特許第5967299号(P5967299)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967299
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】電力変換装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/17 20160101AFI20160728BHJP
   H02P 9/08 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   H02P6/17
   H02P9/08 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-513657(P2015-513657)
(86)(22)【出願日】2014年4月7日
(86)【国際出願番号】JP2014060049
(87)【国際公開番号】WO2014175046
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2015年4月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-89138(P2013-89138)
(32)【優先日】2013年4月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】糸魚川 信夫
(72)【発明者】
【氏名】市原 孝男
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−142112(JP,A)
【文献】 特開2007−159231(JP,A)
【文献】 特開2007−017026(JP,A)
【文献】 特開2005−184947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/17
H02P 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
還流ダイオードが逆並列に接続され、かつブリッジ接続された複数の半導体スイッチング素子のON,OFFにより、直流電力と交流電力とを相互に変換可能な電力変換部と、前記電力変換部の交流端子に接続された回転電機と、を備えた電力変換装置において、
前記回転電機が交流発電機であり、前記交流発電機の起動時に前記電力変換部の直流電圧が、駆動源により駆動される前記交流発電機の端子電圧より低い時に、前記複数の半導体スイッチング素子のうち少なくとも一つを断続的にON,OFFさせて前記電力変換部の直流電圧を前記端子電圧以上に昇圧した状態で前記交流発電機の速度検出動作を実行することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
還流ダイオードが逆並列に接続され、かつブリッジ接続された複数の半導体スイッチング素子のON,OFFにより、直流電力と交流電力とを相互に変換可能な電力変換部と、前記電力変換部の交流端子に接続された回転電機と、を備えた電力変換装置において、
前記回転電機が交流電動機であり、前記交流電動機の起動時に、前記電力変換部の直流電圧が、前記交流電動機の端子電圧より低い時に、前記複数の半導体スイッチング素子のうち少なくとも一つを断続的にON,OFFさせて前記電力変換部の直流電圧を前記端子電圧以上に昇圧した状態で前記交流電動機の速度検出動作を実行することを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載した電力変換装置において、
商用電源と、前記商用電源の交流電力を直流電力に変換するコンバータ部と、を備え、
前記コンバータ部の正負出力端子を、前記電力変換部の直流端子間に接続されたコンデンサの両端にそれぞれ接続したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項に記載した電力変換装置において、
前記コンデンサの両端に電源供給端子をそれぞれ接続し、前記電源供給端子から外部の負荷に電源を供給することを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項に記載した電力変換装置において、
前記電力変換部の直流端子間にコンデンサを接続すると共に前記コンデンサの両端に電源供給端子をそれぞれ接続し、前記電源供給端子から外部の負荷に電源を供給することを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載した電力変換装置の制御方法において、
