特許第5967312号(P5967312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5967312-搬送車システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967312
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】搬送車システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20060101AFI20160728BHJP
   B61B 3/02 20060101ALI20160728BHJP
   B61B 13/00 20060101ALI20160728BHJP
   B60L 3/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   G05D1/02 P
   G05D1/02 Z
   B61B3/02 C
   B61B13/00 T
   B60L3/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-531741(P2015-531741)
(86)(22)【出願日】2014年6月20日
(86)【国際出願番号】JP2014066441
(87)【国際公開番号】WO2015022812
(87)【国際公開日】20150219
【審査請求日】2015年8月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-168315(P2013-168315)
(32)【優先日】2013年8月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】幸本 誉
【審査官】 影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−242522(JP,A)
【文献】 特開2012−38134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
B61B 3/02
B61B 13/00
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に沿った一部区間に設けられた給電部と、
前記給電部に電力を供給する電源部と、
前記給電部から供給される電力を蓄電する蓄電部を有し、前記軌道を一の方向に周回しながら被搬送物を搬送する複数の搬送車と、
前記搬送車を管理する管理コントローラと、
を備え、
前記管理コントローラは、
前記給電部が配置された給電区間内に存在する前記搬送車の蓄電状況を取得する蓄電状況取得部と、
前記給電区間への前記搬送車の進入台数を管理する進入管理部と、
を有し、
前記進入管理部は、前記蓄電状況取得部によって取得された蓄電状況に基づいて、蓄電量が第1蓄電量以上である搬送車を除外した台数が所定台数以下となるように前記進入台数を制限する、搬送車システム。
【請求項2】
前記給電区間の前記一の方向における上流側には、前記進入管理部によって前記搬送車の進入が制限される進入制限区域が設けられ、
前記管理コントローラは、次に前記進入制限区域に進入する前記搬送車が前記給電区間に到達するまでの第1の時間と、前記給電区間を走行する前記搬送車のうち、前記蓄電量が最初に前記第1蓄電量以上となるまでの第2の時間とを比較する比較部を更に有し、
前記進入管理部は、前記比較部によって前記第2の時間が前記第1の時間以下であると判定された場合には、次に前記進入制限区域に進入しようとする搬送車の前記進入制限区域への進入を許可する、請求項1に記載の搬送車システム。
【請求項3】
前記搬送車は、前記蓄電部における蓄電量を取得する蓄電量取得部を更に有し、
前記給電区間に進入しようとする前記搬送車に対し、前記給電区間において前記搬送車への給電が開始される前の蓄電量に基づいて、前記給電区間を通過後の蓄電量が第1蓄電量となるように前記給電区間における走行速度を設定する走行速度制御部を含むコントローラを更に備え、
前記管理コントローラは、前記給電区間に進入しようとする前記搬送車が存在する場合には搬送車システムの搬送量を取得し、取得した前記搬送量が規定値以上であると判定された場合には、前記給電区間を通過後の蓄電量が前記第1蓄電量よりも小さい第2蓄電量以上となることを条件に、前記給電区間内の最下流側を走行中の前記搬送車を前記走行速度よりも速い速度で走行させる繁閑判断部を更に有する、請求項1又は2に記載の搬送車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送物を搬送車により搬送するための搬送車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ、ガラス基板及び一般部品などの被搬送物を、軌道に沿って走行する搬送車によって搬送する搬送車システムが知られている。このような搬送車システムにおける搬送車は、軌道に沿って配置された給電線などの給電部から供給される電力によって走行する。
