(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例】
【0013】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の実施の形態について説明する。
【0014】
図1に電気ポットの全体断面図示し、
図2に電気ポットの蓋体の一部拡大断面図を示し、
図3に蓋体内に蒸気回収ユニットを組み付けた斜視図を示し、
図4に蓋下部材の下面の蒸気の流れを示し、
図5乃至
図7に蒸気回収ユニットの詳細を示し、
図7乃至
図10に蒸気並びに水の流れを示す。なお、給湯口側を前方側、給湯口側と反対側のヒンジ部側を後方側と呼ぶ。
【0015】
電気ポットPは、貯湯用の内容器3を備えた容器本体1と、該容器本体1を開閉する蓋体2と、前記内容器3を加熱する加熱手段としての電気ヒータ4と、前記内容器3内の湯を給湯口5より給湯するための給湯通路6と、該給湯通路6を介して湯を送り出す電動ポンプ7を備えて構成される。また、容器本体1の外周部には、該ポットを持ち運びするための取手24が設けられている。
【0016】
前記容器本体1は、外周面を構成する合成樹脂製の外ケース8と、内周面を構成する前記内容器3と、前記外ケース8と内容器3とを結合する合成樹脂製の環状の肩部材9と、底面を構成する合成樹脂製の底部材10及び該底部材10の外周上に形成される溝内に収納され、容器本体1を回転する回転体11からなる。
【0017】
前記肩部材9のリング状の内壁部9aは、若干内側に傾斜されており、内壁部9aの後方側で、後記するシールパッキン38が当接する箇所には、蒸気センサ25が配置される。また、肩部材9には、略半円弧状の取手24が設けられる。
【0018】
前記内容器3の底部には、雲母板に発熱体を保持させてなるマイカヒータ等の電気ヒータ4が取り付けられ、その底部中央には内容器3内の湯温を検出する湯温検出手段としての湯温センサー12が設けられ、加熱及び保温制御のために用いられる
前記給湯口5が設けられるポット前方側の上面には、図示しない表示部及び各種スイッチボタンが配置され、タイマー設定ならびに温度表示等の表示がなされる。また、前方側の下部空間には、転倒流出止水弁13が設けられ、ポットが傾斜ならびに転倒した場合に、給湯通路6を閉鎖し、熱い湯が外部に流出しないようにした安全対策が施されている。
【0019】
前記蓋体2は、合成樹脂製の蓋上部材14と該蓋上部材14に対して図示しないビス等により結合される合成樹脂製の蓋下部材15等とを有し、更に該蓋下部材15の下部には、内容器3の開口端に対向し、該開口端の蓋としての機能をする金属製の内蓋部材21が設けられ、前記肩部材9の後部に設けられたヒンジ部20を介して開閉自在に支持される。
【0020】
前記蓋上部材14は、前方側が矩形状で、後方側が台形状の平面視略6角形状の平板状の部材であり、その前方側の中央部には
図3に示すように平面視矩形状のロック部材14aが設けられ、このロック部材14aの前方側を下方に押圧することにより蓋体2を開放する。
【0021】
前記蓋下部材15は、樹脂製の断面略お椀形状で、且つ平面視略円形状を呈し、図示されないビス等により蓋上部材14に一体的に取り付けられる。蓋下部材15は、その底部に上方に突き出る形態で円筒状凹部17が設けられるとともに、その円筒状凹部17内には、円筒状凹部17の内径より小さい外径を有し、且つ円筒状凹部17の高さより若干高い高さを有する円形リブ16が設けられる。
【0022】
図4に示すように、この円形リブ16の前方側には、矩形状の小さな切欠18が設けられるとともに、円形リブ16と円筒状凹部17との間の空間Sの後方側には、蒸気導出口19が設けられる。
【0023】
蓋下部材15の下方には、上記したように内蓋部材21が設けられる。この内蓋部材21には、凹嵌部22が形成されるとともに、この凹嵌部22は、蓋下部材15の円形リブ16内に嵌入する形態で取付けられる。
【0024】
前記凹嵌部22には、
図4で破線で示すように、複数、例えば3個の蒸気口22aが設けられており、内容器3内の蒸気は、
図2及び
図4で矢印(1)で示すように、3個の蒸気口22aから円形リブ16内に入り、次いで矢印(2)で示すように前方側の切欠18から、円形リブ16と円筒状凹部17との間の空間Sに入り、矢印(3)で示すように空間Sを後方側に迂回して蒸気導出口19から後記蒸気回収ユニット30に流入する。
【0025】
前記蓋上部材14と前記蓋下部材15との間には、その上方に空間を残して、発泡スチロール等の断熱材23が設けられ、蓋体2の断熱を行う。そして、断熱材23の上方の残された空間内に、
図1乃至
