(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水平の一方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁と、前記野縁の下面に取り付けられた天井材と、前記野縁に交差させ、水平の他方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁受けと、前記野縁と前記野縁受けを交差部で接続する野縁接続用金具と、上端側を上部構造に接続し、下端側を前記野縁受けに接続して配設された複数の吊り部材と、前記吊り部材の下端側と前記野縁受けを接続する吊り部材接続用金具と、一端と他端をそれぞれ前記野縁受けと前記上部構造に直接的あるいは間接的に接続し、前記一方向あるいは前記他方向に沿ってV字状を呈するように並設された一対の補強ブレースとを備える吊り天井構造であって、
上下方向の平面視で、前記一対の補強ブレースを合わせた長さを一辺の長さとし、且つ前記一対の補強ブレースのV字の交点を中心とする正方形の補強領域を設定し、
前記補強領域の少なくとも2つの前記野縁接続用金具と、前記吊り部材接続用金具として、前記補強領域外で使用する前記野縁接続用金具と前記吊り部材接続用金具よりも、前記野縁と前記野縁受け、前記吊り部材と前記野縁受けをそれぞれ強固に接続する高耐力野縁接続用金具と高耐力吊り部材接続用金具が使用されていることを特徴とする吊り天井構造。
水平の一方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁と、前記野縁の下面に取り付けられた天井材と、前記野縁に交差させ、水平の他方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁受けと、前記野縁と前記野縁受けを交差部で接続する野縁接続用金具と、上端側を上部構造に接続し、下端側を前記野縁受けに接続して配設された複数の吊り部材と、前記吊り部材の下端側と前記野縁受けを接続する吊り部材接続用金具と、一端と他端をそれぞれ前記野縁受けと前記上部構造に直接的あるいは間接的に接続し、前記一方向あるいは前記他方向に沿ってV字状を呈するように並設された一対の補強ブレースとを備える吊り天井構造であって、
上下方向の平面視で、前記一対の補強ブレースを合わせた長さを一辺の長さとし、且つ前記一対の補強ブレースのV字の交点を中心とする正方形の補強領域を設定し、
前記補強領域の少なくとも2つの前記野縁接続用金具と、前記吊り部材接続用金具として、及び吊り天井の外周縁部の前記野縁接続用金具として、前記補強領域外且つ前記吊り天井の外周縁部外で使用する前記野縁接続用金具と前記吊り部材接続用金具よりも、前記野縁と前記野縁受け、前記吊り部材と前記野縁受けをそれぞれ強固に接続する高耐力野縁接続用金具と高耐力吊り部材接続用金具が使用されていることを特徴とする吊り天井構造。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばオフィスビル等の建物の天井部の構造として、吊り天井が多用されている。そして、吊り天井(吊り天井構造)Aは、例えば
図6及び
図7に示すように、水平の一方向T1に所定の間隔をあけて並設される複数の野縁1と、野縁1に直交し、水平の他方向T2に所定の間隔をあけて並設され、複数の野縁1に一体に接続して設けられる複数の野縁受け2と、下端を野縁受け2に接続し、上端を上階の床材3等に固着して配設される複数の吊りボルト(吊り部材)4と、野縁1の下面にビス留めなどによって一体に取り付けられ、下階の天井面を形成する天井パネル(天井材)5とを備えて構成されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0003】
また、
図8に示すように、野縁1と野縁受け2は、断面コ字状の溝形鋼であり、野縁1においては、開口部6を形成する両側壁部1a、1bの先端を幅方向(T1)内側にそれぞれ突出させてなる一対の係合受部7を備えて形成されている。また、このように形成された野縁1と野縁受け2は、
図6から
図8に示すように、クリップ(野縁接続用金具)10を用い、互いに交差する交差部11で接続される。クリップ10は、例えば、
図8に示すように、下端側に幅方向両外側に突出する係合片10aを備え、上端側に上方に突出する折り曲げ係止片10bを備えて形成されている。そして、野縁1の内部に開口部6から下端側の係合片10aを挿入するとともに野縁1の係合受部7に係合させ、開口部9を横方向(T2)に向けて野縁1上に配設された野縁受け2の上端側を巻き込むように折り曲げ係止片10bを折り曲げて係止させる。これにより、クリップ10を介して野縁1と野縁受け2を接続することができる。
【0004】
さらに、
図6、
図7及び
図9に示すように、吊りボルト4と野縁受け2は、ハンガ(吊り部材接続用金具)12を用いて接続される。ハンガ12は、例えば、
