(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967374
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】ノイズキャンセル共振器
(51)【国際特許分類】
H02J 50/70 20160101AFI20160728BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20160728BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20160728BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
H02J50/70
H02J50/12
H01F38/14
H01F15/00 D
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-16778(P2013-16778)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-150615(P2014-150615A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】591261509
【氏名又は名称】株式会社エクォス・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100157118
【弁理士】
【氏名又は名称】南 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100094787
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100097777
【弁理士】
【氏名又は名称】韮澤 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100091971
【弁理士】
【氏名又は名称】米澤 明
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】山川 博幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健一郎
【審査官】
竹下 翔平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−135346(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/001540(WO,A1)
【文献】
特開2013−012702(JP,A)
【文献】
特表2009−501510(JP,A)
【文献】
特開2010−087024(JP,A)
【文献】
特開2010−098807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00−27/02
27/06−27/08
27/23
27/28−27/29
27/36
27/42
38/14
38/42
H02J 50/00−50/90
IEEE Xplore
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタンス成分Lnを有するノイズキャンセル共振器コイルと、キャパシタンス成分Cnを有するノイズキャンセル共振器キャパシタとからなり、
ノイズ源であり、メイン共振器コイルを有するメイン共振器が発生する電磁界の所定周波数より、
前記メイン共振器コイルと前記ノイズキャンセル共振器コイルの結合度に応じて決まるシフト周波数分高い共振周波数、
を有することを特徴とするノイズキャンセル共振器。
【請求項2】
前記所定周波数が、前記メイン共振器が発生する電磁界の基本波の周波数であることを特徴とする請求項1に記載のノイズキャンセル共振器。
【請求項3】
前記所定周波数が、前記メイン共振器が発生する電磁界の高調波の周波数であることを特徴とする請求項1に記載のノイズキャンセル共振器。
【請求項4】
前記高調波が奇数倍波であることを特徴とする請求項3に記載のノイズキャンセル共振器。
【請求項5】
前記高調波が偶数倍波であることを特徴とする請求項3に記載のノイズキャンセル共振器。
【請求項6】
前記メイン共振器コイルと前記ノイズキャンセル共振器コイルの間の相互インダクタンス成分がL
mであるとき、
前記シフト周波数が、
【数1】
であることを特徴とする請求項1乃至
請求項5のいずれか1項に記載のノイズキャンセル共振器。
【請求項7】
前記メイン共振器が電力伝送用のアンテナであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のノイズキャンセル共振器。
【請求項8】
