【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例に記載の発明に限定されるものではない。実施例で用いた樹脂原料、プリプレグおよび繊維強化プラスチックの作製方法および評価法を、次に示す。実施例のプリプレグの作製環境および評価は、特に断りのない限り、温度25℃±2℃、相対湿度50%の雰囲気で行ったものである。
【0058】
(1)衝撃後圧縮強度(CAI)測定
次の(a)〜(e)の操作によりCAIを測定した。
(a)一方向プリプレグを[45/0/−45/90]
2Sで16ply積層した。
(b)積層したプリプレグをナイロンフィルムで隙間のないように覆い、オートクレーブ中で昇温速度1.5℃/分で180℃まで昇温した後、温度180℃、圧力7kg/cm
2で2時間加熱加圧して硬化し、擬似等方材(炭素繊維強化プラスチック)を成形した。
(c)平板状の炭素繊維強化プラスチックより、0°を長さ方向とし、長さ150±0.25mm、幅100±0.25mmのCAI試験片を切り出した。
(d)ASTM D7136/7136M−07に規定する試験方法に従い、落錘、超音波探傷を行い、損傷面積を測定した。パネルに与えたインパクトのエネルギーは、成形板厚さ9点の平均から算出し、一律28.4Jとした。
(e)ASTM D7137/7137M−07に規定する試験方法に従い、“インストロン(登録商標)”万能試験機4208型を用い、CAI強度を測定した。測定した試験片の数は5とし、平均値をCAI強度とした。
【0059】
(2)モードI層間靭性(G
IC)測定
JIS K7086(1993)に準じ、次の(a)〜(e)の操作によりG
ICを測定した。
(a)一方向プリプレグを、繊維方向を同方向に揃えて16ply積層した。ただし、積層中央面(8ply目と9ply目の間)に、初期き裂を作製するため、厚み12.5μmのフッ素樹脂製フィルムを積層体端部から0°方向に40mm差し込んだ。
(b)積層したプリプレグをナイロンフィルムで隙間のないように覆い、オートクレーブ中で昇温速度1.5℃/分で180℃まで昇温した後、温度180℃、圧力7kg/cm
2で2時間加熱加圧して硬化し、一方向強化材(炭素繊維強化プラスチック)を成形した。
(c)(b)で得た一方向強化材(炭素繊維強化プラスチック)を、0°を長さ方向とし、幅20mm、長さ195mmにカットした。繊維方向は、サンプルの長さ側と平行になるようにカットした。
(d)JIS K7086(1993)に従い、ピン負荷用ブロック(長さ25mm、アルミ製)を試験片端(フィルムをはさんだ側)に接着した。
(e)き裂進展を観察しやすくするため、試験片の両側面に白色塗料を塗った。
【0060】
作製した一方向強化材(炭素繊維強化プラスチック)を用いて、以下の手順により、G
IC測定を行った。
【0061】
JIS K7086(1993)附属書1に従い、“インストロン(登録商標)”5565型を用いて試験を行った。クロスヘッドスピードは、き裂進展が20mmに到達するまでは0.5mm/min、20mm到達後は1mm/minとした。JIS K7086(1993)にしたがって、荷重、変位、および、き裂長さから、G
IC(き裂進展初期のGIC)を算出した。測定した試験片の数は5とし、平均値をG
ICとした。
【0062】
(3)モードII層間靭性(G
IIC)測定
JIS K7086(1993)に準じ、次の(a)〜(d)の操作によりG
IICを測定した。
(a)一方向プリプレグを、繊維方向を同方向に揃えて16ply積層した。ただし、積層中央面(8ply目と9ply目の間)に、初期き裂を作製するため、厚み12.5μmのフッ素樹脂製フィルムを積層体端部から0°方向に40mm差し込んだ。
(b)積層したプリプレグをナイロンフィルムで隙間のないように覆い、オートクレーブ中で昇温速度1.5℃/分で180℃まで昇温した後、温度180℃、圧力7kg/cm
2で2時間加熱加圧して硬化し、一方向強化材(炭素繊維強化プラスチック)を成形した。
(c)(b)で得た一方向強化材(炭素繊維強化プラスチック)を、0°を長さ方向とし、幅20mm、長さ195mmにカットした。繊維方向は、サンプルの長さ側と平行になるようにカットした。
