(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記微粒子(D)が、前記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)と相溶しないオリゴマーまたはポリマー(d1)を三次元架橋させた微粒子である、請求項2に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
前記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)が、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、脂肪族系、飽和炭化水素系、アクリル系もしくは植物由来系の重合体または共重合体である、請求項2または3に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
前記オリゴマーまたはポリマー(d1)が、ポリカーボネート系、脂肪族系、飽和炭化水素系、アクリル系もしくは植物由来系の重合体または共重合体である、請求項3または4に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
前記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)が、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、アクリル系もしくは植物由来系の重合体または共重合体であり、
前記オリゴマーまたはポリマー(d1)が、脂肪族系の重合体または共重合体である、請求項4または5に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
前記カルボキシ基を有するニトロン化合物が、N−フェニル−α−(4−カルボキシフェニル)ニトロン、N−フェニル−α−(3−カルボキシフェニル)ニトロン、N−フェニル−α−(2−カルボキシフェニル)ニトロン、N−(4−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロン、N−(3−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロンおよびN−(2−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロンからなる群より選択される化合物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
前記未変性ブタジエンゴムの有するブタジエンに由来する全ての二重結合のうち、前記カルボキシ基を有するニトロン化合物によって変性された割合(mol%)を変性率とした場合、前記変性ブタジエンゴムの変性率が0.02〜4.0mol%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
前記未変性ブタジエンゴムを変性する際に使用する前記カルボキシ基を有するニトロン化合物の量が、前記未変性ブタジエンゴム100質量部に対して、0.3〜10質量部である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物およびこれを用いたスタッドレスタイヤについて説明する。
なお、本発明において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
[タイヤトレッド用ゴム組成物]
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物(以下、単に「ゴム組成物」ともいう。)は、変性ブタジエンゴムを含むジエン系ゴム(A)100質量部と、熱膨張性マイクロカプセル(B)0.5〜25質量部と、を含有する。また、上記変性ブタジエンゴムが、未変性ブタジエンゴムを、カルボキシ基を有するニトロン化合物によって変性することで得られる。また、上記ジエン系ゴム(A)中の上記変性ブタジエンゴムの含有量が、20〜65質量%である。
【0012】
本発明のゴム組成物は、氷上性能および耐摩耗性のいずれにも優れたスタッドレスタイヤを作製することができる。この理由の詳細は明らかになっていないが、以下の理由がその一因となっているものと推測される。
【0013】
すなわち、本発明のゴム組成物は、未変性ブタジエンゴムを、カルボキシ基を有するニトロン化合物によって変性することで得られる変性ブタジエンゴムを含有する。
これにより、変性ブタジエンゴム中のニトロン変性部位におけるカルボキシ基が、ゴム組成物中の他の成分(特に、後述するカーボンブラックや白色充填剤など)と相互作用するものと考えられる。その結果、ゴム成分と他の成分との強固な結合が形成されて架橋点が増加することで、架橋密度が増加して、耐摩耗性が向上するものと推測される。
【0014】
また、高温時においては、上記相互作用によるゴム成分と他の成分との結合が外れる。その結果、ゴム組成物の粘度が低減するため、熱膨張性マイクロカプセルの発泡プロセスへの影響を低減できる。これにより、熱膨張性マイクロカプセルによる氷上性能を向上させる機能が十分に発揮されるものと推測される。
【0015】
以下に、本発明のゴム組成物が含有する各成分について詳細に説明する。
【0016】
〔ジエン系ゴム(A)〕
本発明のゴム組成物が含有するジエン系ゴムは、後述する変性ブタジエンゴムを20〜65質量%含み、主鎖に二重結合を有するものであれば特に限定されず、その具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、未変性ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレンゴム(SIR)、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム(SIBR)等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、後述する変性ブタジエンゴムと併用するジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)であるのが好ましく、天然ゴム(NR)であることがより好ましい。
【0017】
<変性ブタジエンゴム>
本発明のゴム組成物が含有する変性ブタジエンゴムは、未変性ブタジエンゴムを、カルボキシ基を有するニトロン化合物によって変性することで得られる変性ポリマーである。
ジエン系ゴム(A)中の変性ブタジエンゴムの含有量は、20〜65質量%であり、30〜65質量%であることが好ましく、50〜60質量%であることがより好ましい。変性ブタジエンゴムの含有量が上記範囲内にあることで、氷上性能および耐摩耗性が優れたものになる。一方、変性ブタジエンゴムの含有量が20質量%未満であると、耐摩耗性が低下する。また、変性ブタジエンゴムの含有量が65質量%を超えると、十分なゴム強度を維持することができない。
【0018】
(未変性ブタジエンゴム)
上記未変性ブタジエンゴムは、炭素−炭素不飽和結合を有するブタジエンゴムである。
なお、ここでいう「未変性」とは、後述するカルボキシ基を有するニトロン化合物により変性されていないことを意味するものであり、他の成分により変性(特に末端変性)されたポリマーを排除するものではない。
【0019】
上記未変性ブタジエンゴムとしては、発熱性の低減効果が大きくなる理由から、ハイシス構造を有するブタジエンゴムであるのが好ましく、具体的には、シス−1,4結合の含有量が90%以上、好ましくは95%以上のブタジエンゴムであるのがより好ましい。
なお、このようなハイシス構造のブタジエンゴムは、チーグラー系触媒やネオジウム触媒などを用いた通常の方法で重合することができる。
【0020】
上記未変性ブタジエンゴムの重量平均分子量は、50000〜1000000であることが好ましく、200000〜800000であることがより好ましい。未変性ブタジエンゴムの重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
【0021】
