【文献】
Navarrini et al.,「Low surface energy coating covalently bonded on diamond-like carbon films」,Diamond & Related Materials,2010年 1月13日,Vol.19,336-341
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガラスが、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラスおよび石英ガラスから成る群から選択されるガラスである、請求項15に記載の防汚性光学部材。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の防汚性物品について説明する。
【0012】
本発明の防汚性物品は、基材と、ダイヤモンドライクカーボン層と、防汚性コーティング層とを含んで成る。
【0013】
本発明に使用可能な基材は、特に限定されず、例えば、無機材料(例えば、ガラス、サファイアガラス)、樹脂(天然または合成樹脂、例えば一般的なプラスチック材料、具体的にはアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等)、金属(アルミニウム、銅、鉄等の金属単体または合金等の複合体)、セラミックス、半導体(シリコン、ゲルマニウム等)、繊維(織物、不織布等)、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材等、建築部材等、任意の適切な材料で構成され得る。
【0014】
好ましい基材は、ガラスまたはサファイアガラスであり得る。ガラスとしては、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラス、石英ガラスが好ましく、化学強化したソーダライムガラス、化学強化したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス、および化学結合したホウ珪酸ガラスが特に好ましい。
【0015】
基材の形状は特に限定されない。また、防汚性コーティング層を形成すべき基材の表面領域は、基材表面の少なくとも一部であればよく、製造すべき物品の用途および具体的仕様等に応じて適宜決定され得る。
【0016】
基材の表面(最外層)には、他の層(または膜)が形成されていてもよく、例えばハードコート層や反射防止層などが形成されていてもよい。反射防止層には、単層反射防止層および多層反射防止層のいずれを使用してもよい。反射防止層に使用可能な無機物の例としては、SiO
2、SiO、ZrO
2、TiO
2、TiO、Ti
2O
3、Ti
2O
5、Al
2O
3、Ta
2O
5、CeO
2、MgO、Y
2O
3、SnO
2、MgF
2、WO
3などが挙げられる。これらの無機物は、単独で、またはこれらの2種以上を組み合わせて(例えば混合物として)使用してもよい。多層反射防止層とする場合、その最外層にはSiO
2および/またはSiOを用いることが好ましい。製造すべき物品が、タッチパネル用の光学部品である場合、透明電極、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛などを用いた薄膜を、基材(例えば、ガラスまたはサファイアガラス)の表面の一部に有していてもよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I−CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、相位差フィルム、および液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
【0017】
上記ダイヤモンドライクカーボン層は、基材の上に位置する。ダイヤモンドライクカーボン層は、直接基材の上に形成されていてもよく、あるいは、上記した他の層、例えばハードコート層または反射防止層などを介して形成されていてもよい。
【0018】
本発明においてダイヤモンドライクカーボンとは、ダイヤモンド結合(炭素同士のsp
3混成軌道による結合)とグラファイト結合(炭素同士のsp
2混成軌道による結合)の両方の結合が混在しているアモルファス構造を有するカーボンを意味する。また、ダイヤモンドライクカーボンは、炭素以外の原子、例えば水素、酸素、珪素、窒素、アルミニウム、硼素、燐等を含んでいてもよい。
【0019】
ダイヤモンドライクカーボン層の厚みは、特に限定されないが、例えば1nm〜100μm、好ましくは1nm〜1000nm、より好ましくは1nm〜100nmであり得る。
【0020】
ダイヤモンドライクカーボン層は、例えば、化学蒸着(CVD)法、例えば熱CVD法、プラズマCVD法等、または物理蒸着(PVD)法、例えば真空蒸着法、スパッタ法等により形成することができる。
【0021】
ダイヤモンドライクカーボン層は、下記する表面処理剤に含まれる含フッ素化合物との結合能を有し、また、物品の硬度、耐摩耗性等を向上させる。
【0022】
上記防汚性コーティング層は、含フッ素化合物、例えばパーフルオロポリエーテル基またはパーフルオロアルキル基含有化合物を含む表面処理剤を用いて、ダイヤモンドライクカーボン層上に形成される。
【0023】
上記含フッ素化合物は、下記式(A1)、(A2)、(B1)および(B2):
【化3】
のいずれかで表される1種またはそれ以上の化合物である。以下、上記式(A1)、(A2)、(B1)および(B2)について説明する。
【0024】
なお、本明細書において用いられる場合、「2〜10価の有機基」とは、炭素を含有する2〜10価の基を意味する。かかる2〜10価の有機基としては、特に限定されるものではないが、炭化水素基からさらに1〜9個の水素原子を脱離させた2〜10価の基が挙げられる。例えば、2価の有機基としては、特に限定されるものではないが、炭化水素基からさらに1個の水素原子を脱離させた2価の基が挙げられる。
