特許第5967426号(P5967426)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5967426土圧式シールド工法におけるチャンバー内掘削土の塑性流動性評価方法および土圧式シールド掘削機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967426
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】土圧式シールド工法におけるチャンバー内掘削土の塑性流動性評価方法および土圧式シールド掘削機
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20160728BHJP
   E21D 9/093 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   E21D9/06 301M
   E21D9/093 F
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-148400(P2012-148400)
(22)【出願日】2012年7月2日
(65)【公開番号】特開2014-9545(P2014-9545A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】杉山 博一
(72)【発明者】
【氏名】島 厚夫
(72)【発明者】
【氏名】原 忠
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】阿曽 利光
【審査官】 石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−054199(JP,A)
【文献】 実開昭63−041692(JP,U)
【文献】 特開2008−202321(JP,A)
【文献】 特開昭60−085195(JP,A)
【文献】 特開2005−090174(JP,A)
【文献】 特開昭62−021994(JP,A)
【文献】 特開平04−198587(JP,A)
【文献】 特開2007−217926(JP,A)
【文献】 特開2008−169692(JP,A)
【文献】 特開2010−013895(JP,A)
【文献】 特開2006−016934(JP,A)
【文献】 特開2003−097181(JP,A)
【文献】 米国特許第04607889(US,A)
【文献】 米国特許第04167289(US,A)
【文献】 独国特許出願公開第02745215(DE,A1)
【文献】 特開2007−191877(JP,A)
【文献】 松原健太、櫻井裕一、猪瀬研一、北山篤,大断面泥土圧シールドにおけるチャンバー内可視化技術,土木学会第60回年次学術講演概要集,日本,土木学会,2005年 8月20日,第201頁、第202頁
【文献】 小西由人、松原健太、高橋寛、守屋洋一、北山篤,泥土圧シールドにおけるチャンバー内の土砂流動管理技術の実施工への適用,土木学会第61回年次学術講演概要集,日本,土木学会,2006年 9月 1日,第203頁、第204頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06 − 9/093
G01N 11/00 −11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削土をチャンバー内において攪拌翼により攪拌して塑性流動性を持たせ、該掘削土の土圧を切羽に作用させることによって切羽を安定化しつつ掘進を行う土圧式シールド工法に適用され、前記チャンバー内における前記掘削土の塑性流動性を評価するための方法であって、
前記チャンバー内の複数個所において前記掘削土の土圧を計測するための複数の土圧計を前記攪拌翼の通過軌跡の近傍位置にそれぞれ設置しておき、前記土圧計による計測値から前記攪拌翼が前記土圧計の近傍位置を通過する際における土圧の変動状況の指標となる指標値をそれぞれ求めて、それら指標値に基づいて前記チャンバー内の複数個所における前記掘削土の塑性流動性を評価し、
前記土圧計による土圧の計測を所定のサンプリングタイムで刻々と実施して、その計測結果を波形データとして取り扱い、該波形データの変動状況に基づいて前記指標値を求め、
