【文献】
Hirohito Yamada, Tao Chu, Satomi Ishida, and Yasuhiko Arakawa,Si Photonic Wire Waveguide Devices,IEEE JOURNAL OF SELECTED TOPICS IN QUANTUM ELECTRONICS,2006年,Vol. 12, No. 6,pp. 1371 - 1379
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
インターネットに代表される情報通信ネットワークは、人々の生活に欠くことのできないインフラとして世界中に張り巡らされている。このインターネットのトラフィックを支えている技術として、光ファイバを用いた光通信技術がある。光ファイバ通信波長帯の中でも1.3μm帯および1.55μm帯が利用可能なシリコンプラットフォームを用いた光通信デバイスは、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)作製技術により高密度な光集積回路を実現するものとして期待されている。
【0003】
このような光通信技術の中でも特に重要な技術として導波路型光デバイス作製技術がある。導波路型光デバイスでは、バルクの光学部品のつなぎ合わせで作製される光デバイスとは異なり、多数の光デバイスを集積することが可能である。従って、光デバイスの設計自由度が格段に向上する。さらには、半導体デバイスの作製技術を利用できるので、低コストで高集積なデバイスが実現可能である。
【0004】
こうした導波路型光デバイスの例としては、光分岐器、光合流器、波長合分波器、光スイッチ、光変調器、可変光減衰器などがある。しかしながら、これらの導波路型光デバイスにおいて迷光や漏洩光が生じた際に、光デバイスの消光比やクロストークなどの特性に悪影響を与えるという問題がある。また、単一のデバイスだけでなく光デバイスを多数集積した場合に、あるデバイスからの迷光や漏洩光が、他の光デバイスの特性に悪影響を与えるという問題が生じる。
【0005】
このような場合の具体例として、マッハツェンダー干渉計で実現した光スイッチがある。この光スイッチでは、
図13に示すように、マッハツェンダー干渉計から構成され、入力ポート1301からの光を方向性結合器1302で2分岐し、2本のアーム1303a,1303bの間での光の位相差を、位相シフタ1304により制御した後、再び方向性結合器1305を用いて両アームの光を合流することにより、出力ポート1306a,1306bでの光をオンオフする。この時、ダミーポート1307では、光の入出力はない筈であるが、デバイス内部で何らかの理由により光の反射点が生じた場合には、ダミーポート1307からの漏洩光が生じる可能性がある。
【0006】
この漏洩光が導波路に再結合すると、消光比やクロストークなどの光デバイスの特性を劣化させるという問題が生じるため、何らかの方法でダミーポート1307での光を完全に消して光終端する必要が生じる。
【0007】
これまでに提案されている光終端器としては、ダミーポートの先端に、導波路に対して角度をもつ溝を設け、この溝にカーボンブラックなどの光吸収材料を後から充填する構造が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、この方法では、溝を形成し、また、形成した溝に光吸収材料を充填するなど、工程が煩雑となり、また、剥離するなど作製が難しかった。従って、高コストになり、また、信頼性や性能ばらつきなどの課題が大きな問題であった。
【0008】
また、ダミーポートの先端に光を散乱させる構造を作製することが提案されている(特許文献3)。しかしながら、光を散乱させると迷光となってしまい、消光比の低下やクロストークの発生など他の光デバイスに悪影響を与えるという大きな問題があった。また、光デバイス面内ではなく、上下方向に光を散乱させることができたとしても、光デバイスのパッケージ内に置かれた受光器などに結合する可能性があり大きな問題であった。
【0009】
また、ダミーポートとつながる導波路のコアを先細りテーパーにして光をコアから漏れさせて、この周りを覆う金属などで光吸収させる構造が提案されている(特許文献4)。しかしながら、この技術では、導波路コアを先細りテーパーにする工程の条件が厳しく、先細りテーパーは作製しにくいという問題があった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1Aは、本発明の実施の形態1における光導波路型光終端器の構成を示す構成図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の実施の形態1における光導波路型光終端器の構成を示す構成図である。
【
図1C】
図1Cは、本発明の実施の形態1における光導波路型光終端器の構成を示す構成図である。
【
図1D】
