(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2のリペアージョイントを沈設する工程は、前記可動係合部を介してスリングにより前記リペアージョイント本体部を吊り下げながら、前記予備ケーブルと前記第2のリペアージョイントと切断された前記水底ケーブルの前記他方の側のケーブルとを含んで構成される湾曲部を横方向に倒すことで行われる請求項2に記載の水底ケーブルの修理方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1(a)〜
図1(c)を参照して、本発明の一実施形態によるリペアージョイント(水底ケーブル用ジョイント)について説明する。
図1(a)は、実施形態によるリペアージョイント100の全体を示す概略的な正面図である。
図1(b)および
図1(c)は、それぞれ、リペアージョイント100が有する可動係合部120の概略的な正面図および側面図である。
【0011】
リペアージョイント100は、リペアージョイント本体部110と可動係合部120とを含んで構成されている。リペアージョイント本体部110は、水底ケーブルの端部同士を接続するために用いられる。リペアージョイント本体部110の、ケーブル端部同士を接続するための装置構造としては、公知のものを必要に応じ適宜選択して用いることができる。リペアージョイント本体部110のケース(外装ケース)111が、可動係合部120を取り付けることができるように構成されている。
【0012】
可動係合部120は、リペアージョイント本体部110の外周上に、リペアージョイント本体部110に対し周方向に可動に設けられており、リペアージョイント本体部110を吊り下げるためのスリングが係合されるように構成されている。
【0013】
可動係合部120は、リペアージョイント本体部110の長さ方向に関し、リペアージョイント本体部110の中心に対して対称な位置に、1組以上設けられていることが好ましい。
図1(a)に示す例では、2組(4つ)の可動係合部120が設けられている。可動係合部120の設置位置や設置個数は、リペアージョイント本体部110の吊り下げ条件等に応じて、適宜選択することができる。
【0014】
なお、リペアージョイント本体部110(あるいはケース111)の周方向を、単に「周方向」と呼ぶことがある。また、リペアージョイント本体部110(あるいはケース111)の長さ方向を、単に「長さ方向」と呼ぶことがある。
【0015】
以下、より具体的な構造について例示的に説明する。ケース111は、概略円筒形状を有する。ケース111の外周上に、可動係合部120が取り付けられている。可動係合部120は、ケース111の(つまりリペアージョイント本体部110の)外周を取り囲むリング形状を有する。
【0016】
各可動係合部120が取り付けられる部分のケース111の外周上に、可動係合部120を長さ方向について両側から挟み込むように、一対の鍔部112が設けられている。可動係合部120は、鍔部112により両側から挟まれていることで、長さ方向についての移動が制限され、長さ方向の一定位置で周方向に移動することができる。
【0017】
可動係合部120は、外周上に、例えば吊り輪状の係合部121を有する。係合部121にスリングが係合されることで、リペアージョイント本体部110を吊り下げることができる。なお、本例では係合部121を吊り輪状としているが、スリングが係合可能なものであれば、係合部121の構造は特に制限されない。また、可動係合部120を介してリペアージョイント本体部110を吊り下げることができるものであれば、スリングの種類や構造等も特に制限されない。
【0018】
可動係合部120は、例えば、一対の半円弧状部材122、123により構成され、係合部121が、半円弧状部材122、123の一方、例えば半円弧状部材122の外周上に設けられている。一対の鍔部112の間に画定される凹部に、ケース111を上下から挟みこむように半円弧状部材122、123を配置し、半円弧状部材122、123の端部同士を、例えばボルト締めにより結合することで、ケース111の外周上に取り付けられ周方向に可動なリング形状の態様で、可動係合部120を設けることができる。
【0019】
可動係合部120の材質や各部の寸法等は、可動係合部120を介して吊り下げられるリペアージョイント本体部110の重量等に応じて、適宜選択することができる。
【0020】
次に、
図2(a)〜
図2(d)および
図3(a)、
図3(b)を参照し、実施形態によるリペアージョイント100の使用方法の例として、リペアージョイント100を用いた水底ケーブルの修理方法について説明する。
