(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0031】
<感放射線性樹脂組成物>
本発明の感放射線性樹脂組成物は、[A]酸発生剤を含有する。また、好適成分として後述する[B]重合体及び[C]フッ素原子含有重合体を含有してもよい。さらに、その他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分を詳述する。
【0032】
<[A]酸発生剤>
[A]酸発生剤は、放射線の照射により、環状炭化水素基と、切断性結合を含む有機基とを有する有機酸を発生する。[A]酸発生剤としては、代表的に有機酸イオンに相当する部分とこの部分に対応する対イオン部分とを有する。このような酸発生剤は露光によって有機酸を発生するので、当該組成物の露光時のフォトレジスト感度が向上し、現像工程での現像欠陥を防止することができる。
【0033】
上記有機酸としては、環状炭化水素基と、切断性結合を含む有機基とを有する限り特に限定されない。有機酸全体の構造における環状炭化水素基、切断性結合を含む有機基、及び有機酸基のそれぞれの配置位置は、特に限定されない。[A]酸発生剤から発生する有機酸が環状炭化水素基を有し、有機酸の炭素含有率が高くなっており、その結果、樹脂における適度な拡散長を発揮することができる。また、上記有機酸が切断性結合を有するので、現像工程における現像液によって切断性結合が切断され、極性基を生じ、環状炭化水素基によって比較的強い疎水性を示していた有機酸が現像液に対して親和性を示すようになる。結果として、現像工程における凝集を抑制して現像欠陥を抑制することができる。
【0034】
有機酸に含まれる有機酸基としては、酸性を示す基であれば特に限定されず、例えばSO
3H(スルホン酸基)、COOH(カルボキシル基)等が挙げられる。有機酸に含まれる環状炭化水素基としては、例えば単環式炭化水素基、多環式炭化水素基、これらの組み合わせ等が挙げられる。環状炭化水素基の導入により、有機酸イオン部分に嵩高さを付与することができ、拡散長を適度にすることができる。また、有機酸が有する環状炭化水素基の配置は、上述のように特に限定されないものの、切断性結合の切断の容易性を考慮すると、切断性結合を含む有機基と有機酸基との間に連結基として配置されることが好ましい。切断性結合を含む有機基としては、例えば上記式(x)で表される基が挙げられる。
【0035】
上記式(x)中、R
31は、単結合又は2価の連結基である。Gは、酸素原子、イミノ基、−NR
131−、−CO−O−*、−O−CO−*又は−SO
2−O−*である。但し、上記酸素原子は、カルボニル基及びスルホン基に直結するものを除く。R
131及びR
13は、酸解離性基又は塩基解離性基である。*は、R
13と結合する部位を示す。即ち、上記式(x)中、−G−R
13は水酸基、アミノ基、カルボキシル基又はスルホ基が酸解離性基又は塩基解離性基によって修飾された基である。
【0036】
なお、「酸解離性基」とは、極性官能基中の水素原子を置換する基であって酸の存在下で解離する基をいい、「塩基解離性基」とは、極性官能基中の水素原子を置換する基であって塩基の存在下で解離する基をいう。
【0037】
上記R
31が示す2価の連結基としては、例えばエーテル基、エステル基、カルボニル基、炭素数1〜30の2価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜30の2価の脂環式炭化水素基、炭素数が6〜30の2価の芳香族炭化水素基又はこれらを組み合わせた2価の基等が挙げられる。
【0038】
上記R
31が示す炭素数1〜30の2価の鎖状炭化水素基としては、例えばメチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、オクタデカメチレン基、ノナデカメチレン基、イコサレン基等の直鎖状アルカンジイル基;1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基、エチリデン基、1−プロピリデン基、2−プロピリデン基等の分岐状アルカンジイル基等が挙げられる。
【0039】
上記R
31が示す炭素数3〜30の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば1,3−シクロブチレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,5−シクロオクチレン基等の炭素数3〜10の単環型シクロアルカンジイル基;1,4−ノルボルニレン基、2,5−ノルボルニレン基、1,5−アダマンチレン基、2,6−アダマンチレン基等の多環型シクロアルカンジイル基等が挙げられる。
【0040】
上記R
31が示す炭素数6〜30の2価の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、フェナントリレン基、アントリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。
【0041】
上記R
31が示す2価の連結基は置換基を有していてもよい。このような置換基としては例えばハロゲン原子、−R
S1、−R
S2−O−R
S1、−R
S2−CO−R
S1、−R
S2−CO−OR
S1、−R
S2−O−CO−R
S1、−R
S2−OH、−R
S2−CN等が挙げられる。R
S1は、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基である。但し、これらの基の有する水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。R
S2は、単結合、炭素数1〜10のアルカンジイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンジイル基、又は炭素数6〜30のアリーレン基である。但し、これらの基の有する水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。
【0042】
上記R
S1が示す炭素数1〜30のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、2−(2−メチルプロピル)基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、1−(2−メチルブチル)基、1−(3−メチルブチル)基、2−(2−メチルブチル)基、2−(3−メチルブチル)基、ネオペンチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−(2−メチルペンチル)基、1−(3−メチルペンチル)基、1−(4−メチルペンチル)基、2−(2−メチルペンチル)基、2−(3−メチルペンチル)基、2−(4−メチルペンチル)基、3−(2−メチルペンチル)基、3−(3−メチルペンチル)基等が挙げられる。
【0043】
上記R
S1が示す炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、例えばシクロペンチルメチル基、1−(1−シクロペンチルエチル)基、1−(2−シクロペンチルエチル)基、シクロヘキシルメチル基、1−(1−シクロヘキシルエチル)基、1−(2−シクロヘキシルエチル基)、シクロヘプチルメチル基、1−(1−シクロヘプチルエチル)基、1−(2−シクロヘプチルエチル)基、2−ノルボルニル基等が挙げられる。
【0044】
上記R
S1が示す炭素数6〜30のアリール基としては例えばフェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0045】
上記R
S2が示す炭素数1〜30のアルカンジイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンジイル基及び炭素数6〜30のアリーレン基としては、例えば上記例示した基から水素原子を一つ除いた基等が挙げられる。
【0046】
有機酸は、上記式(I)で表されることが好ましい。上記有機酸が、上記特定構造を有する有機酸とすることで、現像工程におけるアルカリ現像液に対する親和性と、フォトレジスト膜中での有機酸の適度に短い拡散長とが高度にバランスされ、現像欠陥をより防止し、かつMEEF及びLWRにより優れる。
【0047】
上記式(I)中、Zは、有機酸基である。R
1は、アルカンジイル基である。但し、上記アルカンジイル基の水素原子の一部又は全部は、フッ素原子で置換されていてもよい。Xは、単結合、O、OCO、COO、CO、SO
3又はSO
2である。R
2は、環状炭化水素基である。R
3は、下記式(x)で表される官能基を有する1価の有機基である。nは、1〜3の整数である。但し、R
3が複数の場合、複数のR
3は同一であっても異なっていてもよい。
【0048】
上記Zが示す有機酸基としては、例えば上述の有機酸基等が挙げられる。これらのうち、SO
3H(スルホン酸基)がレジスト感度の向上の点で好ましい。
【0049】
上記R
1が示すアルカンジイル基としては、好ましくは炭素数1〜12のアルカンジイル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルカンジイル基、特に好ましくは炭素数1〜4のアルカンジイル基である。また、アルカンジイル基中に酸素原子、硫黄原子等の連結基を有していてもよい。上記R
1が示すアルカンジイル基は、水素の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよく、特に水素原子数の30%〜100%がフッ素原子で置換されたアルカンジイル基が好ましい。フッ素原子で置換される炭素原子の位置としては、Zと結合した炭素原子がフッ素原子を有することがより好ましい。
【0050】
R
1としては上記式(1)で表される基が好ましい。有機酸基に隣接するアルカンジイル基に電子吸引性の高いフッ素原子が導入されていることで、有機酸の強度をより高めることができ、フォトレジストとしての感度をより向上させることができる。
【0051】
上記式(1)中、Rfは、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、又は水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。R
4は、アルカンジイル基である。aは、1〜8の整数である。但し、aが複数の場合、複数のRfは同一であっても異なっていてもよいが、全てのRfが水素原子であることはない。*は、Xと結合する部位を示す。
【0052】
上記Rfとしてはフッ素原子、トリフルオロメチル基が好ましい。aとしては、1〜3の整数が好ましい。R
4としては、炭素数1〜3のアルカンジイル基が好ましい。
【0053】
R
1としては、下記式で表される基が好ましい。
*−(CF
2)
n−
*−CF
2CF
2(CH
2)
n−
*−CF
2CHF(CH
2)
n−
*−CF(CF
3)(CH
2)
n−
【0054】
上記式中、nは、それぞれ独立して1〜4の整数である。*は、Zと結合する部位を示す。
【0055】
Xとしては、合成の容易性及び化学的安定性等の観点からOCO、COOが好ましい。
【0056】
R
2としては、炭素数3〜30の環状炭化水素基が好ましい。炭素数3〜30の環状炭化水素基としては、例えばシクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、ボルニレン基、ノルボルニレン基、アダマンチレン基、ピナニレン基、ツヨイレン基、カルイレン基、カンファニレン基、メチルシクロプロピレン基、メチルシクロブチレン基、メチルシクロペンチレン基、メチルシクロヘキシレン基、メチルボルニレン基、メチルノルボルニレン基及びメチルアダマンチレン基等が挙げられる。
【0057】
上記環状炭化水素基は置換されていてもよく、置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ原子(ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子等)を含む有機基等が挙げられる。さらには上記炭化水素基の同一炭素上の2つの水素原子が1つの酸素原子で置換されたケト基を例示することができる。これらの置換基は、構造上可能な範囲内でいくつ存在していてもよい。
【0058】
R
2としては、例えばフルオロシクロヘキシレン基、ヒドロキシシクロヘキシレン基、メトキシシクロヘキシレン基、メトキシカルボニルシクロヘキシレン基、ヒドロキシアダマンチレン基、メトキシカルボニルアダマンチレン基、ヒドロキシカルボニルアダマンチレン基、ヒドロキシメチルアダマンタンメチレン基等が挙げられる。
【0059】
これらのうち、R
2としては、上記式(8)、(9)又は(10)で表される基が好ましい。上記式(10)中、fは、1〜10の整数である。上記有機酸に上記式(8)〜(10)のような嵩高い構造を導入することで、有機酸の炭素含有率をより高めることができ、フォトレジスト膜中での有機酸の拡散長をより適度にすることができる。
【0060】
切断性結合のうち、酸により切断されて極性基を生じる結合を以下、「酸切断性結合」とも称し、塩基により切断されて極性基を生じる結合を以下、「塩基切断性結合」とも称する。
【0061】
上記式(I)中、R
3は、切断性結合のうち、酸切断性結合を有する1価の有機基である。この有機基は、酸解離性基と2価の連結基とが上記切断性結合を介して結合した形態として好適に構成される。
【0062】
酸切断性結合としては、上記R
3が上記式(2)で表される構造を含む基であることが好ましい。このような構造をR
3が有することで、酸による切断性結合の切断を容易にすることができる。
【0063】
上記式(2)中、R
311は、単結合又は2価の連結基である。Rfは、上記式(1)と同義である。R
5〜R
7は、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式炭化水素基である。また、R
6及びR
7は互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成してもよい。bは、0〜8の整数である。但し、bが複数の場合、複数のRfは同一であっても異なっていてもよいが、全てのRfが水素原子であることはない。
【0064】
上記R
5〜R
7が示す炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。上記R
5〜R
