(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
溶剤系が、ジクロロメタン、1−クロロペンタン、クロロホルム、1,1−ジクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン及び1,4−ジオキサンから選択される溶剤又は溶剤混合物を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
基材が、ガラス、シリコンウエハー、金属板、プラスチックフィルム、織布又は不織布、及びガラス基材又はシリコンウエハーにコーティングされたプラスチックフィルムから選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
第一の層及び第二の層を含む非対称膜であり、第一の層は、ブロックコポリマーと、ミクロ及びマクロの経路が流体流のための蛇行した通路を提供するように連結した多孔性構造のネットワーク中にブロックコポリマーを含む第二の層へ連続的に延びる円柱形態に秩序化された孔とを含む膜を得る、請求項16に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態によるホモポリマー1(ジブロックコポリマーの前駆体)及びジブロックコポリマー2の多角度レーザー光散乱(MALS)ゲルパーミエーションクロマトグラム(GPC)の重ね合わせトレースである。
【
図2A】本発明の一実施形態によって調製された膜の表面のトポグラフィーのAFM画像である。
【
図2B】本発明の一実施形態によって調製された膜の相のAFM画像である。
【
図3A】本発明の一実施形態によって調製された別の膜の表面のトポグラフィーのAFM画像である。
【
図3B】本発明の一実施形態によって調製された別の膜の相である。
【
図4】本発明の一実施形態によって調製されたさらに別の膜の表面のAFM相画像である。
【
図5】本発明の一実施形態によって調製されたさらなる膜の表面のAFM相画像である。
【
図6】第一の層及び第二の層を含む本発明の一実施形態による非対称膜のナノ構造であり、第一の層が、ジブロックコポリマーと、ミクロ及びマクロの経路が流体流のための蛇行した通路を提供するように連結した多孔性構造のネットワーク中にジブロックコポリマーを含む第二の層へ連続的に延びる円柱形態に秩序化された孔とを含む、ナノ構造を例証する。
【
図7】
図2AのAFM高さ画像から抽出した孔径の周期性のラインプロファイルである。
【
図9】
図2Aの膜の断面のFE−SEM画像である。
【0008】
[発明の詳細な説明]
[0018]一実施形態において、本発明は、式(I)又は式(II)
【化2】
(式中、R
1は、ハロ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミド及びニトロから選択される置換基により任意選択で置換されたC
1〜C
22アルキル基、又はハロ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミド及びニトロから選択される置換基により任意選択で置換されたC
3〜C
11シクロアルキル基であり、
R
2は、ヒドロキシ、アミノ、ハロ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミド及びニトロから選択される置換基により任意選択で置換されたC
6〜C
20アリール基又はヘテロアリール基であり、
R
3及びR
4の一方は、ヒドロキシ、ハロ、アミノ及びニトロから選択される置換基により任意選択で置換されたC
6〜C
14アリール基であり、R
3及びR
4の他方は、カルボキシ、アミノ、メルカプト、アルキニル、アルケニル、ハロ、アジド及びヘテロシクリルから選択される置換基により任意選択で置換されたC
1〜C
22アルコキシ基であり、
n及びmは、独立して、約10〜約2000であり、0<x≦n及び0<y≦mである)
のブロックコポリマーを含む多孔性膜を提供する。
【0009】
[0019]式(II)において、破線の結合は部分水素化を示す。xは0.1〜nであることが好ましく、yは0.1〜mであることが好ましい。x=nのとき、対応するブロックは完全水素化されている。同様に、y=mのとき、対応するブロックは完全水素化されている。実施形態によれば、x/n及びy/mは、独立して、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9又は1である。
【0010】
[0020]一実施形態において、本発明は、式(I)又は式(II)
【化3】
(式中、R
1は、ハロ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミド及びニトロから選択される置換基により任意選択で置換されたC
1〜C
22アルキル基、又はハロ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミド及びニトロから選択される置換基により任意選択で置換されたC
3〜C
11シクロアルキル基であり、
R
2は、ヒドロキシ、アミノ、ハロ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミド及びニトロから選択される置換基により任意選択で置換されたC
6〜C
20アリール基又はヘテロアリール基であり、
R
3及びR
4の一方は、ヒドロキシ、ハロ、アミノ及びニトロから選択される置換基により任意選択で置換されたC
6〜C
14アリール基であり、R
3及びR
4の他方は、カルボキシ、アミノ、メルカプト、アルキニル、アルケニル、ハロ、アジド及びヘテロシクリルから選択される置換基により任意選択で置換されたC
1〜C
22アルコキシ基であり、
n及びmは、独立して、約10〜約2000であり、0<x≦n及び0<y≦mである)
のブロックコポリマーを含む多孔性膜を調製する方法であって、
(i)ブロックコポリマーを溶剤系に溶解してポリマー溶液を得るステップ、
(ii)ポリマー溶液を基材にコーティングするステップ、
(iii)(ii)において得られたコーティングから、溶剤の少なくとも一部を蒸発させるステップ、
(iv)(iii)からのコーティングを凝固浴に浸漬するステップ、及び
(v)(iv)において得られた多孔性膜を洗浄するステップ
を含む、方法を提供する。
【0011】
[0021]一実施形態によれば、上記のブロックコポリマーは、モノマーがエキソ異性体である式(Ia)のジブロックコポリマーである。
【化4】
【0012】
[0022]上記の実施形態のいずれかにおいて、R
1は、ハロ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミド及びニトロから選択される置換基により任意選択で置換されたC
6〜C
20アルキル基である。
【0013】
[0023]一実施形態において、R
1は、ハロ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミド及びニトロから選択される置換基により任意選択で置換されたC
10〜C
18アルキル基である。
【0014】
[0024]特定の一実施形態において、R
1はC
16アルキル基である。
【0015】
[0025]上記の実施形態のいずれかにおいて、R
2は、ヒドロキシ、アミノ、ハロ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミド及びニトロから選択される置換基により任意選択で置換されたC
6〜C
10アリール基である。
【0016】
[0026]一実施形態において、R
2は、ヒドロキシ、アミノ、ハロ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミド及びニトロから選択される置換基により任意選択で置換されたフェニル基である。
【0017】
[0027]上記の実施形態のいずれかにおいて、R
3は、ヒドロキシ、ハロ、アミノ及びニトロから選択される置換基により任意選択で置換されたC
6〜C
14アリール基であり、R
4は、カルボキシ、アミノ、メルカプト、アルキニル、アルケニル、ハロ、アジド及びヘテロシクリルから選択される置換基により任意選択で置換されたC
1〜C
22アルコキシ基である。
【0018】
[0028]一実施形態において、R