(カルボキシ基を有するニトロン化合物)
本発明の変性ブタジエンゴムは、上述のとおり、カルボキシ基を有するニトロン化合物(以下、単に「カルボキシニトロン」ともいう。)を用いて変性されたものである。
カルボキシニトロンは少なくとも1個のカルボキシ基(−COOH)を有するニトロンであれば特に限定されない。ここで、ニトロンとは、下記式(1)で表されるニトロン基を有する化合物を指す。
【0023】
上記式(1)中、*は結合位置を表す。
【0024】
上記カルボキシニトロンは、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0026】
上記一般式(2)中、XおよびYは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または、芳香族複素環基を表す。ただし、XおよびYの少なくとも一方は、置換基としてカルボキシ基を有する。
【0027】
XまたはYで表される脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基などが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基などが挙げられ、なかでも、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、なかでも、炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましく、炭素数3〜6のシクロアルキル基がより好ましい。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基などが挙げられ、なかでも、炭素数2〜18のアルケニル基が好ましく、炭素数2〜6のアルケニル基がより好ましい。
【0028】
XまたはYで表される芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基などが挙げられ、なかでも、炭素数6〜14のアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアリール基がより好ましく、フェニル基、ナフチル基がさらに好ましい。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基などが挙げられ、なかでも、炭素数7〜13のアラルキル基が好ましく、炭素数7〜11のアラルキル基がより好ましく、ベンジル基がさらに好ましい。
【0029】
XまたはYで表される芳香族複素環基としては、例えば、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基(イミダゾール基)、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジル基(ピリジン基)、フラン基、チオフェン基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基等が挙げられる。なかでも、ピリジル基が好ましい。
【0030】
XおよびYで表される基は、上述したように少なくとも一方が置換基としてカルボキシ基を有していれば、カルボキシ基以外の置換基(以下、「他の置換基」ともいう。)を有していてもよい。
XまたはYで表される基が有してもよい他の置換基としては、特に限定されず、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、スルホニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
なお、このような置換基を有する芳香族炭化水素基としては、例えば、トリル基、キシリル基などの置換基を有するアリール基;メチルベンジル基、エチルベンジル基、メチルフェネチル基などの置換基を有するアラルキル基;等が挙げられる。
【0031】
上記一般式(2)で表される化合物は、下記一般式(b)で表される化合物であることが好ましい。
【0033】
一般式(b)中、mおよびnは、それぞれ独立に、0〜5の整数を示し、mとnとの合計が1以上である。
mが示す整数としては、カルボキシニトロンを合成する際の溶媒への溶解度が良好になり合成が容易になるという理由から、0〜2の整数が好ましく、0〜1の整数がより好ましい。
nが示す整数としては、カルボキシニトロンを合成する際の溶媒への溶解度が良好になり合成が容易になるという理由から、0〜2の整数が好ましく、0〜1の整数がより好ましい。
また、mとnとの合計(m+n)は、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。
【0034】
このような一般式(b)で表されるカルボキシニトロンとしては特に制限されないが、下記式(b1)で表されるN−フェニル−α−(4−カルボキシフェニル)ニトロン、下記式(b2)で表されるN−フェニル−α−(3−カルボキシフェニル)ニトロン、下記式(b3)で表されるN−フェニル−α−(2−カルボキシフェニル)ニトロン、下記式(b4)で表されるN−(4−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロン、下記式(b5)で表されるN−(3−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロン、および、下記式(b6)で表されるN−(2−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロンからなる群より選択される化合物であることが好ましい。
【0036】
カルボキシニトロンの合成方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ヒドロキシアミノ基(−NHOH)を有する化合物と、アルデヒド基(−CHO)およびカルボキシ基を有する化合物とを、ヒドロキシアミノ基とアルデヒド基とのモル比(−NHOH/−CHO)が1.0〜1.5となる量で、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン等)下で、室温で1〜24時間撹拌することにより、両基が反応し、カルボキシ基とニトロン基とを有する化合物(カルボキシニトロン)を与える。
【0037】
(変性ブタジエンゴムの製造方法)
本発明の変性ブタジエンゴムは、上述の通り、未変性ブタジエンゴムを、カルボキシ基を有するニトロン化合物で変性することにより得られる。
【0038】
変性ブタジエンゴムの製造時の反応機構は、未変性ブタジエンゴムの二重結合に対して、カルボキシニトロンを反応させるものである。変性ブタジエンゴム(変性BR)を製造する方法は特に制限されないが、例えば、上記未変性ブタジエンゴムと上記カルボキシニトロンとを、100〜200℃で1〜30分間混合する方法が挙げられる。
このとき、下記式(4−1)または下記式(4−2)に示すように、上記未変性ブタジエンゴムが有するブタジエンに由来する二重結合と上記カルボキシニトロンが有するニトロン基との間で、環化付加反応が起こり、五員環を与える。なお、下記式(4−1)は1,4−結合とニトロン基との反応を表し、下記式(4−2)は1,2−ビニル結合とニトロン基との反応を表す。また、式(4−1)および(4−2)はブタジエンが1,3−ブタジエンの場合の反応を表すものであるが、ブタジエンが1,3−ブタジエン以外の場合も同様の反応により五員環を与える。
【0041】
未変性ブタジエンゴムを変性するために使用するカルボキシニトロンの量(以下、「CPN量換算値」ともいう。)は、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して、0.3〜10質量部であることが好ましく、0.3〜3質量部であることが好ましい。CPN量換算値が上記範囲内にあることで、変性を効率的に行うことができる。
なお、例えば、100質量部のジエン系ゴム中に35質量部の変性ブタジエンゴムが含まれ、変性ブタジエンゴムが100質量部の未変性ブタジエンゴムと1質量部のカルボキシニトロンとを反応させることで得られたものである場合、35質量部の変性ブタジエンゴムのうち、変性ブタジエンゴムの合成に使用されたカルボキシニトロンは、0.35質量部(=35×(1/101))であるので、CPN量換算値は0.35質量部である。
