(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明をCu核ボールに適用した場合について以下により詳しく説明する。本明細書において、Cu核ボールの組成に関する単位(ppm、ppb、及び%)は、特に指定しない限り質量に対する割合(質量ppm、質量ppb、及び質量%)を表す。
【0027】
図1は、本実施の形態のCu核ボールの模式的な構造を示す断面図である。本実施の形態のCu核ボール1は、Cuボール2と、Cuボールを被覆するはんだ層3で構成される。
【0028】
はんだ層3は、Cuの添加量を0.1%以上3.0%以下とし、残部をSnとしたAgを含まないはんだ合金で構成され、Cuボール2の表面にはんだめっきを行うことではんだ層3が形成される。Cuボール2は、Cu、あるいは、Cuを50%以上含むCu合金で構成される。
【0029】
Cu核ボール1は、Cuボール2とはんだ層3との間に、拡散防止層4が形成される。拡散防止層4は、Ni、あるいはCo等から選択される1元素以上で構成され、Cuボール2を構成するCuがはんだ層3に拡散することを防止する。
【0030】
Cuボール2の表面に、Cuの添加量を0.1%以上3.0%以下とし、残部をSnとしたAgを含まない組成のはんだ合金ではんだ層3が形成されたCu核ボール1では、接合対象物がCu層の表面にプリフラックス処理が施されたCu−OSP基板であっても、Cu層の表面に電解Ni/Auめっきが施された電解Ni/Auめっき基板であっても、落下等の衝撃に対する強度、及び、ヒートサイクルと称される温度変化による伸縮に対する強度とも、必要とされる所定の強度を得ることができる。
【0031】
Agを含まないはんだ合金で作成されたはんだボールでは、Agを含むはんだ合金で作成されたはんだボール
と比較して、ヒートサイクルに対する強度が低下する。本実施の形態のCu核ボール1では、はんだ層3がAgを含まないはんだ合金で形成されているが、Agを含むはんだ合金で作成されたCu核ボールと比較して、必要とされる落下強度が得られることに加えて、ヒートサイクルに対する強度が向上する。
【0032】
Cu核ボール1を利用したはんだバンプでは、半導体パッケージの重量がはんだバンプに加わっても、はんだ合金の融点では溶融しないCuボールにより半導体パッケージを支えることができる。したがって、半導体パッケージの自重によりはんだバンプが潰れることがない。
【0033】
ところで、電子部品の小型化は高密度実装を可能にするが、高密度実装はソフトエラーという問題を引き起こすことになった。ソフトエラーは半導体集積回路(以下、「IC」と称する)のメモリセル中にα線が進入することにより記憶内容が書き換えられる可能性があるというものである。
【0034】
α線は、はんだ合金中に不純物として含まれるU、Th、
210Poなどの放射性同位元素がα崩壊することにより放射されると考えられている。そこで、低α線を実現できる組成のはんだ合金の開発が行われている。
【0035】
Cu核ボール1では、Cuボール2がはんだ層3で被覆されることで、はんだ層3を構成するはんだ合金が低α線を実現できれば、Cuボール2から放射されるα線を遮蔽できると考えられるが、Cuボール2でも、低α線を実現できる組成が求められる。
【0036】
更に、Cu核ボール1では、真球にどの程度近いかを示す真球度が低いと、はんだバンプが形成される際、マウント時の流動性、及び、はんだ量の均一性が低下してしまう。このため、真球度の高いCu核ボール1が望まれている。
【0037】
はんだ層3の組成は、Snを主成分とする鉛フリーのはんだ合金であって、落下などの衝撃に対する強度、及びヒートサイクルに対する強度の観点から、Sn−Cu合金である。Cu核ボール1では、はんだ層3の厚さは特に制限されないが、好ましくは100μm(片側)以下であれば十分である。一般には1〜50μmであればよい。
【0038】
はんだ層3は、Cuボール2やめっき液を流動させて形成される。めっき液の流動によりめっき液中でPb、Bi、Poの元素が塩を形成して沈殿する。一旦塩である析出物が形成されるとめっき液中で安定に存在する。したがって、本発明に係るCu核ボール1は析出物がはんだ層3に取り込まれることがなく、はんだ層3に含まれる放射性元素の含有量を低減でき、Cu核ボール1自体のα線量を低減することが可能となる。
【0039】
以下に、低α線を実現するはんだ層3の組成について詳述する。
【0040】
・U:5ppb以下、Th:5ppb以下
U及びThは放射性元素であり、ソフトエラーを抑制するにはこれらの含有量を抑える必要がある。U及びThの含有量は、はんだ層3のα線量を0.0200cph/cm
