【文献】
オンライン,URL,http://www.chembuyersguide.com/images/mowiol.pdf
【文献】
オンライン,URL,https://www.researchgate.net/file.PostFileLoader.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高屈折率層および前記低屈折率層のうち少なくとも一方がさらに金属酸化物粒子を含有し、前記高屈折率層と前記低屈折率層との屈折率差が0.1以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の光学反射フィルム。
前記ポリビニルアルコール(A)および前記ポリビニルアルコール(B)の一方の鹸化度が90mol%以上であり、他方が該鹸化度が90mol%以上のポリビニルアルコールの鹸化度より低い鹸化度である、請求項1から5のいずれかに記載の光学反射フィルム。
前記ポリビニルアルコール(A)の含有量が高屈折率層の全固形分の10質量%以上であり、かつ前記ポリビニルアルコール(B)の含有量が低屈折率層の全固形分の10質量%以上である、請求項1から10のいずれかに記載の光学反射フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明により、製造時の環境保全性に優れるとともに、生産性が高く、所望の波長の光反射性に優れ、ヘイズが少ない、光学反射フィルムとそれを用いた光学反射体を提供することができる。
【0014】
前記した通り、本発明の発明者は上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、高屈折率層に含まれるポリビニルアルコール(A)とは鹸化度が異なるポリビニルアルコール(B)を低屈折率層に含有する光学反射フィルムにより、生産性が高く、所望の波長の光反射性に優れ、ヘイズが少ない、光学反射フィルムを実現することができることを見出し、本発明に至った次第である。
【0015】
上述した本発明の構成による作用効果の発揮のメカニズムは以下のように推測される。
【0016】
すなわち、本発明が対象とする光学反射フィルムは、通常、高屈折率層、低屈折率層を形成し得るそれぞれの塗布液を用い、前記各塗布液を逐次塗布または同時重層塗布によって高屈折率層と低屈折率層とを積層することによって製造される。しかしながら、重層塗布で得られる塗膜は、隣接する層間での混合や界面の乱れ(凹凸)が発生しがちである。逐次重層塗布の場合は、上層の塗布液を塗布した際に、形成された下層が再溶解し、上層および下層の液同士が混合し、隣接する層間での混合や界面の乱れ(凹凸)が発生する場合がある。また、同時重層塗布で得られる塗膜は、未乾燥の液状態で重ねられるために、隣接する層間での混合や界面の乱れ(凹凸)がより発生してしまう。光学反射フィルムのような多層膜では適度な層間混合は膜の密着性や光学特性に良好な効果を及ぼすが、層間混合が大きすぎると反射率の低下が起こり好ましくないため、適切なレベルに制御することが必要である。また界面の乱れが大きくなるとヘイズの原因となり好ましくないため、界面の乱れを小さくする必要がある。
【0017】
これに対し、本発明に係る光学反射フィルムにおいては、高屈折率層にポリビニルアルコール(A)を含有し、低屈折率層にポリビニルアルコール(A)とは鹸化度が異なるポリビニルアルコール(B)を含有することにより、高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制されて好ましいレベルの層間混合状態を実現することができ、界面の乱れも小さくすることができた。このような効果が発現した理由は明確ではない。鹸化度の異なるポリビニルアルコール樹脂自体の相溶性は悪いことが知られている。高屈折率層と低屈折率層が未乾燥の液状態で重ねられた際に各層が多少混合したとしても、乾燥過程で溶媒である水が揮発して濃縮されると鹸化度の異なるポリビニルアルコール樹脂同士が相分離を起こし、各層の界面の面積を最小にしようとする力が働くようになるため、層間混合が抑制され界面の乱れも小さくなったものと推定される。このように層間混合が抑制され、界面の乱れが小さくなったことで本発明の光学反射フィルムは所望の波長の光反射性に優れ、ヘイズが少なくなったと考えている。ただし、上記メカニズムは推定であり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0018】
高屈折率層および低屈折率層の少なくとも一方に金属酸化物粒子を添加した際には金属酸化物粒子がポリビニルアルコールと結合し、鹸化度の異なるポリビニルアルコール樹脂同士が相分離するときに金属酸化物粒子も一緒に移動するためさらに本発明の効果をさらに高めることができると推定している。
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0020】
〔ポリビニルアルコール〕
本発明の光学反射フィルムは、高屈折率層と低屈折率層とに鹸化度の異なる2種のポリビニルアルコールを含有する。ここで鹸化度とはポリビニルアルコール中のアセチルオキシ基(原料の酢酸ビニル由来のもの)と水酸基の合計数に対する水酸基の割合のことである。
【0021】
各屈折率層中で鹸化度の相違を比較するポリビニルアルコールは、各屈折率層が(鹸化度および重合度が異なる)複数のポリビニルアルコールを含む場合には、屈折率層中で最も含有量の高いポリビニルアルコールである。ここで、「屈折率層中で最も含有量が高いポリビニルアルコール」という際には、鹸化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコールは同一のポリビニルアルコールであるとし、重合度を算出する。ただし、重合度1000以下の低重合度ポリビニルアルコールは異なるポリビニルアルコールとする(仮に鹸化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコールがあったとしても同一のポリビニルアルコールとはしない)。具体的には、鹸化度が90mol%、鹸化度が91mol%、鹸化度が93mol%のポリビニルアルコールが同一層内にそれぞれ10質量%、40質量%、50質量%含まれる場合には、これら3つのポリビニルアルコールは同一のポリビニルアルコールとし、これら3つの混合物をポリビニルアルコール(A)または(B)とする。また、上記「鹸化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコール」とは、いずれかのポリビニルアルコールに着目した場合に3mol%以内であれば足り、例えば、90、91、92、94mol%のビニルアルコールを含む場合には、91mol%のビニルアルコールに着目した場合にいずれのポリビニルアルコールも3mol%以内なので、同一のポリビニルアルコールとなる。
【0022】
ここで、本発明において、含有量が最も高いポリビニルアルコールが鹸化度差が3mol%以内の複数のポリビニルアルコール種から構成される場合、含有量が最も高いポリビニルアルコールの鹸化度は、含有量が最も高いポリビニルアルコールを構成する各ポリビニルアルコールの鹸化度に該ポリビニルアルコールの含有量を乗じたものの和とする。具体的には以下のように算出する。含有量が最も高いポリビニルアルコールがポリビニルアルコール(1)およびポリビニルアルコール(2)から構成され、ポリビニルアルコール(1)(屈折率層全量(固形分)に対するポリビニルアルコール(1)の含有量:Wa、鹸化度:Sa(mol%))およびポリビニルアルコール(2)(屈折率層全量(固形分)に対するポリビニルアルコール(2)の含有量:Wb、鹸化度:Sb(mol%))である場合、含有量が最も高いポリビニルアルコールの鹸化度は下記のようになる。
【0023】
平均鹸化度(mol%)=(Sa*Wa+Sb*Wb)/(Wa+Wb)
同一層内に鹸化度が3mol%を超える異なるポリビニルアルコールが含まれる場合、異なるポリビニルアルコールの混合物とみなし、それぞれに重合度と鹸化度を算出する。
【0024】
例えば、PVA103:5質量%、PVA117:25質量%、PVA217:10質量%、PVA220:10質量%、PVA224:10質量%、PVA235:20質量%、PVA245:20質量%が含まれる場合、最も含有量の多いPVAはPVA217〜245の混合物であり(PVA217〜245の鹸化度の差は3mol%以内なので同一のポリビニルアルコールである)、この混合物がポリビニルアルコール(A)または(B)となる。そして、PVA217〜245の混合物(ポリビニルアルコール(A)/(B))においては、重合度は、(1700×0.1+2000×0.1+2400×0.1+3500×0.2+4500×0.2)/0.7=3200であり、鹸化度は、88mol%となる。
【0025】
なお、ポリビニルアルコール(A)および(B)は未変性のポリビニルアルコールを指す。
【0026】
また、含有量が最も高いポリビニルアルコール(群)が同一の含有量で複数存在する場合には、いずれか一つのポリビニルアルコール(群)の組合せが、本願構成の高屈折率層と低屈折率層との異なる鹸化度に該当すればよい。
【0027】
例えば、高屈折率層中に、ポリビニルアルコールとして、ポリビニルアルコール(1)(鹸化度98.5mol%):20質量%、ポリビニルアルコール(2)(鹸化度88mol%):20質量%、ポリビニルアルコール(3)(鹸化度79.5mol%):20質量%、が含有されている場合(含有量が最も高いポリビニルアルコール(群)が同一の含有量で複数存在する場合)、ポリビニルアルコール(1)、(2)及び(3)のいずれかが、低屈折率層中に含有される最も含有量の高いポリビニルアルコール(B)の鹸化度と異なっていれば本発明の構成とみなすことができる。
【0028】
ポリビニルアルコール(A)とポリビニルアルコール(B)との鹸化度の絶対値の差は、3mol%以上であることが好ましい。より好ましくは5mol%以上である。また、さらに好ましくは8mol%以上であり、最も好ましくは10mol%である。かような範囲であれば、高屈折率層と低屈折率層との層間混合状態を好ましいレベルにするために好ましい。ポリビニルアルコール(A)とポリビニルアルコール(B)との鹸化度の差は離れていれば離れているほど好ましいが、ポリビニルアルコールの水への溶解性の点からは20mol%以下であることが好ましい。
【0029】
ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)の鹸化度は水への溶解性の点で75mol%以上が好ましい。さらにポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)のうち一方が鹸化度90mol%以上であり、他方が該鹸化度が90mol%以上のポリビニルアルコールの鹸化度より低い鹸化度であることが好ましい。かような形態であると、層間混合がより抑制される。さらに、ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)のうち一方が鹸化度90mol%以上であり、他方が90mol%以下であることが高屈折率層と低屈折率層との層間混合状態をより好ましいレベルにし、特定の波長の反射率が向上するために好ましい。ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)のうち一方が鹸化度95mol%以上であり、他方が90mol%以下であることが特定波長の反射率向上の観点からより好ましい。なお、ポリビニルアルコールの鹸化度の上限は特に限定されるものではないが、通常100mol%未満であり、99.9mol%以下程度である。
【0030】
また前記鹸化度の異なる2種のポリビニルアルコールの重合度は1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく、2,000〜5,000のものが更に好ましく用いられる。ポリビニルアルコールの重合度が1000以上であると塗布膜のひび割れがなく、5000以下であるとハンドリング性がよく作業効率性が向上するため好ましい。以下、同様である。また、ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)の少なくとも一方の重合度が2000〜5000であると、塗膜のひび割れが減少し、特定の波長の反射率が向上するため好ましい。ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)の双方の重合度が2000〜5000であると層間が一層分離され、上記効果はより顕著に発揮されるため好ましい。
