特許第5967425号(P5967425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967425
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
   B62D5/04
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-144494(P2012-144494)
(22)【出願日】2012年6月27日
(65)【公開番号】特開2014-8796(P2014-8796A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(72)【発明者】
【氏名】中井 基生
(72)【発明者】
【氏名】流郷 謙一
【審査官】 柳楽 隆昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−190476(JP,A)
【文献】 特開2011−239574(JP,A)
【文献】 特開2008−179248(JP,A)
【文献】 特開2002−120739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータハウジングおよび回転軸を含む電動モータと、
前記回転軸と同軸的に連結された駆動ギヤ、前記駆動ギヤに噛み合う被動ギヤおよび両ギヤを収容し前記モータハウジングと突き合わされたギヤハウジングを含む減速機と、
前記モータハウジングと前記ギヤハウジングとで構成された組合せハウジング内に、前記モータハウジングの端壁と前記モータハウジングの前記端壁に対して前記回転軸の軸方向に離隔して対向する前記ギヤハウジングの対向部分とによって区画された収容室と、
前記収容室に収容された制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットは、前記回転軸の軸線に対して平行な方向に延びる板状をなし、少なくともパワー素子を搭載したパワーモジュールと、前記パワーモジュールに電気的に接続され、少なくとも制御素子を搭載し、前記回転軸の軸線に対して直交状に配置された制御基板と、を含み、
前記ギヤハウジングの前記対向部分は、前記パワーモジュールが挿入された挿入溝を有し、
前記パワーモジュールは、前記挿入溝の対応する内壁面にそれぞれ熱伝達可能に接触した第1面および第2面を含む電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1において、前記制御基板と、前記制御基板の少なくとも一部を樹脂でモールドした樹脂モールド部とを含み、前記回転軸が挿通された挿通孔が形成された制御モジュールを備え、
前記パワーモジュールの端部が前記樹脂モールド部によって支持された状態で、前記パワーモジュールが、前記樹脂モールド部から直交状に突出している電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項2において、前記収容室を区画する前記モータハウジングの端壁と、前記制御モジュールとの間に配置された電源モジュールを備え、
前記パワーモジュールは、前記樹脂モールド部を貫通して前記電源モジュール側へ突出した複数の端子を備え、
前記複数の端子は、前記電源モジュールの対応する端子に接続された端子を含む電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
請求項2または3において、前記樹脂モールド部にモールドされ、前記制御基板と前記パワーモジュールとを電気的に接続した可撓性のある平形の接続部材を備える電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
請求項2から4の何れか1項において、前記樹脂モールド部の外周と前記組合せハウジングの内周との間を封止する環状の弾性部材を備える電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
請求項2から5の何れか1項において、前記制御基板は、前記樹脂モールド部から露出した実装面を含み、前記実装面に、前記制御素子としての電解コンデンサが実装されている電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動パワーステアリング装置は、電動モータの発生するアシスト力をギヤハウジング内の減速機を介して転舵機構に伝達している。
この種の電動パワーステアリング装置では、電動モータに比較的大きな電流が流れる関係で、電力損失低減やノイズ低減を目的として、電動モータを駆動する制御ユニットを電動モータと減速機との間に配置して、これらと制御ユニットを一体化することが提案されている。
【0003】
通例、制御ユニットには、指令値を演算する処理装置を実装した制御基板と、電動モータ用のパワー素子(スイッチング素子であり、自己発熱する)を実装したパワー基板とを備えている。制御基板には、パワー基板のパワー素子を制御するICや電解コンデンサなどの発熱する電子部品が設けられている。
