(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の鋼板部材同士を重ね合せ部で接合し、前記複数の鋼板部材の少なくとも一つがマルテンサイト組織を含み、かつスポット溶接によって母材よりも硬さが低いHAZ軟化部が形成される鋼板からなる重ね合せ部の溶接方法であって、
前記重ね合せ部にナゲットを有するスポット溶接部を形成する抵抗スポット溶接工程と、レーザビームを照射して、前記ナゲットと前記ナゲットの端から外方に3mm以上離れた位置との間に想定応力方向との交差角度θが±30°以内で交差して前記ナゲットの端を横切る前記溶融凝固部を形成する際に、前記溶融凝固部の深さを前記ナゲットの端から外方に1mm離れた位置において前記マルテンサイト組織を含む鋼板部材にそれぞれの板厚の50%以上に形成する溶融凝固部形成工程とを備えることを特徴とする重ね合せ部の溶接方法。
複数の鋼板部材同士を重ね合せ部で接合し、前記複数の鋼板部材の少なくとも一つがマルテンサイト組織を含み、引張強さ980MPa以上であり、かつスポット溶接によって母材よりも硬さが低いHAZ軟化部が形成される鋼板からなる重ね合せ部の溶接方法であって、
前記重ね合せ部にナゲットを有するスポット溶接部を形成する抵抗スポット溶接工程と、レーザビームを照射して、前記ナゲットと前記ナゲットの端から外方に3mm以上離れた位置との間に想定応力方向との交差角度θが±30°以内で交差して前記ナゲットの端を横切る前記溶融凝固部を形成する際に、前記溶融凝固部の深さを前記ナゲットの端から外方に1mm離れた位置において前記マルテンサイト組織を含む鋼板部材にそれぞれの板厚の50%以上に形成する溶融凝固部形成工程とを備えることを特徴とする重ね合せ部の溶接方法。
複数の鋼板部材同士を重ね合せ部で接合され、前記複数の鋼板部材の少なくとも一つがマルテンサイト組織を含み、かつスポット溶接によって母材よりも硬さが低いHAZ軟化部が形成される鋼板からなる重ね溶接部材であって、
前記重ね合せ部は、ナゲットを有するスポット溶接部が形成され、前記ナゲットと前記ナゲットの端から外方に3mm以上離れた位置との間には、想定応力方向との交差角度θが±30°以内で交差して前記ナゲットに入り込んで前記ナゲットの端を横切るとともに前記ナゲットの端から外方に1mm離れた位置における深さが前記マルテンサイト組織を含む鋼板部材のそれぞれの板厚の50%以上とされるレーザビーム照射による溶融凝固部が形成されていることを特徴とする重ね溶接部材。
複数の鋼板部材同士を重ね合せ部で接合され、前記複数の鋼板部材の少なくとも一つがマルテンサイト組織を含み、引張強さ980MPa以上であり、かつスポット溶接によって母材よりも硬さが低いHAZ軟化部が形成される鋼板からなる重ね溶接部材であって、
前記重ね合せ部は、ナゲットを有するスポット溶接部が形成され、前記ナゲットと前記ナゲットの端から外方に3mm以上離れた位置との間には、想定応力方向との交差角度θが±30°以内で交差して前記ナゲットに入り込んで前記ナゲットの端を横切るとともに前記ナゲットの端から外方に1mm離れた位置における深さが前記マルテンサイト組織を含む鋼板部材のそれぞれの板厚の50%以上とされるレーザビーム照射による溶融凝固部が形成されていることを特徴とする重ね溶接部材。
【背景技術】
【0002】
近年、鋼板から形成された複数の鋼板部材を用いて構成される構造物では、機能や使用環境に応じて鋼板部材同士を重ね合せた重ね合せ部に対して、抵抗スポット溶接によってナゲットを有するスポット溶接部を形成することで、複数の鋼板部材を接合して重ね溶接部材を構成することが広く行われている。
【0003】
例えば、自動車車体を構成するモノコックボディ(自動車用部品)は、衝突安全性の向上と燃費の向上とを両立するために、高強度鋼板を含む鋼板部材を重ね合せ、フランジ(重ね合せ部)を抵抗スポット溶接することが一般的に行われている。現在、自動車用の高強度鋼板として、引張強さ強度が980MPa級の高張力鋼板が広く用いられており、さらに引張強さ強度1200MPa級以上の高張力鋼板の適用も検討されている。
【0004】
また、重ね溶接部材の鋼板部材を成形する際に、プレス成形と焼入れとを同一型内で同時に行うホットスタンプを適用して引張強さ強度が1500MPa以上のホットスタンプを鋼板部材として製造する技術も進められている。このホットスタンプでは、鋼板を高温にして高延性の状態でプレス成形することから、引張強さ強度が1500MPa以上の高強度の鋼板部材を効率的に製造できるうえ、プレス成形後における寸法精度が向上する利点も得られる。
【0005】
また、例えば、耐錆性を要する構造物において、合金化溶融亜鉛めっき被膜もしくは溶融亜鉛めっき被膜が形成された亜鉛めっき鋼板を含む鋼板から形成された鋼板部材を重ね合せて、抵抗スポット溶接により重ね合せ部を接合する場合がある。例えば、モノコックボディを構成するアウタパネルは、合金化溶融亜鉛めっき被膜もしくは溶融亜鉛めっき被膜が形成された亜鉛めっき鋼板により形成されることが一般的である。
【0006】
上述のような、引張強さ強度1200MPa以上の高張力鋼板や高強度鋼板をホットスタンプにより成形した鋼板部材は、一般的に焼入れ組織を含んでいる。しかし、重ね合せ部を接合するスポット溶接部では、抵抗スポット溶接の熱によりナゲットの周囲の焼入れ組織が焼き戻されることにより焼入れ組織を含んだ母材より硬さが低い熱影響部(heat-affected zone)(以下、HAZという)が形成される。
【0007】
母材より硬さが低いHAZの軟化は、980MPa級鋼板においても発生し得るが、水冷機能を有する連続焼鈍設備で焼入れ組織を形成した引張強さ強度1200MPa以上の高張力鋼板やホットスタンプで成形したホットスタンプ材(高強度鋼板部材)のスポット溶接部で特に著しい。
例えば、1200MPa級の冷延鋼板では、母材はビッカース硬さが約390であるのに対し、HAZ最軟化部のビッカース硬さは約300である。すなわち、母材よりもビッカース硬さは約90低下する。
【0008】
図14は、ホットスタンプにより成形された引張強さ強度が1500MPa級のホットスタンプ材(高強度鋼板部材)101Pと、ホットスタンプにより成形された引張強さ強度が1500MPa級のホットスタンプ材(高強度鋼板部材)102Pとを重ね合せて、抵抗スポット溶接によりナゲット112を有するスポット溶接部110を形成した重ね合せ部を有する試験片100と、試験片100の断面図に示した破線に沿った位置(界面から鋼板の中央側に(板厚)/4の位置)に打点して測定したビッカース硬さ(JISZ2244)による硬さ分布の一例を示す図である。なお、符号112Aは、ビッカース硬さ測定位置におけるナゲット端を示している。ビッカース硬さは、荷重9.8N、ピッチ0.5mmで測定した。
【0009】
図14のグラフに示すように、ホットスタンプにより成形された1500MPa級のホットスタンプ材101Pと、ホットスタンプにより成形された1500MPa級のホットスタンプ材102Pとを重ね合せて形成した試験片100のビッカース硬さは、母材(ホットスタンプ材101P)のビッカース硬さが約450であるが、HAZ軟化部103の最軟化部103Aではビッカース硬さが約300である。すなわち、HAZ103の最軟化部103Aは母材(ホットスタンプ材101P)よりもビッカース硬さが約150低下している。
【0010】
そして、試験片100に引張荷重を負荷したところ、
図15A、
図15Bに示すように、ナゲット112の外方近傍のHAZ軟化部103を起点として破断した。
図15Aは、
図14に示す試験片100のホットスタンプ材101Pが破断した状況を鋼材表面から見た図であり、
図15BはHAZ軟化部103を起点として破断した状況の断面図である。
【0011】
このようなHAZ軟化は、抵抗スポット溶接の継手評価に用いられる引張せん断試験、および十字引張試験(JIS Z3137)の評価結果には影響しないが、
図15A、
図15Bに示すように、試験片100に引張荷重が負荷された場合に、HAZ軟化部103に局所的にひずみが集中してHAZ軟化部103に破断を生じる場合がある。
【0012】
このようなスポット溶接部のHAZ軟化部における破断は、引張強さ強度1200MPa以上の鋼板からなる鋼板部材(プレス成形品)において確認され、衝突時に高強度鋼板の優位性を充分に発揮できない可能性がある。
【0013】
例えば、Aピラー、Bピラー、ルーフレール、サイドシルといった自動車車体を構成する構造部材(重ね溶接部材)は、自動車が衝突した際にキャビン内の乗客を保護する必要がある。このため、複数の鋼板部材を重ね合せてフランジ(重ね合せ部)を抵抗スポット溶接により接合して筒状の閉断面を形成することで、衝突時のに塑性変形により破断が抑制されるを抑制する。
【0014】
しかしながら、例えば、米国道路安全保険協会(IIHS)のSUV側面衝突試験やEuro NCAPのポール側突試験といった厳しい衝突モードでは、スポット溶接部のHAZ軟化部にひずみが集中して破断起点となることで、高強度鋼板等を用いても所定の衝突性能を得ることが困難な場合がある。従って、高強度鋼板の性能を充分に発揮するために、これら1200MPa以上の高強度鋼板からなる鋼板部材を自動車車体の構造部材に適用する場合に、スポット溶接部のHAZ軟化部が破断起点となるのを抑制することが求められる。
【0015】
例えば、高強度鋼板を溶接して自動車用構造部材を形成する場合に、レーザ溶接とスポット溶接を併用することにより、溶接部の応力を緩和するとともに遅れ破壊を抑制する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0016】