図9に示すように、上端側に横方向(T2)に延びて設けられるとともに、吊り部材挿通孔13が貫設された吊り部材接続部12aと、吊り部材接続部12aの一端から下方に折れ曲がって延設された垂下部12bと、垂下部12bの下端から横方向(T2)に折れ曲がって延設された底部12cと、底部12cから上方に折れ曲がって延設されたクランプ保持部12dとを備えて、略J字状に形成されている。そして、このハンガ12を用いて吊りボルト4と野縁受け2を接続する際には、吊り部材接続部12aの吊り部材挿通孔13に吊りボルト4を挿通してナット8を締結することにより、吊り部材接続部12aに吊りボルト4を接続する。また、ハンガ12の垂下部12bとクランプ保持部12dの間に野縁受け2を挿入して底部12cで受けるとともに、クランプ保持部12dと垂下部12bで挟み込んで保持させることにより、ハンガ12に野縁受け2が接続される。これにより、ハンガ12を介して吊りボルト4と野縁受け2を接続することができる。
【0005】
また、この種の吊り天井Aは、
図7に示すように、地震時に吊り天井Aの揺れを抑えるために補強ブレース14を備えて構成される。補強ブレース14は、複数の野縁受け2に接続して架設した野縁受け直交材15(あるいは野縁受け2、吊りボルト4の下端側)に下端を固着し、吊りボルト4の上端側(あるいは床材3)に上端を固着して、野縁1や野縁受け2に沿って例えばV字状に配設される。そして、地震時に、これら補強ブレース14が水平力を負担し、吊り天井Aに作用する水平方向T1、T2のねじりモーメントや曲げモーメントが抑えられ、吊り天井Aの縦横の揺れ、特に横揺れが抑えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の吊り天井Aにおいて、まず、係合片10aを野縁1の内部に挿入して係合させ、折り曲げ係止片10bを折り曲げて野縁受け2の上端側に係止させて野縁1と野縁受け2を接続するクリップ10では、野縁1と野縁受け2を接続する結合力がそれほど強くない。このため、中地震、大地震時には、クリップ10と野縁1、クリップ10と野縁受け2の間に滑りが生じる。
【0008】
また、野縁受け2を垂下部12bとクランプ保持部12dで挟み込んで保持させて吊りボルト4と野縁受け2を接続するハンガ12においても、垂下部12bとクランプ保持部12dによるクランプ保持力がそれほど強くない。このため、中地震、大地震時には、ハンガ12と野縁受け2の間にも滑りが生じる。
【0009】
そして、このようにクリップ10やハンガ12による接続部分で滑りが生じると、補強ブレース14に地震時に作用した水平力が好適に伝達されず、吊り天井Aに大きな揺れ(大きな横揺れ、水平変位)が発生し、中地震時に吊り天井Aが大きく破損してしまったり、大地震時に吊り天井Aの大きな破損、天井材5の脱落を招くおそれがある。
【0010】
また、全てのクリップ10やハンガ12を強固な結合力を発揮する専用金具に変更したり、別途補強部材を設けるなどして、クリップ10やハンガ12の接続部分の滑りを抑え、地震時に吊り天井Aの揺れを抑え、吊り天井Aの破損や脱落を防止できるようにすることも考えられるが、この場合には、クリップ10やハンガ12などの材料費の増大、施工手間の増大を招くことになる。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、施工性、経済性をある程度維持しつつ、耐震性能を向上させることを可能にした吊り天井構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0013】
本発明の吊り天井構造は、水平の一方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁と、前記野縁の下面に取り付けられた天井材と、前記野縁に交差させ、水平の他方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁受けと、前記野縁と前記野縁受けを交差部で接続する野縁接続用金具と、上端側を上部構造に接続し、下端側を前記野縁受けに接続して配設された複数の吊り部材と、前記吊り部材の下端側と前記野縁受けを接続する吊り部材接続用金具と、一端と他端をそれぞれ前記野縁受けと前記上部構造に直接的あるいは間接的に接続し、前記一方向あるいは前記他方向に沿ってV字状を呈するように並設された一対の補強ブレースとを備える吊り天井構造であって、上下方向の平面視で、前記一対の補強ブレースを合わせた長さを一辺の長さとし、且つ前記一対の補強ブレースのV字の交点を中心とする正方形の補強領域を設定し、
前記補強領域の少なくとも2つの前記野縁接続用金具と、前記吊り部材接続用金具として、前記補強領域外で使用する前記野縁接続用金具と前記吊り部材接続用金具よりも、前記野縁と前記野縁受け、前記吊り部材と前記野縁受けをそれぞれ強固に接続する高耐力野縁接続用金具と高耐力吊り部材接続用金具が使用されていることを特徴とする。
【0014】
この発明においては、正方形の補強領域内で高耐力野縁接続用金具と高耐力吊り部材接続用金具を使用することによって、一対の補強ブレースの周辺の野縁と野縁受け、吊り部材と野縁受けを強固に接続することが可能になる。