7が示す炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、R
6及びR
7が相互に結合してそれぞれが結合している炭素原子と共に形成してもよい炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、例えばアダマンタン骨格、ノルボルナン骨格、トリシクロデカン骨格、テトラシクロドデカン骨格等の有橋式骨格;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン骨格を有する基;これらの基を、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基等の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種以上で置換した基等が挙げられる。
【0065】
上記酸切断性結合は、連結基R
311を介してR
2と結合している。上記R
311が示す2価の連結基としては、例えば上記R
31の説明を適用することができる。R
311としては、bが0の場合、好ましくは*−COOR
31a−、又は*−OCOR
31a−である。R
31aとしては、R
31の2価の鎖状炭化水素基の説明を適用することができる。*は、R
2と結合する部位を示す。bが複数の場合、好ましくは酸素原子、COO、OCOである。
【0066】
上記式(I)中、R
3は塩基切断性結合を有する1価の有機基であってもよい。この有機基は、塩基解離性基と2価の連結基とが上記切断性結合を介して結合する形態で好適に構成される。このような塩基解離性基としては、上記の性質を示す限り特に限定されないが、上記式(x)中、Gが酸素原子又はイミノ基の場合、下記式(11)で表される構造、上記式(3)又は(4)で表される構造が挙げられる。
【0068】
上記式(11)中、R
14は少なくとも一の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数が1〜10の炭化水素基である。
【0069】
R
14としては、例えば直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基の水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換された基が好ましい。
【0070】
上記R
14が示す炭素数1〜10のアルキル基としては、上記R
S1が示すアルキル基の説明を適用することができる。上記R
14が示す炭素数3〜20の脂環式炭化水素基としては、上記R
S1が示すシクロアルキル基の説明を適用することができる。
【0071】
R
14としては、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0072】
上記R
3としては、上記式(3)又は(4)で表される構造を含むことが好ましい。上記R
3が上記式(3)又は(4)で表される構造を含むことで、嵩高いアニオン部分を塩基解離性とすることができ、アルカリ現像液によりR
3が解離し、有機酸のアルカリ現像液への親和性を高めることができる。
【0073】
上記式(3)及び(4)中、R
311は、上記式(2)と同義である。Rfは、上記式(1)と同義である。R
8は、水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換された炭素数1〜10のアルキル基、又は上記式(5)、(6)若しくは(7)で表される基である。R
9は、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された炭素数1〜10のアルキル基である。cは、0〜4の整数である。但し、cが複数の場合、複数のRfは同一であっても異なっていてもよいが、全てのRfが水素原子であることはない。上記式(5)及び(6)中、R
10は、それぞれ独立してハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、アルコキシ基、アシル基又はアシロキシ基である。dは、0〜5の整数である。eは、0〜4の整数である。但し、R
10が複数の場合、複数のR
10は同一であっても異なっていてもよい。上記式(7)中、R
11及びR
12は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。但し、R
11及びR
12は互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の脂環式構造を形成してもよい。
【0074】
上記R
8〜R
12が示す炭素数1〜10のアルキル基としては、上記R
10と同じ例が挙げられる。また、R
11及びR
12が互いに結合してそれぞれが結合する炭素原子と共に形成する脂環式構造としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
【0075】
上記式(7)としては、例えばメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、1−(2−メチルブチル)基、1−(3−メチルブチル)基、2−(3−メチルブチル)基、ネオペンチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−(2−メチルペンチル)基、1−(3−メチルペンチル)基、1−(4−メチルペンチル)基、2−(3−メチルペンチル)基、2−(4−メチルペンチル)基、3−(2−メチルペンチル)基等が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基が好ましい。
【0076】
塩基切断性結合は、R
311を介してR
2と結合している。R
311が示す2価の連結基としては、上記酸切断性結合における2価の連結基の説明を適用することができる。
【0077】
上記式(I)で表される有機酸の有機酸イオン部分としては例えば下記式で表される。
【0080】
なお、上記有機酸は、後述する酸発生剤を形成し得るカチオンと共に酸発生剤を形成しているだけではなく、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の塩の形態で存在していてもよい。これらの有機酸の塩は酸発生剤の前駆体等として有用である。
【0081】
有機酸の合成方法としては、従来公知の方法を組み合わせて行うことができる。例えばヒドロキシアダマンタンカルボン酸のヒドロキシル基を保護し、アルコキシドの存在下、ハロゲン化炭化水素と反応させることでカルボン酸のハロゲン化アルキルエステルを生成し、次いで、塩基性条件下、ハロゲン化アルキル部分にスルフィン酸基を導入し、さらに酸化条件下でスルホン酸基を得た後、最後にヒドロキシル基の脱保護を行って有機酸の前駆体を調製する。次いで、得られた前駆体のヒドロキシル基を塩基性条件下でエステル化し、最後にスルホン酸のオニウム塩とするという手順等が挙げられる。但し、有機酸の合成手順としては、上記有機酸を得られる限り他の手順であってもよい。
【0082】
上記有機酸イオンと合わせて酸発生剤を構成する対イオンとしては、有機酸イオンと共に安定して[A]酸発生剤を形成し得るカチオンである限り特に限定されない。
【0083】
上記カチオンとしては、例えばO、S、Se、N、P、As、Sb、Cl、Br、I等のオニウムカチオンが挙げられる。これらのうち、S、Iが好ましい。即ち、[A]酸発生剤は、上記式(I)で表される有機酸のスルホニウム塩化合物又はヨードニウム塩化合物であることが好ましい。[A]酸発生剤が上記塩化合物の形態とすることで、放射線によるスルホ基の脱保護反応を促進させることがき、[A]酸発生剤の感放射線性を向上させることができる。
【0084】
1価のオニウムカチオンとしては、例えば下記式(12)又は(13)で表されるカチオン等が挙げられる。
【0086】
上記式(12)中、R
15、R
16及びR
17は、それぞれ独立して置換されていてもよい非置換の炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基である。但し、R
15、R
16及びR
17のうち、いずれか2つ以上が互いに結合してそれぞれが結合している硫黄原子と共に環構造を形成してもよい。
【0088】
上記式(13)中、R
18及びR
19は、それぞれ独立して置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基である。但し、R
18及びR
19は、互いに結合してそれぞれが結合しているヨウ素原子と共に環構造を形成してもよい。
【0089】
上記式(12)で表されるオニウムカチオンとしては、下記式(12−1)及び(12−2)で表されるオニウムカチオンが好ましく、上記式(13)で表されるオニウムカチオンとしては、下記式(13−1)で表されるオニウムカチオンが好ましい。
【0091】
上記式(12−1)中、R
a、R
b及びR
cは、それぞれ独立して水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜12のアリール基である。q1、q2及びq3は、それぞれ独立して0〜5の整数である。但し、R
a、R
b及びR
cが複数の場合、複数のR
a、R
b及びR
cはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、2以上のR
a、R
b及びR
cは互いに結合して、環構造を形成してもよい。上記式(12−2)中、R
dは、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換されていてもよい炭素数6〜8のアリール基である。R
eは、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜7の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換されていてもよい炭素数6〜7のアリール基である。q4は、0〜7の整数である。q5は、0〜6の整数である。q6は、0〜3の整数である。但し、R
d及びR
eが複数の場合、複数のR
d及びR
eはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、2以上のR
d、及びR
eはそれぞれが互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0093】
上記式(13−1)中、R
f及びR
gは、それぞれ独立して水素原子、ニトロ基、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換されていてもよい炭素数6〜12のアリール基である。q7及びq8は、それぞれ独立して0〜5の整数である。但し、R
f及びR
gが複数の場合、複数のR
f及びR
gはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、2以上のR
f、及びR
gはそれぞれが互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0094】
上記式(12−1)及び(12−2)で表されるオニウムカチオンとしては、例えば下記式(i−1)〜(i−64)で表されるオニウムカチオン等が挙げられる。上記式(13−1)で表されるオニウムカチオンとしては、例えば下記式(ii−1)〜(ii−39)で表されるオニウムカチオン等が挙げられる。
【0101】
これらのうち、上記式(i−1)、式(i−2)、式(i−6)、式(i−8)、式(i−13)、式(i−19)、式(i−25)、式(i−27)、式(i−29)、式(i−33)、式(i−51)、式(i−54)、式(ii−1)、式(ii−11)で表されるカチオンがより好ましい。
【0102】
上記1価のオニウムカチオンは、例えばAdvances in Polymer Science,Vol.62,p.1−48(1984)に記載されている一般的な方法に準じて製造することができる。
【0103】
[A]酸発生剤の含有量としては、感放射線性樹脂組成物に含有させる重合体の種類に応じて決定され、[B]重合体100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部が好ましく、2質量部〜27質量部がより好ましく、5質量部〜25質量部が特に好ましい。[A]酸発生剤の含有量が0.1質量部未満であると、フォトレジスト膜としての感度や解像度が低下する場合がある。一方、[A]酸発生剤の含有量が30質量部を超えると、フォトレジスト膜としての塗布性やパターン形状が低下する場合がある。
【0104】
<[B]重合体>
当該組成物は、[B]重合体を含有することが好ましい。[B]重合体は、当該組成物のベース樹脂となる。このような重合体として、例えば酸解離性基を有するアルカリ不溶性又はアルカリ難溶性の重合体であって、その酸解離性基が解離したときにアルカリ易溶性となる重合体(以下、「[B1]酸解離性基含有重合体」とも称する)や、アルカリ現像液と親和性を示す官能基、例えばフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシル基等の酸素含有官能基を1種以上有しアルカリ現像液に可溶な重合体(以下、「[B2]アルカリ可溶性重合体」とも称する)が挙げられる。[B1]重合体を含む感放射線性樹脂組成物はポジ型感放射線性樹脂組成物として好適に用いることができ、[B2]重合体を含む感放射線性樹脂組成物はネガ型感放射線性樹脂組成物として好適に用いることができる。
【0105】
後述する[C]フッ素原子含有重合体とともに[B]重合体を用いる場合、[B]重合体におけるフッ素原子含有割合は、[C]フッ素原子含有重合体よりも小さいことが好ましい。[B]重合体のフッ素原子含有割合としては、[B]重合体全体を100質量%とした場合に、通常10質量%未満であり、好ましくは0質量%〜9質量%、より好ましくは0質量%〜6質量%である。なお、本明細書におけるフッ素原子含有割合は
13C−NMRにより測定することができる。
【0106】
[B]重合体と[C]フッ素原子含有重合体とを含む感放射線性樹脂組成物を用いて、フォトレジスト膜を形成した場合、[C]フッ素原子含有重合体の疎水性に起因して、フォトレジスト膜の表面において[C]フッ素原子含有重合体の分布が高くなる傾向がある。即ち、[C]フッ素原子含有重合体が、フォトレジスト膜表層に偏在する。従って、フォトレジスト膜と液浸露光用液体を遮断することを目的とした上層膜を別途形成する必要がなく、液浸露光法に好適に用いることができる。