また、溶接部の接合を向上する技術として、スポット溶接部に沿って金属材にレーザ溶接による連続溶接部を形成する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0017】
また、溶接部の接合を向上する技術として、スポット溶接部またはスポット溶接部の周囲にレーザ光を照射して、表面側鋼板に隣接する高板厚鋼板と表面側鋼板とをレーザ溶接する技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0018】
また、非特許文献1には、ホットスタンプにより形成されるAピラーにおける衝突による破断の危険がある部分を、ホットスタンプ時に行う熱処理によって母材の強度を低下することによって、抵抗スポット溶接が行われてもHAZ軟化を生じず、HAZ軟化部を起点とする構造部材の破断を防止する方法が開示されている。
【0019】
また、非特許文献2には、ホットスタンプにより形成されるBピラーのフランジ部を高周波加熱による焼戻しによって母材の強度を低下し、抵抗スポット溶接を行なってもHAZ軟化が生じず、HAZ軟化部を起点とする構造部材の破断を防止する方法が開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】本発明を適用したフランジの一例を示す概略図である。
【
図1B】本発明を適用した複数の鋼板部材を重ね合せた接合部の概略構成の一例を説明する図である。
【
図2A】本発明を1500MPa級のホットスタンプ材に適用した例を示す図である。
【
図2B】本発明を1500MPa級のホットスタンプ材に適用した例を示す図であり、
図2AにおけるI−I断面である。
【
図2C】
図2Aに示したスポット溶接部を鋼材表面から見た模式図であり、左半分がレーザービーム照射なしを、右半分が本発明を示している。
【
図3A】
図2Cにおける破線Aで示した部分の硬さ分布を示す図である。
【
図3B】
図2Cにおける破線Bで示した部分の硬さ分布を示す図である。
【
図3C】
図2Cにおける破線Cで示した部分の硬さ分布を示す図である。
【
図4A】本発明の効果の一例を説明する図であり、従来の抵抗スポット溶接による試験片である。
【
図4B】本発明の効果の一例を説明する図であり、本発明の溶接方法による試験片である。
【
図4C】本発明の効果の一例を説明する図であり、
図4A及び
図4Bで示した試験片における応力−歪線図である。
【
図5A】鋼板の組み合わせの第1の例に関し、スポット溶接部と溶融凝固部との関係を示す説明図である。
【
図5B】鋼板の組み合わせの第2の例に関し、スポット溶接部と溶融凝固部との関係を示す説明図である。
【
図5C】鋼板の組み合わせの第3の例に関し、スポット溶接部と溶融凝固部との関係を示す説明図である。
【
図5D】鋼板の組み合わせの第4の例に関し、スポット溶接部と溶融凝固部との関係を示す説明図である。
【
図6A】本発明に係る重ね溶接部材を、Bピラーに適用した例を示す図である。
【
図6B】本発明に係る重ね溶接部材を、Aピラー、Bピラー及びルーフレールに適用した例を示す図である。
【
図6C】本発明に係る重ね溶接部材を、Aピラー及びサイドシルに適用した例を示す図である。
【
図6D】本発明に係る重ね溶接部材を、バンパーレインフォースに適用した例を示す図である。
【
図7A】本発明に係るスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第1の例を示す概略図である。
【
図7B】本発明に係るスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第2の例を示す概略図である。
【
図7C】本発明に係るスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第3の例を示す概略図である。
【
図7D】本発明に係るスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第4の例を示す概略図である。
【
図7E】本発明によるスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第5の例を示す概略図である。
【
図7F】本発明によるスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第6の例を示す概略図である。
【
図7G】本発明によるスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第7の例を示す概略図である。
【
図7H】本発明によるスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第8の例を示す概略図である。
【
図7I】本発明によるスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第9の例を示す概略図である。
【
図7J】本発明によるスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第10の例を示す概略図である。
【
図7K】本発明によるスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第11の例を示す概略図である。
【
図7L】本発明によるスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第12の例を示す概略図である。
【
図8A】高強度鋼板と低強度鋼板とを重ね合せて、高強度鋼板の表面からレーザビームを照射して溶融凝固部形成する第1の例を説明する図である。
【
図8B】高強度鋼板と低強度鋼板とを重ね合せて、低強度鋼板の表面からレーザビームを照射して溶融凝固部を形成する第2の例を説明する図である。
【
図8C】高強度鋼板と低強度鋼板を重ね合せて、高強度鋼板の表面からレーザビームを照射して溶融凝固部を形成する第3の例を説明する図である。
【
図8D】高強度鋼板と高強度鋼板を重ね合せて、高強度鋼板の表面からレーザビームを照射して溶融凝固部を形成する第4の例を説明する図である。
【
図8E】低強度鋼板、高強度鋼板、低強度鋼板の順に重ね合せて、低強度鋼板の表面からレーザビームを照射して溶融凝固部を形成する第5の例を説明する図である。
【
図8F】低強度鋼板、高強度鋼板、低強度鋼板の順に重ね合せて、低強度鋼板の表面からレーザビームを照射して溶融凝固部を形成する第6の例を説明する図である。
【
図9A】スポット溶接部へのレーザ照射の影響を示す説明図であり、非めっきの高強度鋼板(1500MPa)と非めっきの低強度鋼板(440MPa)との重ね合せ部に形成したスポット溶接部と溶融凝固部とを示す図である。
【
図9B】スポット溶接部へのレーザ照射の影響を示す説明図であり、非めっきの高強度鋼板(1500MPa)と合金化溶融亜鉛めっきされた低強度鋼板(440MPa)との重ね合せ部に形成したスポット溶接部と溶融凝固部における穴あき欠陥の概略を示す図である。
【
図10】スポット溶接部の密着部を示す断面図である。
【
図11A】合金化溶融亜鉛めっきされた低強度鋼板と非めっきの高強度鋼板とを重ね合せて、高強度鋼板側からレーザビームを照射して溶融凝固部を形成する例を説明する図である。
【
図11B】合金化溶融亜鉛めっきされた低強度鋼板と、非めっきの高強度鋼板と、非めっきの低強度鋼板とを重ね合せて、非めっきの低強度鋼板側からレーザビームを照射して溶融凝固部を形成する例を説明する図である。
【
図11C】合金化溶融亜鉛めっきされた低強度鋼板と、表面に鉄亜鉛固溶相および酸化亜鉛層を有する高強度鋼板と、非めっきの低強度鋼板とを重ね合せて、非めっきの低強度鋼板側からレーザビームを照射して溶融凝固部を形成する例を説明する図である。
【
図11D】合金化溶融亜鉛めっきされた低強度鋼板と、非めっきの高強度鋼板と、非めっきの高強度鋼板とを重ね合せて、非めっきの高強度鋼板側からレーザビームを照射して溶融凝固部を形成する例を説明する図である。
【
図11E】合金化溶融亜鉛めっきされた低強度鋼板と、非めっきの低強度鋼板と、非めっきの高強度鋼板とを重ね合せて、非めっきの高強度鋼板側からレーザビームを照射して溶融凝固部を形成する例を説明する図である。
【
図11F】合金化溶融亜鉛めっきされた低強度鋼板と、非めっきの低強度鋼板と、非めっきの高強度鋼板とを重ね合せて、非めっきの高強度鋼板側からレーザビームを照射して溶融凝固を形成する例を説明する図である。
【
図12A】本発明に係る実施例1で用いた試験片を説明する図である。
【
図12B】本発明に係る実施例1の試験片の拡大図であり、引張荷重を負荷する方向を示す平面図である。
【
図12C】本発明に係る実施例1で用いた試験片の形状を示す説明図であり、
図12BにおけるII−II断面図である。
【
図13A】本発明に係る実施例2で用いた試験片を説明する図である。
【
図13B】本発明に係る実施例2の試験片の拡大図であり、引張荷重を負荷する方向を示す平面図である。
【
図13C】本発明に係る実施例2で用いた試験片の形状を示す説明図であり、
図13BにおけるIII−III断面図である。
【
図14】1500MPa級のホットスタンプ材のスポット溶接部の硬さ分布の一例を示すグラフである。
【
図15A】
図14に示すスポット溶接部に引張荷重を負荷してHAZ軟化部を起点に破断した状況を鋼材表面から見た図である。
【
図15B】