【0003】
搬送車システムの中には、例えば特許文献1に示すような、充電可能な蓄電部を備えた搬送車によって被搬送物を搬送する搬送車システムがある。このような搬送車システムにおける搬送車は、軌道に沿った一部区間に配置される給電部を走行する際に給電部から供給される電力を蓄電部に蓄電し、この蓄電した電力により給電部が配置されていない区間の軌道を走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−038134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような搬送車システムにおいては、給電部に交流電流を供給する電源部の負荷を許容量以下に収める必要がある。このため、給電区間内に進入することができる搬送車の台数を制限することが従来から行われている。一方で搬送車システムとしての搬送能力を高めることも求められている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、電源部の負荷が高くなることを抑制しつつ、搬送車システムとしての搬送能力を高めることができる搬送車システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る搬送車システムは、軌道に沿った一部区間に設けられた給電部と、給電部に電力を供給する電源部と、給電部から供給される電力を蓄電する蓄電部を有し、軌道を一の方向に周回しながら被搬送物を搬送する複数の搬送車と、搬送車を管理する管理コントローラと、を備える。管理コントローラは、給電部が配置された給電区間内に存在する搬送車の蓄電状況を取得する蓄電状況取得部と、給電区間への搬送車の進入台数を制限する進入管理部と、を有する。進入管理部は、蓄電状況取得部によって取得された蓄電状況に基づいて、蓄電量が第1蓄電量以上である搬送車を除外した台数が所定台数以下となるように進入台数を制限する。
【0008】
給電区間を走行する搬送車の中には、例えば、既に所定の蓄電量に到達したことにより更なる電力の供給を必要としない搬送車が存在する場合がある。この搬送車システムによれば、給電区間において電力の供給が行われない、蓄電量が第1蓄電量以上である搬送車を除外した搬送車の台数に基づいて、給電区間への搬送車の進入が制限される。これにより、電源部の負荷を高めることなく、新たな搬送車を給電区間に進入させることができる。これにより、電源部にかかる負荷が高くなることを抑制しつつ、搬送車システム全体の搬送能力を高めることができる。
【0009】
一実施形態において、給電区間の一の方向における上流側には、進入管理部によって搬送車の進入が制限される進入制限区域が設けられ、管理コントローラは、次に進入制限区域に進入する搬送車が給電区間に到達するまでの第1の時間と、給電区間を走行する搬送車のうち、蓄電量が最初に第1蓄電量以上となるまでの第2の時間とを比較する比較部を更に有していてもよい。この場合、進入管理部は、比較部によって第2の時間が第1の時間以下であると判定された場合には、次に進入制限区域に進入しようとする搬送車の進入制限区域への進入を許可してもよい。
【0010】
このような搬送車システムによれば、進入制限区域が設けられる構成の搬送車システムにおいても、給電区間において電力の供給が行われない、蓄電量が所定値以上である搬送車を除外した搬送車の台数に基づいて、給電区間への搬送車の進入が制限される。また、このような搬送車システムによれば、給電区間を走行する搬送車の1台の蓄電量が所定値以上となるタイミングで、新たな搬送車を給電区間に進入させることもできる。これにより、電源部にかかる負荷が高くなることを抑制しつつ、搬送車システム全体の搬送能力を効率的に高めることができる。
【0011】
なお、ここでいう第1の時間と第2の時間との比較には、第1の時間及び第2の時間を算出することができる距離及び速度を比較することも含まれる。
【0012】
一実施形態において、搬送車は、蓄電部における蓄電量を取得する蓄電量取得部を更に有し、給電区間に進入しようとする搬送車に対し、給電区間において搬送車への給電が開始される前の蓄電量に基づいて、給電区間を通過後の蓄電量が第1蓄電量となるように給電区間における走行速度を設定する走行速度制御部を含むコントローラを更に備え、管理コントローラは、給電区間に進入しようとする搬送車が存在する場合には搬送車システムの搬送量を取得し、取得した搬送量が規定値以上であると判定された場合には、給電区間を通過後の蓄電量が第1蓄電量よりも小さい第2蓄電量以上となることを条件に、給電区間内の最下流側を走行中の搬送車を上記走行速度よりも速い速度で走行させる繁閑判断部を更に有していてもよい。
【0013】