【0042】
未変性ブタジエンゴムを変性する際に使用するカルボキシニトロンの量(仕込み量)は、未変性ブタジエンゴム100質量部に対して、0.3〜10質量部が好ましく、0.3〜5質量部がより好ましい。カルボキシニトロンの仕込み量が上記範囲にあることで、耐摩耗性がより優れたものとなる。
【0043】
変性ブタジエンゴムの変性率は、0.02〜4.0mol%であることが好ましく、0.10〜2.0mol%であることがより好ましい。また、上記変性率の下限値は、0.20mol%以上であることが好ましい。
ここで、変性率とは、未変性ブタジエンゴムが有するブタジエン(ブタジエン単位)に由来する全ての二重結合のうち、カルボキシニトロンによって変性された割合(mol%)を表し、例えばブタジエンが1,3−ブタジエンであれば、カルボキシニトロンによる変性によって上記式(4−1)または上記式(4−2)の構造が形成された割合(mol%)を表す。変性率は、例えば、変性前後のBRのNMR測定を行うことで求めることができる。
なお、本明細書において、変性率が100mol%の変性ブタジエンゴムもジエン系ゴムに該当するものとする。
【0044】
〔熱膨張性マイクロカプセル(B)〕
本発明のゴム組成物は、熱膨張性マイクロカプセルを含有する。熱膨張性マイクロカプセルは、熱により気化または膨張して気体を発生させる物質を内包した熱可塑性樹脂粒子からなる。ここで、熱膨張性マイクロカプセルは、上記物質の気化または膨張開始温度以上の温度(例えば、130〜190℃)で加熱することにより、熱可塑性樹脂からなる外殻中に気体が封入されたマイクロカプセルとなる。
熱膨張性マイクロカプセルの膨張前の粒子径は、5〜300μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。
【0045】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば(メタ)アクリロニトリルの重合体、および/または、(メタ)アクリロニトリル含有量の高い共重合体が好適に用いられる。共重合体である場合の他のモノマー(コモノマー)としては、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、スチレン系モノマー、(メタ)アクリレート系モノマー、酢酸ビニル、ブタジエン、ビニルピリジン、クロロプレン等のモノマーが用いられる。
なお、上記熱可塑性樹脂は、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアヌレート等の架橋剤で架橋可能にされていてもよい。架橋形態については、未架橋が好ましいが、熱可塑性樹脂としての性質を損なわない程度に部分的に架橋していてもよい。
上記熱膨張性マイクロカプセル中に含まれる熱により気化または膨張して気体を発生させる物質としては、具体的には、例えば、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ブタン、イソブタン、ヘキサン、石油エーテルなどの炭化水素類;塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロルエチレンなどの塩素化炭化水素;等のような液体、または、アゾジカーボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル、トルエンスルホニルヒドラジド誘導体、芳香族スクシニルヒドラジド誘導体等のような固体が挙げられる。
【0046】
このような熱膨張性マイクロカプセルとしては、市販品を用いてもよく、例えば、スウェーデンのEXPANCEL社製の商品名「エクスパンセル091DU−80」や「エクスパンセル092DU−120」、松本油脂製薬社製の商品名「マツモトマイクロスフェアーF−85」、「マツモトマイクロスフェアーF−100」、「マツモトマイクロスフェアーF−100D」等として入手可能である。
上記熱膨張性マイクロカプセルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
本発明においては、上記熱膨張性マイクロカプセルの含有量は、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して、0.5〜25質量部であり、1〜10質量部であるのが好ましい。熱膨張性マイクロカプセルの含有量が上記範囲内にあることで、氷上性能が優れたものとなる。
【0048】
〔架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)〕
本発明のゴム組成物は、架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)を含有することが好ましい。架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)と、後述する微粒子(D)と、を併用することにより、氷上性能がより優れたものとなる。
架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)としては、上記ジエン系ゴム(A)に相溶せず、架橋性を有するオリゴマーまたはポリマーであれば特に限定されない。
ここで、「(上記ジエン系ゴムに)相溶しない」とは、上記ジエン系ゴム(A)に包含される全てのゴム成分に対して相溶しないという意味ではなく、上記ジエン系ゴム(A)および上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)に用いる各々の具体的な成分が互いに非相溶であることをいう。
【0049】
上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)としては、例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、脂肪族系、飽和炭化水素系、アクリル系もしくは植物由来系の重合体または共重合体等が挙げられる。
【0050】
これらのうち、後述するオリゴマーまたはポリマー(d1)として脂肪族系の重合体または共重合体(例えば、液状ジエン系ポリマー)を好適に用いる観点から、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、アクリル系もしくは植物由来系の重合体または共重合体であるのが好ましい。
【0051】
ここで、上記ポリエーテル系の重合体または共重合体としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
また、上記ポリエステル系の重合体または共重合体としては、例えば、低分子多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等)と多塩基性カルボン酸(例えば、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)との縮合物(縮合系ポリエステルポリオール);ラクトン系ポリオール;等が挙げられる。
また、上記ポリオレフィン系の重合体または共重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体(EPR、EPDM)、ポリブチレン、ポリイソブチレン、水添ポリブタジエン等が挙げられる。
また、上記ポリカーボネート系の重合体または共重合体としては、例えば、ポリオール化合物(例えば、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等)とジアルキルカーボネートとのエステル交換反応により得られるもの等が挙げられる。
また、上記アクリル系の重合体または共重合体としては、例えば、アクリルポリオール;アクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアクリレートの単独ポリマー;これらアクリレートを2種以上組み合わせたアクリレート共重合体;等が挙げられる。
