプリッタで分離された第2の偏光光を検出する第2の光検出器と、を有していてもよい。この場合、光検出手段2は、第1の光検出器から出力された第1の偏光光の検出値に対する、第2の光検出器から出力された第2の偏光光の検出値の割合(p偏光およびs偏光の割合)を検出してもよい。この場合も、基準ブラックストライプ60−1とブラックストライプ60−2の区別が可能であるので、基準ブラックストライプ60−1の位置からブラックストライプ60−2の数をカウントすることで表示範囲を特定することができる。
【0136】
また、各実施形態の投射型画像表示装置において、反射領域64を基準ブラックストライプ60−1およびブラックストライプ60−2のそれぞれに設け、基準ブラックストライプ60−1上の反射領域64の幅が、ブラックストライプ60−2上の反射領域64の幅と異なるように構成してもよい。この場合は、基準ブラックストライプ60−1からの反射光とブラックストライプ60−2からの反射光との間で、光検出手段2で検出される光量や受光タイミングが相違するので、基準ブラックストライプ60−1とブラックストライプ60−2の区別が可能である。よって、基準ブラックストライプ60−1の位置からブラックストライプ60−2の数をカウントすることで表示範囲を特定することができる。
【0137】
また、各実施形態の投射型画像表示装置において、反射領域64を基準ブラックストライプ60−1およびブラックストライプ60−2のそれぞれに設け、基準ブラックストライプ60−1の幅が、ブラックストライプ60−2の幅と異なるように構成してもよい。この場合も、基準ブラックストライプ60−1からの反射光とブラックストライプ60−2からの反射光との間で、光検出手段2で検出される光量や受光タイミングが相違するので、基準ブラックストライプ60−1とブラックストライプ60−2の区別が可能である。よって、基準ブラックストライプ60−1の位置からブラックストライプ60−2の数をカウントすることで表示範囲を特定することができる。
【0138】
また、各実施形態の投射型画像表示装置において、基準ブラックストライプ60−1上に、光読み取り可能な特定の反射パターン(例えば、白黒のパターン)を形成し、反射領域64をブラックストライプ60−2に形成してもよい。この場合は、制御手段1は、光検出手段2の出力信号に基づいて、特定のパターンを読み取り、基準ブラックストライプ60−1を特定することができる。よって、基準ブラックストライプ60−1の位置からブラックストライプ60−2の数をカウントすることで表示範囲を特定することができる。
【0139】
また、各実施形態の投射型画像表示装置において、基準ブラックストライプ60−1上に発光色が赤外である赤外蛍光体を形成し、反射領域64をブラックストライプ60−2に形成してもよい。赤外蛍光体領域では、走査手段4からの励起光によって赤外蛍光体が励起され、赤外蛍光体から赤外の蛍光が放出される。光検出手段2は、赤外光と可視光とを分離する波長分離手段と、波長分離手段で分離された赤外光および可視光のうち、赤外光を検出する第1の光検出器と、可視光を検出する第2の光検出器とを有する。第1の光検出器の出力信号に基づいて、基準ブラックストライプ60−1を特定し、第2の光検出器の出力信号に基づいて、ブラックストライプ60−2を特定する。よって、基準ブラックストライプ60−1の位置からブラックストライプ60−2の数をカウントすることで表示範囲を特定することができる。
【0140】
また、各実施形態の投射型画像表示装置において、基準ブラックストライプ60−1上に波長選択層を形成し、反射領域64をブラックストライプ60−2に形成してもよい。励起光源5は、波長が異なる複数の光源と、これら光源からの光を合成する色合成手段とを有し、色合成手段から出射された合成光が走査手段4に供給される。波長選択層は、各光源から出射された励起光のうちの特定の波長の励起光を反射する。光検出手段2は、基準ブラックストライプ60−1およびブラックストライプ60−2からの反射光を波長別に検出する。光検出手段2において、各光源の波長に対応する反射光を受信した場合をブラックストライプ60−2からの反射光と判断し、特定の波長のみを検出した場合を基準ブラックストライプ60−1からの反射光と判断する。この場合も、基準ブラックストライプ60−1とブラックストライプ60−2の区別が可能である。よって、基準ブラックストライプ60−1の位置からブラックストライプ60−2の数をカウントすることで表示範囲を特定することができる。
【0141】
上記の場合、波長選択層は、各光源から出射された励起光のうちの特定の波長の励起光を減衰し、該特定の波長以外の波長の光を反射してもよい。光検出手段2は、基準ブラックストライプ60−1およびブラックストライプ60−2からの反射光を波長別に検出する。光検出手段2において、各光源の波長に対応する反射光を受信した場合をブラックストライプ60−2からの反射光と判断し、特定の波長以外の波長の反射光を検出した場合を基準ブラックストライプ60−1からの反射光と判断する。この場合も、基準ブラックストライプ60−1とブラックストライプ60−2の区別が可能である。よって、基準ブラックストライプ60−1の位置からブラックストライプ60−2の数をカウントすることで表示範囲を特定することができる。