図14に示すスポット溶接部に引張荷重を負荷してHAZ軟化部を起点に破断した状況を示す密着部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、複数鋼板部材が接合される重ね溶接部材において、重ね合せ部のスポット溶接部がHAZ軟化部において破断するのを抑制する技術を鋭意研究した。その結果、スポット溶接部にレーザビームを照射して、ナゲットからナゲットの端を横切ってHAZの最軟化部より外方まで溶融凝固部を形成することでスポット溶接部の強度を向上させることができるとの知見を得た。
【0033】
本発明は、複数の鋼板部材を重ね合せて、抵抗スポット溶接により接合する場合に、複数の鋼板部材のうち、少なくとも一つの鋼板部材がマルテンサイト組織を含んでいる場合に、スポット溶接部のナゲットからナゲットの端を横切ってレーザビームを照射して溶融凝固部を形成することにより、スポット溶接部のHAZ軟化部が硬化されて、HAZにおける破断が抑制され、高強度鋼板やホットスタンプ材の強度を充分に発揮させるという知見に基づくものである。ここでいう、マルテンサイト組織を含む高強度鋼板には、例えば、980MPa級や1200MPa級以上の高強度鋼板からなる鋼板部材(例えば、プレス成形品)やホットスタンプで成形されてマルテンサイト組織が生じたホットスタンプ材が含まれる。
【0034】
また、高強度鋼板から形成された鋼板部材やホットスタンプ材を含んでいるかどうかに関わらず、複数の鋼板部材を重ね合せて、抵抗スポット溶接により接合スポット溶接部にレーザビームを照射して、ナゲットから外方に溶融凝固部を形成する場合に、少なくとも一つの鋼板部材が、合金化溶融亜鉛めっき被膜もしくは溶融亜鉛めっき被膜が形成された亜鉛めっき鋼板から形成されている場合は、溶融凝固部の深さをスポット溶接部の密着面と対応する部位において合金化溶融亜鉛めっき被膜もしくは溶融亜鉛めっき被膜が形成された密着面よりも浅く形成することが非常に有効であるとの知見を得た。
【0035】
以下、上述の知見に基づいてなされた本発明を、以下に示す一実施形態及び参考例にしたがって説明する。
まず、
図1A〜
図8Fを参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0036】
(第1実施形態)
図1Aは、本発明を適用したフランジの一例を示す概略図であり、
図1Bは、本発明を適用した複数の鋼板部材を重ね合せた接合部の概略構成の一例を説明する図である。
【0037】
図1Aは、フランジ(重ね合せ部)1の延在する方向に抵抗スポット溶接により複数のスポット溶接部10を形成し、スポット溶接部10のナゲット12の端を横切ってレーザビームLBを照射してレーザビーム照射による溶融凝固部15を形成する状況の一例を示している。なお、フランジ1は、鋼板から形成された成形品(鋼板部材)2のフランジ2Fと、鋼板から形成された成形品(鋼板部材)3のフランジ3Fとを重ね合せて形成されている。
【0038】
一実施形態では、成形品2と成形品3に成形される鋼板のいずれか一方又は双方が、(a)マルテンサイト組織を含んだ高強度鋼板(例えば、1200MPa級以上の高強度鋼板)を冷間でプレス成形した鋼板部材、又は(b)ホットスタンプ材用鋼板をホットスタンプで成形することでマルテンサイト組織が生じたホットスタンプ材(例えば、引張強さ強度1200MPa以上の鋼板部材)である。すなわち、マルテンサイト組織を含む鋼板部材を少なくとも一枚含む。
【0039】
高強度鋼板から成形された鋼板部材やホットスタンプ材の鋼板部材の重ね合せ部が抵抗スポット溶接されると、スポット溶接部にHAZ軟化部が形成される。このHAZ軟化部はスポット溶接部の強度が高強度鋼板(母材)より大幅に低下するが、レーザビーム照射によって溶融凝固部を形成する。これにより、HAZ軟化部が硬化してHAZ軟化部における応力集中に起因する破断が抑制されて、高強度鋼板やホットスタンプ材としての強度を充分に発揮できるようになる。
【0040】
図1Bは、本発明を適用した3枚(複数)の鋼板部材を重ね合せた接合部の概略構成の一例を説明する図である。
図1Bは、高強度鋼板5Hと、高強度鋼板6Hと、低強度鋼板7Lとを重ね合せて、抵抗スポット溶接によりナゲット12を有するスポット溶接部10を形成し、高強度鋼板5H側からレーザビームを照射して、ナゲット12を横切る溶融凝固部15が形成された状態を示している。なお、
図1Bにおいて、高強度鋼板5H、高強度鋼板6H、低強度鋼板7Lの板厚は、それぞれt5、t6、t7である。
【0041】
なお、この明細書において、高強度鋼板とは、「未成形の高強度鋼板」、「高強度鋼板を成形した鋼板部材」、「ホットスタンプ用鋼板をホットスタンプで成形したホットスタンプ材」を含むものとする。
また、低強度鋼板は、「未成形の低強度鋼板」、「低強度鋼板を成形した鋼板部材」を含むものとする。
また、鋼板には、「未成形の高強度鋼板」、「未成形の低強度鋼板」、「高強度鋼板を成形した鋼板部材」、「ホットスタンプ用鋼板をホットスタンプで成形したホットスタンプ材」、「低強度鋼板を成形した鋼板部材」を含むものとする。
【0042】
図1Bにおいて、ナゲット12は、高強度鋼板5H、高強度鋼板6H、低強度鋼板7Lにわたってこれらを接合するように形成されている。
溶融凝固部15は、例えば、ナゲット12の端から外方に距離L1離れた位置からナゲット12を横切りナゲット12の端から外方に距離L2離れた位置まで形成されている。また、溶融凝固部15は、高強度鋼板5Hの板厚t5の全厚(100%)と、高強度鋼板6Hの板厚t6の高強度鋼板5Hから低強度鋼板7Lに至る中間位置まで形成されている。
ここで、ナゲット12の端とは、複数の鋼板部材を重ね合せて形成した重ね合せ部を鋼材表面から透過した場合におけるナゲット12の最大形状(外側の境界)をいう。
【0043】
図1Bに示した符号LD5、LD6は、ナゲット12の端から外方に1mm離れた位置における高強度鋼板5H、高強度鋼板6Hのそれぞれの溶融凝固部15の深さである。HAZ軟化部における破断を抑制するうえで、それぞれの高強度鋼板について、溶融凝固部15の深さ≧板厚の50%(ここでは、高強度鋼板5H、6Hのそれぞれについて、LD5≧t5の50%、LD6≧t6の50%)であることが効果的である。
なお、
図1Bでは、高強度鋼板5H及び高強度鋼板6Hが高強度鋼板であり、高強度鋼板5Hは板厚の全厚(すなわち、LD5=板厚t5)にわたって溶融凝固部15が形成されている。したがって、高強度鋼板6Hにおける溶融凝固部15の深さLD6 ≧ (板厚t6の50%)とすることで充分な効果的が確保される。
【0044】
ここで、溶融凝固部15の深さLDを、ナゲット12の端から外方に1mm離れた位置で規定するのは、
図14に示すように、スポット溶接部110のHAZ最軟化部103Aはナゲット112の端から外方に約1mm離れた位置に存在することから、HAZ最軟化部103A付近に溶融凝固部を形成することがHAZ軟化部を硬化させるのに効果的であることに基づいている。
【0045】
なお、
図1Bは、溶融凝固部15が、重ね合せ部を鋼材表面から見た場合におけるナゲット12の中心部を通過し、ナゲット12の端を左右2か所で横切る例を示しているが、溶融凝固部15がナゲット12の端を横切る位置及び横切る数は2か所に限られることなく、1か所でもよいし3か所以上でもよい。また、2か所で横切る場合に、ナゲット12の中心部を挟んで延長上に位置してもよいが、ナゲット12の中心部を挟んで延長上にする必要はない。
【0046】
また、溶融凝固部15がナゲット12の端を2か所以上で横切る溶融凝固部15を形成する場合に、ナゲット12の端から1mm外方における溶融凝固部15の深さLDが、LD≧板厚の50%であることが好適であるが、ナゲット12の端を横切る溶融凝固部15の一部がLD ≧ 板厚の50%を満足していなくてもよい。また、溶融凝固部15がナゲット12の端から3mm以上の距離にわたって形成されていることが好適であるが、3mm以下でもよい。
【0047】
図2Aは、本発明を、1500MPa級のホットスタンプ材(鋼板部材)と、1500MPa級のホットスタンプ材(鋼板部材)を2枚重ね合せした例を示す図である。より詳細には、
図2Aは、ホットスタンプ材のフランジ4Aに抵抗スポット溶接により、ナゲット12を有するスポット溶接部10を形成し、スポット溶接部10にレーザビームを照射して溶融凝固部15を形成した例を示している。
【0048】
図2Bは、
図2AにおけるI−I断面を示す図であり、
図2Cは
図2Aに示したスポット溶接部の周辺を鋼材表面から見た模式図である。なお、説明の便宜のため、
図2Cの中心線から左半分はスポット溶接部10にレーザビームが照射されていない従来の状態を、右半分はスポット溶接部10にレーザビームが照射されて溶融凝固部15が形成された状態を示している。
また、
図3A、
図3B、
図3Cは、
図2Cにおける破線A、破線B、破線Cで示した部分の硬さ分布を示す図である。
【0049】
従来のスポット溶接部10は、
図2Cの左半分と同様であり、
図3Aに示す破線Aで示す部分では、HAZ軟化部13が広い範囲にわたって形成されている。そのため、左右方向に付加される引張荷重に対して、HAZ軟化部13が広い範囲にわたって引張られることとなる。その結果、引張荷重に対する強度が低下して、引張荷重による破断が発生しやすくなる。
一方、
図2Cの右半分に示すようなナゲット12とHAZ軟化部13の間に、ナゲット12の端を横切ってレーザビーム照射により溶融凝固部15が形成されると、
図3Bに示す破線Bで示す部分は、溶融凝固部15によりHAZ軟化部13は硬化してHAZ軟化部13の範囲が小さくなる。その結果、HAZ軟化部13の幅が縮小する。その結果、スポット溶接部10の強度が向上して、引張強度が向上する。
一方、
図2Cおよび