2以下とするため、各々5ppb以下にする必要がある。また、現在または将来の高密度実装でのソフトエラーを抑制する観点から、U及びThの含有量は、好ましくは、各々2ppb以下である。
【0041】
・α線量:0.0200cph/cm
2以下
本発明に係るCu核ボール1のα線量は0.0200cph/cm
2以下である。これは、電子部品の高密度実装においてソフトエラーが問題にならない程度のα線量である。本発明に係るCu核ボール1のα線量は、Cu核ボール1を構成するはんだ層3のα線量が0.0200cph/cm
2以下であることにより達成される。また、Cu核ボール1のα線量は、後述するように、Cuボール2のα線量が0.0200cph/cm
2以下であることによっても達成される。
【0042】
本発明に係るCu核ボール1は高くても100℃で形成されるため、U、Th、
210Po、Bi及びPbなどの放射性元素の気化により放射性元素の含有量が低減するとは考え難い。しかし、めっき液やCuボール2を流動しながらめっきを行うと、U、Th、Pb、Bi及び
210Poはめっき液中で塩を形成して沈殿する。沈殿した塩は電気的に中性であり、めっき液が流動していてもはんだめっき被膜中に混入することがない。
【0043】
よって、はんだめっき被膜中のこれらの含有量は著しく低減する。したがって、本発明に係るCu核ボール1は、このようなはんだ層3で被覆されているために低いα線量を示す。α線量は、更なる高密度実装でのソフトエラーを抑制する観点から、好ましくは0.0020cph/cm
2以下であり、より好ましくは0.0010cph/cm
2以下である。
【0044】
本発明に係るCu核ボール1を構成するはんだ層3の純度が高いほど、すなわち、はんだ層3において不純物の含有量が少ないほど、放射性元素の含有量が低減し、α線量が低減するため、不純物量の下限値は特に限定されない。一方、上限値は、α線量を低減する観点から、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下であり、特に好ましくは10ppm以下である。
【0045】
なお、はんだ層3の総不純物量は、はんだ層3中のSn及びCu以外の不純物の含有量の合計である。
【0046】
はんだ層3に含まれる不純物中には、特にBiとPbの含有量が少ない方が好ましい。BiとPbには放射性同位体であるそれぞれ
210Biと
210Pbが微量に含まれている。したがって、BiとPbの含有量を低減することにより、はんだ層3のα線量を著しく低減することができると考えられる。はんだ層3におけるBiとPbの含有量は、好ましくはそれぞれ15ppm以下であり、より好ましくはそれぞれ10ppm以下であり、特に好ましくはそれぞれ0ppmである。
【0047】
次に、本発明に係るCu核ボール1を構成するCuボール2の組成、α線量、真球度について詳述する。
【0048】
本発明に係るCu核ボール1を構成するCuボール2は、Cu核ボール1がはんだバンプに用いられる際、はんだ付けの温度で溶融しないため、はんだ継手の高さばらつきを抑制することができる。したがって、Cuボール2は真球度が高く直径のバラツキが少ない方が好ましい。また、前述のように、Cuボール2のα線量もはんだ層3と同様に低いことが好ましい。以下にCuボール2の好ましい態様を記載する.
【0049】
・U:5ppb以下、Th:5ppb以下
前述のようにU及びThは放射性同位元素であり、ソフトエラーを抑制するにはこれらの含有量を抑える必要がある。U及びThの含有量は、Cuボール2のα線量を0.0200cph/cm
2以下とするため、各々5ppb以下にする必要がある。また、現在または将来の高密度実装でのソフトエラーを抑制する観点から、U及びThの含有量は、好ましくは、各々2ppb以下である。
【0050】
・Cuボールの純度:99.9%以上99.995%以下
Cuボール2は純度が3N以上4N5以下である。つまり、Cuボール2は不純物元素の含有量が50ppm以上である。ここで、Cu等の金属材料の純度は、99%を2N、99.9%を3N、99.99%を4N、99.999%を5Nとする。4N5とは、金属材料の純度が99.995%であることを示す。
【0051】
Cuボール2を構成するCuの純度がこの範囲であると、Cuボール2の真球度が高まるための十分な量の結晶核を溶融Cu中に確保することができる。真球度が高まる理由は以下のように詳述される。
【0052】
Cuボールを製造する際、所定形状の小片に形成されたCu材は、加熱により溶融し、溶融Cuが表面張力によって球形となり、これが凝固してCuボール2となる。溶融Cuが液体状態から凝固する過程において、結晶粒が球形の溶融Cu中で成長する。この際、不純物元素が多いと、この不純物元素が結晶核となって結晶粒の成長が抑制される。したがって、球形の溶融Cuは、成長が抑制された微細結晶粒によって真球度が高いCuボール2となる。