(d)き裂進展を観察しやすくするため、試験片の両側面に白色塗料を塗った。
【0063】
作製した一方向強化材(炭素繊維強化プラスチック)を用いて、以下の手順により、G
IIC測定を行った。
【0064】
JIS K7086(1993)附属書2に従い、“インストロン(登録商標)”5565型を用いて試験を行った。クロスヘッドスピードは、1mm/minとした。JIS K7086(1993)にしたがって、荷重、変位、および、き裂長さから、き裂進展初期の限界荷重に対応するG
IIC(き裂進展初期のG
IIC)を算出した。測定した試験片の数は5とし、平均値をG
IICとした。
【0065】
(4)プリプレグの層間摩擦測定
次の(a)〜(c)の操作により、層間摩擦係数を測定した。
(a)
図1に示すように、0°を長さ方向として、幅40mm、長さ150mmに裁断した1層目のプリプレグ4に、幅30mm、長さ150mmに裁断した2層目のプリプレグ3を幅30mm、長さ60mmの範囲でオーバーラップするように積層し、さらに2層目のオーバーラップ部に接するように幅30mm、長さ20mmのスペーサー5用プリプレグを積層した後、幅40mm、長さ150mmの3層目のプリプレグ4を1層目と重なるように積層した。その後、幅40mm×長さ30mmの離型紙2を1層目および3層目の外側に重なるよう貼り付けた。
(b)オーバーラップ部とスペーサーの長さ10mmの範囲(幅30mm、長さ70mmの範囲)を、加熱源を有した圧板1で所定の温度に温調しながら168Nの一定垂直荷重を加えた。
(c)垂直荷重を加え始めて10分後に、2層目のプリプレグを繊維方向に引抜速度0.2mm/minで引抜き、引抜荷重を測定した。引抜きとともに2層目のプリプレグが垂直荷重を受けるオーバーラップ部の面積が減少するため、引抜き変位で換算したオーバーラップ部の面積で受ける垂直荷重の2倍、すなわち168N×(60mm−引抜き変位)÷(70mm−引抜き変位)×2で引抜き荷重を割ったものを層間摩擦係数とし、引抜開始から5分後、すなわち引抜き変位1mmにおける層間摩擦係数を5回測定し、その平均を層間摩擦係数の値とした。
【0066】
(5)繊維層および樹脂層のガラス転移温度測定
JIS K7121(1987)に従い、示差走査熱量計(DSC)により繊維層および樹脂層のガラス転移温度の測定を行った。測定装置として、TA Instruments社製の示差走査型熱量計(DSC)を使用した。
【0067】
次の(a)〜(b)の操作により、樹脂層のガラス転移温度を測定した。
(a)プリプレグ表面の樹脂層をスパチュラで繊維が混入しないよう慎重にかきとった。
(b)容量50μlの密閉型サンプル容器に、(a)でかきとった3〜5mgの試料を詰め、昇温速度10℃/minで−30〜250℃まで昇温し、得られたDSC曲線の階段状変化を示す部分の中間点であるガラス転移温度(Tmg)を測定した。具体的には、得られたDSC曲線の階段状変化を示す部分において、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度をガラス転移温度とした。
【0068】
同様に、次の(c)〜(d)の操作により、繊維層のガラス転移温度を測定した。
(c)プリプレグ両面の樹脂層をスパチュラで一部繊維層の繊維が混入するように、強くかきとった。
(d)(c)で残った繊維層をカッターで裁断し、容量50μlの密閉型サンプル容器に、10〜20mg詰め、昇温速度10℃/minで−30〜250℃まで昇温し、得られたDSC曲線の階段状変化を示す部分の中間点であるガラス転移温度(Tmg)を測定した。
【0069】
(6)ウォーターピックアップ法によるプリプレグの含浸率測定
次の(a)〜(c)の操作により、含浸率を測定した。
(a)100×100mmのプリプレグ1枚を用意し、離型紙をはがし、質量を測定した。
(b)水を入れたビーカーに0°の向きで垂直に6mm沈め、5分間浸漬後の質量を測定した。
(c)浸水後の質量の増加量を元の質量で割ったものを含浸率(質量%)とした。なお、測定した試験片の数は5とし、平均値を含浸率とした。
【0070】
(7)ホットフォーミング賦形試験
