(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基準データの色情報及び前記評価対象データの色情報の少なくとも一方は、印刷物、発光面又は物体を前記入力手段によって画素単位又は画素群単位で測色して得られた測色結果としての分光値、L*a*b*値、RGB値、CMYK値、XYZ値、濃度値、マンセル表示値、赤外波長、紫外波長又はX線波長である
ことを特徴とする請求項1記載の色処理方法。
前記基準データ及び前記評価対象データの評価結果に基づいて、算出手段によって前記評価対象データの前記特定領域の色を前記基準データの前記特定領域の色に近付ける第1の色材補正量を、前記評価媒体の画像を構成する評価媒体色材の色毎に算出する
ことを特徴とする請求項2記載の色処理方法。
画像シミュレーション手段によって、前記第1〜第3の色材補正量のうちの少なくとも一つを前記評価対象データに反映した場合に色変更される前記評価媒体の画像を、画像表示手段に画像出力する
ことを特徴とする請求項5記載の色処理方法。
前記基準データ及び前記評価対象データの前記評価結果に基づく前記特定領域毎の色差データを、前記画像処理手段によって画像表示手段の表示画面上に色、文字及び数値の少なくとも一つを前記特定領域に対応させて表示する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の色処理方法。
特定色材の色情報を含む画像データを利用し、前記画像処理手段によって、前記入力手段により入力された基準データと前記特定色材の画像データを画像重合処理し、前記基準データに含まれる色情報から前記特定領域における特定色材の色情報を分離し、
前記算出手段によって、予め作成されたインキ供給量・色情報関係テーブルと、前記分離された特定色材の色情報とに基づいて、前記特定色材のインキ供給量を補正する第4の色材補正量を算出する
ことを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項記載の色処理方法。
前記基準データ及び前記評価対象データの少なくとも一つは、所定の評価用光源の照射環境下にて画像表示手段の表示画面上に表示され広色域入力手段により撮像された画像を含み、
前記画像処理手段によって、前記評価結果に基づき前記画像表示手段の表示画面の色再現領域を制御する
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の色処理方法。
前記算出手段によって、前記基準データ及び前記評価対象データの前記評価結果に基づいて、前記各画像の比較評価箇所及び当該箇所の色差データを示す評価情報を含む色品質評価データを生成する
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の色処理方法。
前記入力手段は、印刷物、発光面又は物体を画素単位又は画素群単位で測色して前記基準データの色情報及び前記評価対象データの色情報の少なくとも一方を、分光値、L*a*b*値、RGB値、CMYK値、XYZ値、濃度値、マンセル表示値、赤外波長、紫外波長又はX線波長の測色結果として得るものである
ことを特徴とする請求項13記載の色処理装置。
前記算出手段は、前記基準データ及び前記評価対象データの評価結果に基づいて、前記評価対象データの前記特定領域の色を前記基準データの特定領域の色に近付ける第1の色材補正量を、前記評価媒体の画像を構成する評価媒体色材の色毎に算出する
ことを特徴とする請求項14記載の色処理装置。
前記第1〜第3の色材補正量のうちの少なくとも一つを前記評価対象データに反映した場合に色変更される前記評価媒体の画像を、画像表示手段に画像出力する画像シミュレーション手段を備えた
ことを特徴とする請求項17記載の色処理装置。
前記画像処理手段は、前記基準データ及び前記評価対象データの前記評価結果に基づく前記特定領域毎の色差データを、画像表示手段の表示画面上に色、文字及び数値の少なくとも一つ一つを前記特定領域に対応させて表示する
ことを特徴とする請求項13〜18のいずれか1項記載の色処理装置。
前記画像処理手段は、特定色材の色情報を含む画像データを利用し、前記入力手段により入力された基準データと前記特定色材の画像データを画像重合処理し、前記基準データに含まれる色情報から前記特定領域における特定色材の色情報を分離し、
前記算出手段は、予め作成されたインキ供給量・色情報関係テーブルと、前記分離された特定色材の色情報とに基づいて、前記特定色材のインキ供給量を補正する第4の色材補正量を算出する
ことを特徴とする請求項16〜19のいずれか1項記載の色処理装置。
前記基準データ及び前記評価対象データの少なくとも一つは、所定の評価用光源の照射環境下にて画像表示手段の表示画面上に表示され広色域入力手段により撮像された画像を含み、
前記画像処理手段は、前記評価結果に基づき前記画像表示手段の表示画面の色領域を制御する
ことを特徴とする請求項13〜20のいずれか1項記載の色処理装置。
前記算出手段は、前記基準データ及び前記評価対象データの前記評価結果に基づいて、前記各画像の比較評価箇所及び当該箇所の色差データを示す評価情報を含む色品質評価データを生成する
ことを特徴とする請求項13〜22のいずれか1項記載の色処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る色処理方法、色処理装置及び色処理システムの実施の形態を詳細に説明する。
【0045】
本実施形態において、媒体は例えばオフセット印刷により紙面にインキで画像を形成した印刷物である。本実施形態のカラーマッチングは、例えば、インキ供給量の調整を行う印刷機によって印刷された刷り出し印刷物(本発明にいう評価媒体)の色を、基準となるプリント或いは印刷物である校正刷り(本発明にいう基準媒体)の色、又はPPFやTIFFデータ(本発明にいう基準データの一つ)の色に近付けるものである。
【0046】
なお、PPFデータとは、PPF(Print Production Format)ファイルのデータのことを指し、印刷工程におけるCIMの国際標準化団体(International Cooperation for the Integration of Processes in Prepress,Press,and Postpress Organization)「CIP4」が制定した標準データのことをいう。PPFファイルは、製版関係や印刷関係で用いられる。PPFファイルは、製版関係や印刷関係で用いられる。PPFファイルのフォーマットは、刷版の絵柄を50dpi程度の粗画像で記録している画像付き印刷工程指示付きフォーマットで、これを利用してインキキー情報を生成する。
【0047】
図1は、本発明の一実施形態に係る色処理装置を適用したインキ供給調整(媒体の色調整)を行う印刷機の構成を示す模式図である。
【0048】
図1に示すように、印刷機100は、印刷用紙Pが図中矢印で示す方向に順次通過する墨印刷部110K、シアン印刷部110C、マゼンタ印刷部110M、イエロー印刷部110Yを有して構成されている。これら各色の印刷部110K,110C,110M,110Yは実質的に同様の構成を備えているので、ここでは代表してイエロー印刷部110Yについて説明する。
【0049】
イエロー印刷部110Yは、版胴111Y、ブランケット胴112Y、圧胴113Y、インキつぼ114Y、インキローラ115Y、湿し水装置116Y、湿し水ローラ117Y等を備えて構成されている。版胴111Yは、ドラムの表面に、アルミプレートからなる版を巻きつけたものである。
【0050】
ブランケット胴112Yは、ドラムの表面にゴムブランケットが巻かれた中間胴である。ブランケット胴112Yは、版胴111Yからインキが転移すると共に、更にこのインキを印刷用紙Pに再転移させるものである。圧胴113Yは、ブランケット胴112Yに対して印刷用紙Pの反対側に設けられている。
【0051】
インキつぼ114Yは、印刷に用いられるインキが貯留される容器である。インキローラ115Yは、インキつぼ114Yから供給されるインキを版胴111Yの画線部に転移させるものである。インキローラ115Yは、複数のローラを組み合わせて構成され、最もインキつぼ114Y側のローラとインキつぼ114Yとの間隔を変化させることによって、インキ供給量が調整可能となっている。
【0052】
湿し水装置116Yは、版胴111Yの非画線部に水膜を形成してインキを付けないために用いられる湿し水が貯留される容器である。湿し水ローラ117Yは、湿し水装置116Yから供給される湿し水を版胴111Yに供給する複数のローラである。
【0053】
次に、本実施形態においてカラーマッチングを行う対象の評価媒体である印刷物について説明する。
図2は、カラーマッチング対象となる媒体である刷り出し印刷物の一例を示す図である。本実施形態において、例えば、刷り出し印刷物は、インキ供給量を独立して調整可能な領域(インキつぼ領域)Z1〜Z13を有する。これらの各インキつぼ領域Z1〜Z13では、CMYK及び特色の各色毎に、インキの供給量を任意に増減可能となっている。
【0054】
刷り出し印刷物は、例えば裁ち落とし線Lの内側に印刷されたイメージI1〜I4及びカラーチャートC1〜C5を有する。イメージI1〜I4は、例えば写真やイラストレーション等であって、ベタ部の他、中間調部や色が連続的に変化するグラデーション部等を含む画像を有する。また、刷り出し印刷物は、裁ち落とし線Lの外部に印刷されたカラーチャートの一種であるコントロールストリップS1を有する。
【0055】
コントロールストリップS1には、上述した各インキつぼ領域Z1〜Z13毎のCMYK各色のベタ部と、例えば25%、50%、75%等の網点からなる中間調部とが印刷されている。本実施形態においては、上述した構成を有する刷り出し印刷物を、実質的に同様の構成を有する基準媒体である校正刷りの色に近付くようカラーマッチング(色補正)を行う。コントロールストリップS1がベタのみでなく例えば50%、25%などの中間調色を含むことによって、インキの温度、水分、ドットゲインなどの相関関係を加味することができ、より良好な色再現が可能となる。
【0056】
図3は、本発明の一実施形態に係る色処理装置の内部構成を示す模式的ブロック図である。
