特許第5967077号(P5967077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967077
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】アルコール含有炭酸飲料用の炭酸保持剤
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20060101AFI20160728BHJP
   C12G 3/12 20060101ALI20160728BHJP
   C12C 5/02 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   C12G3/04
   C12G3/12
   C12C5/02
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-505935(P2013-505935)
(86)(22)【出願日】2012年3月15日
(86)【国際出願番号】JP2012056728
(87)【国際公開番号】WO2012128183
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2014年12月11日
(31)【優先権主張番号】特願2011-59983(P2011-59983)
(32)【優先日】2011年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】矢野 博子
(72)【発明者】
【氏名】岩野 瑞
【審査官】 西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−139442(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/069027(WO,A1)
【文献】 特開2007−181427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G
A23L 2/
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール源として蒸留酒のみで醸造酒を含まず、かつ、乳蛋白質素材を含まないアルコール含有炭酸飲料の製造において、水溶性大豆多糖類を添加することを特徴とし、前記水溶性大豆多糖類が、水溶性大豆多糖類の原料をpHが4を超え6以下で加熱処理することにより得られる、アルコール含有炭酸飲料の炭酸保持方法(但し、豆乳を用いた態様のものを除く。)
【請求項2】
アルコール含有炭酸飲料に果実,果汁,野菜汁または茶抽出物が添加されている、請求項1記載のアルコール含有炭酸飲料の炭酸保持方法(但し、豆乳を用いた態様のものを除く。)
【請求項3】
水溶性大豆多糖類の添加量がアルコール含有炭酸飲料に対して0.005〜0.5重量%である、請求項1または2記載のアルコール含有炭酸飲料の炭酸保持方法(但し、豆乳を用いた態様のものを除く。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルコール含有炭酸飲料の炭酸を長く保持させ、飲用する際の口当たりを含む風味の変化を抑えることのできる炭酸飲料の炭酸保持剤に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料は、摂取したときの爽快な口当たりを楽しむ飲料として、広く一般で消費されており、例えば、アルコール含有炭酸飲料として、ビール、発泡酒、第3のビール、チューハイ等に幅広く展開されている。
炭酸飲料は、炭酸独特の爽快感を付与するだけでなく、炭酸の刺激により飲料の味を引きたたせることで、さらに美味しく飲むことが出来る。このような爽快感や風味は、含有する炭酸の量に影響され、炭酸飲料中の炭酸が減少するとその爽快感が感じにくくなり、飲料の味を引き立てる効果が減少してしまう。
例えば、缶等の容器に充填されているアルコール含有炭酸飲料をカップ等に注いで飲む場合に、注いだ直後は炭酸による爽快感が得られるものの早い段階で炭酸が喪失し、爽快感が感じにくくなり、美味しく飲めなくなる問題がある。