次の(a)〜(e)の操作により、ホットフォーミング賦形試験およびシワの有無を判定した。
(a)[45/−45/0/90]
3Sで0°を長さ方向とし、幅15cm、長さ45cmのプリプレグを24層積層した。
(b)(a)で作製したプリプレグ積層体を、60℃のオーブンで30分間温調した。
(c)
図2に示すような、幅15cm、高さ20cm、R=5mmの賦型型6をシリコンラバー7が具備されたシール9付きのフレーム8にセットした。
(d)プリプレグ積層体11を賦型型6の上に配置し、室温で装置内を真空ポンプ10を使用し、150秒かけて真空引きした。これによって、積層体の両端部が90°曲げられた賦型後プリプレグ積層体12が得られた。
(e)賦型後プリプレグ積層体12の曲げられた部分の内側に生成するシワの有無を、深いシワ、成形すれば消える細かいシワ、シワなしの3種類で判定した。
【0071】
(8)プリプレグ表面の粒子の数密度測定
プリプレグ表面の略1.2mm×0.9mmの領域を10箇所抽出した。所定の温度に温調したプレート上に離型紙を剥いだ直後のプリプレグを、離型紙を剥いだ面を上面として配置し、10分間加温後にプリプレグ表面の上方±45度の角度から繊維方向に平行に光を当てながら、光学顕微鏡を用いて200倍の倍率で撮像しデジタル画像を得た。画像処理ソフトウェアImagePro(登録商標)を用い、該デジタル画像をNTSC系加重平均法を用いてグレースケール化し、その後最小輝度と最大輝度をそれぞれ輝度0と輝度255となるよう正規化した。輝度127以下を黒、輝度128以上の輝度を白として認識するよう二値化した後、独立した白色部の個数を数え、撮像した面積で割り、抽出した10箇所で平均したものをプリプレグ表面の粒子の数密度とした。
【0072】
(9)熱可塑粒子の真球度の測定
熱可塑粒子の個々の粒子径は、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡JSM−6301NF)にて、粒子を1000倍で観察し、測長した。写真から任意の30個の粒子を選択して、その短径と長径を測定し、下記数式に従い、真球度を算出した。
【0073】
【数1】
【0074】
なお、n:測定数30とする。
【0075】
(10)熱可塑粒子の粒子径分布測定
粒子濃度が0.1質量%になるように、粒子を蒸留水に投入し、超音波処理により分散させた。得られた分散液を測定サンプルとし、レーザー回折式粒度分布計(LA−950:株式会社堀場製作所製)を用いて、粒子径分布を測定した。粒子径の検出範囲は、0.01〜100μmとし、この範囲を70分割する設定とした。縦軸に体積換算の相対粒子量、横軸に粒子径の対数をとり、各プロットを直線で繋いだ粒子径分布のチャートを得た。
【0076】
(11)熱可塑樹脂粒子の不溶性評価
(2)で作製した一方向強化材の0度断面を、強化繊維と熱硬化性樹脂との界面が明確に見えるまで研磨し、その表面を光学顕微鏡で観察し、繊維層間に存在する樹脂層中の熱可塑性樹脂粒子を観察した。この際に、粒状の熱可塑性樹脂粒子と周囲の熱硬化性樹脂との界面が明確に見える場合は不溶とした。一方、熱可塑性樹脂粒子が周囲の熱硬化性樹脂との区別がつかない場合は可溶とした。
【0077】
(参考例1)
(a)熱可塑性樹脂粒子の調製
透明ポリアミド(製品名:“グリルアミド(登録商標)”−TR55、EMSER Werke社)90質量部、エポキシ樹脂(製品名:“エピコート(登録商標)”828、シェル石油化学社製)7.5質量部および硬化剤(製品名:“トーマイド(登録商標)”#296、フジ化成工業株式会社製)2.5質量部を、クロロホルム300質量部およびメタノール100質量部を含有する溶媒混合物に加えて均一な溶液とした。次に、得られた均一な溶液を塗装用スプレーガンで霧化し、よく混合し、この溶液を沈殿させるためにn−ヘキサン3000質量部の液体表面に向けて噴霧した。沈殿した固体を濾過により分離し、n−ヘキサンで十分に洗浄し、次いで100℃で24時間真空乾燥させて球状エポキシ変性ナイロン粒子を得た。エポキシ変性ナイロン粒子をCCEテクノロジーズ社製のCCE分級機で分球した。得られた粒子の90体積%粒子径は28μm、CV値が60%であった。また、得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、真球度96の微粒子形状であり、平均粒子径 14μmのポリアミド微粒子であった。