図3に示すように、色処理装置1は、カメラ2、入力手段2a、評価用光源3、画像処理手段4、領域設定手段5、L*a*b*値算出手段6、ΔE算出手段7、平均ΔE算出手段8、CMYK補正量算出手段9、画像シミュレーション手段10、画像表示手段(キャリブレーション済みの広色域モニタ)11等を備えて構成されている。
【0057】
カメラ2は、校正刷り及び試し刷り印刷物の全体を順次撮像して基準媒体の画像を含む基準データ及び評価媒体の画像を含む評価対象データとして入力する入力手段であって、例えばXYZ表色系及びL*a*b*表色系での出力が可能な広色域の画像入力機器である。L*a*b*表色系では、L*で明度を表し、色相と彩度を示す色度をa*とb*とで表す。
【0058】
また、a*とb*は色の方向を示し、+a*は赤、−a*は緑、+b*は黄、−b*は青のそれぞれの方向を示している。L*a*b*表色系では、これら各パラメータの数値が大きくなるに従って、色が鮮やかになる。ここで、広色域とは、sRGB(standard_RGB)よりも広い色域のことをいう。具体的には、眼の色域やAdobe_RGB(登録商標)やNTSC(全米テレビジョン放送方式標準化委員会)などの色空間における色域を指す。
【0059】
カメラ2は、CIE(国際照明委員会)によるxyzで定義された色の視覚領域を有する。また、印刷物は印刷直後のウェット状態と、インキが乾燥した後のドライ状態では、インキの表面をマクロ的に見た場合の形状が異なることから、色が異なって見える場合があるが、カメラ2にはこの影響を抑制するため、PL(偏光)フィルタが装着可能となっている。
【0060】
また、このような処理を、PLフィルタと実質的に同様の効果を有する画像処理によって行ってもよい。また、このようなカメラ2に代えて、RGB又はCIEXYZ等価或いは分光方式の色センサ素子、フィルタ或いは光源によるラインセンサ型のスキャナ等を用いてもよい。色センサ素子は、可視領域だけではなく、赤外、紫外、電波、X線波長領域もセンシング可能にしても良い。なお、入力手段2aは、上記スキャナのような画像入力機器や、例えばネットワークを介して伝送されたデータを入力可能な入力インタフェースにより構成される。
【0061】
本実施形態においては、画像におけるドットは、画像を構成する最小単位を指し、単なる物理的な点情報である。また、画像における1画素(ピクセル)は、画像を構成する最小単位として一般的にはドットと同義語として使用されるが、ここでは、コンピュータで画像を扱うときの色情報(色調や階調)を持つ最小単位又は最小要素のことをいう。従って、単色の場合は1ドットが1画素で、カラーの場合はRGBで1画素、CMYKで1画素又はXYZで1画素、L*a*b*で1画素となる。
【0062】
また、画像における画素群は、例えば人が視覚的に認識できる最小単位の範囲に設定される。画素群は、画素のサイズにより変化する。画素群は、印刷物の場合は一般的に1mm〜3mm角程度の範囲をいうが、そのサイズや形状を特定するものではない。画素群の形状としては、例えば画像の絵柄が細かなパターンで構成されている場合、円形の形状範囲の画素群を読み取ることで、様々な絵柄の形状であっても円形の形状範囲内の画素群であれば測色箇所を容易に配置し、画素群の形状範囲の周辺の色の影響を受けることが少ない。
【0063】
一方、画素群の形状を星形とした場合は、各頂点を有する三角形部分の長さと面積によるが、画素群の星形の形状範囲の周囲の色も読み取るため、周囲の色を考慮した測色が可能となる。なお、基準媒体及び評価媒体には、校正刷り及び試し刷り印刷物の他に、各種の素材や色材、色光、発光体で形成された平面物又は僅かな凹凸のある紙、布、金属、樹脂、液体の色彩面、或いは液晶やレーザ等のカラーディスプレイを含めた発光物体、或いは壺・皿など様々な素材で作られた立体物に描かれた絵柄・写真・文字・絵画等の画像を有する製品等の物体も含む。
【0064】
ここでカメラ2による測色単位は、画素単位又は複数画素からなる画素群単位である。測色により得られる色情報は、この例では、L*a*b*値であるが、分光波形(分光値)、分光画像、RGB値、CMYK値、XYZ値、濃度値、マンセル表示値、反射透過率、赤外波長、紫外波長又はX線波長等であっても良い。
【0065】
評価用光源3は、例えばカメラ2による撮像時に、校正刷り及び試し刷り印刷物を照射するものである。評価用光源3として、例えばD50(5000K)やD65の色温度を有する高演色の蛍光管等の照明を用いることができる。また、印刷物がある特定の照明環境下で展示されることが判明している場合には、その照明環境を再現したものを評価用光源3として用いることができる。
【0066】
評価用光源3による照射方法は、印刷物などの被測定対象物に対して光の入射角が45°でカメラ2等の画像入力機器に直接評価用光源3が影響しないものや、積分球放射型を基準とする。なお、透過媒体の測定においては、全暗黒環境での透過画像や、透過媒体の外光の影響などがある実用環境での外光を含めた透過画像での測定に合わせた方法も含む。従って、評価用光源3は、被測定対象物の表面形状や媒体構造上の形状により、光の反射・透過に合わせた照明角度あるいは拡散光を照射するものとする。
【0067】
一般的には、平滑面の素材には、カメラ2など画像入力機器から45°で、表面が乱反射する場合は、ドーム型と呼ばれる全面拡散光を使用し、同一基準で測色することが望ましい。評価用光源3或いは波長は、例えば分光、RGB、X線、赤外線、紫外線、α線、γ線などを用いることができる。なお、評価用光源3は、画像表示手段11に設けられた表示画面用のバックライトやその他の発光体であってもよい。
【0068】
図4は、上述した蛍光管の分光分布特性の実測値の一例を示すグラフである。従来の分光光度計は、測色値を一定にするため、照明光を色温度5000K(印刷物の色評価用光源の世界規格D50)による測色値を算出している。従って、測色器による測定値の差が最小限に抑えられており、色比較の基準となっている。
【0069】
しかし、実際に分光光度計を使って印刷物と色校正用プルーファーによる校了紙(顧客からの校正終了の了解を得た校正紙)とを合わせてみたときに、見た目と大きく色が違う結果が生じる場合がある。分光光度計は測色値を一定にするため、照明光を色温度5000Kによる測色値を算出しているが、実際の印刷物の色評価では、照明光の演色性(可視光域である400nm〜700nmの光量に欠けた波長光の無い照明光の均一性を意味する)がどんなに良い蛍光灯でも、
図4に示すように、多少は特定の波長にピークがあり、照明の違いで同じ結果は得られない。
【0070】
従って、演色性がよく、見た目は白い光に見える照明でも、色情報(L*a*b*)の測定値が分光光度計と大きく変化することになる。これまで分光光度計の測定値と目で見た結果は等しいとされてきたが、実際は照明の違いにより異なることがL*a*b*値を測色できるXYZフィルタを使用した入力システムによるテストで証明された。
【0071】
この結果を基に、本実施形態のように照明光として通常の印刷用標準光源を用いたことで、視覚による色感度にマッチングした測色器とすることが可能となった。なお、評価用光源3は、印刷物がある特定の照明環境下で見られることがわかっている場合には、当該照明環境を再現した光源を用いることによって良好なカラーマッチングを行うことができる。
【0072】
画像処理手段4は、カメラ2や入力手段2aが入力した画像データを処理するものである。具体的には、画像処理手段4は、入力した基準媒体及び評価媒体の画像を含む基準データ及び評価対象データの各画像データに基づき、両画像が画素レベルで対応するように、両画像の共通座標軸上での位置合わせ、及び相対的サイズ差、並びに相対的歪みの除去等の調整をする画像重合処理を行う。
このように、基準媒体と評価媒体とをそれぞれ面で測色し、得られた基準データ及び評価対象データを画像重合処理して、対応する画素又は画素群同士を比較して一定範囲の平均的な色差を算出することを、ここでは「面測色」と呼ぶ。
【0073】
なお、基準データには、基準媒体の画像の他に、色材ベタ部を含むコントロールストリップの画像や、これらの画像及び色材ベタ部の色材毎の色の濃度又は面積率(網点%)に関する基準媒体色材情報が含まれていてもよい。また、評価対象データは、上記のようなコントロールストリップの画像を含んでいてもよい。
【0074】
領域設定手段5は、例えばカメラ2が撮像した画像データの一部又は全部に、例えば測色又は測定を行う特定領域やこれを複数含む注目領域を任意に設定するものである。特定領域は、例えば複数画素からなる画素群を複数含む領域を指し、注目領域は、特定領域を複数含む領域を指す。注目領域は、例えば印刷物のなかで特に高精度な色再現が求められる部分に設定され、形状や大きさはオペレータがタッチパネルやマウスなどのポインティングデバイスを用いて任意に設定可能となっている。また、複数の注目領域を設定することも可能である。
【0075】
本実施形態においては、例えば、
図2におけるイメージI4の全体を注目領域として設定したものとして以下説明する。画像処理手段4は、校正刷り及び刷り出し印刷物をそれぞれ撮像したデジタル画像から領域設定手段5により設定された注目領域I4に係るデータを抽出し、更に例えば注目領域I4内を細分割し、マトリクス化された各領域又は何れかの領域を特定領域とする。また、色を比較評価する場合の最小限の単位は、1画素ではなく、例えば16〜400画素(4×4画素〜20×20画素)程度からなる1つの画素群である。
【0076】
図5は、このような処理単位を示す模式図である。このように、更に注目領域I4内をマトリックス枠A3で示すように細分割する。そして、細分割した全てのマトリクス枠A3又は一部のマトリクス枠A3を特定領域A2として面測色の評価範囲とする。これにより、注目領域I4を更に小さな領域にして評価すべき特定領域A2を特定する作業が簡便になる。この特定領域A2には、1又は複数の画素群が含まれる。また画素群単位で色の評価を行うことで、測定点個々の比較ポイントのずれの影響や、階調または模様による測定値の変動を防ぐことができる。
【0077】