3は、ヒドロキシ、ハロ、アミノ及びニトロから選択される置換基により任意選択で置換されたフェニルであり、R
4は、カルボキシ、アミノ、メルカプト、アルキニル、アルケニル、ハロ、アジド及びヘテロシクリルから選択される置換基により任意選択で置換されたC
1〜C
6アルコキシ基である。
【0019】
[0029]一実施形態において、R
3は、モノマーの重合のために採用されたROMP触媒によってもたらされる。
【0020】
[0030]一実施形態において、R
4は、重合の終結のために採用されたビニルエーテル化合物によってもたらされた基である。
【0021】
[0031]本発明によれば、用語「アリール」は、1つ、2つ又は3つの芳香環を有する単環、二環又は三環の炭素環系、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル又はビフェニルを指す。用語「アリール」は、当技術分野において通常理解されるように、置換されていない又は置換されている芳香族炭素環部分を指し、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニル等の単環及び多環の芳香族化合物を含む。アリール部分は、一般に、例えば、6〜30個の炭素原子、好ましくは6〜18個の炭素原子、より好ましくは6〜14個の炭素原子、最も好ましくは6〜10個の炭素原子を含有する。用語アリールは、ヒュッケル則に従って、平面であり、4n+2個(n=1、2又は3)のπ電子を含む炭素環部分を含むことが理解される。
【0022】
[0032]本発明によれば、用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1つの原子がO、S又はNであり、残りの原子が炭素である、5〜10個の環原子を有する環状芳香族基を指す。ヘテロアリール基の例には、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チオフェニル、フラニル、キノリニル及びイソキノリニルが含まれる。本明細書において用いる用語「ヘテロアリール」は、単環ヘテロアリール又は二環ヘテロアリールを意味する。単環ヘテロアリールは、5又は6員環である。5員環は、2つの二重結合と、1つの硫黄、窒素又は酸素原子とからなる。或いはまた、5員環は、2つの二重結合と、1つ、2つ、3つ又は4つの窒素原子と、酸素又は硫黄から選択される任意選択の追加の1つのヘテロ原子を有し、その他が炭素原子である。6員環は、3つの二重結合と、1つ、2つ、3つ又は4つの窒素原子とからなり、その他が炭素原子である。二環ヘテロアリールは、フェニルに縮合した単環ヘテロアリール、又は単環シクロアルキルに縮合した単環ヘテロアリール、又は単環シクロアルケニルに縮合した単環ヘテロアリール、又は単環ヘテロアリールに縮合した単環ヘテロアリールからなる。単環及び二環ヘテロアリールは、単環又は二環ヘテロアリール中に含有される任意の置換可能な原子を介して親分子部分に連結する。本発明の単環及び二環ヘテロアリール基は、置換されていても又は置換されていなくてもよい。加えて、窒素ヘテロ原子は、四級化されていても、されていなくてもよく、酸化されてN−オキシドになっていても、なっていなくてもよい。また、窒素含有環は、N保護されていても、されていなくてもよい。単環ヘテロアリールの代表例には、限定されるものではないが、フラニル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、ピリジニル、ピリジン−N−オキシド、ピリダジニル、ピリムニジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピロリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、及びトリアジニルが含まれる。二環ヘテロアリール基の代表例には、限定されるものではないが、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、6,7−ジヒドロ−1,3−ベンゾチアゾリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、インダゾリル、1H−インダゾール−3−イル、インドリル、イソインドリル、イソキノリニル、ナフチリジニル、ピリドイミダゾリル、キノリニル、キノリン−8−イル、及び5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−5−イルが含まれる。
【0023】
[0033]「アルキル」基は、直鎖又は分岐であり得る。一実施形態によれば、アルキル基は、好ましくはC
1〜C
22アルキルである。アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、ヘキサデシル等が含まれる。この定義は、「アルキル」が、ヒドロキシアルキル、モノハロアルキル、ジハロアルキル及びトリハロアルキル等において出現する場合にも常に当てはまる。C
1〜C
22アルキル基は、シクロアルキル基、例えばC
3〜C
7シクロアルキル基によりさらに置換され得る。
【0024】
[0034]「シクロアルキル」基は、単環又は二環であり得る。単環シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルが含まれる。二環シクロアルキル基の例には、スピロオクタン、スピロノナン、スピロデカン及びスピロウンデカン等の1つの共通の環炭素原子を有するもの、ビシクロオクタン、ビシクロノナン、ビシクロデカン及びビシクロウンデカン等の2つの共通の環炭素原子を有するものが含まれる。いずれのシクロアルキル基も、1つ又は複数のアルキル基、例えばC
1〜C
6アルキル基によって任意選択で置換され得る。
【0025】
[0035]一実施形態によれば、「アルコキシ」基は、好ましくはC
1〜C
22アルコキシである。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシ、イソペントキシ、n−ヘキソキシ、ヘキサデシロキシ等が含まれる。
【0026】
[0036]用語「ハロ」は、フッ素、塩素、ホウ素及びヨウ素からなる群から選択されるハロゲン、好ましくは塩素又はホウ素を指す。
【0027】
[0037]本明細書で用いる用語「ヘテロ環(heterocycle)」又は「ヘテロ環(heterocyclic)」は、単環ヘテロ環又は二環ヘテロ環を意味する。単環ヘテロ環は、O、N、N(H)及びSからなる群から独立して選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する3員、4員、5員、6員又は7員環である。3員又は4員環は、0又は1つの二重結合と、O、N、N(H)及びSからなる群から選択される1つのヘテロ原子とを含有する。5員環は、0又は1つの二重結合と、O、N、N(H)及びSからなる群から選択される1つ、2つ又は3つのヘテロ原子とを含有する。6員環は、0、1つ又は2つの二重結合と、O、N、N(H)及びSからなる群から選択される1つ、2つ又は3つのヘテロ原子とを含有する。7員環は、0、1つ、2つ又は3つの二重結合と、O、N、N(H)及びSからなる群から選択される1つ、2つ又は3つのヘテロ原子とを含有する。単環ヘテロ環は、置換されていなくても又は置換されていてもよく、単環ヘテロ環中に含有される任意の置換可能な炭素原子又は任意の置換可能な窒素原子を介して親分子部分に連結する。単環ヘテロ環の代表例には、限定されるものではないが、アゼチジニル、アゼパニル、アジリジニル、ジアゼパニル、[1,4]ジアゼパン−1−イル、1,3−ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、1,3−ジチオラニル、1,3−ジチアニル、ホモモルホリニル、ホモピペラジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オキサジアゾリニル、オキサジアゾリジニル、オキサゾーニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピロリニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチエニル、チアジアゾリニル、チアジアゾリジニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、チオモルホリニル、1,1−ジオキシドチオモルホリニル(チオモルホリンスルホン)、チオピラニル、及びトリチアニルが含まれる。