【0003】
経時的な炭酸の抜けを防止する方法については、二酸化炭素の微細な気泡を発生させ、飲料用液体中に供給する方法(特許文献1)がある。この方法では、専用の機械が必要となり、飲料の製造工程が複雑化するなど、汎用性に欠けていた。
また、混成酒にサポニン成分および炭酸ガスを含有させることにより、ビール状の泡立ちを付与する技術(特許文献2)や、ビール様発泡アルコール飲料の起泡、泡持ち向上物質としてエンドウタンパクを使用する技術が開示されている(特許文献3)。しかし、特許文献2では、サポニンの苦味の問題があり、また、特許文献3では、タンパク質の起泡剤がビール様発泡アルコール飲料に対して0.5%も使用されており、いずれも風味への影響が懸念され、より風味の向上した技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−100705
【特許文献2】特開昭61−88869
【特許文献3】特開2005−323585
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のような背景から、アルコール含有炭酸飲料の炭酸の経時的な抜けを抑制することで、飲用する際の口当たりを含む風味の変化を抑えることのできる素材を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意研究を重ねた結果、様々なアルコール含有炭酸飲料がある中でも、原料アルコールの由来が蒸留酒のみで醸造酒を含まず、また、乳蛋白質素材を含まないアルコール含有炭酸飲料に限って、水溶性大豆多糖類を添加することにより、経時的な炭酸の抜けを抑制し、炭酸飲料の炭酸を長く保持させ、開封直後の風味から、保存後に飲用する際の風味の変化を抑えることができることを見出し、本発明の課題を解決するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)水溶性大豆多糖類を含有することを特徴とする、アルコール含有炭酸飲料用の炭酸保持剤であって、該アルコール含有炭酸飲料は、アルコール源として蒸留酒のみで醸造酒を含まず、かつ、乳蛋白質素材を含まないものである、アルコール含有炭酸飲料用の炭酸保持剤。
(2)アルコール源として蒸留酒のみで醸造酒を含まず、かつ、乳蛋白質素材を含まないアルコール含有炭酸飲料の製造において、水溶性大豆多糖類を添加することを特徴とする、アルコール含有炭酸飲料の炭酸保持方法。
(3)アルコール源として蒸留酒のみで醸造酒を含まず、かつ、乳蛋白質素材を含まないアルコール含有炭酸飲料の製造において、水溶性大豆多糖類を添加することを特徴とする、アルコール含有炭酸飲料の製造方法。
(4)水溶性大豆多糖類の、アルコール源として蒸留酒のみで醸造酒を含まず、かつ、乳蛋白質素材を含まないアルコール含有炭酸飲料用の炭酸保持剤としての使用。
(5)アルコール含有炭酸飲料に果実,果汁,野菜汁または茶抽出物が添加されている、(1)記載のアルコール含有炭酸飲料用の炭酸保持剤。
(6)アルコール含有炭酸飲料に果実,果汁,野菜汁または茶抽出物が添加されている、(2)記載のアルコール含有炭酸飲料の炭酸保持剤方法。
(7)アルコール含有炭酸飲料に果実,果汁,野菜汁または茶抽出物が添加されている、(3)記載のアルコール含有炭酸飲料の製造方法。
(8)水溶性大豆多糖類の添加量がアルコール含有炭酸飲料に対して0.005〜0.5重量%である、(2)記載のアルコール含有炭酸飲料の炭酸保持方法。
(9)水溶性大豆多糖類の添加量がアルコール含有炭酸飲料に対して0.005〜0.5重量%である、(3)記載のアルコール含有炭酸飲料の製造方法。
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明品は、原料アルコールの由来が蒸留酒のみで醸造酒を含まず、また、乳蛋白質素材を含まない、特定のアルコール含有炭酸飲料に限って、経時的な炭酸の抜けを抑制することができ、この効果により、飲用する際の口当たりを含む風味の変化を抑えることができる。本発明により、容器入りの当該炭酸飲料についてこれを開封後、時間が経過しても爽快感のある状態で飲用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(水溶性大豆多糖類)