測色単位のサイズを可変とすれば、例えばカラーパッチを測定する場合に測色単位の面積を小さくすることで、測定点の多少のずれにより周辺の色を読み取る影響を少なくすることができる。更に、注目領域I4内の細分割や各画素群のサイズ、評価面積を基準媒体及び評価媒体の画像で同等とすることによって、印刷画像に対する人の差異を感じる官能評価と同等な評価が行える。そのため、画素群のサイズは、人間の肉眼によって色の違いが認識可能な最小サイズにすると良い。
【0078】
マトリックス枠A3は、絵柄やベタ面、平網画像或いは図表及び文字も含んだ画像、絵柄画像の任意の領域の色差を自在に判別するために四角や丸などの一定形の分割枠で構成される。例えば、オフセット印刷物では、印刷インキつぼ単位や写真単位、或いは例えば3mm程度のマトリックス枠A3を設けることにより、分割されたマトリックス枠A3の範囲内毎の色差を表示したり、一覧で表示して数値により確認したりできる。これを基に、評価媒体の画像を基準媒体の画像に近付ける色調整を行うことができる。
【0079】
L*a*b*値演算手段6は、注目領域I4内のマトリックス枠A3の範囲内における一画素毎又は画素群毎に測色された色情報であるL*a*b*値を、測色単位よりも大きい画素群について平均化することにより、画素群内平均色情報(/L*a*b*値)を算出する。このように、ここでは色情報を測色単位よりも広い画素群内で平均化することにより、ノイズの影響も排除している。
【0080】
ΔE算出手段7は、画像重合された校正刷りと刷り出し印刷物の各画像の特定領域における画素群内平均色情報/L*a*b*値を、画素群毎に比較し、画素群毎の色差(画素群色差)ΔEを算出する。
なお、画素群内の平均L*a*b*値は、これを構成する画素n個の各L*、a*、b*値を集計し、各々n個で割ったものをいい、画素群色差を求める基となる。
【0081】
具体的には、一般的な画素色差ΔEは、基準媒体の画像と評価媒体の画像とを画像重合し、同一絵柄部分(例えば同一特定領域内や同一マトリックス枠A3内)の画素毎の基準L*a*b*値から評価L*a*b*値を減じたものを指し、次式(1)のように表される。
【0082】
[数1]
ΔE=√(L1−L2)
2+(a1−a2)
2+(b1−b2)
2・・・(1)
【0083】
一方、面測色における画素群色差ΔEは、具体的には、基準媒体の画像(基準画像)と評価媒体の画像(評価画像)とを画像重合し、同一絵柄部分の基準データと評価データが対応する画素群内の全画素のL*a*b*値を集計し平均化した基準L*a*b*値から同様に算出した評価L*a*b*値を減じたものを指し、次式(2)のように表される。
【0084】
[数2]
画素群色差ΔE=√{(L1m1+L1m2+,・・・,L1mn)/n}−{(L2m1+L2m2+,・・・,L2mn)/n}]
2+{(a1m1+a1m2+,・・・,a1n)/n}−{(a2m1+a2m2+,・・・,a2mn)/n}
2+{(b1m1+b1m2+,・・・,b1n)/n}−{(b2m1+b2m2+,・・・,b2mn)/n}
2・・・(2)
【0085】
平均ΔE算出手段8は、ΔE算出手段7が算出した画素群色差ΔEを、調整対象となるインキつぼ(インキつぼ領域Z1〜Z13)に対応する範囲内の特定領域や注目領域I4全体にわたって平均化した画素群色差平均値の色差データを算出する。この色差データは、各画像を比較評価した評価結果として種々に利用される。なお、画素群色差ΔEの平均値に代えて、各画素毎の色差の平均値を求めるようにしても良い。
【0086】
また、平均ΔE算出手段8は、画素色差ΔE又は画素群色差ΔEに基づいて、特定領域やマトリックス枠A3毎の画素又は画素群全ての色差平均値同士の比較値である画素色差平均又は画素群色差平均を算出し、注目領域I4全体の色差データを算出する。
一方、一般的な画素色差平均値は、例えば総画素数n個のマトリックス枠A3の範囲内の画素色差ΔEをn個分集計し、総画素数nで除したものを指し、次式(3)のように表される。
【0087】
[数3]
ΔE=(画素ΔE1+画素ΔE2+,・・・,画素ΔEn)/n・・・(3)
【0088】
面測色における画素群色差平均値は、具体的には、総画素群数n個のマトリックス枠A3の範囲内の画素群色差ΔEをn個分集計し、総画素群数nで除したものを指し、次式(4)のように表される。
【0089】
[数4]
ΔE=(画素群ΔE1+画素群ΔE2+,・・・,画素群ΔEn)/n・・・(4)
【0090】
なお、このような特定領域や注目領域I4における色差データは、比較評価の評価結果として、
図6に示すように、例えば画像表示手段11の図示しない表示画面上(モニタ画面上)に、色、文字及び数値の少なくとも一つにより表示するようにしてもよい。
図6においては、一例として、注目領域I4の各画像がマトリックス枠A3と共に色分けされて重合表示される画像表示欄20と、この画像表示欄20に表示された各マトリックス枠A3における色差値や色情報を、色、文字、数値で表示するデータ表示欄21とが表示画面上に表示されている。
【0091】
画像表示欄20の各マトリックス枠A3は、色差値の程度の違いにより枠毎に淵部が色分けされて表示される。また、データ表示欄21の色情報数値表示枠22内も、この色分けに合わせて色分けして表示される。なお、色差ΔEをより把握し易くするために、対応する画像表示欄20のマトリックス枠A3とデータ表示欄21の色差値とを、矢印線23等により結んで表示するようにしてもよい。
【0092】
面測色により得られた測色結果を比較評価した評価結果を、画像表示手段11の表示画面上にこのように表示すれば、目視で直ぐにその内容を判断できるようになる。その他、面測色による測色結果を用いれば、測色値や色差値を表示画面上に、例えば図示しない吹き出し枠状に表示して評価結果を表示させることが可能である。
【0093】
また、校正刷りの撮像画像と刷り出し印刷物の撮像画像とを並べて表示したり、交互に表示したりしながら、画像と重畳して数値等或いはシンボルの色分け等によって評価結果を表示することも可能である。更に、評価結果に基づいて、
図6に示すデータ表示欄21のように、測定した色差値や色情報をリスト表示したものと各マトリックス枠A3とを関連付けておけば、任意のマトリックス枠A3をマウス等でクリック選択した場合に色情報数値表示枠22内の数値や色を連動して変化させることも可能である。
【0094】
このように、測色値や色差値の大小関係を一覧表示可能とし、青・緑・黄・橙・赤色などの色分けを行えば、容易に色差の確認をすることができ、面測色による測色結果に基づく評価結果によって、画像の分析結果の良否の判断を簡易に且つ瞬時に行うことができるようになる。なお、測色値や色差値は、基準画像と評価画像の各画素の色差平均(又は各画素の測定値の平均)値、平均色差(又は各画素全ての平均値同士の比較)値、或いは色差平均と平均色差とを併用した数値等で表示することができる。
【0095】
CMYK補正量算出手段9は、平均ΔE算出手段8の算出値に基づいて、例えば刷り出し印刷物の色を校正刷りの印刷物の色に近付けるように、評価媒体色材であるCMYK各色のインキ供給量補正量を算出する。このインキ供給量補正量の算出方法については後に詳しく説明する。
【0096】
また、平均ΔE算出手段8の算出値に基づいて、評価画像の特定領域や注目領域I4の色を基準画像の特定領域や注目領域I4の色に近付ける第1のインキ供給量補正量を評価媒体色材の色毎に算出する。これと共に、平均ΔE算出手段8は、従来と同様にコントロールストリップS1の点測色結果や面測色結果に基づいて、評価媒体のコントロールストリップの色を基準媒体のコントロールストリップの色に近付ける第2のインキ供給量補正量を評価媒体色材の色毎に算出する。
【0097】
なお、平均ΔE算出手段8は、算出した第1,第2のインキ供給量補正量に、任意に設定される重み付け係数を用いた重み付けを行って、評価媒体色材のインキ供給量を補正する最終的なインキ供給量補正量を評価媒体色材の色毎に算出する構成としてもよい。
【0098】
このように、特定領域の面測色に基づく第1のインキ供給量補正量とコントロールストリップの点又は面測色に基づく第2のインキ供給量補正量とに重み付けを行って、第3のインキ供給量補正量を算出することによって、より高精度な色再現を行うことができる。また、コントロールストリップを面測色や点測色でそれぞれ測色し、色校正を行うことによって、より精度よく測色を行うことができる。ここで、点測色手段としては、例えば、スポット測色を行う分光光度計や濃度計を用いることができる。
【0099】
この場合、第1,第2のインキ供給量補正量が所定のしきい値以上乖離した場合には、そのまま補正を行うと、例えば色が淡くなってしまうゴースト現象などの弊害が生ずることが懸念されるため、CMYK補正量算出手段9は、警告報知手段として機能し、例えば画像表示手段11の表示画面上にその旨を警告する文字や画像等の警告情報を表示出力することが可能な構成とすることができる。このようにすれば、第1及び第2のインキ供給量補正量が乖離した場合に、いずれか一方のインキ供給量補正量を重視して補正を行った結果、補正を行わない領域との色の違いが大きくなるなどの弊害を予防することができる。
【0100】
印刷機100による印刷においては、インキ等の色管理を十分行っていても、印刷物のベタ(網点100%)或いはベタに近い平網等ではインキを沢山使ってしまう。従って、その(印刷胴の円周上の)刷り方向のすぐ後方部分に印刷される絵柄には、インキ供給量が少なくなり、上記ゴースト現象といわれる刷りムラが生じる場合がある。また、刷り方向に色の濃さ変化が起こる印刷面のムラ等の不良もあり、このムラに対してはコントロールストリップによる色管理では、確認や色合わせができないこととなる。
【0101】
上記のように、面測色により直接画像の絵柄面を測色し、例えば基準画像と評価画像の絵柄の色再現の微細な違いを高い精度で検出し、より人間の眼の感覚に近い状態で色差などの評価結果を数値化すると共に、インキ供給量補正量を算出することで、次のような色管理が可能となる。
【0102】
すなわち、補正すべき色をCIELABカラースペースの中で判り易く、色の補正方向をベクトル表示することで、各色インキ補正量としてナビゲートすることが可能となる。本実施形態における面測色による測色結果や評価結果は、印刷機100のインキつぼの各インキキーのコントロールによる色補正に利用するだけでなく、絵柄の中の色をL*a*b*値や色差ΔE(又はCIEDE2000*)などを用いて色評価することにも利用できる。
【0103】