【0031】
ここで、重合度とは粘度平均重合度を指し、JIS−K6726(1994)に準じて測定され、PVAを完全に再鹸化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](dl/g)から次式により求められるものである。
【0033】
低屈折率層に含まれるポリビニルアルコール(B)は、鹸化度が75mol%以上90mol%以下で、かつ重合度が2000以上5000以下であることが好ましい。かようなポリビニルアルコールを低屈折率層が含むと、界面混合がより抑制される点で好ましい。これは塗膜のひび割れが少なく、かつセット性が向上するためであると考えられる。
【0034】
本発明においては、上記ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)は、各屈折率層の全質量に対し、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは10質量%以上の範囲で含有させることが好ましい。含有量が5.0質量%以上であると、本発明の効果である層間混合が抑制され界面の乱れが小さくなるという効果が顕著に現れる。また、ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)は、各屈折率層の全質量に対し、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。含有量が50質量%以下であれば、相対的な金属酸化物の含有量が適切となり、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差を大きくすることが容易になる。
【0035】
本発明では前記鹸化度の異なる2種のポリビニルアルコールに加えて、重合度が100〜1000、より好ましくは重合度100〜500で鹸化度が95mol%以上である低重合度高鹸化ポリビニルアルコール(以下、単に低重合度高鹸化ポリビニルアルコールとも称する)を各屈折率層の少なくとも一方が含むことが好ましい。このような低重合度高鹸化ポリビニルアルコールを含有すると塗布液の安定性が向上する。より好ましくは、双方の屈折率層が低重合度高鹸化ポリビニルアルコールを含有することが塗布液の安定性の観点から好ましい。低重合度高鹸化ポリビニルアルコールの含有量は、特に限定されるものではないが、各屈折率層の全質量(固形分)に対し、好ましくは0.5〜5質量%である。かような範囲であれば、上記効果がより発揮される。なお、低重合度高鹸化ポリビニルアルコールの鹸化度の上限は特に限定されるものではないが、通常100mol%未満であり、99.9mol%以下程度である。
【0036】
本発明では前記鹸化度の異なる2種のポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B))以外に、高屈折率層および低屈折率層のいずれか一方に鹸化度が90mol%以上(より好ましくは95mol%以上)のポリビニルアルコールをさらに含むことが好ましい。かような高鹸化度のポリビニルアルコールを含有させることで、塗布液が安定し、層間混合がより抑制され、反射率がより向上する。より好ましくは高屈折率層および低屈折率層の双方が鹸化度がポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)以外に90mol%以上(より好ましくは95mol%以上)のポリビニルアルコールをさらに含む。双方が高鹸化度のポリビニルアルコールを含有することで上記効果がより一層発揮される。
【0037】
さらに本発明の効果を損なわない限りにおいて、各屈折率層は、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、一部が変性された変性ポリビニルアルコールを含んでもよい。かような変性ポリビニルアルコールを含むと、膜の密着性や耐水性、柔軟性が改良される場合がある。このような変性ポリビニルアルコールとしては、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、ノニオン変性ポリビニルアルコール、ビニルアルコール系ポリマーが挙げられる。
【0038】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体を鹸化することにより得られる。
【0039】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0040】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報および同63−307979号公報に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0041】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体、シラノール基を有するシラノール変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基やカルボニル基、カルボキシル基などの反応性基を有する反応性基変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0042】
またビニルアルコール系ポリマーとして、エクセバール(商品名:(株)クラレ製)やニチゴーGポリマー(商品名:日本合成化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0043】
変性ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
【0044】
変性ポリビニルアルコールの含有量は、特に限定されるものではないが、各屈折率層の全質量(固形分)に対し、好ましくは1〜30質量%である。かような範囲であれば、上記効果がより発揮される。
【0045】
本発明においては、上記鹸化度の異なる2種のポリビニルアルコールは、屈折率層の全ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールの全質量に対し、40質量%以上、100質量%以下の範囲で含有させることが好ましく、60質量%以上、95質量%以下がより好ましい。含有量が40質量%以上であると、本発明の効果である層間混合が抑制され界面の乱れが小さくなるという効果が顕著に表れる。一方、含有量が95質量%以下であれば、塗布液の安定性が向上する。
【0046】
〔硬化剤〕
本発明においては、硬化剤を用いることが好ましい。ポリビニルアルコールと共に用いることのできる硬化剤としては、ポリビニルアルコールと硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、ホウ酸及びその塩が好ましい。ホウ酸及びその塩以外にも公知のものが使用でき、一般的にはポリビニルアルコールと反応し得る基を有する化合物あるいはポリビニルアルコールが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5,−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬、ホウ砂等が挙げられる。
【0047】
ホウ酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。
【0048】
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸およびその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用しても良い。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
【0049】
ホウ酸とホウ砂との水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することが出来ないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることが出来、塗布液を濃縮化する事が出来る。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることが出来る利点がある。
【0050】
本発明では、ホウ酸およびその塩並びに/またはホウ砂を用いることが層間混合をより抑制するという観点から好ましい。ホウ酸およびその塩並びに/またはホウ砂を用いた場合には、金属酸化物粒子と水溶性高分子であるポリビニルアルコールのOH基とが水素結合ネットワークを形成し、その結果として高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制され、好ましい遮蔽特性が達成されると考えられる。特に、高屈折率層と低屈折率層の多層重層をコーターで塗布後、一旦塗膜の膜面温度を15℃程度に冷やした後、膜面を乾燥させるセット系塗布プロセスを用いた場合には、より好ましく効果を発現することができる。
【0051】
上記硬化剤の総使用量は、ポリビニルアルコール1g当たり1〜600mgが好ましく、ポリビニルアルコール1g当たり100〜600mgが好ましい。
【0052】
〔樹脂バインダー(その他の水溶性高分子)〕
本発明においては、各屈折率層は樹脂バインダーとしてポリビニルアルコールを必須に含むが、その他の樹脂バインダーを含んでいてもよい。
【0053】
樹脂バインダーの含有量は、特に限定されるものではないが、各屈折率層の全質量(固形分)に対し、好ましくは5〜50質量%である。
【0054】
本発明においては、有機溶媒を用いる必要がなく、環境保全上好ましいことから、バインダー樹脂は水溶性高分子から構成されることが好ましい。すなわち、本発明ではその効果を損なわない限りにおいて、上記ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールに加えて、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール以外の水溶性高分子をバインダー樹脂として用いてもよい。本発明の水溶性高分子とは、該水溶性高分子が最も溶解する温度で、0.5質量%の濃度に水に溶解させた際、G2グラスフィルタ(最大細孔40〜50μm)で濾過した場合に濾別される不溶物の質量が、加えた該水溶性高分子の50質量%以内であるものを言う。そのような水溶性高分子の中でも特にゼラチン、セルロース類、増粘多糖類、反応性官能基を有するポリマーが好ましい。これらの水溶性高分子は単独で用いても構わないし、2種類以上を混合して用いても構わない。また、水溶性高分子は合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0055】
以下にこれらの水溶性高分子について説明する。
【0056】
(ゼラチン)
本発明に適用可能なゼラチンとしては、従来、ハロゲン化銀写真感光材料分野で広く用いられてきた各種ゼラチンを適用することができ、例えば、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンの他に、ゼラチンの製造過程で酵素処理をする酵素処理ゼラチン及びゼラチン誘導体、すなわち分子中に官能基としてのアミノ基、イミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基を持ち、それと反応して得る基を持った試薬で処理し改質したものでもよい。ゼラチンの一般的製造法に関しては良く知られており、例えばT.H.James:The Theory of Photographic Process 4th. ed. 1977(Macmillan)55項、科学写真便覧(上)72〜75項(丸善)、写真工学の基礎−銀塩写真編119〜124(コロナ社)等の記載を参考にすることができる。また、リサーチ・ディスクロージャー誌第176巻、No.17643(1978年12月)のIX項に記載されているゼラチンを挙げることができる。