【0053】
一方不純物元素が少ないと、相対的に結晶核となるものが少なく、粒成長が抑制されずにある方向性をもって成長する。この結果、球形の溶融Cuは表面の一部分が突出して凝固してしまう。このようなCuボールは、真球度が低い。不純物元素としては、Sn、Sb、Bi、Zn、Fe、Al、As、Ag、In、Cd、Cu、Pb、Au、P、S、U、Thなどが考えられる。
【0054】
純度の下限値は特に限定されないが、α線量を抑制し、純度の低下によるCuボール2の電気伝導や熱伝導率の劣化を抑制する観点から、好ましくは3N以上である。つまり、好ましくはCuを除くCuボール2の不純物元素の含有量は1000ppm未満である。
【0055】
・α線量:0.0200cph/cm
2以下
Cuボール2のα線量は0.0200cph/cm
2以下である。これは、電子部品の高密度実装においてソフトエラーが問題にならない程度のα線量である。本発明では、Cuボール2を製造するために通常行っている工程に加え再度加熱処理を施している。このため、Cu材にわずかに残存する
210Poが揮発し、Cu材と比較してCuボール2の方がより一層低いα線量を示す。α線量は、更なる高密度実装でのソフトエラーを抑制する観点から、好ましくは0.0020cph/cm
2以下であり、より好ましくは0.0010cph/cm
2以下である。
【0056】
・PbまたはBiのいずれかの含有量、あるいは、Pb及びBiの合計の含有量が1ppm以上
Cuボール2に含まれる不純物元素としては、Sn、Sb、Bi、Zn、Fe、Al、As、Ag、In、Cd、Cu、Pb、Au、P、S、U、Thなどが考えられるが、本発明に係るCu核ボール1を構成するCuボール2は、不純物元素の中でも特にPbまたはBiのいずれかの含有量、あるいは、Pb及びBiの合計の含有量が1ppm以上不純物元素として含有することが好ましい。本発明では、α線量を低減する上でPbまたはBiのいずれかの含有量、あるいは、Pb及びBiの含有量を極限まで低減する必要がない。
これは以下の理由による。
【0057】
210Pbはβ崩壊により
210Biに変化し、
210Biはβ崩壊により
210Poに変化し、
210Poはα崩壊により
206Pbに変化する。このため、α線量を低減するためには、不純物元素であるPbまたはBiのいずれかの含有量、あるいは、Pb及びBiの含有量も極力低い方が好ましいとも思われる。
【0058】
しかし、Pbに含まれている
210Pb及びBiに含まれている
210Biの含有比は低い。よって、PbやBiの含有量がある程度低減されれば、
210Pbや
210Biが、α線量を前述の範囲に低減できる程度にまで十分に除去されると考えられる。一方、Cuボール2の真球度を高めるためには、前述のように、不純物元素の含有量が高い方がよい。PbとBiの何れも、Cu材に不純物元素として含有されることで、Cuボール2の製造工程における溶融時に結晶核となり、Cuボール2の真球度を高めることができる。このため、α線量を前述の範囲に低減できる程度にまで
210Pb及び
210Biが除去できる量で、PbまたはBiの何れか、あるいは、Pb及びBiが含有されることが好ましい。このような観点から、Cuボール2は、PbまたはBiのいずれかの含有量、あるいは、Pb及びBiの合計の含有量が1ppm以上であることが好ましい。
【0059】
PbまたはBiのいずれかの含有量、あるいは、Pb及びBiの合計の含有量は、より好ましくは10ppm以上である。上限値はα線量を低減し得る範囲で限定されないが、Cuボール2の電気伝導度の劣化を抑制する観点から、より好ましくはPbまたはBiのいずれかの含有量、あるいは、Pb及びBiの合計の含有量が1000ppm未満である。Pbの含有量は、より好ましくは10ppm〜50ppmであり、Biの含有量は、より好ましくは10ppm〜50ppmである。
【0060】
・Cuボールの真球度:0.95以上
Cuボール2の形状は、スタンドオフ高さを制御する観点から真球度は0.95以上であることが好ましい。Cuボール2の真球度が0.95未満であると、Cuボールが不定形状になるため、バンプ形成時に高さが不均一なバンプが形成され、接合不良が発生する可能性が高まる。真球度は、より好ましくは0.990以上である。本発明において、真球度とは真球からのずれを表す。真球度は、例えば、最小二乗中心法(LSC法)、最小領域中心法(MZC法)、最大内接中心法(MIC法)、最小外接中心法(MCC法)など種々の方法で求められる。詳しくは、真球度とは、500個の各Cuボール2の直径を長径で割った際に算出される算術平均値であり、値が上限である1.00に近いほど真球に近いことを表す。本発明での長径の長さ、および直径の長さとは、ミツトヨ社製のウルトラクイックビジョン、ULTRA QV350−PRO測定装置によって測定された長さをいう。