【0142】
また、各実施形態の投射型画像表示装置において、蛍光スクリーン6の走査面側に、励起光を透過し、可視光を反射する反射層を設けてもよい。これにより、蛍光体領域から走査面側に向かう蛍光(拡散光)が反射層にて蛍光スクリーン6の走査面側とは反対側(表示面側)に向けて反射されるので高輝度化が可能となる。
【0143】
なお、走査手段4の特性により水平走査速度が一定でない場合であっても、走査地点近傍で略一定速度とみなすことで、同様の方法で基準ブラックストライプ60−1の検出、ストライプ境界位置情報の取得、制御が可能である。
【0144】
(第4の実施形態)
図15は、本発明の第4の実施形態である投射型画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【0145】
本実施形態の投射型画像表示装置は、蛍光スクリーン6とは一部が異なる蛍光スクリーン6aを用いる点、および、光検出手段2の受光面上または受光面と対向する位置に波長カットフィルタ2aが設けられている点で、第1の実施形態のものと異なる。図15中、第1の実施形態のものと同じものには同じ符号を付している。
【0146】
図16に、蛍光スクリーン6aの一例を示す。
【0147】
図16を参照すると、蛍光スクリーン6aは、蛍光体領域61〜63、ブラックストライプ60−2および基準マーク66を有する。蛍光体領域61〜63およびブラックストライプ60−2は、図3に示したものと同じである。
【0148】
基準マーク66は、発光色の波長が赤外の波長帯に含まれる赤外蛍光体が塗布されたストライプ状の領域であって、例えば画面中央付近の青色の蛍光体領域63と緑色の蛍光体領域62の間に形成されている。基準マーク66の幅(水平方向の長さ)は、ブラックストライプ60−2の幅と略同じであって、蛍光体領域61〜63の幅よりも小さい。画面中央付近以外の領域では、ブラックストライプ60−2が、蛍光体領域61、62、63の各領域の間に形成されている。
【0149】
なお、上記の画面中央付近の青色の蛍光体領域63と緑色の蛍光体領域62の間にブラックストライプ60−2を形成し、このブラックストライプ60−2上に基準マーク66を形成してもよい。
【0150】
図16に示した例では、基準マーク66は1本であるが、これに限定されない。複数本の基準マーク66が蛍光スクリーン6上に適宜に配置されてもよい。
【0151】
本実施形態の投射型画像表示装置においても、前述した各実施形態と同様、制御手段1は、キャリブレーション時において、一定強度の励起光を水平方向に一定の走査速度で走査する。
【0152】
一定強度の励起光を水平方向に走査した場合、蛍光体領域61、62、63から赤色蛍光、緑色蛍光、青色蛍光がそれぞれ放出され、基準パターン66から赤外蛍光が放出される。これら赤色蛍光、緑色蛍光、青色蛍光および赤外蛍光はいずれも等方拡散光であるため、それぞれの蛍光の一部が背面側(光検出手段2側)へ出射される。
【0153】
また、蛍光体領域61、62、63および基準マーク66のそれぞれでは、蛍光体により励起光の一部が拡散され、その拡散された励起光の一部が背面側に出射される。
【0154】
さらに、励起光が蛍光スクリーン6aの面に入射する際にも、その面で、励起光の一部が反射される。
【0155】
図15に示した波長カットフィルタ2aは、赤色の波長域(例えば、650nm〜750nm)および赤外の波長域(例えば、750nm以上)の光を透過し、それ以外の波長域(例えば、650nm未満)の光を吸収または反射するフィルタ特性を有する。したがって、背面側に放出された赤色蛍光、緑色蛍光、青色蛍光、および赤外蛍光のうち、赤色蛍光および赤外蛍光は、波長カットフィルタ2aを透過して光検出手段2に入射する。緑色蛍光および青色蛍光は、波長カットフィルタ2aによって吸収または反射される。また、蛍光スクリーン6aからの励起光の拡散光および反射光も、波長カットフィルタ2aによって吸収または反射される。
【0156】
光検出手段2は、例えば、受光部の主成分がSiよりなるフォトダイオード(PD)である。図17に、SiのPDの代表的な感度特性を示す。図17を参照すると、SiのPDの受光感度は、800nm付近が最も高い。
【0157】
光検出手段2として、図17に示すような感度特性を有するPDを用いれば、波長カットフィルタ2aを透過した赤色蛍光および赤外蛍光を効率的に検出することができる。
【0158】
図18に、一定強度の励起光を水平方向に一定の走査速度で走査した場合の光検出手段2の出力信号と蛍光体領域61、62、63および基準パターン66との対応関係を模式的に示す。
【0159】
図18に示すように、光検出手段2の出力信号は、蛍光体領域61からの赤色蛍光の検出パルスと、基準マーク66からの赤外蛍光の検出パルスを含む。赤外蛍光の検出パルスのパルス幅は、赤色蛍光の検出パルスのパルス幅より小さい。よって、パルス幅の違いにより、赤色蛍光の検出パルスと赤外蛍光の検出パルスを判別することができる。
【0160】