二環ヘテロ環は、フェニル基に縮合した単環ヘテロ環、又は単環シクロアルキルに縮合した単環ヘテロ環、又は単環シクロアルケニルに縮合した単環ヘテロ環、単環ヘテロ環に縮合した単環ヘテロ環、又は単環ヘテロアリールに縮合した単環ヘテロ環である。二環ヘテロ環は、二環ヘテロ環中に含有される任意の置換可能な炭素原子又は任意の置換可能な窒素原子を介して親分子部分に連結し、置換されていなくても又は置換されていてもよい。二環ヘテロ環の代表例には、限定されるものではないが、ベンゾジオキシニル、ベンゾピラニル、チオクロマニル、2,3−ジヒドロインドリル、インドリジニル、ピラノピリジニル、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリニル、1,2,3,4−テトラヒドロキノリニル、チオピラノピリジニル、2−オキソ−1,3−ベンゾオキサゾリル、3−オキソ−ベンゾオキサジニル、3−アザビシクロ[3.2.0]ヘプチル、3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプチル、オクタヒドロシクロペンタ[c]ピロリル、ヘキサヒドロ−1H−フロ[3,4−c]ピロリル、オクタヒドロピロロ[3,4−c]ピロリル、2,3−ジヒドロベンゾフラン−7−イル、2,3−ジヒドロベンゾフラン−3−イル、及び3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−4−イルが含まれる。本明細書において定義される単環又は二環ヘテロ環は、N、N(H)、O若しくはSから選択されるヘテロ原子又は1〜3つのさらなる炭素原子のアルキレン架橋によって連結される、2つの非隣接炭素原子を有してもよい。このような2つの非隣接炭素原子間の連結を含有する単環又は二環ヘテロ環の代表例には、限定されるものではないが、2−アザビシクロ[2.2.2]オクチル、2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.2]オクチル、2,5−ジアザビシクロ[2.2.2]オクチル、2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプチル、2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプチル、2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプチル、2−アザビシクロ[2.1.1]ヘキシル、5−アザビシクロ[2.1.1]ヘキシル、3−アザビシクロ[3.1.1]ヘプチル、6−オキサ−3−アザビシクロ[3.1.1]ヘプチル、8−アザビシクロ[3.2.1]オクチル、3−オキサ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクチル、1,4−ジアザビシクロ[3.2.2]ノニル、1,4−ジアザトリシクロ[4.3.1.1 3,8]ウンデシル、3,10−ジアザビシクロ[4.3.1]デシル、又は8−オキサ−3−アザビシクロ[3.2.1]オクチル、オクタヒドロ−1H−4,7−メタノイソインドリル、及びオクタヒドロ−1H−4,7−エポキシイソインドリルが含まれる。窒素ヘテロ原子は、四級化されていても、されていなくてもよく、酸化されてN−オキシドになっていても、なっていなくてもよい。加えて、窒素含有ヘテロ環は、N保護されていても、いなくてもよい。
【0028】
[0038]ヘテロシクリル基の例には、ピリジル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピラジニル、ピロリル、ピラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピロリジニル、フラニル、テトラヒドロフラニル、チオフェニル、テトラヒドロチオフェニル、プリニル、ピリミジニル、チアゾリル、チアゾリジニル、チアゾリニル、オキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、テトラジニル、ベンゾオキサゾリル、モルホリニル、チオホルホリニル、キノリニル、及びイソキノリニルが含まれる。
【0029】
[0039]ベンゾを有する及び有しない5員不飽和ヘテロ環:フラニル、チオフェンイル、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、ジチアゾリル、フラザニル、1,2,3−トリアゾリル、テトラゾリル、1,2,4−トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、イソオキサゾリル、イソオキサゾリニル、オキサゾリル、オキサゾリニル、ホスホリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアゾリニル、イソチアゾリル、イソチアゾリジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェンイル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリニル、及びベンゾチアゾリニル。
【0030】
[0040]構造中の原子の数の範囲が示されている場合(例えば、C
1−22、C
1−12、C
1−8、C
1−6又はC
1−4アルキル、アルコキシ等)は常に、示されている範囲内の任意の部分範囲又は個別の炭素原子数も用い得ることが具体的に企図されている。従って、例えば、本明細書において言及される任意の化学基(例えば、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ等)に関して用いられる、1〜22個の炭素原子(例えばC
1〜C
22)、1〜20個の炭素原子(例えばC
1〜C
20)、1〜18個の炭素原子(例えばC
1〜C
20)、1〜16個の炭素原子(例えばC
1〜C
16)、1〜14個の炭素原子(例えばC
1〜C
14)、1〜12個の炭素原子(例えばC
1〜C
12)、1〜10個の炭素原子(例えばC
1〜C
10)、1〜8個の炭素原子(例えばC
1〜C
8)、1〜6個の炭素原子(例えばC
1〜C
6)、1〜4個の炭素原子(例えばC
1〜C
4)、1〜3個の炭素原子(例えばC
1〜C
3)、又は2〜8個の炭素原子(例えばC
2〜C
8)という範囲の記載は、適切であれば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21又は22個の炭素原子を包含し且つ具体的に説明するものであり、さらには、適切であればその任意の部分範囲、例えば、1〜2個の炭素原子、1〜3個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、1〜5個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜7個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜9個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜11個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜13個の炭素原子、1〜14個の炭素原子、1〜15個の炭素原子、1〜16個の炭素原子、1〜17個の炭素原子、1〜18個の炭素原子、1〜19個の炭素原子、1〜20個の炭素原子、1〜21個の炭素原子及び1〜22個の炭素原子、並びにその間の任意のもの、例えば、2〜3個の炭素原子、2〜4個の炭素原子、2〜5個の炭素原子、2〜6個の炭素原子、2〜7個の炭素原子、2〜8個の炭素原子、2〜9個の炭素原子、2〜10個の炭素原子、2〜11個の炭素原子、2〜12個の炭素原子、2〜12個の炭素原子、2〜13個の炭素原子、2〜14個の炭素原子、2〜15個の炭素原子、2〜16個の炭素原子、2〜17個の炭素原子、2〜18個の炭素原子、2〜19個の炭素原子、2〜20個の炭素原子、2〜21個の炭素原子及び2〜22個の炭素原子、3〜4個の炭素原子、3〜5個の炭素原子、3〜6個の炭素原子、3〜7個の炭素原子、3〜8個の炭素原子、3〜9個の炭素原子、3〜10個の炭素原子、3〜11個の炭素原子、3〜12個の炭素原子、3〜13個の炭素原子、3〜14個の炭素原子、3〜15個の炭素原子、3〜16個の炭素原子、3〜17個の炭素原子、3〜18個の炭素原子、3〜19個の炭素原子、3〜20個の炭素原子、3〜21個の炭素原子及び3〜22個の炭素原子並びに4〜5個の炭素原子、4〜6個の炭素原子、4〜7個の炭素原子、4〜8個の炭素原子、4〜9個の炭素原子、4〜10個の炭素原子、4〜11個の炭素原子、4〜12個の炭素原子、4〜13個の炭素原子、4〜14個の炭素原子、4〜15個の炭素原子、4〜16個の炭素原子、4〜17個の炭素原子、4〜18個の炭素原子、4〜19個の炭素原子、4〜20個の炭素原子、4〜21個の炭素原子、4〜22個の炭素原子を包含し且つ具体的に説明するものである。