【0061】
・Cuボールの直径:1〜1000μm
Cuボール2の直径は1〜1000μmであることが好ましい。この範囲にあると、球状のCuボール2を安定して製造でき、また、端子間が狭ピッチである場合の接続短絡を抑制することができる。
【0062】
本発明に係るCu核ボール1の適用例について説明すると、Cu核ボール1は、はんだ粉末と、Cu核ボール1と、フラックスが混練されたはんだペーストに用いられる。ここで、本発明に係るCu核ボール1がはんだペーストに用いられるような場合、「Cu核ボール」は「Cu核パウダ」と称されてもよい。
【0063】
「Cu核パウダ」は、上述の特性を個々のCu核ボール1が備えた、多数のCu核ボール1の集合体である。例えば、はんだペースト中の粉末として配合されるなど、単一のCu核ボールとは使用形態において区別される。同様に、はんだバンプの形成に用いられる場合にも、集合体として通常扱われるため、そのよう形態で使用される「Cu核パウダ」は単一のCu核ボールとは区別される。「Cu核ボール」が「Cu核パウダ」と称される形態で使用されるような場合、一般的に、Cu核ボールの直径は1〜300μmである。
【0064】
また、本発明に係るCu核ボール1は、Cu核ボール1がはんだ中に分散しているフォームはんだに用いられる。はんだペースト及びフォームはんだでは、例えば、組成がSn−3Ag−0.5Cu(各数値は質量%)であるはんだ合金が使用される。尚、本発明はこのはんだ合金に限定するものではない。さらに、本発明に係るCu核ボール1は、電子部品のはんだ継手に用いられる。また、本発明は、Cuを核としたカラム、ピラーやペレットの形態に応用されてもよい。
【0065】
本発明に係るCu核ボール1の製造方法の一例を説明する。
材料となるCu材はセラミックのような耐熱性の板である耐熱板に置かれ、耐熱板とともに炉中で加熱される。耐熱板には底部が半球状となった多数の円形の溝が設けられている。溝の直径や深さは、Cuボールの粒径に応じて適宜設定されており、例えば、直径が0.8mmであり、深さが0.88mmである。また、Cu細線が切断されて得られたチップ形状のCu材(以下、「チップ材」という。)は、耐熱板の溝内に一個ずつ投入される。
【0066】
溝内にチップ材が投入された耐熱板は、アンモニア分解ガスが充填された炉内で1100〜1300℃に昇温され、30〜60分間加熱処理が行われる。このとき炉内温度がCuの融点以上になると、チップ材は溶融して球状となる。その後、炉内が冷却され、耐熱板の溝内でCuボール2が成形される。冷却後、成形されたCuボール2は、Cuの融点未満の温度である800〜1000℃で再度加熱処理が行われる。
【0067】
また、別の方法としては、るつぼの底部に設けられたオリフィスから溶融Cuの液滴が滴下され、この液滴が冷却されてCuボール2が造粒されるアトマイズ法や、熱プラズマがCuカットメタルを1000℃以上に加熱して造粒する方法がある。このように造粒されたCuボール2は、それぞれ800〜1000℃の温度で30〜60分間再加熱処理が施されても良い。
【0068】
本発明に係るCu核ボール1の製造方法では、Cuボール2を造粒する前にCuボール2の原料であるCu材を800〜1000℃で加熱処理してもよい。
【0069】
Cuボール2の原料であるCu材としては、例えばペレット、ワイヤー、ピラーなどを用いることができる。Cu材の純度は、Cuボールの純度を下げすぎないようにする観点から99.9〜99.99%でよい。
【0070】
さらに高純度のCu材を用いる場合には、前述の加熱処理を行わず、溶融Cuの保持温度を従来と同様に1000℃程度に下げてもよい。このように、前述の加熱処理はCu材の純度やα線量に応じて適宜省略や変更されてもよい。また、α線量の高いCuボールや異形のCuボールが製造された場合には、これらのCuボールが原料として再利用されることも可能であり、さらにα線量を低下させることができる。
【0071】
また、上述のようにして作製されたCuボール2やめっき液を流動させてCuボール2にはんだ層3を形成する方法としては、公知のバレルめっき等の電解めっき法、めっき槽に接続されたポンプがめっき槽中にめっき液に高速乱流を発生させ、めっき液の乱流によりCuボール2にめっき被膜を形成する方法、めっき槽に振動板を設けて所定の周波数で振動させることによりめっき液が高速乱流攪拌され、めっき液の乱流によりCuボール2にめっき被膜を形成する方法等がある。
【0072】