【0107】
[[B1]酸解離性基含有重合体]
[B1]酸解離性基含有重合体は、重合体の主鎖、側鎖、又は主鎖及び側鎖に酸解離性基を有する重合体である。これらのうち、側鎖に酸解離性基を有する重合体が好ましい。
【0108】
[B1]酸解離性基含有重合体は、酸解離性基を有する構造単位(以下、「構造単位(b1)」と称する)を含む。また、ラクトン骨格を有する構造単位(以下、「構造単位(b2)」と称する)及びその他の構造単位を含んでいてもよい。以下、各構造単位を詳述する。
【0109】
(構造単位(b1))
構造単位(b1)としては例えば下記式(14)で表される構造単位等が挙げられる。
【0111】
上記式(14)中、R
20は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基である。R
211、R
212及びR
213は、上記式(2)のR
5、R
6及びR
7と同義である。
【0112】
構造単位(b1)としては、下記式(14−1)で表される構造単位が好ましい。
【0114】
上記式(14−1)中、R
20は、式(14)と同義である。R
22は、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。gは、1〜4の整数である。
【0115】
上記R
22が示す炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0116】
構造単位(b1)は、単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。構造単位(b1)を与える単量体としては、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−シクロペンチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−シクロペンチルエステル、(メタ)アクリル酸2−イソプロピル−2−シクロペンチルエステル、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−シクロヘキシルエステル及び(メタ)アクリル酸2−エチル−2−シクロオクチルエステルが好ましい。
【0117】
[B1]酸解離性基含有重合体における構造単位(b1)の含有割合としては、全構造単位に対して、好ましくは5モル%〜85モル%、より好ましくは10モル%〜70モル%、特に好ましくは15モル%〜60モル%である。構造単位(b1)の含有割合が5モル%未満であると、現像性や露光余裕が悪化する場合がある。一方、構造単位(b1)の含有割合が85モル%を超えると、[B1]酸解離性基含有重合体の溶媒への溶解性が悪化したり、解像度が悪化したりする場合がある。
【0118】
(構造単位(b2))
構造単位(b2)としては、例えば下記式(17−1)〜(17−6)で表される構造単位等が挙げられる。
【0120】
上記式中、R
27は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。R
28は、水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基である。R
29は、水素原子又はメトキシ基である。Aは、単結合又は2価の連結基である。Bは、酸素原子又はメチレン基である。hは、1〜3の整数である。iは、0又は1である。
【0121】
上記R
28が示す炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、tert−ブチル基等が挙げられる。R
28が示す置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基の置換基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フェニル基、アセトキシ基、アルコキシ基等が挙げられる。上記Aが示す2価の連結基としては、上記R
31の説明を適用することができる。
【0122】
[B1]酸解離性基含有重合体が構造単位(b2)を含む場合、構造単位(b2)の含有割合としては、全構造単位に対して、好ましくは10モル%〜70モル%、より好ましくは15モル%〜60モル%、特に好ましくは20モル%〜50モル%である。構造単位(b2)の含有割合が10モル%未満であると、レジストとしての解像度が低下する場合がある。一方、構造単位(b2)の含有割合が70モル%を超えると、現像性や露光余裕が悪化する場合がある。
【0123】
(他の構造単位)
[B1]酸解離性基含有重合体は、構造単位(b1)及び構造単位(b2)以外の他の構造単位を含んでいてもよい。他の構造単位としては、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;後述するアルカリ可溶性を有する構造単位;環状カーボネート構造を有する構造単位;WO2007/116664に記載の脂環式構造を有する構造単位等が挙げられる。
【0124】
[[B1]酸解離性基含有重合体の合成方法]
[B1]酸解離性基含有重合体は、例えば連鎖移動剤の存在下、ラジカル重合開始剤(ヒドロパーオキシド類、ジアルキルパーオキシド類、ジアシルパーオキシド類、アゾ化合物等)を添加した溶媒中で、構造単位(b1)を与える単量体を重合することで合成できる。
【0125】
上記溶媒としては、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類;デカリン、ノルボルナン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;クロロブタン、ブロモヘキサン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン等のエーテル類;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類等が挙げられる。なお、これらの溶媒は、単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0126】
重合温度としては、好ましくは40℃〜150℃、より好ましくは50℃〜120℃である。反応時間としては、好ましくは1時間〜48時間、より好ましくは1時間〜24時間である。なお、[B1]酸解離性基含有重合体は、ハロゲン、金属等の不純物の含有量が少ないほど好ましい。不純物の含有量が少ないと、フォトレジスト膜の感度、解像度、プロセス安定性、パターン形状等をより向上することができる。従って、[B1]酸解離性基含有重合体の精製法としては、水洗、液々抽出等の化学的精製法や、これらの化学的精製法と限外ろ過、遠心分離等の物理的精製法とを組み合わせた方法等が挙げられる。
【0127】
液々抽出に用いる溶媒としては、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類;アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類が挙げられる。これらのうち、n−ヘキサン、n−ヘプタン、メタノール、エタノール、アセトン及び2−ブタノンが好ましい。
【0128】
[B1]酸解離性基含有重合体の重量平均分子量(Mw)としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によるポリスチレン換算で、好ましくは1,000〜50,000、より好ましくは1,000〜40,000、特に好ましくは1,000〜30,000である。Mwが1,000未満であると、十分な後退接触角を有するフォトレジスト膜が得られない場合がある。これに対し、Mwが50,000を超えると、フォトレジスト膜の現像性が低下する場合がある。
【0129】
GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)と、Mwとの比(Mw/Mn)としては、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4である。
【0130】
[[B2]アルカリ可溶性重合体]
[B2]アルカリ可溶性重合体としては、例えば下記式でそれぞれ表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位を有する付加重合系重合体等が挙げられる。以下、各構造単位をそれぞれ構造単位(B2−1)、構造単位(B2−2)及び構造単位(B2−3)と称する。
【0132】
上記式(B2−1)及び式(B2−2)中、R
B23及びR
B25は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。R
B24は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、−R
B26COOH、−OR
B26COOH、−OCOR
B26COOH又はCOOR
B26COOHである。R
B26は、−(CH
2)
m−である。mは、1〜4の整数である。
【0133】
[B2]アルカリ可溶性重合体は、構造単位(B2−1)、構造単位(B2−2)又は構造単位(B2−3)のみから構成されていてもよいが、合成した重合体がアルカリ現像液に可溶である限り、他の構造単位を1種以上有していてもよい。上記他の構造単位としては、例えば上述した[B1]酸解離性基含有重合体における他の構造単位と同様の構造単位等が挙げられる。
【0134】
[B2]アルカリ可溶性重合体中の構造単位(B2−1)、構造単位(B2−2)及び構造単位(B2−3)の合計含有割合としては、好ましくは10モル%〜100モル%、より好ましくは20モル%〜100モル%である。
【0135】
[B2]アルカリ可溶性重合体は、構造単位(B2−1)のような炭素−炭素不飽和結合を有する構造単位を有する場合、水素添加物として用いることもできる。この場合の水素添加率は、通常、該当する構造単位中に含まれる炭素−炭素不飽和結合の70%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下である。水素添加率が70%を超えると[B2]アルカリ可溶性重合体のアルカリ現像性が低下するおそれがある。
【0136】
[B2]アルカリ可溶性重合体としては、ポリ(4−ヒドロキシスチレン)、4−ヒドロキシスチレン/4−ヒドロキシ−α−メチルスチレン共重合体、4−ヒドロキシスチレン/スチレン共重合体を主成分とする重合体が好ましい。
【0137】
[B2]アルカリ可溶性重合体のMwとしては、通常1,000〜150,000、好ましくは3,000〜100,000である。当該組成物において、[B2]アルカリ可溶性重合体は、単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0138】
<[C]フッ素原子含有重合体>
当該組成物が好適に含有できる[C]フッ素原子含有重合体は、その重合体の主鎖、側鎖、又は主鎖及び側鎖に、フッ素原子を有する重合体である。[C]フッ素原子含有重合体により、フォトレジスト膜の表面付近に撥水性の層が形成されることになるので、酸発生剤や酸拡散制御剤等の液浸露光用液体に対する溶出を抑制し、またフォトレジスト膜と液浸露光用液体との後退接触角の向上により、液浸露光用液体に由来する水滴が、フォトレジスト膜上に残り難く液浸露光用液体に起因する欠陥の発生を抑制することができる。
【0139】
[C]フッ素原子含有重合体は、フッ素原子を有する構造単位(以下、構造単位(c1)とも称する)を有することが好ましい。
【0140】
[構造単位(c1)]
構造単位(c1)としては、フッ素原子を有する限り特に限定されないが、下記式(c1−1)〜(c1−3)で表される構造単位を含んでいることが好ましい。以下、各構造単位をそれぞれ構造単位(c1−1)、構造単位(c1−2)及び構造単位(c1−3)と称する。
【0142】
上記式(c1−1)〜(c1−3)中、R
33はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基又はハロゲン化低級アルキル基である。式(c1−1)中、Rf
1は、炭素数1〜30のフッ素化アルキル基である。R
34は、(k+1)価の連結基である。R
36は水素原子、酸解離性基又は塩基解離性基を含む1価の有機基である。kは、1〜3の整数である。Rf
2は、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜30のフッ素化アルキル基である。但し、Rf
2及びR
36が複数の場合、複数のRf
2及びR
36はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、全てのRf
2が水素原子である場合はない。R
35は、2価の連結基である。
【0143】
上記Rf
1が示す炭素数1〜30のフッ素化アルキル基としては、例えば少なくとも1以上のフッ素原子で置換された炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、少なくとも1以上のフッ素原子で置換された炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはそれから誘導される基等が挙げられる。
【0144】
上記炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、2−(2−メチルプロピル)基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、1−(2−メチルブチル)基、1−(3−メチルブチル)基、2−(2−メチルブチル)基、2−(3−メチルブチル)基、ネオペンチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−(2−メチルペンチル)基、1−(3−メチルペンチル)基、1−(4−メチルペンチル)基、2−(2−メチルペンチル)基、2−(3−メチルペンチル)基、2−(4−メチルペンチル)基、3−(2−メチルペンチル)基、3−(3−メチルペンチル)基等が挙げられる。
【0145】
上記炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはそれから誘導される基としては、例えばシクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、1−(1−シクロペンチルエチル)基、1−(2−シクロペンチルエチル)基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−(1−シクロヘキシルエチル)基、1−(2−シクロヘキシルエチル基)、シクロヘプチル基、シクロヘプチルメチル基、1−(1−シクロヘプチルエチル)基、1−(2−シクロヘプチルエチル)基等が挙げられる。