図3に示すように、蒸気回収ユニット30が配置される。この蒸気回収ユニット30を断熱材23の上方に配置するのは、蒸気回収ユニット30内の蒸気が冷え易くして、できるだけ早く結露水にするためである。
【0026】
前記蒸気回収ユニット30は、蒸気を導入し、導入した蒸気を水にして回収する樹脂製の部材であり、蒸気の入口と出口を有するとともに、その内部に蛇行する或いは左右方向にジグザグ状の複数の通路及び複数のトラップ部を有しており、入口から導入する蒸気を内部の通路内で全て結露水にするものである。そのため、出口まで蒸気が行くことはなく、出口は圧力を外部に開放するための圧力開放口として機能する。
【0027】
蒸気回収ユニット30は、上ケース31及び下ケース32からなる。上ケース31及び下ケース32は、ほぼ同形であり、それぞれの外端部を当接して接着剤で一体化するものである。
【0028】
蒸気回収ユニット30は、その中央に位置する前方側が略直線(実際は中央でわずかに折れ曲がったく字状)で後方側が円弧状の半円弧状部33と、その半円弧状部33の略直線側の一端部寄りから前方側に伸びる前後方向に細長い略矩形の矩形状部34と、その半円弧状部33の円弧状側の中央から後方側に伸びる矩形状の舌状部35とを有する。
【0029】
そして、前記舌状部35は、半円弧状部33の中央から後方側に伸びる直線部35aと、直線部35aの後方端の傾斜部35bを有する。この傾斜部35bは、上ケース31に形成される上傾斜部35b1と、下ケース32に形成される下傾斜部35b2とからなり、上傾斜部35b1は、下傾斜部35b2の略半分の長さであり、下傾斜部35b2の上方に当接される。また、下傾斜部35b2は、上傾斜部35b1の略倍の長さを有し、左右方向に2個の開孔36、36を有している。
【0030】
そして、蒸気回収ユニット30は、蓋体2内に配置される。その配置形態を
図5に示す。蒸気回収ユニット30が配置されると、矩形状部34は水平状態になり、半円弧状部33及び舌状部35は、傾斜状態になる。即ち、蒸気回収ユニット30の出口は、入口より高く、且つ途中経路は、入口側から出口側に向かって高さが低くならないようにされる。蒸気回収ユニット30の取付けは、蓋体2内に形成される空間に蒸気回収ユニット30を嵌合し、下ケース32の舌状部35に左右に張り出して形成される取付部39a、39aのビス穴39b、39bにビスを挿入し、そのビスを蓋下部材15に螺合することにより行われる。
【0031】
なお、矩形状部34も半円弧状部33及び舌状部35と同様の傾斜状態にしてもよい。しかし、すべてを傾斜状態にすると、蒸気回収ユニット30の上下方向の長さが長くなるのでこのような形態を採用している。
【0032】
また、舌状部35の傾斜部35bが対向する箇所の蓋下部材15には、下傾斜部35b2に設けられる2個の開孔36、36を合わせた面積より大きい面積の矩形状開孔37が設けられる(
図2、
図10及び
図11参照)とともに、この矩形状開孔37には、略同じ大きさのシールパッキン38がその外周を矩形状開孔37の内周端に嵌合する形態で取り付けられている。
【0033】
そして、蒸気回収ユニット30が蓋体2内に配置されると、傾斜部35bは、シールパッキン38の一方の面に水密状に当接される。なお、蓋体2の閉蓋時、シールパッキン38の他端は、蒸気センサ25が配置される肩部材9のリング状の内壁部9aに蒸気センサ25がシールパッキン38の中に入る形態で水密状に当接され(
図2等参照)、シールパッキン38内のシール空間38aを蒸気が反転する室としている。
【0034】
このように、シールパッキン38内のシール空間38aを蒸気が反転する室とする理由は、蒸気センサ25をできるだけ内容器3近傍の蒸気通路に設けるためであり、この位置に蒸気センサ25を設けることにより、水が沸騰したら直ちに蒸気を検知することができ、その結果、発生する蒸気量を低減することができるようになる。
【0035】
そのため、本発明の電気ポットは、蒸気センサ25が蒸気を検知したら直ちに電気ヒータ4への通電量を低減するか、或いはオフする制御機能を有している。別言すれば、本発明は、内容器3内の水を沸騰させるが沸騰検知を早く行って蒸気量を減らし、少ない蒸気を蒸気回収ユニット30で回収することにより電気ポットPの蒸気レス機能を高めるものである。このように沸騰検知が早く蒸気が出る時間を少なくすることにより、それだけ省エネに資することができる。
【0036】
前記上ケース31は、その上面に後方側に1本の長い支持リブ39と、前方側に3本の短い支持リブ39を立設しており、蒸気回収ユニット30が蓋体2内に配置されると、これらの先端は、蓋上部材14の底面に当接して蒸気回収ユニット30を支持する。なお、上ケース31の通路及びトラップの形状は、下ケース32に形成されるものとほぼ同じであり、以下においては、