【0078】
(b)樹脂組成物の調製
(1)13質量部のPES5003Pを、混練機中の60質量部の“アラルダイト(登録商標)”MY9655および40質量部の“エポン(登録商標)”825に加えて溶解させ、次いで硬化剤として、“アラドゥール(登録商標)”9664−1を45質量部加えて混練して熱硬化性樹脂組成物(1)を作製した。
【0079】
(2)16質量部のPES5003Pを、混練機中の60質量部の“アラルダイト(登録商標)”MY9655および40質量部の“エポン(登録商標)”825に加えて溶解させ、前記熱可塑性樹脂粒子を80質量部加えて混練し、次いで硬化剤として“アラドゥール(登録商標)”9664−1を45質量部加えて混練して熱硬化性樹脂組成物(2)を作製した。
【0080】
(c)プリプレグの作製
(b)(1)で作製した熱硬化性樹脂組成物(1)をナイフコーターで離型紙に塗布して、樹脂量36g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製した。次に、作製したこの2枚の樹脂フィルムを、一方向に配列されたシート状の炭素繊維(“トレカ(登録商標)”T800S−12K)の両面に積層し、ローラー温度110℃、ローラー圧力0.25MPaで樹脂を炭素繊維シートに含浸させ、一方向炭素繊維強化プリプレグを作製した。作製されたプリプレグの含浸率をウォーターピックアップ法により測定したところ、3.8質量%であった。さらに(b)(2)で作製した熱硬化性樹脂組成物(2)をナイフコーターで離型紙に塗布して、樹脂量30g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製して、先ほど作製した一方向炭素繊維強化プリプレグの両面に積層し、ローラー温度100℃、ローラー圧力0.07MPaで樹脂を積層した。このようにして、繊維層の両面に、熱可塑性樹脂粒子を含む樹脂層が配置され、繊維質量が270g/m
2でマトリックス樹脂の樹脂含有量が33質量%の一方向炭素繊維強化プリプレグを作製した。
【0081】
得られたプリプレグを用い、層間摩擦測定、ガラス転移温度(Tgf,Tgr)測定、含浸率測定、表面観察および賦形試験を行った。また、得られたプリプレグを用い炭素繊維複合材料を作製した。結果を表1および表2に示す。
【0082】
(実施例1)
参考例1(b)(1)で作製した熱硬化性樹脂組成物(1)をナイフコーターで離型紙に塗布して、樹脂量36g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製した。次に、作製したこの2枚の樹脂フィルムを、一方向に配列されたシート状の炭素繊維(“トレカ(登録商標)”T800S−12K)の両面に積層し、ローラー温度110℃、参考例1より高圧のローラー圧力0.55MPaで樹脂を炭素繊維シートに含浸させ、一方向炭素繊維強化プリプレグを作製した。作製されたプリプレグの含浸率をウォーターピックアップ法により測定したところ、1.3質量%と非常に含浸率が高いことがわかった。その後、さらに参考例1(b)(2)で作製した熱硬化性樹脂組成物(2)をナイフコーターで離型紙に塗布して、樹脂量30g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製して、先ほど作製した一方向炭素繊維強化プリプレグの両面に積層し、ローラー温度100℃、参考例1より低圧のローラー圧力0.02MPaで樹脂を積層した。このようにして、繊維層の両面に、熱可塑性樹脂粒子を含む樹脂層が配置され、繊維質量が270g/m
2でマトリックス樹脂の樹脂含有量が33質量%の一方向炭素繊維強化プリプレグを作製した。
【0083】
得られたプリプレグを用い、層間摩擦測定、ガラス転移温度(Tgf,Tgr)測定、含浸率測定、表面観察および賦形試験を行った。また、得られたプリプレグを用い炭素繊維複合材料を作製した。結果を表1および表2に示す。