これにより、ゴースト現象の起こっている部分であっても基準画像(校了紙を広色域画像入力装置で入力したL*a*b*画像、PPF画像やRIP後のTIFF画像等のCMYKデータの場合はICCプロファイルを用いてL*a*b*値に変換した画像データ)と検査画像(印刷物又はプリント等を広色域画像入力装置で入力したL*a*b*画像データ)の重要な箇所の色を、面測色方式で絵柄の位置重合を行った後に測定し、算出した色差を分析することで、印刷物の色再現のズレが許容範囲であるかどうかを瞬時に判断することが可能となる。従って、面測色による測色結果や評価結果は、従来の印刷機を始め各種プリンタの色再現の数値による色評価と色管理、出力コントロール等に利用することが可能である。
【0104】
また、印刷面のゴースト現象や印刷機の面ムラ等で特定部分の絵柄の色(濃度)が著しく変化している場合、その部分の絵柄の色合わせを行うためにインキキーで色コントロールを行うと、そのインキキーの範囲内の他の絵柄にも影響を与えるため、色調整が難しい場合がある。
【0105】
そこで、デザイン工程或いはプリプレス工程に戻って部分的にCMYK画像データの色修正を行うことが考えられるが、これまでに印刷面の色ムラを測定することができなかったため、こうしたプリプレス工程への測色結果や評価結果のフィードバックは不可能であった。本発明に係る色処理方法によれば、面測色によりゴースト現象や印刷機の印圧ムラ等による面ムラが起こっている箇所のデータが得られるため、プリプレス工程或いはデザイン工程にこのデータを戻して、例えばCMYK%で修正することで、ゴースト現象や面ムラに対して正確な色修正(補正)を行うことが可能となる。
【0106】
なお、CMYK補正量算出手段9が算出したインキ供給量補正量に基づいて、印刷機100の各インキつぼのインキ供給量を調整することによって、刷り出し印刷物の色を校正刷りに近付けることができるが、この場合、試し刷りのための紙やインキが補正結果の確認のためにその都度消費されることになる。
【0107】
そこで、本実施形態においては、色処理装置1が、インキ供給量補正量を適用した場合の印刷結果を、画像表示手段11の表示画面上でシミュレーション可能な画像シミュレーション機能を備えている。画像シミュレーション手段10は、CMYK画像であるCIP4_PPFファイルを用いて、このような画像シミュレーションを行うものである。
【0108】
図7は、CIP4_PPFデータから印刷物の色再現のシミュレーション手法の概要を示す図である。プリプレス工程において、RIPで刷版データを作成する際、同様にCIP4_PPFファイルが作成される(ステップS100)。このCIP4_PPFファイルは、印刷機100のインキつぼからのインキ供給量を画像に合わせてプリセットするためのデータとして用いられる。
【0109】
このため、このCIP4_PPFファイルには、50dpi程度の粗い解像度ではあるが、刷版データと同じCMYKに分版された画像データが含まれている。CIP4_PPFファイルは、例えば画像及びコントロールストリップの各部位におけるCMYK各色の網点%(面積率)に関する情報が含まれる基準データの一つである。
【0110】
本実施形態では、このCMYK画像データを印刷機100のインキつぼ単位に分割し、測色した印刷物のコントロールストリップS1の測色値(L*a*b*値)を基に、仕上がりイメージをシミュレーションして画像表示手段11の表示画面上に表示する。更に、インキつぼのインキ供給量を追加修正した場合の画像の色再現をシミュレーション表示する。ここで、RIPとは、ラスタイメージプロセッサの略であり、校了ページのデータを印刷用の網点データに変換処理を行うエンジンで、プレートレコーダで刷版出力する際に用いられる。
【0111】
以下、工程の順を追って説明する。
<ガンマ補正によるインキつぼ単位の色再現>
試し刷りした印刷物のコントロールストリップS1の各CMYKベタパッチを測色(L*a*b*)し、その結果に応じて各インキつぼの画像をガンマ補正する(ステップS102)ことで、印刷物全体の色再現への影響をシミュレーションすることが可能となる。特にコントロールストリップS1の測色値が基準内であっても、画像の特定領域や注目領域の色が合わない場合、色補正による周囲の画像の色への影響を擬似的に確認することができる。
【0112】
コントロールストリップS1の基準値(目標値)とのずれの度合いが限度範囲内かどうかを警告レポートの数値(ベタと中間調)を確認の上、修正の行き過ぎを目視で未然に防ぐことができる。インキ量とガンマの関係は、実際の印刷データに基づき算出する。その際、測色器で印刷物のコントロールストリップS1の各色をL*a*b*値で測色し、違いがあればガンマ補正量計算を行う「CMYKガンマ補正モジュール」にフィードバックし、ガンマ補正フィルタを修正する。この修正計算は、ガンマ補正量の予測値と印刷物の測色値を毎回フィードバックする(ステップS104)ことで、学習機能により統計的に各インキに対する最適なガンマ補正量を導き出すことが可能となる。
【0113】
<ドットゲインのシミュレーション>
印刷機100のドットゲインは、インキや紙及び印刷機100の特性によっても異なり、色再現も異なることとなる。そこで、CMYKデータからRGBに変換する際、CMYKデータに予め印刷時に起こるドットゲイン(刷版の網点より大きく太ることをいう)の変化を加えることで、印刷再現のシミュレーション(ステップS106)をより高精度に行うことができる。
【0114】
標準ドットゲインは、決められた印刷条件(用紙、インキの種類、各CMYKの基準濃度、印刷機、温度、湿度など)でドットゲイン測定チャート(網点0〜100%)を印刷して測定することで以下の
図8のような結果が得られる。
【0115】
図8は、印刷におけるドットゲインの一例を示すグラフである。また、インキ濃度の変化によるドットゲインの変化は、以下の計算式でシミュレーションを行い、簡易的に使用することが可能である。なお、「Factor」は、学習機能として実際の結果からフィードバックされる値である。
「標準ドットゲイン値」×(1+測定値÷基準値×Factor)=ドットゲイン
【0116】
図9は、シアンのインキ量の変化に対するドットゲインシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図9は、インキ量を10%増やした場合のドットゲインの変化と、ガンマ特性の変化を加算して、印刷物の色再現をドットゲインに換算してシミュレーションしたものである。なお、実際の網点が100%を超えることはないが、色の変化をグラフ化したものである。
【0117】
但し、印刷機100の色(濃度)のコントロール範囲を考慮して、最大濃度値(0〜255の256階調の場合における255ステップ目)を基準濃度の120%相当(実用上印刷できる最大インキ被膜の厚さ)が再現できるように設定する。これにより、基準より高い濃度で印刷した色のシミュレーションが可能となる。
【0118】
実際の色再現と異なるため、最終的にICCプロファイルでインキの色をL*a*b*値で表すことは可能であるが、ICCプロファイル作成時と異なるインキ濃度で印刷した場合は、テーブルの持つ色に対応しないため、正しい色は再現できないことになる。従って、コントラストのシミュレーション同様、ドットゲインのシミュレーションも色を予測するという点では有効といえる。
【0119】
そこで、印刷結果が予測したドットゲインと異なる場合は、その違いをフィードバックすることで、次に印刷するときにより精度よくドットゲイン量を予測することが可能となる。また、基準濃度を超える再現があっても、100%に制限し、100%未満の色の階調を再現することができるよう画像の色再現を重視する選択肢を用意する。
【0120】
図10は、画像の色再現を重視した100%以上の制限表示を示すグラフである。
図11は、各種媒体のカラースペースの比較ガモットマッピングを示す図である。色を確認したい画像の色によって、ガンマ、ドットゲインの要素を加えることによって、印刷の色再現をより実際の色再現に近付けることが可能である。
【0121】
しかし、印刷物のインキ濃度を高めた場合、カラーモニタでは再現できない色があり、
図11にあるようなモニタで再現できない点線のカラースペースの圧縮を行うガモットマッピング処理が必要である。
【0122】
図10に示すリミッタ機能と異なるのは、カラースペースを越える最も鮮やかな色を再現可能なカラースペースの周辺に圧縮するだけでなく、次に鮮やかな色を多少違いが表現できるようにすることである。また、ガンマ補正と異なるのは、均等にカラースペースを圧縮しないで、等高線のしわを寄せるようにしてカラースペースの内側に元々ある色があまり変わらないようにすることである。ガモットマッピングは、自由の有無の選択ができるため、画像に合わせた色管理が可能となる。
【0123】
C、M、Y、Kに分かれた分版データは、1画素がCMYKのデータを持つコンポジットデータに変換する(ステップS108)ことで、RGB画像に容易に変換することができる。しかし、インキの色はCMYK別に分かれてコントロールされるため、コンポジットデータへの変換は、全ての修正が済んだ最終段階で行うことになる。
【0124】
C、M、Y、Kそれぞれの分版データは、個別にデータ0〜100%(255階調)の値を持っており、RGB(255階調)への変換は以下の通り、一般的な計算式で変換できる。これによって、画像表示手段11の表示画面上に変換されたイメージを表示させることが可能である。
R=1−min(1,C×(1−K)+K)
G=1−min(1,M×(1−K)+K)
B=1−min(1,Y×(1−K)+K)
【0125】
更に印刷の色再現を正確にするためには、CMYKデータからRGBに変換する際に、実際の印刷物から作成した印刷用ICCプロファイルを用いることで、モニタに正しい色を再現することが可能となる。但し、この場合モニタもICCプロファイルによりキャリブレートされたものが必要となる。
【0126】
この方法を用いる場合は、ISO_IT.8.7カラーチャートを用い、インキ濃度を何段階か変えて印刷し、測色値からICCプロファイルを作ることでシミュレーション可能である。
【0127】