【0146】
上記構造単位(c1−1)を与える単量体としては、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(5−トリフルオロメチル−3,3,4,4,5,6,6,6−オクタフルオロヘキシル)(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0147】
上記R
36が示す1価の有機基としては、例えば炭素数1〜30の1価の炭化水素基、酸解離性基や塩基解離性基が挙げられる。
【0148】
上記R
36が示す炭素数1〜30の1価の炭化水素基としては、例えば上述のR
S1で表される炭素数1〜30のアルキル基の説明を適用することができる。
【0149】
構造単位(c1−2)における上記R
36が示す酸解離性基としては、上述の−CR
5R
6R
7で表される基、t−ブトキシカルボニル基、アルコキシ置換メチル基が好ましく、t−ブトキシカルボニル基、アルコキシ置換メチル基がより好ましい。構造単位(c1−3)における上記R
36が示す酸解離性基としては、アルコキシ置換メチル基、上記式(2)における−CR
5R
6R
7で表される基が好ましい。
【0150】
構造単位(c1−2)や構造単位(c1−3)として、酸解離性基を有する構造単位を用いると、パターン露光部における[C]フッ素原子含有重合体の溶解性を向上させることができる点で好ましい。これは、後述のレジストパターン形成方法における露光工程においてフォトレジスト膜の露光部で発生した酸と反応して極性基を生じるためであると考えられる。
【0151】
上記式(c1−2)における塩基解離性基としては、例えば下記式(19−1)で表される基等が挙げられる。
【0153】
上記式(19−1)中、R
37は少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜10の炭化水素基である。R
37の説明としては上述のRf
1の説明を適用することができる。
【0154】
R
37としては、上記炭化水素基の水素原子の全部がフッ素原子に置換された直鎖状又は分岐状の炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0155】
上記式(c1−3)における塩基解離性基としては、例えば下記式(19−2)〜(19−4)で表される基等が挙げられる。
【0157】
上記式(19−2)及び(19−3)中、R
38は、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基又は炭素数1〜10のアルキル基である。m
1は、0〜5の整数である。m
2は、0〜4の整数である。但し、R
38が複数の場合、複数のR
38は同一であっても異なっていてもよい。上記式(19−4)中、R
39及びR
40は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。但し、R
39及びR
40が互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の脂環式構造を形成してもよい。
【0158】
式(19−4)で表される基としては、例えばメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、1−(2−メチルブチル)基、1−(3−メチルブチル)基、2−(3−メチルブチル)基、ネオペンチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−(2−メチルペンチル)基、1−(3−メチルペンチル)基、1−(4−メチルペンチル)基、2−(3−メチルペンチル)基、2−(4−メチルペンチル)基、3−(2−メチルペンチル)基等が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基が好ましい。
【0159】
[C]フッ素原子含有重合体が、構造単位(c1−2)や構造単位(c1−3)に塩基解離性基を有する構造単位を含むと、[C]フッ素原子含有重合体の現像液に対する親和性を向上させることができる点で好ましい。これは、後述するパターン形成方法の現像工程において、[C]フッ素原子含有重合体が現像液と反応し、極性基を生じるためであると考えられる。
【0160】
式(c1−2)及び(c1−3)中、R
36が水素原子である場合、構造単位(c1−2)及び(c1−3)は極性基であるヒドロキシル基やカルボキシル基を有することになる。[C]フッ素原子含有重合体が、このような構造単位を含むことにより、後述するパターン形成方法の現像工程において、[C]フッ素原子含有重合体の現像液に対する親和性を向上させることができる。
【0161】
上記R
34が示す(k+1)価の連結基としては、例えば単結合、炭素数1〜30の(k+1)価の炭化水素基、これらの炭化水素基と硫黄原子、イミノ基、カルボニル基、−CO−O−、−CO−NH−等を組み合わせた基等が挙げられる。
【0162】
鎖状構造のR
34としては、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、2−メチルプロパン、ペンタン、2−メチルブタン、2,2−ジメチルプロパン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の炭素数1〜10の鎖状炭化水素から水素原子を(k+1)個取り除いた構造の(k+1)価炭化水素基等が挙げられる。
【0163】
環状構造のR
34としては、例えばシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン、トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デカン等の炭素数4〜20の脂環式炭化水素から水素原子を(k+1)個取り除いた構造の(k+1)価炭化水素基;ベンゼン、ナフタレン等の炭素数6〜30の芳香族炭化水素から水素原子を(k+1)個取り除いた構造の(k+1)価炭化水素基等が挙げられる。
【0164】
酸素原子、硫黄原子、イミノ基、カルボニル基、−CO−O−又は−CO−NH−を有するR
34としては、例えば下記式で表される基等が挙げられる。
【0166】
上記式中、R
41はそれぞれ独立して単結合、2価の炭素数1〜10の鎖状炭化水素基、2価の炭素数4〜20の環状炭化水素基、又は2価の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基である。R
41が示すこれらの基の例としては、上述のR
34の説明を適用することができる。
【0167】
上記R
34は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えばヒドロキシ基、シアノ基等が挙げられる。
【0168】
上記R
35が示す2価の連結基としては、上述のR
34の説明においてk=1とした場合の説明を適用することができる。
【0169】
Rf
2が示す炭素数1〜30のフッ素化炭化水素基としては、上述のRf
1の説明を適用することができる。
【0170】
式(c1−2)及び(c1−3)中、下記式で表される部分構造としては、例えば下記式(f1)〜(f5)で表される基等が挙げられる。
【0173】
これらのうち、式(c1−2)においては上記式(f5)で表される基が好ましい。式(c1−3)においては上記式(f3)で表される基が好ましい。
【0174】
構造単位(c1−2)としては、例えば下記式(c1−2−1)、(c1−2−2)で表される構造単位等が挙げられる。
【0176】
上記式(c1−2−1)及び(c1−2−2)中、R
33、R
34、R
36及びkは、上記式(c1−2)と同義である。
【0177】
上記式(c1−2−1)及び(c1−2−2)で表される構造単位を与える化合物としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0179】
上記式中、R
33及びR
36は、上記式(c1−2)と同義である。
【0180】
上記式においてR
36が酸解離性基又は塩基解離性基である化合物は、例えば上記各式においてR
36が水素原子である化合物を原料として合成することができる。例としてR
36が上記式(19−1)で表される化合物について示すと、上記各式においてR
36が水素原子である化合物を従来公知の方法によりフルオロアシル化することで形成することができる。例えば1)酸の存在下、アルコールとフルオロカルボン酸を縮合させてエステル化する、2)塩基の存在下、アルコールとフルオロカルボン酸ハロゲン化物を縮合させてエステル化する等の方法が挙げられる。
【0181】
構造単位(c1−3)としては、例えば下記式(c1−3−1)で表される構造単位等が挙げられる。
【0183】
上記式(c1−3−1)中、R
33、R
35及びR
36は、上記式(c1−3)と同義である。
【0184】
上記式(c1−3−1)で表される構造単位を与える化合物としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0186】
上記式中、R
33及びR
36は、上記式(c1−3)と同義である。
【0187】
上記式において、R
36が酸解離性基や塩基解離性基である化合物は、例えば上記各式においてR
36が水素原子である化合物やその誘導体を原料として合成することができる。例としてR
36が上記式(19−2)〜(19−4)で表される化合物は、例えば下記式(20)で表される化合物と、下記式(21−1)〜(21−3)で表される化合物とを反応させることによって得ることができる。
【0189】
上記式(20)中、R
33、R
35及びRf
2は、上記式(c1−3)と同義である。R
42は、水酸基又はハロゲン原子である。
【0191】
上記式(21−1)〜式(21−3)中、R
38、R
39、R
40、m1及びm2は、式(19−1)〜式(19−3)と同義である。式(21−1)中、R
43は、ハロゲン原子である。R
43としては、Clが好ましい。式(21−2)中、R
44は、ハロゲン原子である。R
44としては、Brが好ましい。
【0192】
また、下記式(22)で表される化合物と下記式(23)で表される化合物とを反応させることで得ることができる。
【0194】
上記式(22)中、R
35、R
36及びRf
2は、上記式(c1−3)と同義である。上記式(23)中、R
33は、上記式(c1−3)と同義である。Rhは、水酸基又はハロゲン原子である。
【0195】
[C]フッ素原子含有重合体は、上記構造単位(c1−1)〜(c1−3)を単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。構造単位(c1−1)〜(c1−3)のうち、少なくとも2種を含有することが好ましく、構造単位(c1−2)と構造単位(c1−3)とを含有することがより好ましい。
【0196】
[C]フッ素原子含有重合体は、上記構造単位(c1)以外の酸解離性基を有する構造単位(以下、「構造単位(c2)」とも称する)、アルカリ可溶性基を有する構造単位であって上記構造単位(c1)を除く構造単位(以下、「構造単位(c3)」と称する)、又はアルカリ反応性基を有する構造単位であって上記構造単位(c1)を除く構造単位(以下、「構造単位(c4)」と称する)をさらに含んでいることが好ましい。以下、各構造単位を詳述する。
【0197】
[構造単位(c2)]
上記構造単位(c2)としては、例えば下記式(24)で表される構造単位等が挙げられる。
【0199】
上記式(24)中、R
45は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基である。R
46は、それぞれ独立して、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体基である。但し、3つのR
46のうちいずれか2つが互いに結合し、それぞれが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体基を形成し、かつ、残りのR
46が、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体基であってもよい。
【0200】
上記式(24)中、R
46で示される炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基、3つのR
46のうちいずれか2つが互いに結合して形成される炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基又はその誘導体基としては、上記式(14)におけるR
21の説明を適用することができる。
【0201】
上記構造単位(c2)としては、下記式(24−1)で表される構造単位が好ましい。
【0203】
上記式(24−1)中、R
45は、式(24)と同義である。R
47は、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。nは、1〜4の整数である。
【0204】
上記R
47が示す炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0205】
構造単位(c2)は、単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。[C]フッ素原子含有重合体が構造単位(c2)を含むことで、フォトレジスト膜における前進接触角と後退接触角との差を小さくすることができ、液浸露光時のスキャン速度の高速化に対応させることができる。
【0206】
構造単位(c2)を与える単量体としては、上記構造単位(b1)を与える単量体の説明を適用することができる。構造単位(c2)を与える単量体としては、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−シクロペンチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−シクロペンチルエステル、(メタ)アクリル酸2−イソプロピル−2−シクロペンチルエステル、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−シクロオクチルエステルが好ましい。