【0015】
そして、このように補強領域内の一対の補強ブレースの周辺の野縁と野縁受け、吊り部材と野縁受けを強固に接続することで、地震時にこれら接続部分の滑りが発生しないため(あるいは滑りが発生しにくくなるため)、従来と比較し、補強ブレースに地震時の水平力を確実に伝達させることが可能になり、吊り天井の変位を抑え、吊り天井に大きな揺れが発生することを防止することが可能になる。これにより、中地震時に、吊り天井構造(天井材)に破損が生じることを防止でき、または継続使用可能な程度の小破に確実に留めることができる。また、大地震時に、天井材の脱落が生じることを抑止することが可能になる。
【0016】
本発明の吊り天井構造は、水平の一方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁と、前記野縁の下面に取り付けられた天井材と、前記野縁に交差させ、水平の他方向に所定の間隔をあけて並設された複数の野縁受けと、前記野縁と前記野縁受けを交差部で接続する野縁接続用金具と、上端側を上部構造に接続し、下端側を前記野縁受けに接続して配設された複数の吊り部材と、前記吊り部材の下端側と前記野縁受けを接続する吊り部材接続用金具と、一端と他端をそれぞれ前記野縁受けと前記上部構造に直接的あるいは間接的に接続し、前記一方向あるいは前記他方向に沿ってV字状を呈するように並設された一対の補強ブレースとを備える吊り天井構造であって、上下方向の平面視で、前記一対の補強ブレースを合わせた長さを一辺の長さとし、且つ前記一対の補強ブレースのV字の交点を中心とする正方形の補強領域を設定し、
前記補強領域の少なくとも2つの前記野縁接続用金具と、前記吊り部材接続用金具として、及び吊り天井の外周縁部の前記野縁接続用金具として、前記補強領域外且つ前記吊り天井の外周縁部外で使用する前記野縁接続用金具と前記吊り部材接続用金具よりも、前記野縁と前記野縁受け、前記吊り部材と前記野縁受けをそれぞれ強固に接続する高耐力野縁接続用金具と高耐力吊り部材接続用金具が使用されていることを特徴とする。
【0017】
この発明においては、正方形の補強領域内で高耐力野縁接続用金具と高耐力吊り部材接続用金具を使用することによって、一対の補強ブレースの周辺の野縁と野縁受け、吊り部材と野縁受けを強固に接続することが可能になる。また、吊り天井の外周縁部で高耐力野縁接続用金具を使用することによって、吊り天井の外周縁部の野縁と野縁受けを強固に接続することが可能になる。
【0018】
このように補強領域内の一対の補強ブレースの周辺の野縁と野縁受け、吊り部材と野縁受けを強固に接続することで、地震時にこれら接続部分の滑りが発生しないため(あるいは滑りが発生しにくくなるため)、従来と比較し、補強ブレースに地震時の水平力を確実に伝達させることが可能になり、吊り天井の変位を抑え、吊り天井に大きな揺れが発生することを防止することが可能になる。
【0019】
また、吊り天井の外周縁部の野縁と野縁受けを強固に接続することで、大地震時に、吊り天井が揺れて、吊り天井の外周縁部が例えば壁・間仕切りに衝突した場合であっても、この外周縁部の野縁と野縁受けの接続が解除されてしまうことを抑止できる。これにより、外周縁部の野縁と野縁受けの接続が解除されることに誘発されて、他の部分の野縁と野縁受けの接続が解除されることがなく、大地震時であっても、天井材の脱落が生じることを防止することが可能になる。
【0020】
また、本発明の吊り天井構造において、前記高耐力野縁接続用金具及び/又は前記高耐力吊り部材接続用金具は、前記補強領域外及び/又は前記吊り天井の外周縁部外で使用する前記野縁接続用金具及び/又は前記吊り部材接続用金具に対して、2倍以上の静的引張耐力を備えていることが望ましい。
【0021】
この発明においては、補強領域外及び/又は吊り天井の外周縁部外で使用する従来の野縁接続用金具及び/又は吊り部材接続用金具に対して、高耐力野縁接続用金具及び/又は高耐力吊り部材接続用金具が2倍以上の静的引張耐力を備えていることにより、確実且つ効果的に、一対の補強ブレースの周辺や吊り天井の外周縁部の野縁と野縁受けを強固に接続することができ、吊り天井の変位を抑え、吊り天井に大きな揺れが発生することを防止できる。
【0022】
さらに、本発明の吊り天井構造において、前記高耐力野縁接続用金具及び/又は前記高耐力吊り部材接続用金具は、前記野縁受けと固結して相対的な滑動を防止する滑り止め構造を備えていることがより望ましい。
【0023】
この発明においては、滑り止め構造によって、高耐力野縁接続用金具及び/又は高耐力吊り部材接続用金具と野縁受けが固結して確実に相対的な滑動を防止することができる。これにより、さらに確実且つ効果的に、一対の補強ブレースの周辺や吊り天井の外周縁部の野縁と野縁受けを強固に接続することができ、吊り天井の変位を抑え、吊り天井に大きな揺れが発生することを防止できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の吊り天井構造においては、正方形の補強領域内で高耐力野縁接続用金具と高耐力吊り部材接続用金具を使用することによって、一対の補強ブレースの周辺の野縁と野縁受け、吊り部材と野縁受けを強固に接続することができ、地震時にこの接続部分の滑りを発生しにくくすることができる。