上記第2蓄電量は、搬送車が給電区間を抜け出た後に所定速度で軌道を周回して給電区間に戻ってくることができる充電量とすることができる。この搬送車システムによれば、通常の状態においては、給電区間を通過後の蓄電量が第1蓄電量となるように設定された走行速度で給電区間を走行させ、搬送車システムにおける搬送量が増えてきた場合、かつ、給電区間に進入しようとする搬送車が存在する場合には、給電区間における搬送車の速度を上記走行速度と比べて相対的に速くして、搬送車システムとしての搬送能力を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電源部にかかる負荷が高くなることを抑制しつつ、搬送車システムとしての搬送能力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1実施形態に係る搬送車システムの構成を示す構成図である。
図2図2は、図1の搬送車システムの機能構成を示す機能ブロック図である。
図3図3は、第2実施形態に係る搬送車システムの機能構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る搬送車システム1の構成図である。搬送車システム1は、軌道に沿って移動可能な天井走行車40を用いて、被搬送物Xを搬送するためのシステムである。ここでは、例えば、工場などにおいて、被搬送物である一般物品を移載可能に構成された無人の天井走行車が軌道に沿って走行する搬送車システムを例に挙げて説明する。なお、被搬送物の例には、半導体ウェハ、ガラス基板及び一般部品などが含まれる。図1に示すように、搬送車システム1は、主に管理コントローラ3、軌道11、給電部21及び天井走行車(搬送車)40を備えている。
【0018】
軌道11は、天井走行車40を走行させる部分であり、天井から吊り下げられている。図1に示すように、搬送車システム1における軌道11は、直線部、曲線部、分岐部、合流部などを含んで構成され、少なくとも、後述する給電区間20を出発した天井走行車40が、再び給電区間20に戻ってくることができる周回部分を有している。また、軌道11に沿って、被搬送物Xの受け渡しを行うステーション15A,15B,15Cが設けられている。
【0019】
軌道11に沿った一部区間には、天井走行車40に電力を供給する給電部21が配置された給電区間20が設けられている。第1実施形態の給電部21は、電磁誘導を利用して非接触にて天井走行車40に電力を供給する非接触給電システムである。給電部21は、電源部23から交流電流が供給される。
【0020】
給電部21は、天井走行車40の受電部53(図2参照)に電力を供給する部分である。具体的には、給電部21に近接する受電部53に対し、給電部21に電源部23から交流電流が供給された際に生じる磁界の変化を利用して電力を発生させる。第1実施形態の搬送車システム1では、天井走行車40が給電区間20に進入すると、蓄電部55(図2参照)への充電と走行用モータ57(図2参照)への電力の供給とが同時に開始される。また、第1実施形態の搬送車システム1では、蓄電部55の蓄電量が第1蓄電量(例えば、満充電)となった場合には自動的に充電が停止される。なお、蓄電部55における満充電とは、温度、湿度など所定環境下において最大限に蓄電できる状態(能力上の満充電)であってもよいし、製品仕様などから決定される最大限の蓄電状態(仕様上の満充電)であってもよい。
【0021】
図2は、搬送車システム1の機能構成を示す機能ブロック図である。図2に示すように、管理コントローラ3は、後段にて詳述する天井走行車40を制御し、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などからなる電子制御ユニットである。管理コントローラ3は、主に天井走行車40に対して搬送指令を出力する。搬送指令には、天井走行車40が行う作業内容に関する種々の情報が含まれ、例えば、被搬送物Xの受け渡しを行うステーションの情報などがある。
【0022】
管理コントローラ3は、更なる処理部として、少なくとも蓄電状況取得部31、進入管理部33及び比較部35を有している。蓄電状況取得部31、進入管理部33及び比較部35などの各機能は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成される。なお、各処理部は、ハードウェアとして構成されてもよい。
【0023】
蓄電状況取得部31は、図1に示す給電部21が配置された給電区間20内に存在する天井走行車40の蓄電状況を取得する部分である。具体的には、蓄電部55の蓄電量を検出する蓄電量取得部45を含む車体コントローラ41から送信されてくる天井走行車40ごとの蓄電部55における蓄電量の情報に基づいて、天井走行車40ごとの蓄電量を取得する。管理コントローラ3から送信されてくる給電区間20内に存在する天井走行車40の台数の情報に基づけば、例えば、給電区間20内に存在すると共に蓄電量が第1蓄電量以上である天井走行車40の台数を抽出することができる。
【0024】