【0207】
[構造単位(c3)]
構造単位(c3)に含まれるアルカリ可溶性基は、現像液に対する溶解性向上の点から、pKaが4〜11の、水素原子を有する官能性基であることが好ましい。この官能性基としては、下記式(25)及び(26)で表される基が挙げられる。
−NHSO
2R
48 (25)
−COOH (26)
【0208】
上記式(25)中、R
48は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基である。R
48としては、好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0209】
構造単位(c3)の主鎖部は、(メタ)アクリロイル基、α−トリフルオロメタアクリロイル基に由来する構造を含むことが好ましい。また、上記アルカリ可溶性基は、上記主鎖部における−COO等に直接的に又は間接的に結合していることが好ましい。
【0210】
構造単位(c3)としては、例えば下記式(25−1)及び(26−1)で表される構造単位等が挙げられる。
【0212】
上記式(25−1)及び(26−1)中、R
49は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
50は、単結合、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状の2価の飽和炭化水素基若しくは不飽和炭化水素基である。R
48は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基である。
【0213】
上記R
50が示す炭素数1〜20の直鎖状及び分岐状の2価の飽和炭化水素基並びに不飽和炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素数1〜20の直鎖状及び分岐状のアルキル基並びにアルケニル基に由来する炭化水素基等が挙げられる。
【0214】
上記R
50が示す2価の環状の飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基としては、例えば炭素数3〜20の脂環式炭化水素及び芳香族炭化水素に由来する基等が挙げられる。炭素数3〜20の脂環式炭化水素としては、例えばシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン、トリシクロ[3.3.1.1
3,7]デカン、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカン等のシクロアルカン類等が挙げられる。芳香族炭化水素としては、例えばベンゼン、ナフタレン等が挙げられる。
【0215】
なお、R
50が飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基である場合、水素原子の少なくとも1つが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、酸素原子等により置換された基であってもよい。上記式(25−1)におけるR
48は、上記式(25)の説明が適用される。
【0216】
構造単位(c3)は、単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。[C]フッ素原子含有重合体が構造単位(c3)を含む場合、現像液に対する溶解性を向上させることができる。
【0217】
[構造単位(c4)]
構造単位(c4)としては、例えばラクトン骨格を有する構造単位及び環状カーボネート骨格を有する構造単位等が挙げられる。
【0218】
ラクトン骨格を有する構造単位としては、例えば上記式(17−1)〜(17−6)で表される構造単位等が挙げられる。環状カーボネート骨格を有する構造単位としては、例えば下記式(28)で表される構造単位等が挙げられる。
【0220】
上記式(28)中、R
54は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
55は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5の鎖状炭化水素基である。Dは、単結合、炭素数1〜30の2価若しくは3価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜30の2価若しくは3価の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜30の2価若しくは3価の芳香族炭化水素基である。但し、Dが3価の場合、Dに含まれる炭素原子と環状炭酸エステルを構成する炭素原子とが結合して、環構造を形成してもよい。qは、2〜4の整数である。
【0221】
環状カーボネート構造は、q=2(エチレン基)の場合は5員環構造、q=3(プロピレン基)の場合は6員環構造、q=4(ブチレン基)の場合は7員環構造となる。
【0222】
上記R
55が示す炭素数1〜5の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
【0223】
上記式(28)中、Dが単結合である場合、重合体の主鎖を構成する(メタ)アクリル酸部に由来する酸素原子と、環状カーボネート構造を形成する炭素原子とが直接結合されることになる。
【0224】
上記式(28)中、Dの鎖状炭化水素基とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された炭化水素基をいう。また、脂環式炭化水素基とは、環構造中に、脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基をいう。但し、この脂環式炭化水素基は、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでもよい。さらに、芳香族炭化水素基とは、環構造中に芳香環構造を含む炭化水素基をいう。但し、この芳香族炭化水素基は、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。
【0225】
Dの炭素数1〜30の2価の鎖状炭化水素基としては、R
31における説明を適用することができる。また、炭素数1〜30の3価の鎖状炭化水素基としては、R
31における定義から、1つの水素原子を脱離させた基等が挙げられる。
【0226】
Dの2価の脂環式炭化水素基としては、R
31における説明を適用することができる。また、3価の脂環式炭化水素基としては、R
31における定義から、1つの水素原子を脱離させた基等が挙げられる。
【0227】
また、Dの2価の芳香族炭化水素基としては、R
31における説明を適用することができる。また、3価の芳香族炭化水素基としては、R
31における定義から、1つの水素原子を脱離させた基等が挙げられる。
【0228】
環状カーボネート骨格を有する構造単位としては、例えば下記式(28−1)〜(28−22)で表される構造単位等が挙げられる。
【0230】
上記式中、R
54は、式(28)と同義である。
【0231】
上記式(28)で表される構造単位を与える単量体は、例えばTetrahedron Letters,Vol.27,No.32 p.3741(1986)、Organic Letters,Vol.4,No.15 p.2561(2002)等に記載された、公知の方法により合成することができる。
【0232】
構造単位(c1)の含有量としては、全構造単位に対して、20モル%〜90モル%が好ましく、より好ましくは20モル%〜80モル%、特に好ましくは20モル%〜70モル%である。構造単位(c1)の含有量を上記特定範囲とすることで、フォトレジスト膜中の酸発生剤や酸拡散制御剤等の液浸露光用液体に対する溶出を抑制し、またフォトレジスト膜と液浸露光用液体との後退接触角の向上により、液浸露光用液体に由来する水滴が、フォトレジスト膜上に残り難く、液浸露光用液体に起因する欠陥の発生を効率よく抑制することができる。
【0233】
構造単位(c2)の含有量としては、全構造単位に対して、好ましくは80モル%以下、より好ましくは20モル%〜80モル%、特に好ましくは30モル%〜70モル%である。構造単位(c2)の含有割合を上記特定範囲とすることで、前進接触角と後退接触角との差を小さくすることができ、液浸露光時に液浸液の追随性が向上し、高速スキャンに対応できる点で好ましい。
【0234】
構造単位(c3)の含有量としては、全構造単位に対して、好ましくは50モル%以下、より好ましくは5モル%〜30モル%、特に好ましくは5モル%〜20モル%である。構造単位(c3)の含有割合を上記特定範囲とすることで、塗布後の撥水性確保と、現像時の現像液に対する親和性の向上とを両立させることができる。
【0235】
上記構造単位(c4)の含有量としては、全構造単位に対して、好ましくは50モル%以下、より好ましくは5モル%〜30モル%、特に好ましくは5モル%〜20モル%である。構造単位(c4)の含有割合を上記特定範囲とすることで、塗布後の撥水性確保と、現像時の現像液に対する親和性の向上とを両立させることができる。
【0236】
<[C]フッ素原子含有重合体の合成方法>
[C]フッ素原子含有重合体の合成方法としては、例えば[B1]酸解離性基含有重合体の製造方法を好適に適用することができる。
【0237】
[C]フッ素原子含有重合体のMwとしては、GPC法によるポリスチレン換算で、好ましくは1,000〜50,000、より好ましくは1,000〜40,000、特に好ましくは1,000〜30,000である。Mwが1,000未満であると、十分な後退接触角を有するフォトレジスト膜が得られない場合がある。これに対し、Mwが50,000を超えると、フォトレジスト膜の現像性が低下する場合がある。Mw/Mnとしては、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4である。
【0238】
[C]フッ素原子含有重合体のフッ素原子含有割合としては、[B]重合体よりもフッ素原子の含有割合が大きければ、特に限定されない。[C]フッ素原子含有重合体のフッ素原子含有割合としては、[C]フッ素原子含有重合体全体を100質量%とした場合に通常5質量%以上であり、好ましくは5質量%〜50質量%、より好ましくは5質量%〜40質量%である。
【0239】
<その他の任意成分>
当該組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の[A]酸発生剤、[B]重合体及び[C]フッ素原子含有重合体に加え、必要に応じて他の酸発生剤、酸拡散抑制剤、界面活性剤、ラクトン化合物、架橋剤、脂環族添加剤等のその他の任意成分を含んでいてもよい。なお、その他の任意成分は、各成分を組み合わせてもよく、各成分を2種以上含有してもよい。以下、その他の任意成分を詳述する。
【0240】
[他の酸発生剤]
他の酸発生剤としては、[A]酸発生剤以外の感放射線性酸発生剤が挙げられ、例えば特開2009−134088号公報に記載の化合物等が挙げられる。
【0241】
他の酸発生剤としては、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、シクロヘキシル2−オキソシクロヘキシルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジシクロヘキシル2−オキソシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(1−ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(1−ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(1−ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネートが好ましい。
【0242】
他の酸発生剤の含有量としては[A]酸発生剤及び他の酸発生剤の合計含有量として、[B]重合体100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部が好ましく、2質量部〜27質量部がより好ましく、5質量部〜25質量部が特に好ましい。0.1質量部未満であると、フォトレジスト膜としての感度や解像度が低下する場合がある。一方、30質量部を超えると、フォトレジスト膜としての塗布性やパターン形状が低下する場合がある。
【0243】
[酸拡散抑制剤]
酸拡散制御剤としては、例えば下記式(29)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(I)」とも称する)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(II)」とも称する)、窒素原子を3個以上有する化合物(以下、「含窒素化合物(III)」とも称する)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0245】
上記式(29)中、R
56〜R
58は、それぞれ独立して水素原子、置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、アリール基、アラルキル基又は酸解離性基である。これらの酸拡散制御剤のうち、含窒素化合物(I)、含窒素化合物(II)、含窒素複素環化合物が好ましい。酸拡散制御剤を含有することで、レジストパターン形状や寸法忠実度を向上させることができる。
【0246】
含窒素化合物(I)のうち、酸解離性基を有さない含窒素化合物としては、例えばトリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン等のトリアルキルアミン類等が挙げられる。含窒素化合物(I)のうち、酸解離性基を有する含窒素化合物としては、例えばN−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−ブトキシカルボニル−N’,N’’−ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0247】
含窒素化合物(II)としては例えばN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等が挙げられる。含窒素化合物(III)としては、例えばポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ジメチルアミノエチルアクリルアミド等の重合体等が挙げられる。含窒素複素環化合物としては、例えば2−フェニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0248】