図6及び
図7(主として
図7)により説明する。
【0037】
下ケース32の半円弧状部33の後方側の中央には、蒸気の入口である蒸気導入口41を有する蒸気導入パイプ40が垂下されており、この蒸気導入パイプ40は、蓋下部材15の蒸気導出口19に対向し、蒸気導出口19から導出する蒸気を導入する。
【0038】
この蒸気導入口41からの通路は以下のように形成される。即ち、蒸気導入口41から下傾斜部35b2の一方の開孔36(
図7の左側)にかけて略く字状の前後方向の第1の前後方向通路42が形成され、下傾斜部35b2の他方の開孔36(
図7の右側)から第1の前後方向通路42に略平行に略く字状の第2の前後方向通路43が形成され、それ以後、半円弧状部33に形成される複数の傾斜通路及びトラップ部である複数のトラップ室に連通される。
【0039】
即ち、第2の前後方向通路43の端部は、下ケース32の右方端で第1の折返部44に連通し、第1の折返部44の他端部は、左斜め下方に傾斜する第1の傾斜通路45に連通する。そして、第1の傾斜通路45の右側寄りの前方側(
図7の下側)には、第1の連通孔56aを有するとともに、この第1の連通孔56aから右斜め下方に傾斜し、且つ第1の傾斜通路45と鈍角の角度で交差する第1のトラップ室56が設けられる。この第1のトラップ室56の下方先端は行き止まり状態にされており、上方から流下する水を溜める機能を有している。
【0040】
前記第1の傾斜通路45の端部は、下ケース32の左方端で第2の折返部46に連通し、第2の折返部46の他端部は、右斜め下方に傾斜する第2の傾斜通路47に連通する。そして、第2の傾斜通路47の左側寄りの前方側(
図7の下側)には、第2の連通孔57aを有するとともに、この第2の連通孔57aから左斜め下方に傾斜し、且つ第2の傾斜通路47と鈍角の角度で交差する第2のトラップ室57が設けられる。この第2のトラップ室57の下方先端は行き止まり状態にされており、上方から流下する水を溜める機能を有している。
【0041】
前記第2の傾斜通路47の端部は、下ケース32の右方端で第3の折返部48に連通し、第3の折返部48の他端部は、左斜め下方に傾斜する第3の傾斜通路49に連通する。そして、第3の傾斜通路49の右側寄りの前方側(
図7の下側)には、第3の連通孔58aを有するとともに、この第3の連通孔58aから右斜め下方に傾斜し、且つ第3の傾斜通路49と鈍角の角度で交差する第3のトラップ室58が設けられる。この第3のトラップ室58の下方先端は行き止まり状態にされており、上方から流下する水を溜める機能を有している。
【0042】
前記第3の傾斜通路49の端部は、下ケース32の左方端で第4の折返部50に連通し、第4の折返部50は、矩形状部34の通路に連通する。即ち、第4の折返部50は、その下端部で矩形状部34の左側にある第4の連通孔59aに連通する。そして、第4の連通孔59aは、前後方向に設けられる第4のトラップ室59に連通する。この第4のトラップ室59の下方先端は行き止まり状態にされており、上方から流下する水を溜める機能を有している。
【0043】
また、第4の折返部50は、その下端部で矩形状部34の右側にある第5の折返部51に連通し、第5の折返部51の他端部は、前後方向に伸びる第3の前後方向通路52に連通する。そして、第3の前後方向通路52の下端には、第5の連通孔60aを有するとともに、この第5の連通孔60aから下方に第5のトラップ室60が設けられる。この第5のトラップ室60の下方先端は行き止まり状態にされており、上方から流下する水を溜める機能を有している。
【0044】
そして、前記第3の前後方向通路52の端部は、下ケース32の左方端で第6の折返部53に連通し、第6の折返部53の他端は、出口であり圧力を開放するための出口孔54に連通する。この出口孔54は、電気ポットPの前方側にある給湯口5の近傍で外部に連通する。
【0045】
蒸気の流れについて、
図2、
図4、
図7及び
図10等により説明する。内容器3内で発生する蒸気は、
図10で示すように上昇し、内蓋部材21の蒸気口22aより円形リブ16内の空間に入り、次いで、円形リブ16の切欠18より空間Sに入り、次いで、空間Sから蒸気導出口19を経て、蒸気回収ユニット30の蒸気導入口41に至る(
図2及び
図4の矢印(1)乃至(3)参照)。
【0046】
蒸気回収ユニット30内の蒸気の流れを
図7で白抜きの矢印(
図10及び