また、蓄電状況取得部31は、例えば、図1に示す電源部23のインバータ出力電流又は電源部23の一次側の入力電流を監視することにより、受電している天井走行車40の台数、すなわち、第1蓄電量に満たないで充電中の天井走行車40の台数を抽出することができる。管理コントローラ3から送信されてくる給電区間20内に存在する天井走行車40の台数の情報に基づけば、給電区間20内に存在すると共に蓄電量が第1蓄電量以上である天井走行車40の台数を抽出することができる。
【0025】
進入管理部33は、給電部21が配置された給電区間20を走行する天井走行車40の台数が、規定台数(所定台数)以下となるように管理する部分である。言い換えれば、進入管理部33は、給電区間20を走行する天井走行車40の台数が規定台数(例えば、4台)を超えないように、天井走行車40の給電区間20への進入を制限する。
【0026】
第1実施形態の進入管理部33は、蓄電状況取得部31によって取得された蓄電状況に基づいて、給電区間20を走行する天井走行車40のうち蓄電量が第1蓄電量以上である天井走行車40を除外した台数が規定台数以下となるように給電区間20内に進入する天井走行車40の台数を制限する。言い換えれば、第1実施形態の進入管理部33は、蓄電量が第1蓄電量以上である天井走行車40を、給電区間20へ進入している1台としてカウントしない。例えば、給電区間20内を既に規定台数である4台の天井走行車40が走行していたとしても、そのうちの1台の天井走行車40の蓄電量が第1蓄電量以上であれば、給電区間20に新たに1台の天井走行車40の進入が許可される。
【0027】
次に、天井走行車40について説明する。図2に示すように、天井走行車40は、車体コントローラ41、受電部53、蓄電部55及び走行用モータ57を主に備える。天井走行車40は、蓄電部55に蓄電された電力及び給電部21から供給される電力の少なくとも一方の電力によって駆動する走行用モータ57によって、軌道11に沿って一方向(図1に示す矢印の向き)に走行する。
【0028】
受電部53は、給電部21から電力の供給を受ける部分である。上述したとおり、第1実施形態の受電部53は、給電部21に交流電流が流れた際に生じる磁界の変化を利用して電力を発生させる。
【0029】
蓄電部55は、給電部21から供給される電力、すなわち、受電部53で発生させた電力を蓄電する部分である。受電部53と蓄電部55との間には、図示しないインバータなどが配置される。蓄電部55の例には、電気二重層キャパシタなどのキャパシタ、リチウムイオン電池及びニッケル水素電池などの二次電池などが含まれる。
【0030】
車体コントローラ41は、天井走行車40を制御する部分であり、例えば、CPU、ROM、RAMなどからなる電子制御ユニットである。車体コントローラ41は、主に天井走行車40の一般的な走行を制御する。具体的には、車体コントローラ41は、区間ごとに予め設定されている走行速度で走行するように、天井走行車40の主に走行用モータ57を制御する。ここでいう区間とは、図1に示す給電部21を含む給電区間20、直線区間及び曲線区間などが含まれる。例えば、蓄電量がほぼ0の状態で給電区間20に進入してきた天井走行車40が、給電区間20を通過後に第1蓄電量となるような速度を、給電区間20の走行速度として設定してもよい。上記設定速度までの加減速は、設定された一定の加速度で行われる。
【0031】
車体コントローラ41は、更なる処理部として少なくとも蓄電量取得部45を有している。車体コントローラ41における蓄電量取得部45の機能は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成される。なお、蓄電量取得部45は、ハードウェアとして構成されてもよい。
【0032】
蓄電量取得部45は、蓄電部55における蓄電量を取得する部分である。蓄電量取得部45は、例えば、蓄電部55の起電力、温度、内部抵抗などを測定することにより、蓄電部55の蓄電量を取得できる。また、蓄電量取得部45は、走行状況などから使用電力量を算出することによって蓄電量を取得してもよい。
【0033】
次に、搬送車システム1の動作について説明する。図1に示すような軌道11が配置された搬送車システム1において、天井走行車40は、一方向(図1に示す矢印の向き)に周回しながら、管理コントローラ3からの搬送指令に基づいて、被搬送物Xを搬送する。このような搬送車システム1において、管理コントローラ3は、搬送要求を送信する。
【0034】
軌道11上を走行する複数の天井走行車40の中で、最初に搬送要求に応答した天井走行車40に対し、搬送指令が割り付けられる。搬送指令は、例えば、搬送対象となる被搬送物Xが存在するステーションに関する情報と、当該被搬送物Xの搬送先のステーションに関する情報とを含む。天井走行車40は、上述した搬送指令を受信すると、給電区間20、直線区間及び曲線区間などの区間ごとに予め設定されている走行速度で走行する。
【0035】