直径100μmのCuボールに膜厚(片側)2μmのNiめっきを被覆し、さらにNiめっきの上に18μmのSn−Cuはんだめっき被膜を形成し、直径約140μmのCu核ボールとすることを一例として説明する。
【0073】
本発明の一実施の形態に係るSn−Cu含有めっき液は、水を主体とする媒体に、スルホン酸類及び金属成分としてSn及びCuを必須成分として含有している。
【0074】
金属成分はめっき液中でSnイオン(Sn
2+及び/又はSn
4+)及びCuイオン(Cu
+/Cu
2+)として存在している。めっき液は、主として水とスルホン酸類からなるめっき母液と金属化合物を混合することにより得られ、金属イオンの安定性のために、好ましくは有機錯化剤を含有する。
【0075】
めっき液中の金属化合物としては、例えば以下のものを例示することができる。
Sn化合物の具体例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−プロパノールスルホン酸、p−フェノールスルホン酸などの有機スルホン酸の錫塩、硫酸錫、酸化錫、硝酸錫、塩化錫、臭化錫、ヨウ化錫、リン酸錫、ピロリン酸錫、酢酸錫、ギ酸錫、クエン酸錫、グルコン酸錫、酒石酸錫、乳酸錫、コハク酸錫、スルファミン酸錫、ホウフッ化錫、ケイフッ化錫などの第一Sn化合物が挙げられる。これらのSn化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0076】
Cu化合物としては、上記有機スルホン酸の銅塩、硫酸銅、酸化銅、硝酸銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、リン酸銅、ピロリン酸銅、酢酸銅、ギ酸銅、クエン酸銅、グルコン酸銅、酒石酸銅、乳酸銅、コハク酸銅、スルファミン酸銅、ホウフッ化銅、ケイフッ化銅などが挙げられる。これらのCu化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0077】
また、直径104μmのNiめっきを被覆したCuボールに膜厚(片側)18μmのSn−Cuはんだめっき被膜を形成する場合、約0.0101クーロンの電気量を要する。
【0078】
めっき液中の各金属の配合量は、Sn
2+として0.05〜2mol/L、好ましくは0.25〜1mol/L、Cuとして0.002〜0.02mol/L、好ましくは0.003〜0.01mol/Lである。ここで、めっきに関与するのはSn
2+であるので、本発明ではSn
2+の量を調整すればよい。
【0079】
なお、ファラデーの電気分解の法則により下記式(1)により所望のはんだめっきの析出量を見積もり、電気量を算出して、算出した電気量となるように電流をめっき液に通電し、Cuボール及びめっき液を流動させながらめっき処理を行う。めっき槽の容量はCuボール及びめっき液の総投入量に応じて決定することができる。
【0080】
w(g)=(I×t×M)/(Z×F)・・・式(1)
【0081】
式(1)中、wは電解析出量(g)、Iは電流(A)、tは通電時間(秒)、Mは析出する元素の原子量(Snの場合、118.71)、Zは原子価(Snの場合は2価)、Fはファラデー定数(96500クーロン)であり、電気量Q(A・秒)は(I×t)で表される。
【0082】
本発明では、Cuボール及びめっき液を流動させながらめっきを行うが、流動させる方法については特に限定されない。例えば、バレル電解めっき法のようにバレルの回転よりCuボール及びめっき液を流動させることができる。
【0083】
めっき処理後、大気中やN
2雰囲気中で乾燥して本発明に係るCu核ボールを得ることができる。
【実施例】
【0084】
以下に本発明のCu核ボール1の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
<落下強度及びヒートサイクル試験>
Agを含まないはんだ合金ではんだ層が形成されたCu核ボールと、Agを含むはんだ合金ではんだ層が形成されたCu核ボールと、Agを含まないはんだ合金で形成されたはんだボールと、Agを含むはんだ合金で形成されたはんだボールを作成し、落下等の衝撃に対する強度を測定する落下強度試験と、ヒートサイクルによる伸縮に対する強度を測定するヒートサイクル試験を行った。
【0086】
図1に示すようなCu核ボール1として、実施例1では、直径が300μmのCu核ボール1を作成した。実施例1のCu核ボール1は、直径が250μmのCuボール2に、膜厚が片側で2μmの拡散防止層4をNiで形成し、はんだ層3をSn−Cu合金で形成した。Sn−Cu合金の組成はSn−0.7Cuとし、はんだ層3におけるCuの添加量を0.7%とした。
【0087】