【0084】
(実施例2)
参考例1(b)(1)で作製した熱硬化性樹脂組成物(1)をナイフコーターで離型紙に塗布して、参考例1より目付の小さい樹脂量26g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製した。次に、作製したこの2枚の樹脂フィルムを、一方向に配列されたシート状の炭素繊維(“トレカ(登録商標)”T800S−12K)の両面に積層し、ローラー温度110℃、ローラー圧力0.25MPaで樹脂を炭素繊維シートに含浸させ、一方向炭素繊維強化プリプレグを作製した。作製されたプリプレグの含浸率をウォーターピックアップ法により測定したところ、6.0質量%と含浸率が低いことがわかった。その後、さらに参考例1(b)(2)で作製した熱硬化性樹脂組成物(2)をナイフコーターで離型紙に塗布して、参考例1より目付の大きい樹脂量40g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製して、先ほど作製した一方向炭素繊維強化プリプレグの表面に積層し、ローラー温度90℃、ローラー圧力0.07MPaで樹脂を積層した。このようにして、繊維層の両面に、熱可塑性樹脂粒子を含む樹脂層が配置され、繊維質量が270g/m
2でマトリックス樹脂の樹脂含有量が33質量%の一方向炭素繊維強化プリプレグを作製した。
【0085】
得られたプリプレグを用い、層間摩擦測定、ガラス転移温度(Tgf,Tgr)測定、含浸率測定、表面観察および賦形試験を行った。また、得られたプリプレグを用い炭素繊維複合材料を作製した。結果を表1および表2に示す。
【0086】
(実施例3)
参考例1(b)(1)で作製した熱硬化性樹脂組成物(1)をナイフコーターで離型紙に塗布して、樹脂量36g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製した。次に、作製したこの2枚の樹脂フィルムを、一方向に配列されたシート状の炭素繊維(“トレカ(登録商標)”T800S−12K)の両面に積層し、ローラー温度110℃、参考例1より高圧のローラー圧力0.55MPaで樹脂を炭素繊維シートに含浸させ、一方向炭素繊維強化プリプレグを作製した。作製されたプリプレグの含浸率をウォーターピックアップ法により測定したところ、1.5質量%と非常に含浸率が高いことがわかった。その後、100℃のオーブン中で20分間加温し層間摩擦の要因となる粒状の硬化剤の一部を溶解させた。さらに参考例1(b)(2)で作製した熱硬化性樹脂組成物(2)をナイフコーターで離型紙に塗布して、樹脂量30g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製して、先ほど作製した一方向炭素繊維強化プリプレグの両面に積層し、ローラー温度90℃、参考例1より低圧のローラー圧力0.02MPaで樹脂を積層した。このようにして、繊維層の両面に、熱可塑性樹脂粒子を含む樹脂層が配置され、繊維質量が270g/m
2でマトリックス樹脂の樹脂含有量が33質量%の一方向炭素繊維強化プリプレグを作製した。
【0087】
得られたプリプレグを用い、層間摩擦測定、ガラス転移温度(Tgf,Tgr)測定、含浸率測定、表面観察および賦形試験を行った。また、得られたプリプレグを用い炭素繊維複合材料を作製した。結果を表1および表2に示す。
【0088】
(実施例4)
参考例1(b)(1)で作製した熱硬化性樹脂組成物(1)をナイフコーターで離型紙に塗布して、樹脂量36g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製した。次に、作製したこの2枚の樹脂フィルムを、一方向に配列されたシート状の炭素繊維(“トレカ(登録商標)”T800S−12K)の両面に積層し、ローラー温度110℃、参考例1より高圧のローラー圧力0.55MPaで樹脂を炭素繊維シートに含浸させ、一方向炭素繊維強化プリプレグを作製した。作製されたプリプレグの含浸率をウォーターピックアップ法により測定したところ、1.5質量%と非常に含浸率が高いことがわかった。その後、200℃のオーブン中で3分間加温し作製されたプリプレグ表面の硬化をすすめた。さらに参考例1(b)(2)で作製した熱硬化性樹脂組成物(2)をナイフコーターで離型紙に塗布して、樹脂量30g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製して、先ほど作製した一方向炭素繊維強化プリプレグの両面に積層し、ローラー温度90℃、参考例1より低圧のローラー圧力0.02MPaで樹脂を積層した。このようにして、繊維層の両面に、熱可塑性樹脂粒子を含む樹脂層が配置され、繊維質量が270g/m