前記指標値として、前記波形データから排土および掘進の影響を排除して求めた偏差土圧からフーリエ解析により求めたフーリエ振幅を用いることを特徴とする土圧式シールド工法におけるチャンバー内掘削土の塑性流動性評価方法。
【請求項2】
前記チャンバー内における任意の位置における指標値を、前記土圧計の位置における前記指標値と、前記土圧計と前記任意の位置との間の距離に基づいて演算して推定値として求めて、該推定値に基づいて前記チャンバー内の全体における掘削土の塑性流動性を評価し、その結果を、前記チャンバーを示す領域を塑性流動性に応じて色別表示する、又は濃淡を分けて管理コンピュータのディスプレイに可視化表示することを特徴とする請求項1記載の土圧式シールド工法におけるチャンバー内掘削土の塑性流動性評価方法。
【請求項3】
掘削土をチャンバー内において攪拌翼により攪拌して塑性流動性を持たせ、該掘削土の土圧を切羽に作用させることによって切羽を安定化しつつ掘進を行う構成の土圧式シールド掘削機であって、
前記チャンバー内の複数個所において前記掘削土の土圧を計測するための複数の土圧計を前記攪拌翼の通過軌跡の近傍位置にそれぞれ設置し、前記土圧計による計測値から前記攪拌翼が前記土圧計の近傍位置を通過する際における土圧の変動状況の指標となる指標値をそれぞれ求めるとともに、それら指標値に基づいて前記チャンバー内の複数個所における前記掘削土の塑性流動性を評価し表示するための管理手段を具備し
前記管理手段では、前記土圧計による土圧の計測を所定のサンプリングタイムで刻々と実施して、その計測結果を波形データとして取り扱い、該波形データの変動状況に基づいて前記指標値を求め、前記指標値として、前記波形データから排土および掘進の影響を排除して求めた偏差土圧からフーリエ解析により求めたフーリエ振幅を用いることを特徴とする土圧式シールド掘削機。
【請求項4】
掘削土をチャンバー内において攪拌翼により攪拌して塑性流動性を持たせ、該掘削土の土圧を切羽に作用させることによって切羽を安定化しつつ掘進を行う土圧式シールド工法に適用され、前記チャンバー内における前記掘削土の塑性流動性を評価するための方法であって、
前記チャンバー内の複数個所において前記掘削土の土圧を計測するための複数の土圧計を前記攪拌翼の通過軌跡の近傍位置にそれぞれ設置しておき、前記土圧計による計測値から前記攪拌翼が前記土圧計の近傍位置を通過する際における土圧の変動状況の指標となる指標値をそれぞれ求めて、それら指標値に基づいて前記チャンバー内の複数個所における前記掘削土の塑性流動性を評価した結果を、前記チャンバーを示す領域を塑性流動性に応じて色別表示する、又は濃淡を分けて管理コンピュータのディスプレイに可視化表示することを特徴とする土圧式シールド工法におけるチャンバー内掘削土の塑性流動性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は土圧式シールド工法に関わり、特に掘削時におけるチャンバー内掘削土の塑性流動性を評価するための評価方法、およびその評価方法を実施するための土圧式シールド掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、土圧式シールド工法は、カッター装置の背後に掘削土を取り込むためのチャンバーを設けた土圧式シールド掘削機を用いて、チャンバー内に取り込んだ掘削土に対して加水ベントナイトや高分子材料等の薬液あるいは気泡等を添加して攪拌翼により攪拌することにより、掘削土に所定の塑性流動性を持たせてその土圧を切羽に作用させて切羽を安定に保持しつつ掘進を行うことを基本とする工法である。
【0003】
このような土圧式シールド工法においては、掘削土による土圧を切羽の全面に対して均一かつ安定に作用させることが重要であるから、チャンバー内における掘削土の塑性流動性を適切に設定しかつ安定に維持する必要がある。そして、そのためには掘削土がチャンバー内全体において均一に塑性流動化しているかどうかを掘削中に逐次確認する必要があり、特許文献1にはそのための方法についての提案がある。
【0004】
特許文献1に示される方法は、回転フラッパー式の測定装置をチャンバー内に突出させて設けてそれを掘削土中において回転させた際の回転トルクを測定することにより、測定装置が掘削土から受ける抵抗力に基づいて掘削土の塑性流動性(つまりは掘削土の硬軟の状況)を評価するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−191878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の方法では、掘削時におけるチャンバー内における掘削土の塑性流動性をリアルタイムで直接的に把握し管理できるものではあるが、測定装置が掘削土から常に抵抗を受けるために頻繁に故障し易いものであり、その点で実用的ではなく広く普及するに至っていない。