【0025】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素および水素を含む基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、炭素数1〜20の炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つまたはそれ以上の環構造を含んでいてもよい。なお、かかる炭化水素基は、その末端または分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有していてもよい。
【0026】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子;1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、C
2−6アルキニル基、C
3−10シクロアルキル基、C
3−10不飽和シクロアルキル基、5〜10員のヘテロシクリル基、5〜10員の不飽和ヘテロシクリル基、C
6−10アリール基、5〜10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0027】
式(A1)および(A2):
【化4】
【0028】
上記式中、Aは、各出現においてそれぞれ独立して、−OH、−SH、−COOH、−COSH、−CONH
2、−P(O)(OH)
2、−OP(O)(OH)
2、−NR
12、
【化5】
を表し、好ましくは、−SH、−P(O)(OH)
2、−OP(O)(OH)
2、−NR
12、または
【化6】
である。
【0029】
上記R
1は、それぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表す。低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。
上記X
1は、それぞれ独立して、OまたはSを表す。
M
1およびM
2は、それぞれ独立して、水素原子またはアルカリ金属を表す。アルカリ金属は、例えばLi、NaまたはKなどが好ましい。
【0030】
Yは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表す。好ましくは、Yは、単結合、または炭化水素基(好ましくは置換されていてもよいC
1−6アルキル基)であり得る。
【0031】
上記式中、Rfは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表す。
【0032】
上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基における「炭素数1〜16のアルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖の炭素数1〜6、特に炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくは直鎖の炭素数1〜3のアルキル基である。
【0033】
上記Rfは、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されている炭素数1〜16のアルキル基であり、より好ましくはCF
2H−C
1−15フルオロアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1〜16のパーフルオロアルキル基である。
【0034】
該炭素数1〜16のパーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖の炭素数1〜6、特に炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖の炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、具体的には−CF
3、−CF
2CF
3、または−CF
2CF
2CF
3である。
【0035】
上記式中、PFPEは、−(OC
4F
8)
a−(OC
3F
6)
b−(OC
2F
4)
c−(OCF
2)
d−を表し、パーフルオロ(ポリ)エーテル基に該当する。ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して0または1以上の整数であって、a、b、cおよびdの和が少なくとも1であれば特に限定されるものではない。好ましくは、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して0以上200以下の整数、例えば1以上200以下の整数であり、より好ましくは、それぞれ独立して0以上100以下の整数、例えば1以上100以下の整数である。さらに好ましくは、a、b、cおよびdの和は、10以上、好ましくは20以上であり、200以下、好ましくは100以下である。また、a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。これら繰り返し単位のうち、−(OC
4F
8)−は、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3))−、−(OC(CF
3)
2CF
2)−、−(OCF
2C(CF
3)
2)−、−(OCF(CF
3)CF(CF
3))−、−(OCF(C
2F
5)CF
2)−および−(OCF
2CF(C
2F
5))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
3F
6)−は、−(OCF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2)−および−(OCF
2CF(CF
3))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2)−である。また、−(OC