また、上記植物由来系の重合体または共重合体としては、例えば、ヒマシ油、大豆油などの植物油脂;ポリ乳酸などを改質したポリエステルポリオールなどから誘導される各種エラストマー;等が挙げられる。
【0052】
本発明においては、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)は、分子間で架橋することにより、タイヤの氷上性能がより良好となる理由から、水酸基、シラン官能基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、カルボキシ基、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1つ以上の反応性官能基を有しているのが好ましい。
ここで、上記シラン官能基は、いわゆる架橋性シリル基とも呼ばれ、その具体例としては、加水分解性シリル基;シラノール基;シラノール基をアセトキシ基誘導体、エノキシ基誘導体、オキシム基誘導体、アミン誘導体などで置換した官能基;等が挙げられる。
これらの官能基のうち、ゴムの加工時に上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)が適度に架橋され、タイヤの氷上性能がさらに良好となり、耐摩耗性もより良好となる理由から、シラン官能基、イソシアネート基、酸無水物基またはエポキシ基を有しているのが好ましく、中でも加水分解性シリル基またはイソシアネート基を有しているのがより好ましい。
【0053】
ここで、上記加水分解性シリル基としては、具体的には、例えば、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基等が挙げられる。
これらのうち、加水分解性と貯蔵安定性のバランスが良好となる理由から、アルコキシシリル基であるのが好ましく、具体的には、下記式(5)で表されるアルコキシシリル基であるのがより好ましく、メトキシシリル基、エトキシシリル基であるのがさらに好ましい。
【0054】
【化7】
(式中、R
1は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R
2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、aは1〜3の整数を表す。aが2または3の場合、複数のR
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、aが1の場合、複数のR
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0055】
また、上記イソシアネート基は、ポリオール化合物(例えば、ポリカーボネート系ポリオールなど)の水酸基とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とを反応させた際に残存するイソシアネート基のことである。
なお、上記ポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されず、その具体例としては、TDI(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI))、MDI(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI))、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H
6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)などの脂環式ポリイソシアネート;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;等が挙げられる。
【0056】
なお、本発明においては、反応性官能基として水酸基を有する架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)を用いる場合、上記ジエン系ゴム(A)に配合する前に、予めイソシアネート化合物等により架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)の一部あるいは全部を架橋させておくか、イソシアネート化合物等の架橋剤を予めゴムに配合しておくことが好ましい。
【0057】
本発明においては、上記反応性官能基は、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)の少なくとも主鎖の末端に有しているのが好ましく、主鎖が直鎖状である場合は1.5個以上有しているのが好ましく、2個以上有しているのがより好ましい。一方、主鎖が分岐している場合は3個以上有しているのが好ましい。
【0058】
また、本発明においては、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)の重量平均分子量または数平均分子量は、上記ジエン系ゴム(A)への分散性やゴム組成物の混練加工性が良好となり、さらに後述する微粒子(D)を上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)中で調製する際の粒径や形状の調整が容易となる理由から、300〜30000であるのが好ましく、500〜25000であるのがより好ましい。
ここで、重量平均分子量および数平均分子量は、いずれもゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
【0059】
上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)を含有する場合の含有量は、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して0.3〜30質量部であることが好ましく、0.5〜25質量部であるのがより好ましく、1〜15質量部であるのがさらに好ましい。
【0060】
〔微粒子(D)〕
本発明のゴム組成物は、平均粒子径が1〜200μmの三次元架橋した微粒子(D)を含有することが好ましい。上述したように、架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)と、微粒子(D)と、を併用することにより、氷上性能がより優れたものとなる。
上記微粒子(D)の平均粒子径は、タイヤの表面が適度に粗くなり、氷上性能がより良好となる理由から、平均粒子径は1〜50μmであるのが好ましく、5〜40μmであるのがより好ましい。
ここで、平均粒子径とは、レーザー顕微鏡を用いて測定した円相当径の平均値をいい、例えば、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置LA−300(堀場製作所社製)、レーザー顕微鏡VK−8710(キーエンス社製)などで測定することができる。
【0061】
上記微粒子(D)を含有する場合の含有量は、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して0.1〜12質量部であることが好ましく、0.3〜10質量部であるのがより好ましく、0.5〜10質量部であるのがさらに好ましい。
上記微粒子(D)を所定量含有することにより、氷上性能が良好となる。上記微粒子(D)の弾性により局所的にかかる歪みが分散され、応力も緩和されるため、氷上性能が向上したと考えられる。
【0062】
また、本発明においては、上記微粒子(D)は、タイヤの氷上性能がより良好となる理由から、予め上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)中において、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)と相溶しないオリゴマーまたはポリマー(d1)を三次元架橋させた微粒子であるのが好ましい。これは、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)が上記微粒子(D)の溶媒として機能するとともに、これらの混合物をゴム組成物に配合する際に、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)および上記微粒子(D)のゴム組成物における分散性が向上するためと考えられる。