【0057】
(ゼラチンの硬膜剤)
ゼラチンを用いる場合、必要に応じてゼラチンの硬膜剤を添加することもできる。
【0058】
用いることのできる硬膜剤としては、通常の写真乳剤層の硬膜剤として使用されている公知の化合物を使用でき、例えば、ビニルスルホン化合物、尿素−ホルマリン縮合物、メラニン−ホルマリン縮合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、活性オレフィン類、イソシアネート系化合物などの有機硬膜剤、クロム、アルミニウム、ジルコニウムなどの無機多価金属塩類などを挙げることができる。
【0059】
(セルロース類)
本発明で用いることのできるセルロース類としては、水溶性のセルロース誘導体が好ましく用いることができ、例えば、カルボキシメチルセルロース(セルロースカルボキシメチルエーテル)、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性セルロース誘導体や、カルボン酸基含有セルロース類であるカルボキシメチルセルロース(セルロースカルボキシメチルエーテル)、カルボキシエチルセルロース等を挙げることができる。
【0060】
(増粘多糖類)
本発明で用いることのできる増粘多糖類としては、特に制限はなく、例えば、一般に知られている天然単純多糖類、天然複合多糖類、合成単純多糖類及び合成複合多糖類を挙げることができ、これら多糖類の詳細については、「生化学事典(第2版),東京化学同人出版」、「食品工業」第31巻(1988)21頁等を参照することができる。
【0061】
本発明でいう増粘多糖類とは、糖類の重合体であり分子内に水素結合基を多数有するもので、温度により分子間の水素結合力の違いにより、低温時の粘度と高温時の粘度差が大きな特性を備えた多糖類である。さらに好適には金属酸化物微粒子を添加すると、低温時にその金属酸化物微粒子との水素結合によると思われる粘度上昇を起こすものであり、その粘度上昇幅は、添加することにより好ましくは15℃における粘度が1.0mPa・s以上の上昇を生じる多糖類であり、より好ましくは5.0mPa・s以上であり、更に好ましくは10.0mPa・s以上の粘度上昇能を備えた多糖類である。
【0062】
本発明に適用可能な増粘多糖類としては、例えば、ガラクタン(例えば、アガロース、アガロペクチン等)、ガラクトマンノグリカン(例えば、ローカストビーンガム、グアラン等)、キシログルカン(例えば、タマリンドガム等)、グルコマンノグリカン(例えば、蒟蒻マンナン、木材由来グルコマンナン、キサンタンガム等)、ガラクトグルコマンノグリカン(例えば、針葉樹材由来グリカン)、アラビノガラクトグリカン(例えば、大豆由来グリカン、微生物由来グリカン等)、グルコラムノグリカン(例えば、ジェランガム等)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸等)、アルギン酸及びアルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ファーセレラン等の紅藻類に由来する天然高分子多糖類等が挙げられ、塗布液中に共存する金属酸化微粒子の分散安定性を低下させない観点から、好ましくは、その構成単位がカルボン酸基やスルホン酸基を有しないものが好ましい。その様な多糖類としては、例えば、L−アラビ
ノース、D−リボース、2−デオキシリボース、D−キシロースなどのペントース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−ガラクトースなどのヘキソースのみからなる多糖類であることが好ましい。具体的には、主鎖がグルコースであり、側鎖もグルコースであるキシログルカンとして知られるタマリンドシードガムや、主鎖がマンノースで側鎖がグルコースであるガラクトマンナンとして知られるグアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムや、主鎖がガラクトースで側鎖がアラビノースであるアラビノガラクタンを好ましく使用することができる。本発明においては、特には、タマリンド、グアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムが好ましい。
【0063】
本発明においては、更には、二種類以上の増粘多糖類を併用してもよい。
【0064】
(反応性官能基を有するポリマー類)
本発明に適用可能な水溶性高分子としては、反応性官能基を有するポリマー類が挙げられ、例えば、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。
【0065】
〔金属酸化物〕
本発明に係る高屈折率層および/または低屈折率層は、金属酸化物粒子を含有することが望ましい。
【0066】
(低屈折率層中の金属酸化物)
低屈折率層には金属酸化物としてシリカ(二酸化ケイ素)を用いることが好ましく、具体的な例として合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。これらのうち、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることがより好ましく、コロイダルシリカを用いることが特に好ましい。また、屈折率をより低減させるためには、低屈折率層の金属酸化物微粒子として、粒子の内部に空孔を有する中空微粒子を用いることができ、特にシリカ(二酸化ケイ素)の中空微粒子が好ましい。また、シリカ以外の公知の金属酸化物粒子も使用することができる。
【0067】
低屈折率層に含まれる金属酸化物粒子(好ましくは二酸化ケイ素)は、その平均粒径が3〜100nmであることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗布前の分散液状態での粒径)は、3〜50nmであるのがより好ましく、3〜40nmであるのがさらに好ましく、3〜20nmであるのが特に好ましく、4〜10nmであるのがもっとも好ましい。また、二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
【0068】
本明細書において一次平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。
【0069】
透過型電子顕微鏡から求める場合、粒子の一次平均粒径は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0070】
また、低屈折率層の金属酸化物粒子の粒径は、一次平均粒径の他に、体積平均粒径により求めることもできる。
【0071】
本発明で用いられるコロイダルシリカは、珪酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるものであり、たとえば、特開昭57−14091号公報、特開昭60−219083号公報、特開昭60−219084号公報、特開昭61−20792号公報、特開昭61−188183号公報、特開昭63−17807号公報、特開平4−93284号公報、特開平5−278324号公報、特開平6−92011号公報、特開平6−183134号公報、特開平6−297830号公報、特開平7−81214号公報、特開平7−101142号公報、特開平7−179029号公報、特開平7−137431号公報、および国際公開第94/26530号などに記載されているものである。
【0072】
この様なコロイダルシリカは合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0073】
コロイダルシリカは、その表面をカチオン変性されたものであってもよく、また、Al、Ca、MgまたはBa等で処理された物であってもよい。
【0074】
また、低屈折率層の金属酸化物粒子として、中空粒子を用いることもできる。中空微粒子を用いる場合には、平均粒子空孔径が、3〜70nmであるのが好ましく、5〜50nmがより好ましく、5〜45nmがさらに好ましい。なお、中空微粒子の平均粒子空孔径とは、中空微粒子の内径の平均値である。中空微粒子の平均粒子空孔径は、上記範囲であれば、十分に低屈折率層の屈折率が低屈折率化される。平均粒子空孔径は、電子顕微鏡観察で、円形、楕円形または実質的に円形
もしくは楕円形として観察できる空孔径を、ランダムに50個以上観察し、各粒子の空孔径を求め、その数平均値を求めることにより得られる。なお、平均粒子空孔径は、円形、楕円形または実質的に円形もしくは楕円形として観察できる空孔径の外縁を、2本の平行線で挟んだ距離のうち、最小の距離を意味する。
【0075】
低屈折率層における金属酸化物粒子の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、20〜90質量%であることが好ましく、30〜85質量%であることがより好ましく、40〜70質量%であることがさらに好ましい。20質量%以上であると、所望の屈折率が得られ90質量%以下であると塗布性が良好となり好ましい。
【0076】
(高屈折率層中の金属酸化物)
本発明に係る高屈折率層の金属酸化物粒子としては、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズなどが挙げられる。
【0077】
本発明では透明でより屈折率の高い高屈折率層を形成するために、高屈折率層は、酸化チタン、ジルコニア等の高屈折率金属酸化物微粒子、すなわち、酸化チタン微粒子、ジルコニア微粒子を含有することが好ましい。その場合には、体積平均粒径が100nm以下のルチル型(正方晶形)酸化チタン粒子を含有することが好ましい。
【0078】
本発明の酸化チタン粒子としては、水系の酸化チタンゾルの表面を変性して分散状態を安定にしたものを用いることが好ましい。
【0079】
水系の酸化チタンゾルの調製方法としては、従来公知のいずれの方法も用いることができ、たとえば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等に記載された事項を参照にすることができる。
【0080】
また、酸化チタン粒子のその他の製造方法については、たとえば、「酸化チタン−物性と応用技術」清野学 p255〜258(2000年)技報堂出版株式会社、またはWO2007/039953号明細書の段落番号0011〜0023に記載の工程(2)の方法を参考にすることができる。
【0081】
上記工程(2)による製造方法とは、二酸化チタン水和物をアルカリ金属の水酸物またはアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選択される、少なくとも1種の塩基性化合物で処理する工程(1)の後に、得られた二酸化チタン分散物を、カルボン酸基含有化合物および無機酸で処理する工程(2)からなる。
【0082】
さらに、酸化チタン粒子を含めた金属酸化物粒子のその他の製造方法としては、特開2000−053421号公報(分散安定化剤としてアルキルシリケートを配合してなり、該アルキルシリケート中のケイ素をSiO
2に換算した量と酸化チタン中のチタンをTiO
2に換算した量との重量比(SiO
2/TiO
2)が0.7〜10である酸化チタンゾル)、特開2000−063119号公報(TiO
2−ZrO
2−SnO
2の複合体コロイド粒子を核としてその表面を、WO
3−SnO
2−SiO
2の複合酸化物コロイド粒子で被覆したゾル)等に記載された事項を参照にすることができる。
【0083】
さらに、酸化チタン粒子を含ケイ素の水和酸化物で被覆してもよい。ここで、「被覆」とは、酸化チタン粒子の表面の少なくとも一部に、含ケイ素の水和酸化物が付着されている状態を意味する。すなわち、高屈折率層の金属酸化物粒子として用いられる酸化チタン粒子の表面が、完全に含ケイ素の水和酸化物で被覆されていてもよく、酸化チタン粒子の表面の一部が含ケイ素の水和酸化物で被覆されていてもよい。被覆された酸化チタン粒子の屈折率が含ケイ素の水和酸化物の被覆量により制御される観点から、酸化チタン粒子の表面の一部が含ケイ素の水和酸化物で被覆されることが好ましい。