2F
4)−は、−(OCF
2CF
2)−および−(OCF(CF
3))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2)−である。
【0036】
一の態様において、PFPEは、−(OC
3F
6)
b−(式中、bは1以上200以下、好ましくは10以上100以下の整数である)であり、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2)
b−(式中、bは上記と同意義である)である。
【0037】
別の態様において、PFPEは、−(OC
4F
8)
a−(OC
3F
6)
b−(OC
2F
4)
c−(OCF
2)
d−(式中、aおよびbは、それぞれ独立して0以上または1以上30以下、好ましくは0以上10以下の整数であり、cおよびdは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは10以上100以下の整数である。a、b、cおよびdの和は、10以上、好ましくは20以上であり、200以下、好ましくは100以下である。添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である)であり、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)
a−(OCF
2CF
2CF
2)
b−(OCF
2CF
2)
c−(OCF
2)
d−(式中、a、b、cおよびdは上記と同意義である)である。例えば、PFPEは、−(OCF
2CF
2)
c−(OCF
2)
d−(式中、cおよびdは上記と同意義である)であってもよい。
【0038】
さらに別の態様において、PFPEは、−(OC
2F
4−R
3)
i−(式中、R
3は、各出現においてそれぞれ独立して、OC
2F
4、OC
3F
6およびOC
4F
8から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、iは、2〜100の整数、好ましくは2〜50の整数である。)である。
【0039】
上記R
3における、OC
2F
4、OC
3F
6およびOC
4F
8から独立して選択される2または3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば−OC
2F
4OC
3F
6−、−OC
2F
4OC
4F
8−、−OC
3F
6OC
2F
4−、−OC
3F
6OC
3F
6−、−OC
3F
6OC
4F
8−、−OC
4F
8OC
4F
8−、−OC
4F
8OC
3F
6−、−OC
4F
8OC
2F
4−、−OC
2F
4OC
2F
4OC
3F
6−、−OC
2F
4OC
2F
4OC
4F
8−、−OC
2F
4OC
3F
6OC
2F
4−、−OC
2F
4OC
3F
6OC
3F
6−、−OC
2F
4OC
4F
8OC
2F
4−、−OC
3F
6OC
2F
4OC
2F
4−、−OC
3F
6OC
2F
4OC
3F
6−、−OC
3F
6OC
3F
6OC
2F
4−、および−OC
4F
8OC
2F
4OC
2F
4−等が挙げられる。上記式中、OC
2F
4、OC
3F
6およびOC
4F
8は、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、PFPEは、好ましくは、−(OC
2F
4−OC
3F
6)
i−または−(OC
2F
4−OC
4F
8)
i−である。
【0040】
上記PFPE基の平均分子量は、特に限定されるものではないが、500〜30,000、好ましくは1,500〜30,000、より好ましくは2,000〜10,000である。なお、本発明において「平均分子量」は数平均分子量を言い、「平均分子量」は、
19F−NMRにより測定される値とする。
【0041】
上記式(A1)および(A2)中、X
3は、それぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表す。当該X
3は、式(A1)および(A2)で表される化合物において、主に撥水性および表面滑り性等を提供するパーフルオロポリエーテル部(Rf−PFPE部または−PFPE−部)と、ダイヤモンドライクカーボン層との結合能を有する基(具体的には、A基またはA基を含む基)とを連結するリンカーと解される。従って、当該X
3は、式(A1)および(A2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、いずれの有機基であってもよい。
【0042】
上記式中のαは、1〜9の整数であり、α’は、1〜9の整数である。これらαおよびα’は、X
3の価数に応じて決定され、式(A1)において、αおよびα’の和は、X
3の価数の値である。例えば、X
3が10価の有機基である場合、αおよびα’の和は10であり、例えばαが9かつα’が1、αが5かつα’が5、またはαが1かつα’が9となり得る。また、X
3が2価の有機基である場合、αおよびα’は1である。式(A2)において、αはX
3の価数の値から1を引いた値である。
【0043】
上記X
3は、好ましくは2〜7価、より好ましくは2〜4価、さらに好ましくは2価の有機基である。
【0044】
上記X
3の例としては、特に限定するものではないが、例えば、下記式:
−(R
31)
p’−(X
a)
q’−R
32−
[式中:
R
31は、単結合、−(CH
2)
s’−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、好ましくは−(CH
2)
s’−であり、
R
32は、単結合、−(CH
2)
t’−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、好ましくは−(CH
2)
t’−であり、