また、赤色蛍光の検出パルスは一定の間隔であるので、パルス間隔に基づいて、赤外蛍光の検出パルスを特定することもできる。
【0161】
制御手段1は、光検出手段2の出力信号を参照し、赤外蛍光の検出パルスの立ち上がりのタイミングに基づいて基準マーク66を特定する。
【0162】
また、1水平走査期間における赤色蛍光の検出パルスの数は予め決まっているので、赤外蛍光の検出パルス(基準マーク66の位置)からの赤色蛍光の検出パルスの数に基づいて、水平方向の最外縁のブラックストライプ60−2を特定することができる。赤色蛍光の検出パルスの数のカウントについては、第1の実施形態で説明したカウンターを用いた動作により実現する。
【0163】
このようにして、制御手段1は、光検出手段2の出力波形に基づいて、基準マーク66を検出し、該検出した基準マーク66の位置から、励起光のビームスポットが通過する赤色の蛍光体領域61を所定回数カウントすることにより、水平方向の最外縁のブラックストライプ60−2を特定し、この特定した位置情報に基づいて、水平方向における表示範囲を決定する。制御手段1は、決定した表示範囲の情報をストライプ境界位置情報として保持する。そして、制御手段1は、ストライプ境界位置情報に基づいて、励起光源5の発光タイミングを制御する。
【0164】
表示範囲の決定後、制御手段1は、水平走査において、ストライプ境界位置情報に基づく表示範囲内で励起光を照射し、また水平振幅を調整する。
【0165】
本実施形態の投射型画像表示装置においても、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。加えて、以下のような効果を得ることができる。
【0166】
緑色蛍光および青色蛍光や、励起光の拡散光および反射光が光検出手段2に入射すると、赤色蛍光および赤外蛍光を検出する際のノイズ成分が増大する。本実施形態では、赤色蛍光および赤外蛍光以外の波長域のノイズ光(緑色蛍光、青色蛍光、励起光の拡散光および反射光を含む)は、波長カットフィルタ2aによって吸収または反射される。これにより、光検出手段2の出力信号に含まれるノイズ成分を低減することができる。
【0167】
また、赤色蛍光および赤外蛍光の波長は、光検出手段2の受光感度の高い波長であるので、第1の実施形態と比較して、光検出手段2の出力信号の強度を増大することができる。
【0168】
上記のノイズ成分の低減および信号強度の増大により、光検出手段2の出力信号のSN比が向上するので、基準マーク66の検出精度や赤色の蛍光領域61の検出精度が向上する。この結果、表示範囲を特定するための制御を高精度に行うことができる。
【0169】
なお、走査手段4の特性により水平走査速度が一定でない場合であっても、走査地点近傍で略一定速度とみなすことで、同様の方法で基準ブラックストライプ60−1の検出、ストライプ境界位置情報の取得、制御が可能である。
【0170】
(第5の実施形態)
図19は、本発明の第5の実施形態である投射型画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【0171】
本実施形態の投射型画像表示装置は、第4の実施形態のものに、光検出手段3および波長カットフィルタ3aを追加し、さらに、波長カットフィルタ2aのフィルタ特性を変更したものである。光検出手段3および波長カットフィルタ2a、3aを除く他の構成は、第4の実施形態のものと同じである。
【0172】
波長カットフィルタ2aは、赤色の波長域の光を透過し、それ以外の光を吸収または反射するフィルタ特性を有する。波長カットフィルタ2bは、赤外の波長域の光を透過し、それ以外の光を吸収または反射するフィルタ特性を有する。
【0173】
光検出手段2、3は、SiのPDよりなり、例えば図17に示したような受光感度特性を有する。波長カットフィルタ2aは、光検出手段2の受光面上または受光面と対向する位置に設けられ、波長カットフィルタ3aは、光検出手段3の受光面上または受光面と対向する位置に設けられている。
【0174】
本実施形態では、蛍光スクリーン6aからの赤色蛍光、緑色蛍光、青色蛍光、および赤外蛍光のうち、赤色蛍光は、波長カットフィルタ2aを透過して光検出手段2に入射し、赤外蛍光は、波長カットフィルタ3aを透過して光検出手段3に入射する。緑色蛍光および青色蛍光は、波長カットフィルタ2a、3aによって吸収または反射される。また、蛍光スクリーン6aからの励起光の拡散光および反射光も、波長カットフィルタ2a、3aによって吸収または反射される。
【0175】
図20に、一定強度の励起光を水平方向に一定の走査速度で走査した場合の光検出手段2、3の出力信号と蛍光体領域61、62、63および基準パターン66との対応関係を模式的に示す。図20において、PD1出力信号が光検出手段2の出力信号であり、PD2出力信号が光検出手段3の出力信号である。
【0176】
図20に示すように、光検出手段2の出力信号は、蛍光体領域61からの赤色蛍光の検出パルスを含み、光検出手段3の出力信号は、基準パターン66からの赤外蛍光の検出パルスを含む。赤外蛍光の検出パルスのパルス幅は、赤色蛍光の検出パルスのパルス幅より小さい。
【0177】
制御手段1は、光検出手段3の出力信号を参照し、赤外蛍光の検出パルスの立ち上がりのタイミングに基づいて基準マーク66を特定する。