【0084】
含ケイ素の水和酸化物で被覆された酸化チタン粒子の酸化チタンはルチル型であってもアナターゼ型であってもよい。含ケイ素の水和酸化物で被覆された酸化チタン粒子は、含ケイ素の水和酸化物で被覆されたルチル型の酸化チタン粒子がより好ましい。これは、ルチル型の酸化チタン粒子が、アナターゼ型の酸化チタン粒子より光触媒活性が低いため、高屈折率層や隣接した低屈折率層の耐候性が高くなり、さらに屈折率が高くなるという理由からである。
【0085】
本明細書における「含ケイ素の水和酸化物」とは、無機ケイ素化合物の水和物、有機ケイ素化合物の加水分解物および/または縮合物のいずれでもよいが、本発明の効果を得るためにはシラノール基を有することがより好ましい。
【0086】
含ケイ素の水和酸化物の被覆量は、3〜30質量%、好ましくは3〜10質量%、より好ましくは3〜8質量%である。被覆量が30質量%以下であると、高屈折率層の所望の屈折率化が得られ、被覆量が3%以上であると粒子を安定に形成することができるからである。
【0087】
酸化チタン粒子を含ケイ素の水和酸化物で被覆する方法としては、従来公知の方法により製造することができ、例えば、特開平10−158015号公報(ルチル型酸化チタンへのSi/Al水和酸化物処理;チタン酸ケーキのアルカリ領域での解膠後酸化チタンの表面にケイ素及び/又はアルミニウムの含水酸化物を析出させて表面処理する酸化チタンゾルの製造方法)、特開2000−204301号公報(ルチル型酸化チタンにSiとZrおよび/またはAlの酸化物との複合酸化物を被覆したゾル。水熱処理。)、特開2007−246351号公報(含水酸化チタンを解膠して得られる酸化チタンのヒドロゾルへ、安定剤として式R
1nSiX
4−n(式中R
1はC
1−C
8アルキル基、グリシジルオキシ置換C
1−C
8アルキル基またはC
2−C
8アルケニル基、Xはアルコキシ基、nは1または2である。)のオルガノアルコキシシランまたは酸化チタンに対して錯化作用を有する化合物を添加、アルカリ領域でケイ酸ナトリウムまたはシリカゾルの溶液へ添加・pH調整・熟成することにより、ケイ素の含水酸化物で被覆された酸化チタンヒドロゾルを製造する方法)等に記載された事項を参照にすることができる。
【0088】
高屈折率層で用いられる金属酸化物粒子は、体積平均粒径または一次平均粒径により求めることができる。高屈折率層で用いられる金属酸化物粒子の体積平均粒径は、30nm以下であることが好ましく、1〜30nmであることがより好ましく、5〜15nmであるのがさらに好ましい。体積平均粒径が30nm以下であれば、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。ここで、上記含ケイ素の水和酸化物で被覆された酸化チタン粒子の場合、上記一次平均粒径は(含ケイ素の水和酸化物で被覆されていない)酸化チタン粒子の一次平均粒径を指す。また、高屈折率層で用いられる金属酸化物粒子に用いられる金属酸化物粒子の一次平均粒径は、30nm以下であることが好ましく、1〜30nmであることがより好ましく、5〜15nmであることがさらに好ましい。一次平均粒径が1nm以上30nm以下であれば、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
【0089】
本明細書でいう体積平均粒径とは、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する金属酸化物粒子の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径を算出する。
【0090】
さらに、本発明で用いられる金属酸化物粒子は、単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下であることをいう。この単分散度は、さらに好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%である。
【0092】
高屈折率層における金属酸化物粒子の含有量としては、高屈折率層の固形分100質量%に対して、15〜90質量%であることが好ましく、20〜85質量%であることがより好ましく、30〜70質量%であることが近赤外遮蔽の観点から、さらに好ましい。
【0093】
(エマルジョン樹脂)
高屈折率層または低屈折率層は、エマルジョン樹脂をさらに含有していてもよい。エマルジョン樹脂を含むことにより、膜の柔軟性が高くなりガラスへの貼りつけ等の加工性がよくなる。
【0094】
エマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な、例えば、平均粒径が0.01〜2.0μm程度の樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られない。エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリ
オキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合すると、微細な微粒子の少なくとも表面に水酸基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
【0095】
水酸基を含む高分子分散剤とは、重量平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖または末端に水酸基が置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、特にポリビニルアルコールが好ましい。
【0096】
高分子分散剤として使用されるポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、カチオン変性したポリビニルアルコールやカルボキシル基のようなアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を有するシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。ポリビニルアルコールは、平均重合度は高い方がインク吸収層を形成する際のクラックの発生を抑制する効果が大きいが、平均重合度が5000以内であると、エマルジョン樹脂の粘度が高くなく、製造時に取り扱いやすい。したがって、平均重合度は300〜5000のものが好ましく、1500〜5000のものがより好ましく、3000〜4500のものが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものがより好ましい。
【0097】
上記の高分子分散剤で乳化重合される樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル系化合物、スチレン系化合物といったエチレン系単量体、ブタジエン、イソプレンといったジエン系化合物の単独重合体または共重合体が挙げられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0098】
〔屈折率層のその他の添加剤〕
本発明に係る高屈折率層と低屈折率層には、必要に応じて各種の添加剤を含有させることが出来る。
【0099】
例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報および同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0100】
中でも塗布性の観点から、屈折率層に添加剤として界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤の添加量は、屈折率層における界面活性剤の含有量は、屈折率層の塗布液の全質量に対して固形分として、0.001〜0.1質量%であることが好ましく、0.005〜0.05質量%であることがより好ましい。
【0101】
[光学反射フィルムの製造方法]
本発明の光学反射フィルムの製造方法について特に制限はなく、基材上に、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを少なくとも1つ形成することができるのであれば、いかなる方法でも用いられうる。
【0102】
本発明の光学反射フィルムの製造方法では、基材上に高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを積層して形成されるが、具体的には高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液とを同時重層塗布したのち乾燥して積層体を形成することが好ましい。同時重層塗布の場合、前述したように、未乾燥の液状態で重ねられるため、層間混合等がより起こりやすいため、本発明の効果がより発揮されるためである。そして、前述したように、同時重層塗布の場合に、界面混合がより深刻に起こりやすいため、本発明は同時重層塗布により製造する場合に、より効果が発揮されやすい。
【0103】
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
【0104】
高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液を調製するための溶媒は、特に制限されないが、水、有機溶媒、またはその混合溶媒が好ましい。本発明においては、樹脂バインダーとしてポリビニルアルコールを主に用いるために、水系溶媒を用いることができる。水系溶媒は、有機溶媒を用いる場合と比較して、大規模な生産設備を必要とすることがないため、生産性の点で好ましく、また環境保全の点でも好ましい。
【0105】
前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。環境面、操作の簡便性などから、塗布液の溶媒としては、特に水、または水とメタノール、エタノール、もしくは酢酸エチルとの混合溶媒が好ましく、水がより好ましい。
【0106】
水と少量の有機溶媒との混合溶媒を用いる際、当該混合溶媒中の水の含有量は、混合溶媒全体を100質量%として、80〜99.9質量%であることが好ましく、90〜99.5質量%であることがより好ましい。ここで、80質量%以上にすることで、溶媒の揮発による体積変動が低減でき、ハンドリングが向上し、また、99.9質量%以下にすることで、液添加時の均質性が増し、安定した液物性を得ることができるからである。
【0107】
高屈折率層塗布液中の樹脂バインダーの濃度は、0.5〜10質量%であることが好ましい。また、高屈折率層塗布液中の金属酸化物粒子の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。
【0108】
低屈折率層塗布液中の樹脂バインダーの濃度は、0.5〜10質量%であることが好ましい。また、低屈折率層塗布液中の金属酸化物粒子の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。
【0109】
高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液の調製方法は、特に制限されず、例えば、金属酸化物粒子、樹脂バインダー、および必要に応じて添加されるその他の添加剤を添加し、攪拌混合する方法が挙げられる。この際、各成分の添加順も特に制限されず、攪拌しながら各成分を順次添加し混合してもよいし、攪拌しながら一度に添加し混合してもよい。必要に応じて、さらに溶媒を用いて、適当な粘度に調製される。
【0110】
本発明においては、体積平均粒径が100nm以下のルチル型の酸化チタンを添加、分散して調製した水系の高屈折率層塗布液を用いて、高屈折率層を形成することが好ましい。
【0111】
同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液の温度は、スライドビード塗布方式を用いる場合は、25〜60℃の温度範囲が好ましく、30〜45℃の温度範囲がより好ましい。また、カーテン塗布方式を用いる場合は、25〜60℃の温度範囲が好ましく、30〜45℃の温度範囲がより好ましい。
【0112】