前記電力変換部の直流電圧を前記端子電圧以上に昇圧する動作を、
前記電力変換部を構成する複数の半導体スイッチング素子のうち、前記電力変換部の上アームまたは下アームを構成する全ての半導体スイッチング素子を同時かつ断続的にON,OFFさせて行うことを特徴とする電力変換装置の制御方法
【請求項7】
請求項1または2に記載した電力変換装置の制御方法において、
前記速度検出動作は、
前記複数の半導体スイッチング素子のうち少なくとも一つをONさせた時に当該スイッチング素子と前記回転電機の固定子巻線とを還流する短絡電流の通流期間に基づいて前記回転電機の回転速度を検出する動作であることを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電動機、交流発電機等の回転電機の安定した起動を可能にした電力変換装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転電機としての永久磁石形同期電動機(PMSM)を駆動する電力変換装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。
図5は、特許文献1に記載された従来技術を示す図である。図5において、101は直流電源、102は半導体スイッチング素子及び還流ダイオードからなる三相の電圧形インバータ、Mは永久磁石形同期電動機、103は電流検出器、104は電流検出器ゲイン、105は相数変換部、106は空転再起動制御部、107は座標変換部、108は磁極位置推定部、109は速度演算部、110は電流制御部、111はゲート信号切替部である。
【0003】
図5に示した、いわゆる位置・速度センサレス方式の電力変換装置は、インバータ102が停止していて同期電動機Mに電圧が印加されていない状態で回転子が空転し、同期電動機Mの固定子巻線に誘起電圧が発生しているような場合に、インバータ102の速やかな再起動を可能にするものである。
すなわち、図5において、空転再起動制御部106は、インバータ102が停止していて同期電動機Mの電流がゼロである状態を、相数変換部105から出力される巻線電流の二相成分iα,iβから検出する。この空転再起動制御部106が、インバータ102の半導体スイッチング素子の少なくとも一つをONさせるようなゲート信号を生成し、切替制御信号sによってゲート信号切替部111を空転再起動制御部106側に切り替えると、前記スイッチング素子がONして同期電動機Mの固定子巻線のうち少なくとも一相が短絡される。その際、回転子が空転していれば、固定子巻線の誘起電圧により、ONしたスイッチング素子と他相の還流ダイオードとを介して固定子巻線に短絡電流が流れ、その通流期間は磁極位置と回転速度とに依存するので、上記短絡電流に基づいて磁極位置及び回転速度を推定することができる。
【0004】
上述したように、空転再起動制御部106は、巻線電流がゼロであって回転子が空転しているときに、同期電動機Mの固定子巻線を短絡させて誘起電圧による短絡電流を流すように動作する。そして、このときの短絡電流から磁極位置推定部108及び速度演算部109が磁極位置θ及び回転速度ωを演算し、電流制御部110が電流指令等の初期値を生成してインバータ102を制御することにより、装置の再起動が実行される。
【0005】
この種の電力変換装置において、例えば直流電源101に異常が発生してその後に再起動する場合や、直流電源101に代えて商用電源と整流回路とを組み合わせた整流電源を備えたシステムにおいて、落雷等によって商用電源が停電し(瞬時停電を含む)、その後に再起動する場合、インバータ102の直流電圧が不足することがある。
この場合には、別途設けた補助電源や蓄電池等の予備電源装置を用いて不足電圧を補うことが考えられるが、予備電源装置を備えた制御システムは装置全体が大型化して多くの設置スペースを必要とし、しかも価格が高くなる。
【0006】
一方、特許文献2には、商用電源電圧を整流して直流電圧に変換する第1の電力変換器と、同期電動機をガスエンジンにより駆動して発電機動作させ、その出力電圧を直流電圧に変換する第2の電力変換器と、を共通の直流母線に接続し、直流中間回路の直流電圧を第3の電力変換器により交流電圧に変換してモータ等の補機に供給する従来技術が記載されている。
【0007】
図6は、特許文献2に記載された上記従来技術を示す図である。