特許文献1では、モータハウジングとギヤハウジングとの締結部付近において、モータハウジングに設けられた台座に、パワー基板を配置し、締結部を介してギヤハウジング側へ放熱する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−190478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、締結部を介して放熱するため放熱距離が長くなり、放熱性が悪くなるおそれがある。また、パワー基板と制御基板とを平行に配置しているので、制御ユニットを収容する空間が、電動モータの回転軸の軸方向に長くなり、電動パワーステアリング装置が大型化する。
本発明の目的は、放熱性が良く小型化を達成することができる電動パワーステアリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1の発明は、モータハウジング(24)および回転軸(27)を含む電動モータ(18)と、前記回転軸と同軸的に連結された駆動ギヤ(20)、前記駆動ギヤに噛み合う被動ギヤ(21)および両ギヤを収容し前記モータハウジングと突き合わされたギヤハウジング(22)を含む減速機(19)と、前記モータハウジングと前記ギヤハウジングとで構成された組合せハウジング(H)内に、前記モータハウジングの端壁(30)と前記モータハウジングの前記端壁に対して前記回転軸の軸方向(X1)に離隔して対向する前記ギヤハウジングの対向部分とによって区画された収容室(35)と、前記収容室に収容された制御ユニット(12)と、を備え、前記制御ユニットは、前記回転軸の軸線(C1)に対して平行な方向に延びる板状をなし、少なくともパワー素子(47)を搭載したパワーモジュール(44)と、前記パワーモジュールに電気的に接続され、少なくとも制御素子(70)を搭載し、前記回転軸の軸線に対して直交状に配置された制御基板(50)と、を含み、前記ギヤハウジングの前記対向部分は、前記パワーモジュールが挿入された挿入溝(48)を有し、前記パワーモジュールは、前記挿入溝の対応する内壁面(48a,48b)にそれぞれ熱伝達可能に接触した第1面(44a)および第2面(44b)を含む電動パワーステアリング装置(1)を提供する。
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
また、請求項2のように、前記制御基板と、前記制御基板を樹脂でモールドした樹脂モールド部(51)とを含み、前記回転軸が挿通された挿通孔(52)が形成された制御モジュール(45)を備え、前記パワーモジュールの端部(441)が前記樹脂モールド部によって支持された状態で、前記パワーモジュールが、前記樹脂モールド部から直交状に突出していてもよい。
【0008】
また、請求項3のように、前記収容室を区画する前記モータハウジングの端壁(30)と、前記制御モジュールとの間に配置された電源モジュール(46)を備え、前記パワーモジュールは、前記樹脂モールド部を貫通して前記電源モジュール側へ突出した複数の端子(54,55)を備え、前記複数の端子は、前記電源モジュールの対応する端子に接続された端子を含んでいてもよい。
【0009】
また、請求項4のように、前記樹脂モールド部にモールドされ、前記制御基板と前記パワーモジュールとを電気的に接続した可撓性のある平形の接続部材(53)を備えていてもよい。
また、請求項5のように、前記樹脂モールド部の外周(51a)と前記組合せハウジングの内周(31a)との間を封止する環状の弾性部材(56)を備えていてもよい。
【0010】
また、請求項6のように、前記制御基板は、前記樹脂モールド部から露出した実装面を含み、前記実装面に、前記制御素子としての電解コンデンサが実装されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、減速機は電動モータと比較した場合、殆ど発熱しない。このような減速機のギヤハウジングに、板状のパワーモジュールの両面が直接接触して放熱するので、放熱効果を格段に高くすることができる。したがって、パワーモジュールの信頼性を向上することができる。
また、板状のパワーモジュールが、制御基板に対して直交状に配置されるとともに、回転軸の軸線に平行な方向に延びて、ギヤハウジングの挿入溝内に挿入されている。したがって、回転軸を軸方向に短くでき、回転軸の振動の発生を抑制することができる。また、回転軸の軸方向に関して、収容室を小型化することができ、ひいては電動パワーステアリング装置の小型化、軽量化を達成することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、制御基板と樹脂モールド部とで構成された制御モジールの、前記樹脂モールド部から直交状にパワーモジュールが突出しているので、パワーモジュールをギヤハウジングの挿入溝に挿入するレイアウトを容易に実現することができる。また、パワーモジュールと制御モジュールとを単一のユニットとして取り扱うことができ、組立性が良い。