天井走行車40が給電区間20に近づくと、管理コントローラ3に含まれる進入管理部33によって給電区間20への進入の可否が判定される。具体的には、天井走行車40が給電区間20に近づいてくると、進入管理部33は、給電区間20内に存在する天井走行車40の台数が上記規定台数以下であるか否かを確認する。給電区間20内に存在する天井走行車40の台数が上記規定台数以下である場合には、進入管理部33は、給電区間20内に進入しようとする天井走行車40に対し、給電区間20への進入を許可する。
【0036】
給電区間20内に存在する天井走行車40の台数が上記規定台数よりも多い場合には、管理コントローラ3に含まれる蓄電状況取得部31は、天井走行車40ごとの蓄電部55における蓄電量を取得する。進入管理部33は、給電区間20内に存在する天井走行車40のうち第1蓄電量以上の蓄電量を有する天井走行車40を除外した台数が上記規定台数よりも少ないか否かを確認する。給電区間20内に存在する天井走行車40のうち第1蓄電量以上の蓄電量を有する天井走行車40を除外した台数が上記規定台数よりも少ない場合には、進入管理部33は、給電区間20内に進入しようとする天井走行車40に対し、給電区間20内へ進入することを許可する。
【0037】
一方、給電区間20内に存在する天井走行車40のうち第1蓄電量以上の蓄電量を有する天井走行車40を除外した台数が上記規定台数以上である場合には、進入管理部33は、給電区間20内に進入しようとする天井走行車40に対し、給電区間20内へ進入することを許可せず、給電区間20の手前の位置で待機させる。
【0038】
この搬送車システム1では、給電区間20において電力の供給が行われない、蓄電量が第1蓄電量以上である天井走行車40を除外した台数に基づいて、給電区間20への天井走行車40の進入が制限される。これにより、電源部23の負荷を高めることなく、給電区間20において電力の供給が行われない天井走行車40の台数分の天井走行車40を新たに給電区間20に進入させることができる。これにより、電源部23にかかる負荷が高くなることを抑制しつつ、搬送車システム1における搬送能力を高めることができる。
【0039】
なお、図1に示すように、給電区間20の一の方向(図1に示す矢印方向)の上流側に、進入管理部33によって天井走行車40の進入が制限される進入制限区域A1が設けられてもよい。管理コントローラ3は、次に進入制限区域A1に進入する天井走行車40が給電区間20に到達するまでの第1の時間T1と、給電区間20を走行する天井走行車40のうち、蓄電量が最初に第1蓄電量以上となるまでの第2の時間T2とを比較する比較部35を更に有していてもよい。なお、第1の時間T1は、後述する車体コントローラ41により制御される走行速度に基づいて算出される。そして、進入管理部33は、比較部35によって第2の時間T2が第1の時間T1以下であると判定された場合には、次に進入制限区域A1に進入しようとする天井走行車40の進入制限区域A1への進入を許可してもよい。
【0040】
この場合の、搬送車システム1の動作について説明する。天井走行車40が進入制限区域A1に近づくと、管理コントローラ3に含まれる進入管理部33によって進入制限区域A1への進入の可否が判定される。具体的には、天井走行車40が進入制限区域A1に近づいてくると、進入管理部33は、給電区間20内に存在する天井走行車40の台数が上記規定台数以下であるか否かを確認する。給電区間20内に存在する天井走行車40の台数が上記規定台数以下である場合には、進入管理部33は、給電区間20内に進入しようとする天井走行車40に対し、進入制限区域A1への進入を許可する。
【0041】
給電区間20内に存在する天井走行車40の台数が上記規定台数よりも多い場合には、管理コントローラ3に含まれる蓄電状況取得部31は、天井走行車40ごとの蓄電部55における蓄電量を取得する。進入管理部33は、給電区間20内に存在する天井走行車40のうち第1蓄電量以上の蓄電量を有する天井走行車40を除外した台数が上記規定台数よりも少ないか否かを確認する。給電区間20内に存在する天井走行車40のうち第1蓄電量以上の蓄電量を有する天井走行車40を除外した台数が上記規定台数よりも少ない場合には、進入管理部33は、進入制限区域A1に進入しようとする天井走行車40に対し、進入制限区域A1へ進入することを許可する。
【0042】
一方、給電区間20内に存在する天井走行車40のうち第1蓄電量以上の蓄電量を有する天井走行車40を除外した台数が上記規定台数以上である場合には、管理コントローラ3に含まれる比較部35が、進入制限区域A1に進入しようとする天井走行車40が給電区間20に到達するまでの第1の時間T1と、給電区間20を走行する天井走行車40のうち、蓄電量が最初に第1蓄電量以上となるまでの第2の時間T2とを算出し、算出した第1の時間T1と第2の時間T2とを比較する。
【0043】