【0025】
これにより、従来のように全てのクリップやハンガを強固な結合力を発揮する専用金具に変更したり、別途補強部材を設けるなどすることなく、補強ブレースに地震時の水平力を伝達させ、吊り天井に大きな揺れ、特に横揺れ(水平変位)が発生することを防止でき、天井材の大きな破損や脱落などが生じることを確実に防止できる。
【0026】
よって、本発明の吊り天井構造によれば、一対の補強ブレースの周辺の金具を高耐力野縁接続用金具と高耐力吊り部材接続用金具にするだけで、従来と比較し、吊り天井に大きな揺れが発生することを防止でき、天井材の大きな破損や脱落などが生じることを防止(抑止)でき、施工性、経済性を従来と同程度に維持しつつ、耐震性能を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、
図1から
図9を参照し、本発明の一実施形態に係る吊り天井構造について説明する。ここで、本実施形態は、例えばオフィスビルなどの建物の天井部として用いられる吊り天井の構造に関し、特に優れた耐震性能を備えた吊り天井の構造に関するものである。
【0029】
本実施形態の吊り天井(吊り天井構造)Bは、
図6及び
図7に示すように、野縁1と天井材5と野縁受け2と吊り部材(吊りボルト)4と補強ブレース14と野縁接続用金具10、20と吊り部材接続用金具12、21とを備えて構成されている。
【0030】
野縁1は、
図1、
図2、
図6、
図7に示すように、溝形鋼であり、一対の側壁部1a、1bと両側壁部1a、1bに連設された底板部1cとを備えて断面コ字状(断面C字状)に形成されている。また、野縁1は、開口部6を形成する各側壁部1a、1bの先端が幅方向(T1)内側に突出して形成され、この先端の突出部分が係止受部7とされている。そして、野縁1は、水平に延設され、開口部6を上方に向け、且つ水平の一方向T1に所定の間隔をあけて平行に複数配設されている。
【0031】
本実施形態の天井材(天井パネル)5は、2枚のボードを貼り付けて一体に積層形成したものであり、例えば1m
2あたり20kg程度の重量で形成されている。そして、この天井材5は、複数の野縁1の下面にビス留めなどして設置され、天井面を形成している。なお、天井材5は、1枚のボードで構成されていてもよい。
【0032】
野縁受け2は、溝形鋼であり、上板部2aと、下板部2bと、これら上板部2aと下板部2bに連設された側壁部2cとを備えて断面コ字状(断面C字状)に形成されている。そして、野縁受け2は、水平に延設され、開口部9を横方向(T2)に向け、且つ水平の他方向T2に所定の間隔をあけて平行に複数配設されている。また、このとき、野縁受け2は、野縁1と交差するように配設されるとともに、複数の野縁1上に載置した状態で配置される。また、各野縁受け2は、野縁1と交差する交差部11、23、24、27で、野縁接続用金具10、20を使用することにより野縁1に接続されている。
【0033】
吊り部材4は、円柱棒状に形成されるとともに外周面に雄ネジの螺刻を有する吊りボルトであり、一端を上階の床材等の上部構造3に固着、または鋼製の根太等に緊結して垂下され、下端側を、吊り部材接続用金具12、21を用いて野縁受け2に接続して複数配設されている。これにより、野縁1と天井材5と野縁受け2が吊り部材4によって吊り下げ支持されている。また、本実施形態では、複数の吊り部材4は、所定の間隔をあけて分散配置され、例えば、各吊り部材4は、野縁1と野縁受け2が交差する交差部11、23、24付近で野縁受け2に接続されている。
【0034】
補強ブレース14は、
図1及び
図7に示すように、一端を直接的あるいは間接的に野縁受け2に固着し、吊り部材4の上端側にブレース接続用金具25を介して他端を固着して設けられている。また、本実施形態では、一対の補強ブレース14(14a、14b)が、野縁受け2の延設方向に沿う一方向T1に並設されている。さらに、他の一対の補強ブレース14(14c、14d)が、野縁1の延設方向に沿う他方向T2に並設されている。このとき、各一対の補強ブレース(14aと14b、14cと14d)は、V字状を呈するように並設されている。また、一方の一対の補強ブレース14(14a、14b)は、野縁1と野縁受け2が交差する一つの交差部26の野縁受け2に一端を接続して配設され、他方の一対の補強ブレース14(14c、14d)は、野縁1と野縁受け2が交差する一つの交差部26の直上に位置する部分の野縁受け直交材15に一端を接続して配設されている。
【0035】