比較例として、比較例1では、はんだ層をSn−Ag−Cu合金で形成したCu核ボールを作成した。Sn−Ag−Cu合金の組成は、Sn−1.0Ag−0.7Cuとした。比較例2では、実施例1と同じ組成のSn−Cu合金ではんだボールを作成した。比較例3では、比較例1と同じ組成のSn−Ag−Cu合金ではんだボールを作成した。
【0088】
ヒートサイクル試験は、前述の実施例と各比較例のCu核ボールとはんだボールを使用して、15個の半導体パッケージ基板(PKG)を1枚のプリント配線板(PCB)上に接合し、評価基板を作成した。プリント配線板は、Cu層の表面にプリフラックス処理を施したサイズ174mm×120mm、厚み0.8mmのCu−OSP基板を使用した。半導体パッケージ基板は、サイズ12×12mmのCu−OSP基板を使用した。
【0089】
落下強度試験は、前述の実施例と各比較例のCu核ボールとはんだボールを使用して、3個の半導体パッケージ基板を1枚のプリント配線板上に接合し、評価基板を作成した。プリント配線板は、Cu層の表面にプリフラックス処理を施したサイズ30×120mm、厚み0.8mmのCu−OSP基板を使用した。半導体パッケージ基板は、Cu−OSP基板を使用した。
【0090】
ヒートサイクル試験及び落下強度試験に使用する半導体パッケージ基板には、膜厚が15μmのレジスト膜を形成し、レジスト膜に開口径が240μmの開口部を形成して、リフロー炉で実施例あるいは比較例のCu核ボールあるいははんだボールを接合した。リフロー条件としては、ヒートサイクル試験と落下強度試験ともにN
2雰囲気でピーク温度を245℃とし、予備加熱を140〜160℃で20秒、本加熱を220℃以上で40秒行った。
【0091】
このようにCu核ボールあるいははんだボールが接合された半導体パッケージ基板を、ヒートサイクル試験用のプリント配線板と落下強度試験用のプリント配線板にそれぞれ実装した。プリント配線板には、ヒートサイクル試験用と落下強度試験用ともにはんだ合金の組成がSn−3.0Ag−0.5Cuであるソルダペーストを、厚さを100μm、径を240μmとして印刷し、実施例あるいは比較例のCu核ボールあるいははんだボールが接合された半導体パッケージ基板を、リフロー炉でプリント配線板に接続した。リフロー条件としては、大気でピーク温度を245℃とし、予備加熱を140〜160℃で70秒、本加熱を220℃以上で40秒行った。
【0092】
落下強度試験では、作成した評価基板を台座から10mm浮かせた位置に専用治具を用いて基板両端を固定させた。JEDEC規格に則り、加速度1500Gの衝撃を繰り返し加え、初期抵抗値から1.5倍上昇した時点を破断とみなし、落下回数を記録した。
【0093】
ヒートサイクル試験は、作成した評価基板を直列回路により抵抗を常時測定した。エスペック製冷熱衝撃装置TSA101LAを用いて−40℃と+125℃でそれぞれ10分ずつ保持する処理を1サイクルとし、抵抗値が15Ωを超えた時点を破断とみなし、プリント配線板上の15個の半導体パッケージ基板のはんだ接合部全てが破壊された際の熱疲労サイクル回数を記録した。1つの組成につき、10組の評価基板を作成して10回の試験を行い、その平均値を結果とした。
【0094】
半導体パッケージ基板が、Cu層の表面にプリフラックス処理を施したCu−OSP基板である場合の試験結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
半導体パッケージ基板が、Cu層の表面にプリフラックス処理を施したCu−OSP基板である場合、表1に示すように、はんだ層をSn−Cu合金で形成した実施例1のCu核ボールでは、落下強度が向上すると共に、ヒートサイクルに対する強度も、必要とされる1500回を超える値が得られた。
【0097】
半導体パッケージ基板がCu−OSP基板である場合、はんだ層をSn−Ag−Cu合金で形成した比較例1のCu核ボールでは、落下強度は所定の強度を得られるが、ヒートサイクルに対する強度の低下がみられた。
【0098】
半導体パッケージ基板がCu−OSP基板である場合、Sn−Cu合金で形成した比較例2のはんだボールでは、落下強度は向上するが、ヒートサイクルについて強度の低下がみられた。Sn−Ag−Cu合金で形成した比較例3のはんだボールでは、落下強度、ヒートサイクルに対する強度とも、必要とされる値は得られた。
【0099】
このように、実施例1のCu核ボールでは、接合対象物がCu−OSP基板である場合、十分な落下強度及びヒートサイクルに対する強度が得られた。
【0100】
ここで、実施例1のCu核ボールにおいて、はんだ層におけるCuの添加量を0.1%以上3.0%以下の範囲で落下強度試験、ヒートサイクル試験を行ったところ、落下強度、ヒートサイクルに対する強度とも、必要とされる以上の値が得られた。但し、Cuの添加量を3.0%程度とすると、はんだ合金の融点が高くなる。そこで、Sn−Cu合金で形成されるはんだ層におけるCuの添加量は、0.1%以上2.0%以下とすることが好ましい。