図2(a)〜
図2(d)は、水底ケーブル200の修理方法の全体的な工程を示す概略図である。
図3(a)、
図3(b)は、第2のリペアージョイント260(実施形態によるリペアージョイント100)の沈設工程を示す概略図である。
【0021】
図2(a)〜
図2(d)および
図3(a)、
図3(b)に示すxyz座標系のxy面は水平面を示し、x方向は事故前(修理前)の水底ケーブル200の延在方向を示し、y方向は水底ケーブル200の延在方向と直交する方向を示し、z方向は鉛直方向を示す。なお、事故前の水底ケーブル200の延在方向(x方向)を、単に「ケーブル延在方向」と呼ぶことがある。
【0022】
図2(a)〜
図2(c)は、ケーブル延在方向に直交する水平方向から(y方向から)水底ケーブル200を見た概略図である。
図2(a)を参照する。例えば海底等の水底300に沿って、水底ケーブル200が設置されており、「×印」で示す位置230が、水底ケーブル200に異常が発生している事故点を示す。
図2(a)は、事故点230を含む所定範囲の水底ケーブル200が、修理のために水底300から掘り出されている状況を示す。
【0023】
潜水士が、事故点230近傍で水底ケーブル200を切断する。切断箇所に対して一方側(紙面右方側)の部分の水底ケーブル200を「Aケーブル210」と呼び、他方側(紙面左方側)の部分の水底ケーブル220を「Bケーブル220」と呼ぶこととする。
【0024】
図2(b)を参照する。Aケーブル210の切断端部を作業船(台船)400上に引き上げ、切断端部近傍の異常部分を除去し、異常部分除去後のAケーブル210の端部211に仮端末処理を施した後、Aケーブル210を水中301に投入しておく。Aケーブル210の端部211には、目印としてブイ212を取り付けておく場合がある。
【0025】
Bケーブル220の切断端部を作業船400上に引き上げ、切断端部近傍の異常部分を除去した後、異常部分除去後のBケーブル220の端部221と、作業船400に積載された予備ケーブル240の端部241とを、第1のリペアージョイント250を介して接続する。
【0026】
第1のリペアージョイント250としては、(実施形態による可動係合部120を有するリペアージョイント100ではなく)通常のリペアージョイントを用いてもよいし、実施形態による可動係合部120を有するリペアージョイント100を用いてもよい。
【0027】
図2(c)を参照する。予備ケーブル240を繰り出しながら、作業船400をAケーブル210側に進め、第1のリペアージョイント250を水底300に沈設する。
【0028】
Aケーブル210の端部211を作業船400上に引き上げ、Aケーブル210の端部211と、予備ケーブル240のBケーブル220との接続端部241と反対側の端部242とを、第2のリペアージョイント260を介して接続する。
【0029】
第2のリペアージョイント260としては、実施形態による可動係合部120を有するリペアージョイント100を用いる。
【0030】
第1のリペアージョイント250と第2のリペアージョイント260との間に予備ケーブル240を割り入れたことにより、予備ケーブル240の接続後の水底ケーブル200には、事故前の水底ケーブル200と比べて、予備ケーブル240の長さ分程度の余長が生じている。
【0031】
このため、第2のリペアージョイント260の接続時の水底ケーブル200には、概ね頂点位置に第2のリペアージョイント260が配置されるような、鉛直方向に(z方向に)突出した湾曲部270(予備ケーブル240と第2のリペアージョイント260とAケーブル210とを含んで構成される湾曲部270)が形成されている。
【0032】
図2(d)を参照する。
図2(d)は、鉛直方向(z方向)から水底ケーブル200を見た概略図である。第2のリペアージョイント260の接続後、湾曲部270を、ケーブル延在方向に直交する水平方向に(y方向に)倒すようにして、第2のリペアージョイント260を水底300に沈設する。なお、ケーブル延在方向に直交する水平方向(y方向)を「横方向」と呼ぶこともある。また、鉛直方向(z方向)を「縦方向」と呼ぶこともある。
【0033】
第2のリペアージョイント260を含む湾曲部270は、第2のリペアージョイント260の接続時に縦方向に突出しているので、第1のリペアージョイント250の沈設と同様には、つまり、事故前の水底ケーブル200の延在方向に沿っては、沈設することができない。そこで、湾曲部270を横方向に倒すことにより、湾曲部270の沈設が行われる。第2のリペアージョイント260の沈設工程を、「横倒し沈設工程」と呼ぶこともある。