ここで、「(上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)と)相溶しない」とは、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)に包含される全ての成分に対して相溶しないという意味ではなく、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)および上記オリゴマーまたはポリマー(d1)に用いる各々の具体的な成分が互いに非相溶であることをいう。
【0063】
上記オリゴマーまたはポリマー(d1)としては、例えば、ポリカーボネート系、脂肪族系、飽和炭化水素系、アクリル系もしくは植物由来系の重合体または共重合体等が挙げられる。
ここで、脂肪族系の重合体または共重合体としては、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体などの液状ジエン系ポリマー;クロロプレンゴム;ブチルゴム;ニトリルゴム;これらの一部水添物や後述する反応性官能基を有する変成物;等が挙げられる。
また、飽和炭化水素系の重合体または共重合体としては、例えば、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、エチレンプロピレン、エピクロルヒドリン、塩素化ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレン、水素化ニトリルゴム、ポリイソブチレン、アクリルゴム等が挙げられる。
また、上記ポリカーボネート系の重合体または共重合体としては、例えば、ポリオール化合物(例えば、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等)とジアルキルカーボネートとのエステル交換反応により得られるもの等が挙げられる。
また、アクリル系の重合体または共重合体としては、例えば、アクリルポリオール;アクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアクリレートの単独ポリマー;これらアクリレートを2種以上組み合わせたアクリレート共重合体;等が挙げられる。
また、植物由来系の重合体または共重合体としては、例えば、ヒマシ油、大豆油などの植物油脂;ポリ乳酸などを改質したポリエステルポリオールなどから誘導される各種エラストマー;等が挙げられる。
【0064】
これらのうち、上記オリゴマーまたはポリマー(d1)は、脂肪族系の重合体または共重合体であるのが好ましく、タイヤの氷上性能および耐摩耗性がより良好となる理由から、液状ジエン系ポリマーであるのがより好ましい。
ここで、液状ポリイソプレンの市販品としては、例えば、クラプレンLIR−30、クラプレンLIR−50(以上、クラレ社製)、Poly ip(出光興産社製)等が挙げられる。
また、液状ポリブタジエンとしては、クラプレンLBR−305(クラレ社製)などのホモポリマータイプ;Poly bd(出光興産社製)などの1,2−結合型ブタジエンと1,4−結合型ブタジエンとのコポリマータイプ;クラプレンL−SBR−820(クラレ社製)などのエチレンと1,4−結合型ブタジエンと1,2−結合型ブタジエンとのコポリマータイプ;等が挙げられる。
【0065】
本発明においては、上記オリゴマーまたはポリマー(d1)は、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)中において上記オリゴマーまたはポリマー(d1)のみを三次元架橋させることができる理由から、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)が有する上述した反応性官能基と異なり、かつ、反応しない、水酸基、シラン官能基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、カルボキシ基、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1つ以上の反応性官能基を有しているのが好ましい。
ここで、上記シラン官能基は、いわゆる架橋性シリル基とも呼ばれ、その具体例としては、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)が有するシラン官能基と同様、例えば、加水分解性シリル基;シラノール基;シラノール基をアセトキシ基誘導体、エノキシ基誘導体、オキシム基誘導体、アミン誘導体などで置換した官能基;等が挙げられる。
なお、上記オリゴマーまたはポリマー(d1)を三次元架橋させた後においては、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)は、上記オリゴマーまたはポリマー(d1)と同一の反応性官能基(例えば、カルボキシ基、加水分解性シリル基など)を有していてもよく、既に有している官能性官能基を上記オリゴマーまたはポリマー(d1)と同一の反応性官能基に変成してもよい。
これらの官能基のうち、上記オリゴマーまたはポリマー(d1)の三次元架橋が容易に進行する理由から、水酸基、シラン官能基、カルボキシ基または酸無水物基を有しているのが好ましく、カルボキシ基または酸無水物基を有しているのがより好ましい。
ここで、カルボキシ基を有している液状ポリイソプレンの市販品としては、例えば、クラプレンLIR−410(イソプレン−マレイン酸モノメチルエステル変性イソプレン共重合体、数平均分子量:25000、クラレ社製)等が挙げられ、酸無水物基を有している液状ポリイソプレンの市販品としては、例えば、クラプレンLIR−403(イソプレン−無水マレイン酸変性イソプレン共重合体、数平均分子量:34000、クラレ社製)等が挙げられる。
【0066】
本発明においては、上記反応性官能基は、上記オリゴマーまたはポリマー(d1)の少なくとも主鎖の末端に有しているのが好ましく、主鎖が直鎖状である場合は1.5個以上有しているのが好ましく、2個以上有しているのがより好ましい。一方、主鎖が分岐している場合は3個以上有しているのが好ましい。
【0067】
また、本発明においては、上記オリゴマーまたはポリマー(d1)の重量平均分子量または数平均分子量は特に限定されないが、微粒子(D)の粒子径と架橋密度が適度になり、タイヤの氷上性能がより良好になる理由から、1000〜100000であるのが好ましく、3000〜60000であるのがより好ましい。
ここで、重量平均分子量または数平均分子量は、いずれもゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
【0068】
(微粒子(D)の調製方法)
上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)中で上記オリゴマーまたはポリマー(d1)を三次元架橋させ微粒子(D)を調製する方法は、例えば、上記オリゴマーまたはポリマー(d1)が有する上記反応性官能基を利用して三次元架橋する方法等が挙げられ、具体的には、上記反応性官能基を有する上記オリゴマーまたはポリマー(d1)と、水、触媒および上記反応性官能基と反応する官能基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分(d2)と、を反応させて三次元架橋させる方法等が挙げられる。
【0069】
ここで、上記成分(d2)の水は、上記オリゴマーまたはポリマー(d1)が加水分解性シリル基、イソシアネート基、酸無水物基を反応性官能基として有している場合に好適に用いることができる。
【0070】
また、上記成分(d2)の触媒としては、例えば、シラノール基の縮合触媒(シラノール縮合触媒)等が挙げられる。
上記シラノール縮合触媒としては、具体的には、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオレート、ジブチル錫ジアセテート、テトラブチルチタネート、オクタン酸第一錫等が挙げられる。
【0071】