なお、本実施形態では、一対の補強ブレース(14aと14b、14cと14d)がV字状を呈するように並設されているものとしたが、ハの字、ノの字などの補強ブレースを組み合わせてもよい。また、一方の一対の補強ブレース14(14a、14b)と、他方の一対の補強ブレース14(14c、14d)が、同じ一つの交差部26上で一端同士を接続して配設されているものとしたが、一方の一対の補強ブレース14(14a、14b)と、他方の一対の補強ブレース14(14c、14d)はそれぞれ別の場所に配設されていてもよい。また、各補強ブレース(14a、14b、14c、14d)は、一端と他端をそれぞれ野縁受け2と上部構造3に直接的あるいは間接的に接続して配設されていればよい。
【0036】
また、本実施形態の吊り天井Bでは、
図1に示すように、上下方向T3の平面視で、一対の補強ブレース(14aと14b、14cと14d)を合わせた長さLを一辺の長さとし、且つ一対の補強ブレース(14aと14b、14cと14d)のV字の交点26を中心とする正方形の補強領域Rを設定する。
【0037】
そして、この正方形の補強領域Rでは、補強領域R外で使用する野縁接続用金具10、吊り部材接続用金具12と異なる高耐力野縁接続用金具20と高耐力吊り部材接続用金具21を使用する。また、本実施形態では、補強領域R内の補強ブレース14の周辺の9箇所の交差部23で高耐力野縁接続用金具20を使用している。また、補強領域R内の補強ブレース14の周辺の9箇所の交差部27で高耐力吊り部材接続用金具21を使用している。
【0038】
さらに、
図1に示すように、例えば壁・間仕切り28と吊り天井Bとの間に所定のクリアランス(例えば100mm)を確保できない場合には、吊り天井Bの外周縁部Sの野縁1と野縁受け2の接続に高耐力野縁接続用金具20が使用され、本実施形態においても、壁・間仕切り28と隣接する吊り天井Bの外周縁部Sに高耐力野縁接続用金具20が使用されている。なお、勿論、例えば壁・間仕切り28と吊り天井Bとの間に所定のクリアランスを確保できている場合に、吊り天井Bの外周縁部Sに高耐力野縁接続用金具20を使用してもよい。
【0039】
より具体的に、補強領域R(前記9箇所の交差部23)外且つ外周縁部S(交差部24)外で使用されている野縁接続用金具10は、従来のクリップ(例えば「JIS A 6517に規定されるクリップ」)であり、
図8に示したように、下端側に幅方向両外側に突出する係合片10aを備え、上端側に上方に突出する折り曲げ係止片10bを備えて形成されている。そして、野縁1の内部に開口部6から下端側の係合片10aを挿入するとともに野縁1の係合受部7に係合させ、開口部9を横方向(T2)に向けて野縁1上に配設された野縁受け2の上端側を巻き込むように折り曲げ係止片10bを折り曲げて係止させることにより、野縁1と野縁受け2を接続する。このため、この従来のクリップ10を使用した接続部(交差部11、27)においては、係合片10aが野縁1の内部に係合し、折り曲げ係止片10bが作業者の手によって折り曲げられて野縁受け2に係止されているだけであり、それほど大きな結合力で野縁1と野縁受け2が接続されていない。
【0040】
また、補強領域R(前記9箇所の交差部27付近)外で使用されている吊り部材接続用金具12は、従来のハンガ(例えば「JIS A 6517に規定されるクリップと同等の静的引張耐力を有するハンガ」)であり、
図9に示したように、上端側に横方向(T2)に延びて設けられるとともに、吊り部材挿通孔13が貫設された吊り部材接続部12aと、吊り部材接続部12aの一端から下方に折れ曲がって延設された垂下部12bと、垂下部12bの下端から横方向(T2)に折れ曲がって延設された底部12cと、底部12cから上方に折れ曲がって延設されたクランプ保持部12dとを備えて、略J字状に形成されている。そして、このハンガ12を用いて吊り部材4と野縁受け2を接続する際には、吊り部材接続部12aの吊り部材挿通孔13に吊り部材4を挿通してナット8を締結することにより、吊り部材接続部12aに吊り部材4を接続する。また、ハンガ12の垂下部12bとクランプ保持部12dの間に野縁受け2を挿入して底部12cで受けるとともに、クランプ保持部12dと垂下部12bで挟み込んで保持させることにより、ハンガ12に野縁受け2を接続する。このため、この従来のハンガ12を使用した接続部(交差部11、23、24付近)においては、クランプ保持部12dと垂下部12bで挟持しているだけであり、それほど大きな結合力でハンガ12と野縁受け2が接続されていない。
【0041】
これに対し、正方形の補強領域Rの前記9箇所の交差部23及び外周縁部Sで使用されている高耐力野縁接続用金具20は、例えば
図2に示すように、同形同大の一対の野縁接続用金具片30、31と、一対の野縁接続用金具片30、31同士を接続するためのビス32と、一対の野縁接続用金具片30、31を野縁受け2に固定して接続するためのビス33とを備えている。そして、本実施形態の高耐力野縁接続用金具20においては、従来のクリップ(野縁接続用金具10)に対し、2倍以上の静的引張耐力を有している。
【0042】