【0034】
横倒し沈設工程は、第2のリペアージョイント260を吊り下げながら作業船400を横方向に移動させ、第2のリペアージョイント260を所望の位置まで横方向に移動させることで行われる。
【0035】
図3(a)および
図3(b)をさらに参照して、横倒し沈設工程についてより詳しく説明する。
図3(a)は、横倒し沈設前の状態、つまり、湾曲部270が縦方向に突出している状態を示し、
図3(b)は、横倒し沈設後の状態、つまり、湾曲部270が横方向に倒され水底300に沈設された状態を示す概略図である。
【0036】
図3(a)を参照する。作業船400に搭載されたクレーンにより、例えば吊り天秤401を介して、第2のリペアージョイント260(すなわち実施形態によるリペアージョイント100)を吊り下げる。より具体的には、例えば吊り天秤401に掛けられたスリング402の下端を、可動係合部120の係合部121に係合することで、リペアージョイント260(100)を吊り下げる。
【0037】
図3(b)を参照する。リペアージョイント260(100)を吊り下げた状態で、作業船400を横方向に移動させながら、湾曲部270を横方向に倒していく。横倒し作業前に水底300からリペアージョイント260(100)に向けて立ち上がっていた部分のケーブル240およびケーブル210は、もともと縦方向に向いていた配置が横方向に向くように、横倒し作業に伴って捩れることとなる。
【0038】
リペアージョイント本体部110は、その両側に接続されたケーブル240およびケーブル210の捩れに従って、横向きに倒れようとする。つまり、リペアージョイント本体部110は、横倒し作業に伴い、(横倒し作業前の姿勢を基準として)周方向に回転しようとする。
【0039】
一方で、リペアージョイント260(100)を吊り下げているスリング402は、横倒し作業中、一定方向(鉛直下向き)を向く姿勢を保ったまま、リペアージョイント260(100)に係合されている。つまり、スリング402に係合された係合部121は、横倒し作業中、一定方向(鉛直上向き)を向く姿勢を保とうとする。
【0040】
本実施形態では、係合部121が周方向に可動な可動係合部120として構成されていることにより、つまり、リペアージョイント本体部110が可動係合部120に対して周方向に可動であることにより、横倒し作業中に、係合部121は鉛直上向きの姿勢を保ちつつ、リペアージョイント本体部110は周方向に回転することが可能となっている。
【0041】
このため、吊り下げられたリペアージョイント本体部110が、ケーブル240およびケーブル210の捩れに自然に従うように横方向に倒れるようにして(周方向に回転するようにして)、リペアージョイント260(100)の横倒し沈設を行うことができる。
【0042】
ここで、比較形態として、リペアージョイントが可動係合部を有しない場合、例えば、
図3(a)および
図3(b)に示した例で係合部が周方向について固定されている場合の横倒し沈設工程について考える。
【0043】
比較形態では、横倒し作業において、係合部が鉛直上向きの姿勢を保とうとするので、リペアージョイント本体部が横方向に倒れようとする(周方向に回転しようとする)動きが阻害される。このため、リペアージョイント両端のケーブル接続部に不自然な捩れが集中して、ケーブルが損傷することが懸念される。
【0044】
一方、実施形態では、横倒し作業において、リペアージョイント本体部110が横方向に倒れようとする(周方向に回転しようとする)動きが、比較形態と比べて阻害されない。このため、リペアージョイント両端のケーブル接続部に不自然な捩れが集中するような不具合を抑制でき、ケーブルの損傷を抑制することができる。
【0045】
以上説明したように、実施形態によるリペアージョイント100を用いることにより、横倒し沈設工程を良好に実施することができる。例えば、横倒し沈設に伴うケーブルの損傷を抑制することができる。
【0046】
本願発明者は、実施形態によるリペアージョイントを光複合海底電力ケーブルの接続に適用して試作品を製作し、横倒し沈設工程の模擬試験を実施した。可動係合部は、ケーブルの横倒し角度が大きくなるにつれスムーズに動いた。光複合ケーブル中の光ファイバの伝送損失について、試験中のパワーメーターによる測定結果から、異常な増大は認められなかった。また、機械履歴を加えた後のリペアージョイントとケーブルに電気試験を実施したところ合格であり、品質を保証することができた。
【0047】
なお、実施形態のリペアージョイントが適用されるケーブルとして、光複合海底電力ケーブルを例示したが、実施形態のリペアージョイントが適用されるケーブルの種類は、特に制限されない。