また、上記成分(d2)の上記反応性官能基と反応する官能基を有する化合物としては、例えば、水酸基含有化合物、シラノール化合物、ヒドロシラン化合物、ジイソシアネート化合物、アミン化合物、オキサゾリジン化合物、エナミン化合物、ケチミン化合物等が挙げられる。
【0072】
上記水酸基含有化合物は、上記オリゴマーまたはポリマー(d1)がイソシアネート基、酸無水物基を反応性官能基として有している場合に好適に用いることができる。
上記水酸基含有化合物としては、1分子中に水酸基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格等について限定されず、例えば、低分子多価アルコール類、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、その他のポリオール、これらの混合ポリオール等が挙げられる。
【0073】
上記シラノール化合物は、上記オリゴマーまたはポリマー(d1)がシラン官能基を反応性官能基として有している場合に好適に用いることができる。
上記シラノール化合物としては、具体的には、例えば、tert−ブチルジメチルシラノール、ジフェニルメチルシラノール、シラノール基を有するポリジメチルシロキサン、シラノール基を有する環状ポリシロキサン等が挙げられる。
【0074】
上記ヒドロシラン化合物は、SiH基を有する化合物であり、上記オリゴマーまたはポリマー(d1)がアリル基を反応性官能基として有している場合に好適に用いることができる。
上記ヒドロシラン化合物としては、具体的には、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサン、1,3,5,7,8−ペンタメチルペンタシクロシロキサン等が挙げられる。
【0075】
上記ジイソシアネート化合物は、上記オリゴマーまたはポリマー(d1)が水酸基を反応性官能基として有している場合に好適に用いることができる。
上記ジイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、TDI(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI))、MDI(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI))、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;等が挙げられる。
【0076】
上記アミン化合物は、上記オリゴマーまたはポリマー(d1)がイソシアネート基、カルボキシ基、酸無水物基、エポキシ基等を反応性官能基として有している場合に好適に用いることができる。
上記アミン化合物としては、1分子中にアミノ基を有する化合物であれば、その分子量および骨格等について限定されず、例えば、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミンなどの第1級アミン;ジブチルアミンなどの第2級アミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、キシリレンジアミンなどのポリアミン;等が挙げられる。
【0077】
上記オキサゾリジン化合物、上記エナミン化合物および上記ケチミン化合物は、上記オリゴマーまたはポリマー(d1)がイソシアネート基、酸無水物基、エポキシ基等を反応性官能基として有している場合に好適に用いることができる。
これらの化合物としては、具体的には、例えば、潜在性硬化剤として従来公知のものを用いることができ、中でも、オキサゾリジン化合物および/またはケチミン化合物を用いるのが好ましい。
【0078】
上記オキサゾリジン化合物は、酸素と窒素を含む飽和5員環であるオキサゾリジン環を1分子中に1つ以上有する化合物であれば特に限定されず、その具体例としては、N−ヒドロキシアルキルオキサゾリジン、オキサゾリジンシリルエーテル、カーボネートオキサゾリジン、エステルオキサゾリジン等が挙げられる。
このようなオキサゾリジン化合物としては、ハードナーOZ(エステルオキサゾリジン;住化バイエルウレタン社製)等の市販品を使用することもできる。
【0079】
上記ケチミン化合物は、加水分解により、活性水素基を含有する化合物として第1級アミンを生成する化合物である。なお、本発明においては、ケトンまたはアルデヒドとアミンとから導かれるC=N結合(ケチミン結合)を有する化合物をケチミンと称するため、ケチミンは−HC=N結合を有するアルジミンも含むものとする。
ケチミンとしては、例えば、ケチミン結合の炭素原子または窒素原子の少なくとも一方の原子のα位に、分岐炭素原子または環員炭素原子が結合した構造を有するものが挙げられる。環員炭素原子としては、例えば、芳香環を構成する炭素原子、脂環を構成する炭素原子が挙げられる。
具体的なケチミンとしては、例えば、(1)ポリアミンとカルボニル化合物との反応物であるケチミン、(2)アミノアルコキシシランとカルボニル化合物との反応物であるケイ素含有ケチミンを挙げることができる。
このようなケチミン化合物としては、jERキュア H3(三菱化学社製)、KBE−9103(信越化学工業社製)等の市販品を使用することもできる。
【0080】
本発明においては、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)中で上記オリゴマーまたはポリマー(d1)を三次元架橋させて微粒子(D)を調製する際に、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。
上記溶媒の使用態様としては、上記オリゴマーまたはポリマー(d1)に良溶媒となり、かつ、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)の貧溶媒となる可塑剤、希釈剤、溶剤を用いる態様、および/または、上記記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)の良溶媒となり、かつ、上記オリゴマーまたはポリマー(d1)に貧溶媒となる可塑剤、希釈剤、溶剤を用いる態様が挙げられる。
このような溶媒としては、具体的には、例えば、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、n−オクタン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素;キシレン、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;α−ピネン、β−ピネン、リモネンなどのテルペン系有機溶剤等が挙げられる。
【0081】
また、本発明においては、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)中で上記オリゴマーまたはポリマー(d1)を三次元架橋させて微粒子(D)を調製する際に、界面活性剤、乳化剤、分散剤、シランカップリング剤等の添加剤を用いて調製するのが好ましい。
【0082】
〔その他の成分〕
本発明のゴム組成物は、上記以外のその他の成分を含有することが好ましい。その他の成分としては、カーボンブラックおよび/または白色充填剤、シランカップリング剤が挙げられる。
【0083】
<カーボンブラックおよび/または白色充填剤>
(カーボンブラック)
上記カーボンブラックとしては、具体的には、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPE、SRF等のファーネスカーボンブラックが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記カーボンブラックは、耐摩耗性がより良好となる理由から、CTAB吸着比表面積が60〜180m
2/gであるのが好ましく、80〜160m
2/gであるのがより好ましく、80〜130m
2/gであるのがさらに好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、カーボンブラック表面への臭化n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの吸着量をJIS K6217−3:2001「第3部:比表面積の求め方−CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0084】