同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液の粘度は、特に制限されない。しかしながら、スライドビード塗布方式を用いる場合には、上記の塗布液の好ましい温度の範囲において、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、上記の塗布液の好ましい温度の範囲において、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。このような粘度の範囲であれば、効率よく同時重層塗布を行うことができる。
【0113】
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
【0114】
塗布および乾燥方法としては、高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液を30℃以上に加温して、塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
【0115】
〔基材〕
光学反射フィルムの基材としては、種々の樹脂フィルムを用いることができ、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、3酢酸セルロース等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルムである。ポリエステルフィルム(以降ポリエステルと称す)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。
【0116】
主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、およびこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
【0117】
本発明に用いられる基材の厚みは、10〜300μm、特に20〜150μmであることが好ましい。また、基材は、2枚重ねたものであっても良く、この場合、その種類が同じでも異なってもよい。
【0118】
基材は、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が85%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。基材が上記透過率以上であることにより、近赤外遮蔽フィルムとしたときのJIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率を50%以上にするという点で有利であり、好ましい。
【0119】
また、上記樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。
【0120】
基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
【0121】
また、基材は、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は前記ポリエステルフィルムの延伸製膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、またはテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は処理温度が80〜200℃で行われることが好ましく、より好ましくは処理温度が100〜180℃である。また長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1〜10%の範囲で行われることが好ましく、より好ましくは弛緩率が2〜6%で処理されることである。弛緩処理された基材は、下記のオフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上し、さらに、寸法安定性が良好になる。
【0122】
基材は、製膜過程で片面または両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。なお、製膜工程中での下引塗布をインライン下引という。下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂及びゼラチン等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記の下引層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりコーティングすることができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m
2(乾燥状態)程度が好ましい。
【0123】
〔膜設計〕
本発明の光学反射フィルムは、高屈折率層と低屈折率層とを積層したユニットを少なくとも1つ含む。好適には基材の片面上または両面上に、高屈折率層と低屈折率層が交互に積層して形成された多層の光学干渉膜を有する。生産性の観点から、基材の片面あたりの好ましい高屈折率層および低屈折率層の総層数の範囲は、100層以下、より好ましくは45層以下である。基材の片面あたりの好ましい高屈折率層および低屈折率層の総層数の範囲の下限は特に限定されるものではないが、5層以上であることが好ましい。なお、前記の好ましい高屈折率層および低屈折率層の総層数の範囲は、基材の片面にのみ積層される場合においても適応可能であり、基材の両面に積層される場合においても適応可能である。基材の両面に積層される場合において、基材一の面と他の面との高屈折率層および低屈折率層の総層数は、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、本発明の光学反射フィルムにおいて、最下層(基材と接触する層)および最表層は、高屈折率層および低屈折率層のいずれであってもよい。しかしながら、低屈折率層が最下層および最表層に位置する層構成とすることにより、最下層の基材への密着性、最上層の吹かれ耐性、さらには最表層へのハードコート層等の塗布性や密着性に優れるという観点から、本発明の光学反射フィルムとしては、最下層および最表層が低屈折率層である層構成が好ましい。
【0124】
一般に、光学反射フィルムにおいては、高屈折率層と低屈折率層との屈折率の差を大きく設計することが、少ない層数で所望の光線に対する反射率を高くすることができるという観点から好ましい。本発明においては、少なくとも隣接した2層(高屈折率層及び低屈折率層)の屈折率差が0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.25以上であり、さらに好ましくは0.3以上であり、よりさらに好ましくは0.35以上であり、もっとも好ましくは0.4以上である。また、上限には特に制限はないが、例えば、1.4以下である。
【0125】
この屈折率差と、必要な層数とについては、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、近赤外線反射率90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと200層以上の積層が必要になり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下し、故障なく製造することも非常に困難になる場合がある。
【0126】
光学反射フィルムにおいて高屈折率層および低屈折率層を交互に積層する場合には、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が、上記好適な屈折率差の範囲内にあることが好ましい。ただし、例えば、最表層はフィルムを保護するための層として形成される場合または最下層が基板との接着性改良層として形成される場合などにおいて、最表層や最下層に関しては、上記好適な屈折率差の範囲外の構成であってもよい。
【0127】
なお、本明細書において、「高屈折率層」および「低屈折率層」なる用語は、隣接した2層の屈折率差を比較した場合に、屈折率が高い方の屈折率層を高屈折率層とし、低い方の屈折率層を低屈折率層とすることを意味する。したがって、「高屈折率層」および「低屈折率層」なる用語は、光学反射フィルムを構成する各屈折率層において、隣接する2つの屈折率層に着目した場合に、各屈折率層が同じ屈折率を有する形態以外のあらゆる形態を含むものである。
【0128】
隣接した層界面での反射は、層間の屈折率比に依存するのでこの屈折率比が大きいほど、反射率が高まる。また、単層膜でみたとき層表面における反射光と、層底部における反射光の光路差を、n・d=波長/4、で表される関係にすると位相差により反射光を強めあうよう制御出来、反射率を上げることができる。ここで、nは屈折率、またdは層の物理膜厚、n・dは光学膜厚である。この光路差を利用することで、反射を制御出来る。この関係を利用して、各層の屈折率と膜厚を制御して、可視光や、近赤外光の反射を制御する。即ち、各層の屈折率、各層の膜厚、各層の積層のさせ方で、特定波長領域の反射率をアップさせることができる。
【0129】
本発明の光学反射フィルムは反射率をアップさせる特定波長領域を変えることにより、可視光反射フィルムや近赤外線反射フィルムとすることができる。即ち、反射率をアップさせる特定波長領域を可視光領域に設定すれば可視光線反射フィルムとなり、近赤外領域に設定すれば近赤外線反射フィルムとなる。また、反射率をアップさせる特定波長領域を紫外光領域に設定すれば、紫外線反射フィルムとなる。本発明の光学反射フィルムを遮熱フィルムに用いる場合は、近赤外光反射フィルムとすればよい。近赤外線反射フィルムの場合、高分子フィルムに互いに屈折率が異なる膜を積層させた多層膜を形成し、JIS R3106−1998で示される可視光領域の550nmでの透過率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。また、1200nmでの透過率が30%以下であることが好ましく、15%未満であることがより好ましい。かような好適な範囲となるように光学膜厚とユニットを設計することが好ましい。また、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。
【0130】
太陽直達光の入射スペクトルのうち赤外域が室内温度上昇に関係し、これを遮蔽することで室内温度の上昇を抑えることができる。日本工業規格JIS R3106に記載された重価係数をもとに赤外の最短波長(760nm)から最長波長3200nmまでの累積エネルギー比率をみてみると、波長760nmから最長波長3200nmまでの赤外全域の総エネルギーを100としたときの、760nmから各波長までの累積エネルギーをみると、760から1300nmのエネルギー合計が赤外域全体の約75%を占めている。従って、1300nmまでの波長領域を遮蔽することが熱線遮蔽による省エネルギー効果の効率がよい。
【0131】
この近赤外光域(760〜1300nm)の反射率を最大ピーク値で約80%以上にすると体感温度の低下が官能評価により得られる。たとえば8月の午前中の南東方法を向く窓際での体感温度が近赤外光域の反射率を最大ピーク値で約80%にまで遮蔽したとき明確な差がでた。
【0132】
このような機能を発現するのに必要となる多層膜構造を光学シミュレーション(FTG Software Associates Film DESIGN Version 2.23.3700)で求めた結果、1.9以上、望ましくは2.0以上の高屈折率層を利用し、6層以上積層した場合に優れた特性が得られることがわかっている。例えば、高屈折率層と低屈折率層(屈折率=1.35)を交互に8層積層したモデルのシミュレーション結果をみると、高屈折率層の屈折率が1.8では反射率が70%にも達しないが、1.9になると約80%の反射率が得られる。また、高屈折率層(屈折率=2.2)と低屈折率層(屈折率=1.35)を交互に積層したモデルでは、積層数が4では反射率が60%にも達していないが、6層になると約80%の反射率が得られる。
【0133】
低屈折率層は、屈折率が1.10〜1.60であることが好ましく、より好ましくは1.30〜1.50である。高屈折率層は、屈折率が1.70〜2.50であることが好ましく、より好ましくは1.80〜2.20である。