s’は、1〜20の整数、好ましくは1〜6の整数、より好ましくは1〜3の整数、さらにより好ましくは1または2であり、
t’は、1〜20の整数、好ましくは1〜6の整数、より好ましくは1〜3の整数であり、
X
aは、−(X
b)
r’−を表し、
X
bは、各出現においてそれぞれ独立して、−O−、−S−、o−、m−もしくはp−フェニレン基、−NR
34−および−(CH
2)
n’−からなる群から選択される基を表し、
R
34は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC
1−6アルキル基(好ましくはメチル基)を表し、
n’は、各出現において、それぞれ独立して、1〜20の整数、好ましくは1〜6の整数、より好ましくは1〜3の整数であり、
r’は、1〜10の整数、好ましくは1〜5の整数、より好ましくは1〜3の整数であり、
p’は、0または1であり、
q’は、0または1である。]
で表される2価の基が挙げられる。
【0045】
好ましくは、上記X
3は、
C
1−20アルキレン基、または
−R
31−X
c−R
32−
[式中、R
31およびR
32は、上記と同意義である。]
であり得る。
【0046】
より好ましくは、上記X
3は、
C
1−20アルキレン基、
−(CH
2)
s’−X
c−、または
−(CH
2)
s’−X
c−(CH
2)
t’−
[式中、s’およびt’は、上記と同意義である。]
である。
【0048】
より好ましくは、上記X
3は、
C
1−20アルキレン基、または
−(CH
2)
s’−X
c−(CH
2)
t’−
[式中、各記号は、上記と同意義である。]
であり得る。
【0049】
さらにより好ましくは、上記X
3は、
C
1−20アルキレン基、または
−(CH
2)
s’−O−(CH
2)
t’−
[式中、各記号は、上記と同意義である。]
である。
【0050】
上記X
3基は、フッ素原子、C
1−3アルキル基およびC
1−3フルオロアルキル基(好ましくは、C
1−3パーフルオロアルキル基)から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0051】
上記X
3の具体的な例としては、例えば:
−CH
2OCH
2−、
−CH
2O(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3−、
−CH
2O(CH
2)
6−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2−
−CH
2−、
−(CH
2)
2−、
−(CH
2)
3−、
−(CH
2)
4−、および
−(CH
2)
6−、
などが挙げられる。
【0052】
上記式(A1)および(A2)で表される化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、例えば1,000〜40,000、好ましくは2,000〜32,000、より好ましくは2,000〜20,000、さらにより好ましくは2,500〜12,000であり得る。
【0053】
上記式(A1)および(A2)で表される化合物は、例えば、Rf−PFPE−部分に対応するパーフルオロポリエーテル誘導体を原料として、末端に水酸基を導入した後、−Y−A部分に対応する基、例えば末端にハロゲン化アルキルを有する化合物とWilliamson反応に付すこと等により得ることができる。
【0054】
また、Y−A部分が前駆体基である化合物を合成し、この前駆体基を、当該分野で公知の方法により、Y−A基に変換することにより、製造することができる。
【0055】
式(B1)および(B2):
【化7】
【0056】
上記式(B1)および(B2)中、YおよびAは、上記式(A1)および(A2)に関する記載と同意義である。
【0057】
上記式中、X
6は、それぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表す。当該X
6は、式(B1)および(B2)で表される化合物において、主に撥水性等を提供するフルオロアルキル部(R
91−Rf’−または−Rf’−部)と、基材との結合能を有する基(具体的には、A基またはA基を含む基)とを連結するリンカーと解される。従って、当該X
6は、式(B1)および(B2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、いずれの有機基であってもよい。
【0058】
上記式中のβは、1〜9の整数であり、β’は、1〜9の整数である。これらβおよびβ’は、X
6の価数に応じて決定され、式(B1)において、βおよびβ’の和は、X
6の価数の値である。例えば、X
6が10価の有機基である場合、βおよびβ’の和は10であり、例えばβが9かつβ’が1、βが5かつβ’が5、またはβが1かつβ’が9となり得る。また、X
6が2価の有機基である場合、βおよびβ’は1である。式(B2)において、βはX
6の価数の値から1を引いた値である。
【0059】
上記X
6は、好ましくは2〜7価、より好ましくは2〜4価、さらに好ましくは2価の有機基である。
【0060】
上記X
6の例としては、特に限定するものではないが、例えば、X
3に関して記載したものと同様のものが挙げられる。
【0061】
上記式中、R
91は、フッ素原子、−CHF
2または−CF
3を表し、好ましくはフッ素原子または−CF
3である。
【0062】
Rf’は、炭素数1〜20のパーフルオロアルキレン基を表す。Rf’は、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜6、さらに好ましくは炭素数3〜6であることが好ましい。具体的なRf’の例としては、−CF
2−、−CF
2CF
2−、−CF
2CF
2CF
2−、−CF(CF
3)−、−CF
2CF
2CF
2CF
2−、−CF
2CF(CF
3)−、−C(CF
3)
2−、−(CF
2)
4CF
2−、−(CF
2)