図11では黒塗り矢印になっているが同じものである。)で示す。蒸気導入口41から蒸気回収ユニット30に入った蒸気(矢印(1))は、第1の前後方向通路42及び左側の開孔36を通ってシールパッキン38内のシール空間38aに至る。そこで、蒸気センサ25により検知され、以後の加熱が低減或いは停止される。
【0047】
蒸気は、シール空間38aで反転し(矢印(2))、右側の開孔36を通って再び蒸気回収ユニット30内に入る。蒸気回収ユニット30内に入った蒸気は、第2の前後方向通路43を経て(矢印(3))第1の折返部44で反転される。
【0048】
次いで、第1の折返部44で反転された蒸気は、第1の傾斜通路45を経て(矢印(4))第2の折返部46で反転される。
【0049】
次いで、第2の折返部46で反転された蒸気は、第2の傾斜通路47を経て(矢印(5))第3の折返部48で反転される。
【0050】
次いで、第3の折返部48で反転された蒸気は、第3の傾斜通路49を経て(矢印(6))第4の折返部50で反転される。
【0051】
このあたりまでくると、蒸気はほとんどなくなり、昇圧された圧力は、第5の折返部51、第3の前後方向通路52及び第6の折返部53を通って出口孔54より外部の大気に放出される。そして、蒸気は、通路途中で通路壁面に結露して水になる。
【0052】
蒸気回収ユニット30の内部の通路形状は、
図5に示すように、通常の状態ではその多くが後方側に向かって傾斜しているため、通路内の結露水は、所定量になると重力で
図7で説明した蒸気の流れと逆向きに後方側に向かって流れ、蒸気導入口41から内蓋部材21上に落下し、図示しない開口より内容器3内に戻される。
【0053】
電気ポットPが通路の出口である出口孔54側に傾斜したり、或いは転倒した場合の状態を説明する。そのような状態を
図8に示す。即ち、出口孔54が下になると、蒸気回収ユニット30の通路内の結露水は、概略黒塗りの矢印で示すように流れる。
【0054】
ところで、上述したように、蒸気回収ユニット30の通路には、第1の傾斜通路45に第1の連通孔56aを介して連通する第1のトラップ室56、第2の傾斜通路47に第2の連通孔57aを介して連通する第2のトラップ室57、第3の傾斜通路49に第3の連通孔58aを介して連通する第3のトラップ室58、第4の連通孔59aを介して連通する第4のトラップ室59及び第5の連通孔60aを介して連通する第5のトラップ室60を有し、それぞれのトラップ室56〜60は、それぞれの連通孔56a〜60aを上方にして位置するようになる。
【0055】
そのため、各通路壁を伝わって流下したり落下したりする結露水は、
図8で示すようにいずれかの連通孔56a〜60aよりいずれかのトラップ室56〜60に落ち込んで溜められる。その結果、例え、電気ポットPが通路の出口である出口孔54側に傾斜したり、或いは転倒したとしても結露水が出口孔54より外部に排出されることはなくなる。
【0056】
次いで、電気ポットPの蓋体2を開蓋した場合、別言すれば、電気ポットが通路の入口である蒸気導入口41側に傾斜したり、或いは転倒した場合の状態を説明する。そのような状態を
図9及び
図12に示す。即ち、蒸気導入口41が下になると、蒸気回収ユニット30の通路内の結露水は、概略
図9で黒塗りの矢印で示し、
図12で破線の矢印で示すように流れる。
【0057】
ところで、上述したように、蒸気回収ユニット30の通路には、第1の傾斜通路45に第1の連通孔56aを介して連通する第1のトラップ室56、第2の傾斜通路47に第2の連通孔57aを介して連通する第2のトラップ室57、第3の傾斜通路49に第3の連通孔58aを介して連通する第3のトラップ室58、第4の連通孔59aを介して連通する第4のトラップ室59及び第5の連通孔60aを介して連通する第5のトラップ室60を有するが、それぞれのトラップ室56〜60は、それぞれの連通孔56a〜60aを下方にして位置するようになる。
【0058】
そのため、各通路壁を伝わって流下したり落下したりする結露水、並びに各トラップ室56〜60内の結露水は、図で示すように第2の前後方向通路43及び開孔36を通ってシールパッキン38内のシール空間38aに至る。そして、蓋体2を開蓋時、シールパッキン38は、肩部材9の内壁部9aより離れて内容器3の上方で内容器3に対向する位置になるため
図12に示すように通路内の結露水のほとんどは、シールパッキン38より内容器3内に落下することになり、外部にこぼれ落ちることはない。なお、この場合、内蓋部材21内に結露水が残っていれば、その結露水部も
図12に示すように内容器3内に戻ることになる。
【0059】
本願発明は、上記実施の態様の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能であることは勿論である。