【0134】
屈折率層の1層あたりの厚み(乾燥後の厚み)は、20〜1000nmであることが好ましく、50〜500nmであることがより好ましく、50〜350nmであることがより好ましい。
【0135】
本発明の光学反射フィルムの全体の厚みは、好ましくは12μm〜315μm、より好ましくは15μm〜200μm、さらに好ましくは20μm〜100μmである。
【0136】
[光学反射フィルムの層構成]
光学反射フィルムは、基材の下または基材と反対側の最表面層の上に、さらなる機能の付加を目的として、導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、易接着層(接着層)、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、ハードコート層、耐摩耗性層、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、印刷層、蛍光発光層、ホログラム層、剥離層、粘着層、接着層、上記高屈折率層および低屈折率層以外の赤外線カット層(金属層、液晶層)、着色層(可視光線吸収層)、合わせガラスに利用される中間膜層などの機能層の1つ以上を有していてもよい。
【0137】
反射フィルムにおける上述の各種の機能層の積層順は、特に制限されない。
【0138】
例えば、窓ガラスの室内側に光学反射フィルムを貼る(内貼り)仕様では、基材表面に、上記高屈折率層および低屈折率層を積層したユニットを少なくとも1つ含む光学反射層、粘着層の順に積層し、さらにこれらの層が積層されている側とは逆の側の基材表面にハードコート層を塗設する形態が好ましい一例として挙げられる。また、粘着層、基材、光学反射層、ハードコート層の順であってもよく、さらに他の機能層、基材、または赤外吸収剤などを有していてもよい。また、窓ガラスの室外側に本発明の光学反射フィルムを貼る(外貼り)仕様でも好ましい一例を挙げると、基材表面に光学反射層、粘着層の順に積層し、さらにこれらの層が積層されている側とは逆の側の基材表面にハードコート層が塗設する構成である。内貼りの場合と同様に、粘着層、基材、光学反射層、ハードコート層の順であってもよく、さらに他の機能層
、基材、または赤外吸収剤などを有していてもよい。
【0139】
〔光学反射フィルムの応用:光学反射体〕
本発明の光学反射フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備(基体)に貼り合せ、熱線反射効果を付与する熱線反射フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。特に、本発明に係る光学反射フィルムが直接もしくは接着剤を介してガラスもしくはガラス代替樹脂等の基体に貼合されている部材には好適である。
【0140】
基体の具体的な例としては、例えば、ガラス、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフィド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、金属板、セラミック等が挙げられる。樹脂の種類は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂のいずれでも良く、これらを2種以上組み合わせて用いても良い。基体は、押出成形、カレンダー成形、射出成形、中空成形、圧縮成形等、公知の方法で製造することができる。基体の厚みは特に制限されないが、通常0.1mm〜5cmである。
【0141】
光学反射フィルムと基体とを貼り合わせる接着層または粘着層は、光学反射フィルムを日光(熱線)入射面側に設置することが好ましい。また、光学反射フィルムを、窓ガラスと基体との間に挟持すると、水分等の周囲のガスから封止でき耐久性に優れるため好ましい。本発明に係る近赤外遮蔽フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
【0142】
光学反射フィルムと基体とを貼り合わせる接着層または粘着層は、窓ガラスなどに貼り合わせたとき、光学反射フィルムが日光(熱線)入射面側にあるように設置することが好ましい。また光学反射フィルムを窓ガラスと基材との間に挟持すると、水分等周囲ガスから封止でき耐久性に好ましい。本発明の光学反射フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
【0143】
本発明に適用可能な接着剤としては、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
【0144】
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。更に粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系及びエマルジョン系の中で溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
【0145】
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール〔積水化学工業社製、三菱モンサント社製等〕、エチレン−酢酸ビニル共重合体〔デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン〕、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体〔東ソー社製、メルセンG〕等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
【実施例】
【0146】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」または「質量%」を表す。
【0147】
実施例1
《近赤外遮蔽フィルムの作製》
[塗布液の調製]
(低屈折率層用塗布液L1の調製)
3質量%ホウ酸水溶液10質量部を45℃で加熱・撹拌している中に、ポリビニルアルコール(PVA―117H、重合度1700、鹸化度99.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液80質量部を添加した後、界面活性剤(ラピゾールA30、日油社製)の1質量%水溶液1質量部を添加し、純水9質量部を加えて低屈折率層用塗布液L1を調製した。
【0148】
(低屈折率層用塗布液L2の調製)
コロイダルシリカ(スノーテックスOXS、日産化学工業社製、固形分10質量%)55質量部に、ポリオキシアルキレン系分散剤(マリアリムAKM−0531、日油社製)の5質量%水溶液10質量部、3質量%ホウ酸水溶液10質量部をそれぞれ添加した後、45℃に加熱し、撹拌しながら、ポリビニルアルコール(PVA―117H、重合度1700、鹸化度99.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液20質量部、界面活性剤(ラピゾールA30、日油製)の1質量%水溶液1質量部を添加し、純水4質量部を加えて低屈折率層用塗布液L2を調製した。
【0149】
(低屈折率層用塗布液L3の調製)
コロイダルシリカ(スノーテックスOXS、日産化学工業社製、固形分10質量%)55質量部に、ポリビニルアルコール(PVA―103、重合度300、鹸化度98.5mol%、クラレ製)の5質量%水溶液2質量部、3質量%ホウ酸水溶液10質量部をそれぞれ添加した後、45℃に加熱し、撹拌しながら、ポリビニルアルコール(PVA―117H、重合度1700、鹸化度99.5mol%、クラレ製)の5質量%水溶液20質量部、界面活性剤(ラピゾールA30、日油製)の1質量%水溶液1質量部を添加し、純水12質量部を加えて低屈折率層用塗布液L3を調製した。
【0150】
(低屈折率層用塗布液L4の調製)
コロイダルシリカ(スノーテックスOXS、日産化学工業社製、固形分10質量%)40質量部に、ポリビニルアルコール(PVA―103、重合度300、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液2質量部、3質量%ホウ酸水溶液10質量部をそれぞれ添加した後、45℃に加熱し、撹拌しながら、ポリビニルアルコール(PVA―117H、重合度1700、鹸化度99.5mol%、クラレ製)の5質量%水溶液20質量部、界面活性剤(ラピゾールA30、日油製)の1質量%水溶液1質量部を添加し、純水27質量部を加えて低屈折率層用塗布液L4を調製した。
【0151】
(低屈折率層用塗布液L5の調製)
コロイダルシリカ(スノーテックスOXS、日産化学工業社製、固形分10質量%)12質量部に、ポリビニルアルコール(PVA―103、重合度300、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液2質量部、3質量%ホウ酸水溶液10質量部をそれぞれ添加した後、45℃に加熱し、撹拌しながら、ポリビニルアルコール(PVA―117H、重合度1700、鹸化度99.5mol%、クラレ製)の5質量%水溶液20質量部、界面活性剤(ラピゾールA30、日油製)の1質量%水溶液1質量部を添加し、純水55質量部を加えて低屈折率層用塗布液L5を調製した。
【0152】
(低屈折率層用塗布液L6の調製)
ポリビニルアルコール(PVA―117H、重合度1700、鹸化度99.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液に代えてポリビニルアルコール(PVA―617、重合度1700、鹸化度95.0mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を使用したほかは低屈折率層用塗布液L4と同様にして低屈折率層用塗布液L6を調製した。
【0153】
(低屈折率層用塗布液L7の調製)
ポリビニルアルコール(PVA―117H、重合度1700、鹸化度99.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液に代えてポリビニルアルコール(PVA―217、重合度1700、鹸化度88.0mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を使用したほかは低屈折率層用塗布液L4と同様にして低屈折率層用塗布液L7を調製した。
【0154】
(低屈折率層用塗布液L8の調製)
ポリビニルアルコール(PVA―117H、重合度1700、鹸化度99.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液に代えてポリビニルアルコール(PVA―417、重合度1700、鹸化度79.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を使用したほかは低屈折率層用塗布液L4と同様にして低屈折率層用塗布液L8を調製した。
【0155】
(低屈折率層用塗布液L9の調製)
ポリビニルアルコール(PVA―117H、重合度1700、鹸化度99.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液に代えてポリビニルアルコール(PVA―117、重合度1700、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を使用したほかは低屈折率層用塗布液L4と同様にして低屈折率層用塗布液L9を調製した。
【0156】
(低屈折率層用塗布液L10の調製)
ポリビニルアルコール(PVA―117H、重合度1700、鹸化度99.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液に代えてポリビニルアルコール(PVA―220、重合度2000、鹸化度88.0mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を使用したほかは低屈折率層用塗布液L4と同様にして低屈折率層用塗布液L10を調製した。
【0157】
(低屈折率層用塗布液L11の調製)