【0101】
<α線量の測定>
次に、真球度が高いCuボールを作製し、このCuボールの表面にはんだ層を形成したCu核ボールのα線量を測定した。
【0102】
・Cuボールの作製
真球度が高いCuボールの作製条件を調査した。純度が99.9%のCuペレット、純度が99.995%以下のCuワイヤー、及び純度が99.995%を超えるCu板を準備した。各々をるつぼの中に投入した後、るつぼの温度を1200℃に昇温し、45分間加熱処理を行い、るつぼ底部に設けたオリフィスから溶融Cuの液滴を滴下し、液滴を冷却してCuボールを造粒した。これにより平均粒径が250μmのCuボールを作製した。作製したCuボールの元素分析結果及び真球度を表3に示す。
【0103】
・真球度
以下に、真球度の測定方法を詳述する。真球度はCNC画像測定システムで測定された。装置は、ミツトヨ社製のウルトラクイックビジョン、ULTRA QV350−PROである。
【0104】
・α線量
α線量の測定方法は以下の通りである。α線量の測定にはガスフロー比例計数器のα線測定装置を用いた。測定サンプルは300mm×300mmの平面浅底容器にCuボールを敷き詰めたものである。この測定サンプルをα線測定装置内に入れ、PR−10ガスフローにて24時間放置した後、α線量を測定した。
【0105】
なお、測定に使用したPR−10ガス(アルゴン90%−メタン10%)は、PR−10ガスをガスボンベに充填してから3週間以上経過したものである。3週間以上経過したボンベを使用したのは、ガスボンベに進入する大気中のラドンによりα線が発生しないように、JEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)で定められたα線測定方法の指針に従ったためである。
作製したCuボールの元素分析結果、α線量を表2に示す。
【0106】
【表2】
【0107】
表2に示すように、純度が99.9%のCuペレット及び99.995%以下のCuワイヤーを用いたCuボールは、いずれも真球度が0.990以上を示した。一方、表3に示すように、純度が99.995%を超えるCu板を用いたCuボールは、真球度が0.95を下回った。このため、以下に示す実施例及び比較例では、いずれも99.995%以下のCuワイヤーで製造したCuボールを用いてCu核ボールを作製した。
【0108】
純度99.995%以下のCuワイヤーで製造したCuボールについて、以下の条件でSnはんだめっき被膜を形成して、実施例2のCu核ボールを作製した。
【0109】
実施例2のCu核ボールは、直径250μmのCuボールに膜厚(片側)が50μmのはんだ層が被覆されるように、電気量を約0.17クーロンとして以下のめっき液を用いてめっき処理を行った。はんだめっき被膜で被覆されたCu核ボールの断面をSEM写真により観察したところ、膜厚は約50μmであった。処理後、大気中で乾燥し、Cu核ボールを得た。
【0110】
はんだめっき液は、次のように作成した。撹拌容器にめっき液調整に必要な水の1/3に、54重量%のメタンスルホン酸水溶液の全容を入れ敷水とした。次に、錯化剤であるメルカプタン化合物の一例であるアセチルシステインを入れ溶解確認後、他の錯化剤である芳香族アミノ化合物の一例である2,2’ −ジチオジアニリンを入れた。薄水色のゲル状の液体になったら速やかにメタンスルホン酸第一錫を入れた。次にめっき液に必要な水の2/3を加え、最後に界面活性剤の一例であるα−ナフトールポリエトキシレート(EO10モル)3g/Lを入れ、めっき液の調整は終了した。めっき液中のメタンスルホン酸の濃度が2.64mol/L、錫イオン濃度が0.337mol/L、であるめっき液を作成した。
【0111】
本例で使用したメタンスルホン酸第一錫は、下記Snシート材を原料として調製したものである。
【0112】
はんだめっき液の原料であるSnシート材の元素分析、及びCu核ボールの表面に形成されたはんだめっき被膜の元素分析は、U及びThについては高周波誘導結合質量分析(ICP−MS分析)、その他の元素については高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES分析)により行われた。Snシート材のα線量は、300mm×300mmの平面浅底容器にSnシート材を敷いたこと以外Cuボールと同様に測定された。Cu核ボールのα線量は、前述のCuボールと同様に測定された。またCu核ボールの真球度についてもCuボールと同じ条件で測定を行った。これらの測定結果を表3に示す。なお、比較例として、Snシート材のα線量を測定した。