また、酸拡散制御剤としては、下記式(D1−0)で表される化合物を用いることもできる。
X
+Z
− (D1−0)
【0249】
上記式(D1−0)中、X
+は、下記式(D1−1)又は(D1−2)で表されるカチオンである。Z
−は、OH
−、R
D1−COO
−、又はR
D1−SO
3−である。R
D1は、置換されていてもよいアルキル基、脂環式炭化水素基又はアリール基である。
【0251】
上記式(D1−1)中、R
D2〜R
D4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、水酸基、又はハロゲン原子である。上記式(1−2)中、R
D5及びR
D6は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルコキシル基、水酸基、又はハロゲン原子である。
【0252】
上記化合物は、露光により分解して酸拡散制御性を失う酸拡散制御剤(以下、「光分解性酸拡散制御剤」とも称する)として用いられる。この化合物を含有することによって、露光部では酸が拡散し、未露光部では酸の拡散が制御されることにより露光部と未露光部のコントラストが優れる(即ち、露光部と未露光部の境界部分が明確になる)ため、特に当該組成物のLWR、MEEFの改善に有効である。
【0253】
上記R
D2〜R
D4としては、上記化合物の、現像液に対する溶解性を低下させる効果があることから、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子が好ましい。上記R
D5及びR
D6としては、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子が好ましい。
【0254】
上記R
D1が示す置換されていてもよいアルキル基としては、例えばヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシル基;シアノ基;シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、4−シアノブチル基等の炭素数2〜5のシアノアルキル基等の置換基を一種以上有する基等が挙げられる。これらのうち、ヒドロキシメチル基、シアノ基、シアノメチル基が好ましい。
【0255】
上記R
D1が示す置換されていてもよい脂環式炭化水素基としては、例えばヒドロキシシクロペンタン、ヒドロキシシクロヘキサン、シクロヘキサノン等のシクロアルカン骨格;1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オン(カンファー)等の有橋脂環骨格等の脂環式炭化水素由来の1価の基等が挙げられる。これらのうち、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オン由来の基が好ましい。
【0256】
上記R
D1が示す置換されていてもよいアリール基としては、例えばフェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルシクロヘキシル基等が挙げられる。これらのうち、フェニル基、ベンジル基、フェニルシクロヘキシル基が好ましい。
【0257】
上記R
D1としては、上記化合物の現像液に対する溶解性を低下させる効果があることから、脂環式炭化水素基、アリール基が好ましい。
【0258】
上記Z
−としては、下記式(1a)で表されるアニオン又は下記式(1b)で表されるアニオンが好ましい。
【0260】
上記光分解性酸拡散制御剤は、上記式(D1−0)で表され、具体的には、上記条件を満たすスルホニウム塩化合物又はヨードニウム塩化合物である。
【0261】
上記スルホニウム塩化合物としては、例えばトリフェニルスルホニウムハイドロオキサイド、トリフェニルスルホニウムアセテート、トリフェニルスルホニウムサリチレート、ジフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムハイドロオキサイド、ジフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムアセテート、ジフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムサリチレート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート、4−t−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート等が挙げられる。
【0262】
上記ヨードニウム塩化合物としては、例えばビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムハイドロオキサイド、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムアセテート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムハイドロオキサイド、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムアセテート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムサリチレート、4−t−ブチルフェニル−4−ヒドロキシフェニルヨードニウムハイドロオキサイド、4−t−ブチルフェニル−4−ヒドロキシフェニルヨードニウムアセテート、4−t−ブチルフェニル−4−ヒドロキシフェニルヨードニウムサリチレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート等が挙げられる。
【0263】
酸拡散制御剤の含有量としては、[B]重合体100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。酸拡散制御剤の含有量が30質量部を超えると、形成したフォトレジスト膜の感度が著しく低下する傾向にある。
【0264】
[界面活性剤]
界面活性剤は、塗布性、現像性等を改良する作用を示す成分である。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。市販品としては、例えばKP341(信越化学工業製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(以上、大日本インキ化学工業製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子製)等が挙げられる。界面活性剤の含有量としては、[B]重合体100質量部に対して、通常2質量部以下である。
【0265】
[ラクトン化合物]
ラクトン化合物は、[C]フッ素原子含有重合体を、効率的にレジスト膜表面に偏析させる効果を有する。ラクトン化合物を含有させることで、[C]フッ素原子含有重合体の添加量を従来よりも少なくすることができる。従って、LWR、現像欠陥、パターン倒れ耐性等のレジスト基本特性を損なうことなく、レジスト膜から液浸液への成分の溶出を抑制したり、高速スキャンにより液浸露光を行ったとしても液滴を残すことなく、結果としてウォーターマーク欠陥等の液浸由来欠陥を抑制するレジスト膜表面の撥水性を維持することができる。
【0266】
ラクトン化合物としては、例えばガンマ−ブチロラクトン、バレロラクトン、メバロニックラクトン、ノルボルナンラクトン等が挙げられる。
【0267】
ラクトン化合物の含有量としては、[C]フッ素原子含有重合体100質量部に対して、30質量部〜200質量部が好ましく、50質量部〜150質量部がより好ましい。
【0268】
[架橋剤]
当該組成物をネガ型感放射性樹脂組成物として用いる場合においては、酸の存在下でアルカリ可溶性重合体を架橋しうる架橋剤を配合しても良い。架橋剤としては、例えばアルカリ可溶性重合体との架橋反応性を有する官能基(架橋性官能基)を1種以上有する化合物が挙げられる。
【0269】
上記架橋性官能基としては、例えばグリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、グリシジルアミノ基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、アセトキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、ホルミル基、アセチル基、ビニル基、イソプロペニル基、(ジメチルアミノ)メチル基、(ジエチルアミノ)メチル基、(ジメチロールアミノ)メチル基、(ジエチロールアミノ)メチル基、モルホリノメチル基等が挙げられる。
【0270】
架橋剤としては、例えばWO2009/51088に記載の架橋剤等が挙げられる。架橋剤としては、メトキシメチル基含有化合物が好ましく、ジメトキシメチルウレア、テトラメトキシメチルグリコールウリルがより好ましい。
【0271】
架橋剤の含有量としては、[B2]アルカリ可溶性重合体100質量部に対して、好ましくは5質量部〜95質量部、より好ましくは15質量部〜85質量部、特に好ましくは20質量部〜75質量部である。架橋剤の含有量が5質量部未満では、残膜率の低下、パターンの蛇行や膨潤等を来しやすくなる傾向がある。一方、架橋剤の含有量が95質量部を超えると、アルカリ現像性が低下する傾向がある。
【0272】
[脂環族添加剤]
脂環族添加剤は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等をより改善する作用を示す成分である。脂環族添加剤としては、例えば1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル、1−アダマンタンカルボン酸t−ブトキシカルボニルメチル、1,3−アダマンタンジカルボン酸ジ−t−ブチル、1−アダマンタン酢酸t−ブチル、1−アダマンタン酢酸t−ブトキシカルボニルメチル、1,3−アダマンタンジ酢酸ジ−t−ブチル等のアダマンタン誘導体類;デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル、デオキシコール酸2−シクロヘキシルオキシエチル、デオキシコール酸3−オキソシクロヘキシル、デオキシコール酸テトラヒドロピラニル、デオキシコール酸メバロノラクトンエステル等のデオキシコール酸エステル類;リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル、リトコール酸2−シクロヘキシルオキシエチル、リトコール酸3−オキソシクロヘキシル、リトコール酸テトラヒドロピラニル、リトコール酸メバロノラクトンエステル等のリトコール酸エステル類等が挙げられる。
【0273】
脂環族添加剤の含有量としては、[B]重合体100質量部に対して、通常50質量部以下であり、好ましくは30質量部以下である。
【0274】
<感放射線性樹脂組成物の調製方法>
当該組成物は、通常、その使用に際して、全固形分濃度が1質量%〜50質量%、好ましくは3質量%〜25質量%となるように溶媒に溶解した後、例えば孔径0.02μm程度のフィルターでろ過することによって、組成物溶液として調製される。
【0275】
当該組成物の調製に使用される溶媒としては、例えば直鎖状又は分岐状のケトン類;環状のケトン類;プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル類;3−アルコキシプロピオン酸アルキル類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0276】
<レジストパターンの形成方法>
本発明のレジストパターンの形成方法は、
(1)当該脂組成物を用いて基板上にフォトレジスト膜を形成する工程、
(2)形成されたフォトレジスト膜を液浸露光する工程、及び
(3)液浸露光されたフォトレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程
を有する。
【0277】
当該形成方法では、フォトレジスト組成物として当該組成物を用いているので、現像工程における現像欠陥を抑制しつつ、MEEF及びLWRの良好なレジストパターンを形成することができる。
【0278】
工程(1)では、当該組成物の溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布手段によって、例えばシリコンウェハ、アルミニウムで被覆されたウェハ等の基板上に塗布することで、フォトレジスト膜が形成される。具体的には、得られるレジスト膜が所定の膜厚となるように感放射線性樹脂組成物溶液を塗布したのち、プレベーク(PB)することで塗膜中の溶媒を揮発させ、レジスト膜が形成される。
【0279】
レジスト膜の膜厚としては、10nm〜5,000nmが好ましく、10nm〜2,000nmがより好ましい。
【0280】
PBの加熱条件としては、感放射線性樹脂組成物の配合組成によって変わるが、30℃〜200℃程度が好ましく、50℃〜150℃がより好ましい。
【0281】
工程(2)では、工程(1)で形成されたフォトレジスト膜上に液浸露光用液体を配置し、液浸露光用液体を介して放射線を照射し、フォトレジスト膜を液浸露光する。
【0282】
液浸露光用液体としては、例えば純水、長鎖又は環状の脂肪族化合物等が挙げられる。放射線としては、使用される酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等から適宜選定されて使用されるが、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、KrFエキシマレーザー(波長248nm)に代表される遠紫外線が好ましく、ArFエキシマレーザーがより好ましい。
【0283】
露光量等の露光条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成や添加剤の種類等に応じて適宜選定することができる。本発明においては、露光後に加熱処理(PEB)を行うことが好ましい。PEBにより、樹脂成分中の酸解離性基の解離反応を円滑に進行させることができる。PEBの加熱条件としては、感放射線性樹脂組成物の配合組成によって適宜調整されるが、通常30℃〜200℃、好ましくは50℃〜170℃である。
【0284】