また、ICCプロファイルによる色変換テーブルの間を細かく補完して複数のICCプロファイルを作成することで、細かなインキ濃度の変更に伴う色の変化をより微細に実色に近いシミュレーションが可能となる。ICCプロファイルは、モニタ用、印刷用、プルーフ用と複数備えることができる。しかし、ICCプロファイルを作成する作業は大変な労力となる。
【0128】
このため、インキ(CMYK)の各種ベタ濃度とL*a*b*との関係をデータ化して変換する(ステップS110)ことで、基準濃度値のインキの色(L*a*b*)をRGBに変換する(ステップS112)モニタ用ICCプロファイルのテーブル(基準色テーブル)を用いれば、上述した方法で印刷再現をシミュレーション可能である。これにより、実測値からのフィードバックによる学習機能で、シミュレーション精度を高めていくことが可能である。
【0129】
シミュレーション結果は、画像表示手段11の表示画面上に表示される(ステップS114)。この画像表示手段11は、例えば、印刷機100の近くに置かれた色見台付き印刷機制御装置の横に設けられ、オペレータが校了紙や印刷物の色を見ながらインキ供給量の補正後のイメージを比較することができる。また、オペレータは色見台付き印刷機制御装置から印刷機100の各インキのインキつぼのインキ供給量を調整可能となっている。
【0130】
以下、本実施形態におけるカラーナビゲーション(カラーマッチング)のワークフローを
図12を参照して説明する。本実施形態においては、各インキつぼがカバーする印刷エリア(
図2の一点鎖線の範囲A1が1つのインキつぼが管理する調整範囲)、或いは絵柄の特定領域(
図2の太線枠範囲A2)を、上述したようにL*a*b*値で面測色する。これによって、校正刷りの画像である基準画像と刷り出し印刷物の画像である評価画像(検査画像)の違いを、色差ΔE等の評価結果で正確に表現できるので、評価画像の修正すべき量を知ることが可能である。
【0131】
また、修正すべき色の方向は、各インキつぼのカバーする印刷エリアの基準画像と検査画像の画素或いは画素群同士をL*a*b*値で比較することで、色差平均を算出することで確認できる。本実施形態の特長は、コントロールストリップS1を使わない場合であっても、同じように各インキつぼがカバーする印刷エリア一つ一つの色調整が可能なことである。
【0132】
更に、各インキつぼがカバーする印刷エリアの中に特定領域A2(コントロールストリップを使わない場合には、各インキつぼエリアに必ず1箇所以上設定する必要)がある場合は、絵柄の中の特定領域A2や注目領域I4を部分面測色することによって、それらの色のマッチングを重視した色補正を行うことができる。ここでは、注目領域I4の色補正を行うこととする。
【0133】
以下、ワークフローを順を追って説明する。なお、
図12における括弧内の数字は、以下説明する同じ数字を付されたステップに対応する。まず初めに、(1)日本の印刷色標準であるJapan_Color、各印刷会社の標準印刷条件(インキ種類、用紙種類、各色インキの基準濃度など)、その他の公的機関による印刷色標準による標準のインキ量と+20%(印刷可能な最大のインキ膜厚)のインキ量で印刷したカラーチャートの測定結果(L*a*b*値)から得られたデータテーブルを予め作成しておく。
【0134】
そして、(2)このデータテーブルを用いることにより、標準の印刷濃度が基準値から外れた高い濃度で印刷された場合にも、特定の色をカラーチャートから見つけ出すことができるため、インキ供給量の補正値が求められる。
【0135】
次に、(3)基準画像と検査画像の測色(L*a*b*値)を行う。(4)基準画像と検査画像の色差ΔEを確認し、予め設定されたしきい値よりも色差ΔEが大きい場合、補正値の分析が必要となる。一方、(5)Japan_Colorなど標準印刷カラーを基準にする場合、CIP4_PPFファイルの各CMYK画像から各インキつぼがカバーする印刷エリアの絵柄面積率(%)を算出する。
【0136】
(6)これを上述したデータテーブルから、カラーチャート上の同じCMYK網点面積率の色(L*a*b*値)を見出し、基準の色とする。(7)検査の前には、目標の色を、「標準印刷の色」を基準にするか、「検査画像の色」にするかを選択する。また、(8)基準データと検査データの色(L*a*b*値)を比較する場合、データテーブルの中から抽出する際に、墨(K)インキのファクターを固定することで、CMY各色の網点面積率を容易に見出すことができる。
【0137】
(9)墨インキ網点面積率は、CIP4_PPFファイルの画像データの同じ箇所から導き出すことが可能である。次に、(10)基準データと検査データの網点面積率の差を求めることで、各色のインキ供給量に対する補正値(%)で表すことができる。もし、(11)検査データの色がデータテーブルのカラーチャートの中から見つからない場合は、±20%のインキ供給量で印刷したカラーチャートを測色して作成したデータテーブルを用いれば、その中から最も近い色を探し出すことが可能である。
【0138】
(12)1インキつぼ内に複数の測色箇所を有する場合は、色補正量を平均化又は重みを付けて、トータルな色補正値を算出することによって、注目領域の色を重視した色合わせが可能となる。(13)注目領域が複数ある場合は、各注目領域の補正値が乖離している場合は、上述したような警告を出し確認を促す。
【0139】
以上説明したように、カラーチャート等の標準印刷物又は基準画像と検査画像の印刷物の同色の箇所を比較して、データテーブルのカラーパッチの中からそれぞれの等しい色(L*a*b*)を探し、以下の計算で網点による補正値を求めることができる。これをインキ供給量の補正値にするためには、例えば、以下の計算式を用いることが可能である。
検査画像色(CMYK網点%)−目標色(CMYK網点%)=補正値(CMYK網点%)
補正値(CMYK網点%)÷目標色(CMYK網点%)=現在のインキ供給量に対する補正値(%)
【0140】
また、上述した計算式を用いた計算例について下記する。
(計算例)
(C:45%,M:45%,Y:45%,K:10%)−(C:35%,M:40%,Y:55%,K:10%)=(C:10%,M:5%,Y:−10%,K:0%)
(C:10%,M:5%,Y:−10%,K:0%)÷(C:35%,M:40%,Y:55%,K:10%)=(C:28%,M:13%,Y:−18%,K:0%)
【0141】
本実施形態においては、上述した計算式によって得られた補正値を適用した場合のシミュレーション画像及び基準となる画像を画像表示手段11によりの表示画面上に交互に、或いは並べて表示し、例えば色見台上でオペレータが確認することが可能である。その後、オペレータが補正結果に問題ないと判断した場合には、色見台から各インキつぼの補正値を入力してインキ供給量を調節し、テスト印刷を行う。
【0142】
なお、インキつぼを調整する場合に、当該インキつぼ領域から他のインキつぼ領域にまで跨って配置された絵柄や写真等が存在する場合には、その途中で色調が変化することを防止するため、隣接するインキつぼ領域も同時に同様の補正を行ういわゆるインキつぼ周辺の補正を行う。
【0143】
その後、テスト印刷された印刷物を再度上述した手順により基準となる印刷物と比較し、色差ΔEが所定のしきい値以下に収まった場合には、当該補正量を記憶手段等にデータ保存して本刷りを行う。なお、記憶手段等に保存される基準データ、評価対象データ、刷版データ、元版データ等の各種データは、L*a*b*値を含む測色結果や補正値を含む評価結果と関連付けられて電子データとして保存される。
【0144】
次に、インキ供給量補正量(補正値)を得る他の方法について説明する。
図13は、本実施形態におけるインキ供給量補正量を求める他のフローを示す図である。この方法は、ベタ(網点面積率100%)のカラーパッチの色が基準値を超えた場合に、インキ量を基準の色より増減した時の濃度(又はL*a*b*値)の変化から、インキ量の変化として算出した値を指数として各測定値のインキ量に追加する方法である。
【0145】
印刷用のICCプロファイルは、CMYKインキの特定のベタ(網点面積率が100%)濃度の色を基準としたカラースペースにおけるCMYK網点%の掛け合わせで得られた色とL*a*b*値との関係を表すものである。従ってその逆に、同じ印刷条件であればICCプロファイルを用いることで、測定した絵柄のL*a*b*値からCMYKの各色成分(網点%)に変換することも可能である。もし、印刷濃度が基準値と異なる場合も、基準値より色が増減した分のCMYKのインキ量の差を網点%で比較することで、確認することが可能である。
【0146】
しかし、上記ICCプロファイルを用いる方式では、ベタおよびベタ付近の色をCMYKの網点%に変換しても差分が実際より少なく変換されてしまうため、例えば網点100%を越える色があっても、算出される値は100%を越えることはない。そこで、これらを補正するため、以下の手法を用いることで、ベタ部およびベタ部に近い色部の基準画像と検査画像のインキ量の違いを表すことが可能である。
【0147】
まず、基準データの基準画像からCMYK画像を得る(ステップS200)と共に評価媒体のL*a*b*画像を得て(ステップS201)、面測色によって基準画像と検査画像に対して印刷機100の各CMYKインキつぼのインキ量をコントロールするインキキー(横に20〜30個程度配列されている)の各列の幅に画像分割した範囲を画素群により測色(L*a*b*)する(ステップS202,S203)。
【0148】
次に、基準データの測色結果に基づき、CMYK網点面積率が算出される(ステップS204)と共に、検査画像の測色結果に基づくL*a*b*測色値からICCプロファイルによるCMYK網点面積率への変換が行われる(ステップS205)。これらと並行して、基準データの測色結果はICCプロファイルを参照して(ステップS206)、L*a*b*値に変換される(ステップS208)と共に、検査画像の測色結果からL*a*b*値が得られる(ステップS207)。
【0149】
ステップS204及びS205にて得られた各CMYK網点面積率を集計した基準データ(基準画像)と評価媒体(検査画像)とを比較することで、これらの差分を算出し(ステップS212)、各インキキーに対するCMYKインキの補正量としての評価媒体の色材補正量であるインキ供給量補正量が評価媒体色材の色毎に算出される(ステップS213)。
【0150】