図3Cに示す破線Cで示す部分では、溶融凝固部15を形成すると、HAZ軟化部15Aが形成されるが、HAZ軟化部15Aのは、引張荷重が作用する範囲が小さいことから引張強度に荷重あまりに影響しない。
【0050】
また、
図4A〜
図4Cを参照して、本発明の効果の一例を説明する。
図4Aは、従来の抵抗スポット溶接による試験片T01であり、試験片T01にはナゲット12を有するスポット溶接部10が形成されている。
図4Bは、本発明の溶接方法による試験片T02であり、試験片T02にはナゲット12の二つの端を横切るレーザビーム照射による溶融凝固部15が形成されている。
図4Cは、試験片T01およびT02における応力−歪み線図であり、破線で示すAは試験片T01を、実線で示すBは試験片T02の結果を表している。
【0051】
図4Cに示すように、スポット溶接部10にレーザビームを照射して溶融凝固部15を形成することにより、引張荷重を負荷した場合の限界破断ひずみは、スポット溶接部10に比べて大幅に向上し、例えば、衝突時のHAZにおける破断を抑制できる。
【0052】
以上のように、スポット溶接部10のナゲット12を横切るように溶融凝固部15を形成して、
図1Bに示すような構成とすることにより、抵抗スポット溶接だけの場合に引張荷重を受けて破断しやすいスポット溶接のHAZ軟化部の領域を低減することができる。これにより、引張荷重を受けたときの破断までの変形能を向上することができる。
【0053】
図5A〜
図5Dは、複数の鋼板を重ね合せる組み合わせに関する例と、スポット溶接部およびレーザビーム照射による溶融凝固部の関係を示す説明図である。
【0054】
図5Aは、鋼板の組み合わせの第1の例を示す説明図であり、低強度鋼板31L(板厚t31)と、高強度鋼板32H(板厚t32)とを重ね合せて高強度鋼板32H側からレーザビームを照射して溶融凝固部15(深さL15)が形成された場合を示している。
図5Aにおいて、符号LD32は、高強度鋼板32Hにおける溶融凝固部15の深さを示している。
【0055】
図5Aに示すように、第1の例では、高強度鋼板32Hは板厚の全厚(板厚t32の100%)、低強度鋼板31Lは板厚方向における高強度鋼板32H側から反対側表面に至る中間位置まで溶融凝固部15が形成されている。第1の例では、高強度鋼板は高強度鋼板32Hのみであり、溶融凝固部15の深さLD32は高強度鋼板32Hの板厚方向の全厚(LD32=板厚t32の100% > 板厚t32の50%)にわたって形成されているので、充分な効果を確保することができる。
【0056】
図5Bは、鋼板の組み合わせの第2の例を示す説明図であり、高強度鋼板31H(板厚t31)と、高強度鋼板32H(板厚t32)とを重ね合せて高強度鋼板32H側からレーザビームを照射して溶融凝固部15(深さL15)が形成された場合を示している。
図5Bにおいて、符号LD31およびLD32は、それぞれ高強度鋼板31H、高強度鋼板32Hにおける溶融凝固部15の深さを示している。
【0057】
図5Bに示すように、第2の例では、溶融凝固部15は、高強度鋼板32Hにおける深さLD32は板厚の全厚(LD32=板厚t32の100%)であり、高強度鋼板31Hは板厚方向における高強度鋼板32H側から反対側表面に至る中間位置まで溶融凝固部15が形成されている。第2の例では、高強度鋼板は高強度鋼板31H及び高強度鋼板32Hであり、溶融凝固部15は高強度鋼板32Hの板厚の全厚(LD32=板厚t32の100% > 板厚t32の50%)にわたって形成されているので、高強度鋼板31Hにおける深さLD31をLD31 ≧ (板厚t31の50%)とすることにより、充分な効果を確保することができる。
【0058】
図5Cは、鋼板の組み合わせの第3の例を示す説明図であり、低強度鋼板31L(板厚t31)と、高強度鋼板32H(板厚t32)と、低強度鋼板33L(板厚t33)とを重ね合せて低強度鋼板31L側からレーザビームを照射して溶融凝固部15(深さL15)が形成された場合を示している。
図5Cにおいて、符号LD32は、高強度鋼板32Hにおける溶融凝固部15の深さを示している。
【0059】
図5Cに示すように、第3の例では、溶融凝固部15は、低強度鋼板31Lの板厚の全厚と、高強度鋼板32Hの板厚方向における低強度鋼板31L側から低強度鋼板33L側に至る中間位置まで形成されている。第3の例では、高強度鋼板は高強度鋼板32Hのみであるので、高強度鋼板32Hにおける溶融凝固部15の深さLD32を、LD32 ≧ (板厚t32の50%)とすることにより、充分な効果を確保することができる。
【0060】
図5Dは、鋼板の組み合わせの第4の例を示す説明図であり、高強度鋼板31H(板厚t31)と、高強度鋼板32H(板厚t32)と、低強度鋼板33L(板厚t33)とを重ね合せて高強度鋼板31H側からレーザビームを照射して溶融凝固部15(深さL15)が形成された場合を示している。
図5Dにおいて、符号LD31、LD32は、高強度鋼板31H、高強度鋼板32Hにおける溶融凝固部15の深さを示している。
【0061】
図5Dに示すように、第4の例では、溶融凝固部15は、高強度鋼板31Hの板厚の全厚(LD31=板厚t31の100%)にわたって形成されるとともに、高強度鋼板32Hの板厚方向における高強度鋼板31H側から低強度鋼板33L側に至る中間位置まで形成されている。第4の例では、高強度鋼板は高強度鋼板31H及び高強度鋼板32Hであるので、高強度鋼板32Hにおける溶融凝固部15の深さLD32を、LD32 ≧ (板厚t32の50%)とすることにより、充分な効果を確保することができる。
【0062】
一実施形態では、複数の鋼板部材同士を重ね合せ部で接合し、複数の鋼板部材の少なくとも一つがマルテンサイト組織を含む鋼板部材を、抵抗スポット溶接により接合された重ね合せ溶接部材を対象としている。例えば、自動車用車体を構成するモノコックボディやモノコックボディを構成するAピラー、Bピラー等の自動車用部品(Assy部品)をはじめとする種々の構造物の形成に適用される。
【0063】
鋼板部材の重ね合せ部は、一般的に、鋼板の縁に他の鋼板とのスポット溶接代として形成されるフランジ(重ね合せ部)であるが、フランジに限定されるものではなく、フランジと形状部等(フランジ以外の部分)を重ね合せた部分に抵抗スポット溶接されたものでもよい。
【0064】
マルテンサイト組織を含む鋼板部材としては、連続焼鈍設備でマルテンサイトを含む焼入れ組織とした高強度鋼板(例えば、引張強さ強度1200MPa級以上の高張力鋼板)の冷間プレス成形品や、ホットスタンプ用鋼板をオーステナイト温度以上に加熱し、水冷金型で成形しながら焼入れることで強度を高めた引張強さ強度1200MPa以上のホットスタンプ材が例示される。
【0065】
HAZ軟化によるスポット溶接の破断のリスクが生じるマルテンサイト組織が形成される高強度鋼板で効果があるが、引張強さ強度1200MPa以上の高強度鋼板で大きな効果があることから引張強さ強度の下限は1200MPaとすることが好適である。また、引張強さ強度の上限は特に設定不要であるが、上限設定する場合は実用的に約2000MPaである。
【0066】
また、鋼板の板厚に制限を設定する必要はないものの、実用的な観点からすると、下限は0.7mmとすることができ、上限は2.6mmとすることが好適である。
【0067】
引張強さ強度1200MPa以上の高強度鋼板は、冷延材の場合には、表面にめっきがされていない非めっき鋼板もしくは合金化溶融亜鉛めっき(GAめっき)、溶融亜鉛めっき(GIめっき)などの亜鉛系めっきで被覆された鋼板が対象とされる。
ホットスタンプ材の場合には、非めっき、アルミめっきもしくは鉄とアルミの金属間化合物、もしくは、鉄亜鉛固溶層と酸化亜鉛層により被覆された鋼板部材が対象とされる。
【0068】
上記の高強度鋼板と重ね合せられる鋼板は、引張強さ強度1200MPa級以上の高強度鋼板やホットスタンプ材でもよいし、引張強さ強度が270MPa〜980MPa級の鋼板でもよい。また、2つに限らず3つ以上の複数枚を重ね合せてもよい。
【0069】
以下、抵抗スポット溶接に関して、詳細に説明する。
抵抗スポット溶接工程は、複数の鋼板部材を互いに重ね合せて、重ね合せ部に抵抗スポット溶接をすることにより、ナゲットを有するスポット溶接部を形成する。
【0070】
抵抗スポット溶接の溶接条件は、特に制限はないが、少なくとも接合対象の鋼板部材に、ナゲット径が4√t以上7√t以下(t:重ね面において薄い側の板厚(mm))となるナゲットが形成されるように適宜設定すればよい。
例えば、単相交流スポット溶接機もしくはインバータ直流スポット溶接機を用いて、溶接電極の先端直径:6〜8mm、先端の曲率半径R:40mm、加圧力:2.5〜6.0kN、溶接電流の電流値:7〜11kA、通電時間:10/60秒〜40/60秒の範囲で適宜設定して、重ね合せ部に上記ナゲットを形成すればよい。なお、スポット溶接条件は、上記条件に限定されるものではなく、鋼種や板厚等に応じて適宜設定することができる。
【0071】
抵抗スポット溶接のピッチは、通常、20〜60mm程度であるが、これに限定されるものではなく、対象とされる構造物やその部位に応じて適宜設定すればよい。
【0072】
以下、レーザビーム照射による溶融凝固部形成に関して、詳細に説明する。 溶融凝固部形成工程で、重ね合せ部にレーザビームを照射して、抵抗スポット溶接により形成したスポット溶接部のナゲットと、ナゲットの外方に位置されるHAZ又は母材との間にナゲットの端を横切る溶融凝固部を形成する。
【0073】