【0031】
[0041]上記の実施形態において、「n」及び「m」は、それぞれのモノマーの平均重合度を表す。
【0032】
[0042]本発明の実施形態によれば、nは、約10〜約1000、約10〜約500、約10〜約250、約20〜約1000、約20〜約500、約20〜約250、約30〜約1000、約30〜約500、約30〜約250、約40〜約1000、約40〜約500、約40〜約250、約50〜約1000、約50〜約500、約50〜約250、約60〜約1000、約60〜約500、又は約60〜約250である。
【0033】
[0043]上記の実施形態のいずれかにおいて、mは、約50〜約2000、約50〜約1500、約50〜約1000、約100〜約2000、約100〜約1500、約100〜約1000、約150〜約2000、約150〜約1500、約150〜約1000、約200〜約2000、約200〜約1500、又は約200〜約1000である。
【0034】
[0044]上記の実施形態のいずれかにおいて、nは、典型的には約10〜約200、好ましくは約20〜約190、より好ましくは約30〜約140、より一層好ましくは105である。
【0035】
[0045]ブロックコポリマー、例えばジブロックコポリマーの上記の実施形態のいずれかにおいて、mは、典型的には約50〜約2000、好ましくは約675〜約1525、より好ましくは約675〜約1120、より一層好ましくは870である。
【0036】
[0046]ブロックコポリマー、例えばジブロックコポリマーは、任意の適切な総分子量、例えば、約50kDa〜約1000kDaの数平均分子量(M
n)を有することができ、ある実施形態において、ブロックコポリマーは、約100kDa〜約600kDaのM
nを有し、ある別の実施形態において、ブロックコポリマーは、約180kDa〜約500kDaのM
nを有し、さらなる実施形態において、ブロックコポリマーは、約195kDa〜約441kDaのM
nを有する。ある実施形態において、ブロックコポリマーは、約250kDa〜500kDaのM
nを有する。
【0037】
[0047]本発明の実施形態によるブロックコポリマー中の二重結合は、任意の適切なシス、トランスの配向を有することができ、それらは、ランダムな様式で分布し得る。
【0038】
[0048]ジブロックコポリマーは、任意の適切な形態、例えば、限定されるものではないが、球又は体心立方形態、円柱形態、薄片形態又は二重ジャイロイド形態に、自己組織化してもよい。コポリマーが自己組織化するナノ構造のタイプは、とりわけ、ブロックコポリマー中の2つのブロックの体積分率、及び溶剤系の性質に依存する。
【0039】
[0049]例えば、2つのモノマーのポリマー体積分率比の範囲(f
A:f
B)が37〜50:63〜50であると、均等なドメインサイズの層の重なりを伴う薄片形態の形成に有利であり、体積分率比の範囲が15〜70:85〜30であると、多い方のポリマーブロック構成成分のマトリックス中で少ない方のポリマー構成成分が円柱を形成する円柱形態の形成に有利であり、体積分率比の範囲が7〜15:83〜85であると、多い方のポリマーブロック構成成分のマトリックス中で少ない方のポリマー構成成分が球を形成する体心立方相の形成に有利である。体積分率比の範囲が33〜37:67〜33であると、二重ジャイロイド形態の形成に有利である。
【0040】
[0050]円柱形態は、不連続の管又は円柱形を有する相ドメイン形態を含む。管又は円柱形は、六方格子に六方充填されていてもよい。実施形態において、円柱ドメインのサイズは、約5nm〜約100nmである。
【0041】
[0051]薄片形態は、概して互いに平行に配向した互い違いの構造の層を有する相ドメイン形態を含む。実施形態において、薄片ドメインのサイズは、約5nm〜約100nmである。
【0042】
[0052]二重ジャイロイド形態は、互いに貫通する2つの連続したネットワークを含む。実施形態において、二重ジャイロイドドメインのサイズは、5nm〜約100nmである。
【0043】
[0053]球形態又はbcc形態は、第二のブロックのマトリックス中の体心立方格子に配列された1つのブロックの球ドメインを有する相ドメイン形態を指す。実施形態において、球形態ドメインのサイズは、約5nm〜約100nmである。
【0044】
[0054]一実施形態において、重合された第二のモノマー(R
2を有する)及び重合された第一のモノマー(R
1を有する)は、水素化後に、ジブロックコポリマー中に任意の適切な体積分率で存在する。例えば、第一のモノマーの%体積分率と第二のモノマーの%体積分率とは、約15:約85〜約30:約70の範囲、好ましくは約19:約81〜約25:約75の範囲、より好ましくは約20:約80の範囲であり得る。一実施形態において、第二のモノマーの体積分率はポリマー全体の約80%であり、質量分率はポリマー全体の約83%である。
【0045】
[0055]一実施形態において、第二のモノマーのポリマー体積分率と第一のモノマーのポリマー体積分率とは、約2.3〜約5.6:1であり、これは円柱形態の形成に有利である。好ましい実施形態において、第二のモノマーのポリマー体積分率と第一のモノマーのポリマー体積分率とは、約4:1である。
【0046】
[0056]具体的な一実施形態において、膜は、以下の構造を有する式(I)のジブロックコポリマー、特にnが105でmが870のものを含む。
【化5】
【0047】
[0057]一実施形態において、膜は、モノマーがエキソ立体配置である以下の構造を有する式(I)のジブロックコポリマー、特にnが105でありmが870であるものを含む。
【化6】
【0048】
[0058]上に記載したブロックコポリマーは、
(i)式
【化7】
の2種のモノマーのうちの一方を、開環メタセシス重合(ROMP)触媒を用いて重合して、リビング鎖末端を有する開環ポリマーを得るステップ、
(ii)(i)で得られた開環ポリマーのリビング末端に、2種のモノマーのうちの他方を重合して、リビング末端を有するジブロックコポリマーを得るステップ、
(iii)(ii)で得られたジブロックコポリマーのリビング末端を、任意選択で置換されたアルキルビニルエーテルによって末端処理するステップ、及び
(iv)(iii)で得られたジブロックコポリマーを水素化して、式(I)又は(II)のブロックコポリマーを得るステップ
を含む方法によって調製することができる。
【0049】
[0059]上記方法において、最初に重合されるモノマーは、式
【化8】
のものである。
【0050】
[0060]上記モノマーの重合の後、そこに重合される第二のモノマーは、式
【化9】
のモノマーである。
【0051】
[0061]第一のモノマー及び第二のモノマーは、エキソ又はエンド立体化学配置であり得る。一実施形態において、第一及び第二のモノマーは、エキソ配置のもの、例えばエキソ異性体が98%以上のモノマーである。
【0052】
[0062]第一及び第二のモノマーにおいて、R
1及びR
2は、式(I)のジブロックコポリマーについて上に説明したものと同じである。第一及び第二のモノマーは、(オキサ)ノルボルネン(ジ)カルボン酸イミド由来モノマーである。モノマーは、任意の適切な方法、例えば、マレイミド及びフランから出発しDiels−Alder反応を経由する以下に例証する方法によって調製することができる。
【化10】
【0053】
[0063]第一のモノマーは、以下に例証する光延カップリング反応を経由して合成することができる。
【化11】
【0054】
[0064]或いはまた、第一のモノマーは、exo−7−オキサノルボルネン−5,6−ジカルボン酸無水物のヘキサデシルアミンとの反応、又はN−ヘキサデシル−マレイミドとフランとのDiels−Alder反応を経由した反応によって合成することができる。