図6において、201は商用電源、202は、ダイオード整流回路203及び電解コンデンサ204等を有する第1の電力変換器、205は、交流端子に同期電動機Mが接続され、かつ第1の電力変換器202と直流母線を共通にした第2の電力変換器(PWMコンバータ)、206は同期電動機Mを駆動するガスエンジン、207は電圧検出器、208は電流検出器である。また、209はメインコントローラ、210は演算装置、211はドライブ回路、212はモータコントローラ、213は、第1,第2の電力変換器202,205に並列に接続された第3の電力変換器(インバータ)、214は、電力変換器213により駆動されるモータ等の補機、215はDC/DCコンバータ、216は充電制御装置、217は蓄電装置、218はスタータモータ制御回路、219はガスエンジン206用のスタータモータである。
【0008】
図6の従来技術では、ガスエンジン206が高速運転されて同期電動機Mによる発電電力が所定値以上であれば、その発電電力を電力変換器205により直流電力に変換して電力変換器213に供給し、交流電圧に変換して補機214を駆動する。また、上記直流電力の余剰分をDC/DCコンバータ215に入力し、所定の大きさの直流電圧に変換して充電制御装置216により蓄電装置217を充電する。なお、蓄電装置217の電力は、スタータモータ制御回路218を介してスタータモータ219の駆動に用いられる。
【0009】
更に、ガスエンジン206の低速運転時のように発電効率が悪く、同期電動機Mによる発電電力が小さい場合には、発電制御を行わず、商用電源201を第1の電力変換器202により整流して得た直流電力を電力変換器213やDC/DCコンバータ215に供給し、補機214の駆動や蓄電装置217の充電を行う。
図6の従来技術によれば、上記の動作により、ガスエンジン206の運転状況に応じた補機214の効率的な運転を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11-75394号公報(段落[0011],[0012]、図1等)
【特許文献2】特開2007-17026号公報(段落[0024]〜[0028]、図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図6に示した従来技術において、同期電動機Mによる発電電力が所定値以上である時には、仮に商用電源201が停電していても補機214への電力供給が可能であるが、この場合、次のような問題がある。
まず、図6における同期電動機Mの回転速度(すなわちガスエンジン206の回転速度)は、特許文献1と同様の原理によって検出可能である。すなわち、電力変換器205の何れか一相の下アームのスイッチング素子をONした場合、その相の同期電動機Mの誘起電圧(内部抵抗を無視し、端子電圧と同義であるものとする)が他の何れかの相よりも高ければ、誘起電圧が低い相の下アームの還流ダイオードを介して短絡電流が流れる。この短絡電流が流れる期間は、スイッチング素子をONした相の誘起電圧が他相よりも高い電気角120度の期間であるため、短絡電流が流れる、または流れない時間に基づいて回転速度を検出することができる。
【0012】
しかしながら、商用電源201の停電等により直流中間電圧(電解コンデンサ204の両端電圧)が不足し、同期電動機Mの誘起電圧が直流中間電圧より高い状態では、電力変換器205のスイッチング素子をONしなくても、電力変換器205内の還流ダイオードと直流中間回路内の電解コンデンサ204とを介して固定子巻線の短絡電流が流れる。
すなわち、誘起電圧が電力変換器205の直流中間電圧よりも高い場合には、意図しないタイミングで無制御に短絡電流が流れるので、速度検出時にスイッチング素子を意図的にONさせて流す短絡電流と区別が付かなくなる。このため、同期電動機Mの回転速度を正確に検出することが困難であり、検出不能になるか、あるいは速度の誤検出によって起動に失敗したり、同期電動機Mを安定的に起動できない等の問題があった。
【0013】
そこで、本発明の解決課題は、インバータ部等の電力変換部の直流電圧が回転電機の誘起電圧より低い場合でも、回転電機の速度を正確に検出して安定的に起動可能とした電力変換装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、請求項1に係る電力変換装置は、還流ダイオードが逆並列に接続され、かつブリッジ接続された複数の半導体スイッチング素子のON,OFFにより、直流電力と交流電力とを相互に変換可能な電力変換部と、前記電力変換部の交流端子に接続された回転電機と、を備えた電力変換装置において、前記回転電機が交流発電機であり、前記交流発電機の起動時に前記電力変換部の直流電圧が、駆動源により駆動される前記交流発電機の端子電圧より低い時に、前記複数の半導体スイッチング素子のうち少なくとも一つを断続的にON,OFFさせて前記電力変換部の直流電圧を前記端子電圧以上に昇圧した状態で前記交流発電機の速度検出動作を実行するものである。