(白色充填剤)
上記白色充填剤としては、具体的には、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、タイヤの氷上性能がより良好となる理由から、シリカが好ましい。
【0085】
シリカとしては、具体的には、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、タイヤの氷上性能がさらに良好となり、耐摩耗性もより向上する理由から、湿式シリカが好ましい。
【0086】
上記シリカは、タイヤのウェット性能および転がり抵抗が良好となる理由から、CTAB吸着比表面積が50〜300m
2/gであるのが好ましく、70〜250m
2/gであるのがより好ましく、90〜200m
2/gであるのがより好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面への臭化n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの吸着量をJIS K6217−3:2001「第3部:比表面積の求め方−CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0087】
本発明においては、上記カーボンブラックおよび/または白色充填剤の含有量は、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して、カーボンブラックおよび白色充填剤の合計で30〜100質量部であり、40〜90質量部であるのが好ましく、45〜80質量部であるのがより好ましい。
また、上記カーボンブラックおよび上記白色充填剤を併用する場合、上記白色充填剤の含有量は、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して、5〜85質量部であるのが好ましく、15〜75質量部であるのがより好ましい。
【0088】
<シランカップリング剤>
本発明のゴム組成物は、上述した白色充填剤(特に、シリカ)を含有する場合、タイヤの補強性能を向上させる理由から、シランカップリング剤を含有するのが好ましい。
上記シランカップリング剤を配合する場合の含有量は、上記白色充填剤100質量部に対して、0.1〜20質量部であるのが好ましく、4〜12質量部であるのがより好ましい。
【0089】
上記シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
これらのうち、補強性改善効果の観点から、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドおよび/またはビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用することが好ましく、具体的には、例えば、Si69[ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド;エボニックデグッサ社製]、Si75[ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド;エボニックデグッサ社製]等が挙げられる。
【0091】
さらに、本発明のゴム組成物は、その他の成分として、炭酸カルシウムなどのフィラー;硫黄等の加硫剤;スルフェンアミド系、グアニジン系、チアゾール系、チオウレア系、チウラム系などの加硫促進剤;酸化亜鉛、ステアリン酸などの加硫促進助剤;ワックス;アロマオイル;老化防止剤;可塑剤;等のタイヤ用ゴム組成物に一般的に用いられている各種の添加剤を配合することができる。
【0092】
〔ゴム組成物の製造方法〕
本発明のゴム組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等)を用いて、混練する方法等が挙げられる。
また、本発明のゴム組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0093】
[スタッドレスタイヤ]
本発明のスタッドレスタイヤ(以下、単に「本発明のタイヤ」ともいう。)は、上述した本発明のゴム組成物を、タイヤトレッドに用いたスタッドレスタイヤである。
図1に、本発明のスタッドレスタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの模式的な部分断面図を示すが、本発明のタイヤは
図1に示す態様に限定されるものではない。
【0094】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3は本発明のタイヤ用ゴム組成物から構成されるトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
【0095】
本発明のタイヤは、例えば、本発明のゴム組成物に用いられたジエン系ゴム、加硫または架橋剤、加硫または架橋促進剤の種類およびその配合割合に応じた温度で加硫または架橋し、タイヤトレッド部を形成することにより製造することができる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例を用いて、本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0097】
<カルボキシニトロンの合成>
2Lナスフラスコに、40℃に温めたメタノール(900mL)を入れ、ここに、下記式(b−1)で表されるテレフタルアルデヒド酸(30.0g)を加えて溶かした。この溶液に、下記式(a−1)で表されるフェニルヒドロキシアミン(21.8g)をメタノール(100mL)に溶かしたものを加え、室温で19時間撹拌した。撹拌終了後、メタノールからの再結晶により、下記式(c−1)で表されるニトロン化合物(カルボキシニトロン)を得た(41.7g)。収率は86%であった。
【0098】
【化8】
【0099】
<ジフェニルニトロンの合成>
300mLナスフラスコに、下記式(b−2)で表されるベンズアルデヒド(42.45g)およびエタノール(10mL)を入れ、ここに、下記式(a−1)で表されるフェニルヒドロキシアミン(43.65g)をエタノール(70mL)に溶かしたものを加え、室温で22時間撹拌した。撹拌終了後、エタノールからの再結晶により、下記式(c−2)で表されるジフェニルニトロンを白色の結晶として得た(65.40g)。収率は83%であった。
【0100】
【化9】
【0101】
<カルボキシ変性BR1(変性BR1)の合成>
120℃のバンバリーミキサーにBR(商品名「Nipol BR1220」、日本ゼオン社製)を投入して2分間素練りを行った。その後、上述のとおり合成したカルボキシニトロンをBR100質量部に対して1質量部投入し、160℃で5分間混合することで、BRをカルボキシニトロンによって変性した。得られたカルボキシ変性BR1を変性BR1とする。
得られた変性BR1についてNMR測定を行い、変性率を求めたところ、変性BR1の変性率は0.17mol%であった。変性率は、具体的には以下のとおり求めた。すなわち、変性前後のBRについて、CDCl
3を溶媒とした
1H−NMR測定(CDCl
3、400MHz、TMS)により、8.08ppm付近(カルボキシ基に隣接する2つのプロトンに帰属する)のピーク面積を測定し、変性率を求めた。なお、変性BR1の
1H−NMR測定は、変性BR1をトルエンに溶解して、メタノールに沈殿させる精製を2回繰り返した後に、減圧下で乾燥したサンプルを用いて測定した。
【0102】
<カルボキシ変性BR2(変性BR2)の合成>
カルボキシニトロンをBR100質量部に対して2質量部投入した以外は、変性BR1の合成と同様にして、BRをカルボキシニトロンによって変性した。得られたカルボキシ変性BR2を変性BR2とする。
得られた変性BR2についてNMR測定を行い、変性率を求めたところ、変性BR2の変性率は0.34mol%であった。変性率の求め方は上述のとおりである。