【0055】
[0065]第二のモノマーは、以下に例証するように、アセトニトリル中でのN−フェニルマレイミドとフランとの間のDiels−Alder反応を経由して合成することができる。
【化12】
【0056】
[0066]モノマーの重合は、環状オレフィンモノマーが環状オレフィンモノマーの開環によって重合又は共重合される、開環オレフィンメタセシス重合(ROMP)によって実施される。典型的には、カルベン配位子を含有する遷移金属触媒が、メタセシス反応を媒介する。
【0057】
[0067]任意の適切なROMP触媒を用いることができ、例えば、Grubbs第一世代、第二世代及び第三世代触媒、Umicore、Hoveyda−Grubbs、Schrock及びSchrock−Hoveyda触媒を採用することができる。そのような触媒の例には、以下のものが含まれる。
【化13】
【化14】
【化15】
【0058】
[0068]一実施形態において、Grubbs第三世代触媒は、空気中での安定性、複数の官能基に対する耐性、並びに/又は速やかな重合開始及び連鎖成長速度等のそれらの利点のために特に適している。加えて、Grubbs第三世代触媒を用いると、末端基が任意の親和性のある基を含むように操作され、触媒が容易にリサイクルされ得る。そのような触媒の好ましい例は、以下のものである。
【化16】
【0059】
[0069]上記の第三世代Grubbs触媒(G3)は、市販品として得ても、又はGrubbs第二世代触媒(G2)から以下のようにして調製してもよい。
【化17】
【0060】
[0070]第一のモノマー及び第二のモノマーを順次重合して、ジブロックコポリマーを得る。2種のモノマーのいずれも、最初に重合することができる。例えば、第一のモノマーを最初に重合し、続いて第二のモノマーを重合することができる。或いはまた、第二のモノマーを最初に重合し、続いて第一のモノマーを重合することができる。
【0061】
[0071]典型的には、モノマーは、少なくとも95%、好ましくは99%以上、より好ましくは99.9%以上の化学純度を有する。モノマーは、重合を妨げる不純物、例えば、ROMP触媒に影響を及ぼす不純物を含まないことが好ましい。そのような不純物の例には、アミン、チオール(メルカプタン)、酸、ホスフィン及びN−置換マレイミドが含まれる。
【0062】
[0072]モノマーの重合は、適切な溶剤、例えばROMP重合を行うのに一般的に用いられている溶剤中で行われる。適切な溶剤には、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素、n−ヘプタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、並びにジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びトリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、並びにそれらの混合物が含まれる。
【0063】
[0073]有機溶剤中で重合を実施する場合、モノマー濃度は、1〜50重量%、好ましくは2〜45重量%、より好ましくは3〜40重量%の範囲であり得る。
【0064】
[0074]重合は、任意の適切な温度、例えば、−20〜+100℃、好ましくは10〜80℃で実施することができる。
【0065】
[0075]重合は、ブロックのそれぞれについて適当な鎖長を得るのに適切な任意の時間にわたって実施することができ、この時間は約1分〜100時間であり得る。
【0066】
[0076]触媒の量は、任意の適切な量から選択することができる。例えば、触媒とモノマーとのモル比は、約1:10〜約1:1000、好ましくは約1:50〜1:500、より好ましくは約1:100〜約1:200であり得る。例えば、触媒とモノマーとのモル比は、1:n及び1:mであり得、このときn及びmは平均重合度である。
【0067】
[0077]2種のモノマーの重合の後、ジブロックコポリマーの鎖末端は、任意選択で置換されたアルキルビニルエーテルを重合混合物に加えることによって、末端処理される。
【0068】
[0078]ジブロックコポリマーは、非溶剤を用いた沈殿等の適切な技法によって単離することができる。
【0069】
[0079]結果として得られたジブロックコポリマー前駆体は、式(I)又は(II)のブロックコポリマーを得るために、水素化され得る。水素化は、任意の適切な技法によって、例えば、水素ガス及び触媒の使用によって、実施することができる。不均質又は均質の任意の適切な触媒を用いることができる。不均質触媒の例には、Raneyニッケル、パラジウム炭素、NaBH
4還元ニッケル、白金金属又はその酸化物、ロジウム、ルテニウム、NaH−RONa−Ni(OAc)
2及び酸化亜鉛が含まれる。均質触媒の例には、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、すなわちWilkinson触媒、及びクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ヒドリドルテニウム(II)が含まれる。
【0070】
[0080]ジブロックコポリマーは、水素ガス及び第二世代Grubbs触媒の使用によって水素化することが好ましい。ポリマーと触媒とのモル比を変更することによって、様々な水素化度を得ることができる。部分水素化ブロックコポリマー、例えば、式ポリ(M1
xHM1
n−x/M2HM2
m−y)(式中、M1は第一のモノマーであり、HM1は水素化された第一のモノマーであり、M2は第二のモノマーであり、HM2は水素化された第二のモノマーである)のコポリマーを得るために、水素化度を制御することができる。x及びyは、水素化されていないモノマーの数を表す。n−x及びm−yは、水素化されたモノマーの数を表す。部分水素化を実施すると、結果として得られるブロックコポリマーは、マルチブロックコポリマー、例えばトリブロック又はテトラブロックコポリマーである。一実施形態において、二重結合に対して約1:100のモル当量の触媒投入量([G2]
モル:[二重結合]
モル=約1:100)であると、前駆体コポリマーは完全水素化される。比は、約1:100〜約1:500又は約1:600で変更することができ、部分水素化されたブロックコポリマーを得ることができる。結果として得られたコポリマーは、トリブロック、テトラブロック又はより多いマルチブロックコポリマーであり得る。
【0071】
[0081]ジブロックコポリマー前駆体の調製の間に形成された出発ホモポリマー、及び本発明のジブロック又はマルチブロックコポリマーは、任意の公知の技法によって、それらの分子量及び分子量分布について特性解析することができる。例えば、MALS−GPC技法を採用することができる。この技法は、移動相を用いて、ポリマー溶液を、固定相が充填されたカラムのバンクを通して、高圧ポンプによって溶離する。固定相は、鎖サイズによってポリマーサンプルを分離し、その後、3つの異なる検出器によってポリマーを検出する。一連の検出器、例えば、紫外線検出器(UV検出器)と、その後の多角度レーザー光散乱検出器(MALS検出器)と、その次の示差屈折検出器(RI検出器)とが一列になったものを採用することができる。UV検出器は、波長254nmでのポリマーの光吸収を測定し、MALS検出器は、ポリマー鎖からの散乱光を移動相に対して相対的に測定する。
【0072】
[0082]本発明のブロックコポリマーは、高度に単分散であることが好ましい。例えば、コポリマーは、1.01〜1.2、好ましくは1.05〜1.10のMw/Mnを有する。
【0073】
[0083]一実施形態において、本発明は、上に記載したジブロック又はマルチブロックコポリマーを含む多孔性膜を提供する。本発明の一実施形態によれば、多孔性膜は、ナノ多孔性膜、例えば1nm〜100nmの間の直径の孔を有する膜である。
【0074】