【0178】
また、1水平走査期間における赤色蛍光の検出パルスの数は予め決まっている。したがって、制御手段1は、赤外蛍光の検出パルスの立ち上がりのタイミング(基準マーク66の位置)から、光検出手段2の出力信号における赤色蛍光の検出パルスの数をカウントし、そのカウント値に基づいて、水平方向の最外縁のブラックストライプ60−2を特定することができる。赤色蛍光の検出パルスの数のカウントについては、第1の実施形態で説明したカウンターを用いた動作により実現する。
【0179】
このようにして、制御手段1は、光検出手段3の出力波形に基づいて、基準マーク66を検出し、該検出した基準マーク66の位置から、光検出手段2の出力波形に基づいて、励起光のビームスポットが通過する赤色の蛍光体領域61を所定回数カウントすることにより、水平方向の最外縁のブラックストライプ60−2を特定する。制御手段1は、その特定した位置情報に基づいて、水平方向における表示範囲を決定し、その決定した表示範囲の情報をストライプ境界位置情報として保持する。そして、制御手段1は、ストライプ境界位置情報に基づいて、励起光源5の発光タイミングを制御する。
【0180】
表示範囲の決定後、制御手段1は、水平走査において、ストライプ境界位置情報に基づく表示範囲内で励起光を照射し、また水平振幅を調整する。
【0181】
本実施形態の投射型画像表示装置においても、第4の実施形態のものと同様の作用効果を奏する。
【0182】
加えて、蛍光体領域61からの赤色蛍光と基準パターン66からの赤外蛍光とを光検出手段2、3で別々に検出することで、第4の実施形態における、赤外蛍光の検出パルスと赤色蛍光の検出パルスの判定処理が不要となる。
【0183】
本実施形態において、2個の光検出手段を用いているが、これに限定されない。1個のPDの受光面を第1および第2の領域に分割し、第1の領域上に波長カットフィルタ2aを設け、第2の領域に波長カットフィルタ3aを設けてもよい。この場合、PDは、第1の領域への入射光に応じた電気信号を出力し、第2の領域への入射光に応じた電気信号を出力する機能を有する。
【0184】
第4および第5の実施形態において、蛍光スクリーン6aの青色の蛍光体領域63に代えて第3の実施形態で説明した光拡散領域63−1を形成してもよい。
【0185】
また、第4および第5の実施形態において、第2の実施形態の構成を適用してもよい。第2の実施形態の構成を適用する場合は、蛍光スクリーン6の基準ブラックストライプ60−1および水平基準ライン65−1、65−2をそれぞれ基準パターン66と同じ構成とする。
【0186】
さらに、第4および第5の実施形態において、蛍光体領域61、62、63の幅は同じで、基準マーク66の幅が蛍光体領域61、62、63の幅と異なっていてもよい。
【0187】
さらに、第4および第5の実施形態において、基準マーク66は、蛍光体領域61、62、63のうちの特定の蛍光体領域に形成されてもよい。例えば、基準マーク66は、緑色の蛍光体領域62のうちの少なくとも1つ、また、青色の蛍光体領域63の少なくとも1つに形成されてもよい。基準マーク66を緑色の蛍光体領域62上または青色の蛍光体領域63上に形成した場合、基準マーク66の幅は、蛍光体領域62または蛍光体領域63の幅と同じであっても、異なっていてもよい。
【0188】
また、基準マーク66は、蛍光体領域62、63のうちの少なくとも1つに赤外蛍光体を混入することで形成してもよい。
【0189】
図21に、緑色の蛍光体領域に赤外蛍光を塗布または混入して基準マーク用蛍光体領域62−1を形成した蛍光スクリーンを用い、一定強度の励起光を水平方向に一定の走査速度で走査した場合の光検出手段の出力信号と蛍光体領域との対応関係を模式的に示す。
【0190】
図21に示すように、光検出手段の出力信号は、蛍光体領域61からの赤色蛍光の検出パルスと、基準マーク用蛍光体領域62−1からの赤外蛍光の検出パルスを含む。赤色蛍光の検出パルスの間隔は一定であるので、パルス間隔に基づいて、赤色蛍光の検出パルスと赤外蛍光の検出パルスを判別することができる。
【0191】
制御手段1は、光検出手段の出力信号を参照し、赤外蛍光の検出パルスの立ち上がりのタイミングに基づいて基準マーク用蛍光体領域62−1を特定する。
【0192】
図22に、緑色の蛍光体領域上に基準マーク66を形成した蛍光スクリーンを用い、一定強度の励起光を水平方向に一定の走査速度で走査した場合の光検出手段の出力信号と蛍光体領域との対応関係を模式的に示す。
【0193】
図22に示すように、光検出手段の出力信号は、蛍光体領域61からの赤色蛍光の検出パルスと、基準マーク66からの赤外蛍光の検出パルスを含む。赤色蛍光の検出パルスの間隔は一定である。また、赤色蛍光の検出パルスの幅は、赤外蛍光の検出パルスの幅より大きい。よって、パルスの間隔およびパルス幅に基づいて、赤色蛍光の検出パルスと赤外蛍光の検出パルスを判別することができる。
【0194】
制御手段1は、光検出手段の出力信号を参照し、赤外蛍光の検出パルスの立ち上がりのタイミングに基づいて基準マーク66を特定する。
【0195】