Q値が50以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のノイズキャンセル共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴方式の磁気共鳴アンテナが用いられるワイヤレス電力伝送システムから放射されるノイズの低減に好適なノイズキャンセル共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源コードなどを用いることなく、ワイヤレスで電力(電気エネルギー)を伝送する技術の開発が盛んとなっている。ワイヤレスで電力を伝送する方式の中でも、特に注目されている技術として、磁気共鳴方式と呼ばれるものがある。この磁気共鳴方式は2007年にマサチューセッツ工科大学の研究グループが提案したものであり、これに関連する技術は、例えば、特許文献1(特表2009−501510号公報)に開示されている。
【0003】
磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムは、送電側アンテナの共振周波数と、受電側アンテナの共振周波数とを同一とすることで、送電側アンテナから受電側アンテナに対し、効率的にエネルギー伝達を行うものであり、電力伝送距離を数十cm〜数mとすることが可能であることが大きな特徴の一つである。
【0004】
上記のような磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムを、電気自動車などの車両の給電ステーションで用いるような場合には、受電側アンテナを車両の底部に搭載しておき、この受電側アンテナに対して、地上に埋設された送電側アンテナから給電を行う方法が考えられる。このような電力伝送形態においては、送電側アンテナと受電側アンテナとの間が完全には電磁気的に結合することは難しく、少なからず、アンテナから放射されるノイズが発生し、車体底部の金属などがそれにより温度上昇を起こすことなどが考えられる。
【0005】
そこで、ワイヤレス電力伝送システムにおいては、アンテナから発生するノイズを低減させるための方策を検討する必要がある。
【0006】
なお、高周波ノイズを低減する技術としては、例えば、特許文献2(特開2010−87024号公報)には、ノイズの発生源の近傍に、ループ状の閉経路を有する導体と、閉経路と電気的に接続されるコンデンサとからなる共振回路を設けることが開示されている。
【特許文献1】特表2009−501510号公報
【特許文献2】特開2010−87024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2記載の従来技術においては、ノイズキャンセル用のLC共振器の共振周波数としては、除去したいノイズ源の周波数と、合わせることで、ノイズ低減効果を増大するようにしている。
【0008】
しかしながら、特に磁気共鳴方式の磁気共鳴アンテナが用いられるワイヤレス電力伝送システムにおけるノイズ対策として、ノイズキャンセル共振器の共振周波数を、ノイズ源の周波数と合わせたとしても、必ずしも、ノイズ低減効果が大きいものではない、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するために、本発明に係るノイズキャンセル共振器は、インダクタンス成分L
nを有するノイズキャンセル共振器コイルと、キャパシタンス成分C
nを有するノイズキャンセル共振器キャパシタとからなり、ノイズ源であり、メイン共振器コイルを有するメイン共振器が発生する電磁界の所定周波数より、前記メイン共振器コイルと前記ノイズキャンセル共振器コイルの結合度に応じて決まるシフト周波数分高い共振周波数、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るノイズキャンセル共振器は、前記所定周波数が、前記メイン共振器が発生する電磁界の基本波の周波数であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るノイズキャンセル共振器は、前記所定周波数が、前記メイン共振器が発生する電磁界の高調波の周波数であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るノイズキャンセル共振器は、前記高調波が奇数倍波であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るノイズキャンセル共振器は、前記高調波が偶数倍波であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るノイズキャンセル共振器は、前記メイン共振器コイルと前記ノイズキャンセル共振器コイルの間の相互インダクタンス成分がL
mであるとき、
前記シフト周波数が、
【0015】
【数1】
であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るノイズキャンセル共振器は、前記メイン共振器が電力伝送用のアンテナであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るノイズキャンセル共振器は、Q値が50以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るノイズキャンセル共振器は、ノイズ源であり、メイン共振器コイルを有するメイン共振器が発生する電磁界の所定周波数より、前記メイン共振器コイルと前記ノイズキャンセル共振器コイルの結合度に応じて決まるシフト周波数分高い共振周波数、を有することを特徴としており、このような本発明に係るノイズキャンセル共振器によれば、特に磁気共鳴方式の磁気共鳴アンテナが用いられるワイヤレス電力伝送システムにおけるノイズ対策において、ノイズ低減効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るノイズキャンセル共振器とノイズ源であるメイン共振器との間の結合を説明する図である。
【
図2】伝送効率の周波数依存性と、ノイズ放射率の周波数依存性の図を重ね合わせて示す図である。
【
図3】第1極値周波数(磁気壁条件結合時周波数)における電流と電界の様子を模式的に示す図である。
【
図4】第2極値周波数(電気壁条件結合時周波数)における電流と電界の様子を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るノイズキャンセル共振器によってノイズ低減効率が向上することを説明する概念図である。
【
図6】メイン共振器とサブ共振器を用いた電力伝送システムを車両に搭載した例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本発明に係るノイズキャンセル共振器300は、特に磁気共鳴方式の磁気共鳴アンテナが用いられるワイヤレス電力伝送システムにおけるノイズ対策に好適であるが、上記電力伝送システムのようなノイズ源に限らず、種々のノイズ源に対して、ノイズ低減効率を向上させることが可能である。
【0021】
図1は本発明の実施形態に係るノイズキャンセル共振器300とノイズ源であるメイン共振器100との間の結合を説明する図である。
【0022】
図1において、メイン共振器100は、電力伝送システムの送電用のアンテナとして用いられており、メイン共振器100は所定の基本周波数の電磁界を発生し、不図示の受電用のサブ共振器に対して磁気共鳴方式で電力の伝送を行っていることが想定されている。
【0023】
このメイン共振器100は、インダクタンス成分L
1を有するメイン共振器コイル11
0と、キャパシタンス成分C
1を有するメイン共振器キャパシタ120の直列接続から構
成されている。
【0024】
一方、ノイズキャンセル共振器300は、インダクタンス成分L
nを有するノイズキャ
ンセル共振器コイル310と、キャパシタンス成分C
nを有するノイズキャンセル共振器
キャパシタ320の直列接続から構成されており、サブ共振器に対する電力伝送に寄与せず、メイン共振器100から漏洩する電磁界(ノイズ)を除去することが想定されるものである。
【0025】
L
mはメイン共振器コイル110とノイズキャンセル共振器コイル310と間の相互イ
ンダクタンスである。
【0026】
ノイズキャンセル共振器300は、実際は端子部(2)において閉じた構造を有するものであるが、
図1においては、メイン共振器100からノイズキャンセル共振器300への電力伝送回路として認識することで、ノイズキャンセル共振器300の特性について説明を行うものである。
【0027】
図2は、上記のような
図1の電力伝送回路における伝送効率の周波数依存性と、ノイズ放射率と周波数依存性の図を重ね合わせて示す図である。
図2において、横軸には周波数、また、縦軸のS21は端子(1)から信号を入力したときに、端子(2)に通過する電力を示している。
【0028】
図2に示すように、
図1の電力伝送回路における電力伝送効率の周波数特性では、2つの極値を与える周波数が2つある。周波数が低い方の極値周波数を第1極値周波数、周波数が高い方の極値周波数を第2極値周波数として定義する。また、図中、f
oはノイズキ
ャンセル共振器300の共振周波数を示している。
【0029】
低い方の極値周波数である第1極値周波数でメイン共振器100を駆動し、電力伝送を行っている場合には、メイン共振器100のメイン共振器コイル110と、ノイズキャンセル共振器300のノイズキャンセル共振器コイル310とが、磁気壁条件で結合している。
【0030】
一方、高い方の極値周波数である第2極値周波数でメイン共振器100を駆動し、電力伝送を行っている場合には、メイン共振器100のメイン共振器コイル110と、ノイズキャンセル共振器300のノイズキャンセル共振器コイル310とが、電気壁条件で結合している。
【0031】
以下、メイン共振器100のメイン共振器コイル110と、ノイズキャンセル共振器300のノイズキャンセル共振器コイル310との間の対称面に生じる電気壁、及び磁気壁の概念について説明する。
【0032】