【0013】
請求項3の発明によれば、パワーモジュールから延びる端子が、制御モジュールの樹脂モールド部を貫通して電源モジュール側へ突出して、電源モジュールの対応する端子に接続される。したがって、パワーモジュールを電源モジュールに、端子間接続で容易に接続することができる。
請求項4の発明によれば、直交状に配置された制御基板とパワーモジュールとを可撓性のある平形の接続部材を介して電気的に接続した状態で樹脂モールドするので、接続部の接続の信頼性を高くすることができる。
【0014】
請求項5の発明によれば、樹脂モールド部の外周と組合せハウジングの内周との間が環状の弾性部材で封止されるので、ギヤハウジング側からのグリース等の侵入を確実に防止することができる。
請求項6の発明によれば、制御基板が、樹脂モールド部から露出した実装面を備え、その露出した実装面に、制御素子としての電解コンデンサを実装しているので、放熱性が良い。したがって、電解コンデンサの温度上昇を抑制して、電解コンデンサの耐久時間を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態の電動パワーステアリング装置の模式図であり、電動パワーステアリング装置の概略構成を示している。
図2】電動パワーステアリング装置の要部の断面図である。
図3】電動パワーステアリング装置の要部の拡大断面図である。
図4】パワーモジュールおよび制御モジュールの模式的分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下には、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2と、操舵部材2の回転に連動して転舵輪3を転舵する転舵機構4と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構5とを備えている。ステアリングホイール2と転舵機構4とは、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して機械的に連結されている。
【0017】
本実施の形態では、操舵補助機構5がステアリングシャフト6にアシスト力(操舵補助力)を与える例に則して説明するが、本発明を、操舵補助機構5が後述するピニオン軸にアシスト力を与える構造や、操舵補助機構5が後述するラック軸にアシスト力を与える構造に適用することが可能である。
ステアリングシャフト6は、直線状に延びている。また、ステアリングシャフト6は、ステアリングホイール2に連結された入力軸8と、中間軸7に連結された出力軸9とを含む。入力軸8と出力軸9とは、トーションバー10を介して同一軸線上で相対回転可能に連結されている。すなわち、ステアリングホイール2に一定値以上の操舵トルクが入力されると、入力軸8および出力軸9は、互いに相対回転しつつ同一方向に回転するようになっている。
【0018】
ステアリングシャフト6の周囲に配置されたトルクセンサ11は、入力軸8および出力軸9の相対回転変位量に基づいて、ステアリングホイール2に入力された操舵トルクを検出する。トルクセンサ11のトルク検出結果は、制御装置としてのECU12(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)に入力される。また、車速センサ23からの車速検出結果がECU12に入力される。中間軸7は、ステアリングシャフト6と転舵機構4とを連結している。
【0019】
転舵機構4は、ピニオン軸13と、転舵軸としてのラック軸14とを含むラックアンドピニオン機構からなる。ラック軸14の各端部には、タイロッド15およびナックルアーム(図示せず)を介して転舵輪3が連結されている。
ピニオン軸13は、中間軸7に連結されている。ピニオン軸13は、ステアリングホイール2の操舵に連動して回転するようになっている。ピニオン軸13の先端(図1では下端)には、ピニオン16が連結されている。
【0020】
ラック軸14は、自動車の左右方向に沿って直線状に延びている。ラック軸14の軸方向の途中部には、上記ピニオン16に噛み合うラック17が形成されている。このピニオン16およびラック17によって、ピニオン軸13の回転がラック軸14の軸方向移動に変換される。ラック軸14を軸方向に移動させることで、転舵輪3を転舵することができる。
【0021】
ステアリングホイール2が操舵(回転)されると、この回転が、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して、ピニオン軸13に伝達される。そして、ピニオン軸13の回転は、ピニオン16およびラック17によって、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。