すなわち、抵抗スポット溶接を行った後に重ね合せ部にレーザビームを照射して、ナゲットの周囲に形成されたHAZ軟化部を横切って溶融凝固部を形成することで、HAZ軟化部を硬化させる。その結果、溶融凝固部によりHAZ軟化部が分断されて、想定応力方向におけるHAZ軟化部に起因する強度低下が抑制される。
【0074】
以下、
図6A〜
図6Dを参照して、本発明を自動車用部品に適用する例を説明する。
図6A〜
図6Cは、自動車用車体を構成するモノコックボディへの適用例であり、側面衝突が発生した場合にキャビン内の乗員を保護する重要部材(自動車用部品)に適用した例を示す図である。
【0075】
図6Aは、本発明に係る重ね溶接部材を、Bピラー41に適用した例を示す図である。Bピラー41のフランジには、フランジが延在する方向に沿って複数のスポット溶接部10が形成されるとともに、複数のスポット溶接部10を横切って溶融凝固部15がレーザビーム照射により形成されている。
【0076】
また、例えば、Bピラー41の場合には、Bピラー41のフランジ(重ね合せ部)の鋼板部材端面に沿った方向を想定応力方向とするとよい。また、Bピラー41のフランジは、下部が車体の前後方向に湾曲しているが、フランジの鋼板部材端面の湾曲に沿う方向(例えば、それぞれのスポット溶接部10に最も近接する鋼板部材端面の接線方向)を想定応力方向とするとよい。なお、
図6Aに示すように、溶融凝固部15が複数形成されていてもよいし、溶融凝固部15が通過しないスポット溶接部10Aがあってもよい。
【0077】
図6Bは、本発明に係る重ね溶接部材を、Aピラー40、Bピラー41及びルーフレール42に適用した例を示す図である。Aピラー40、Bピラー41及びルーフレール42には、それぞれのフランジが延在する方向に沿って複数のスポット溶接部10が形成されるとともに、複数のスポット溶接部10を横切ってレーザビーム照射による溶融凝固部15が形成されている。
【0078】
また、
図6Bに示すように、Bピラー41とAピラー40との接続部分や、Bピラー41とルーフレール42との接続部分のように、湾曲をともなうフランジでは、湾曲したフランジに沿って複数のスポット溶接部10が形成され、レーザビーム照射による溶融凝固部15はこれら複数のスポット溶接部10を横切って形成されている。なお、上記湾曲部分では、
図6Aの場合と同様に、フランジの鋼板部材端面の湾曲方向(例えば、それぞれのスポット溶接部10に最も近接する鋼板部材端面の接線方向)を想定応力方向とするとよい。また、溶融凝固部15は複数形成されてもよいし、溶融凝固部15が通過しないスポット溶接部があってもよい。
【0079】
図6Cは、本発明に係る重ね溶接部材を、Aピラー40及びサイドシル43に適用した例を示す図である。サイドシル43のフランジには、フランジが延在する方向に沿って複数のスポット溶接部10が形成されるとともに、例えば、隣接する2つのスポット溶接部10を横切るレーザビーム照射による溶融凝固部15を部分的に分断して間隙が形成されている。このように、溶融凝固部15を分断して、溶融凝固部15の間に母材のままの部分を残すことにより、高強度鋼板の有する靱性を発揮させることが可能となる。このような溶融凝固部15を分断して形成した間隙による効果は、
図6A、
図6Bに示した例においても同様である。
【0080】
図6A〜
図6Cに示すようなキャビンの周囲に配置される構造部材に本発明を適用することにより、これらの構造部材がスポット溶接部10のHAZ軟化に起因する破断を抑制することができ、側面衝突に対する安全性を高めることができる。また、溶融凝固部15は、想定応力方向に対する交差角度θを±30°以内に形成することが好適である。
【0081】
また、
図6Dは、本発明に係る重ね溶接部材を、前突や後突が発生した場合に乗員を保護するバンパーリインフォース44に適用した例を示す図である。
図6Dに示すバンパーレインフォース44では、バンパーリインフォース44の本体の内部に断面を保持するためのバルクヘッド45が抵抗スポット溶接されてスポット溶接部10が形成されている。このバンパーリインフォース44では、前突又は後突発生時にバンパーリインフォース44の長手方向と交差する前後方向に屈曲する力が作用する。このため、バンパーリインフォース44の長手方向を想定応力方向として、バンパーリインフォース44の長手方向との交差角度θが±30°以内で交差するようにレーザビームを照射して溶融凝固部15を形成することが好適である。
【0082】
なお、衝突により曲げを受ける部材の場合、想定応力方向は、鋼板部材端面に沿う方向であり、部材にキャビンの内側と外側を結んだ面と垂直な方向に作用する。
【0083】
以下、
図7A〜
図7Lを参照して、スポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の例について説明する。
図7A〜
図7Lは、本発明に係るスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況を例示する概略図である。
【0084】
図7Aは、本発明に係るスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第1の例を示す概略図であり、成形品(鋼板部材)5のフランジ部5Fと、成形品(鋼板部材)6のフランジ部6Fとを重ね合わせたフランジ4に形成したスポット溶接部10のナゲット12にレーザ照射による溶融凝固部15を形成する例である。
【0085】
溶融凝固部15の形成方向は、
図7Aに示すように、フランジ(継ぎ手部)4の延在する方向又は想定応力方向(
図7Aにおける左右方向)に対して±30°以内の角度θとなる範囲であることが望ましい。交差角度θが±15°以内となる範囲は、より好適である。
【0086】
例えば、
図6A〜
図6Dに示したような、Aピラー、Bピラー、ルーフレール、サイドシル、バンパーリインフォースなどは、筒状の閉断面に接続されたフランジを接合代として構成されている。衝突時にはフランジの鋼板部材端面に沿う方向に引張荷重を受けることが多い。このため、フランジに沿う方向にレーザビームを照射してスポット溶接部10のナゲット12を横切る溶融凝固部15を形成することが好適である。また、長尺部品の内部の場合、部品の長手方向に沿う方向に引張荷重の受けることが多く、部品の長手方向に沿う方向にレーザビームを照射してスポット溶接部10のナゲット12を横切る溶融凝固部15を形成することが好適である。
【0087】
図7Bは、本発明に係るスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第2の例を示す概略図である。
図7Bに示すように、例えばフランジで接合されない部材7を重ね合せ部材8により部分補強する場合のスポット溶接部10や、部材にバルクヘッドを重ね合せた場合のスポット溶接部では、一般的に、部材の長手方向に引張荷重を受ける。このため、部材等の長手方向に沿ってレーザビームを照射して溶融凝固部15を形成することが好適である。
【0088】
図7Cは、本発明に係るスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第3の例を示す概略図である。
図7Cに示すように、レーザビームの照射により形成される溶融凝固部15は、ナゲット12の中央付近を通過することが好適であるが、必ずしもスポット溶接部10のナゲット12の中心と一致する必要はない。
【0089】
図7Dは、本発明に係るスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第4の例を示す概略図である。
図7Dに示すように、溶融凝固部15は、レーザビームの照射の効率を考慮すると、直線状に形成されることが望ましいが、屈曲部を有する曲線状に形成されていてもよいし、溶融凝固部15の長さを長くするために波状等に形成してもよい。このような場合に、想定応力方向と交差角度θが±30°以内で交差するようにすると好適である。
【0090】
図7Eは、本発明に係るスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第5の例を示す概略図である。
溶融凝固部15は、
図7A〜
図7Dに示したように個々のスポット溶接部10に個別に形成されてもよいが、
図7Eに示すように、複数のスポット溶接部10を接続するように連続して形成してもよい。また、1つのスポット溶接部10に対して複数(例えば、2本)の溶融凝固部15を形成されていてもよい。
【0091】
図7Fは、本発明に係るスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第6の例を示す概略図である。
図7Fに示すように、レーザビームの照射による溶融凝固部15は、スポット溶接部10のナゲットに対して左右均等に形成されていなくともよい。ただし、溶融凝固部15は、スポット溶接部10のナゲット12の両側に存在し、かつ短い側が、ナゲットの端から溶融凝固部15の端までの距離が3mm以上であることが望ましい。ナゲットの端から溶融凝固部15の端までの距離を3mm以上とすると、HAZ軟化部にひずみが集中するのを充分に抑制することができるからである。溶融凝固部15は前述のように複数のスポット溶接部10を横断してもよい。
【0092】
レーザビームの照射の条件は、特に制限はなく、必要とされる箇所に、前述した所定の溶融凝固部15が得られればよい。レーザ溶接機としてディスクレーザ、ファイバーレーザ、ダイレクトダイオードレーザ、YAGレーザ、炭酸ガスレーザを用い、ビーム径0.15〜0.9mmの範囲とし、出力1〜10kWの範囲とし、溶接速度1〜15m/minの範囲とすることが例示される。
【0093】