2でマトリックス樹脂の樹脂含有量が33質量%の一方向炭素繊維強化プリプレグを作製した。
【0089】
得られたプリプレグを用い、層間摩擦測定、ガラス転移温度(Tgf,Tgr)測定、含浸率測定、表面観察および賦形試験を行った。また、得られたプリプレグを用い炭素繊維複合材料を作製した。結果を表1および表2に示す。
【0090】
(実施例5)
参考例1(b)(1)で作製した熱硬化性樹脂組成物(1)をナイフコーターで離型紙に塗布して、樹脂量36g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製した。次に、作製したこの2枚の樹脂フィルムを、一方向に配列されたシート状の炭素繊維(“トレカ(登録商標)”T1100GC−24K)の両面に積層し、ローラー温度110℃、ローラー圧力0.25MPaで樹脂を炭素繊維シートに含浸させ、一方向炭素繊維強化プリプレグを作製した。作製されたプリプレグの含浸率をウォーターピックアップ法により測定したところ、3.4質量%であった。さらに参考例1(b)(2)で作製した熱硬化性樹脂組成物(2)をナイフコーターで離型紙に塗布して、樹脂量30g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製して、先ほど作製した一方向炭素繊維強化プリプレグの両面に積層し、ローラー温度100℃、参考例1より低圧のローラー圧力0.02MPaで樹脂を積層した。このようにして、繊維層の両面に、熱可塑性樹脂粒子を含む樹脂層が配置され、繊維質量が270g/m
2でマトリックス樹脂の樹脂含有量が33質量%の一方向炭素繊維強化プリプレグを作製した。
【0091】
得られたプリプレグを用い、層間摩擦測定、ガラス転移温度(Tgf,Tgr)測定、含浸率測定、表面観察および賦形試験を行った。また、得られたプリプレグを用い炭素繊維複合材料を作製した。結果を表1および表2に示す。
(実施例6)
(a)熱可塑性樹脂粒子の調製(国際公開2009/142231号を参考とした)
1000mlの耐圧ガラスオートクレーブ(耐圧硝子工業(株)ハイパーグラスター(登録商標)TEM−V100N)の中に、ポリマーAとしてポリアミド(重量平均分子量 17,000、デグサ社製 “トロガミド(登録商標)”CX7323)を35g、有機溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン 280g、ポリマーBとしてポリビニルアルコール 35g(日本合成化学工業株式会社製 “ゴーセノール(登録商標)”GM−14 重量平均分子量 29,000、酢酸ナトリウム含量0.23質量%、SP値32.8(J/cm
3)
1/2)を加え、99体積%以上の窒素置換を行った後、180℃に加熱し、ポリマーが溶解するまで2時間攪拌を行った。その後、貧溶媒として350gのイオン交換水を、送液ポンプを経由して、2.92g/分のスピードで滴下した。約200gのイオン交換水を加えた時点で、系が白色に変化した。全量の水を入れ終わった後、攪拌したまま降温させ、得られた懸濁液を、濾過し、イオン交換水 700gを加えてリスラリー洗浄し、濾別したものを、80℃ 10時間真空乾燥を行い、灰色に着色した固体を34g得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、真球度98の微粒子形状であり、平均粒子径 13μm、かつ、粒子径3μm以下の粒子が存在しないポリアミド微粒子であった。
【0092】
(b)樹脂組成物の調製
(1)参考例1(b)(1)と同じ方法で熱硬化性樹脂組成物(1)を調製した。
【0093】