2CF(CF
3)−、−CF
2C(CF
3)
2−、−CF(CF
3)CF
2CF
2CF
2−、−(CF
2)
5CF
2−、−(CF
2)
3CF(CF
3)−、−(CF
2)
4CF(CF
3)−、−C
8F
16−が挙げられ、中でも、直鎖の炭素数3〜6のパーフルオロアルキレン、例えば、−CF
2CF
2CF
2CF
2−、−CF
2CF
2CF
2−等が好ましい。
【0063】
上記式(B1)および(B2)で表される化合物は、例えば、R
91−Rf’−部分に対応するフルオロアルキル誘導体を原料として、末端に水酸基を導入した後、−Y−A部分に対応する基、例えば末端にハロゲン化アルキルを有する化合物とWilliamson反応に付すこと等により得ることができる。
【0064】
また、Y−A部分が前駆体基である化合物を合成し、この前駆体基を、当該分野で公知の方法により、Y−A基に変換することにより、製造することができる。
【0065】
好ましい態様において、含フッ素化合物は、式(A1)および式(A2)のいずれかで表される1種またはそれ以上の化合物である。より好ましくは、含フッ素化合物は、式(A1)で表される1種またはそれ以上の化合物である。
【0066】
別の好ましい態様において、含フッ素化合物は、式(B1)および式(B2)のいずれかで表される1種またはそれ以上の化合物である。より好ましくは、含フッ素化合物は、式(B1)で表される1種またはそれ以上の化合物である。
【0067】
防汚性コーティング層の形成に用いられる表面処理剤は、溶媒で希釈されていてもよい。このような溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、パーフルオロヘキサン、CF
3CF
2CHCl
2、CF
3CH
2CF
2CH
3、CF
3CHFCHFC
2F
5、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタン、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン((ゼオローラH(商品名)等)、C
4F
9OCH
3、C
4F
9OC
2H
5、CF
3CH
2OCF
2CHF
2、C
6F
13CH=CH
2、キシレンヘキサフルオリド、パーフルオロベンゼン、メチルペンタデカフルオロヘプチルケトン、トリフルオロエタノール、ペンタフルオロプロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、HCF
2CF
2CH
2OH、メチルトリフルオロメタンスルホネート、トリフルオロ酢酸およびCF
3O(CF
2CF
2O)
m(CF
2O)
nCF
2CF
3[式中、mおよびnは、それぞれ独立して0以上1000以下の整数であり、mまたはnを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、但しmおよびnの和は1以上である。]、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1,2−ジクロロ−1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,1,2−トリクロロ―3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンからなる群から選択される溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上の混合物として用いることができる。
【0068】
防汚性コーティング層の形成に用いられる表面処理剤は、含フッ素化合物に加え、他の成分を含んでいてもよい。かかる他の成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、含フッ素オイルとして理解され得る(非反応性の)フルオロポリエーテル化合物、好ましくはパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物(以下、「含フッ素オイル」と言う)、シリコーンオイルとして理解され得る(非反応性の)シリコーン化合物(以下、「シリコーンオイル」と言う)、触媒などが挙げられる。
【0069】
上記含フッ素オイルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の一般式(3)で表される化合物(パーフルオロ(ポリ)エーテル化合物)が挙げられる。
Rf
1−(OC
4F
8)
a’−(OC
3F
6)
b’−(OC
2F
4)
c’−(OCF
2)
d’−Rf
2 ・・・(3)
式中、Rf
1は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1−16のアルキル基(好ましくは、C
1―16のパーフルオロアルキル基)を表し、Rf
2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC
1−16のアルキル基(好ましくは、C
1−16のパーフルオロアルキル基)、フッ素原子または水素原子を表し、Rf
1およびRf
2は、より好ましくは、それぞれ独立して、C
1−3のパーフルオロアルキル基である。
a’、b’、c’およびd’は、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロ(ポリ)エーテルの4種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上300以下の整数であって、a’、b’、c’およびd’の和は少なくとも1、好ましくは1〜300、より好ましくは20〜300である。添字a’、b’、c’またはd’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。これら繰り返し単位のうち、−(OC
4F