溶接は、一般的なトーチによる溶接でもよく、リモート溶接や、クランプ装置を持ったLaser seam stepperを用いてもよい。レーザビームの照射条件は、例示した条件には限定されず、前述した所定の溶融凝固部15が得られる照射条件であればよい。
【0094】
レーザビームの照射は、全てのスポット溶接部10に実施する必要はない。衝突によりスポット溶接部10のHAZ軟化部における破断の虞があるスポット溶接部10のみに実施すればよい。
【0095】
図7Gは、本発明に係るスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第7の例を示す概略図である。
図7Gに示すように、隣接する2つのスポット溶接部10の間にレーザビームを照射し、スポット溶接部10を通過する溶融凝固部15と、スポット溶接部10を通過しない溶融凝固部15(レーザ溶接部)とが形成されている例を示している。このように、隣接する2つのスポット溶接部10の間のレーザ溶接部は、重ね合せ部の浮き上がりにより隙間が形成されてスポット溶接により充分な接続ができない場合でも、溶接間隔を短くして部材のねじり剛性を向上することが可能であり望ましい。
【0096】
図7Hは、本発明に係るスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第8の例を示す概略図である。
図7Hに示すように、必要に応じて、スポット溶接部10を複数の溶融凝固部15が並列に通過するように配置してもよい。
図7Hでは、溶融凝固部15が2本の例を示したが、3本以上でもよい。
【0097】
図7Iは、本発明によるスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第9の例を示す概略図である。
図7Iに示すように、レーザビームの照射により形成される溶融凝固部15の端を、応力集中を避けるため屈曲させた形状としてもよいし、始終端のビード幅を太くしてもよい。
【0098】
図7Jは、本発明に係るスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第10の例を示す概略図である。
図7Jに示すように、スポット溶接部10に対して互いに離間する側(互いに外側となる側)の位置に溶融凝固部15を形成してもよい。このようにスポット溶接部10に対して反対向きの溶融凝固部15を形成する場合に、それらの間に一つ又は複数のスポット溶接部10、溶融凝固部15が形成されたスポット溶接部10、スポット溶接部10を通過しない溶融凝固部15(レーザ溶接部)を配置してもよい。
【0099】
図7Kは、本発明に係るスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第11の例を示す概略図である。
図7Kに示すように、スポット溶接部10に対して互いに近接する側(互いに内側となる側)の位置に溶融凝固部15を形成してもよい。このようにスポット溶接部10に対して互いに近接する向きの溶融凝固部15を形成する場合に、それらの間に一つ又は複数のスポット溶接部10、溶融凝固部15が形成されたスポット溶接部10、スポット溶接部10を通過しない溶融凝固部15(レーザ溶接部)を配置してもよい。
【0100】
図7Lは、本発明に係るスポット溶接部と溶融凝固部の形成状況の第12の例を示す概略図である。
図7Lに示すように、隣接する溶融凝固部15を、スポット溶接部10に対して同じ側(
図7Lでは左側)に形成してもよい。このようにスポット溶接部10に対して同じ側に形成する場合に、それらの間に一つ又は複数のスポット溶接部10、溶融凝固部15が形成されたスポット溶接部10、スポット溶接部10を通過しない溶融凝固部15(レーザ溶接部)を配置してもよい。
【0101】
本発明の抵抗スポット溶接及びスポット溶接部10のナゲット12への溶融凝固部15の形成は、例えば、自動車製造工程における車体溶接工程に適用可能である。車体の溶接などの流れ作業では、重ね溶接部材の位置決め及びクランプして抵抗スポット溶接した後に、引き続き抵抗スポット溶接による増し打ちやレーザビーム照射を行うと再位置決めや再クランプに起因するスポット溶接部に対するレーザビーム照射の位置ずれが防止できる点で好適である。
また、より好ましくは、抵抗スポット溶接を行ったステーションと同じステーションでレーザビーム照射を行うことが好適である。
【0102】
次に、
図8A〜
図8Fを参照して、高強度鋼板と低強度鋼板とを重ね合せて、レーザビームを照射して溶融凝固部を形成する場合の例を説明する。
図8A〜
図8Cは、いずれも、重ね合わされる2枚の鋼板が高強度鋼板と低強度鋼板との組み合わせの場合の説明図であり、非めっきの高強度鋼板(1500MPa)61Hと非めっきの低強度鋼板(270MPa)62Lとの重ね合せの例を示している。
【0103】
図8Aは、第1の例を説明する図であり、第1の例は、非めっきの高強度鋼板61Hと非めっきの低強度鋼板62Lを重ね合せて、高強度鋼板61H側からレーザビームLBを照射して、非めっきの高強度鋼板61H及び非めっきの低強度鋼板62Lの板厚の全厚に溶融凝固部15を形成する場合を示している。この場合、高強度鋼板61Hにおける溶融凝固部15の深さLD61は高強度鋼板61Hの板厚に対して100%である。
【0104】
図8Bは、第2の例を説明する図であり、第2の例は、非めっきの高強度鋼板61Hと非めっきの低強度鋼板62Lを重ね合せて、低強度鋼板62L側からレーザビームLBを照射して、非めっきの高強度鋼板61H及び非めっきの低強度鋼板62Lの板厚の全厚に溶融凝固部15を形成する場合を示している。この場合、高強度鋼板61Hにおける溶融凝固部15の深さLD61は高強度鋼板61Hの板厚に対して100%である。
【0105】
図8Cは、第3の例を説明する図であり、第3の例は、非めっきの高強度鋼板61Hと非めっきの低強度鋼板62Lを重ね合せて、高強度鋼板61H側からレーザビームLBを照射して、非めっきの高強度鋼板61Hの表面から非めっきの低強度鋼板62Lに到達する途中まで溶融凝固部15を形成する場合を示している。この場合、高強度鋼板61Hにおける溶融凝固部15の深さLD61を板厚の50%以上とすることが好適である。
【0106】
図8Dは、第4の例を説明する図であり、第4の例は、非めっきの高強度鋼板(1500MPa)61Hと非めっきの高強度鋼板(1500MPa)62Hとを重ね合せて、高強度鋼板61H側からレーザビームLBを照射して溶融凝固部15を形成する場合を示している。この場合、高強度鋼板61Hにおける溶融凝固部15の深さLD61は高強度鋼板61Hの板厚に対して100%である。
図8Dに示すように、高強度鋼板61Hと高強度鋼板62Hとを重ね合せる場合は、高強度鋼板61Hの板厚の全厚と高強度鋼板62Hにおける深さLD62が高強度鋼板62Hの板厚の50%以上となる溶融凝固部15を形成することが好適である。
【0107】
図8E、
図8Fは、低強度鋼板、高強度鋼板、低強度鋼板の順に3枚重ね合せられる場合の例を示している。
【0108】
図8Eは、第5の例を説明する図であり、第5の例は、非めっきの低強度鋼板(270MPa)61L、非めっきの高強度鋼板(1500MPa)62H、非めっきの低強度鋼板(590MPa)63Lを重ね合せて、低強度鋼板61L側からレーザビームLBを照射して溶融凝固部15を形成する場合を示している。この場合、溶融凝固部15は、低強度鋼板61L、高強度鋼板62H、低強度鋼板63Lの板厚に対して100%であり、高強度鋼板62Hにおける溶融凝固部15の深さLD62が板厚の50%以上であるので好適である。
【0109】
図8Fは、第6の例を説明する図であり、第6の例は、非めっきの低強度鋼板(270MPa)61L、非めっきの高強度鋼板(1500MPa)62H、非めっきの低強度鋼板(590MPa)63Lを重ね合せて、低強度鋼板61L側からレーザビームLBを照射して溶融凝固部15を形成する場合を示している。この場合、
図8Fに示すように、溶融凝固部15は、低強度鋼板61Lの板厚の全厚と、高強度鋼板62Hの板厚の低強度鋼板61Lから低強度鋼板63Lに到達する途中まで形成されている。高強度鋼板62Hにおける溶融凝固部15の深さLD62を高強度鋼板62Hの板厚の50%以上とすることが好適である。
【0110】
(参考例)
次に、本発明の参考例について説明する。
上記第1の実施の形態は、鋼板が非めっき鋼板である場合であるが、代表的な亜鉛めっき鋼板であるGAめっき、GIめっきを含んだ鋼板の組み合わせの場合に、抵抗スポット溶接によりスポット溶接部10を形成して、スポット溶接部10にレーザビームLBを照射することにより、スポット溶接部10の穴あき欠陥が発生する可能性があることが判明した。以下、
図9A、
図9Bを参照して、スポット溶接部10に対するレーザ照射の影響について説明する。
【0111】
図9Aは非めっきの高強度鋼板(1500MPa)と非めっきの低強度鋼板(440MPa)との重ね合せ部に形成したスポット溶接部10と溶融凝固部15を示す図である。非めっき鋼板の場合には、
図9Aに示すように、穴あき欠陥は発生しない。
【0112】
一方、
図9Bは、非めっきの高強度鋼板(1500MPa)と合金化溶融亜鉛めっきされた低強度鋼板(440MPa)との重ね合せ部に形成したスポット溶接部10に溶融凝固部15を形成した例を示す図である。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板の場合には、
図9Bに示すように、溶融凝固部に穴あき欠陥15Hが発生する可能性があり、この穴あき欠陥15Hがスポット溶接部10の強度を低下させて、自動車が衝突した場合に破断の起点となることで、高強度鋼板の強度を充分に発揮できない可能性があることを見出した。