操舵補助機構5は、操舵補助用の電動モータ18と、電動モータ18の出力トルクを転舵機構4に伝達するための減速機19とを含む。減速機19は、駆動ギヤとしてのウォーム軸20と、このウォーム軸20と噛み合う被動ギヤとしてのウォームホイール21と、ウォーム軸20およびウォームホイール21を収容したギヤハウジング22とを含む。
【0022】
ウォーム軸20は、図示しない継手を介して電動モータ18の回転軸(図示せず)に連結されている。ウォーム軸20は、電動モータ18によって回転駆動される。また、ウォームホイール21は、ステアリングシャフト6とは同行回転可能に連結されている。ウォームホイール21は、ウォーム軸20によって回転駆動される。
電動モータ18がウォーム軸20を回転駆動すると、ウォーム軸20によってウォームホイール21が回転駆動され、ウォームホイール21およびステアリングシャフト6が同行回転する。そして、ステアリングシャフト6の回転は、中間軸7を介してピニオン軸13に伝達される。ピニオン軸13の回転は、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。
【0023】
電動モータ18は、制御ユニットとしてのECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)12によって制御される。ECU12は、トルクセンサ11からのトルク検出結果、車速センサ23からの車速検出結果等に基づいて電動モータ18を制御する。具体的には、ECU12では、トルクと目標アシスト量との関係を車速毎に記憶したマップを用いて目標アシスト量を決定し、電動モータ18の発生するアシスト力を目標アシスト量に近づけるように制御する。
【0024】
図2は、操舵補助機構5の概略斜視図である。図2を参照して、電動モータ18は、モータハウジング24と、モータハウジング24によって、一対の軸受25,26を介して回転可能に支持された回転軸27とを備えている。
モータハウジング24は、有底筒状のモータハウジング本体28と、モータハウジング本体28の開放端部を閉塞する端部材29とを備えている。端部材29は、モータハウジング本体28に嵌合された端壁30と、端壁30からギヤハウジング22側へ突出する筒状部31とを備えている。
【0025】
一方、減速機19のギヤハウジング22は、ウォーム軸20が収容された筒状の駆動ギヤ収容ハウジング32と、ウォームホイール21が収容された筒状の被動ギヤ収容ハウジング33と、駆動ギヤ収容ハウジング32の端面32aから突出する筒状部34とを備えている。
モータハウジング24の筒状部31とギヤハウジング22の筒状部34とが突き合わされている。互いに突き合わされた筒状部31,34の端部には、フランジが形成されており、両フランジを挿通する固定ねじ(図示せず)を介して、両筒状部31,34が、すなわち、ギヤハウジング22とモータハウジング24とが、互いに締結されている。
【0026】
モータハウジング24の筒状部31と、ギヤハウジング22の筒状部34とによって、駆動ギヤ収容ハウジング32の端面32aと、モータハウジング24の端部材29の端壁30との間に、制御装置としてのECU12を収容する収容室35が区画されている。端面32aおよび端壁30は、収容室35の内壁面を構成し、電動モータ18の回転軸27の軸方向X1に対向している。互いに組み合わされたギヤハウジング22とモータハウジング24とが、収容室35を区画する組合せハウジングHを構成している。
【0027】
電動モータ18の回転軸27およびウォーム軸20は、同軸上に並べて配置されており、両者は、継手36を介して同軸的に動力伝達可能に連結されている。ウォーム軸20の一対の端部は、それぞれ、一対の軸受37,38を介して、駆動ギヤ収容ハウジング32に回転可能に支持されている。
電動モータ18は、三相ブラシレスモータとして構成されており、回転軸27の外周に一体回転可能に連結されたロータ39と、モータハウジング本体28の内周に固定されたステータ40とを含む。ステータ40は、モータハウジング本体28の内周に固定されたステータコア41と、複数のコイル42とを含む。ステータコア41は、環状のヨークと、このヨークの内周から径方向内方へ突出するティースとを含む。各コイル42は、対応するティースに巻回されている。
【0028】
また、モータハウジング24内には、環状またはC形形状をなすバスバー43が収容されている。各ティースに巻回されたコイル42は、バスバー43と接続されている。バスバー43は、各コイル42に電力を配電するための配電部材として機能する。
収容室35に収容された制御ユニットとしてのECU12は、パワーモジュール44と、制御モジュール45と、電源モジュール46とを備えている。
【0029】
拡大断面図である図3に示すように、パワーモジュール44は、回転軸27の軸線C1に対して平行な方向に延びる板状をなしている。パワーモジュール44は、少なくともパワー素子47を搭載している。パワー素子47は、FET(電解効果トランジスタ)等のスイッチング素子である。