8)−は、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3))−、−(OC(CF
3)
2CF
2)−、−(OCF
2C(CF
3)
2)−、−(OCF(CF
3)CF(CF
3))−、−(OCF(C
2F
5)CF
2)−および−(OCF
2CF(C
2F
5))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
3F
6)−は、−(OCF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2)−および−(OCF
2CF(CF
3))−のいずれであってもよく、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
2F
4)−は、−(OCF
2CF
2)−および−(OCF(CF
3))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2)−である。
【0070】
上記一般式(3)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物の例として、以下の一般式(3a)および(3b)のいずれかで示される化合物(1種または2種以上の混合物であってよい)が挙げられる。
Rf
1−(OCF
2CF
2CF
2)
b’’−Rf
2 ・・・(3a)
Rf
1−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)
a’’−(OCF
2CF
2CF
2)
b’’−(OCF
2CF
2)
c’’−(OCF
2)
d’’−Rf
2 ・・・(3b)
これら式中、Rf
1およびRf
2は上記の通りであり;式(3a)において、b’’は1以上100以下の整数であり;式(3b)において、a’’およびb’’は、それぞれ独立して1以上30以下の整数であり、c’’およびd’’はそれぞれ独立して1以上300以下の整数である。添字a’’、b’’、c’’、d’’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。
【0071】
上記含フッ素オイルは、1,000〜30,000の平均分子量を有していてよい。これにより、高い表面滑り性を得ることができる。
【0072】
上記表面処理剤中、含フッ素オイルは、上記含フッ素化合物の合計100質量部(それぞれ、2種以上の場合にはこれらの合計、以下も同様)に対して、例えば0〜500質量部、好ましくは0〜400質量部、より好ましくは5〜300質量部で含まれ得る。
【0073】
一般式(3a)で示される化合物および一般式(3b)で示される化合物は、それぞれ単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。一般式(3a)で示される化合物よりも、一般式(3b)で示される化合物を用いるほうが、より高い表面滑り性が得られるので好ましい。これらを組み合わせて用いる場合、一般式(3a)で表される化合物と、一般式(3b)で表される化合物との質量比は、1:1〜1:30が好ましく、1:1〜1:10がより好ましい。かかる質量比によれば、表面滑り性と摩擦耐久性のバランスに優れた防汚性コーティング層を得ることができる。
【0074】
一の態様において、含フッ素オイルは、一般式(3b)で表される1種またはそれ以上の化合物を含む。かかる態様において、表面処理剤中の含フッ素化合物の合計と、式(3b)で表される化合物との質量比は、4:1〜1:4であることが好ましい。
【0075】
好ましい態様において、真空蒸着法により防汚性コーティング層を形成する場合には、含フッ素化合物の平均分子量よりも、含フッ素オイルの平均分子量を大きくしてもよい。このような平均分子量とすることにより、より優れた摩擦耐久性と表面滑り性を得ることができる。
【0076】
また、別の観点から、含フッ素オイルは、一般式Rf
3−F(式中、Rf
3はC
5−16パーフルオロアルキル基である。)で表される化合物であってよい。また、クロロトリフルオロエチレンオリゴマーであってもよい。Rf
3−Fで表される化合物およびクロロトリフルオロエチレンオリゴマーは、末端がC
1−16パーフルオロアルキル基である上記含フッ素化合物で表される化合物と高い親和性が得られる点で好ましい。
【0077】
含フッ素オイルは、防汚性コーティング層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0078】
上記シリコーンオイルとしては、例えばシロキサン結合が2,000以下の直鎖状または環状のシリコーンオイルを用い得る。直鎖状のシリコーンオイルは、いわゆるストレートシリコーンオイルおよび変性シリコーンオイルであってよい。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルを、アルキル、アラルキル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル、フルオロアルキル、アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコールなどにより変性したものが挙げられる。環状のシリコーンオイルは、例えば環状ジメチルシロキサンオイルなどが挙げられる。
【0079】
上記表面処理剤中、かかるシリコーンオイルは、含フッ素化合物の合計100質量部(2種以上の場合にはこれらの合計、以下も同様)に対して、例えば0〜300質量部、好ましくは0〜200質量部で含まれ得る。
【0080】
シリコーンオイルは、防汚性コーティング層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0081】
上記触媒としては、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)等が挙げられる。
【0082】