水溶性大豆多糖類とは、大豆に由来する多糖類であって、水に可溶なものである。例えば以下に挙げた製造方法により得ることができる。
【0009】
(水溶性大豆多糖類の原料)
本発明の炭酸保持剤に含有される水溶性大豆多糖類は、その原料として、大豆の子葉由来のものが好ましく、豆腐や分離大豆蛋白などを産生する場合に副生されるおからを利用することが出来る。含脂おからを使用する場合に、含有される油分の加熱による酸化に起因する風味劣化が起こる場合がある点から、脱脂大豆から得られたおからを使用するのが好ましく、分離大豆蛋白を製造する工程で副生するおからを使用することが最も好ましい。
【0010】
(水溶性大豆多糖類の製造方法)
水溶性大豆多糖類は、例えば、分離大豆蛋白を製造する工程で副生する、おからに加水した後、100℃を超える温度で加熱抽出したスラリーを遠心分離機で固液分離し、上清を精製し、乾燥することにより得られる。
【0011】
おからを加熱処理する際のpHとしては、好ましくはpHが3以上7以下、より好ましくはpHが4を超え、6以下が適切である。pHが高すぎる場合は風味や色調が悪化する場合があり、また、pHが低すぎる場合は水溶性大豆多糖類の低分子化が進みすぎる場合があり、このような場合、本発明の効果が低下するため、好ましくない。
【0012】
加熱温度は、100℃を超える温度が好ましく、より好ましくは、130℃以下である。温度が低すぎると、水溶性大豆多糖類の抽出率が低下する場合がある。また、温度が高すぎると水溶性大豆多糖類の低分子化が進みすぎる場合があり、このような場合、本発明の効果が低下するため、好ましくない。
【0013】
(殺菌)
得られた水溶性大豆多糖類は、必要に応じて、製造時に殺菌するのが望ましい。殺菌はいずれの方法によっても可能であり、UHTのような高温殺菌、レトルト殺菌、電磁波殺菌、高温真空殺菌、オゾン殺菌、電界水殺菌、間接加熱殺菌などが例示できる。
【0014】
(乾燥)
得られた水溶性大豆多糖類は必要に応じて乾燥するのが望ましい。乾燥方法として、公知の方法を用いることができ、凍結乾燥法、噴霧乾燥法、棚段式乾燥法、ドラム乾燥法、ベルト乾燥法、流動層乾燥法、マイクロウェーブ乾燥法などが例示できる。乾燥後の水分は、保存性の観点から10重量%以下が望ましい。
【0015】
(炭酸保持剤)
本発明における、原料アルコールの由来が蒸留酒のみで醸造酒を含まず、また、乳蛋白質素材を含まない、アルコール含有炭酸飲料用の炭酸保持剤とは、当該アルコール含有炭酸飲料の開封後における、経時的な炭酸の抜けを抑制し、飲用する際の口当たりを含む風味の変化を抑えることができるものをいう。
【0016】
本発明において、アルコール含有炭酸飲料の開封後における、経時的な炭酸の抜けを抑制する効果については、炭酸感と炭酸持続感により評価する。ここで、炭酸感とは炭酸飲料を飲んだ直後の炭酸からくる刺激感を評価するものであり、炭酸持続感とは炭酸飲料を飲んだ後の舌に残る炭酸の刺激感の持続性を評価するものである。
すなわち、炭酸の刺激感が高いほど、炭酸の刺激感の持続性が長いほど、アルコール含有炭酸飲料の炭酸感、炭酸持続感を保持していることとなり、良好となる。
【0017】
(蒸留酒)
本発明における、原料アルコールの由来が蒸留酒のみで醸造酒を含まず、また、乳蛋白質素材を含まない、アルコール含有炭酸飲料について説明する。まず、原料アルコールが由来する蒸留酒とは、甲類焼酎,乙類焼酎,ウイスキー,ブランデー,ウオッカ,ラム,テキーラや、リキュール,スピリッツ等々の、蒸留工程を経た酒のことである。すなわち、醸造工程を経た不揮発成分が蒸留で除かれ、これらが殆ど混入していないものである。
【0018】
(アルコール含有炭酸飲料)