また、測定装置をチャンバー内に突出させて設ける必要があるからその設置位置が制約されるものであり、通常はカッター装置や攪拌翼の回転と干渉しないようにチャンバー内の最外周縁部の1個所に設置するしかなく、したがってチャンバー内全体の塑性流動性を広範囲にわたって把握することは困難である。
【0007】
以上のように、現時点ではチャンバー内における掘削土の塑性流動性を精度良くしかも広範囲にわたって評価するための有効適切な手法は確立しておらず、それを可能とする有効適切な手段の開発が必要とされているのが実状である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記事情に鑑み、請求項1記載の発明は、掘削土をチャンバー内において攪拌翼により攪拌して塑性流動性を持たせ、該掘削土の土圧を切羽に作用させることによって切羽を安定化しつつ掘進を行う土圧式シールド工法に適用され、前記チャンバー内における前記掘削土の塑性流動性を評価するための土圧式シールド工法におけるチャンバー内掘削土の塑性流動性評価方法であって、前記チャンバー内の複数個所において前記掘削土の土圧を計測するための複数の土圧計を前記攪拌翼の通過軌跡の近傍位置にそれぞれ設置しておき、前記土圧計による計測値から前記攪拌翼が前記土圧計の近傍位置を通過する際における土圧の変動状況の指標となる指標値をそれぞれ求めて、それら指標値に基づいて前記チャンバー内の複数個所における前記掘削土の塑性流動性を評価し、前記土圧計による土圧の計測を所定のサンプリングタイムで刻々と実施して、その計測結果を波形データとして取り扱い、該波形データの変動状況に基づいて前記指標値を求め、前記指標値として、前記波形データから排土および掘進の影響を排除して求めた偏差土圧からフーリエ解析により求めたフーリエ振幅を用いることを特徴とする。
【0011】
請求項記載の発明は、請求項記載の発明の評価方法であって、前記チャンバー内における任意の位置における指標値を、前記土圧計の位置における前記指標値と、前記土圧計と前記任意の位置との間の距離に基づいて演算して推定値として求めて、該推定値に基づいて前記チャンバー内の全体における掘削土の塑性流動性を評価し、その結果を、前記チャンバーを示す領域を塑性流動性に応じて色別表示する、又は濃淡を分けて管理コンピュータのディスプレイに可視化表示することを特徴とする。
【0012】
請求項記載の発明は、掘削土をチャンバー内において攪拌翼により攪拌して塑性流動性を持たせ、該掘削土の土圧を切羽に作用させることによって切羽を安定化しつつ掘進を行う構成の土圧式シールド掘削機であって、前記チャンバー内の複数個所において前記掘削土の土圧を計測するための複数の土圧計を前記攪拌翼の通過軌跡の近傍位置にそれぞれ設置し、前記土圧計による計測値から前記攪拌翼が前記土圧計の近傍位置を通過する際における土圧の変動状況の指標となる指標値をそれぞれ求めるとともに、それら指標値に基づいて前記チャンバー内の複数個所における前記掘削土の塑性流動性を評価し表示するための管理手段を具備し、前記管理手段では、前記土圧計による土圧の計測を所定のサンプリングタイムで刻々と実施して、その計測結果を波形データとして取り扱い、該波形データの変動状況に基づいて前記指標値を求め、前記指標値として、前記波形データから排土および掘進の影響を排除して求めた偏差土圧からフーリエ解析により求めたフーリエ振幅を用いることを特徴とする。
また、請求項4記載の発明は、掘削土をチャンバー内において攪拌翼により攪拌して塑性流動性を持たせ、該掘削土の土圧を切羽に作用させることによって切羽を安定化しつつ掘進を行う土圧式シールド工法に適用され、前記チャンバー内における前記掘削土の塑性流動性を評価するための方法であって、前記チャンバー内の複数個所において前記掘削土の土圧を計測するための複数の土圧計を前記攪拌翼の通過軌跡の近傍位置にそれぞれ設置しておき、前記土圧計による計測値から前記攪拌翼が前記土圧計の近傍位置を通過する際における土圧の変動状況の指標となる指標値をそれぞれ求めて、それら指標値に基づいて前記チャンバー内の複数個所における前記掘削土の塑性流動性を評価した結果を、前記チャンバーを示す領域を塑性流動性に応じて色別表示する、又は濃淡を分けて管理コンピュータのディスプレイに可視化表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、攪拌翼が土圧計の近傍位置を通過する際における土圧の変動状態が掘削土の硬軟の状況をすなわち塑性流動性を反映することから、土圧計の計測値からその時点のその位置における掘削土の塑性流動性を有効に把握し評価することが可能である。