また、ステップS207及びS208のL*a*b*値に基づいて、ベタ部の色が基準値より高くなった場合と低くなった場合の濃度(又はL*a*b*)値の変化とインキ量の変化を表した特性曲線(テーブル)を作成する(ステップS209)。特性曲線のテーブルは、例えばインキ供給量と色情報との関係を表している。そして、作成されたテーブルに基づき、検査画像の測定値に対するベタ部に対する追加インキ補正量を、基準網点%に対する加算ファクターとして算出する(ステップS210)。
【0151】
最後に、この算出された加算ファクター(補正ファクター)を評価媒体の色材補正量に加算する(ステップS214)。なお、ベタ部以外の色に対しては、基準画像と検査画像の測色値(L*a*b*)を以下の式でCMYKのインキ量に変換し、更に元画像であるデジタルデータの網点0%〜100%をそのまま補正ファクターとして掛けることで、インキの少ない部分には追加補正値が掛からないように追加インキ補正量を加えることが可能である。
Yインキの追加インキ補正量=(b1*−b0*)/b0*
Mインキの追加インキ補正量=(a1*−a0*)/a0*
Cインキの追加インキ補正量=√((a1*−a0*)
2+(b1*−b0*)
2)
Kインキの追加インキ補正量=(L1*−L0*)/L0*
「a0*」:Mインキの基準値(ベタ部)−紙白の値
「b0*」:Yインキの基準値(ベタ部)−紙白の値
「L0*」:インキの基準値(ベタ部)−紙白の値
「√(a1*−a0*)
2」:Cインキの基準値(ベタ部)−紙白の値
「L1*」、「a1*」、「b1*」:検査画像の測定値(L*a*b*)
【0152】
このように算出され記憶手段等に保存された補正量等の電子データは、電子倉庫としての機能を利用することにより、適宜再利用が可能である。保存された電子データは、画像データに加えて画素毎にL*a*b*値を付加したものも含まれている。従って、従来印刷物の保管を行い膨大なスペースを必要としていたものが不要となる。
【0153】
更に、従来印刷物の保管状況によって湿度や温度または光の影響を受け、伸縮、色変化、カビなどにより、保存印刷物の劣化が問題となっているが、L*a*b*を付加したデータを用いることにより、これらの問題を解決することができる。また、再印刷時には、この保存された電子データを元データとして、色見本データとし、刷り出し印刷物との色合わせに使用することもできる。
【0154】
従来は、印刷物の注目箇所の色を点測色した値を保存したり、イメージとしてRGB画像を保管したりすることはできたが、従来のRGBカメラ方式では、個々のカメラによって色再現が異なる。また、画像の全ての色域を記録することができないため、色を正しくL*a*b*値に変換することができない。従って、表示画面等のモニタに正確な色を表示することができなかった。撮影時に各種入力デバイスの色キャリブレーションを行うためにICCプロファイル作成用カラーチャートを撮影することで、カラーマッチングを行うことも可能であるが、カラーチャートの色域の範囲のみに限られている。
【0155】
上述したようなXYZ等価や分光方式等の広色域入力機器で面測色したL*a*b*画像を保存する場合は、入力デバイスのICCプロファイルが不要となる。モニタやプリンタなどの出力デバイスが、ICCプロファイル等により色のキャリブレーションが行われていれば、画像を再利用する際に何時でも、何処でも変わらない色再現でモニタやプリンタに出力することができる。これにより長年に亘って正確な色見本を提供することが可能となる。
【0156】
以上説明したように、本実施形態によれば、例えば校正刷り及び刷り出し印刷物の画像内に設定された特定領域或いは注目領域を、例えば実際の評価用光源で照射しながらXYZ出力及び保存が可能な広色域入力機器で面測色する。これにより、特定領域内を画素群単位で測色した画素群内平均色情報を測色結果として算出する。そして、この測色結果に基づき、例えば注目領域内を特定領域やマトリックス枠に細分割した場合の全ての画素群の色(L*a*b*値)を比較した色差平均値を評価結果として算出する。これによって、基準媒体や評価媒体の画像の各部の色の違いを色差値として集積でき、模様や階調のある画像の場合であっても高い色差精度を得ることができる。また、色の良し悪しの判断をより人の肉眼に近い結果が得られるよう、例えば、口紅の色やクルマのボディ、商品パッケージなど特定領域や注目領域の色を面として捉え、重要なポイントと全体のイメージとしての色の比較が行える効果がある。
【0157】
また、人が肉眼で画像の色を判断する場合、1点の色をスポット的に見て比較することはなく、ある程度の面(濃淡を持つため)で色を感じ取り、良否を判断していることからも、本実施形態において説明した面測色は理にかなっている。このような面測色の場合、例えば注目領域を更に細分割し、大きさや形(例えば矩形状で縦横比変更可能)を自由に設定することができ、人の眼と同じように基準画像である校正刷りと検査画像である刷り出し印刷物の色を面で比較することができる。また、面測色の場合、例えば注目領域全ての測定値を積算して測定数で割る「平均色差」による評価も行えるため、測定箇所のわずかなずれに影響を受けず、例えば地紋のような画像には特に有効である。
【0158】
なお、上述した面測色により得られた測色結果や評価結果を用いれば、特定色材としての墨インキ部の画像の分離とインキ量の算出を容易に行うこともできる。例えば、分光フィルタを用いない方式として、元版のデジタル画像データ(PPFファイル、PDFファイル又はTIFF画像)の墨インキの部分を利用し、CIEXYZ等価フィルタによるデジタルカメラやスキャナ等の広色域入力機器で入力された画像から、画素単位毎に墨インキを分離することができる。
【0159】
この場合、具体的には、例えばCIEXYZ等価カメラで入力した「基準画像」と「検査画像」を「印刷データからCMYKと特色を含むPDFファイルやTIFF画像に変換したデータ」又は「CIP4−PPFデータ」を元版のデジタル画像データとして、基準画像及び評価画像の寸法及び絵柄同士の位置の画像重合を予め行っておく必要がある。
【0160】
そして、分離された基準画像と評価画像のK版画像を各インキキー単位の印刷領域に分離し、或いは特定領域等の任意の範囲を画素群単位で面測色を行って色差平均を算出する。すなわち、データ同士のL*a*b*値を比較して、その差分から墨インキ補正量を算出する。
【0161】
そのために、基準インキ量における網点%とL*a*b*値との関係を表すテーブル(ICCプロファイル)の他に、予めインキ量とL*a*b*との関係を表す上記のような特性曲線のテーブルを作成しておくことが必要であるが、これにより検査画像のL*a*b*測定値と基準画像のL*a*b*値との差分からインキ量をより正確に算出することが可能である。また、K版画像を分離して墨インキ補正量を得ることによって、例えば画像におけるグレーの絵柄がどのような色材の組み合わせにより実現されているかを正確に分析することが可能となる。
【0162】
また、上述した面測色により得られた測色結果や評価結果を用いれば、墨インキ部のみならず、特定色材としての特色インキ部の画像の分離とインキ量の算出も容易に行うことが可能となる。特色インキ部の画像の分離とインキ量の算出は、例えばCIEXYZ等価カメラで入力した「基準画像」と「検査画像」を「印刷データからCMYKと特色を含むPDFファイルやTIFF画像に変換したデータ」又は「CIP4−PPFデータ」に対して解像度や寸法及び絵柄同士の位置を合わせるための画像重合を行った後、画素単位で比較することで、CMYK画像との重なりが無い部分の特色画像を容易に取り出すことが可能である。
【0163】
インキ量は、分離された「基準画像」と「検査画像」のデータから特色のみの画素同士を面測色の測色結果で比較することで、画像内のL*a*b*値の差分から検査画像のインキ補正量を画素毎に算出する。これにインキ量に対する各網点%部の色(L*a*b*値)の変化を関連付けするテーブル(例えば、事前の印刷テストで作成したもの)を用いることで、評価結果の色差に対するインキ補正量に変換することができる。
【0164】
仮に、特色同士を重ね合わせた色が存在する場合は、予めその掛け合わせの色をICCプロファイルとして作成しておくことで、CMYKインキ同様、特色インキだけが存在する画像エリアに対してインキ量の違いを算出することが可能である。しかしながら、ここで得られたインキ補正量にベタ部のインキ量に対する色の変化の関係を表すテーブルを用いることで、ベタ部付近の色(L*a*b*値)の違いに対するインキ補正量を修正し、より正確にインキ補正量を予測することが可能である。
【0165】
上記測色結果や評価結果は、インキ補正量の算出のみならず、例えば画像表示手段11の色評価用のソフトプルーフ(画像表示手段11の表示画面を色校正画面とする。モニタプルーフとも言う)を容易に行うことも可能である。ソフトプルーフは、活用が多く試みられて来たが、目視による官能評価比較だけでは十分な品質保証が行えないため、一般的に利用され普及していないのが現状である。
【0166】
また、インターネットによる色伝達となると、一般的には色再現の領域がsRGBというどんな画像表示手段でも再現可能な狭い色再現領域であるため、色再現は限定された色域となってしまう。一般カラー印刷やパッケージ印刷を始め、広告・出版・新聞関連業界では、もう少し色領域が広く印刷再現にもほぼ対応するAdobeRGB(登録商標)を採用している。また、最近では人間の眼の色領域(視覚全色域)に近いレーザTVも製品化され、品質やコストの面でもソフトプルーフは有利となる。
【0167】
本実施形態に係る色処理装置1では、色校正画面の色再現精度をさらに高めるため、面測色によって、画像表示手段11の色管理を今までの表示画面の中央部だけの色調整だけでなく、画面全体を測ることで実現する。また、外光の影響によって色校正画面の色が変化して見えるので、画面に映る外光の影響を制御して、或いは画面の見える色を制御できる制御用の評価用光源を画像表示手段11に取り付けて照射し、画面の全面の色管理を行う。
【0168】
一般的には、画像表示手段11(例えば、カラーモニタ)の色調整は、まず画面中央に発色させた27色〜125色程度の色(RGB信号値が最小〜最大の数段階(0%〜100%の例えば、0%、25%、50%、75%、100%など)とRGBそれぞれの値の組み合わせで再現できる色)を測定する。