本発明は上記蒸留酒をアルコール源に用いたアルコール含有炭酸飲料について、効果的に使用できる。そして、蒸留酒には種々の非発酵成分を添加することが可能である。一例を挙げれば、果実,果汁,野菜汁,茶抽出物などの植物に由来する物質や抽出物、砂糖,黒糖,果糖ぶどう糖液,麦芽糖などの糖類、各種ビタミン類,色素,香料等である。蒸留酒自体は発泡性を有しないので、これらを発泡性を持つ他の飲料で希釈するか、カーボネーション処理を行う必要がある。
【0019】
(添加果汁等)
本発明に使用できる果汁としては、例えば原料果実から圧搾した搾汁液を用いることができる。果汁には濃縮果汁とストレート果汁がある。濃縮果汁の中では、カットバックとフレーバー還元とを併用した濃縮果汁が、原料果汁として最も風味の優れたものである。ストレート果汁には、無殺菌果汁、殺菌果汁、殺菌冷凍果汁等がある。果汁の含有量として特に限定はないが、例えば0.1から50重量%である。
果汁の由来となる原料果実の種類には特に限定はなく、例えば、レモン、グレープフルーツ、ライム、オレンジ、温州みかん、マンダリン、タンジェリン等の柑橘類果実、リンゴ、モモ、ウメ、メロン、イチゴ、バナナ、ブドウ、パイナップル、マンゴー、パパイヤ、パッションフルーツ、グアバ、アセロラ、ナシ、アンズ、ライチ、カシス、西洋ナシ、スモモ等が使用でき、これらのうち、1種又は2種以上のものが使用できる。
【0020】
(醸造酒)
醸造酒とは、ビール,ワイン,日本酒,老酒、麦芽含量の低い発泡酒や第3のビール等の、蒸留操作を経ない酒のことである。これらの酒は、醸造工程で発生する様々な発酵産物を含んでおり、発酵産物には様々な不揮発成分が含まれている。本発明に於いては、醸造工程に由来する発酵産物の混入によりその効果が低減することが判っているが、その要因は、後述するように、発酵産物に含まれる不揮発成分であると考えられる。従って、本発明に於いては、醸造酒を含まないことが重要である。
尚、シェリー,ポートワイン,第4のビール等の、醸造酒と蒸留酒を混合した酒類は、上記の醸造工程に由来する発酵産物が混入してしまい、本発明の効果を得ることはできない。
【0021】
本発明のアルコール含有炭酸飲料は、乳蛋白質素材を含まないことも特徴である。乳蛋白質素材とは、牛乳,ヤギ乳,人乳等の哺乳類から得られる、全脂乳,全脂粉乳,脱脂乳,脱脂粉乳,ホエー、濃縮乳や濃縮乳から還元した乳やそれらの乾燥粉末、牛乳等をベースとした無糖練乳や加糖練乳等をいう。本発明には、これらの乳蛋白質素材を直接用いた飲料はもちろん、これらを原料として乳酸菌等で乳酸発酵したものも含まない。後述するように、乳蛋白質の存在が、本発明の効果を阻害する要因となると考えられるからである。
以上のような、原料アルコールの由来が蒸留酒のみで醸造酒を含まず、また、乳蛋白質素材を含まない、アルコール含有炭酸飲料として、焼酎を果汁や茶抽出物で割ったチューハイ,ハイボール,コークハイ等が例示できる。
【0022】
(アルコール含有炭酸飲料の製造方法)
本発明の炭酸保持剤を含有させる炭酸飲料を得る方法については、通常、実施されている方法が使用できる。例えば、缶入りチューハイの場合、所定量の蒸留酒、水、炭酸保持剤、果汁、糖類等を調合した後、カーボネーターによるカーボネーションを行って炭酸ガスを含有させ容器に充填、密封後に加熱殺菌することにより製造することができる。炭酸保持剤の添加は製造工程のどのタイミングで行っても良く、カーボネーション後に添加しても良い。また、上記原料液を濃厚な状態で作成した後に、炭酸水を添加することもできる。尚、コークハイは、ウイスキーに対して、別途調製した炭酸水を添加するか、ウイスキーを水で希釈した後にカーボネーション処理することで調製できる。
【0023】
尚、本発明においては、本発明品の効果に影響を与えない範囲で、他の乳化剤や安定剤を適宜使用することができる。
【0024】
(効果)
上記のような方法で調製されたアルコール含有炭酸飲料を、カップなどの容器に注いだ場合、少なくとも60分間、炭酸感と炭酸持続感が良好であり、口当たりが良いものとなる。
【0025】
本発明が醸造酒を含むアルコール含有炭酸飲料に効果がない理由として、あくまでも推定であるが、次のように考えられる。ビール、発泡酒、第3のビール等の発泡性の醸造酒には、原料中に存在する麦芽やエンドウに由来する高分子な蛋白質、あるいはホップ由来の苦味物質等の各種の不揮発成分が含まれる。これらの不揮発成分は、醸造工程に由来する発酵産物に含まれ、醸造工程によりその性質が変化し、非常に高い起泡性を持つ存在となる。
