(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967344
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】直流CVケーブルのジョイント部
(51)【国際特許分類】
H01R 13/533 20060101AFI20160728BHJP
H02G 15/103 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
H01R13/533 B
H02G15/103
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-145265(P2011-145265)
(22)【出願日】2011年6月30日
(65)【公開番号】特開2013-13271(P2013-13271A)
(43)【公開日】2013年1月17日
【審査請求日】2013年6月21日
【審判番号】不服2015-16547(P2015-16547/J1)
【審判請求日】2015年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】502308387
【氏名又は名称】株式会社ビスキャス
(74)【代理人】
【識別番号】100096035
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】酒井 康裕
(72)【発明者】
【氏名】新延 洋
【合議体】
【審判長】
和田 志郎
【審判官】
山澤 宏
【審判官】
稲葉 和生
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭50−84793(JP,U)
【文献】
特開2000−324644(JP,A)
【文献】
実開平5−23742(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G15/00-15/196
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流CVケーブルの導体接続部とその両側のケーブル絶縁体に跨って、内部電極及び補強絶縁体を有する筒状の補強絶縁ブロックを被せてなる直流CVケーブルのジョイント部において、前記ケーブル絶縁体のシュリンクバックによって前記ケーブル絶縁体の端面の先に発生した空気層に、直流課電時の等電位線が入り込むのを防止するために、前記空気層内に介在する層を設けることなく、前記ケーブル絶縁体の端面に半導電性塗料を塗布してなる高圧側遮蔽用半導電層を設けたことを特徴とする直流CVケーブルのジョイント部。
【請求項2】
補強絶縁ブロックは、ゴム製の内部電極、補強絶縁体及び外部半導電層を有する筒状のゴムブロックであり、高圧側遮蔽用半導電層は、内周縁がケーブル導体に、外周縁が前記ゴムブロックの内部電極に接するように設けられることを特徴とする請求項1記載の直流CVケーブルのジョイント部。
【請求項3】
補強絶縁ブロックは、内部電極及び補強絶縁体を有する筒状のエポキシユニットからなり、エポキシユニットとケーブル絶縁体の間にはストレスコーンが設けられ、高圧側遮蔽用半導電層は、ケーブル絶縁体の端面とストレスコーンの先端面に設けられることを特徴とする請求項1記載の直流CVケーブルのジョイント部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状の補強絶縁ブロックを用いた直流CVケーブルのジョイント部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3に従来のCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル)のジョイント部の一例を示す。このジョイント部は、CVケーブル1を接続するための補強絶縁ブロックとしてゴムブロック2を用いた、ワンピースジョイント部である。ゴムブロック2は、いずれもゴム製の内部電極2a、補強絶縁体2b及び外部半導電層2cを一体に形成したものである。
【0003】
CVケーブルのジョイント部の他の例としては、補強絶縁ブロックとして、金属製の内部電極及びエポキシ樹脂製の補強絶縁体を有するエポキシユニットを、ゴム製のストレスコーンと組み合わせて用いる、プレハブジョイント部等もある。
【0004】
図3に戻ると、CVケーブル1の端部は段剥ぎして、ケーブル導体1a、ケーブル絶縁体1b、ケーブル外部半導電層1cを露出させてある。ケーブル導体1aは導体接続管3により相手方ケーブルのケーブル導体と接続されている。導体接続部にはケーブル絶縁体1bとほぼ同外径となるように半導電テープ巻き層4が設けられる。
【0005】
ゴムブロック2は、CVケーブル1の導体接続部とその両側のケーブル絶縁体1b及びケーブル外部半導電層1cに跨るように被せられる。このゴムブロック2は、その内径がケーブル絶縁体1bの外径より小さく形成されており、拡径保持具で拡径した状態でケーブル接続位置に配置され、拡径保持具を除去することで縮径して、内部電極2aの内周面が半導電テープ巻き層4及びケーブル絶縁体1bの先端部に、補強絶縁体2bの内周面がケーブル絶縁体1bに、外部半導電層2cの内周面がケーブル外部半導電層1cに、それぞれ密着する。
【0006】
このようなCVケーブルのジョイント部では、接続後にケーブル絶縁体1bのシュリンクバックが発生し、ケーブル絶縁体1bの端面の先に空気層(空間)Sが発生する。このため、ゴムブロックの内部電極2aの長さは、ケーブル絶縁体1bがシュリンクバックする長さを考慮して設定される。特許文献1、2には、ケーブル絶縁体の端部に加工を施してシュリンクバックを抑制する発明が開示されているが、これらの発明ではジョイント部の構造が複雑になり、接続作業に手間と時間がかかるという難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−95124号公報
【特許文献2】米国特許第4698458号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図4(A)は