(2)熱可塑性樹脂粒子を実施例6(a)で作製した粒子を配合する以外は、参考例1(b)と同じ方法で熱硬化性樹脂組成物(3)を調製した。
【0094】
(c)プリプレグの作製
参考例1(b)(1)で作製した熱硬化性樹脂組成物(1)をナイフコーターで離型紙に塗布して、樹脂量30g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製した。次に、作製したこの2枚の樹脂フィルムを、一方向に配列されたシート状の炭素繊維(“トレカ(登録商標)”T1100GC−24K)の両面に積層し、ローラー温度110℃、ローラー圧力0.25MPaで樹脂を炭素繊維シートに含浸させ、一方向炭素繊維強化プリプレグを作製した。作製されたプリプレグの含浸率をウォーターピックアップ法により測定したところ、2.8質量%であった。さらに実施例6(b)(2)で作製した熱硬化性樹脂組成物(3)をナイフコーターで離型紙に塗布して、樹脂量21g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製して、先ほど作製した一方向炭素繊維強化プリプレグの両面に積層し、ローラー温度100℃、参考例1より低圧のローラー圧力0.02MPaで樹脂を積層した。このようにして、繊維層の両面に、熱可塑性樹脂粒子を含む樹脂層が配置され、繊維質量が190g/m
2でマトリックス樹脂の樹脂含有量が35質量%の一方向炭素繊維強化プリプレグを作製した。
【0095】
得られたプリプレグを用い、層間摩擦測定、ガラス転移温度(Tgf,Tgr)測定、含浸率測定、表面観察および賦形試験を行った。また、得られたプリプレグを用い炭素繊維複合材料を作製した。結果を表1および表2に示す。
【0096】
(参考例2)
(a)透明ポリアミド(製品名:“グリルアミド(登録商標)”−TR55、EMSER Werke社)94質量部、エポキシ樹脂(製品名:“エピコート(登録商標)”828、シェル石油化学社製)4質量部および硬化剤(製品名:“トーマイド(登録商標)”#296、フジ化成工業株式会社製)2質量部を、クロロホルム300質量部およびメタノール100質量部を含有する溶媒混合物に加えて均一な溶液とした。次に、得られた均一な溶液を塗装用スプレーガンで霧化し、混合し、この溶液を沈殿させるためにn−ヘキサン3000質量部の液体表面に向けて噴霧した。沈殿した固体を濾過により分離し、n−ヘキサンで十分に洗浄し、次いで100℃で24時間真空乾燥させてエポキシ変性ナイロン粒子を得た。エポキシ変性ナイロン粒子を篩を用いて粒子径の小さい成分と大きい成分をそれぞれ取り除き、比較的粒子径分布の揃った粒子を得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、真球度85の微粒子形状であり、平均粒子径 18μmのポリアミド微粒子であった。
【0097】
(b)樹脂組成物の調製
(1)参考例1(b)(1)と同じ方法で熱硬化性樹脂組成物(1)を調製した。
【0098】
(2)熱可塑性樹脂粒子を参考例2(a)で作製した粒子を配合する以外は、参考例1(b)と同じ方法で熱硬化性樹脂組成物(4)を調製した。
【0099】
(c)プリプレグの作製
参考例1(b)(1)で作製した熱硬化性樹脂組成物(1)をナイフコーターで離型紙に塗布して、樹脂量30g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製した。次に、作製したこの2枚の樹脂フィルムを、一方向に配列されたシート状の炭素繊維(“トレカ(登録商標)”T1100GC−24K)の両面に積層し、ローラー温度110℃、ローラー圧力0.25MPaで樹脂を炭素繊維シートに含浸させ、一方向炭素繊維強化プリプレグを作製した。作製されたプリプレグの含浸率をウォーターピックアップ法により測定したところ、2.5質量%であった。さらに参考例2(b)(2)で作製した熱硬化性樹脂組成物をナイフコーターで離型紙に塗布して、樹脂量21g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製して、先ほど作製した一方向炭素繊維強化プリプレグの両面に積層し、ローラー温度100℃、参考例1より低圧のローラー圧力0.02MPaで樹脂を積層した。このようにして、繊維層の両面に、熱可塑性樹脂粒子を含む樹脂層が配置され、繊維質量が190g/m