また、第4の実施形態および第5の実施形態の投射型画像表示装置において、蛍光スクリーン6の走査面側に、青色〜緑色光を反射し、赤色光を80%程度反射し、赤色光の残りの20%程度と励起光および赤外光を透過する反射層を設けてもよい。これにより、蛍光体領域から走査面側に向かう蛍光(拡散光)が反射層にて蛍光スクリーン6の走査面側とは反対側(表示面側)に向けて反射されるので高輝度化が可能となる。なお、赤色光の反射率は光検出手段で検出ができる範囲であれば、任意に決めてよい。反射率を高くすると赤色のスクリーン輝度が上がり、反射率を低くすると光検出手段に到達する赤色光量が増えるため、容易に検出が可能となる。
【0196】
また、第1乃至第3の実施形態の投射型画像表示装置のいずれかにおいて、光検出手段2の受光面上または受光面と対向する位置に波長カットフィルタ(図15の波長カットフィルタ2aと同様)を設けてもよい。ここで用いる波長カットフィルタは、励起光の波長域(例えば、360nm〜450nm)の光を透過し、それ以外の波長域(例えば、450nm以上)の光を吸収または反射するフィルタ特性を有する。したがって、スクリーン背面側に放出された赤色蛍光、緑色蛍光および青色蛍光は波長カットフィルタによって吸収される。蛍光スクリーン6からの励起光の再起反射光および拡散光のみが、波長カットフィルタを透過して光検出手段2に入射する。赤色蛍光、緑色蛍光および青色蛍光が光検出手段2に入射すると、励起光の再起反射光および拡散光を検出する際のノイズ成分が増大するが、本実施形態では、励起光の再起反射項および拡散光以外の波長域のノイズ光(赤色蛍光、緑色蛍光および青色蛍光を含む)は、波長カットフィルタ2aによって吸収または反射されるため、光検出手段2の出力信号に含まれるノイズ成分を低減することができる。この結果、励起光の再起反射光および拡散光の検出精度が向上するため、表示範囲を特定するための制御を高精度に行うことができる。
【0197】
上記の波長カットフィルタは、蛍光スクリーン6の走査面側(ブラックストライプおよび蛍光ストライプが形成された面)に形成されてもよい。 (マルチプロジェクションシステム)
上述した各実施形態の投射型画像表示装置のいずれかを用いてマルチプロジェクションシステムを構成することができる。以下に、そのマルチプロジェクションシステムの一例を説明する。
【0198】
マルチプロジェクションディスプレイは、主制御部、操作部、複数のプロジェクタユニット及びスクリーンを有する。操作部は、複数のボタン(または操作キー)を有し、これらボタンを用いた入力操作に応じた指示信号を主制御部に供給する。例えば、使用者がシステム起動のための特定の入力操作を行うと、起動信号が操作部から主制御部に供給される。
【0199】
主制御部は、指示信号に従って、各プロジェクタユニットを同期させて動作させる。主制御部は、外部の映像再生装置から供給された映像信号に基づいて、各プロジェクタユニットへの映像信号を生成する。具体的には、主制御部は、入力映像信号に基づく画像を、プロジェクタユニットの数に応じた複数の画面の画像に分割し、それぞれの分割画像に対応する分割映像信号を生成する。そして、主制御部は、生成した分割映像信号を対応するプロジェクタユニットに供給する。
【0200】
各プロジェクタユニットは、上述した各実施形態の投射型画像表示装置のいずれかにより構成されており、それぞれが自身の表示範囲を特定し、その特定した表示範囲内に入力分割映像信号に基づく画像を表示する。
【0201】
図23に、6台のプロジェクタユニットにより表示されたマルチ画面の一例を示す。この例では、第2の実施形態の投射型画像表示装置を用いてプロジェクタユニットを構成している。スクリーン200は、図10に示した構成を有する6枚の蛍光スクリーン6を貼り合わせたものである。
【0202】
第1のプロジェクタユニットが、自身の表示範囲を特定し、その表示範囲内に入力分割映像に基づく分割画像を表示する。この第1のプロジェクタユニットにより特定された表示範囲が、分割画面201−1である。第2のプロジェクタユニットが、自身の表示範囲を特定し、その表示範囲内に入力分割映像に基づく分割画像を表示する。この第2のプロジェクタユニットにより特定された表示範囲が、分割画面201−2である。第3のプロジェクタユニットが、自身の表示範囲を特定し、その表示範囲内に入力分割映像に基づく分割画像を表示する。この第3のプロジェクタユニットにより特定された表示範囲が、分割画面201−3である。
【0203】
第4のプロジェクタユニットが、自身の表示範囲を特定し、その表示範囲内に入力分割映像に基づく分割画像を表示する。この第4のプロジェクタユニットにより特定された表示範囲が、分割画面201−4である。第5のプロジェクタユニットが、自身の表示範囲を特定し、その表示範囲内に入力分割映像に基づく分割画像を表示する。この第5のプロジェクタユニットにより特定された表示範囲が、分割画面201−5である。第6のプロジェクタユニットが、自身の表示範囲を特定し、その表示範囲内に入力分割映像に基づく分割画像を表示する。この第6のプロジェクタユニットにより特定された表示範囲が、分割画面201−6である。
【0204】