【0113】
【表3】
【0114】
表3によれば、Snシート材の段階ではα線量は0.2000cph/cm
2を超えているが、当該Snシート材を使用して、CuボールにSn−Cu合金ではんだ層を形成した実施例2では、α線量は0.0010cph/cm
2未満を示した。実施例2のCu核ボールは、めっき法によりはんだめっき被膜を形成することによりα線量が低減することが立証された。
【0115】
また実施例2のCu核ボールは作成後2年を経過してもα線量の上昇は見られなかった。
【0116】
なお、以上は本発明に係るCu核ボールについて説明をしたが、本発明の形状は半導体パッケージの自重によりはんだバンプが潰れることを防止するという目的を達成できればボール状に限定されることはなく上述したCu核カラムにも適用できる。具体的には円柱や、三角柱や四角柱等の基板に直接、接する上下面が3辺以上で構成されている柱体を適用してもよい。核となるCuカラムは公知の方法で形成出来るし、Cuカラムの表面を被覆するめっきも上述したCu核ボールで用いた方法でめっき被覆を形成することが出来る。
【0117】
図2は、本実施の形態のCu核カラムの模式的な構造を示す側断面図、
図3は、本実施の形態のCu核カラムの模式的な構造を示す平面断面図である。本実施の形態のCu核カラム5は、Cuカラム6と、Cuカラム6を被覆するはんだ層7で構成される。
【0118】
本発明に係るCu核カラム5を構成するCuカラム6の上面および底面の径は1〜1000μmであることが好ましく、特にファインピッチに用いる場合は1〜300μがより好ましく、さらに好ましくは1〜200μmであり、最も好ましいのは1〜100μmである。そしてCuカラム6の高さLは1〜3000μmであることが好ましく、特にファインピッチに用いる場合は1〜300μがより好ましく、さらに好ましくは1〜200μmであり、最も好ましいのは1〜100μmである。Cuカラム6の径および高さLが上記範囲である場合、端子間を狭ピッチとした実装が可能となるので、接続短絡を抑制することができると共に半導体パッケージの小型化および高集積化を図ることができる。
【0119】
上記Cuカラム6の大きさ以外の本発明に係るCu核カラム5を構成するCuカラム6の純度やα線量、含有する不純物等の好ましい条件は、本発明に係るCuボール2の条件と同じである。なお、Cuカラム6では、真球度が要求されないことで、純度が4N5以下、つまり、不純物元素の含有量が50ppm以上とする必要はない。但し、α線量を低減し得る範囲であれば、不純物の含有量を極限まで低減する必要はなく、α線量を低減する上でU及びThの含有量を所定値以下にすれば、PbまたはBiのいずれかの含有量、あるいは、Pb及びBiの含有量を極限まで低減する必要がない。不純物の含有量を極限まで低減しなくても、落下強度及びヒートサイクル強度に影響はない。
【0120】
また本発明に係るCu核カラム5を構成するはんだ層7のはんだ組成やα線量、含有する不純物等の好ましい条件は、本発明に係るはんだ層3の条件と同じである。
【0121】
更に、本発明に係るCu核カラム5のα線量等の好ましい条件は、本発明に係るCu核ボール1の条件と同じである。
【0122】
本発明に係るCu核カラム5は、Cuカラム6とはんだ層7との間に、拡散防止層8が形成されてもよい。拡散防止層8は、Ni、あるいはCo等から選択される1元素以上で構成され、Cuカラム6を構成するCuがはんだ層7に拡散することを防止する。
【0123】
本発明に係るCu核カラム5は、積層される半導体チップ間の電極を接続するためのシリコン貫通電極(through-silicon via:TSV)に使用することもできる。TSVは、シリコンにエッチングで穴を開け、穴の中に絶縁層、その上より貫通導電体の順に形成し、シリコンの上下面を研磨して、貫通導電体を上下面で露出させて製造される。この工程のうち貫通導電体は、従来、Cu等をめっき法によって穴の中に充填して形成する方法がとられているが、この方法では、シリコン全面をめっき液に浸漬させることため、不純物の吸着や吸湿の恐れがある。そこで本発明に係るCu核カラム5を直接、シリコンに形成された穴に高さ方向に差し込んで、貫通導電体として使用することができる。Cu核カラム5をシリコンに差し込む際は、はんだペースト等のはんだ材料によって接合するようにしても良く、またCu核カラム5をシリコンに差し込む際は、フラックスのみで接合させることもできる。これにより不純物の吸着や吸湿等の不良を防止でき、めっき工程を省略することによって、製造コストや製造時間も削減することができる。
【0124】
上述した本発明に係るCu核カラム5は、はんだカラムと同等以上の落下強度及びヒートサイクルに対する強度を得ることができる。