ポリビニルアルコール(PVA―117H、重合度1700、鹸化度99.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液に代えてポリビニルアルコール(PVA―245、重合度4500、鹸化度88.0mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を使用したほかは低屈折率層用塗布液L4と同様にして低屈折率層用塗布液L11を調製した。
【0158】
(低屈折率層用塗布液L12の調製)
ポリビニルアルコール(PVA―117H、重合度1700、鹸化度99.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液に代えてポリビニルアルコール(PVA―420、重合度2000、鹸化度79.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を使用したほかは低屈折率層用塗布液L4と同様にして低屈折率層用塗布液L12を調製した。
【0159】
(低屈折率層用塗布液L13の調製)
ポリビニルアルコール(PVA―117H、重合度1700、鹸化度99.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液に代えてポリビニルアルコール(PVA―235、重合度3500、鹸化度88.0mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を使用したほかは低屈折率層用塗布液L4と同様にして低屈折率層用塗布液L13を調製した。
【0160】
(低屈折率層用塗布液L14の調製)
ポリビニルアルコール(PVA―117H、重合度1700、鹸化度99.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液に代えてポリビニルアルコール(PVA―245、重合度4500、鹸化度88.0mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液と変性ポリビニルアルコール(Z−220、重合度1100、鹸化度91.5mol%、日本合成化学社製)の5質量%水溶液との4:1混合液を使用したほかは低屈折率層用塗布液L4と同様にして低屈折率層用塗布液L14を調製した。
【0161】
(低屈折率層用塗布液L15の調製)
ポリビニルアルコール(PVA―117H、重合度1700、鹸化度99.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液に代えてポリビニルアルコール(PVA―117、重合度1700、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を使用したほかは低屈折率層用塗布液L1と同様にして低屈折率層用塗布液L15を調製した。
【0162】
(低屈折率層用塗布液L16の調製)
ポリビニルアルコール(PVA―117H、重合度1700、鹸化度99.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液に代えてポリビニルアルコール(PVA―117、重合度1700、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を使用したほかは低屈折率層用塗布液L2と同様にして低屈折率層用塗布液L16を調製した。
【0163】
(低屈折率層用塗布液L17の調製)
ポリビニルアルコール(PVA−117H、重合度1700、鹸化度99.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液20質量部に代えてポリビニルアルコール(PVA−420、重合度2000、鹸化度79.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を20質量部を使用し、さらに、ポリビニルアルコール(PVA−117、重合度1700、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を5質量部を加えたほかは低屈折率層用塗布液L4と同様にして低屈折率層用塗布液L17を調製した。
【0164】
(低屈折率層用塗布液L18の調製)
ポリビニルアルコール(PVA−117H、重合度1700、鹸化度99.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液20質量部に代えてポリビニルアルコール(PVA−245、重合度4500、鹸化度88.0mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を14質量部とポリビニルアルコール(PVA−235、重合度3500、鹸化度88.0mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を6質量部を使用したほかは低屈折率層用塗布液L4と同様にして低屈折率層用塗布液L
18を調製した。ここで、PVA−245とPVA−235は、鹸化度が同じであるので、同一のポリビニルアルコールと看做され、この際の鹸化度は88.0mol%、重合度は4200=(4500*0.14+3500*0.06)/0.2となる。
【0165】
(高屈折率層用塗布液H1の調製)
ポリビニルアルコール(PVA―117、重合度1700、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液80質量部を45℃で加熱・撹拌しているなかに、界面活性剤(ラピゾールA30、日油社製)の1質量%水溶液1質量部を添加し、純水19質量部を加えて高屈折率層用塗布液H1を調製した。
【0166】
(シリカ付着(含ケイ素水和酸化物で被覆された)二酸化チタンゾルの調製)
15.0質量%酸化チタンゾル(SRD−W、体積平均粒径5nm、ルチル型二酸化チタン粒子、堺化学社製)0.5質量部に純水2質量部を加えた後、90℃に加熱した。次いで、ケイ酸水溶液(ケイ酸ソーダ4号(日本化学社製)をSiO
2濃度が2.0質量%となるように純水で希釈したもの)1.3質量部を徐々に添加し、ついでオートクレーブ中、175℃で18時間加熱処理を行い、冷却後、限外濾過膜にて濃縮することにより、固形分濃度が、20質量%のSiO
2を表面に付着させた二酸化チタンゾル(以下シリカ付着二酸化チタンゾル)を得た。
【0167】
(高屈折率層用塗布液H2の調製)
前記シリカ付着二酸化チタンゾル(固形分20.0質量%)45質量部に、ポリオキシアルキレン系分散剤(マリアリムAKM−0531、日油社製)の5質量%水溶液10質量部、3質量%ホウ酸水溶液10質量部、2質量%クエン酸水溶液10質量部を順に添加した後、45℃に加熱し、撹拌しながら、ポリビニルアルコール(PVA―117、重合度1700、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液20質量部、界面活性剤(ラピゾールA30、日油社製)の1質量%水溶液1質量部を添加し、純水4質量部を加えて高屈折率層用塗布液H2を調製した。
【0168】
(高屈折率層用塗布液H3の調製)
前記シリカ付着二酸化チタンゾル(固形分20.0質量%)45質量部に、ポリビニルアルコール(PVA―103、重合度300、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液2質量部、3質量%ホウ酸水溶液10質量部、2質量%クエン酸水溶液10質量部をそれぞれ添加した後、45℃に加熱し、撹拌しながら、ポリビニルアルコール(PVA―117、重合度1700、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液20質量部、界面活性剤(ラピゾールA30、日油社製)の1質量%水溶液1質量部を添加し、純水12質量部を加えて高屈折率層用塗布液H3を調製した。
【0169】
(高屈折率層用塗布液H4の調製)
前記シリカ付着二酸化チタンゾル(固形分20.0質量%)40質量部に、ポリビニルアルコール(PVA―103、重合度300、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液2質量部、3質量%ホウ酸水溶液10質量部、2質量%クエン酸水溶液10質量部をそれぞれ添加した後、45℃に加熱し、撹拌しながら、ポリビニルアルコール(PVA―117、重合度1700、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液20質量部、界面活性剤(ラピゾールA30、日油製)の1質量%水溶液1質量部を添加し、純水17質量部を加えて高屈折率層用塗布液H4を調製した。
【0170】
(高屈折率層用塗布液H5の調製)
前記シリカ付着二酸化チタンゾル(固形分20.0質量%)9質量部に、ポリビニルアルコール(PVA―103、重合度300、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液2質量部、3質量%ホウ酸水溶液10質量部、2質量%クエン酸水溶液10質量部をそれぞれ添加した後、45℃に加熱し、撹拌しながら、ポリビニルアルコール(PVA―117、重合度1700、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液20質量部、界面活性剤(ラピゾールA30、日油社製)の1質量%水溶液1質量部を添加し、純水48質量部を加えて高屈折率層用塗布液H5を調製した。
【0171】
(高屈折率層用塗布液H6の調製)
前記シリカ付着二酸化チタンゾル(固形分20.0質量%)30質量部に、ポリビニルアルコール(PVA―103、重合度300、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液2質量部、3質量%ホウ酸水溶液10質量部、2質量%クエン酸水溶液10質量部をそれぞれ添加した後、45℃に加熱し、撹拌しながら、ポリビニルアルコール(PVA―117、重合度1700、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液20質量部、界面活性剤(ラピゾールA30、日油社製)の1質量%水溶液1質量部を添加し、純水27質量部を加えて高屈折率層用塗布液H6を調製した。
【0172】
(高屈折率層用塗布液H7の調製)
ポリビニルアルコール(PVA―117、重合度1700、鹸化度98.5mol%、クラレ製)の5質量%水溶液に代えてポリビニルアルコール(PVA―417、重合度1700、鹸化度79.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を使用したほかは高屈折率層用塗布液H6と同様にして高屈折率層用塗布液H7を調製した。
【0173】
(高屈折率層用塗布液H8の調製)
ポリビニルアルコール(PVA―117、重合度1700、鹸化度98.5mol%、クラレ製)の5質量%水溶液に代えてポリビニルアルコール(PVA―617、重合度1700、鹸化度95.0mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を使用したほかは高屈折率層用塗布液H6と同様にして高屈折率層用塗布液H8を調製した。
【0174】
(高屈折率層用塗布液H9の調製)
ポリビニルアルコール(PVA―117、重合度1700、鹸化度98.5mol%、クラレ製)の5質量%水溶液に代えてポリビニルアルコール(PVA―245、重合度4500、鹸化度88.0mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を使用したほかは高屈折率層用塗布液H6と同様にして高屈折率層用塗布液H9を調製した。
【0175】
(高屈折率層用塗布液H10の調製)
ポリビニルアルコール(PVA―117、重合度1700、鹸化度98.5mol%、クラレ製)の5質量%水溶液に代えてポリビニルアルコール(PVA―124、重合度2400、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液と変性ポリビニルアルコール(Z−200、重合度1100、鹸化度99.0mol%、日本合成化学社製)の5質量%水溶液との4:1混合液を使用したほかは高屈折率層用塗布液H6と同様にして高屈折率層用塗布液H10を調製した。