比較部35によって第2の時間T2が第1の時間T1以下であると判定された場合には、進入管理部33は、進入制限区域A1に進入しようとする天井走行車40の進入制限区域A1への進入を許可する。すなわち、対象となる天井走行車40の給電区間20への進入を許可する。このように制御すれば、天井走行車40が進入制限区域A1に近づいてきた段階では、給電区間20を規定台数の天井走行車40が走行している状態であっても、対象となる天井走行車40が給電区間20に進入する際には、給電区間20を走行中の1台の天井走行車40が第1蓄電量に到達している状態、すなわち、給電区間20を規定台数より少ない台数の天井走行車40が走行している状態のときに、対象となる天井走行車40を進入させることができる。
【0044】
一方、比較部35によって第2の時間T2が第1の時間T1より長いと判定された場合には、進入管理部33は、進入制限区域A1に進入しようとする天井走行車40の進入制限区域A1への進入を許可せず、進入制限区域A1の手間の位置P1で待機させる。すなわち、対象となる天井走行車40の給電区間20への進入を許可しない。なお、例えば、進入管理部33は、第2の時間T2から第1の時間T1を引いた時間T3(T3=T2−T1)だけ、進入制限区域A1の手間の位置P1で対象となる天井走行車40を待機させ、その後、進入制限区域A1に進入させてもよい。
【0045】
この搬送車システム1では、給電区間20において電力の供給が行われない、蓄電量が第1蓄電量以上である天井走行車40を除外した台数に基づいて、給電区間20への天井走行車40の進入が制限される。これにより、電源部23の負荷を高めることなく、給電区間20において電力の供給が行われない天井走行車40の台数分の天井走行車40を新たに給電区間20に進入させることができる。これにより、電源部23にかかる負荷が高くなることを抑制しつつ、搬送車システム1における搬送能力を高めることができる。
【0046】
また、この搬送車システム1によれば、給電区間20を走行する天井走行車40の1台の蓄電量が第1蓄電量以上となるタイミングで、新たな天井走行車40を給電区間20に進入させることもできる。これにより、電源部23にかかる負荷が高くなることを抑制しつつ、搬送車システム1における搬送能力を効率的に高めることができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について主に図3を参照しながら説明する。図3は、第2実施形態に係る搬送車システム101の構成を示す構成図である。搬送車システム101が、図1に示す第1実施形態に係る搬送車システム1と異なる点は、図3に示すように、繁閑判断部37を含む管理コントローラ103を有する点と、走行速度制御部47を含む車体コントローラ(コントローラ)141を有する点とである。ここでは、この管理コントローラ103及び車体コントローラ141について詳細に説明し、第1実施形態の搬送車システム1と共通する点については説明を省略する。
【0048】
管理コントローラ103は、更なる処理部として、繁閑判断部37を有している。繁閑判断部37は、給電区間20に進入しようとする天井走行車40が存在する場合には搬送車システム101における搬送量を取得する。次に、繁閑判断部37は、取得した搬送量が規定値以上であると判定した場合には、給電区間20を通過後の蓄電量が第1蓄電量よりも小さい第2蓄電量以上となることを条件に、給電区間20内の最下流側を走行中、言い換えれば、給電区間20の先頭を走行中の天井走行車40を走行速度として設定された速度よりも速い速度で走行させる。なお、搬送車システム101の搬送量は、例えば、管理コントローラ103が管理する搬送指令の数を指標として比較することができる。搬送指令の数が多いほど、搬送量が多いと判定することができる。
【0049】
なお、管理コントローラ103における給電区間20に進入しようとする天井走行車40の有無の判定は、被搬送物Xを搬送中の天井走行車40に対象を絞って実施してもよい。被搬送物Xを搬送中であるか否かは、搬送指令などの情報をもとに判定することができる。
【0050】
車体コントローラ141は、更なる処理部として、少なくとも蓄電量取得部45及び走行速度制御部47を有している。走行速度制御部47は、天井走行車140の給電区間20における走行速度を設定し、天井走行車40を設定された走行速度で走行させる部分である。具体的には、走行速度制御部47は、給電区間20において天井走行車40への給電が開始される前の蓄電量に基づいて、給電区間20を通過後の蓄電部55における蓄電量が第1蓄電量(例えば、満充電)となるような走行速度を算出し、この算出された走行速度で給電区間20を走行するように主に走行用モータ57を制御する。
【0051】
次に、搬送車システム101の動作について説明する。天井走行車140の進入制限区域A1及び給電区間20への進入制限については、第1実施形態と同様であるのでここでは説明を省略する。第2実施形態の搬送車システム101では、給電区間20に進入する前の蓄電量に基づいて給電区間20を走行する際の走行速度が設定される点が、給電区間20を通過する際の走行速度が一律に設定されている第1実施形態の搬送車システム1とは異なる。