これらが液中の炭酸と相まって、クリーム状の泡となり、飲料の上面に泡の層が形成されるが、水溶性大豆多糖類はこの泡の安定化に寄与するため、その分、水溶性大豆多糖類の有する炭酸飲料中の炭酸の気泡を保持する効果が低下してしまうためと考えられる。また、第4のビール等の、醸造酒を混合した蒸留酒についても、醸造工程を経た不揮発成分の影響が大きく、同様に、水溶性大豆多糖類の効果が低下するものと考えられる。
これに対して、醸造酒を用いないチューハイのような炭酸飲料の場合、醸造工程を経た蛋白質やホップ由来物質等が存在せず、飲料の上面に泡の層をほとんど形成することがない。従って、醸造酒を含む飲料のように、水溶性大豆多糖類が飲料の上面の泡の安定に寄与することはなく、炭酸飲料中の気泡保持効果が得られるものと考えられる。
【0026】
また、乳蛋白質素材を含むアルコール含有炭酸飲料についても、本発明の効果は得られない。その理由として、あくまでも推定であるが、水溶性大豆多糖類が飲料中の乳蛋白質の分散安定化に寄与するため、その分、水溶性大豆多糖類の有する炭酸飲料中の炭酸の気泡を保持する効果が低下してしまうためと考えられる。
【0027】
本発明における炭酸保持剤の添加量は、炭酸飲料中、固形分で0.005〜0.5重量%が好ましく、0.01〜0.1重量%がより好ましい。添加量が少ないと効果が不十分となる場合があり、多すぎても効果に差がでない上に風味に影響を及ぼす場合がある。
【0028】
(アルコール含有炭酸飲料の評価方法)
本発明により得られるアルコール含有炭酸飲料の経時的な炭酸の抜けを抑制する効果については、官能評価により評価する。この官能評価は、炭酸感と炭酸持続感を総合的に評価することにより行う。
【0029】
(官能評価方法)
官能評価は、具体的には、本発明の炭酸保持剤を添加して調製した炭酸飲料の調製直後(0分)及び、炭酸飲料をカップにゆっくり注いだものを20℃で60分保存したものについて、炭酸飲料の炭酸感及び炭酸持続感を評価することにより行う。調製直後(0分)の無添加の炭酸飲料の炭酸感と炭酸持続感を5点として、各炭酸飲料の調製直後(0分)及び60分保存した炭酸飲料について、パネラー4名で、1〜5点で評価し、その平均を算出する。炭酸感が強いものほど、炭酸感が長く持続するものほど、点数が高くなる。次に、60分保存した炭酸飲料の値と調製直後(0分)の値の差を算出する。炭酸感及び炭酸持続感それぞれで算出した差の合計を官能評価とする。すなわち、

官能評価(点)=(調製後60分の炭酸感の平均値−調製直後(0分)の炭酸感の平均値)+(調製後60分の炭酸持続感の平均値−調製直後(0分)の炭酸持続感の平均値)
の式により算出する。
この官能評価点が、−3.5点以上であれば、炭酸飲料の炭酸感、炭酸持続感を保持できるものであり、合格とする。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を記載する。なお、例中の部および%は何れも重量基準を意味する。
【0031】
(水溶性大豆多糖類の製造例)
分離大豆蛋白を製造する工程で副生するおから1部に水2部を加水したスラリーを、塩酸でpHを5.0に調整し、加圧釜で120℃、1.5時間加熱した。加熱後のスラリーを遠心分離機で遠心分離し(5000×g)、上清を得た。上清を精製後、凍結乾燥により水溶性大豆多糖類Aを得た。
【0032】
(チューハイ)
(実施例1)
市販の缶入りのアルコール含有炭酸飲料(麒麟麦酒株式会社製:商品名 キリン氷結 レモン)350gから、65gを除去し、代わりに水溶性大豆多糖類Aの1%水溶液を15g添加して300gとし、ゆっくりと缶を動かして全体を均一にし、本発明の炭酸保持剤を含有する炭酸飲料を得た。
【0033】
(比較例1)
実施例1において、水溶性大豆多糖類水溶液の代わりに水を15g添加する以外は同様にした。
【0034】
(結果)
(表1)チューハイの官能評価
【0035】