【0176】
(高屈折率層用塗布液H11の調製)
ポリビニルアルコール(PVA―117、重合度1700、鹸化度98.5mol%、クラレ製)の5質量%水溶液に代えてポリビニルアルコール(PVA―217、重合度1700、鹸化度88.0mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を使用したほかは高屈折率層用塗布液H6と同様にして高屈折率層用塗布液H11を調製した。
【0177】
(高屈折率層用塗布液H12の調製)
ポリビニルアルコール(PVA―117、重合度1700、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液に代えてポリビニルアルコール(PVA―120、重合度2000、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を使用したほかは高屈折率層用塗布液H6と同様にして高屈折率層用塗布液H12を調製した。
【0178】
(高屈折率層用塗布液H13の調製)
ポリビニルアルコール(PVA―117、重合度1700、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液に代えてポリビニルアルコール(PVA―124、重合度2400、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液を使用したほかは高屈折率層用塗布液H6と同様にして高屈折率層用塗布液H13を調製した。
【0179】
(高屈折率層用塗布液H14の調製)
ポリビニルアルコール(PVA−117、重合度1700、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液20質量に代えてポリビニルアルコール(PVA−245、重合度4500、鹸化度88.0mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液20質量部を使用し、さらにポリビニルアルコール(PVA−124、重合度2400、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液5質量部を加えたほかは高屈折率層用塗布液H6と同様にして高屈折率層用塗布液H14を調製した。
【0180】
(高屈折率層用塗布液H15の調製)
ポリビニルアルコール(PVA−117、重合度1700、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液20質量部に代えてポリビニルアルコール(PVA−117H、重合度1700、鹸化度99.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液10質量部とポリビニルアルコール(PVA−124、重合度2400、鹸化度98.5mol%、クラレ社製)の5質量%水溶液10質量部を使用したほかは高屈折率層用塗布液H6と同様にして高屈折率層用塗布液H15を調製した。ここで、PVA−117HとPVA−124は、鹸化度が同じであるので、同一のポリビニルアルコールと看做され、この際の鹸化度は99.0mol%=(0.05*0.1*99.5+0.05*0.1*98.5)/(0.05*0.1+0.05*0.1)、重合度は2050=(1700*0.1+2400*0.1)/0.2となる。
【0181】
(高屈折率層用塗布液H16の調製)
シリカ付着二酸化チタンゾル(固形分20.0質量%)に代えて、ジルコニア粒子水性ゾル(体積平均粒径6nm、ナノユースZR−30BF;日産化学工業(株)製)を使用したほかは高屈折率層用塗布液H13と同様にして高屈折率層用塗布液H16を調製した。
【0182】
[光学反射フィルムの作製]
(試料1の作製)
9層重層塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用い、低屈折率層用塗布液L1及び高屈折率層用塗布液H1を45℃に保温しながら、45℃に加温した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300:両面易接着層)上に、それぞれ交互に、乾燥時の膜厚が低屈折率層は各層150nm、高屈折率層は各層150nmになるように計9層の同時重層塗布を行った。
【0183】
塗布直後、5℃の冷風を5分吹き付けたのち、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、9層からなる試料1を作製した。
【0184】
(試料2の作製)
低屈折率層用塗布液L1に代えて低屈折率層用塗布液L15を使用したほかは試料1と同様にして試料
2を作製した。
【0185】
《評価》
上記作製したフィルムの断面を、エネルギー分散型蛍光X線分析装置により元素測定し、ホウ素の存在分布を観察したところ、試料1では試料2より低屈折率層と高屈折率層間でホウ素元素の存在分布がより比較的良好に分離していることが分かった。
【0186】
(試料3の作製)
ガラス基板(6センチ角、厚み3mm)上に45℃に加温した低屈折率層用塗布液L2をスピンコーターを用いて1000rpm300秒の条件で塗布した。この上につづけて45℃に加温した高屈折率層用塗布液H2をスピンコーターを用いて1000rpm300秒の条件で塗布した。この上にさらに45℃に加温した低屈折率層用塗布液L2をスピンコーターを用いて1000rpm300秒の条件で塗布して、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、3層からなる試料3を作製した。
【0187】
(試料4の作製)
低屈折率層用塗布液L2に代えて低屈折率層用塗布液L16を使用したほかは試料3と同様にして試料4を作製した。
【0188】
《評価》
上記作製したフィルムの断面を、エネルギー分散型蛍光X線分析装置により元素測定し、ケイ素とチタンの存在分布を観察したところ、試料3では試料4より低屈折率層と高屈折率層間でケイ素およびチタンの存在分布がより良好に分離していることが分かった。
【0189】
(試料5の作製)
9層重層塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用い、低屈折率層用塗布液L2及び高屈折率層用塗布液H2を45℃に保温しながら、45℃に加温した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300:両面易接着層)上に、それぞれ交互に、乾燥時の膜厚が低屈折率層は各層150nm、高屈折率層は各層150nmになるように計9層の同時重層塗布を行った。
【0190】
塗布直後、塗布直後、5℃の冷風を5分吹き付けたのち、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、9層からなる重層塗布品を作製した。
【0191】
上記9層重層塗布品の上に、さらに9層重層塗布を2回行い、計27層からなる試料5を作製した。
【0192】
(試料6〜27、29〜32の作製)
低屈折率層用塗布液及び高屈折率層用塗布液を、表1に記載の組み合わせの低屈折率層用塗布液及び高屈折率層用塗布液を用いて、試料5と同様の方法で試料6〜27、29〜32をそれぞれ作製した。
【0193】
(試料28の作製)
試料22で用いた高屈折率層塗布液H13と低屈折率層塗布液L11を用いて、試料5と同様の方法で9層重層塗布品を作製した。前記9層重層塗布品の上にさらに9層重層塗布を行い、計18層の重層塗布品を作製した。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムの反対側の面に、それぞれ交互に、乾燥時の膜厚が低屈折率層は各層165nm、高屈折率層は各層165nmになるように計9層の同時重層塗布を2回繰返し、両面合わせて36層の試料28を作製した。
【0194】
《近赤外遮蔽フィルムの評価》
上記で作製した各近赤外遮蔽フィルム(試料5〜32)について、下記の性能評価を行った。
【0195】
(各層の単膜屈折率の測定)
基材上に屈折率を測定する対象層(高屈折率層、低屈折率層)をそれぞれ単層で塗設したサンプルを作製し、下記の方法に従って、各高屈折率層および低屈折率層の屈折率を求めた。
【0196】
分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率の測定結果より、屈折率を求めた。
【0197】
上記方法に従って各層の屈折率を測定した結果、高屈折率層、低屈折率層の屈折率差は、試料5〜32においては0.1以上であることを確認した。
【0198】
(層間分離性の評価)
上記作製した各赤外線遮蔽フィルムの断面を、エネルギー分散型蛍光X線分析装置により元素測定し、ケイ素とチタンの存在分布を観察し、下記の基準に従って、塗布時の層間分離性の評価を行った。
【0199】
◎:低屈折率層と高屈折率層間で、明確にケイ素とチタンの存在分布が分離しており、層間の乱れは全く認められず、層間均一性が極めて良好である
○:低屈折率層と高屈折率層間で、明確にケイ素とチタンの存在分布が分離しており、層間の乱れはほとんど認められず、層間均一性が比較的良好である
△:低屈折率層と高屈折率層間で、ケイ素とチタンの存在分布の混合や弱い乱れは認められるが、全体的には良好な層間特性である
×:低屈折率層と高屈折率層間で、ケイ素とチタンの分布の強い乱れが認められ、層間分離性に乏しい。
【0200】
(可視光透過率及び近赤外透過率の測定)
上記分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、近赤外遮蔽フィルム試料の300nm〜2000nmの領域における透過率を測定した。可視光透過率は550nmにおける透過率の値を、近赤外透過率は1200nmにおける透過率の値を用いた。
【0201】
各試料の組成および評価結果を表1に示す。
【0202】
【表1-1】
【0203】
【表1-2】
【0204】
【表2】
【0205】
表1の結果より明らかなように、本発明の光学反射フィルムである試料5〜23、26〜32は、比較例の光学反射フィルムに比べ、層間分離性が良好であり、近赤外遮断性及び可視光透過性に優れることが分かる。
【0206】
さらに、ポリビニルアルコール(A)とポリビニルアルコール(B)との鹸化度の差が3mol%以上である試料9〜23、26〜32は、層間分離性がより向上する。さらに、高屈折率層および低屈折率層のいずれかのポリビニルアルコールの鹸化度が90mol%以上であり、他方のポリビニルアルコールがその鹸化度より低い試料9、11〜23、26〜32は、近赤光透過率が一層低下した。さらにポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)のうち、少なくとも一方の重合度が2000〜5000である試料14〜23、26〜32は、近赤光透過率がより一層低下した。ポリビニルアルコール(B)の鹸化度が75mol%以上90mol%以下で、かつ重合度が2000以上5000以下である試料17〜23、26〜32は、層間分離が一層明確となった。さらにポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)双方の重合度が2000〜5000である光学フィルム20〜23、26〜32は、近赤光透過率がより一層低下した。
【0207】
〔近赤外反射体の作製〕
前記作製した光学反射フィルム5〜23、26〜32の光学反射フィルムを用いて近赤外反射体1〜19を作製した。厚さ5mm、20cm×20cmの透明アクリル樹脂板上に、光学反射フィルム5〜23、26〜32をアクリル接着剤で接着して、それぞれ光学反射体1〜26を作製した。
【0208】
〔評価〕
上記作製した光学反射体1〜26は、サイズが大きいにもかかわらず、容易に利用可能であり、また、本発明の光学反射フィルムを利用することで、優れた光反射性を確認することができた。
【0209】
本出願は、2011年10月31日に出願された日本特許出願番号2011−239568号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。