ギヤハウジング22の駆動ギヤ収容ハウジング32には、回転軸27の軸線C1(すなわちウォーム軸20の軸線)と平行な方向に延びる挿入溝48が形成されている。板状をなすパワーモジュール44が、挿入溝48に挿入嵌合されている。挿入溝48は、相対向する第1内壁面48aおよび第2内壁面48bを有している。
【0030】
一方、パワーモジュール44は、第1面44aおよび第2面44bを有している。パワーモジュール44の第1面44aが、挿入溝48の第1内壁面48aに、熱伝達可能に面接触している。また、パワーモジュール44の第2面44bが、挿入溝48の第2内壁面48bに、熱伝達可能に面接触している。
パワーモジュール44の第1面44aには、パワー素子47が搭載され、パワーモジュール44の第2面44bには、金属製の放熱板49が設けられている。第1面44aの表面および第2面44bの表面は、絶縁性の保護膜で被覆されている。保護膜としては、例えばエポキシ、ポリイミド、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の樹脂で構成される100μm以下の厚みの被膜であってもよいし、また、AlO等の酸化物やAlN、SiN等の窒化物等で構成される100μm以下の厚みの被膜であってもよい。
【0031】
第1面44aがパワー素子47のための放熱面となっている。また、パワー素子47のソースないしドレインが放熱板49に接続されていることから、第2面44bもパワー素子のための放熱面となっている。
図3および模式的分解斜視図である図4に示すように、制御モジュール45は、回転軸27の軸線C1に対して直交状に配置された制御基板50と、制御基板50の少なくとも一部を樹脂でモールドした樹脂モールド部51とを備えている。制御モジュール45には、回転軸27が挿通された挿通孔52が形成されている。挿通孔52は、制御基板50および樹脂モールド部51を挿通している。
【0032】
制御基板50は、樹脂モールド部51でモールドされた実装面50aと、樹脂モールド部51から露出した実装面50bとを備えている。モールドされた実装面50aには、パワー素子47を制御する制御素子としてのマイコン(図示せず)が実装されている。露出した実装面50bには、パワー素子47を制御する制御素子としての電解コンデンサ70が実装されている。
【0033】
パワーモジュール44の端部441が、制御モジュール45の樹脂モールド部51によって支持された状態で、パワーモジュール44が、樹脂モールド部51から直交状に突出している。
パワーモジュール44の端部441と制御基板50とは、樹脂モールド部51にモールドされた、可撓性のある平形の接続部材53によって、電気的に接続されている。平形の接続部材は、例えば、FPC(フレキシブル・プリンテッド・サーキット)やFFC(フレキシブル・フラット・ケーブル)である。
【0034】
パワーモジュール44の端部441から、樹脂モールド部51を貫通して、電動モジュール46側へ突出した複数の端子として、複数のモータ出力端子54と、複数の電源端子55(図4参照)とが設けられている。モータ出力端子54および電源端子55は、パワーモジュール44内のパワー回路に接続されている。モータ出力端子54および電源端子55の各端部は、電源モジュール46に保持された対応するコネクタの対応する端子に接続されている。
【0035】
図3に示すように、パワーモジュール44の樹脂モールド部51の外周51aと、組合せハウジングHの内周(本実施形態では、ギヤハウジング22の筒状部34の内周34aに相当)との間には、両者間を封止する環状の弾性部材56が設けられている。環状の弾性部材56は、例えば樹脂モールド部51の外周51aに設けられた周溝に保持されている。
【0036】
電源モジュール46は、制御モジュール45と、モータハウジング24の端部材29の端壁30との間に、配置されている。電源モジュール46は、図示しない固定ねじを用いてモータハウジング24の端壁30に固定された樹脂枠57と、樹脂枠57によってきり付けられた電源部品58(電解コンデンサ、リレー、コイル等)と、第1コネクタ59と、第2コネクタ60と、第3コネクタ61と、外部からの給電コネクタ(図示せず)が接続される給電コネクタと、樹脂枠57およびコネクタ59〜61の少なくとも一部をモールドした樹脂モールド部62とを備えている。
【0037】
第1コネクタ59は、パワーモジュール44から延びるモータ出力端子54が接続された端子63を備えている。第2コネクタ60(図4参照)は、パワーモジュール44から延びる電源端子55が接続された端子(図示せず)を備えている。なお、簡略化のため、図4に示す電源モジュール46では、樹脂モールド部62の図示を省略してある。
図4に示す第3コネクタ61は、モータハウジング24の端壁30を貫通した電動モータ18のリード端子64(リード端子64は、バスバー43から延びている)が接続されたモータ出力端子65(図3参照)を備えている。