【0103】
<ジフェニル変性BR1(変性BR3)の合成>
120℃のバンバリーミキサーにBR(商品名「Nipol BR1220」、日本ゼオン社製)を投入して2分間素練りを行った。その後、上述のとおり合成したジフェニルニトロンをBR100質量部に対して1質量部投入し、160℃で5分間混合することで、BRをジフェニルニトロンによって変性した。得られたジフェニル変性BR1を変性BR3とする。
得られた変性BR3についてNMR測定を行い、変性率を求めたところ、変性BR3の変性率は0.19mol%であった。変性率の求め方は上述のとおりである。
【0104】
<微粒子含有架橋性ポリマーの調製>
マレイン酸変性液状ポリイソプレンゴム(クラプレンLIR−403、数平均分子量:34000、クラレ社製)400gと、プロセスオイル(ダイアナプロセスオイルPS−32、出光興産社製)120gと、オキサゾリジン化合物(ハードナーOZ、住化バイエルウレタン社製)16gと、加水分解性シリル基末端ポリオキシプロピレングリコール(MSポリマーS810、カネカ社製)1600gと、水5gとを、同芯二軸ミキサー(井上製作所社製)で、低速36rpm、高速ディスパー600rpmにて、1時間撹拌した。
次いで、これに、プルロニック型非イオン界面活性剤(ニューポールPE−64、三洋化成工業社製)6gと、アミノシラン(A1110、日本ユニカー社製)6gとを添加し、さらに、低速36rpm、高速ディスパー2000rpmで30分間撹拌して、ペースト状生成物(以下、「微粒子含有架橋性ポリマー」ともいう。)を調製した。
このペースト状生成物を、レーザー顕微鏡VK−8710(株式会社キーエンス製)を用いて観察すると、粒子径5〜40μmの微粒子(骨格:ポリイソプレン,架橋:アミドエステル結合)が生成し、加水分解性シリル基末端ポリオキシプロピレングリコール中に分散していることが確認できた。また、この画像を画像処理し、3Dプロファイリングした結果、ペースト状生成物中の微粒子の含有量(質量%)は約22%であった。
【0105】
<タイヤトレッド用ゴム組成物の調製>
下記第1表および第2表に示される成分を、下記第1表および第2表に示される割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記第1表および第2表に示される成分のうち硫黄および加硫促進剤を除く成分を、80℃のバンバリーミキサーで5分間混合した。次に、ロールを用いて、硫黄および加硫促進剤を混合し、実施例および比較例のタイヤトレッド用ゴム組成物(以下、「タイヤトレッド用ゴム組成物」を単に「ゴム組成物」ともいう。)を得た。
【0106】
<加硫ゴムシートの作製>
得られた各ゴム組成物(未加硫)を、金型(15cm×15cm×0.2cm)中、160℃で15分間プレス加硫して、加硫ゴムシートを作製した。
【0107】
<氷上性能>
作製した各加硫ゴムシートについて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)により、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度0℃の条件で、損失正接(tanδ(0℃))を測定した。
得られた結果は、下記第1表については比較例1の値を100とする指数で表し、下記第2表については比較例4の値を100とする指数で表し、「氷上性能」としてそれぞれ下記第1表〜第2表に示した。この指数が大きいほどtanδ(0℃)が大きく、氷上性能が優れることを意味する。
【0108】
<耐摩耗性>
ランボーン摩耗試験機(岩本製作所社製)を用いて、JIS K 6264−2:2005に準拠し、付加力4.0kg/cm
3(=39N)、スリップ率30%、摩耗試験時間4分、試験温度を室温の条件で摩耗試験を行い、摩耗質量を測定した。
試験結果は、以下の式により、下記第1表については比較例1の測定値を100とする指数(インデックス)で表し、下記第2表については比較例4の測定値を100とする指数で表し、「耐摩耗性」としてそれぞれ下記第1表〜第2表に示した。指数(インデックス)が大きいほど摩耗量が少なく、耐摩耗性が良好である。
指数=(比較例1または比較例4の試験片の摩耗質量/測定値)×100
【0109】
第1表および第2表中、ニトロン換算量は、ジエン系ゴム100質量部に対する、変性ポリマー(変性BR1、変性BR2または変性BR3)の合成に使用されたニトロン化合物の質量部を表す。なお、変性にカルボキシニトロンを用いた場合には、CPN量として示し、上述したCPN量換算値と同義である。また、変性にジフェニルニトロンを用いた場合には、DPN量として示した。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
上記第1表および第2表に示されている各成分の詳細は以下のとおりである。
・NR:天然ゴム、STR20
・BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製「Nipol BR1220」
・変性BR1:上述の通り合成した変性BR1(カルボキシ変性BR1)
・変性BR2:上述の通り合成した変性BR2(カルボキシ変性BR2)
・変性BR3:上述の通り合成した変性BR3(ジフェニル変性BR1)
・熱膨張性マイクロカプセル:マツモトマイクロスフェアーF−100D(松本油脂製薬社製)
・微粒子含有架橋性ポリマー:上述の通り合成
・カーボンブラック:ショウブラックN339(CTAB吸着比表面積:90m
2/g、キャボットジャパン社製)
・シリカ:ULTRASIL VN−3(CTAB吸着比表面積:155m
2/g、エボニックデグッサ社製)
・シランカップリング剤:Si69(エボニックデグッサ社製)
・ステアリン酸:ステアリン酸YR(日油社製)
・ワックス:パラフィンワックス(大内新興化学工業社製)
・老化防止剤:SANTOFLEX 6PPD(Soltia Europe社製)、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン
・オイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・亜鉛華:亜鉛華3号(正同化学社製)
・加硫促進剤:サンセラー CM−G(三新化学社製)
・硫黄:油処理硫黄(軽井沢精錬所社製)
【0113】
第1表の評価結果の通り、熱膨張性マイクロカプセルおよび微粒子含有架橋性ポリマーを含む系において、カルボキシ変性ブタジエンゴムを用いると(実施例1〜3)、カルボキシ変性ブタジエンゴムを含有しない場合(比較例1〜3)と比較して、氷上性能および耐摩耗性が優れたものになることが示された。
実施例1と実施例2との対比から、カルボキシ変性ブタジエンゴムの含有量がジエン系ゴムの全質量に対して50質量%以上であることで、耐摩耗性がより優れたものになることが示された。
実施例2と実施例3との対比から、カルボキシ変性ブタジエンゴムの変性率が0.2mol%以上であることで、氷上性能および耐摩耗性がより優れたものになることが示された。
【0114】
第2表の評価結果の通り、熱膨張性マイクロカプセルを含み微粒子含有架橋性ポリマーを含まない系において、カルボキシ変性ブタジエンゴムを用いると(実施例4)、カルボキシ変性ブタジエンゴムを含有しない場合(比較例4)と比較して、氷上性能および耐摩耗性が優れたものになることが示された。
【課題】本発明の課題は、氷上性能および耐摩耗性のいずれにも優れたスタッドレスタイヤを作製することができるタイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いたスタッドレスタイヤを提供することである。
【解決手段】本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、変性ブタジエンゴムを含むジエン系ゴム(A)100質量部と、熱膨張性マイクロカプセル(B)0.5〜25質量部と、を含有する。上記変性ブタジエンゴムが、未変性ブタジエンゴムを、カルボキシ基を有するニトロン化合物によって変性することで得られる。上記ジエン系ゴム(A)中の上記変性ブタジエンゴムの含有量が、20〜65質量%である。