触媒は、含フッ素化合物とダイヤモンドライクカーボン層との反応を促進し、防汚性コーティング層の形成を促進する。
【0083】
上記表面処理剤は、多孔質物質、例えば多孔質のセラミック材料、金属繊維、例えばスチールウールを綿状に固めたものに含浸させて、ペレットとすることができる。当該ペレットは、例えば、真空蒸着に用いることができる。
【0084】
上記表面処理剤を、基材上のダイヤモンドライクカーボン層の表面に適用し、必要に応じて後処理することにより、防汚性コーティング層を形成することができる。表面処理剤の適用方法は、特に限定されない。例えば、湿潤被覆法および乾燥被覆法を使用できる。
【0085】
湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティングおよび類似の方法が挙げられる。
【0086】
乾燥被覆法の例としては、蒸着(通常、真空蒸着)、スパッタリング、CVDおよび類似の方法が挙げられる。蒸着法(通常、真空蒸着法)の具体例としては、抵抗加熱、電子ビーム、マイクロ波等を用いた高周波加熱、イオンビームおよび類似の方法が挙げられる。CVD方法の具体例としては、プラズマ−CVD、光学CVD、熱CVDおよび類似の方法が挙げられる。
【0087】
更に、常圧プラズマ法による被覆も可能である。
【0088】
湿潤被覆法を使用する場合、表面処理剤は、溶媒で希釈されてから基材表面に適用され得る。表面処理剤の安定性および溶媒の揮発性の観点から、次の溶媒が好ましく使用される:C
5−12のパーフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサンおよびパーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン);ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、C
6F
13CH
2CH
3(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC−6000)、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオローラ(登録商標)H);ハイドロフルオロカーボン(HFC)(例えば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc));ハイドロクロロフルオロカーボン(例えば、HCFC−225(アサヒクリン(登録商標)AK225));ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(C
3F
7OCH
3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標名)7000)、パーフルオロブチルメチルエーテル(C
4F
9OCH
3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標名)7100)、パーフルオロブチルエチルエーテル(C
4F
9OC
2H
5)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標名)7200)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(C
2F
5CF(OCH
3)C
3F
7)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標名)7300)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基およびアルキル基は直鎖または分枝状であってよい)、あるいはCF
3CH
2OCF
2CHF
2(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AE−3000))、1,2−ジクロロ−1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製のバートレル(登録商標)サイオン)など。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上を組み合わせて混合物として用いることができる。さらに、例えば、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物(i)およびパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有アミドシラン化合物(ii)(存在する場合には、さらにアミン化合物(iii))の溶解性を調整する等のために、別の溶媒と混合することもできる。
【0089】
乾燥被覆法を使用する場合、表面処理剤は、そのまま乾燥被覆法に付してもよく、または、上記した溶媒で希釈してから乾燥被覆法に付してもよい。例えば、表面処理剤をそのまま蒸着(通常、真空蒸着)処理するか、あるいは鉄や銅などの金属多孔体またはセラミック多孔体に、表面処理剤を含浸させたペレット状物質を用いて蒸着(通常、真空蒸着)処理をしてもよい。
【0090】
上記後処理としては、例えば、熱処理が挙げられる。熱処理の温度は、特に限定されないが、例えば、60〜250℃、好ましくは100℃〜180℃であってもよい。熱処理の時間は、特に限定されないが、例えば30分〜5時間、好ましくは1〜3時間であってもよい。
【0091】
防汚性コーティング層の厚さは、特に限定されない。光学部材の場合、防汚性コーティング層の厚さは、1〜50nm、好ましくは1〜30nm、より好ましくは1〜15nmの範囲であることが、光学性能、表面滑り性、摩擦耐久性および防汚性の点から好ましい。
【0092】
上記のようにして、ダイヤモンドライクカーボン層の表面に、表面処理剤を用いて防汚性コーティング層(表面処理層)が形成され、本発明の防汚性物品が製造される。
【0093】
本発明の防汚性物品において、ダイヤモンドライクカーボン層と、防汚性コーティング層を形成する含フッ素化合物との結合は、ダイヤモンドライクカーボン層のsp