図1Dは、本発明の実施の形態1における光導波路型光終端器の構成を示す構成図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施の形態1における光導波路型光終端器の製造方法を説明するための各工程における断面を示す断面図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の実施の形態1における光導波路型光終端器の製造方法を説明するための各工程における断面を示す断面図である。
【
図2C】
図2Cは、本発明の実施の形態1における光導波路型光終端器の製造方法を説明するための各工程における断面を示す断面図である。
【
図2D】
図2Dは、本発明の実施の形態1における光導波路型光終端器の製造方法を説明するための各工程における断面を示す断面図である。
【
図2E】
図2Eは、本発明の実施の形態1における光導波路型光終端器の製造方法を説明するための各工程における断面を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態2における光導波路型光終端器の構成を示す平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態3における光導波路型光終端器の構成を示す平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態4における光導波路型光終端器の構成を示す平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態4における他の光導波路型光終端器の構成を示す平面図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の実施の形態5における光導波路型光終端器の構成を示す平面図である。
【
図7B】
図7Bは、本発明の実施の形態5における光導波路型光終端器の構成を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態6における光導波路型光終端器の構成を示す平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態7における光導波路型光終端器の構成を示す平面図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施の形態7における他の光導波路型光終端器の構成を示す平面図である。
【
図11A】
図11Aは、本発明の実施の形態8における光導波路型光終端器の構成を示す平面図である。
【
図11B】
図11Bは、本発明の実施の形態8における光導波路型光終端器の構成を示す断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施の形態における光導波路型光終端器を備える光スイッチの構成を示す平面図である。
【
図13】
図13は、マッハツェンダー干渉計で実現した光スイッチの構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0019】
この光導波路型光終端器は、クラッド層102の上に形成されて不純物が10
19cm
-3以上導入されたシリコンから構成された部分を備える光吸収コア103を少なくとも備えて光導波路構造とされ、シリコンからなるコア(主コア)105を備える光導波路に直列に光接続して用いられる。本実施の形態では、光吸収コア103およびコア105は、いずれもクラッド層102の上に形成されている。また、光吸収コア103およびコア105の上には、クラッド層104が形成されている。クラッド層104は、クラッド層102の上で、光吸収コア103およびコア105を覆うように形成されている。また、クラッド層102は、基板101の上に形成されている。
【0020】
光吸収コア103は、断面の幅および高さが、0.3〜0.4μm程度である。これは、コア105も同様である。なお、本書において、幅は、導波方向に垂直な断面で、基板101の平面に平行な方向の寸法である。また、高さは、導波方向に垂直な断面で、基板101の平面の法線方向の寸法である。
【0021】
また、光吸収コア103は、少なくとも不純物が10
19cm
-3程度導入されていればよい。例えば、不純物濃度は、10
19〜10
20cm
-3の範囲とされていればよい。不純物の存在により、光吸収コア103では、光の吸収が起こる。上述した不純物濃度では、シリコンの吸収係数は10の2乗から10の3乗(1/cm)であるので、吸収長は数10μmから数百μm程度となる。不純物材料としては、ホウ素、リン、砒素などを用いることができる。
【0022】
シリコンの屈折率は3.45程度であり、上述したように不純物をヘビードープされた光吸収コア103の屈折率は、10
20cm
-3の不純物濃度の場合、波長1.55μmにおいて、3.35+i 10
-2(iは虚数単位) 程度である(非特許文献1参照)。従って、コア105と光吸収コア103との光結合部においては、屈折率差による反射を小さくすることができる。
【0023】