【0169】
そして、RGBの各入力信号と色校正画面の色再現とを関係付けるICCプロファイルであるカラーテーブルを作成し、画面の色再現をコントロールする。しかし、印刷の場合のように、800色以上のカラーコントロールパッチを基にプロフィルを作成するのと比べると十分なものとはいえない。
【0170】
また、色校正画面上の画面ムラは考慮されておらず、画像表示手段11の性能に依存することになる。併せて、評価を行う人のモニタを見る位置や角度によって見える色が変化してしまうという問題がある。更には、画面の見る画像部分の周囲の色の影響を受け、その色が眼に入ることで評価する絵柄との色の対比が起こり、色が変わって見えることがある。
【0171】
また、色校正画面の色温度や外光の色温度や照明波長スペクトル等が異なれば、画面の白そのものが違って見える問題があるが、更に外光の影響で画面が反射を起こすことで、コントラストが低下したり色が変わって見えたりすることもある。そして、画面を近くで見る場合や大きな画面の場合は、視点が中央と周辺では大きく変わるため、発色光が均一に眼に届かず、色が変わって見えたり、明るさが変わって見えたりする。
【0172】
次に、第2の実施形態について説明する。この実施形態は、モニタプルーフによる色処理方法に関するものである。
図14に示すように、本実施形態では、キャリブレーションされたモニタディスプレイ31を用い、基準チャートデータ(CMYK網点%の掛け合わせから成る1000色程のプルーフ用ICCプロファイル作成用カラーチャート)を表示した画面と、その基となる基準チャートプルーフ(用紙)を広色域入力装置であるカメラ2で入力した画像データの2つの基準チャート間の色差を算出し、モニタ画面の色再現をプルーフの色再現にマッチングさせるための補正を行う「基本モニタープロファイル」を作成する。また、例えば5000Kから6500Kへのモニタの色温度変換プロフィルや用紙プロファイルも同時に使用してモニタ色調整をしても良い。
モニタ画面31aに基準画像データを表示し、それをカメラ2(広色域入力装置)で入力することにより、基本モニタープロファイルを使って基準画像を得る。
この時モニタ表示色に外光の影響が出ないようにコントロールするため、モニタフードを取り付けたり、作業者の視覚に妨げにならないように強制的にモニタに照明3からの照明光を照射したりしても良い。
【0173】
本実施形態の手順は、次の通りとなる。
(1)モニタの評価プルーフを標準光源のもとで広色域入力し、評価画像を得る。
(2)基準画像と評価画像のファイルを縮尺サイズ調整及び位置合わせを行い、重合する。
(3)モニタ画面をマトリックス分割し、面測色し、色差ΔE値を表示をする。このとき、予め設定した基準閾値内か大きいかを色や音、音声などで表示或いは出力する。これにより、モニタの色表示精度の保証が行える。
【0174】
上記手順を実施する場合は、モニタの一般的なキャリブレーションに加え、モニタ画面全体の色再現が均一になるように画面ムラ補正を実施する。実施方法としては、モニタ全面にICCプロファイルを作成するために用いたカラーチャートの各色を1色ずつ表示させて、例えばモニタを縦横5×9画面に分割した各部ごとに広色域カメラで1ショットまたは45(5×9)ショットで撮影する。複数ショット撮影を行う場合は、ロボット操作でカメラをXYに移動させる方式或いはカメラ画面の中心が各分割画面の中心がなるようにカメラの確度を動かす方式で自動撮影を行う。前者の複数ショット方式は画面を均一に補正させる点では優れており、モニタと印刷物を広色域画像入力装置で測色し、数値比較を行う場合に向いている。後者の複数ショット方式では、実際に観察者がモニタを見る環境でモニタの色再現のへ変化を含めたカラーキャリブレーションが行える点が特長であり、キャリブレーション時のモニタ測色と同じ方式で、画面の色を測色する場合は、数値比較が可能である。
【0175】
そして、これらの方法で作成したモニタ用ICCプロファイル(プルーファー用として作成したもの)を用いCMKY画像からモニタ画面に分割し、それぞれの画像に印刷プロファイルもセットして、L*a*b*画像に色変換する。これらの画像を1枚の画像に合成した画像そのままモニタに表示させることで、モニタ全面のカラーキャリブレーションを施した画像が最終的にモニタ表示される。
【0176】
本実施形態では、カラーディスプレイの色再現の安定化を図り、一般に利用されているICCプロファイルを用いたカラーマネージメントをベースにしながらも、モニタ画面の色を直接L*a*b*値として測定できる広色域画像入力装置を用いることで、より精度の高い印刷の色校正が可能なモニタプルーフを実現するものである。そのためには、モニタ画面の色管理を今までの中央部だけの色調整だけでなく、
(1)面測色技術を応用してモニタ全面のキャリブレーションを行うこと、
(2)外光の影響を含めて色評価を行う環境での色の見え方の違いを補正すること、
(3)モニタに表示された絵柄面及び外光の影響を含んで、或いは外光を調整して、モニタを直接測色し、数値で画像の色評価を行うこと、
が必要である。
【0177】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。この実施形態は、モニタの色評価環境に合わせた定量的な色管理が行えるシステムを提供するものである。
図15に示すように、印刷物等の被写体(印刷物、プリント或いは入力や撮影可能なあらゆる物体、動・植物、風景など)32と、モニタディスプレイ31とのカラーマッチングを行う場合、ディスプレイ画面の色温度、画面ムラ補正を行い、モニタのICCプロファイルを使ってカラーマッチングを行っておくことが前提となる。そして、調整されたディスプレイの画像と、印刷物及び被写体の画像の両方を正しくL*a*b*値で画像入力が可能な各種広色域画像入力装置で入力し、両方の画像サイズを一致させる絵柄の重合を行う。重合させた画素或いは画素群から比較したい任意のエリアの画素色差平均或いは画素群色差平均をΔEや色枠で表示する。もし、被写体とモニタを撮影した画像の色差が予め設定した許容範囲(ΔE等による)を越える画像部分があれば警告を行い、再補正を促す、または後述する第5の実施形態のようにプリプレス工程またはデザイン工程にフィードバックする。その際には、色差を基準色テーブルを用いてCMYKデータに変換しフィードバックする。このように、モニタプルーフのカラーマネージメントを実現するためには、カラーモニタ全画面の測色と品質保証が欠かせない。
【0178】
そこで、
(1)印刷色評価用の照明D50或いはD65或いはモニタの任意の設定色温度に合わせた環境下で、各種広色域画像入力装置によりモニタ全面に、RGB信号値が最大〜最小の数段階(0%〜100%)とRGBそれぞれの値の組み合わせで再現できる色の1色ごとに表示させた全画面を画像入力する。これを数十色に対して行う。
次に、L*a*b*値に変換した後、面測色によりマトリックス分割(例:10×10ブロック分割)した画面の各ブロックことにICCプロファイルを作成し、ブロックごとにモニタ全面のキャリブレーションを行う。
【0179】
(2)これにより、外光の影響を含めて色評価を行う環境での色の見え方の違いを補正することが可能となる。また、外光を制御する方法として、モニタにD50やD65,或いはモニタを設置する場所の外光光源と同じ照明環境で、モニタキャリブレーションを行ったモニタに、評価したいプルーフや印刷物等のデジタル画像データを表示し、
【0180】
(3)モニタに表示された絵柄面を広色域入力装置(CIEXYZ等価カメラや分光カメラ等)で直接測定することで、眼で見た色をL*a*b*やΔEなどの数値で色評価を行う。
【0181】
(4)また、モニタへの外光の影響を制限し統一するために、モニタの上下左右の一方或いは多方からの評価したい色温度や分光スペクトルの照明をモニタ画面に照明し、他の外光の影響を制御する方法も有効である。
【0182】
次に、第4の実施形態について説明する。
図16〜
図18に示すように、この実施形態では、1頁あたり数ヶ所の特定領域Pについて、基準媒体のL*a*b*値と評価媒体のL*a*b*値及び色差を表示する色評価テーブルを求める。この表かテーブルを顧客への色品質評価証41として送付或いは送信サーバに保存する。
また、色品質評価証41は、基準媒体のL*a*b*値と評価媒体のL*a*b*値及び色差を表示するだけでなく、ΔEは、AAA,AA,A,B,C,Dなどの英字や★★★などの評価用記号を用いて段階に分けて、一般的に判りやすい表記方法を加えることもできる。色品質評価証41は、
図17に示す携帯端末機や、
図18に示すPC等の表示画面上に表示することもできる。
【0183】
なお、色品質評価証41には、例えば印刷ジョブの情報を示すジョブ単位の受注情報、基準画像や評価画像などの画像、品質分析結果を示す品質分析グラフ、色評価箇所を個別に示す個別色評価箇所、色評価をL*a*b*値や色差ΔEの数値で示す数値色評価表、総合的な色評価の結果を示す総合色評価結果(評価用記号/色差ΔE表示切替可)、個別の色評価の結果を示す個別色評価結果(評価用記号/色差ΔE表示切替可)等が表示される。また、色品質評価証41が表示される端末等の表示画面上には、同時に各種表示切替指示ボタンやページ呼出ボタン、サーバへの接続指示ボタン等が表示される。
【0184】
納品印刷物やプリント等の出力物に対し、顧客から色に対してのクレームが起きることがある。これは、「校了紙」と呼ばれる顧客のOKシートと比較して、納品印刷物やプリントの色が違うと顧客が認識をするためである。この印刷会社と顧客等の色の認識の差の解決策として、面測色手法で色評価を国際的に決められた数値(L*a*b*値など)で確認する。予め顧客が色を合わせたいという絵柄の任意の一箇所或いは複数個所部分を小さな四角等でマーキングして、その箇所の色をモニタで確認して、色差の許容範囲を数値で指示し、校了紙と納品印刷物との面測色を行う。
【0185】
このマーキングした指示データと画像は、印刷工場にもデジタルに送信されることで、印刷機への各インキ色調整量が表示され、オペレータの色調整作業を適確に指示できる。印刷機周辺の温度、湿度から印刷機ブランケット圧、湿し水等のコンディションによって実際の色再現は変化するが、許容範囲内かどうかは面測色により数値で判断できるため、適確な色調整を行うことが可能となる。