図3は第1極値周波数(磁気壁条件結合時周波数)における電流と電界の様子を模式的に示す図である。第1極値周波数においては、メイン共振器コイル110に流れる電流と、ノイズキャンセル共振器コイル310に流れる電流とで位相が略等しくなり、磁界ベクトルが揃う位置がメイン共振器コイル110やノイズキャンセル共振器コイル310の中央部付近となる。この状態を、メイン共振器コイル110とノイズキャンセル共振器コイル310との間の対称面に対して磁界の向きが垂直となる磁気壁が生じているものとして考える。
【0033】
図3に示すように、メイン共振器100とノイズキャンセル共振器300とが磁気壁条件で結合している時は、メイン共振器コイル110からの磁界がノイズキャンセル共振器コイル310に進入するような状態となる。
【0034】
また、
図4は第2極値周波数(電気壁条件結合時周波数)における電流と電界の様子を模式的に示す図である。第2極値周波数においては、メイン共振器コイル110に流れる電流と、ノイズキャンセル共振器コイル310に流れる電流とで位相がほぼ逆となり、磁界ベクトルが揃う位置がメイン共振器コイル110やノイズキャンセル共振器コイル310の対称面付近となる。この状態を、メイン共振器コイル110とノイズキャンセル共振器コイル310との間の対称面に対して磁界の向きが水平となる電気壁が生じているものとして考える。
【0035】
図4に示すように、メイン共振器100とノイズキャンセル共振器300とが電気壁条件で結合している時は、メイン共振器コイル110からの磁界と、ノイズキャンセル共振器300からの磁界が、対称面で排斥し合うような状態となる。
【0036】
なお、以上のような電気壁や磁気壁などの概念に関しては、居村岳広、堀洋一「電磁界共振結合による伝送技術」IEEJ Journal,Vol.129,No.7,2009、或いは、居村岳広、岡部浩之、内田利之、堀洋一「等価回路から見た非接触電力伝送の磁界結合と電界結合に関する研究」IEEJ Trans.IA,Vol.130,No.1,2010などに記載されているものを本明細書においては準用している。
【0037】
ここで、
図2の一点鎖線で示される、メイン共振器100からのノイズ放射の周波数特性は、第1極値周波数(磁気壁条件結合時周波数)で極小値をとり、第2極値周波数(電気壁条件結合時周波数)で極大値をとることがわかる。
【0038】
上記のような特性があることから、本発明においては、メイン共振器100が発する電磁界(ノイズ)の周波数が、ちょうど、第1極値周波数f
m(磁気壁条件結合時周波数)
となるような関係で、ノイズキャンセル共振器300の共振周波数f
cを設定する。
【0039】
より具体的には、ノイズキャンセル共振器300の共振周波数f
cは、メイン共振器1
00が発生する電磁界の所定周波数(本実施形態の場合f
m)より、メイン共振器コイル
110とノイズキャンセル共振器コイル310の結合度(K)に応じて決まるシフト周波数f
s分高い共振周波数に設定する。
【0040】
シフト周波数f
sは、メイン共振器コイル110とノイズキャンセル共振器コイル31
0の結合度(K)に応じて決定されるものであり、すなわち、シフト周波数f
sは、メイ
ン共振器コイル110とノイズキャンセル共振器コイル310との間の相互インダクタンスL
mによっても決まるものであり、上記のシフト周波数f
sは、下式(1)によって求めることができる。
【0041】
【数1】
以上より、ノイズキャンセル共振器300の共振周波数f
cは、下式(2)により求め
るようにする。
【0042】
【数2】
ノイズキャンセル共振器300の共振周波数f
cを上記のように設定することで、ノイ
ズ源であるメイン共振器100のメイン共振器コイル110とノイズキャンセル共振器コイル310とは磁気壁条件で結合することとなり、これにより、
図2のノイズ放射の周波数特性でも示されるように、ノイズキャンセル共振器300が効率的に、メイン共振器100から放射されるノイズを除去することができるようになる。
【0043】
以上のような本発明に係るノイズキャンセル共振器300によれば、特に磁気共鳴方式の磁気共鳴アンテナが用いられるワイヤレス電力伝送システムにおけるノイズ対策において、ノイズ低減効果が大きい。
【0044】
なお、本発明に係るノイズキャンセル共振器300は、ノイズに対してパッシブな構成であるために、ノイズキャンセル共振器300の特性がノイズの逆位相波のレベルと等倍程度であることが望ましい。また、ノイズキャンセル共振器300でのロスを極力低減することが望ましく、実験的にノイズキャンセル共振器300のQ値は50以上であるとノイズ低減効果が大きいことを確認している。
【0045】
ところで、ノイズ源であるメイン共振器100から発生する電磁界の周波数は、基本波に加えて、この基本波の高調波のノイズ成分が含まれるので、このノイズ成分についても、ノイズキャンセル共振器300によって除去を行いたい、というニーズが存在する。
【0046】