上述した本実施の形態における光導波路型光終端器の光吸収コア103は、光を吸収するので、コア105からなる導波路部分を導波してきた光は、光吸収コア103からなる導波路部分を伝搬しながら徐々に消光されていく。また、本実施の形態では、光吸収コア103を、コア105と同じ厚さに形成しており、基板101からこれらの上面までの高さを同一としている。このため、例えば、光吸収コア103およびコア105は、同時に形成(パターニング)することが可能であり、作製プロセスを大幅に簡略化することができる。
【0024】
上述した構成は、例えば、よく知られたSOI(Silicon on Insulator)基板を用いることで形成できる。SOI基板のシリコン基部を基板101とし、SOI基板の埋め込み絶縁層(SiO
2;層厚2〜3μm )をクラッド層102とし、SOI基板のSOI層で光吸収コア103を形成すればよい。また、SOI層に形成したコアの上に、酸化シリコンを堆積することで、クラッド層104とすればよい。
【0025】
また、光導波路型光終端器は、上述したように、矩形の断面形状の光吸収コア103によるチャネル導波路に限るものではない。例えば、
図1Dに示すように、光吸収コア131の両脇にスラブ層132を備えるリブ導波路であっても容易。この場合、光吸収コア131の断面の幅および高さは、1〜2μm程度とすればよい。
【0026】
次に、実施の形態1における光導波路型光終端器の製造方法について、
図2A〜
図2Eを用いて説明する。
図2A〜
図2Eは、本発明の実施の形態1における光導波路型光終端器の製造方法を説明するための各工程における断面を示す断面図である。
【0027】
まず、SOI基板を用意し、
図2Aに示すように、SOI基板のシリコン基部を基板101とし、埋め込み絶縁層をクラッド層102とする。クラッド層102の上には、SOI層201が設けられている。
【0028】
次に、
図2Bに示すように、イオン注入202により不純物を導入して不純物導入シリコン層203を形成する。不純物を導入する領域は、光吸収コア103を形成する領域とすればよい。イオン注入を行った後、導入された不純物を活性化するためのアニール処理も行う。
【0029】
次に、
図2Cに示すように、不純物導入シリコン層203の上に、公知のフォトリソグラフィー技術により、レジストパターン204を形成する。レジストパターン204は、コアを形成するためのマスクであり、不純物導入シリコン層203以外のSOI層の光導波路のコア形成領域から、光導波路型光終端器を構成するコア形成領域にかけて形成すればよい。
【0030】
次に、レジストパターン204をマスクとしてSOI層を、公知のドライエッチング技術により選択的にエッチング除去することで、
図2Dに示すように、光吸収コア103を形成する。このとき、図示しない領域に、コア105も同時に形成される。この後、レジストパターン204は除去する。
【0031】
次に、例えば、よく知られたCVD法により酸化シリコンを堆積することで、
図2Eに示すように、クラッド層104を形成する。上述したリソグラフィー技術、エッチング技術、イオン注入、およびアニール処理のプロセスは、半導体製造の標準プロセスであり、作製プロセスが簡単化できる。
【0032】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について
図3を用いて説明する。
図3は、本発明の実施の形態2における光導波路型光終端器の構成を示す平面図である。この光導波路型光終端器は、クラッド層102の上に形成されて不純物が10
19cm
-3以上導入されたシリコンから構成された光吸収コア303を少なくとも備えて光導波路構造とされ、コア105を備える光導波路に直列に光接続して用いられる。実施の形態2では、光吸収コア303の幅が、コア105より大きく形成されている。なお、他の構成は、前述した実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0033】
実施の形態2によれば、より幅広とした光吸収コア303を用いているので、光吸収コア303よりなる導波路の領域(光導波路型光終端器)に入射した光は、導波方向に対して横方向(幅方向)にも拡散して光強度が低下(減衰)する。従って、幅を広くすることで、同じ導波方向により短い距離で消光が可能となる。この結果、実施の形態2によれば、光吸収コア303の導波方向の長さを短くすることができるようになる。
【0034】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について
図4を用いて説明する。
図4は、本発明の実施の形態3における光導波路型光終端器の構成を示す平面図である。この光導波路型光終端器は、クラッド層102の上に形成されて不純物が10
19cm