各野縁接続用金具片30、31は、板材を折り曲げ加工して形成したものであり、上端側に、上下方向T3に延び、ビス孔31eが貫設された接続固定部30a、31aと、接続固定部30a、31aから横方向T2外側に突出した段部30b、31bと、段部30b、31bから下方に垂下した垂下部30c、31cと、垂下部30c、31cから横方向T2外側に突出するとともに、幅方向(T1)両側部が野縁1の係止受部7に係合する係合部30d、31dとを備えて形成されている。また、この野縁接続用金具片30、31は、垂下部30c、31cが下方に向かうに従い僅かに横方向(T2)外側に傾斜して形成されている。また、垂下部30c、31cにはビス孔34が貫通形成されている。さらに、この垂下部30c、31cの下端から突出する係合部30d、31dが、横方向(T2)外側に向かうに従い僅かに上方に傾斜して形成されている。
【0043】
そして、この高耐力野縁接続用金具20は、係合部30d、31dを野縁1の開口部6から挿入して係止受部7に係合させつつ、互いの垂下部30c、31cの間に野縁受け2を挟み込むようにして一対の野縁接続用金具片30、31をそれぞれ配置する。このように一対の野縁接続用金具片30、31を配置した段階で、一対の野縁接続用金具片30、31の接続固定部30a、31aのビス孔31eにビス32を螺着し、一対の接続固定部30a、31aが接触するようにビス32を締結すると、垂下部30c、31cで野縁受け2が挟持される。また、これとともに、各野縁接続用金具片30、31の係合部30d、31dが上方に押し上げられ、この係合部30d、31dが野縁1の係止受部7を押圧する。
【0044】
これにより、一対の野縁接続用金具片30、31の垂下部30c、31cが野縁受け2を大きな押圧力で押圧し、地震時に大きな摩擦力が発生するように強固に野縁受け2に接続される。また、一対の野縁接続用金具片30、31の係合部30d、31dが野縁1の係止受部7を大きな押圧力で押圧し、地震時に大きな摩擦力が発生するように強固に野縁1に接続される。
【0045】
また、本実施形態の高耐力野縁接続用金具20においては、各野縁接続用金具片30、31の垂下部30c、31cにビス孔34が形成されている。そして、予め野縁受け2にもビス孔を形成しておき、一対の野縁接続用金具片30、31を設置するとともにこれらビス孔34にビス33を螺着することで、高耐力野縁接続用金具20の一対の野縁接続用金具片30、31と野縁受け2を一体に固定して接続することができる。よって、さらに確実且つ強固に高耐力野縁接続用金具20によって野縁1と野縁受け2が接続される。そして、本実施形態では、野縁受け2と一体に固定するための高耐力野縁接続用金具20のビス孔34と野縁受けのビス孔とビス33とによって、高耐力野縁接続用金具20と野縁受け2とを固結して相対的な滑動を防止する滑り止め構造が構成されている。
【0046】
一方、高耐力吊り部材接続用金具21は、例えば
図3に示すように、
図9に示した従来のハンガ12と同様、吊り部材4の下端側を挿通する吊り部材挿通孔13が貫設された吊り部材接続部21aと、吊り部材接続部21aから下方に折れ曲がって延設された垂下部21bと、垂下部21bの下端から横方向(T2)に折れ曲がって延設された底部21cと、底部21cから上方に折れ曲がって延設されたクランプ保持部21dとを備えて、略J字状に形成されている。さらに、この高耐力吊り部材接続用金具21においては、垂下部21bとクランプ保持部21dの上下方向T3の同位置にビス孔35が形成されている。そして、本実施形態の高耐力吊り部材接続用金具21においても、従来のハンガ(吊り部材接続用金具12)に対し、2倍以上の静的引張耐力を有している。
【0047】
この高耐力吊り部材接続用金具21においては、吊り部材接続部21aの吊り部材挿通孔13に吊り部材4を挿通するとともにナット8を締結して吊り部材接続部21aと吊り部材4を接続する。また、垂下部21bとクランプ保持部21dの間に野縁受け2を挿入してクランプ保持部21dと垂下部21bで挟み込んで保持させる。さらに、垂下部21bとクランプ保持部21dのビス孔35にビス36を螺着し、クランプ保持部21dと垂下部21bが近づくように締め付ける。これにより、垂下部21bとクランプ保持部21dが野縁受け2を大きな押圧力で押圧するため、地震時に大きな摩擦力が発生するように強固に野縁受け2が接続される。
【0048】
なお、野縁受け2にビス孔を設け、この野縁受け2のビス孔にもビス36を挿通して垂下部21bとクランプ保持部21dのビス孔35に螺着するように構成してもよい。この場合には、ビス36を螺着することで、高耐力吊り部材接続用金具21の垂下部21bとクランプ保持部21dと、野縁受け2を一体に固定して接続することができる。よって、さらに確実且つ強固に高耐力吊り部材接続用金具21と野縁受け2が接続される。そして、このように構成した場合には、野縁受け2と一体に固定するための高耐力吊り部材接続用金具21のビス孔35と野縁受けのビス孔とビス36とによって、高耐力吊り部材接続用金具21と野縁受け2とを固結して相対的な滑動を防止する滑り止め構造が構成される。
【0049】