分割画面201−1〜201−6は、隙間なく繋ぎ合わされた状態になっている。
【0205】
(第6の実施形態)
本実施形態は、上述した第1から第5の実施形態における基準マークの位置に関するものである。
【0206】
図24図28に、基準マークの配置例と、その配置における光検出手段2の出力信号を示す。図24図28において、基準マークの配置例は模式的に示されており、ブラックストライプや蛍光ストライプは省略されている。
【0207】
走査手段の構成によっては、制御手段は、入力信号(制御信号)のみから走査位置・方向を検出することができない場合がある。例えば、走査手段が共振型ミラーであった場合には、走査手段の共振周波数と、制御手段が決定する駆動周波数とにより、共振走査の位相が変化してし、この位相の変化量が大きな場合には、入力信号から走査位置・方向を検出することができなくなる。
【0208】
以下に、共振走査の位相の変化の影響について詳細に説明する。
【0209】
一般に、共振ミラーに限らず共振動作するデバイスにおいては、入力信号に対して一定の位相遅れを生じる。上記の共振走査の位相遅れは、この位相遅れのことを意味する。
【0210】
例えば、図29Aに示すように、正弦波の入力信号に対して、共振ミラーも正弦波で駆動されるが、入力信号と共振ミラーの動作は時間的には一致しない。これが、上記の位相遅れである。
【0211】
この位相遅れは、駆動周波数と、共振動作するデバイスの機械特性の影響を受ける。ここで、駆動周波数は、入力信号(制御信号)の周波数であり、共振周波数とは異なる。共振周波数は、デバイスに依存した物理パラメータ(定数)であり、駆動周波数は電気回路が発生させる正弦波の周波数(変数)である。
【0212】
図29Bに示すように、共振デバイスでは、共振周波数でもっとも大きな振幅で振動するが、共振周波数から僅かにずれたところでも、比較的大きな振幅で振動する。一方で、共振デバイスは、共振周波数の前後では、位相遅れ量が大きく変化するという特性を有する。
【0213】
投射型画像表示装置においては、共振デバイスである共振ミラーの振幅を一定に保つように、機械特性の変化に対して、入力信号(制御信号)の振幅または周波数を変える制御を行う。このとき、振幅を変えるだけであれば、位相は変化しないが、周波数を変えて調整した場合には、位相が変化し、それに伴って位相遅れが生じる。この位相遅れが大きいと、入力信号から走査位置・方向を検出することはできない。
【0214】
本実施形態では、上記のような入力信号から走査位置・方向を検出することができない状況においても、光検出信号から走査方向を検出することができるように、基準マークが配置されている。
【0215】
以下、基準マークの配置について、詳細に説明する。
【0216】
図24には、比較例として、第1および第2の基準マーク60−1が水平走査方向に垂直または略垂直な所定の線(スクリーン中央に位置する線)に対して線対称となるように配置された場合の光検出手段2の出力信号が示されている。上から順番に、水平ラインを第1、第2、第3の水平ラインとすると、第1の水平ラインの検出信号が図中の一番上の検出信号に対応し、第2の水平ラインの検出信号が図中の真ん中の検出信号に対応し、第3の水平ラインの検出信号が図中の一番下の検出信号に対応する。第1乃至第3の水平ラインの検出信号は、ほぼ同じであるので、これらの検出信号から走査方向を判定することは困難である。この場合は、第2の水平ラインの走査方向を、左端から右端へ向かう第1の走査方向と誤判定し、第1および第3の水平ラインの走査方向を、右端から左端へ向かう第2の走査方向と誤判定する場合があり、その結果、水平ライン毎に、画像の左右が反転した画像となる。
【0217】
本実施形態では、図25図26および図27に示すように、複数の基準マークを水平走査方向に垂直または略垂直な所定の線(スクリーン中央に位置する線)に対して、線対称とならないように配置することで、光検出手段2の出力信号から走査方向の判別を可能とし、画像反転を防ぐ。
【0218】
図25に示す例では、第1および第2の基準マーク60−1が上記所定の線の左右に配置され、第1の基準マーク60−1とスクリーンの左端との間隔は、第2の基準マーク60−1とスクリーンの右端との間隔よりも大きい。
【0219】
上から順番に、水平ラインを第1、第2、第3の水平ラインとすると、第1の水平ラインの検出信号が図中の一番上の検出信号に対応し、第2の水平ラインの検出信号が図中の真ん中の検出信号に対応し、第3の水平ラインの検出信号が図中の一番下の検出信号に対応する。
【0220】
第1および第3の水平ラインの検出信号はほぼ同じで、水平ラインの左端付近と中央付近とに相当する部分で、パルス間隔が広くなっている。このパルス間隔が広くなった部分を検出することで、左端から右端へ向かう第1の走査方向であると判定することができる。
【0221】
一方、第2の水平ラインの検出信号においては、水平ラインの右端付近と中央付近に相当する部分で、パルス間隔が広くなっている。このパルス間隔が広くなった部分を検出することで、右端から左端へ向かう第2の走査方向であると判定することができる。
【0222】