したがって本発明によれば、特許文献1に示される従来法による場合(チャンバー内に突出させた測定装置によって掘削土の塑性流動性を直接的に測定する場合)のように測定装置が頻繁に故障してしまう懸念はなく、またチャンバー内に複数の土圧計を支障なく設置することが可能であるから、チャンバー内全体の塑性流動性を広範囲にわたって把握し評価することが可能であり、それに基づき適切な施工管理を行いつつ掘削を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態を示すもので、(a)は本実施形態の土圧式シールド掘削機の先端部の概略構成を示す側面図、(b)は正面図((a)におけるb−b線視断面図)、(c)は土圧計と攪拌翼の位置関係を示すための要部拡大図である。
図2】同、本発明の原理についての説明図であり、(a)は土圧計による計測値としての波形データを示す図、(b)はその波形データからジャッキ推力と排土の影響を除外した偏差土圧を示す図である。
図3】同、本発明における指標値を示すもので、(a)は偏差土圧を示す図、(b)はフーリエ振幅を示す図である。
図4】同、任意の点の指標値を推定するための演算手法についての説明図である。
図5】同、管理コンピュータへの可視化表示パターンの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図5を参照して、本発明の土圧式シールド工法におけるチャンバー内掘削土の塑性流動性評価方法および土圧式シールド工法の実施形態について説明する。
図1(a)〜(c)は本実施形態の評価方法を適用するために用いる土圧式シールド掘削機の概略構成を示すものである。
これは、基本的には通常の土圧式シールド工法において用いる土圧式シールド掘削機と同様に、(a)に示すようにスキンプレート1の先端部を隔壁2により区画形成して掘削土を取り込むためのチャンバー3を設け、カッター装置4により切羽を掘削することで生じる掘削土をチャンバー3内に取り込み、チャンバー3内の掘削土に対して加水ベントナイトや高分子材料等の薬液あるいは気泡等を添加して攪拌することにより掘削土に所定の塑性流動性を持たせ、その土圧を切羽に作用させて切羽を安定化しつつ掘進を行うように構成したものである。
【0016】
本実施形態では、チャンバー3内における掘削土の攪拌をカッター装置4の背部に設けた攪拌翼5により行うようにしており、かつ、その攪拌翼5の回転軌跡の近傍位置にチャンバー3内における掘削土の土圧を計測するための土圧計6を複数個所に設置しておいて、それら土圧計6による計測値に基づいて図示しない管理コンピュータ(管理手段)によってチャンバー3内における掘削土の塑性流動性を評価し表示しつつ掘削を行うようにしている。
【0017】
すなわち、(a)に示すようにカッター装置4の背部の外周縁部には回転中心である軸芯を挟んで両側の位置にそれぞれ攪拌翼5(本実施形態ではそれらの2つの攪拌翼5の形状と設置位置が異なっているので、それらを区別する場合には一方を攪拌翼5a、他方を攪拌翼5bとする)がチャンバー3内に突出する状態で設けられ、カッター装置4の回転とともにそれら攪拌翼5がチャンバー3内において円形の回転軌跡を描いて移動することによりチャンバー3内の掘削土を攪拌するようになっている。
それら攪拌翼5の設置位置は、チャンバー3内の全体において掘削土に対する効率的な攪拌効果が得られるように任意に設定すれば良く、その限りにおいて双方の攪拌翼5の回転軌跡を合致させる(つまり軸芯から等距離の位置に設置する)ことでも良いが、それよりも双方の位置を半径方向に若干ずらした方が全体にわたって広範囲に攪拌することができるのでより好ましい。図示例では(a)に示すように一方の攪拌翼5aよりも他方の攪拌翼5bをやや径方向外側に設置してある。
【0018】