【0015】
求項2に係る電力変換装置は、還流ダイオードが逆並列に接続され、かつブリッジ接続された複数の半導体スイッチング素子のON,OFFにより、直流電力と交流電力とを相互に変換可能な電力変換部と、前記電力変換部の交流端子に接続された回転電機と、を備えた電力変換装置において、前記回転電機が交流電動機であり、前記交流電動機の起動時に、前記電力変換部の直流電圧が、前記交流電動機の端子電圧より低い時に、前記複数の半導体スイッチング素子のうち少なくとも一つを断続的にON,OFFさせて前記電力変換部の直流電圧を前記端子電圧以上に昇圧した状態で前記交流電動機の速度検出動作を実行するものである。
【0016】
請求項3に係る電力変換装置は、請求項1または2に記載した電力変換装置において、商用電源と、前記商用電源の交流電力を直流電力に変換するコンバータ部と、を備え、前記コンバータ部の正負出力端子を、前記電力変換部の直流端子間に接続されたコンデンサの両端にそれぞれ接続したものである。
【0017】
請求項4に係る電力変換装置は、請求項3に記載した電力変換装置において、前記コンデンサの両端に電源供給端子をそれぞれ接続し、前記電源供給端子から外部の負荷に電源を供給するものである。
【0018】
請求項5に係る電力変換装置は、請求項1に記載した電力変換装置において、前記電力変換部の直流端子間にコンデンサを接続すると共に前記コンデンサの両端に電源供給端子をそれぞれ接続し、前記電源供給端子から外部の負荷に電源を供給するものである。
【0019】
請求項6に係る電力変換装置の制御方法は、請求項1または2に記載した電力変換装置の制御方法において、前記電力変換部の直流電圧を前記端子電圧以上に昇圧する動作を、前記電力変換部を構成する複数の半導体スイッチング素子のうち、前記電力変換部の上アームまたは下アームを構成する全ての半導体スイッチング素子を同時かつ断続的にON,OFFさせて行うものである。
【0020】
請求項7に係る電力変換装置の制御方法は、請求項1または2に記載した電力変換装置の制御方法において、前記速度検出動作は、前記複数の半導体スイッチング素子のうち少なくとも一つをONさせた時に当該スイッチング素子と前記回転電機の固定子巻線とを還流する短絡電流の通流期間に基づいて前記回転電機の回転速度を検出する動作であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、インバータ部等の電力変換部の直流電圧が回転電機の誘起電圧よりも低く、直流電圧が不足する状態で回転電機を起動する際に、電力変換部のスイッチング動作によって前記直流電圧を昇圧することにより、その後の速度検出動作を可能にして回転電機を安定的に起動することができる。また、補助電源や蓄電池等の予備電源装置が不要になるため、装置全体の小型化、低価格化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る電力変換装置の構成図である。
図2図1におけるインバータ部の制御装置の機能ブロック図である。
図3】本発明の実施形態の動作を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態において、上アームのスイッチング素子をON,OFFさせて昇圧する時の動作説明図である。
図5】特許文献1に記載された従来技術の全体構成図である。
図6】特許文献2に記載された従来技術の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電力変換装置の構成図である。図1において、10は三相の商用電源であり、この商用電源10は、ダイオード21〜26からなるブリッジ整流回路としてのコンバータ部20の交流入力端子に接続されている。また、コンバータ部20の直流出力端子間には、充電抵抗31とコンデンサ33とが直列に接続されている。更に、充電抵抗31の両端はスイッチ32によって短絡可能となっている。ここで、充電抵抗31、スイッチ32及びコンデンサ33は、直流中間回路30を構成している。
なお、コンデンサ33の両端には電源供給端子70が接続されており、この電源供給端子70は、必要に応じて外部の負荷(図示せず)に直流電源を供給するためのものである。