-3以上導入されたシリコンから構成された光吸収コア403を少なくとも備えて光導波路構造とされ、コア105を備える光導波路に直列に光接続して用いられる。実施の形態3では、光吸収コア403の幅が、コア105より大きく形成されている。加えて、実施の形態3では、光吸収コア403とコア105との光結合部の接合面が、導波方向に垂直な面より角度を有して斜めに形成されている。なお、他の構成は、前述した実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0035】
例えば、光吸収コア403とコア105との光結合部の接合面が、導波方向に垂直な面より45°傾斜している。なお、接合面は、基板の平面に対して垂直に形成されている。このように接合面を斜めにすることで、コア105よりなる導波路を導波してきた光の、光吸収コア403の入射端面における反射を、さらに低減させることができる。なお、上述した接合面は、曲面から構成されていてもよい。
【0036】
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4について
図5および
図6を用いて説明する。
図5および
図6は、本発明の実施の形態4における光導波路型光終端器の構成を示す平面図である。
図5において、光導波路型光終端器は、クラッド層102の上に形成されて不純物が10
19cm
-3以上導入されたシリコンから構成された光吸収コア503を少なくとも備えて光導波路構造とされ、コア105を備える光導波路に直列に光接続して用いられる。光吸収コア503の幅は、コア105より大きく形成されている。
【0037】
また、
図6において、光導波路型光終端器は、クラッド層102の上に形成されて不純物が10
19cm
-3以上導入されたシリコンから構成された光吸収コア603を少なくとも備えて光導波路構造とされ、コア105を備える光導波路に直列に光接続して用いられる。光吸収コア603の幅は、コア105より大きく形成されている。
【0038】
実施の形態4では、光吸収コア503とコア105との光結合部を、平面視テーパー状に形成している。この場合、コア105が、光結合部の先端にかけて、徐々に幅が狭くなる形状に形成されている。同様に、光吸収コア603とコア105との光結合部を、平面視テーパー状に形成している。この場合、光吸収コア603が、光結合部の先端にかけて、徐々に幅が狭くなる形状に形成されている。これらの構成とすることにより、前述した実施の形態3と同様に、コア105よりなる導波路を導波してきた光の、光吸収コア503または光吸収コア603の入射端面における反射を、さらに低減させることができる。なお、本実施の形態においても、接合面は、曲面から構成されていてもよい。
【0039】
[実施の形態5]
次に、本発明の実施の形態5について
図7Aおよび
図7Bを用いて説明する。
図7Aおよび
図7Bは、本発明の実施の形態5における光導波路型光終端器の構成を示す平面図および断面図である。
【0040】
この光導波路型光終端器は、クラッド層102の上に形成されて不純物が10
19cm
-3以上導入されたシリコンから構成された部分を備える光吸収コア703を少なくとも備えて光導波路構造とされ、シリコンからなるコア105を備える光導波路に直列に光接続して用いられる。実施の形態5では、光吸収コア703の幅が、コア105より大きく形成されている。
【0041】
加えて、光吸収コア703を、不純物を導入した導入部731と不純物を導入していない非導入部732とを、導波方向に交互に配置して構成している。言い換えると、複数の導入部731の各々と複数の非導入部732の各々が、光導波方向に交互に配置されている。また、導入部731に関しては、コア105との接合部より離れる導入部731ほど、導波方向の長さが長く形成されている。一方、非導入部732に関しては、コア105との接合部に近い非導入部732ほど、導波方向の長さが長く形成されている。言い換えると、複数の導入部731の各々の光導波方向の長さは、光吸収コア703とコア105との接合部より離れた位置の導入部731ほど長く、複数の非導入部732の各々の光導波方向の長さは、上記接合部に近い位置の非導入部732ほど長い。このように構成することで、光吸収コア703は、コア105との接続面に近くなるほど不純物の平均面密度が低下する状態にできる。
【0042】
なお、例えば、光吸収コア703は、コア105と同じ高さに形成されるなど、他の構成は、前述した実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0043】
実施の形態5の光導波路型光終端器によれば、光導波路型光終端器に入射した光は、光吸収コア703において導入部731を徐々に感じることになる。この結果、光吸収コア703に入射する光の反射を低減できる。ここで、導波方向に交互に配置する導入部731および非導入部732は、導波させる光の波長以下のサイズで、各々の導波方向の長さを変化させる。この構造は、不純物を選択的に導入するためのマスクパターンにより、容易に制御することが可能であることは、当業者であれば容易に想到し得る。なお、
図7Aおよび