[0084]一実施形態において、多孔性膜は、ハイブリッドキャスティングプロセスによって調製され、このプロセスによれば、ブロックコポリマーの溶液を薄層フィルムとして支持体上にキャストし、薄層フィルム中に存在する溶剤又は溶剤混合物の一部を蒸発させ、薄層フィルムがコーティングされた支持体を、ブロックコポリマーの非溶剤を含有する浴に浸漬する。結果として得られた膜は、多孔性の下層によって支持された自己組織化ナノ構造の層から構成される。例えば、膜は、第一の層及び第二の層を含む多孔性非対称膜であり、第一の層は、ジブロックコポリマーと、ミクロ及びマクロの経路が流体流のための蛇行した通路を提供するように連結した多孔性構造のネットワーク中にジブロックコポリマーを含む第二の層へ連続的に延びる円柱形態に秩序化された孔とを含む。このような膜の一実施形態を、
図6に例証する。
【0075】
[0085]膜を調製するため、先ずブロックコポリマーを適切な溶剤又は溶剤系に溶解して、ポリマー溶液を得る。ポリマー溶液は、当業者に公知の任意の適切な方法によって調製することができる。ブロックコポリマーを溶剤系に添加し、均一な溶液が得られるまで撹拌する。所望により、溶液を長時間撹拌して、ブロックコポリマーが熱力学的に有利な構造を溶液中で呈するようにすることができる。ブロックコポリマーは、良溶剤、又は良溶剤を含有する混合物中に溶解する。
【0076】
[0086]適切な溶剤系の実施形態には、ハロゲン化炭化水素、エーテル、アミド及びスルホキシドから選択される溶剤又は溶剤混合物が含まれる。一実施形態において、溶剤系は、揮発性溶剤、例えば沸点が100℃未満の溶剤を含む。
【0077】
[0087]例えば、溶剤系は、ジクロロメタン、1−クロロペンタン、クロロホルム、1,1−ジクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、1,3−ジオキサン及び1,4−ジオキサンから選択される溶剤又は溶剤混合物を含む。
【0078】
[0088]従って、例えば、DMFとTHFとの混合物、NMPとTHFとの混合物、DMAと1−クロロペンタン、DMAとTHFとの混合物、DMSOとTHFとの混合物、DMSOと1−クロロペンタンとの混合物、NMPと1−クロロペンタンとの混合物、DMFと1−クロロペンタンとの混合物、1,3−ジオキサンとTHFとの混合物、1,4−ジオキサンとTHFとの混合物、又は1,3−若しくは1,4−ジオキサンとDMFとTHFとの混合物を、溶剤系として採用することができる。
【0079】
[0089]好ましい実施形態において、DMFとTHFとの混合物、DMAとTHFとの混合物、DMAと1−クロロペンタンとの混合物、DMSOとTHFとの混合物、1,3−ジオキサンとTHFとの混合物、1,4−ジオキサンとTHFとの混合物を、溶剤系として採用することができる。
【0080】
[0090]より好ましい実施形態において、DMFとTHFとの混合物、DMAと1−クロロペンタンとの混合物、又はNMPとTHFとの混合物を、溶剤系として採用することができる。
【0081】
[0091]上記の実施形態において、溶剤混合物を溶剤系として用いる場合、混合物は、任意の適切な比の溶剤を含むことができ、例えば、二元溶剤混合物においては、いずれの溶剤も、80/20、75/25、70/30、65/35、60/40、55/45若しくは50/50の体積若しくは質量比、又はこれらの間の任意の比で存在することができる。三元溶剤系においては、任意の3種の溶剤は、任意の適切な比、例えば、80/10/10、75/15/10、70/20/10、65/25/10、60/30/10、55/25/30、40/40/20若しくは30/30/40の体積若しくは質量比、又はこれらの間の任意の比で存在することができる。
【0082】
[0092]ポリマー溶液は、任意の適切な量のブロックコポリマーを含有することができる。一実施形態によれば、ポリマー溶液は、ブロックコポリマーを約10〜約35重量%以上、好ましくは約12〜約18重量%、より好ましくは約12〜約16重量%含有する。一例において、ポリマー溶液は、ブロックコポリマーを約15重量%含有する。ポリマー濃度によってフィルムの厚さを制御することができ、従って得られる膜の厚さを制御することができる。ポリマー濃度によって膜の多孔率も制御することができ、濃度が高ければ多孔性の低い膜が製造される。
【0083】
[0093]実施形態によれば、ポリマー溶液は、ブロックコポリマー、NMP及びTHFを、質量%で15:34:51の比で含有し、ポリマー溶液は、ブロックコポリマー、DMF及びTHFを、質量%で15:51:34の比で含有し、ポリマー溶液は、ブロックコポリマー、DMF及びTHFを、質量%で15:34:51の比で含有し、又は、ポリマー溶液は、ブロックコポリマー、DMF及びTHFを、質量%で12:35.2:52.8の比で含有する。一実施形態において、ポリマー溶液は、ブロックコポリマー、DMF及びTHFを、質量%で12:44:44の比で含有する。
【0084】
[0094]ポリマー溶液は、多孔性又は非多孔性であってよい基材上にキャストされる。基材の例には、ガラス板、プラスチックフィルム、織布若しくは不織布、シリコンウエハー又は金属板が含まれる。布の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル及びナイロン布が含まれる。ガラス板又はシリコンウエハーは、ポリビニルアルコール等のポリマーでコーティングされ得る。
【0085】
[0095]基材表面は、結果として得られる形態配向に影響を持ち、配向又は形態の結果は、基材とジブロック中の各ブロックとの熱力学的相互作用に基づいて決定される。基材表面が2種のブロックのうちの一方と有利な相互作用を有するならば、ジブロックコポリマーは、基材表面が有利な相互作用を有するブロックを広げてそのブロックを露出させることによって、相互作用が最大となるようにして自己組織化することになる。例えば、円柱形態の場合、基材が一方のブロックと他方のブロックよりも高い親和性を有するならば、円柱は、円柱が基材表面に平行になるようにして基材表面と相互作用することになる。基材表面がいずれのブロックにも中立である又は親和性がほとんどないならば、円柱は基材に対して垂直に整列する。
【0086】
[0096]フィルムは、任意の適切な厚さであり得る。例えば、ガラス板上にキャストする際、ポリマー溶液は、ドクターブレード等のキャスティングナイフの補助によって、ガラス板上に約10〜約300ミクロン、好ましくは約100〜約250ミクロン、より好ましくは約150〜約200ミクロンの厚さに付着され得る。ポリマー溶液は、任意の適切な温度、例えば、約10℃〜約40℃、好ましくは約15℃〜約30℃、より好ましくは約20℃〜約25℃でキャストされる。
【0087】
[0097]基材は、静止していても動いていてもよい。一実施形態において、基材は、動くベルト、プラスチックフィルム又は布である。コーティングの厚さは、布及び/又は布とポリマー溶液ディスペンサーの出口との間の隙間へ搬送されるポリマー溶液の量によって調整される。
【0088】
[0098]ポリマー溶液の薄層フィルムは、その後、任意選択で1種の溶剤又は複数種の溶剤のゆっくりとした蒸発を伴って、適切な時間をかけて自己組織化ナノ構造を発現し、その時間は、約1秒〜約30分以上、好ましくは約5秒〜約5分以上、より好ましくは約10秒〜約1分以上であり得る。ナノ構造は、上面、例えば空気界面表面から始まって発現し、任意の適切なフィルムの深さまでフィルムの底面へと進む。ナノ構造の発現の深さは、溶剤の蒸発の速度、ポリマー溶液の粘度、ポリマーの緩和速度及びその可動性、濃度、並びにポリマーと溶剤との相互作用又はカイパラメータを含めたいくつかの要因に依存することになる。例えば、ナノ構造は、フィルムの上面から10nm〜約1000nm、好ましくは約50nm〜約200nm、より好ましくは約100nm〜約200nmの深さまで発現する。
【0089】
[0099]上記の基材が上記のナノ構造の発現の間に維持される雰囲気は、任意の適切な雰囲気、例えば、周囲雰囲気、制御された湿度及び/若しくは温度の雰囲気、不活性ガス雰囲気又は真空であり得る。任意選択で、雰囲気は、溶剤蒸気を含んで蒸気中でポリマー溶液のフィルムをアニーリングして、ポリマーの自己組織化を誘発するようにしてもよい。
【0090】