図26に示す例では、第1および第2の基準マーク60−1が上記所定の線に対して線対称に配置されるが、第3の基準マーク60−2が、第2の基準マーク60−1と上記所定の線との間に配置されている。第3の基準マーク60−2の垂直方向の長さは、1水平ラインの幅相当である。
【0223】
上から順番に、水平ラインを第1、第2の水平ラインとすると、第1の水平ラインの検出信号が図中の上側の検出信号に対応し、第2の水平ラインの検出信号が図中の下側の検出信号に対応する。第1の水平ラインでは、ビームスポットは第2の基準マーク60−1を通過し、その後、第1の基準マーク60−1を通過する。第2の水平ラインでは、ビームスポットは、第1の基準マーク60−1を通過し、その後、第3の基準マーク60−2、第2の基準マーク60−1を順に通過する。
【0224】
第1の水平ラインの検出信号では、左端付近および右端付近に相当する部分で、パルス間隔が広くなっており、それらのパルス間隔は略同じである。このため、第1の水平ラインの検出信号だけでは、走査方向を判定することはできない。
【0225】
一方、第2の水平ラインの検出信号では、左端付近および右端付近に相当する部分で、パルス間隔が広くなっているが、右端付近に相当する部分のパルス間隔は、左端付近に相当する部分のパルス間隔よりも大きい。このパルス間隔が広くなった部分を検出することで、左端から右端へ向かう第1の走査方向であると判定することができる。
【0226】
第2の走査方向が分かれば、その水平ラインを基準にして、他の水平ラインの走査方向を知ることができる。
【0227】
図27に示す例では、図6に示した例と同様に第1および第2の基準マーク60−1および第3の基準マーク60−2が配置されている。ただし、第1の水平ラインでは、ビームスポットは、第1の基準マーク60−1、第2の基準マーク60−1を順に通過する。第2の水平ラインでは、ビームスポットは、第2の基準マーク60−1、第3の基準マーク60−2、第1の基準マーク60−1を順に通過する。
【0228】
上記の場合は、第1の水平ラインの検出信号に基づいて、第1の水平ラインが右端から左端へ向かう第2の走査方向であると判定することができる。
【0229】
図28に示す例では、第1および第2の基準マーク60−1および第3の基準マーク60−2が用いられるが、これら基準マークはいずれも垂直走査方向に延伸したストライプ状のものである。第3の基準マーク60−2は、第1および第2の基準マーク60−1よりも短い。
【0230】
第1および第2の基準マーク60−1は、水平走査方向に平行な所定の線(スクリーン中央に位置する線)に対して線対称に配置されているが、第3の基準マーク60−2が、第1の基準マーク60−1と上記所定の線との間に配置されている。
【0231】
上から順番に、水平ラインを第1、第2、第3の水平ラインとすると、第1の水平ラインの検出信号が図中の一番上の検出信号に対応し、第2の水平ラインの検出信号が図中の真ん中の検出信号に対応し、第3の水平ラインの検出信号が図中の一番下の検出信号に対応する。
【0232】
第1の水平ラインでは、ビームスポットは、第1および第2の基準マーク60−1および第3の基準マーク60−2のいずれも通過しないので、その検出信号においては、パルス間隔は一定である。
【0233】
第2の水平ラインでは、ビームスポットは、第1の基準マーク60−1を右端から左端に向かって通過したものであり、ブラックストライプの領域を通過していないため、第2の水平ラインの検出信号においては、パルスは生じない。
【0234】
第3の水平ラインでは、ビームスポットは、第3の基準マーク60−2を左端から右端に向かって通過し、その後、ブラックストライプの領域を通過する。第3の水平ラインの検出信号においては、第3の基準マーク60−2に相当する部分ではパルスが生じない。このパルスが生じない部分を検出することで、第3の水平ラインが右端から左端へ向かう第2の走査方向であると判定することができる。
【0235】
第2の走査方向が分かれば、その水平ラインを基準にして、他の水平ラインの走査方向を知ることができる。
【0236】
図28に示した例では、右端から左端へ向かう第3の水平ラインが第3の基準マーク60−2を通過するように設定されるが、左端から右端へ向かう別の水平ラインが第3の基準マーク60−2を通過するように設定されてもよい。この場合は、別の水平ラインの検出信号においては、パルスが生じない部分が、図28に示した第3の水平ラインの検出信号とは逆の位置に生じる。このパルスが生じない部分を検出することで、別の水平ラインが左端から右端へ向かう第1の走査方向であると判定することができる。
【0237】
図25に示した非対称な配置を、垂直走査方向に非対称な配置に適用することもできる。この場合は、第1および第2の基準マーク60−2はいずれも垂直走査方向に延伸したストライプ状のものであり、水平走査方向に平行な所定の線(スクリーン中央に位置する線)に対して線対称に配置される。
【0238】
上述の図26図28に示した非対称な配置を実現するためには、組み立て時に、左右均等な位置にならないようにスクリーンを配置すればよい。この作業に対する要求精度は低く、取り付け作業者に対する負担にはならない。
【0239】
(第7の実施形態)