【0038】
パワーモジュール44からのモータ出力端子54は、電源モジュール46内のインサートバスバー(図示せず)および第3コネクタ61のモータ出力端子65を介して、リード端子64に接続される。各コネクタ59〜61のコネクタハウジングは、樹脂枠57の一部により構成されていてもよい。
本実施形態によれば、下記の作用効果を奏する。すなわち、減速機19は電動モータ18と比較した場合、殆ど発熱しない。このような減速機19のギヤハウジング22に、板状のパワーモジュール44の両面(第1面44aおよび第2面44b)が直接接触して放熱するので、放熱効果を格段に高くすることができる。したがって、パワーモジュール44の信頼性を向上することができる。また、耐久時間を長くすることができる。
【0039】
また、板状のパワーモジュール44が、制御基板50に対して直交状に配置されるとともに、回転軸27の軸線C1に平行な方向に延びて、ギヤハウジング22の挿入溝48内に挿入されている。したがって、回転軸27を軸方向X1に短くでき、回転軸27の振動の発生を抑制することができる。また、回転軸27の軸方向X1に関して、収容室35を小型化することができ、ひいては電動パワーステアリング装置1の小型化、軽量化を達成することができる。
【0040】
また、制御基板50と樹脂モールド部51とで構成された制御モジュール45の、樹脂モールド部51から直交状にパワーモジュール44が突出しているので、パワーモジュール44をギヤハウジング22の挿入溝48に挿入するレイアウトを容易に実現することができる。また、パワーモジュール44と制御モジュール45とを単一のユニットとして取り扱うことができ、組立性が良い。
【0041】
また、パワーモジュール44から延びる端子(モータ出力端子54および電源端子55)が、制御モジュール45の樹脂モールド部51を貫通して電源モジュール46側へ突出しており、これらの端子(モータ出力端子54および電源端子55)が、電源モジュール46の対応する端子に接続される。したがって、パワーモジュール44を電源モジュール46に、端子間接続で容易に接続することができる。
【0042】
また、直交状に配置された制御基板50とパワーモジュール44とを可撓性のある平形の接続部材53を介して電気的に接続した状態で樹脂モールドするので、接続部材53による接続部の接続の信頼性を高くすることができる。
また、樹脂モールド部51の外周51aと組合せハウジングHの内周(ギヤハウジング22の筒状部34の内周34a)との間が、環状の弾性部材56で封止されるので、ギヤハウジング22内から収容室35内へのグリース等の侵入を確実に防止することができる。
【0043】
また、制御基板50の実装面50bに実装された制御素子としての電解コンデサ70は、耐熱温度が比較的低く、高温になると耐久時間が低下する傾向にある。その電解コンデンサ70が実装された実装面50bが、制御モジュール45の樹脂モールド部51から露出していて、放熱性が良いので、制御素子としての電解コンデンサ70の温度上昇を抑制して、電解コンデンサ70の耐久時間を長くすることができる。
【0044】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば前記実施形態では、電解コンデンサ70が実装された露出した実装面50bが、制御基板50の、電動モータ18側の面であったが、これに代えて、制御基板50の、減速機19側の面が露出した実装面であって、電解コンデンサ70が実装されていてもよい。また、両実装面50a,50bが、ともに樹脂モールド部51でモールドされていてもよい。その他、本発明の請求項記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0045】
1…電動パワーステアリング装置、2…操舵部材、4…転舵機構、5…操舵補助機構、6…ステアリングシャフト、12…ECU(制御ユニット)、18…電動モータ、19…減速機、20…ウォーム軸(駆動ギヤ)、21…ウォームホイール(被動ギヤ)、22…ギヤハウジング、24…モータハウジング、28…モータハウジング本体、29…端部材、30…端壁、31…筒状部、32…駆動ギヤ収容ハウジング、34…筒状部、34a…内周、35…収容室、43…バスバー、44…パワーモジュール、44a…第1面、44b…第2面、441…端部、45…制御モジュール、46…電源モジュール、47…パワー素子、48…挿入溝、48a…第1内壁面、48b…第2内壁面、49…放熱板、50…制御基板、50b…(露出した)実装面、51…樹脂モールド部、51a…外周、53…接続部材、54…モータ出力端子、55…電源端子、56…弾性部材、57…樹脂枠、58…電源部品、59…第1コネクタ、60…第2コネクタ、61…第3コネクタ、62…樹脂モールド部、63…端子、64…リード端子、65…モータ出力端子、70…電解コンデンサ(制御素子)、C1…(回転軸の)軸線、H…組合せハウジング、X1…軸方向
図1
図2
図3
図4