[0100]いかなる理論又はメカニズムにも固執しようとするものではないが、ナノ構造の形成は、以下のようにして起こると考えられる。溶液中のブロックコポリマーは、ある種の熱力学的な力を受ける。ブロックコポリマーは、共有結合によって連結された、少なくとも2つの化学的に異なるポリマー鎖ブロックを含むため、2つのブロックの間には非親和性が存在する。加えて、連結する共有結合によって与えられる、連結の制約が存在する。これらの熱力学的な力の結果として、ブロックコポリマーは、適切な溶剤系に溶解されると、秩序化した形態を平衡して呈する、ミクロ相に分離したドメインへと自己組織化する。フィルムが希釈溶液からキャストされると、ブロックコポリマーは、異なるブロックからそれぞれ作られるコアとコロナとから構成されるミセルを形成する。希釈溶液において、ミセルは、互いに離れようとする傾向にある。しかしながら、濃厚な溶液、例えば、溶剤が溶液の薄層フィルムから蒸発によって除去されたときの溶液においては、ミセルは凝集し、その結果、コロナは合体して連続マトリックスを形成し、コアは合体して多孔質流路を形成するという傾向にある。
【0091】
[0101]ブロックコポリマーが秩序化された構造を形成する能力は、ポリマーの緩和速度、ポリマーの粘度、ポリマーの濃度、及び溶剤の性質、特にカイパラメータ又はHansen溶解度パラメータを含めたいくつかの要因に依存する。両方のブロックに対して中立な溶剤は、円柱孔を膜表面に対して垂直に配向させる傾向がある。ブロックコポリマーを溶解するために選択される溶剤系は、自由エネルギーの最小化及び秩序化された構造の形成のための駆動力を提供する。従って、溶剤又は溶剤系の選択は、秩序化されたナノ構造を得る際に重要な要因である。
【0092】
[0102]ナノ構造が形成された後、薄層フィルムは、凝固浴に浸漬される。凝固浴は、非溶剤若しくは貧溶剤又は良溶剤と非溶剤若しくは貧溶剤との混合物を含有する。ポリマー溶液の調製に関して上記に挙げたいずれかの溶剤を、良溶剤としてここで使用することができる。凝固浴は、良溶剤と非溶剤又は貧溶剤とを任意の適切な量で含有し得る。例えば、二元混合物においては、良溶剤と非溶剤又は貧溶剤とのいずれも、80/20、75/25、70/30、65/35、60/40、55/45若しくは50/50の体積若しくは質量比、又はそれらの間の任意の比で存在し得る。三元溶剤系においては、いずれかの溶剤が、任意の適切な比、例えば、80/10/10、75/15/10、70/20/10、65/25/10、60/30/10、55/25/30、40/40/20若しくは30/30/40の体積若しくは質量比、又はそれらの間の任意の比で存在し得る。
【0093】
[0103]一実施形態によれば、水並びにメタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノール等の低級アルコールは、ブロックコポリマーの非溶剤及び/又は貧溶剤である。ペンタン、ヘキサン及びシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素は、貧溶剤のさらなる例である。一実施形態において、凝固浴は、イソプロパノールを含み又は専らイソプロパノールから構成される。別の実施形態において、凝固浴は、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド及び水の混合物を含有する。例えば、一実施形態において、凝固浴は、質量%で約80:20の比のイソプロパノール及びDMSOから構成され、別の一実施形態において、凝固浴は、質量%で約60:20:20の比のイソプロパノール、DMSO及び水の混合物から構成され、さらに別の一実施形態において、凝固浴は、質量%で約60:20:20の比のイソプロパノール、DMSO及び水の混合物から構成される。
【0094】
[0104]凝固浴は、任意の適切な温度、例えば、約2℃〜約50℃、好ましくは約5℃〜約25℃、より好ましくは約10℃〜約20℃であり得る。
【0095】
[0105]フィルムは、任意の適切な長さの時間、例えば、約1分〜約20分、好ましくは約2分〜約10分、より好ましくは約3分〜約5分にわたって凝固浴中にあってよい。この時間の間、ナノ構造としてではなくむしろ溶液としてフィルム中に残存しているブロックコポリマーが相反転して多孔性構造を生成する。
【0096】
[0106]フィルムをその後、水浴で、適切な長さの時間、例えば、約1分〜約2時間洗浄して残留溶剤を除去し、任意選択で乾燥して、本発明の実施形態によるナノ多孔性膜を得る。
【0097】
[0107]一実施形態によれば、膜は、第一の層及び第二の層を含む非対称膜であり、第一の層は、ブロックコポリマーと、ミクロ及びマクロの経路が流体流のための蛇行した通路を提供するように連結した多孔性構造のネットワーク中にブロックコポリマーを含む第二の層へ連続的に延びる円柱形態に秩序化された孔とを含む。
【0098】
[0108]第一の層は、ブロックコポリマーを含み、孔は、円柱形態に秩序化され、且つ膜の平面及び直径が約40〜約60nmの範囲であり平均孔長さが約50nmである円柱孔に対して垂直であり、第二の層は、ブロックコポリマーのミクロ多孔性層を含む。ミクロ多孔性層の孔径は、約100nm〜約10ミクロン、約200nm〜約5ミクロンであってよく、実施形態において約100nm〜約2μmであってよい。膜は、膜の平面に対して垂直に配向した円柱孔を表皮中に有する、一体化した表皮を持つ多孔性膜であり、表皮は、同じブロックコポリマーのミクロ多孔性支持体によって支持されている。
【0099】
[0109]一実施形態において、第一の層は、約50nm〜約200nmの厚さを有し、第二の層は、約100μm〜約300μmの厚さを有する。
【0100】
[0110]一実施形態において、基材、例えばポリマー基材は、適切な溶剤中に溶解除去され、それによって薄層フィルムを回収することができる。例えば、薄層フィルムが上部に成長させたSiO
2層を有するシリコンウエハー上にキャストされる場合、SiO
2層は、フッ化水素酸に溶解されて、ブロックコポリマーの薄層フィルムを解放し回収することができる。
【0101】
[0111]一実施形態において、回収された薄層フィルムは、より多孔性の高い支持体、例えば、1〜約100μmの範囲の直径を有する孔を有する支持体に接着させて、それによって、ブロックコポリマーのナノ多孔性層が保持層として働き、より多孔性の高い基材層が支持体として働く、複合膜を得ることができる。
【0102】
[0112]或いはまた、薄層フィルムは、多孔性支持体上にコーティングされ得る。このようにして調製された多孔性膜は、ジブロックコポリマーと、ミクロ及びマクロの経路が流体流のための蛇行した通路を提供するように連結した多孔性構造のネットワーク中にジブロックコポリマーを含む第二の層へ連続的に延びる円柱形態に秩序化された孔とを含む第一の層を有することになり、これが今度はより大きな孔の支持体に支持されて、それによって複合膜が構成される。
【0103】
[0113]支持体は、任意の適切なポリマー、例えば、ポリ芳香族、スルホン(例えば、芳香族ポリスルホンを含めたポリスルホン、例えば、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルスルホン、ビスフェノールAポリスルホン、ポリアリールスルホン及びポリフェニルスルホン等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリハロゲン化ビニリデン(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含む)、ポリプロピレン及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル((PANs)ポリアルキルアクリロニトリルを含む)、セルロース系ポリマー(セルロースアセテート及びニトロセルロース等)、フルオロポリマー、及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から作製され得る。
【0104】
[0114]本発明の実施形態による膜は、様々な用途において用いることができ、用途には、例えば、診断用途(例えば、サンプル調製及び/若しくは診断ラテラルフロー装置を含む)、インクジェット用途、製薬産業用流体の濾過、医療用途用流体の濾過(家庭及び/若しくは患者が使用するためのもの、例えば静脈内用途、並びに例えば血液等の生物流体の濾過(例えば白血球の除去のため)を含む)、エレクトロニクス産業用流体の濾過(例えば、マイクロエレクトロニクス産業におけるフォトレジスト流体の濾過)、食品及び飲料産業用流体の濾過、浄化、抗体及び/若しくはタンパク質含有流体の濾過、核酸含有流体の濾過、細胞検出(in situを含む)、細胞採取、並びに/又は細胞培養流体の濾過が含まれる。これらに代えて又はこれらに加えて、本発明の実施形態による膜は、空気及び/若しくはガスを濾過するために用いることができ、並びに/又は排出用途(例えば、液体ではなく、空気及び/若しくはガスを通り抜けさせること)に用いることができる。本発明の実施形態による膜は、様々な装置において用いることができ、装置には、手術用装置及び製品、例えば眼科手術用製品等が含まれる。