本発明においては、感放射線性樹脂組成物の潜在能力を最大限に引き出すため、例えば特公平6−12452号公報(特開昭59−93448号公報)等に開示されているように、使用される基板上に有機系又は無機系の反射防止膜を形成しておくこともできる。また、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するため、例えば特開平5−188598号公報等に開示されているように、フォトレジスト膜上に保護膜を設けることもできる。さらに、液浸露光においてフォトレジスト膜からの酸発生剤等の流出を防止するため、例えば特開2005−352384号公報等に開示されているように、フォトレジスト膜上に液浸用保護膜を設けることもできる。また、これらの技術は併用することができる。
【0285】
なお、液浸露光によるレジストパターン形成方法においては、フォトレジスト膜上に、上述の保護膜(上層膜)を設けることなく、当該組成物を用いて得られるフォトレジスト膜のみにより、レジストパターンを形成することができる。このような上層膜フリーのフォトレジスト膜によりレジストパターンを形成する場合、保護膜(上層膜)の製膜工程を省くことができ、スループットの向上を期待することができる。
【0286】
工程(3)では、露光されたレジスト膜を現像することで、所定のレジストパターンが形成される。現像工程に使用される現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ性水溶液が好ましい。
【0287】
上記アルカリ性水溶液の濃度としては、10質量%以下が好ましい。アルカリ性水溶液の濃度が10質量%を超える場合、非露光部も現像液に溶解するおそれがある。また、上記アルカリ性水溶液からなる現像液には、有機溶媒を添加することもできる。上記有機溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルi−ブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロペンタノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン等のケトン類;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジメチロール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、フェノール、アセトニルアセトン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0288】
この有機溶媒の含有量としては、アルカリ性水溶液100体積部に対して、100体積部以下が好ましい。有機溶媒の含有量が100体積部を超える場合、現像性が低下して、露光部の現像残りが多くなるおそれがある。また、上記アルカリ性水溶液からなる現像液には、界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、アルカリ性水溶液からなる現像液で現像したのちは、一般に水で洗浄して乾燥する。
【実施例】
【0289】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されない。
【0290】
<[A]酸発生剤の合成>
[合成例1]
[A]酸発生剤の前駆体として、下記式(30)で表される化合物1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(3−ヒドロキシアダマンタン−1−カルボニルオキシ)ブタン−1−スルホン酸ナトリウムを以下の方法により合成した。
【0291】
【化50】
【0292】
反応フラスコ内で、3−ヒドロキシアダマンタン−1−カルボン酸19.6g、メタノール20g、ジクロロメタン100g、イオン交換水100gの混合物を60℃で20時間攪拌した。さらに反応溶液にクロロメトキシメタン8.1g、N,N−ジイソプロピルエチルアミン5gを加えて室温で24時間攪拌した。反応液を室温まで戻し、水酸化ナトリウム10gをイオン交換水90gに溶かした溶液を加え、室温で1時間攪拌した。その後有機層を抽出しイオン交換水500gで洗浄を行なった。洗浄した反応液を減圧濃縮することで3−メトキシメトキシアダマンタン−1−カルボン酸の粗生成物27.9gを得た。この反応スキームを以下に示す。
【0293】
【化51】
【0294】
反応フラスコ内で、ターシャリブトキシカリウム1.0gをジメチルスルホキシド4.7gに溶解させ、3−メトキシメトキシアダマンタン−1−カルボン酸27.0g、ジクロロメタン100gを加えて60℃で攪拌した。この反応溶液に1,4−ジブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロブタン28.7gを加えて4時間攪拌した。反応液を室温まで冷却した後と水70gを加えて有機層を抽出し、炭酸水素ナトリウム92.4gをイオン交換水500mLに溶かした水溶液で3回、飽和食塩水100gで2回有機層を洗浄した。その有機層を減圧濃縮することで4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブチル3−メトキシメトキシアダマンタン−1−カルボン酸エステル45.3gを得た。この反応スキームを以下に示す。
【0295】
【化52】
【0296】
反応フラスコ内で、亜二チオン酸ナトリウム9.8g、及び炭酸ナトリウム7.1gを入れた後、イオン交換水50mLを入れ30分攪拌した。次いで、この混合溶液にジクロロメタン100gに溶解しておいた4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブチル3−メトキシメトキシアダマンタン−1−カルボン酸エステル40.0gを5分かけて滴下した後、攪拌しながら60℃で3.5時間加熱した。反応溶液を減圧除去し、1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(3−メトキシメトキシアダマンタン−1−カルボニルオキシ)ブタン−1−スルフィン酸ナトリウム54.3gを得た。この反応スキームを以下に示す。
【0297】
【化53】
【0298】
反応フラスコ内で、1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(3−メトキシメトキシアダマンタン−1−カルボニルオキシ)ブタン−1−スルフィン酸ナトリウムに、イオン交換水、炭酸ナトリウム28.1g、タングステン酸ナトリウム0.92gを入れ30分攪拌した。次いでこの反応混合溶液に30wt%過酸化水素水30mLを30分かけて滴下した後、60℃で3時間攪拌した。次いで反応溶媒を減圧除去することで、1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(3−メトキシメトキシアダマンタン−1−カルボニルオキシ)ブタン−1−スルホン酸ナトリウムの白色固体87.9gを得た。この反応スキームを以下に示す。
【0299】
【化54】
【0300】
反応フラスコへ1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(3−メトキシメトキシアダマンタン−1−カルボニルオキシ)ブタン−1−スルホン酸ナトリウム80.0g、ジクロロメタン150gを入れ0℃で攪拌した後、そのままの温度で4N硫酸50gを20分かけて滴下した後、0℃で1時間攪拌した。次いで有機層を抽出し、イオン交換水100gで洗浄後減圧除去することで、目的の1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(3−ヒドロキシアダマンタン−1−カルボニルオキシ)ブタン−1−スルホン酸ナトリウム35.0gを得た。この反応スキームを以下に示す。
【0301】
【化55】
【0302】
なお、1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(3−ヒドロキシアダマンタン−1−カルボニルオキシ)ブタン−1−スルホン酸ナトリウムについて、
1H−NMR(JNM−EX270、日本電子製)を用い分析した結果、得られたケミカルシフトは、
1H−NMR[σppm(DMSO):1.24(2H,m)、1.36−1.47(4H,m)、1.53−1.64(4H,m)、1.84−2.03(4H,m)、3.65(1H,s)、4.08(1H,m)]、
19F−NMR[σppm(DMSO):58.82(m)]であり、目的化合物であることが確認された。
1H−NMRは、3−トリメチルシリルプロピオン酸ナトリウム2−2,2,3,3−d
4、
19F−NMRは、ヘキサフルオロベンゼンのピークを0ppm(内部標準)とした。純度は
1H−NMRから93wt%であった。なお、以下の合成例における
1H−NMRに用いた機器、条件及び
19F−NMRの条件は同じである。
【0303】
[合成例2]
下記式(31)に示す化合物トリフェニルスルホニウム4−(3−(2−ターシャリブトキシ−2−オキソエトキシ)アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホナート(以下、「(A−1)」と称する)を以下の方法により合成した。
【0304】
【化56】
【0305】
反応フラスコへ合成例1で得られた1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(3−ヒドロキシアダマンタン−1−カルボニルオキシ)ブタン−1−スルホン酸ナトリウム20.5g、クロロ酢酸ターシャリブチル10.0g、ジクロロメタン100g、1N水酸化ナトリウム水溶液20.0gを入れて室温で1時間攪拌した。有機層を抽出し、イオン交換水100gで5回洗浄後、溶媒を減圧除去することで4−(3−(2−ターシャリブトキシ−2−オキソエトキシ)アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホン酸ナトリウム20.3gを得た。この反応スキームを以下に示す。
【0306】
【化57】
【0307】
反応フラスコへ4−(3−(2−ターシャリブトキシ−2−オキソエトキシ)アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホン酸ナトリウム20.0gとトリフェニルスルホニウムブロミド15.0g、イオン交換水100g、ジクロロメタン100gを入れ、室温で1時間攪拌した。有機層を抽出し、次いで、イオン交換水100gで5回洗浄した。その後、溶媒を除去することでトリフェニルスルホニウム4−(3−(2−ターシャリブトキシ−2−オキソエトキシ)アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホナート28.7gを得た。この反応スキームを以下に示す。
【0308】
【化58】
【0309】
なお、トリフェニルスルホニウム4−(3−(2−ターシャリブトキシ−2−オキソエトキシ)アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホナートについて、上記
1H−NMRを用い分析した結果、得られたケミカルシフトは、
1H−NMR[σppm(DMSO):1.24(2H,m)、1.36−1.47(7H,m)、1.53−1.64(4H,m)、1.84−2.03(4H,m)、4.08(1H,m)、4.33(1H,s)、7.76−7.89(15H,m)]
19F−NMR[σppm(DMSO):58.82(m)]であり、目的化合物であることが確認された。純度は99wt%以上であった。
【0310】
[合成例3]
下記式(32)に示す化合物トリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(3−(2,2,2−トリフルオロアセトキシ)アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−ブタン−1−スルホナート(以下、「(A−2)」と称する)を以下の方法により合成した。
【0311】
【化59】
【0312】
反応フラスコへ合成例1で得られた1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(3−ヒドロキシアダマンタン−1−カルボニルオキシ)ブタン−1−スルホン酸ナトリウム20.5g、ジクロロメタン100gを加えた。氷浴にて0℃に冷却し攪拌しているところへ、トリフルオロ酢酸無水物11.5gを30分かけて加えた。その後、よく攪拌しながらトリエチルアミン5.3gを加えた。その後有機層を抽出し飽和食塩水で洗浄したあと溶媒を減圧除去して1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(3−(2,2,2−トリフルオロアセトキシ)アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−ブタン−1−スルホン酸ナトリウム24.2gを得た。この反応スキームを以下に示す。
【0313】
【化60】
【0314】
反応フラスコへ1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(3−(2,2,2−トリフルオロアセトキシ)アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−ブタン−1−スルホン酸ナトリウム20.0gとトリフェニルスルホニウムブロミド15.0g、イオン交換水100g、ジクロロメタン100gを入れ、室温で1時間攪拌した。有機層を分離した後、この有機層をイオン交換水100gで5回洗浄した。その後、溶媒を減圧除去することでトリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(3−(2,2,2−トリフルオロアセトキシ)アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−ブタン−1−スルホナート27.3gを得た。この反応スキームを以下に示す。
【0315】
【化61】
【0316】
なお、トリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(3−(2,2,2−トリフルオロアセトキシ)アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−ブタン−1−スルホナートについて、
1H−NMRを用い分析した結果、得られたケミカルシフトは、