そして、(a)に示すように、上記のチャンバー3を区画形成している隔壁2には、チャンバー3内において攪拌される掘削土の土圧を計測するための複数の土圧計6がそれぞれ攪拌翼5の通過軌跡の近傍位置に対して設置されていて、カッター装置4の回転に伴ってその背部に設置されている攪拌翼5が(c)に示すようにそれぞれの土圧計6の近傍を自ずと通過するようになっている。
図示例では、(b)に示すように土圧計6の設置位置を、攪拌翼5の回転軌跡である仮想円を周方向にほぼ均等に6等分する位置としており、したがってチャンバー3内の頂部と底部および高さ方向の中間部にそれぞれ2個所ずつの計6個所に対して土圧計6が円形をなすようにほぼ等間隔で分散配置されている。
【0019】
本実施形態では、それぞれの土圧計6によってチャンバー3内の掘削土の土圧を各点において計測し、それらの計測値から攪拌翼5がそれぞれの土圧計6の近傍位置を通過する際における土圧の変動状況の指標となる指標値をそれぞれ求め、それら指標値に基づいてチャンバー3内の全体における掘削土の塑性流動性を評価するものである。
特に本実施形態では、掘削時における土圧計6による土圧計測を所定のサンプリングタイム(たとえば0.25秒間隔)で刻々とほぼ連続的に実施してその計測結果を波形データとして取り扱い、その波形データの変動状況に基づいて指標値としての偏差土圧およびフーリエ振幅を求め、それら偏差土圧やフーリエ振幅に基づいて塑性流動性を評価することを主眼とし、そのための管理手段としての管理コンピュータ(図示略)を具備したものとなっている。
【0020】
本発明の原理について図2図3を参照して説明する。
土圧計6により計測されるチャンバー3内全体の平均的な土圧は、掘進の際にはジャッキ推力の影響により大きく上昇するとともに、チャンバー3から排土がなされた際には大きく低下するので、上記のようにごく短いサンプリングタイムでほぼ連続的に計測することで得られる計測値は基本的には図2(a)に示すように全体として上昇と低下を繰り返すような波形を呈するものとなる。
【0021】
そのような基本的な波形に対して、攪拌翼5が任意の土圧計6の近傍位置を通過した際には、攪拌翼5によって掘削土が直近の土圧計6に対して押圧される影響を受けてその土圧計6による計測値が一時的に僅かに上昇する。
その際の土圧の上昇の度合いは常に一定ではなく、土圧計6の近傍位置におけるその時点の掘削土の塑性流動性に応じて変動するものとなり、掘削土の塑性流動性が低い場合(掘削土が硬くて流動し難い場合)には計測値は顕著に上昇するが、塑性流動性が高い場合(掘削土が柔らかくて十分に流動する場合)には計測値はあまり上昇しないという相関関係にある。
【0022】
そこで本発明はその際の上昇の度合いを精度良く把握するべく、まず図2(a)に示すような土圧計6の計測値としての波形データからジャッキ推力と排土の影響を排除して、(b)に示すような偏差土圧のデータを求める(具体的には土圧計6の計測値から全土圧平均値を差し引けば良い)。
【0023】
この偏差土圧のデータは、攪拌翼5が通過するたびにピークを生じるものとなり、そのピークの大きさと掘削土の硬軟との間には図3(a)に示すように明白な相関関係がある(上述したようにピークの値は掘削土が硬い場合ほど大きくなり、柔らかいほど小さくなる)から、この偏差土圧のデータにおけるピーク値を指標値として掘削土の硬軟つまりは塑性流動性を把握し評価することが可能である。
【0024】
さらに、上記の偏差土圧のデータに対してさらにフーリエ解析を実施して、土圧変動の特性を周期と関連させて示すためのパワースペクトルを求め、そのパワースペクトルから図3(b)に示すようなフーリエ振幅を求めれば、このフーリエ振幅のデータも攪拌翼5が通過する際に掘削土の硬軟に応じたピークが生じるものとなるから、このデータもチャンバー3内における掘削土の塑性流動性を反映した指標値とすることができ、これから塑性流動性を評価することができる。
【0025】
したがって、本実施形態によれば、図3(a)に示す偏差土圧のデータ及び/又は図3(b)に示すフーリエ振幅のデータを指標値として(換言すれば、偏差土圧とフーリエ振幅のいずれか一方または双方のデータを指標値として)、それら指標値としての偏差土圧やフーリエ振幅におけるピーク値と塑性流動性との定性的および定量的な関係を予め実験的にあるいは理論的に求めておけば、それらの指標値から掘削時におけるチャンバー3内のそれぞれの土圧計6の位置での掘削土の塑性流動性を管理コンピュータにより刻々と把握し評価することが可能であり、その結果を施工管理に有効に利用することが可能となる。
【0026】