【0186】
これで、クライアントの希望する色再現が達成でき、マーキング指示された校了紙と納品印刷物の同一測定部の各L*a*b*値及び色差を色品質保証書として添付し、印刷物を納品することで、顧客は安心して印刷物を受領することができる。これにより、発注側と印刷側で、事前に色差許容値を取り決めておくことで、色のトラブルはなくすことが可能となる。
【0187】
次に、第5の実施形態について説明する。
図19は、電子プリントの色補正を説明するためのブロック図である。
図19(a)はプリプレス工程へのフィードバックによる色再現を示し、
図19(b)はインライン測色と色補正を示す。
【0188】
(1)プリプレス工程へのフィードバックによる色再現の保証
図19(a)に示すように、POD(Print On Demand)やプリンタなどのデジタル印刷手段から出力されたプリントは、プリント上の面ムラは殆ど起こらないが、印刷におけるカラーチャートだけで作成したICCプロファイルでは微妙な絵柄の中の色再現の違いを印刷時にコントロールすることができない。そのため、十分カラーマッチングを行うことができず、色品質にうるさい顧客のニーズに十分対応できない。
【0189】
従って、プリントの色再現が違う場合は、プリプレス工程に戻って、画像データの色修正を行わねばならない。このためプリント絵柄面の特定の色を面測色することで、グラデーション等の色変化があっても安定したL*a*b*値が得ることが出来る。
【0190】
POD装置80に、画像入力機器81を装着し、「プリントの画像(プルーフ82)」を入力し、プリントをした「プリントデータ(プリント物83)」と画像重合し、画面内を自由にマトリックス分割或いは注目エリアを指定して、そのL*a*b*値から算出された色差をもとに、画素群色差平均或いは画素色差平均を算定する。
【0191】
この算定値をもとに基準色に画面色を合わせるシミュレーションを行い、モニタ画面84に色差とその画像をモニタ表示する。決定された画面から、元のプリント画像にシミュレーション画像値をフィードバックし、RIP85にて色補正されたプリント或いは元の画像と調整値から画像を作成し、印刷機86にて再度プリントを行う。若しくは、色調整の行える編集機能を持つプリンタで色調整を行う。その一連の作業を事前に設定した条件や数値により、自動化することが尚良い。またもし再度のプリントでクライアントから色修正が出た場合はこの工程を繰り返す。
【0192】
(2)インライン測色と色補正の方法
図19(b)に示すように、高速入力が可能な入力装置90を、印刷機91、POD装置92にインライン色調整装置として取り付け1枚毎或いは設定した枚数毎の印刷物或いはプリントの色差および印刷機91の各CMYKのインキ量やプリンタのトナー・色材などの違いを算出する。
【0193】
また、プリンタやPODなどについては、前記基準画像と比較画像の色差からプリントする画像のドット或いは画素単位で出力を調整させて、使用する色材(トナーやインク等)の量の加減調整をして色補正を行う。
【0194】
印刷機91或いはPOD装置92に、ラインスキャナ型の広色域素子、或いはフィルタ或いは広色域を発光させるLEDを組み合わせて搭載し、印刷中の画像を高速入力する。その入力画像をインキつぼ単位或いはマトリックス状に分割し、基準画像と高速で入力した画像を高速で重合し、瞬時に色差を算定。色差値を印刷のインキつぼ或いはマトリックス単位でインキ或いは色材濃度の調整をして、印刷色補正を行う。この状況をモニタに調整したそのままの色で表示し、基準値或いは印刷色チェックごとの色変化履歴から印刷機91・POD装置92の色調整を行い、モニタにグラフ表示する。
【0195】
次に、第6の実施形態について説明する。
図20は、オンライン色校正システムを示すブロック図である。
オンライン色校正は、印刷やプリントの製作工程を短縮し、業務と効率化、コスト削減のためにも欠かせない技術となっている。そこで、製版会社及び印刷工場に設置された基準モニタ51とユーザが使用するモニタ52との表示の違いを少なくするため、色基準チャートを全面或いはモニタ画面の中心部に表示させ測色器で測色してICCプロファイルで作成する。しかし、色は眼で見て判断をするため、色の良し悪しの根拠は各人まちまちで、人の経験や勘に頼らざるを得ない。本技術では、予めカラーキャリブレートされたプルーファーで出力された校了紙(プルーフ)等を広色域画像入力することで、画像をL*a*b*値で面測色が可能である。一方、元版のデジタルデータの場合は、CMYK画像を利用する印刷条件で作成したICCプロファイルを用い、L*a*b*画像に変換することで、同様にモニタ上の色を測定し、数値による比較や数値による色確認が可能である。測定ポイントは、点または面で測定箇所を記録しておくことで、基準となる色の測定箇所を印刷オペレータにまでオンラインで伝達が可能なため、クライアント(印刷発注者)と印刷会社は互いに安全に色の確認や指定を数値で行うことが可能である。
【0196】
印刷物を納品する場合、印刷会社や広告代理店ではその納入印刷物をサンプルとして1から2年程度保存する。この広い保管スペースの削減と再版時に探し出す時間の削減、及び保管状態による印刷画像の劣化を防ぐために、納品印刷物を色見本データとして電子倉庫53に保存する。保存する画像にはL*a*b*値が付けられており、再版時には色見本として使用できるので、印刷物の保管で起こる紫外線や、温度・湿度による原因の退色・変色に関しても、電子倉庫は解決策となる。
【0197】
また、印刷会社内だけでなく、顧客や代理店にもこの画像をネットワークで送信し、再版時の色確認が可能になる。さらに、色校正用の印刷物をデータ化すれば、社内だけでなく顧客や広告代理店との色校正に使用できる。また、この技術を活用して、例えば静止画や動画の電子美術館やアーカイブが可能となる。例えば絵画や彫刻作品をCIEXYZ等価のカメラやビデオカメラ、或いは分光カメラ等で入力して、保管・検索が楽なように、検索キーワードを付加してサーバに保存し、電子美術館やアーカイブデータとして利用する。
【0198】
このとき、CIEXYZ等価方式のカメラやスキャナで入力の場合は、一般的なD65やD50の照明のほか、美術館で実際に使用されている照明で入力することも可能である。分光方式の場合は、出力時に美術館で実際に使用されている照明の色温度に変換し、同一の照明での表示とする。
【0199】
印刷業界を始めとして、ファッション分野や工業デザイン分野など各デザイン分野では、工程のスピード化とコスト削減を図るため、画像情報や印刷情報のリアルタイムでの活用がより必要になってくる。そのため、XYZ等価或いは分光スキャナ、分光カメラ等の広色域画像入力装置(広色域ビデオカメラを含む)でのリアルタイムに映像と静止画像で、受注から検査・製造・納品に関する情報の送受信により、業務のスピード化が図れる。
【0200】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)実施形態では広色域入力機器で入力することによって画像の面測色を行っているが、本発明はこれに限らず、スポット測色を行う分光光度計と同等の光源を持ち、面測色を行っても良い。例えば既存の印刷用分光光度計の多くは4.5mm幅程度のコントロールストリップを測定するため約3mm径のアパーチャサイズとなっているが、これでは画像の中に細かな柄のパターンや変化がある場合、ざらつきや模様がある場合、グラデーションやムラがある場合などに安定した測色を行えない。そこで、面測色の照明や光学系を小型化して、L*a*b*値が計測できる部分面測色器、例えば好ましくは10mm以上の画像面が測色できるものとすると良い。このような部分面測色器の例を
図21、
図22に示す。
【0201】
図21に示す部分面測色器60は、例えば光源61としての複数のLEDと、プリズム回折格子部62と、受光素子63であるC−MOSセンサーとを備え、照明エリア65内の測定エリア66における色情報を部分的に面測色して、PC64で処理するものである。また、
図22に示す部分面測色器70は、光源71からの反射光を受光部72で受光して色情報を得るタイプのものである。
【0202】
(2)画像内に設定する注目領域は、複数設けてもよい。この場合、各注目領域ごとに異なった重み付け係数を設定してインキ供給量補正量を算出するようにしてもよい。
(3)実施形態では、媒体は例えば印刷物であり、色材はインキであったが、本発明はこれに限定されない。例えば、色材はインキに限らず、他の染料、顔料や光であってもよく、媒体はこれらの色材を用いて色再現が可能なあらゆる媒体に適用可能である。
【0203】
例えば、媒体として、紙、プラスチック、金属、ガラス、LCD等の画像表示装置などに適用可能であり、印刷物、絵画、繊維等のファッション用品、化粧品、道路、看板、電子看板、カラー印画紙、自動車や家電等の塗装等がなされた工業製品等に適用することが可能である。また、色材として、油性インキ、水性インキ、染料、顔料、塗料、絵の具、絵画用色材、染色における水などにも適用可能である。
【0204】
(4)実施形態では、コントロールストリップの測色を、面測色手段であるカメラによって行っているが、これに代えて、スポット測色を行う分光光度計等の点測色手段によって、評価用光源で照射しながら測色してもよい。この場合、コントロールストリップの各色を面測色手段でも測色し、各測色結果を照合して少なくとも一方の出力を補正するキャリブレーションを行ってもよい。例えば、CMYK各色のベタインキ部をそれぞれ測色し、各色の測色装置による色差に基づいて、上述したキャリブレーションを行うことが可能である。
【0205】
(5)実施形態では、画素、画素群、細分割のL*a*b*値の差分である色差ΔEに基づいて色材補正量を算出しているが、L値、a値、b値のうち1つあるいは2つの組み合わせに基づいて色材補正量を算出してもよい。(6)実施形態では、色材としてCMYKの4色のインキを用いているが、本発明はこれに限らず、特色インキなどのCMYK以外の色材を用いてもよい。(7)実施形態では、基準データとなるPPFファイルは、画像の各部位ごと、色ごとの網点%(面積率)に関する情報を有していたが、面積率に代えて、色材の濃度に関する情報を有するデータを基準データとして用いてもよい。