1H−NMR[σppm(DMSO):1.18(3H,m)、1.38−1.40(3H,m)、1.56(3H,m)、1.76−1.89(4H,m)、2.15(1H,s)、4.08(1H,m)、7.76−7.89(15H,m)]
19F−NMR[σppm(DMSO):58.82(m)]であり、目的化合物であることが確認された純度は99wt%以上であった。
【0317】
[合成例4]
下記式(33)に示す化合物トリフェニルスルホニウム4−(3−(2−エトキシ−1,1−ジフルオロ−2−オキソエトキシ)アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホナート(以下、「(A−3)」と称する)を以下の方法により合成した。
【0318】
【化62】
【0319】
反応フラスコへ合成例1で得られた1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(3−ヒドロキシアダマンタン−1−カルボニルオキシ)ブタン−1−スルホン酸ナトリウム20.5g、ジクロロメタン100g、1N水酸化カリウム水溶液20.0gを加えた。水浴にて反応フラスコを40℃とし、攪拌しながらクロロ−2,2−ジフルオロ酢酸6.5gを5分かけて滴下し40時間反応させた。その後有機層を抽出しイオン交換水100gで洗浄したあと溶媒を減圧除去して4−(3−(カルボキシジフルオロメトキシ)アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホン酸ナトリウム23.7gを得た。この反応スキームを以下に示す。
【0320】
【化63】
【0321】
反応フラスコへ4−(3−(カルボキシジフルオロメトキシ)アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホン酸ナトリウム23.0g、ジクロロメタン100g、エタノール10g、4N硫酸50gを加えて攪拌した。水浴にて反応フラスコを40℃とし1時間反応させた。その後よく攪拌しながら炭酸水素ナトリウム92.41gを水500gに溶かした溶液を加えた。その後有機層を抽出しイオン交換水100gで3回洗浄したあと溶媒を減圧除去することで、4−(3−(2−エトキシ−1,1−ジフルオロ−2−オキソエトキシ)アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホン酸ナトリウム21.3gを得た。この反応スキームを以下に示す。
【0322】
【化64】
【0323】
反応フラスコへ4−(3−(2−エトキシ−1,1−ジフルオロ−2−オキソエトキシ)アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホン酸ナトリウム20.0gとトリフェニルスルホニウムブロミド15.0gイオン交換水100g、ジクロロメタン100gを入れ、室温で1時間攪拌した。有機層を分離した後、この有機層をイオン交換水100gで5回洗浄した。その後、溶媒を減圧除去することでトリフェニルスルホニウム4−(3−(2−エトキシ−1,1−ジフルオロ−2−オキソエトキシ)アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホナート白色固体26.4gを得た。この反応スキームを以下に示す。
【0324】
【化65】
【0325】
なお、トリフェニルスルホニウム4−(3−(2−エトキシ−1,1−ジフルオロ−2−オキソエトキシ)アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホナートについて、
1H−NMRを用いて分析した結果、得られたケミカルシフトは、
1H−NMR[σppm(DMSO):1.24−1.29(3H,m)、1.36−1.45(4H,m)、1.53−1.62(4H,m)、1.84−2.01(4H,m)、4.08−4.13(2H,m)、7.76−7.89(15H,m)]
19F−NMR[σppm(DMSO):58.82(m)]であり、目的化合物であることが確認された。純度は99wt%以上であった。
【0326】
[合成例5]
下記式で表されるトリフェニルスルホニウム4−(4−(2−ターシャリブトキシ−2−オキソエトキシ)シクロヘキサンカルボニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホナート(以下、「(A−4)」と称する)を、出発原料を3−ヒドロキシアダマンタン−1−カルボン酸から4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸として、合成例1及び2と同様の操作により合成した。
【0327】
【化66】
【0328】
[合成例6]
下記式で表されるトリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−4−(4−(2,2,2−トリフルオロアセトキシ)シクロヘキサンカルボニルオキシ)−ブタン−1−スルホナート(以下、「(A−5)」と称する)を、出発原料を3−ヒドロキシアダマンタン−1−カルボン酸から4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸として、合成例1及び3と同様の操作により合成した。
【0329】
【化67】
【0330】
[合成例7]
下記式で表されるトリフェニルスルホニウム4−(4−(2−エトキシ−1,1−ジフルオロ−2−オキソエトキシ)シクロヘキサンカルボニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロブタン−1−スルホナート(以下、「(A−6)」と称する)を、出発原料を3−ヒドロキシアダマンタン−1−カルボン酸から4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸として、合成例1及び4と同様の操作により合成した。
【0331】
【化68】
【0332】
<[B]重合体の合成>
[合成例8]
下記化合物(S−1)34.68g(40モル%)、化合物(S−3)45.81g(40モル%)及び化合物(S−4)6.71g(10モル%)を、2−ブタノン200gに溶解し、さらに2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)4.23gを投入した単量体溶液を準備した。下記化合物(S−2)12.80g(10モル%)、2−ブタノン100gを投入した1,000mLの三口フラスコを30分窒素パージし、窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することで30℃以下に冷却し、4,000gのメタノールへ投入して析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を400gのメタノールに分散させスラリー状にして洗浄し、その後、再びろ別する操作を2回行った。得られた白色粉末を50℃にて17時間真空乾燥し共重合体(B−1)を得た(90g、収率90%)。共重合体(B−1)のMwは、6,136、Mw/Mnは1.297であった。
13C−NMR分析の結果、化合物(S−1)、化合物(S−2)、化合物(S−3)、化合物(S−4)に由来する各構造単位の含有率は、40.4:8.9:41.0:9.7(モル%)であった。
【0333】
【化69】
【0334】
<[C]フッ素原子含有重合体の合成>
[合成例9]
下記化合物(S−5)37.41g(40モル%)及び化合物(S−6)62.59g(60モル%)を2−ブタノン100gに溶解し、さらに2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)4.79gを投入した単量体溶液を準備した。2−ブタノン100gを投入した1,000mLの三口フラスコを30分窒素パージし、窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液から2−ブタノンを150g減圧除去した。30℃以下に冷却後、メタノール900gと超純水100gの混合溶媒へ投入して析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を100gのメタノールに分散させスラリー状にして洗浄し、その後再びろ別する操作を2回行った。得られた白色粉末を50℃にて17時間真空乾燥し共重合体(C−1)を得た(78g、収率78%)。共重合体(C−1)のMwは、6,920、Mw/Mnは1.592であった。
13C−NMR分析の結果、化合物(S−5)、化合物(S−6)に由来する各構造単位の含有率は、40.8:59.2(モル%)であった。
【0335】
【化70】
【0336】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
以下、実施例及び比較例の調製に用いた各成分の詳細を示す。
【0337】
[他の酸発生剤]
A−7:トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホナート
A−8:トリフェニルスルホニウム2−(アダマンタン−1−イル)−1,1−ジフルオロエタン−1−スルホナート
A−9:トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−ブタン−スルホナート
【0338】
上記(A−7)〜(A−9)で表される他の酸発生剤は、それぞれ下記式で表される。
【0339】
【化71】
【0340】
<拡散制御剤>
E−1:下記式で表されるtert−アミル−4−ヒドロキシ−1−ピペリジンカルボキシレート
【0341】
【化72】
【0342】
<溶媒>
H−1:下記式で表されるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
H−2:下記式で表されるシクロヘキサノン
【0343】
【化73】
【0344】
[実施例1〜18及び比較例1〜6]
表1に示す種類、配合量の各成分を使用し、溶媒として(H−1)1,750質量部及び(H−2)750質量部を混合して各感放射線性樹脂組成物を得た。なお、表1中の「−」は該当する成分を使用しなかったことを表す。
【0345】
<評価>
実施例1〜18及び比較例1〜6の各感放射線性樹脂組成物を用いて、下記の特性を評価した。評価結果を表1にあわせて示す。
【0346】
[LWR]
ウェハ表面に膜厚1,050ÅのARC66(日産化学工業製)膜を形成したシリコンウェハを用い、各感放射線性樹脂組成物を、基板上にスピンコートにより塗布した。ホットプレート上にて、110℃で60秒間PBを行って形成した膜厚0.10μmのフォトレジスト膜に、ニコン製液浸ArFエキシマレーザー露光装置(開口数1.30)を用い、ターゲットサイズが線幅48nmのラインアンドスペースパターン(1L/1S)のマスクを介して露光した。その後、表に示す温度で60秒間PEBを行ったのち、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により、23℃で4秒現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、線幅48nmのラインアンドスペースパターン(1L/1S)を1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度とした。最適露光量にて解像した48nm1L/1Sパターンの観測において、日立製測長SEM:CG4000にてパターン上部から観察する際、線幅を任意のポイントで10点観測し、その測定ばらつきを3シグマで表現した値をLWRとした。この値が小さいほど現像後のパターンの直線性が良好であると判断した。
【0347】
[MEEF]
マスクとしてターゲットサイズが線幅50nmのラインアンドスペースパターン(1L/1S)のマスクを用いて形成されるラインの線幅50nmとなる露光量を最適露光量としたこと以外は上記LWRの評価項目と同様に操作して最適露光量を決定した。最適露光量にて線幅のターゲットサイズが46nm、48nm、50nm、52nm、54nmであるピッチ100nmのラインアンドスペースパターンのマスクにて解像されるパターンの線幅を測定し、その結果を横軸にマスクのターゲットサイズ、縦軸に線幅を取り、最小二乗法により求めた傾きをMEEFとした。この傾きが1に近いほどマスク再現性が良好と判断した。
【0348】
[現像欠陥]
全面がターゲットサイズ48nm1L/1Sパターンとなっているマスクを用いて、ウェハ全面にショットと隣のショットとの間隔が1mmとなるように露光を行った以外は、上記LWRの評価と同様に操作してレジストパターンを形成した。ショット間の未露光部を欠陥検査装置KLA2810で検査し検査エリア1cm
2あたりの欠陥数を評価した。この欠陥数が少ないほど現像欠陥が抑制されたと判断した。
【0349】
【表1】
【0350】
表1の結果から明らかなように、[A]酸発生剤を含む実施例1〜18の感放射線性樹脂組成物は、[A]酸発生剤を含まない比較例1〜6の感放射線性樹脂組成物と比べて、MEEF及びLWRが良好であると共に、現像欠陥が低減されていた。なお、アニオン部分に多環式環状炭化水素基を導入した有機酸を用いた実施例1〜3、7〜9、13〜15の方が、単環式環状炭化水素基を導入した有機酸を用いた実施例4〜6、10〜12、16〜18より、MEEF及びLWRの点で良好であった。これは、単環式環状炭化水素基より多環式環状炭化水素基の方が嵩高いことから、有機酸の拡散長が適度に抑制されたことに起因すると考えられる。このことから、拡散長の調整には立体的に嵩高い多環式環状炭化水素基を導入することが好ましいといえる。
【0351】
また、多環式環状炭化水素基を導入しているものの、酸又は塩基により切断される結合を有しない有機酸を用いた比較例1、2、4及び5では、MEEF及びLWRの点では実施例と同等か若干劣っている程度であるが、現像欠陥が多発していた。これは、有機酸への多環式環状炭化水素基の導入により拡散長が適度に抑制されてリソグラフィー性は良好であったのに対し、酸又は塩基により切断される結合を導入しなかったことから、アルカリ現像液への相溶性が低く、現像工程において凝集が発生したことによると考えられる。さらに、環状炭化水素基及び切断性結合を含む有機基のいずれも導入していない比較例3及び6では、現像欠陥は少なかったものの、MEEF及びLWRでは劣る結果となった。これは、比較的疎水性部の小さい有機酸であったことから現像工程では容易に除去されたものの、嵩高い構造を有していなかったために拡散長が長くなり、これによってリソグラフィー性が低下したことが原因であると考えられる。