そして、上記構成からなる本実施形態の吊り天井Bにおいては、正方形の補強領域R内で高耐力野縁接続用金具20と高耐力吊り部材接続用金具21が使用され、一対の補強ブレース(14aと14b、14cと14d)の周辺の野縁1と野縁受け2、吊り部材4と野縁受け2が他の部分と比較して強固に接続されている。このため、地震時には、これら一対の補強ブレース(14aと14b、14cと14d)の周辺の野縁1と野縁受け2、吊り部材4と野縁受け2の接続部(交差部23、27)で、滑りが発生しにくくなり、あるいは滑りが発生することがなく、これにより、各補強ブレース14に地震時の水平力が確実に伝達されることになる。
【0050】
さらに、本実施形態の吊り天井Bにおいては、吊り天井Bの外周縁部Sにも高耐力野縁接続用金具20が使用されて、吊り天井Bの外周縁部Sの野縁1と野縁受け2が強固に接続されている。このため、大地震時に、吊り天井Bが揺れて、吊り天井Bの外周縁部Sが例えば壁・間仕切り28に衝突した場合であっても、この外周縁部Sの野縁1と野縁受け2の接続が解除されてしまうことが抑止される。これにより、外周縁部Sの野縁1と野縁受け2の接続が解除されることに誘発されて、他の部分の野縁1と野縁受け2の接続が解除されることがなくなる。よって、吊り天井Bの外周縁部Sに高耐力野縁接続用金具20を使用するだけで、大地震時に、天井材5の脱落が生じることが防止される。
【0051】
したがって、本実施形態の吊り天井(吊り天井構造)Bにおいては、正方形の補強領域R内で高耐力野縁接続用金具20と高耐力吊り部材接続用金具21を使用することによって、一対の補強ブレース(14aと14b、14cと14d)の周辺の野縁1と野縁受け2、吊り部材4と野縁受け2を強固に接続することが可能になる。また、吊り天井Bの外周縁部Sで高耐力野縁接続用金具20を使用することによって、吊り天井Bの外周縁部Sの野縁1と野縁受け2を強固に接続することが可能になる。
【0052】
そして、このように補強領域R内の一対の補強ブレース(14aと14b、14cと14d)の周辺の野縁1と野縁受け2、吊り部材4と野縁受け2を強固に接続することで、地震時にこれら接続部分の滑りが発生しないため(あるいは滑りが発生しにくくなるため)、従来と比較し、補強ブレース14に地震時の水平力を確実に伝達させることが可能になり、吊り天井Bの変位を抑え、吊り天井Bに大きな揺れが発生することを防止することが可能になる。これにより、中地震時に、吊り天井構造B(天井材5)に破損が生じることを防止でき、または継続使用可能な程度の小破に確実に留めることができる。また、大地震時に、天井材5の脱落が生じることを抑止することが可能になる。
【0053】
また、吊り天井Bの外周縁部Sの野縁1と野縁受け2を強固に接続することで、大地震時に、吊り天井Bが揺れて、吊り天井Bの外周縁部Sが例えば壁・間仕切り28に衝突した場合であっても、この外周縁部Sの野縁1と野縁受け2の接続が解除されてしまうことを抑止できる。これにより、外周縁部Sの野縁1と野縁受け2の接続が解除されることに誘発されて、他の部分の野縁1と野縁受け2の接続が解除されることがなく、大地震時であっても、天井材5の脱落が生じることを防止することが可能になる。
【0054】
よって、本発明の吊り天井Bによれば、従来のように全てのクリップ10やハンガ12を強固な結合力を発揮する専用金具に変更したり、別途補強部材を設けるなどすることなく、補強ブレース14に地震時の水平力を伝達させ、吊り天井Bに大きな揺れ、特に横揺れ(水平変位)が発生することを防止でき、天井材5の大きな破損や脱落などが生じることを確実に防止できる。
【0055】
言い換えれば、一対の補強ブレース(14aと14b、14cと14d)の周辺の金具を高耐力野縁接続用金具20と高耐力吊り部材接続用金具21にするだけで、従来と比較し、吊り天井Bに大きな揺れが発生することを防止でき、天井材5の大きな破損や脱落などが生じることを防止(抑止)でき、施工性、経済性を従来と同程度に維持しつつ、耐震性能を向上させることが可能になる。
【0056】
また、高耐力野縁接続用金具20や高耐力吊り部材接続用金具21が、補強領域R外や吊り天井Bの外周縁部S外で使用する野縁接続用金具10、吊り部材接続用金具12に対して、2倍以上の静的引張耐力を備えていることにより、確実且つ効果的に、一対の補強ブレース(14aと14b、14cと14d)の周辺や吊り天井Bの外周縁部Sの野縁1と野縁受け2を強固に接続することができ、吊り天井Bの変位を抑え、吊り天井Bに大きな揺れが発生することを防止できる。
【0057】
さらに、高耐力野縁接続用金具20や高耐力吊り部材接続用金具21に、野縁受け2と固結して相対的な滑動を防止する滑り止め構造が設けられていることによって、高耐力野縁接続用金具20や高耐力吊り部材接続用金具21と野縁受け2の相対的な滑動を確実に防止することができる。これにより、さらに確実且つ効果的に、一対の補強ブレース(14aと14b、14cと14d)の周辺や吊り天井Bの外周縁部Sの野縁1と野縁受け2を強固に接続することができ、吊り天井Bの変位を抑え、吊り天井Bに大きな揺れが発生することを防止できる。
【0058】