【0025】
コンデンサ33の両端には、還流ダイオードが逆並列に接続され、かつブリッジ接続された半導体スイッチング素子41〜46からなるインバータ部40の直流端子が接続されている。このインバータ部40において、40uはスイッチング素子41,44からなるU相アーム、40vはスイッチング素子42,45からなるV相アーム、40wはスイッチング素子43,46からなるW相アームである。
【0026】
各相アーム40u,40v,40wの交流端子には回転電機50が接続され、その回転子には駆動源または負荷60が連結されている。回転電機50は、例えば永久磁石形同期電動機(発電機)等の交流発電機または交流電動機であり、駆動源または負荷60は、エンジン等の駆動源や、回転電機50により駆動される回転負荷である。以下では、エンジン等の駆動源60により、回転電機50としての永久磁石形同期電動機を発電機動作させる場合について説明する。
なお、81は、直流中間電圧(コンデンサ33の電圧)を検出する電圧検出器、82は、回転電機50の固定子巻線の電流を検出する電流検出器である。
【0027】
図2は、図1におけるインバータ部40の制御装置の機能ブロック図である。
この制御装置90は、電圧検出器81により検出した直流中間電圧を規定値と比較する電圧比較手段92と、電流検出器82により検出した電流を規定値と比較する電流比較手段93と、電圧比較手段92及び電流比較手段93による比較結果とタイマによる計測時間とに基づいて速度検出処理等を実行する演算制御手段91と、その演算結果に従ってインバータ部40の所定のスイッチング素子に対するゲート信号を生成するゲート信号生成手段94と、を備えている。
【0028】
次に、本実施形態における回転電機50の起動時の動作を、図3のフローチャートに沿って説明する。まず、起動時の突入電流を防止するために図1のスイッチ32をOFFにして直流中間回路30に充電抵抗31を挿入し、コンバータ部20の出力電圧によりコンデンサ33を充電する。一方、駆動源60により回転電機50を駆動し、回転電機50の端子間に誘起電圧を発生させる。
【0029】
図3に示すように、起動時には、電圧検出器81により直流中間電圧を検出し(ステップS1)、検出した直流中間電圧を電圧比較手段92により規定値と比較する(ステップS2)。ここで、上記規定値は、回転電機50の誘起電圧より大きい値に設定されている。
直流中間電圧が規定値以上である場合(ステップS2 Yes)、回転電機50の誘起電圧によってインバータ部40内の還流ダイオードとコンデンサ33とを経由する還流電流(回転電機50の固定子巻線の短絡電流)が流れることはない。従って、演算制御手段91は速度検出処理(ステップS3)を実行し、回転電機50の磁極位置及び回転速度を検出する。すなわち、演算制御手段91は、インバータ部40内のONするべきスイッチング素子を決定し、その情報に従ってゲート信号生成手段94がゲート信号を生成する。これにより、ONさせた相のスイッチング素子と他相の還流ダイオードとを介して回転電機50の固定子巻線が短絡するので、前述した特許文献1,2等に記載された方法により、短絡電流が流れる期間または流れない時間に基づいて回転速度を検出することができる。
【0030】
また、商用電源10の停電等に起因して直流中間電圧が規定値未満である場合(ステップS2No)、演算制御手段91は、内部のタイマによる計測時間が起動時から第1の規定時間Tだけ経過したか否かを判断する(ステップS4)。規定時間Tが経過していれば(ステップS4Yes)、その間に後述するインバータ部40の昇圧動作によって直流中間電圧が規定値以上になったと推定されるので、速度検出処理に移行する(ステップS3)。
【0031】
起動時から規定時間Tが経過していない場合(ステップS4 No)、インバータ部40のU相アーム40u、V相アーム40v、W相アーム40wの下アームのスイッチング素子(インバータ部40の負側直流端子に接続されたスイッチング素子)44,45,46を全てONする(ステップS5)。そして、第1の規定時間Tより短い第2の規定時間Tを経過した後(ステップS6)、スイッチング素子44,45,46を全てOFFする(ステップS7)。
上記のようにスイッチング素子を断続的にON,OFFさせる動作により、回転電機50のインダクタンス成分に蓄積されたエネルギーが上アームの還流ダイオードを介してコンデンサ33に放出されるので、コンデンサ33が充電される。これにより、直流中間電圧を昇圧することができる。
【0032】