2混成軌道を有する部分と、含フッ素化合物のA基との反応により形成される。これにより、加水分解反応を受けやすい−Si−O−Si−結合ではなく、他の結合、例えば、−C−O−結合、−C−N−結合、−C−S−結合等でダイヤモンドライクカーボン層と含フッ素化合物とを結合させることが可能になり、耐酸性および耐アルカリ性に優れた防汚性コーティング層を得ることができる。また、この防汚性コーティング層は、高い耐酸および耐アルカリ性に加えて、使用する表面処理剤の組成にもよるが、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、表面滑り性(または潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)などを有し得、機能性薄膜として好適に利用され得る。
【0094】
好ましい態様において、本発明の防汚性物品は、光学部材であり得る。光学部材の例としては、次のものが挙げられる:眼鏡などのレンズ;陰極線管(CRT;例、TV、パソコンモニター)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、電界放出ディスプレイ(FED;Field Emission Display)などのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板;携帯電話、携帯情報端末などの機器のタッチパネルシート;ブルーレイ(Blu−ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CD−R、MOなどの光ディスクのディスク面;光ファイバーなど。
【0095】
また、本発明の防汚性物品は、医療機器または医療材料であってもよい。
【0096】
以上、本発明の表面処理剤を使用して得られる物品について詳述した。なお、本発明の表面処理剤の用途、使用方法ないし物品の製造方法などは、上記で例示したものに限定されない。
【実施例】
【0097】
実施例1
化学強化ガラス(コーニング社製、「ゴリラ」ガラス、厚さ0.7mm)上に、プラズマCVD装置により、原料ガスにメタンを用いて、ダイヤモンドライクカーボン層を形成した。続いて、真空蒸着装置で、ダイヤモンドライクカーボン層の上に、下記の平均組成を有するアミノ基含パーフルオロポリエーテル化合物(A)を、化学強化ガラス1枚(55mm×100mm)あたり0.4mg、抵抗加熱により真空蒸着した。その後、処理表面の余分な防汚薬剤をエタノールでふき取り、防汚性コーティング層を作成した。
・アミノ基含パーフルオロポリエーテル化合物(A)
CF
3CF
2CF
2O(CF
2CF
2CF
2O)
21CF
2CF
2CH
2NH
2
【0098】
実施例2
化合物(A)に代えて、下記の平均組成を有するリン酸基含パーフルオロポリエーテル化合物(B)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、防汚性コーティング層を形成した。
・リン酸基含パーフルオロポリエーテル化合物(B)
CF
3CF
2CF
2O(CF
2CF
2CF
2O)
21CF
2CF
2CH
2OP(O)(OH)
2
【0099】
比較例1
化学強化ガラス(コーニング社製、「ゴリラ」ガラス、厚さ0.7mm)上に、まず、電子線蒸着方式により二酸化ケイ素膜を形成し、下記の平均組成を有するシラン基含有パーフルオロポリエーテル化合物(C)を、化学強化ガラス1枚(55mm×100mm)あたり0.4mg、抵抗加熱により真空蒸着した。その後、処理表面の余分な防汚薬剤をエタノールでふき取り、防汚性コーティング層を作成した。
・シラン基含パーフルオロポリエーテル化合物(C)
CF
3CF
2CF
2O(CF
2CF
2CF
2O)
20CF
2CF
2CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3
【0100】
比較例2
化学強化ガラス(コーニング社製、「ゴリラ」ガラス、厚さ0.7mm)上に、まず、電子線蒸着方式により二酸化ケイ素膜を形成し、下記のアミノプロピルトリエトキシシラン(D)を、化学強化ガラス1枚(55mm×100mm)あたり0.2mg、抵抗加熱により真空蒸着させた後、さらにその上に、シラン基含パーフルオロポリエーテル化合物(C)を、化学強化ガラス1枚(55mm×100mm)あたり0.4mg蒸着させた。その後、処理表面の余分な防汚薬剤をエタノールでふき取り、防汚性コーティング層を作成した。
・アミノプロピルトリエトキシシラン(D)
NH
2CH
2CH
2CH
2Si(OC
2H
5)
3
【0101】
・人口汗耐久性評価
上記の実施例1および2ならびに比較例1および2にてダイヤモンドライクカーボン層に形成された防汚性コーティング層について、人口汗耐久性を評価した。具体的には、防汚性コーティング層を形成した基材を下記に示す組成の人口汗に浸漬し、60℃の加温条件下で、48時間、168時間、504時間、840時間毎に引き上げ、表面を蒸留水、エタノールで洗浄し、その後、水の静的接触角(度)を測定した。接触角の測定値が100度未満となった時点で評価を中止した。結果を表3に示す(表中、記号「−」は測定せず)。
・人口汗の組成
無水リン酸水素二ナトリウム:2g
塩化ナトリウム:20g
85%乳酸:2g
ヒスチジン塩酸塩:5g
蒸留水:1kg
【0102】
【表1】
【0103】
表1の結果から理解されるように、実施例1および2の防汚性コーティング層は、優れた汗耐性を示すことが確認された。これは、基材表面のダイヤモンドライクカーボン層と、含フッ素化合物間の結合が、アルカリ環境の影響を受けにくいため機能が維持されたと考えられる。一方、比較例1および2は、ダイヤモンドライクカーボン層と含フッ素化合物(C)との結合が、Si−O−Si結合であるので、人工汗のアルカリ環境では、加水分解を受けやすいためと考えられる。