【0048】
なお、リペアージョイントの重量が重いほど、係合部が可動でない場合(比較形態の場合)の、捩れに起因するケーブルの損傷が生じやすい。実施形態の可動係合部が適用されるリペアージョイントに特に制限はないが、このような観点からは、大型で重いリペアージョイントほど、実施形態の可動係合部を適用する有効性が高まるといえる。
【0049】
なお、上述の実施形態において、
図2(d)や
図3(b)に示した横倒しの方向は説明のための例示であり、横倒しの方向(縦方向から見て左右方向のいずれに倒すか)は、必要に応じて適宜選択することができる。
【0050】
なお、上述の実施形態において、
図2(c)、
図2(d)、
図3(a)および
図3(b)に示した湾曲部のケーブルの湾曲形状は説明のための例示であり、ケーブルの湾曲形状は、必要に応じて適宜選択することができる。
【0051】
なお、上述の実施形態では、可動係合部としてリング状の構造のものを例示したが、周方向に可動なものであれば、可動係合部の構造は特に制限されない。
【0052】
なお、リペアージョイントを含むケーブル湾曲部を横倒しにして沈設する工程を、水底ケーブルの修理以外で実施する場合であっても、実施形態のリペアージョイント(水底ケーブル用ジョイント)を、好ましく用いることができる。
【0053】
以上、実施形態に沿って本発明を説明したが、本発明の実施形態はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0054】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0055】
(付記1)
本発明の一態様によれば、水底ケーブルの端部同士を接続するために用いられるリペアージョイント本体部と、前記リペアージョイント本体部の外周上に、前記リペアージョイント本体部に対し周方向に可動に設けられ、前記リペアージョイント本体部を吊り下げるためのスリングが係合される可動係合部と、を有するリペアージョイントが提供される。
【0056】
(付記2)
付記1に記載のリペアージョイントであって、好ましくは、
前記可動係合部は、前記リペアージョイント本体部の外周を取り囲むリング形状を有する。
【0057】
(付記3)
付記2に記載のリペアージョイントであって、好ましくは、
前記リペアージョイント本体部は、外周上に、前記可動係合部を両側から挟み込む一対の鍔部を有する。
【0058】
(付記4)
付記3に記載のリペアージョイントであって、好ましくは、
前記可動係合部は、一対の半円弧状部材により構成されている。
【0059】
(付記5)
付記1〜3のいずれか1つに記載のリペアージョイントであって、好ましくは、
前記可動係合部は、外周上に、吊り輪状の係合部を有する。
【0060】
(付記6)
本発明の他の態様によれば、異常の発生した水底ケーブルを切断する工程と、切断された前記水底ケーブルの一方の側のケーブルの端部と、予備ケーブルの第1の端部とを、第1のリペアージョイントを介して接続する工程と、前記第1のリペアージョイントを沈設する工程と、前記予備ケーブルの、前記第1の端部と反対側の第2の端部と、切断された前記水底ケーブルの他方の側のケーブルの端部とを、第2のリペアージョイントを介して接続する工程と、前記第2のリペアージョイントを沈設する工程と、を有し、前記第2のリペアージョイントは、前記予備ケーブルの前記第2の端部と、切断された前記水底ケーブルの前記他方の側のケーブルの端部とを接続するために用いられるリペアージョイント本体部と、前記リペアージョイント本体部の外周上に、前記リペアージョイント本体部に対し周方向に可動に設けられ、前記リペアージョイント本体部を吊り下げるためのスリングが係合される可動係合部と、を有する、水底ケーブルの修理方法が提供される。
【0061】
(付記7)
付記6に記載の水底ケーブルの修理方法であって、好ましくは、
前記第2のリペアージョイントを沈設する工程は、前記可動係合部を介してスリングにより前記リペアージョイント本体部を吊り下げながら、前記予備ケーブルと前記第2のリペアージョイントと切断された前記水底ケーブルの前記他方の側のケーブルとを含んで構成される湾曲部を横方向に倒すことで行われる。
【解決手段】リペアージョイントは、水底ケーブルの端部同士を接続するために用いられるリペアージョイント本体部と、リペアージョイント本体部の外周上に、リペアージョイント本体部に対し周方向に可動に設けられ、リペアージョイント本体部を吊り下げるためのスリングが係合される可動係合部と、を有する。