本実施形態は、第1から第6の実施形態における基準マークの配置と投射範囲との関係に関するものである。
【0240】
マルチプロジェクションシステムにおいて、プロジェクタユニットの処理の共通化のためには、各プロジェクションユニットが投射する領域(投射領域)における基準マークのパターンは、略同一であることが望ましい。パターンが周期的であることは、スクリーン製造の簡易化の点からも望ましい。
【0241】
各投射領域の基準マークのパターンを略同一にするために、基準マークのパターンの繰り返し周期(基準マークの間隔)は、「パターン繰り返し周期 = 投射範囲長 ÷ 正の整数」で与えられる。
【0242】
図30に、プロジェクションユニットの投射領域の基準マークのパターンの一例を示す。
【0243】
図30示す例は、「パターン繰り返し長 = 投射範囲長 ÷ 2」の場合である。図30において、破線で示した矩形形状の領域67は、プロジェクタユニットの投射領域であり、スクリーン全体で、複数の領域67が上下左右に隣接して設定される。各領域67が各プロジェクタユニットの投射領域である。スクリーン全体において、基準マーク60−1は格子状に形成されている。
【0244】
各領域67の基準マーク60−1のパターンは同一である。ただし、各領域67において、基準マーク60−1は、水平走査方向に垂直または略垂直な所定の線(領域67の中央に位置する垂直ライン)および水平走査方向に平行または略平行な所定の線(領域67の中央に位置する水平ライン)に対して非対称に配置されている。
【0245】
図31に、プロジェクションユニットが投射する領域の基準マークのパターンの別の例を示す。
【0246】
図31に示す例も、「パターン繰り返し周期 = 投射範囲長 ÷ 2」の場合である。図31において、破線で示した矩形形状の領域67は、プロジェクタユニットの投射領域であり、スクリーン全体で、複数の領域67が上下左右に隣接して設定される。各領域67が各プロジェクタユニットの投射領域である。スクリーン全体において、基準マーク60−1は格子状に形成されている。
【0247】
各領域67はそれぞれ基準マーク60−1、30−2を含み、各領域67の基準マーク60−1、30−2のパターンは同一である。基準マーク60−1により区画された正方形の領域において、基準マーク60−2が4つの角部のうちの1つの角部近傍に形成されている。各正方形の領域に1つの基準マーク60−2が形成されており、その位置は、各正方形の領域で同じである。
【0248】
なお、複数の基準マーク60−2が正方形の領域内に形成されてもよい。ただし、この場合は、水平走査方向または垂直走査方向もしくは両方向において、基準マーク60−2は非対称に配置される。
【0249】
図31に示したパターンによれば、製造時に、領域67をスクリーンのどの位置に設定しても、走査方向に対して、少なくとも2本以上の基準マークを検出することができるため、製造者の作業負担をさらに軽減することが可能である。
【0250】
図32に、プロジェクションユニットが投射する領域の基準マークのパターンの他の例を示す。
【0251】
図32に示す例は、「パターン繰り返し周期 = 投射範囲長 ÷ 3」の場合である。
【0252】
図32において、破線で示した矩形形状の領域67は、プロジェクタユニットの投射領域であり、スクリーン全体で、複数の領域67が上下左右に隣接して設定される。各領域67が各プロジェクタユニットの投射領域である。スクリーン全体において、基準マーク60−1は格子状に形成されている。
【0253】
各領域67の基準マーク60−1のパターンは同一である。ただし、基準マーク60−1は、水平走査方向に垂直または略垂直な所定の線(領域67の中央に位置する垂直ライン)および水平走査方向に平行または略平行な所定の線(領域67の中央に位置する水平ライン)に対して非対称な配置になっている。
【0254】
図30および図32に示した配置例において、第6の実施形態で記載したように、左右非対称になるように、図31に示したような基準マーク60-2を追加してもよい。
【0255】
なお、基準マークは、図示したような線状のものに限らない。基準マークは、破線状のものであってもよい。また、基準マークは、曲線状のものであってもよい。さらに、基準マークは複数のストライプで形成してもよい。さらに、基準マークは、線以外の形状のもの(例えば円形状や方形状のもの)であってもよい。
【0256】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の構成および動作については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、当業者が理解し得る様々な変更を行うことができる。
【0257】
この出願は、2011年3月3日に出願された日本出願特願2011−046727および2011年9月27日に出願された日本出願特願2011−211615を基礎とする優先権を主張し、それらの開示の全てをここに取り込む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29A
図29B
図30
図31
図32