【0113】
図9Bに示した穴あき欠陥15Hの発生する原因について、発明者らが鋭意研究した結果、穴あき欠陥15Hが、
図10に示すようなスポット溶接部10の密着部16において発生するとの知見を得た。
図10に示す密着部16は、ナゲット12よりも外方に位置され、スポット溶接部10において、溶融をともなわずに圧力により接合された部分である。
【0114】
穴あき欠陥15Hは、レーザビームLBを照射して溶融凝固部15を形成する際に、亜鉛めっきが形成された密着部16がレーザビームLB照射により溶融され、亜鉛が爆発的に気化して溶融鉄を吹き飛ばすことが原因であると推察される。
【0115】
参考例には、合金化溶融亜鉛めっき被膜もしくは溶融亜鉛めっき被膜が形成された亜鉛めっき鋼板を含む鋼板部材を接合することを対象としている。
【0116】
発明者らは、上記問題点について研究の結果、これらのGAめっきやGIめっきを含んだ鋼板を含む場合は、レーザビームLBの照射による溶融凝固部15の深さを、GAめっきもしくはGIめっきとの重ね面のスポット溶接の密着部16を溶融させないように制御することで、穴あき欠陥15Hが発生しない良好な溶接継手が得られるとの知見を得た。
【0117】
なお、非メッキ、アルミめっき、鉄アルミの金属間化合物、鉄亜鉛固溶層と酸化亜鉛相からなる皮膜の鋼板では被膜の沸点が高いことから、重ね合せ面の皮膜に起因する溶接欠陥が発生しにくい。また、スポット溶接部10のナゲット12の端から溶融凝固部15の外方に1mm離れた位置における溶融凝固部15の深さLDは、高強度鋼板の板厚の50%以上とすることが好適である。
【0118】
参考例において、複数の鋼板部材が、例えば、マルテンサイト組織を有する鋼板やホットスタンプ材を含むかどうか、特に引張強さ強度1200MPa以上の高強度鋼板を含むかどうかは、任意に設定することができ、高強度鋼板を含まない構成とすることもできる。また、非めっき、アルミめっき、鉄アルミの金属間化合物、鉄亜鉛固溶層と酸化亜鉛相からなる皮膜が形成された鋼板からなる鋼板部材を組み合わせてもよい。
【0119】
また、参考例では、複数の鋼板部材を互いに重ね合せて、抵抗スポット溶接によりナゲット12を有するスポット溶接部10を形成し、レーザビームLBを照射して、溶融凝固部15がナゲット12を横切り、例えば、ナゲット12の端から溶融凝固部15のナゲット外方における端までの距離が、3mm以上離れた位置との間にナゲット12の端を横切る溶融凝固部15を形成する。
【0120】
まず、レーザビームを照射する重ね合せ鋼板部材が全て、非めっき、アルミめっき、鉄アルミの金属間化合物、鉄亜鉛固溶層と酸化亜鉛相からなる皮膜が形成された鋼板からなる鋼板部材である場合、レーザビームの照射により形成される溶融凝固部15は、ナゲット12の端から外方に1mm離れた位置における溶融凝固部15の深さLDを、全ての高強度鋼板に関してそれぞれの板厚の50%以上とすることで、HAZ最軟化部の硬さが改善される。
【0121】
溶融凝固部15の形成深さLDの上限は、高強度鋼板の板厚の100%であり、溶融凝固部15の形成深さLDを板厚の50%以上とするとHAZ軟化部における破断抑制効果が充分に確保されるので好適であるが、溶融凝固部15の深さLDを板厚の50%未満としてもよい。
【0122】
以下、
図11A〜
図11Fを参照しながら具体的に説明する。
図11A〜
図11Fでは、重ね合せた鋼板の一方が合金化溶融亜鉛めっきされた低強度鋼板91LZである部分の密着部のみを図示している。
図11Aは、高強度鋼板と低強度鋼板とを重ね合せた場合の例を説明する図であり、合金化溶融亜鉛めっきされた低強度鋼板(270MPa)91LZと、非めっきの高強度鋼板(1500MPa)92Hとを2枚重ね合せた例を示している。
【0123】
図11Aは、非めっきの高強度鋼板92H側からレーザビームLBを照射し、溶融凝固部15が重ね合せ面のスポット溶接部10の密着部16に到達させずに、合金化溶融亜鉛めっき被膜がある密着部16を溶融させないように制御する。なお、スポット溶接部10のナゲット12の端から外方に1mm離れた位置において、溶融凝固部15の高強度鋼板92Hにおける深さLD92を板厚の50%以上とすることが好適である。
【0124】
図11Bは、合金化溶融亜鉛めっきされた低強度鋼板91LZからなるアウタパネルと、非めっきの高強度鋼板92Hからなるレインフォースと、非めっきの低強度鋼板93Lからなるインナパネルとを3枚重ね合せた場合の例であり、例えば、自動車のBピラーのフランジ部の構造の一例である。
【0125】
この場合、スポット溶接後に自動車ボディの室内側に配置される非めっきのインナパネル(低強度鋼板93L)側からレーザビームLBを照射して、低強度鋼板93L及び高強度鋼板92Hにわたって溶融凝固部15を形成する。溶融凝固部15は、低強度鋼板91LZと高強度鋼板92Hの重ね面側の密着部16には到達させず、合金化溶融亜鉛めっき被膜がある密着部16を溶融させないように制御する。なお、スポット溶接部10のナゲット12の端から外方に1mm離れた位置において、溶融凝固部15の高強度鋼板92Hにおける深さLD92を板厚の50%以上とすることが好適である。
【0126】
なお、レインフォースである高強度鋼板92Hに代えて、鉄亜鉛固溶層と酸化亜鉛層とで覆われるホットスタンプ材や鉄アルミの金属間化合物で覆われているホットスタンプ材92HPを適用する場合も、非めっきのホットスタンプ材と同じように扱ってよい。これらの表面皮膜はGAめっきやGIめっきのように溶接欠陥を発生させにくいためである。
【0127】
図11Cは、合金化溶融亜鉛めっきされた低強度鋼板91LZからなるアウタパネルと、表面に鉄亜鉛固溶相および酸化亜鉛層を有する高強度鋼板92HRからなる中央のレインフォースと、非めっきの低強度鋼板93Lからなるインナパネルとを3枚重ね合せた場合の例であり、例えば、自動車のAピラー、ルーフレールのフランジ部の構造の一例である。
【0128】
この場合、スポット溶接後に自動車ボディの室内側に配置される非めっきのインナパネル(低強度鋼板93L)側からレーザビームLBを照射し、低強度鋼板93L及び表面に鉄亜鉛固溶相および酸化亜鉛層を有する高強度鋼板92HRにわたって溶融凝固部15を形成する。溶融凝固部15は、低強度鋼板91LZと表面に鉄亜鉛固溶相および酸化亜鉛層を有する高強度鋼板92HRの重ね面側の密着部16には到達させず、合金化溶融亜鉛めっき被膜がある密着部16を溶融させないように制御する。なお、スポット溶接部10のナゲット12の端から外方に1mm離れた位置において、表面に鉄亜鉛固溶相および酸化亜鉛層を有する高強度鋼板92HRにおける溶融凝固部15の深さLD92を板厚の50%以上とすることが好適である。
【0129】
図11Dは、合金化溶融亜鉛めっきされた低強度鋼板91LZからなるアウタパネルと、非めっきの高強度鋼板92Hからなる中央のレインフォースと、非めっきの高強度鋼板93Hからなるインナパネルとを3枚重ね合せた場合の例であり、例えば、自動車のルーフレール、Aピラーのフランジ部の構造の一例を示している。
【0130】
この場合、スポット溶接後に自動車ボディの室内側に配置される非めっきのインナパネル(高強度鋼板93H)側からレーザビームLBを照射し、高強度鋼板93H及び高強度鋼板92Hにわたって溶融凝固部15を形成する。溶融凝固部15は、低強度鋼板91LZと高強度鋼板92Hの重ね面側の密着部16には到達させず、合金化溶融亜鉛めっき被膜がある密着部16を溶融させないように制御する。なお、スポット溶接部10のナゲット12の端から外方に1mm離れた位置において、高強度鋼板92Hにおける溶融凝固部15の深さLD92を板厚の50%以上とすることが好適である。
【0131】
図11E、
図11Fは、合金化溶融亜鉛めっきされた低強度鋼板91LZからなるアウタパネルと、非めっきの低強度鋼板92Lからなる中央のレインフォースと、非めっきの高強度鋼板93Hからなるインナパネルとを3枚重ね合せた場合の例であり、自動車のAピラーアッパー、ルーフレールの構造の一例を示している。
【0132】
この場合、スポット溶接後に自動車ボディの室内側に配置される非めっきのインナパネル(高強度鋼板93H)側からレーザビームLBを照射し、低強度鋼板91LZと低強度鋼板92Lの重ね面側の密着部16には到達させないように制御する。
図11Fに示すように、低強度鋼板91LZと低強度鋼板92Lの重ね面側の密着部16に到達させないように、高強度鋼板93H及び低強度鋼板92Lにわたって形成してもよい。
なお、
図11E、
図11Fにおいては、スポット溶接部10のナゲット12の端から外方に1mm離れた位置において、溶融凝固部15の高強度鋼板93Hにおける深さLD93を板厚の50%以上とすることが好適である。
【0133】
以上説明した本発明に係る溶接継手は、引張強さ強度が1200MPa以上の高強度鋼板を含む自動車の構造部材への適用に適する。例えば、バンパービーム、ドアビーム、フロアメンバー、フロントサイドメンバー、リアサイドメンバーなどへ適用可能である。
【0134】
なお、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
【0135】
例えば、上記実施の形態においては、本発明を自動車用部品に適用する場合について説明したが、例えば、建築用の建具、梁、リンク部材や、簡易倉庫、家具、什器等、において重ね合せ部をスポット溶接により接合する種々の重ね溶接部材に適用可能である。
【0136】