【0052】
天井走行車140が進入制限区域A1に近づくと、車体コントローラ41に含まれる走行速度制御部47は、給電区間20において天井走行車40への給電が開始される前の蓄電量に基づいて、給電区間20を通過後の蓄電量が第1蓄電量となるように給電区間20における走行速度V1を決定する。なお、給電区間20における走行速度V1の決定タイミングは、上述したタイミングに限定されず、例えば、給電区間20に進入する直前のタイミングであってもよい。
【0053】
管理コントローラ3に含まれる繁閑判断部37は、給電区間20に進入しようとする天井走行車40の有無と、搬送車システム101の搬送量と、を監視している。給電区間20に進入しようとする天井走行車40の有無の監視は、例えば、給電区間20に対し所定距離内に近づく天井走行車40の有無を監視することにより行われる。搬送車システム101の搬送量の監視は、例えば、管理コントローラ3によって管理されている搬送指令の数を監視することにより行われる。繁閑判断部37は、給電区間20に進入しようとする天井走行車40が有ることと、上記搬送指令の数が規定値以上となったことを検知すると、給電区間20の先頭を走行する天井走行車40の走行速度を制御する場合がある。具体的には、給電区間20を通過後の蓄電量が第1蓄電量よりも小さい第2蓄電量以上となることを条件に、給電区間20の先頭を走行する天井走行車40の速度を現在の走行速度V1よりも速い速度で走行させる。なお、上記第2蓄電量は、例えば、天井走行車40が給電区間20を抜け出た後に所定速度で軌道を周回して、再び給電区間20に戻ってくることができる充電量とする。
【0054】
この搬送車システム101によれば、通常の状態においては給電区間20における天井走行車40を、給電区間20を通過後の蓄電量が第1蓄電量とするための走行速度V1で走行させる。また、この搬送車システム101によれば、給電区間に進入しようとする搬送車が存在する場合においては搬送車システム101における搬送量を取得し、この搬送量が規定値よりも大きい場合には、給電区間20における天井走行車40を上記走行速度V1と比べて相対的に速くして、搬送車システム101としての搬送能力を高めることができる。
【0055】
以上、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0056】
上記実施形態の搬送車システム101では、給電区間20における走行速度を設定する走行速度制御部47が車体コントローラ141として実装されている例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、管理コントローラ103として実装されてもよい。
【0057】
上記実施形態の搬送車システム101では、給電区間20において天井走行車40への給電が開始される前の蓄電量に基づいて、給電区間20を通過後の蓄電量が第1蓄電量となるように走行速度が設定される例を挙げて説明したが本発明はこれに限定されない。例えば、蓄電量がほぼ0の状態で給電区間20に進入してきた天井走行車40が、給電区間20を通過後に第1蓄電量となるような速度を上記走行速度として一律に設定してもよい。車体コントローラ141は、蓄電部55における蓄電量が第1蓄電量(満充電)に到達すれば自動的に蓄電部55への電力の供給を停止する機能を備えている。このため、蓄電量が残存した状態の天井走行車40が給電区間20に進入した場合であっても、給電区間20を通過後の蓄電量を第1蓄電量とすることができる。
【0058】
上記実施形態の搬送車システム1,101では、搬送車の一例として天井走行車40を挙げて説明したが、搬送車のその他の例には、地上又は架台に配設された軌道を走行する無人搬送車及びスタッカークレーンなどが含まれる。
【0059】
上記実施形態の搬送車システム1,101では、給電部21として非接触給電システムを採用した例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、トロリ線などに直接接触する方法により蓄電部55に対し電力の供給を行ってもよい。
【0060】
上記実施形態の搬送車システム1,101では、給電部21が配置された給電区間20が1箇所のみに設けられた例を挙げて説明したが、2箇所又は3箇所など複数箇所に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…搬送車システム、3…管理コントローラ、11…軌道、15A,15B,15C…ステーション、20…給電区間、21…給電部、23…電源部、31…蓄電状況取得部、33…進入管理部、35…比較部、37…繁閑判断部、40…天井走行車、41…車体コントローラ、45…蓄電量取得部、47…走行速度制御部、53…受電部、55…蓄電部、57…走行用モータ、101…搬送車システム、103…管理コントローラ、140…天井走行車、141…車体コントローラ(コントローラ)。
図1
図2
図3