図7Bでは、コア105との光結合部(接合部)には、導入部731が配置されるようにしたが、これに限るものではなく、非導入部732が配置されるようにしてもよい。
【0044】
[実施の形態6]
次に、本発明の実施の形態6について
図8を用いて説明する。
図8は、本発明の実施の形態6における光導波路型光終端器の構成を示す平面図である。この光導波路型光終端器は、クラッド層102の上に形成されて不純物が10
19cm
-3以上導入されたシリコンから構成された光吸収コア803を少なくとも備えて光導波路構造とされ、コア105を備える光導波路に直列に光接続して用いられる。
【0045】
実施の形態6では、光吸収コア803の幅が、コア105より大きく形成されている。また、光吸収コア803は、不純物を導入した導入部831と不純物を導入していない非導入部832とを、導波方向に交互に配置して構成されている。また、導入部831に関しては、コア105との接合部より離れる導入部831ほど、導波方向の長さが長く形成されている。一方、非導入部832に関しては、コア105との接合部に近い非導入部832ほど、導波方向の長さが長く形成されている。
【0046】
加えて、実施の形態6では、光吸収コア803とコア105との光結合部の接合面が、導波方向に垂直な面より角度を有して斜めに形成され、同様に、各導入部831および非導入部832の界面が、導波方向に垂直な面より角度を有して斜めに形成されている。例えば、接合面および各界面が、導波方向に垂直な面より45°傾斜している。なお、接合面および各界面は、基板の平面に対して垂直に形成されている。なお、他の構成は、前述した実施の形態1と同様であり、説明は省略する。
【0047】
このように接合面および各界面を斜めにすることで、コア105よりなる導波路を導波してきた光の、光吸収コア803の入射端面における反射を、さらに低減させることができる。なお、上述した接合面および界面は、曲面から構成されていてもよい。
【0048】
[実施の形態7]
次に、本発明の実施の形態7について
図9および
図10を用いて説明する。
図9および
図10は、本発明の実施の形態7における光導波路型光終端器の構成を示す平面図である。
図9において、光導波路型光終端器は、クラッド層102の上に形成されて不純物が10
19cm
-3以上導入されたシリコンから構成された光吸収コア903を少なくとも備えて光導波路構造とされ、コア105を備える光導波路に直列に光接続して用いられる。光吸収コア903の幅は、コア105より大きく形成されている。
【0049】
また、光吸収コア903は、不純物を導入した導入部931と不純物を導入していない非導入部932とを、導波方向に交互に配置して構成されている。複数の導入部931の各々と複数の非導入部932の各々が、光導波方向に交互に配置されている。また、導入部931に関しては、コア105との接合部より離れる導入部931ほど、導波方向の長さが長く形成されている。一方、非導入部932に関しては、コア105との接合部に近い非導入部932ほど、導波方向の長さが長く形成されている。言い換えると、複数の導入部931の各々の光導波方向の長さは、光吸収コア903とコア105との接合部より離れた位置の導入部931ほど長く、複数の非導入部932の各々の光導波方向の長さは、上記接合部に近い位置の非導入部932ほど長い。
【0050】
また、
図10において、光導波路型光終端器は、クラッド層102の上に形成されて不純物が10
19cm
-3以上導入されたシリコンから構成された光吸収コア1003を少なくとも備えて光導波路構造とされ、コア105を備える光導波路に直列に光接続して用いられる。光吸収コア1003の幅は、コア105より大きく形成されている。
【0051】
また、光吸収コア1003は、不純物を導入した導入部1031と不純物を導入していない非導入部1032とを、導波方向に交互に配置して構成されている。複数の導入部1031の各々と複数の非導入部1032の各々が、光導波方向に交互に配置されている。また、導入部1031に関しては、コア105との接合部より離れる導入部1031ほど、導波方向の長さが長く形成されている。一方、非導入部1032に関しては、コア105との接合部に近い非導入部1032ほど、導波方向の長さが長く形成されている。複数の導入部1031の各々の光導波方向の長さは、光吸収コア1003とコア105との接合部より離れた位置の導入部1031ほど長く、複数の非導入部1032の各々の光導波方向の長さは、上記接合部に近い位置の非導入部1032ほど長い。
【0052】
実施の形態7では、光吸収コア903とコア105との光結合部および各導入部831および非導入部832の界面を、平面視テーパー状に形成している。この場合、コア105が、光結合部の先端にかけて、徐々に幅が狭くなる形状に形成されている。同様に、光吸収コア1003とコア105との光結合部および各導入部931および非導入部932の界面を、平面視テーパー状に形成している。この場合、光吸収コア1003が、光結合部の先端にかけて、徐々に幅が狭くなる形状に形成されている。これらの構成とすることにより、前述した実施の形態6と同様に、コア105よりなる導波路を導波してきた光の、光吸収コア903または光吸収コア1003の入射端面における反射を、さらに低減させることができる。なお、本実施の形態においても、接合面は、曲面から構成されていてもよい。