以上、本発明に係る吊り天井構造の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例】
【0059】
ここで、本発明にかかる吊り天井構造の優位性を明らかにするために行なった振動実験1、振動実験2について説明する。
【0060】
はじめに、振動実験1、振動実験2を行なうにあたり、
図4(a)、(b)に示すように、振動台上に設置された内寸3300×3500mmの枠体(フレーム)40に、建物の鉄骨梁や床材等の上部構造3に相当する支持鉄骨41を複数載置して支持させ、これら複数の支持鉄骨41に吊り部材4の上端を接続して、吊り天井(吊り天井構造)を振動台上に構築した。
【0061】
また、振動実験1では、天井面積を約17.5m
2、天井懐ろを1200mmとし、野縁1、野縁受け2などの天井下地にJIS材を用い、厚さ12.5mmの1枚貼りの天井材5として吊り天井を構築した。また、補強ブレース14は、C40×20mm、厚さ1.6mmのC型チャンネルを用い、水平のXY方向(一方向T1、他方向T2)にそれぞれ交点26を同位置にしてV型で配設した。このように構築した振動実験1の吊り天井は、重量が1m
2あたり10.55kgであった。
【0062】
また、振動実験1では、全ての接続部(交差部11、23)の野縁接続用金具と吊り部材接続用金具を
図8と
図9に示した従来の金具10、12として構築した従来の吊り天井Aと、補強ブレース14の周辺の9箇所の接続部(交差部23)の野縁接続用金具を
図2に示した高耐力野縁接続用金具20として構築した吊り天井B(本発明)とに対し、それぞれ実験を行った。また、振動実験1では、従来のクリップ(野縁接続用金具10)に対し、2倍の静的引張耐力を有する高耐力野縁接続用金具20を用いている。そして、これらの吊り天井A、Bに対し、加振波として
図5(a)、(b)に示すEL Centro波をX方向に1000Gal、Z方向に500Galで入力した。
【0063】
表1は、振動実験1の実験結果(
図4(a)、(b)に示す符号M1、M2、M3、M4の位置で測定した水平方向の加速度と天井面で測定した水平変位量)を示している。この表に示す通り、従来の吊り天井Aでは、241mmの水平変位が生じるのに対し、補強ブレース14の周辺の9箇所の野縁接続用金具を高耐力野縁接続用金具20とした吊り天井Bでは、水平変位が55mmに低減することが確認され、9箇所の野縁接続用金具を高耐力野縁接続用金具20にするだけで、吊り天井Bの揺れを大幅に低減する効果が得られることが実証された。また、吊り天井Aでは、野縁1と野縁受け2の接続部で滑りが確認され、金具に変形や外れなどが確認されたのに対し、吊り天井Bでは、滑りがほとんど確認されず、また、金具の変形などもほとんど認められなかった。
【0064】
【表1】
【0065】
次に、振動実験2では、天井面積を約25m
2、天井懐ろを1500mmとし、野縁1、野縁受け2などの天井下地にJIS材を用い、2枚貼りの天井材5として吊り天井(吊り天井構造)を構築した。また、補強ブレース14は、振動実験1と同様に、C40×20mm、厚さ1.6mmのC型チャンネルを用い、水平のXY方向(一方向T1、他方向T2)にそれぞれ交点26を同位置にしてV型で配設した。このように構築した振動実験2の吊り天井は、重量が1m
2あたり15.11kgであった。
【0066】
また、振動実験2では、補強ブレース14の周辺の9箇所の野縁接続用金具と9箇所の吊り部材接続用金具を
図2及び
図3に示した高耐力野縁接続用金具20と高耐力吊り部材接続用金具21として吊り天井Bを構築した。また、振動実験2では、従来のクリップ(野縁接続用金具10)に対し、2倍の静的引張耐力を有する高耐力野縁接続用金具20と、従来のハンガ(吊り部材接続用金具12)に対し、2倍の静的引張耐力を有する高耐力吊り部材接続用金具21を用いている。そして、この吊り天井Bに対し、加振波として
図5に示したEL Centro波を入力した。このとき、X方向に600Gal、Z方向に300Galで入力したケースと、X方向に900Gal、Z方向に450Galで入力したケースの2ケースでそれぞれ、吊り天井Bの水平変位を確認した。
【0067】
表2は、振動実験2の実験結果(
図4(a)、(b)に示す符号M1、M2、M4の位置で測定した水平方向の加速度と天井面で測定した水平変位量)を示している。この表に示す通り、補強ブレース14の周辺の9箇所の野縁接続用金具、吊り部材接続用金具を高耐力野縁接続用金具20、高耐力吊り部材接続用金具21にするだけで、水平変位が非常に小さく抑えられることが確認され、吊り天井Bの揺れを大幅に低減する効果が得られることが実証された。
【0068】
また、この実験結果から、補強ブレース14の周辺の9箇所の野縁接続用金具、吊り部材接続用金具を高耐力野縁接続用金具20、高耐力吊り部材接続用金具21にすることによって、2枚貼りの天井材5を備えた場合であっても、補強ブレース14の設置割合(設置数)を25m
2に1箇所にできることが実証された。
【0069】
【表2】