上記のような高調波として、メイン共振器100を駆動する周波数の奇数倍の高調波が放射されすい系では、メイン共振器100から下式(3)により求められる高調波が発生するので、ノイズキャンセル共振器300の共振周波数は、下式(4)により定められるものとするとよい。
【0048】
【数4】
また、高調波として、メイン共振器100を駆動する周波数の偶数倍の高調波が放射されすい系では、メイン共振器100から下式(5)により求められる高調波が発生するので、ノイズキャンセル共振器300の共振周波数は、下式(6)により定められるものとするとよい。
【0050】
【数6】
これまで説明したように、本発明に係るノイズキャンセル共振器300のノイズキャンセル共振器コイル310においては、メイン共振器100器のメイン共振器コイル110と磁気壁条件で結合するようにすることで、ノイズ低減効果を狙うようにしているが、この原理を模式的に説明する。
【0051】
図5は本発明の実施形態に係るノイズキャンセル共振器によってノイズ低減効率が向上することを説明する概念図である。
【0052】
図5(A)は、メイン共振器100器のメイン共振器コイル110とノイズキャンセル共振器300のノイズキャンセル共振器コイル310とが磁気壁条件で結合している場合を示しており、この場合、メイン共振器コイル110からの磁界がノイズキャンセル共振器コイル310に進入するような状態となるが、これに基づけば、ポイントXに発生している磁界もノイズキャンセル共振器コイル310に進入することとなる。したがって、点線で囲まれているように、メイン共振器コイル110から磁界と、ノイズキャンセル共振器コイル310に進入する磁界と、が相殺するようになり、ノイズのキャンセル効果が発生する。
【0053】
一方、
図5(B)は、メイン共振器100器のメイン共振器コイル110とノイズキャンセル共振器300のノイズキャンセル共振器コイル310とが電気壁条件で結合している場合を示しており、この場合、メイン共振器コイル110からの磁界と、ノイズキャンセル共振器300からの磁界が、その間で排斥し合うような状態となるが、これに基づけ
ば、ポイントXに進入する磁界が発生することとなる。したがって、点線で囲まれているように、メイン共振器コイル110からの磁界と、ノイズキャンセル共振器コイル310からの磁界とは、お互いに強め合うように働き、ノイズを増幅してしまうこととなる。
【0054】
次に、以上のような本発明に係るノイズキャンセル共振器300の適用例について説明する。
図6はメイン共振器100とサブ共振器200を用いた電力伝送システムを車両に搭載した例を模式的に示す図である。
【0055】
以下の説明においては、メイン共振器100及びサブ共振器200が、それぞれ磁気共鳴方式の送電アンテナ及び受電アンテナであり、送電アンテナであるメイン共振器100から、受電アンテナであるサブ共振器200に対して、ワイヤレスで電力伝送を行う電力伝送システムである場合を例とする。
【0056】
このような電力伝送システムは、例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両搭載電池への充電のためのシステムに用いるのに好適である。このために、車両の底面部においては、受電を行うことを可能にする受電アンテナが配されてなる。
【0057】
一方、上記のような車両に対して電力を非接触で伝送するため、当該車両を停車させることが可能な停車スペースに設けられており、車両充電用のスペースである当該停車スペースには、電力伝送システムの送電アンテナなどが地中部に埋設されるような構成となっている。車両のユーザーは本実施形態に係る電力伝送システムが設けられている停車スペースに車両を停車させて、送電アンテナから車両に搭載されている受電アンテナに対して、電磁場を介し電気エネルギーを伝送する。
【0058】
上記のような電力伝送システムにおいては、電力伝送中にアンテナから漏洩した電磁界が、車両の底面と地面との間から漏洩するような可能性があり、環境や人体への影響上、好ましくなく、問題であったが、本発明に係るノイズキャンセル共振器300を、送電アンテナであるメイン共振器100の近傍に配置することにより、上記のような漏洩を低減させることが可能となり、電磁界の漏洩による環境や人体への影響を抑制することが可能となる。
【0059】
以上、本発明に係るノイズキャンセル共振器は、ノイズ源であり、メイン共振器コイルを有するメイン共振器が発生する電磁界の所定周波数より、前記メイン共振器コイルと前記ノイズキャンセル共振器コイルの結合度に応じて決まるシフト周波数分高い共振周波数、を有することを特徴としており、このような本発明に係るノイズキャンセル共振器によれば、特に磁気共鳴方式の磁気共鳴アンテナが用いられるワイヤレス電力伝送システムにおけるノイズ対策において、ノイズ低減効果が大きい。
【符号の説明】
【0060】
100・・・メイン共振器
110・・・メイン共振器コイル
120・・・メイン共振器キャパシタ
200・・・サブ共振器
300・・・ノイズキャンセル共振器
310・・・ノイズキャンセル共振器コイル
320・・・ノイズキャンセル共振器キャパシタ