このような本実施形態の評価方法による場合には、土圧計をチャンバー3に面して設置するだけで良いから、特許文献1に示される従来法による場合のように測定装置が頻繁に故障してしまう懸念はないし、またチャンバー3内の所望位置に複数(多数)の土圧計6を支障なく設置することが可能であるから、チャンバー3内全体の塑性流動性を広範囲に評価することも可能であり、その点で従来法に比べて格段に有効である。
【0027】
なお、本実施形態の評価方法によりチャンバー3内全体における掘削土の塑性流動性を評価するためには、土圧計6による土圧計測点を可及的に多く設定することが好ましいことは当然であるが、あまり多くの土圧計6を設置することは現実的ではないので、上記実施形態のように6個所程度とすることが現実的であるし、少なくとも4個所程度とすることでもチャンバー3内全体の塑性流動性を実用的な程度で把握し評価することが可能である。
また、本実施形態では攪拌翼5が通過する際の土圧変動を検出することを基本とすることから、土圧計6の設置位置は可及的に攪拌翼5の通過位置の近傍とすることが好ましいことが当然ではあるが、攪拌翼5が通過する際の土圧変動を有意に検出し得る位置であれば土圧計6の設置位置は厳密に規定する必要はない。
いずれにしても、土圧計6によるデータのサンプリングタイムは、実質的に連続的な波形データを得るようにごく短くする(たとえば上記実施形態のように0.25秒間隔程度とする)ことが好ましいが、施工管理上において必要なデータを採取し得る限りにおいて任意に設定すれば良い。
【0028】
さらに、チャンバー3内全体における塑性流動性をより直観的に把握し評価するためには、土圧計6の設置位置における指標値に基づいて任意の位置における指標値を以下の手法により推定することにより、土圧計6の設置位置のみならずチャンバー3内全体での塑性流動性を推定し評価することが好ましい。
【0029】
すなわち、本実施形態においては、図4に示すように、チャンバー3内における任意の点Pにおける指標値の推定値Vpを、土圧計6の計測値に基づいて実際に演算した各点における指標値V1〜V6と、土圧計6の設置位置と任意の点Pとの間の距離L1〜L6に基づいて、(1)式により演算することで求めることができる。
(1)式における係数α1〜α6は、任意の点Pに対する土圧計6の位置における指標値V1〜V6からの影響度を示す重み付けの係数であり、これらの係数α1〜α6はそれぞれ(2)式で求められる。(2)式における指数nはn=1とすれば良いが、距離による影響をより重視する場合にはn=2あるいはn=3とすることでも良い。
【0030】
そして、上記の点Pをチャンバー3内の全体にわたって多数個所に設定してそれら各点での指標値を推定値Vpとしてそれぞれ求め(そのためには各点の位置(座標)に対応するL1〜L6の値をパラメータとして(2)式および(1)式による演算を繰り返せば良い)、その結果を管理コンピュータのディスプレイに刻々と可視化表示することにより、作業員がディスプレイを目視監視することでチャンバー3内全体の塑性流動状態を直観的にかつ容易に評価することが可能となり、それに基づいて適切な施工管理を行うことが可能となる。
その場合のディスプレイでの可視化表示の形式は任意であるが、たとえば図5に示すようにチャンバー3を示す領域を塑性流動性に応じて色別表示したり濃淡を分けて表示することが考えられる。具体的には、たとえば掘削土が過度に硬い領域を赤く表示し、過度に柔らかい領域を青く表示し、適切な領域を白く表示したり、あるいは塑性流動性が悪い領域ほど濃く良い領域ほど薄く表示するようなことも考えられる。
【0031】
以上で本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態はあくまで好適な一例であって本発明は上記実施形態に限定されるものでは勿論なく、本発明の評価方法の具体的な手法、たとえば土圧計の計測値から指標値を演算するための具体的な演算手法や、指標値に基づいて塑性流動性を評価し表示するための具体的な評価手法や表示手法、また本発明の評価方法を実施するために用いる土圧式シールド掘削機の各部の具体的な構成については、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜の設計的変更や応用が可能であることは当然である。
【符号の説明】
【0032】
1 スキンプレート
2 隔壁
3 チャンバー
4 カッター装置
5 攪拌翼
6 土圧計
図1
図2
図3
図4
図5