また、例えば、上記実施の形態においては、引張強さ強度1200MPa以上の高強度鋼板やホットスタンプ材を対象とする場合について説明したが、焼入れ組織(マルテンサイト組織)を含むことでHAZ軟化部の硬さが母材より低く形成される引張強さ強度1200MPa未満の高強度鋼板、例えば、980MPa級の高強度鋼板に対しても適用することができる。
【0137】
複数の鋼板から形成された鋼板部材として、2又は3つの高強度鋼板を用いる場合について説明したが、4枚以上の鋼板部材の場合に適用してもよいことはいうまでもない。また、高強度鋼板を含む複数の鋼板とは、複数の鋼板のうち、少なくとも一つが高強度鋼板であればよいことを意味する。
【0138】
また、本発明において、互いに重ね合せられた重ね合せ部には、
図7Bに示すような、部分補強を目的として、部材とフランジによらずに接合する場合やフランジがプレス成形された形状部に接合する場合を含むものとする。
【実施例】
【0139】
本発明を、実施例を参照しながら、より具体的に説明する。
供試材の化学成分を表1に示す。表1の単位は質量%であり、表1に示される以外の残部はFe及び不可避不純物である。
【0140】
【表1】
【0141】
表1において、供試材SQ1500は、非めっきの引張強さ強度1500MPa級のホットスタンプ用鋼板であり、供試材SQZ1500は、鉄亜鉛固溶層と酸化亜鉛層で覆われた引張強さ強度1500MPa級のホットスタンプ用鋼板であり、供試材SQ1800は、非めっきの引張強さ強度1800MPa級のホットスタンプ用鋼板であり、供試材JSC1270は、非めっきの引張強さ強度1270MPa級の冷延鋼板である。また、供試材JSC440は、非めっきの440MPa級鋼板であり、供試材JAC440は、合金化溶融亜鉛めっきされた440MPa級鋼板であり、供試材JSC590は、非めっきの590MPa級鋼板である。なお、ホットスタンプ用鋼板については、ホットスタンプと同様の処理をして用いた。
【0142】
(実施例1)
以下、
図12A〜
図12C及び表2を参照して、実施例1について説明する。実施例1では、非めっき鋼板を2枚重ね合せた場合の引張試験におけるひずみを評価した。
図12Aは、本実施例で用いた試験片S10の概略を示す図であり、
図12Bは、本実施例の試験方法を示す試験片S10の引張荷重方向を示す拡大図であり、
図12Cは、
図12BにおけるII−II断面を示す図である。
【0143】
実施例1では、表1に示した供試材から、
図12Aに示す試験片S10を作成して、各試験片について
図12Bに示すような引張荷重を負荷して引張試験を実施した。引張試験は、各試験片S10破断するまでのひずみを測定して、ひずみにより4段階に区分して評価した。
【0144】
試験片S10は、供試材1からなる鋼板S11と供試材2からなる鋼板S12とを、
図12Aに示すように2枚重ね合せ、重ね合せ部11に抵抗スポット溶接を行ってスポット溶接部10を形成した。そして、鋼板S11側からレーザビームを照射して溶融凝固部15を形成した。引張試験では、試験片S10のうち供試材1からなるS11を引張ることで、供試材1の引張強度を測定した。なお、表2に示す番号1、及び番号12の試験片は、レーザビームを照射せずに比較例とした。
【0145】
スポット溶接は単相交流スポット溶接機を用い、DR型電極(先端φ6mm R40)を用い、加圧力:400kgf,通電時間20cyc,電流値:チリ発生電流−0.5kAとした。ナゲット径(mm)は5√t〜6√t(t:板厚(mm))である。
【0146】
そして、スポット溶接部10を形成した試験片S10を、表2に示す条件でレーザビームを照射して直線状の溶融凝固部15を形成した。
レーザビームの照射は、Nd:YAGレーザを用い、ビーム径0.6(mm)、速度2.0〜4.0(m/min)、シールドガス:アルゴン10(l/min)とした。溶融凝固部15の深さを変化させるために、出力を1.5kW〜4kWの範囲で変化させた。
【0147】
図12Bにおける、レーザビーム照射による溶融凝固部15の想定応力方向又はフランジ(重ね合せ部)に沿う方向に対する交差角度θ(°)、溶融凝固部15の深さ(%)、ナゲット12の端から溶融凝固部15の端までの距離 L(mm)は、いずれも表2に示すとおりである。
なお、溶融凝固部の深さ(%)は、鋼板S11を対象として、スポット溶接部におけるナゲットの端から1mm離れた位置での溶融凝固部の深さ(mm)を測定して、鋼板S11の板厚で除して算出した。
【0148】
次に、各試験片で引張試験を実施した。
引張試験は標点間距離50mmとし、引張速度3(mm/min)一定として、破断するまでのひずみを測定した。
破断するまでのひずみが3%未満を(D)とし、3%以上3.5%未満を(C)とし、3.5%以上4%未満を(B)とし、4%以上を(A)とした。試験結果は表2に示すとおりである。
【0149】
【表2】
【0150】
表2に示すように、番号6、12で示した比較例は、破断ひずみはいずれも3.5%以上4%未満であるので、試験結果は(B)であった。また、番号1、5、9で示した比較例は、スポット溶接部のHAZ軟化部で小さいひずみで破断して、破断ひずみはいずれも3.5%未満であるので、試験結果は(C)であった。
一方、本発明例の試験片の破断ひずみはいずれも4%以上であった。
【0151】
(実施例2)
以下、
図13A〜
図13C及び表3を参照して、実施例2について説明する。
実施例2では、非めっき鋼板を3枚重ね合せた場合の引張試験におけるひずみを評価した。
図13Aは、実施例2で用いた試験片S20の概略を示す図であり、
図13Bは、本実施例の試験方法を示す試験片S20の引張荷重方向を示す拡大図であり、
図13Cは、
図13BにおけるIII−III断面を示す図である。
【0152】
実施例2では、表3に示した供試材から、
図13Aに示す試験片S20を作成して、各試験片について
図13Bに示すような引張荷重を負荷して引張試験を実施した。引張試験は、各試験片S20が破断するまでのひずみを測定して、ひずみにより4段階に区分して評価した。
【0153】
試験片S20は、供試材1からなる鋼板S21と供試材2からなる鋼板S22と供試材3からなる鋼板S23とを、
図13Aに示すように3枚重ね合せ、重ね合せ部11に抵抗スポット溶接を行ってスポット溶接部10を形成した。そして、鋼板S23側からレーザビームを照射して溶融凝固部15を形成した。
また、引張試験では、試験片S20のうち供試材2からなるS22を引張ることで、供試材2の引張強度を測定する。なお、表3に示す番号1の試験片は、レーザビームを照射せずに比較例とした。また、番号4の試験片は、レーザビームを亜鉛めっきが形成された密着部まで照射して比較例とした。
【0154】
試験片S20を作成するにあたっての、抵抗スポット溶接及びスポット溶接部10に対するレーザビーム照射については、実施例1の場合と同様であるので、説明を省略する。
【0155】
図13Bにおける、レーザビーム照射による溶融凝固部15の想定応力方向又はフランジ(重ね合せ部)に沿う方向に対する交差角度θ(°)、溶融凝固部15の深さ(%)、ナゲット12の端から溶融凝固部15の端までの距離L(mm)は、いずれも表3に示すとおりである。
なお、溶融凝固部の深さ(%)は、高強度鋼板からなる鋼板S22を対象としてスポット溶接部におけるナゲットの端から1mm離れた位置での溶融凝固部の深さ(mm)を測定して、鋼板S22の板厚で除して算出した。
【0156】
実施例2における、各試験片で引張試験及び評価方法は、実施例2と同様であるので、説明を省略する。
【0157】
【表3】
【0158】
表3に示すように、番号1で示した比較例は、スポット溶接部のHAZ軟化部で小さいひずみで破断して、破断ひずみは3.5%未満であるので、試験結果は(C)であった。また、番号4で示した比較例は、穴あき欠陥が発生して、試験結果は(C)であった。一方、本発明例の試験片は、破断ひずみはいずれも4%以上であった。
【0159】
(実施例3)
以下、表4を参照して、実施例3について説明する。
実施例3では、
図12A〜
図12Cに示した試験片S10を用いてめっき鋼板を重ね合せて、抵抗スポット溶接によりスポット溶接部10を形成して、その後、レーザビームを照射して溶融凝固部15を形成する際に、鋼板S11と鋼板S12間の密着部16に穴あき欠陥が発生するかどうかによって評価した。
【0160】
実施例3では、鋼板S11を非めっきの引張強さ強度1500MPa級のホットスタンプ用鋼板SQ1500で形成し、鋼板S12を鉄亜鉛固溶層と酸化亜鉛層で覆われた引張強さ強度1500MPa級のホットスタンプ用鋼板SQZ1500、又は合金化溶融亜鉛めっきされた440MPa級鋼板により形成した。鋼板S11を構成する供試材1、鋼板S12を構成する供試材2及び試験結果は表4に示すとおりである。穴あき欠陥なしを(判定A)とし、穴あき欠陥ありを(判定C)とした。
【0161】
【表4】
【0162】
表4に示すように、番号1で示した比較例は、鋼板S11側から照射したレーザビームによる溶融凝固部が鋼板S11の板厚の全厚にわたって形成され、溶融凝固部が鋼板S12まで到達していることから穴あき欠陥が発生している。したって、試験結果は穴あき欠陥あり(判定C)であった。
番号2、番号3に示した本発明例は、溶融凝固部の深さが板厚に対して80%、50%であり鋼板S11と鋼板S12間の密着部に到達していないことからいずれも穴あき欠陥なし(判定A)であった。
また、番号4に示した鉄亜鉛固溶層と酸化亜鉛層で覆われた引張強さ強度1500MPa級のホットスタンプ用鋼板SQZ1500については、鋼板S11の板厚の全厚にわたって溶融凝固部が形成されているが、密着部において亜鉛が爆発的に気化して溶融鉄を吹き飛ばすことがないことから、穴あき欠陥はなかった。