2でマトリックス樹脂の樹脂含有量が35質量%の一方向炭素繊維強化プリプレグを作製した。
【0100】
得られたプリプレグを用い、層間摩擦測定、ガラス転移温度(Tgf,Tgr)測定、含浸率測定、表面観察および賦形試験を行った。また、得られたプリプレグを用い炭素繊維複合材料を作製した。結果を表1および表2に示す。
【0101】
(比較例1)
(a)樹脂組成物の調製
(1)13質量部のPES5003Pを、混練機中の60質量部の“アラルダイト(登録商標)”MY9655および40質量部の“エポン(登録商標)”825に加えて溶解させ、次いで硬化剤として、“アラドゥール(登録商標)”9664−1を45質量部加えて混練して熱硬化性樹脂組成物(5)を作製した。
【0102】
(2)16質量部のPES5003Pを、混練機中の60質量部の“アラルダイト(登録商標)”MY9655および40質量部の“エポン(登録商標)”825に加えて溶解させ、次いで硬化剤として“アラドゥール(登録商標)”9664−1を45質量部加えて混練して熱硬化性樹脂組成物(6)を作製した。
【0103】
(b)プリプレグの作製
比較例1(a)(1)で作製した熱硬化性樹脂組成物(5)をナイフコーターで離型紙に塗布して、樹脂量36g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製した。次に、作製したこの2枚の樹脂フィルムを、一方向に配列されたシート状の炭素繊維(“トレカ(登録商標)”T800S−12K)の両面に積層し、ローラー温度110℃、ローラー圧力0.20MPaで樹脂を炭素繊維シートに含浸させ、一方向炭素繊維強化プリプレグを作製した。さらに比較例1(a)(2)で作製した熱可塑性樹脂粒子を含まない熱硬化性樹脂組成物(6)をナイフコーターで離型紙に塗布して、樹脂量30g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製して、先ほど作製した一方向炭素繊維強化プリプレグの両面に積層し、ローラー温度110℃、ローラー圧力0.07MPaで樹脂を積層した。このようにして、繊維層の両面に、熱可塑性樹脂粒子を含まない樹脂層が配置され、繊維質量が270g/m
2でマトリックス樹脂の樹脂含有量が33質量%の一方向炭素繊維強化プリプレグを作製した。
【0104】
得られたプリプレグを用い、層間摩擦測定、ガラス転移温度(Tgf,Tgr)測定、含浸率測定、表面観察および賦形試験を行った。また、得られたプリプレグを用い炭素繊維複合材料を作製した。結果を表1および表2に示す。
【0105】
(比較例2)
(a)熱可塑性樹脂粒子の調製
参考例1(a)と同じ方法で調製した。
【0106】
(b)樹脂組成物の調製
(1)14.3質量部のPES5003Pを、混練機中の60質量部の“アラルダイト(登録商標)”MY9655および40質量部の“エポン(登録商標)”825に加えて溶解させ、次いで硬化剤として、“アラドゥール(登録商標)”9664−1を45質量部加えて混練して熱硬化性樹脂組成物(7)を作製した。
【0107】
(c)プリプレグの作製
比較例2(b)で作製した熱硬化性樹脂組成物(7)をナイフコーターで離型紙に塗布して、樹脂量66g/m
2の樹脂フィルムを2枚作製した。次に、作製したこの2枚の樹脂フィルムを、一方向に配列されたシート状の炭素繊維(“トレカ(登録商標)”T800S−12K)の両面に積層し、ローラー温度120℃、ローラー圧力0.3MPaで樹脂を炭素繊維シートに含浸させ、繊維質量が270g/m
2でマトリックス樹脂の樹脂含有量が33質量%の一方向炭素繊維強化プリプレグを作製した。
【0108】
得られたプリプレグを用い、層間摩擦測定、ガラス転移温度(Tgf,Tgr)測定、含浸率測定、表面観察および賦形試験を行った。また、得られたプリプレグを用い炭素繊維複合材料を作製した。結果を表1および表2に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】