その後に、再び規定時間Tだけ待機し(ステップS8)、電圧検出器81及び電流検出器82により直流中間電圧及び電流を検出する(ステップS9)。ステップS5〜S7の昇圧動作により直流中間電圧が規定値以上になっていれば(ステップS10Yes)、速度検出処理に移行する(ステップS3)。
また、検出した直流中間電圧が依然として規定値未満である場合には(ステップS10No)、再度、起動時から第1の規定時間Tだけ経過したか否かを判断する(ステップS11)。規定時間Tが経過していれば(ステップS11Yes)、ステップS5〜S7の昇圧動作により直流中間電圧が規定値以上になったと推定されるので、速度検出処理に移行する(ステップS3)。
【0033】
なお、起動時から規定時間Tが経過していない場合には(ステップS11No)、回転電機50を流れる電流が過電流相当の規定値以下であることを条件としてステップS1以降の処理を実行し(ステップS12 Yes)、規定値を超えている場合には(ステップS12No)、それ以上、昇圧動作を行わずにステップS8以降の処理を繰り返し実行する。
このような速度検出処理を実行して回転電機50の速度を検出した後に、回転電機50の起動を行う。これにより、インバータ部40の直流電圧が回転電機50の誘起電圧より低い場合でも、回転電機50の速度を正確に検出して安定的に起動可能となる。
【0034】
この実施形態では、三相のインバータ部40の全ての下アームのスイッチング素子44,45,46を同時かつ断続的にON,OFFさせて昇圧動作を行っているが、全ての上アームのスイッチング素子41,42,43を同時かつ断続的にON,OFFさせてもよい。あるいは、全ての上アームまたは下アームに限らず、インバータ部40を構成するスイッチング素子41〜46のうち少なくとも一つのスイッチング素子を断続的にON,OFFさせてもよい。
【0035】
図4は、例えば、V相の上アームのスイッチング素子42のみを断続的にON,OFFさせて昇圧動作を行う場合の動作説明図である。なお、他のスイッチング素子はOFFさせておくものとする。
前述した図3のステップS5に相当する動作として、図4(a)のようにスイッチング素子42をONさせることにより、スイッチング素子42及びU相のスイッチング素子41の還流ダイオードを介して電流が流れ、回転電機50のインダクタンス成分にエネルギーが蓄積される。次に、図3のステップS7に相当する動作として、図4(b)のように上記スイッチング素子42をOFFさせることにより、回転電機50のインダクタンス成分に蓄積されたエネルギーが、スイッチング素子41の還流ダイオード及びV相の下アームのスイッチング素子45の還流ダイオードを介してコンデンサ33に放出されるので、コンデンサ33が充電される。これにより、前記同様に直流中間電圧を昇圧することができる。
【0036】
なお、インバータ部及び回転電機は三相に限らず単相である場合にも、インバータ部を構成するスイッチング素子のうち少なくとも一つのスイッチング素子を断続的にON,OFFさせることにより、コンデンサ33の昇圧動作が可能である。
また、この実施形態では、回転電機50が発電機である場合について説明したが、インバータ部40が運転を停止していて回転電機50としての電動機が空転している状態で電動機を起動する場合にも、本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
図1の実施形態では、商用電源10の交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ部20を備えた電力変換装置について説明した。しかしながら、本発明は、商用電源10及びコンバータ部20を備えずに、回転電機50である発電機の交流出力電圧をインバータ部40により直流電圧に変換し、コンデンサ33の両端の直流電圧を電源として外部の負荷に供給する自立型電源装置としても利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10:商用電源
20:コンバータ部
21〜26:ダイオード
30:直流中間回路
31:充電抵抗
32:スイッチ
33:コンデンサ
40:インバータ部
40u:U相アーム
40v:V相アーム
40w:W相アーム
41〜46:半導体スイッチング素子
50:回転電機
60:駆動源または負荷
70:電源供給端子
81:電圧検出器
82:電流検出器
90:制御装置
91:演算制御手段
92:電圧比較手段
93:電流比較手段
94:ゲート信号生成手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6