図3のCVケーブルジョイント部に交流課電した場合の等電位線の分布を示す。この場合は、等電位線がゴムブロック2の補強絶縁体2bからケーブル絶縁体1bにかけてなだらかに屈曲するので、特に問題は生じない。ところが、
図3のCVケーブルジョイント部に直流課電すると、ジョイント部内の等電位線の分布は
図4(B)のようになる。すなわち、等電位線が高電圧側へ片寄り、内部電極2aの端部を回り込んで、ケーブル絶縁体1bの切断端面の先にある空気層Sに入り込むようになる。このような状態になると、空気層S内で電界が集中して微小放電が発生しやすくなり、ジョイント部に温度上昇等の不具合が生じる懸念がある。補強絶縁ブロックとして、エポキシユニットを用いた場合にも同様の懸念がある。
【0009】
本発明の目的は、上記のような問題点に鑑み、特に直流CVケーブルのジョイント部において、ケーブル絶縁体の端面の先にある空気層に等電位線が入り込むのを抑制して、ジョイント部の絶縁性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明は、直流CVケーブルの導体接続部とその両側のケーブル絶縁体に跨って、内部電極及び補強絶縁体を有する筒状の補強絶縁ブロックを被せてなる直流CVケーブルのジョイント部において、
前記ケーブル絶縁体のシュリンクバックによって前記ケーブル絶縁体の端面の先に発生した空気層に、直流課電時の等電位線が入り込むのを防止するために、前記空気層内に介在する層を設けることなく、前記ケーブル絶縁体の端面に半導電性塗料を塗布してなる高圧側遮蔽用半導電層を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
なお、ここでいう「半導電性塗料」とは「導電性塗料」として販売されているものをも含むものとする。
【0012】
本発明において、補強絶縁ブロックが、ゴム製の内部電極及び補強絶縁体を有する筒状のゴムブロックである場合には、前記高圧側遮蔽用半導電層は、内周縁がケーブル導体に、外周縁が前記ゴムブロックの内部電極に接触するように設けることが好ましい。
【0013】
また本発明において、補強絶縁ブロックが、内部電極及び補強絶縁体を有する筒状のエポキシユニットからなり、エポキシユニットとケーブル絶縁体の間にストレスコーンが設けられている場合には、前記高圧側遮蔽用半導電層は、ケーブル絶縁体の端面だけでなく、ストレスコーンの先端面にも設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ケーブル絶縁体の端面に高圧側遮蔽用半導電層を設けたことにより、ケーブル絶縁体の端面の先に存在する空気層に等電位線が入り込むのを抑制できるので、空気層での微小放電の発生を抑えることができ、CVケーブルジョイント部の絶縁性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る直流CVケーブルのジョイント部の一実施例を示す要部の断面図。
【
図2】本発明に係る直流CVケーブルのジョイント部の他の実施例を示す要部の断面図。
【
図3】従来のCVケーブルのジョイント部一例を示す要部の断面図。
【
図4】
図3のジョイント部に、(A)は交流課電した場合、(B)は直流課電した場合の等電位線の分布を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0016】
図1は本発明の一実施例を示す。この直流CVケーブルのジョイント部が
図3に示した従来のジョイント部と異なる点は、ケーブル絶縁体1bの端面に高圧側遮蔽用半導電層5を設けたことである。高圧側遮蔽用半導電層5はケーブル絶縁体1bの端面に半導電性塗料を塗布することにより形成できる。半導電性塗料としては導電性ペーストを使用することができる。具体的には、藤倉化成株式会社製のドータイト(商品名)、日本黒鉛工業株式会社製のスーパーコロハイト(商品名)などを使用できる。高圧側遮蔽用半導電層5の内周縁はケーブル導体1bに、外周縁は補強絶縁ブロックの内部電極2bに接触するように設けることが好ましい。具体的には、半導電性塗料を、ケーブル絶縁体1bの端面だけでなく、ケーブル導体1aの周面とケーブル絶縁体1bの外周面にはみ出るように塗布するとよい。
【0017】
上記以外の構成は
図3に示した従来のジョイント部と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0018】
上記のCVケーブルジョイント部に直流課電した場合の等電位線の分布を
図1に併せて示す。この場合は、ケーブル絶縁体1bの端面に高圧側遮蔽用半導電層5が設けられているために、等電位線がケーブル絶縁体1bの端面の先に存在する空気層Sに入り込まなくなる。このため、空気層Sでの微小放電の発生を抑えることができ、ジョイント部の絶縁性能を高めることができる。
【0019】
図2は本発明の他の実施例を示す。この直流CVケーブルジョイント部は、補強絶縁ブロックとしてエポキシユニット6を用いた、プレハブジョイント部である。エポキシユニット6は、金属製の内部電極6aと、エポキシ樹脂製の補強絶縁体6bと、金属製の遮蔽電極6cを一体に形成したものである。エポキシユニット6を用いる場合は、ケーブル絶縁体1bとエポキシユニット6の間にゴム製のストレスコーン7が設置される。ストレスコーン7は絶縁部7aと導電部7bとから構成されている。
このようなプレハブジョイント部の場合は、ケーブル絶縁体1bの端面とストレスコーン7の絶縁部7aの先端面に高圧側遮蔽用半導電層5を設けることが好ましい。このような構成でも
図1の実施例と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0020】
1:CVケーブル
1a:ケーブル導体
1b:ケーブル絶縁体
1c:ケーブル外部半導電層
2:補強絶縁ブロック
2a:内部電極
2b:補強絶縁体
2c:外部半導電層
3:導体接続管
4:半導電テープ巻き層
5:高圧側遮蔽用半導電層
6:エポキシユニット
6a:内部電極
6b:補強絶縁体
6c:遮蔽電極
7:ストレスコーン
S:空気層