表1の結果が示すように、水溶性大豆多糖類を添加した実施例1では、炭酸飲料をカップに注いでから60分後の官能評価の点数は−2.8点と合格であった。一方、水溶性大豆多糖類を添加していない比較例1では、官能評価が−6点となり悪い結果となった。
【0036】
(チューハイ)
(実施例2)
市販の缶入りのアルコール含有炭酸飲料(サントリー株式会社製:商品名 ストロングゼロ ダブルグレープフルーツ)350gから、65gを除去し、代わりに水溶性大豆多糖類Aの1%水溶液を15g添加して300gとし、ゆっくりと缶を動かして全体を均一にし、本発明の炭酸保持剤を含有する炭酸飲料を得た。
【0037】
(表2)チューハイの官能評価
【0038】
表2の結果が示すように、水溶性大豆多糖類を添加した実施例2では、炭酸飲料をカップに注いでから60分後の官能評価の点数は−2.5点と合格であった。一方、水溶性大豆多糖類を添加していない比較例2では、官能評価が−6点となり悪い結果となった。
実施例1、2のように水溶性大豆多糖類を添加することにより、カップに注いだ後の炭酸飲料の炭酸感と炭酸持続感を保持することができ、経時的な炭酸の抜けを抑制することで爽快感のある炭酸飲料を調製することができた。
【0039】
(第4のビール)
(比較例3)
市販の缶入りのアルコール含有炭酸飲料(サントリー株式会社製:商品名 金麦)350gから、65gを除去し、代わりに水溶性大豆多糖類Aの1%水溶液を15g添加して300gとし、ゆっくりと缶を動かして全体を均一にし、炭酸飲料を得た。
【0040】
(比較例4)
比較例3において、水溶性大豆多糖類水溶液の代わりに水を15g添加する以外は同様にした。
【0041】
(表3)第4のビールの官能評価
【0042】
表3の結果が示すように、第4のビールに水溶性大豆多糖類を添加した比較例3では、炭酸飲料をカップに注いでから60分後の官能評価の点数は−5点となり、官能評価が悪い結果となった。
【0043】
(ビール)
(比較例5)
市販の缶入りのアルコール含有炭酸飲料(サッポロビール株式会社製:商品名 エビスビール)350gから、65gを除去し、代わりに水溶性大豆多糖類Aの1%水溶液を15g添加して300gとし、ゆっくりと缶を動かして全体を均一にし、炭酸飲料を得た。
【0044】
(比較例6)
比較例5において、水溶性大豆多糖類水溶液の代わりに水を15g添加する以外は同様にした。
【0045】
(表4)ビールの官能評価
【0046】
表4の結果が示すように、ビールに水溶性大豆多糖類を添加した比較例5では、炭酸飲料をカップに注いでから60分後の官能評価の点数は−6点となり、官能評価が悪い結果となった。
【0047】
このように、蒸留酒に醸造酒が混合された第4のビールや、醸造酒であるビールに水溶性大豆多糖類を添加しても、本発明の炭酸保持効果が得られないことがわかった。
【0048】
(乳蛋白質素材を含むアルコール含有炭酸飲料)
(比較例7)
市販の缶入りのアルコール含有炭酸飲料(株式会社日本サンガリア ベバレッジカンパニー製:商品名 ヨーグルサワー)350gから、65gを除去し、代わりに水溶性大豆多糖類Aの1%水溶液を15g添加して300gとし、ゆっくりと缶を動かして全体を均一にし、炭酸飲料を得た。
【0049】
(比較例8)
比較例7において、水溶性大豆多糖類水溶液の代わりに水を15g添加する以外は同様にした。
【0050】
(表5)
【0051】
表5の結果のように、水溶性大豆多糖類を添加した比較例7の官能評価点は−6.5点と悪い結果となった。このように、乳蛋白質素材を含むアルコール含有炭酸飲料に水溶性大豆多糖類を添加しても、本発明の炭酸保持効果は得られないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
水溶性大豆多糖類を添加することにより、アルコール含有炭酸飲料の経時的な炭酸の抜けを抑制することができ、この効果により、飲用する際の口当たりを含む風味の変化を抑えることができる。本発明により、容器入りアルコール含有炭酸飲料を開封後、時間が経過しても爽快感のあるアルコール含有炭酸飲料を飲用することができる。