【0053】
[実施の形態8]
次に、本発明の実施の形態8について、
図11Aおよび
図11Bを用いて説明する。
図11Aおよび
図11Bは、本発明の実施の形態8における光導波路型光終端器の構成を示す平面図および断面図である。
【0054】
この光導波路型光終端器は、クラッド層102の上に形成されて不純物が10
19cm
-3以上導入されたシリコンから構成された部分を備える光吸収コア1103を少なくとも備えて光導波路構造とされ、シリコンからなるコア105を備える光導波路に対して並列に配置し、方向性結合器となる状態にされている。
【0055】
コア105より構成される光導波路からの光は、光吸収コア1103へ結合することにより光吸収が起こる。方向性結合器とすることで、コア105から光吸収コア1103へ徐々に光が移行していくことから、光吸収コア1103による光の反射を低減することが可能である。
【0056】
ここで、光吸収コア1103の先端を平面視テーパー状としているが、これに限るものではなく、曲がり導波路構造としてもよい。実施の形態8においても、各コアは、矩形導波路(チャネル導波路)に限らず、リブ導波路であってもよい。なお、他の構成は、前述した実施の形態1と同様であり、説明を省略する。
【0057】
次に、本発明に係る光導波路型光終端器を、マッハツェンダー干渉計から構成された光スイッチに対応させた例について、
図12を用いて説明する。
図12は、本発明の実施の形態における光導波路型光終端器を備える光スイッチの構成を示す平面図である。また、
図12の(a)は、部分を拡大して示す平面図である。
【0058】
この光スイッチでは、ダミーポート1207の出力端に、不純物が10
19cm
-3以上導入されたシリコンから構成された部分を備える光吸収コア1103を直列接続して備えている。
【0059】
この光スイッチでは、入力ポート1201からの光を方向性結合器1202で2分岐し、2本のアーム1203a,1203bの間での光の位相差を、位相シフタ1204により制御した後、再び方向性結合器1205を用いて両アームの光を合流することにより、出力ポート1206a,1206bでの光をオンオフする。この時、ダミーポート1207では、光吸収コア1103が直列に接続して終端されているので、ダミーポート1207への漏洩光が発生しても、光吸収コア1103で吸収される。この結果、漏洩光や迷光を防ぐことができる。
【0060】
なお、ダミーポート1207に接続する光導波路型光終端器は、前述したいずれの実施の形態における光導波路型光終端器でもよい。光吸収コア1103は、直線構造としてもよく、また、曲がり導波路が含まれていてももちろん構わない。曲がり導波路を組み込んで導波路を折り畳むことで、光導波路型光終端器の設置領域を小さくすることができる。
【0061】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【0062】
この出願は、2011年5月24日に出願された日本出願特願2011−115520号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
【0063】
上記実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されるが、以下には限られない。
【0064】
(付記1)
基板の上に形成されたクラッド層と、クラッド層の上に形成されて不純物が10
19cm
-3以上導入されたシリコンから構成された部分を備える光吸収コアとが、シリコンからなる主コアを備える光導波路に直列に光接続されることを特徴とする光導波路型光終端器。
【0065】
(付記2)
付記1記載の光導波路型光終端器において、光吸収コアの断面形状は、コアと同じ断面形状とされていることを特徴とする光導波路型光終端器。
【0066】
(付記3)
付記2記載の光導波路型光終端器において、コアおよび光吸収コアは、基板より同じ距離離間して形成されていることを特徴とする光導波路型光終端器。
【0067】
(付記4)
付記1〜3のいずれか1項に記載の光導波路型光終端器において、光吸収コアは、コアとの接続面に近くなるほど不純物の平均面密度が低下していることを特徴とする光導波路型光終端器。
【0068】
(付記5)
付記4記載の光導波路型光終端器において、光吸収コアは、不純物が導入された導入部と不純物が導入されていない非導入部とを備え、複数の導入部の各々と複数の非導入部の各々は、光導波方向に交互に配置され、複数の導入部の各々の光導波方向の長さは、光吸収コアと主コアとの接合部より離れた位置の導入部ほど長く、複数の非導入部の各々の光導波方向の長さは、接合部に近い位置の非導入部ほど長いことを特徴とする光導波路型光終端器。