【0105】
[0115]本発明の実施形態によれば、膜は、平面状、フラットシート、ひだ状、管状、らせん状及び中空繊維を含めた様々な外形を有し得る。
【0106】
[0116]本発明の実施形態による膜は、少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を含み且つ入口と出口との間に少なくとも1つの流体流路を定めるハウジング中に、少なくとも1つの本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルターが流体流路を横切って典型的に配置されて、フィルター装置又はフィルターモジュールを提供する。一実施形態において、入口及び第一の出口を含み且つ入口と第一の出口との間に第一の流体流路を定めるハウジングと、少なくとも1つの本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルターとを含み、本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルターが、第一の流体流路を横切るようにハウジング内に配置された、フィルター装置が提供される。
【0107】
[0117]クロスフロー用途には、少なくとも1つの本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルターが、少なくとも1つの入口及び少なくとも2つの出口を含み且つ入口と第一の出口との間に第一の流体流路及び入口と第二の出口との間に第二の流体流路を少なくとも定めるハウジング中に、本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルターが第一の流体流路を横切って配置されて、フィルター装置又はフィルターモジュールを提供することが好ましい。例証的実施形態において、フィルター装置は、クロスフローフィルターモジュールを含み、ハウジングは、入口と濃縮物出口を含む第一の出口と濾液出口を含む第二の出口とを含み且つ入口と第一の出口との間に第一の流体流路及び入口と第二の出口との間に第二の流体流路を定め、少なくとも1つの本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルターは、第一の流体流路を横切って配置される。
【0108】
[0118]フィルター装置又はモジュールは、殺菌可能であってもよい。適切な形であり、1つの入口と1つ又は複数の出口とを備えた、任意のハウジングを採用してもよい。
【0109】
[0119]ハウジングは、処理される流体と親和性のある、任意の不浸透性の熱可塑性材料を含めた、任意の適切な硬質の不浸透性の材料から作られ得る。例えば、ハウジングは、ステンレス鋼等の金属、又はポリマー、例えば、アクリル系、ポリプロピレン、ポリスチレン又はポリカーボネート樹脂等の透明若しくは半透明ポリマーから作られ得る。
【実施例】
【0110】
[0120]以下の実施例は、本発明をさらに例証するものであるが、当然のことながら、本発明の範囲について何らかの限定をするものと解釈されるべきではない。
【0111】
実施例1
[0121]この実施例は、モノマー及びポリマーの調製において用いられるいくつかの材料について説明するものである。
【0112】
[0122]マレイミド、フラン、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)、トリフェニルホスフィン(Ph
3P)、1−ヘキサデカノール、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、N−フェニルマレイミド、アセトニトリル、メタノール、Grubbs第二世代触媒、3−ブロモピリジン及びペンタンは、Sigma−Aldrich Co.から入手して、さらなる処理なしで用いた。ジクロロペンタンもSigma−Aldrich Co.から入手したが、使用前に塩基性アルミナで処理した。
【0113】
実施例2
[0123]この実施例は、本発明の実施形態による第一及び第二のモノマーの調製における中間体であるexo−7−オキサノルボルネン−5,6−ジカルボキシイミド(C1)の調製を例証するものである。
【0114】
[0124]マグネチックスターラーバーを備えた清浄な500mL丸底フラスコ(RBF)内で、フラン(21.0g、309mmol)を、マレイミド(25g、258mmol)の酢酸エチル250mL中の溶液に加えた。混合物を90℃で30時間加熱した。エーテル(100mL、3X)で洗浄し濾過すると、溶液からC1が白色沈殿として得られた。白色固体を真空下で室温にて24時間乾燥した。C1が、収率29g、68%で、純粋なエキソ異性体として得られた。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ(ppm)8.09(s,1H)、6.53(s,2H)、5.32(s,2H)、2.89(s,2H)。
【0115】
実施例3
[0125]この実施例は、ジクロロ[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン](ベンジリデン)ビス(3−ブロモピリジン)ルテニウム(II)(G3)触媒の調製を例証するものである。
【0116】
[0126]上に例証した第二世代Grubbs触媒(G2)(1.0g、1.18mmol)を、50mLフラスコ内で3−ブロモピリジン(1.14mL、11.8mmol)と混合した。室温で5分撹拌すると、赤色混合物が鮮やかな緑色に変わった。撹拌しながら、ペンタン(40mL)を15分かけて加え、緑色固体を得た。混合物を冷凍庫で24時間冷却し、真空濾過した。結果として得られた緑色固体であるG3触媒を冷ペンタンで洗浄し、真空下で室温にて乾燥して、収量0.9g、収率88%を得た。
【0117】
実施例4
[0127]この実施例は、第一のモノマーexo−7−オキサノルボルネン−N−ヘキサデシル−5,6−ジカルボキシイミドの調製を例証するものである。
【0118】
[0128]マグネチックスターラーバーを備えた清浄な500mLのRBF内で、乾燥窒素ガス流下にて、exo−7−オキサノルボルネン−5,6−ジカルボキシイミド(C1)(10g、61mmol)、Ph
3P(23.84g、91mmol)、及び1−ヘキサデカノール(17.6g、72.7mmol)を、無水THF(130mL)に溶解した。溶液を氷浴中で冷却した。冷却された溶液へ、DIAD(22.1g、109.3mmol)を滴下漏斗から滴下して加えた。反応混合物を室温まで温め、24時間撹拌した。乾燥するまでTHFをロータリーエバポレーターによって除去し、白色固体を得た。メタノール(2X)から結晶化させ、室温にて真空下で24時間乾燥させると、白色固体としての粗製物から第一のモノマーが得られた(収率18.6g、80%)。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ(ppm)6.5(s,2H)、5.26(s,2H)、5.32(s,2H)、3.45(t,2H)、2.82(s,2H)、1.56〜1.38(m,2H)、1.28〜1.1(m,26H)、0.88(t,3H)。
【0119】
実施例5
[0129]この実施例は、第二のモノマーexo−7−オキサノルボルネン−N−フェニル−5,6−ジカルボキシイミドの調製を例証するものである。
【0120】
[0130]マグネチックスターラーバーを備えた清浄な500mL丸型フラスコ(RBF)内で、フラン(29.51g、433.5mmol)を、N−フェニルマレイミド(25g、144.5mmol)のアセトニトリル135mL中の溶液に加えた。溶液を90℃で5時間還流させた。反応混合物を冷却すると、白色結晶固体が得られた。第二のモノマーを、固体を濾過することによって得て、アセトニトリル(2X)からの再結晶によって精製した。収率19g、76%。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ(ppm)7.55〜7.35(m,3H,フェニル)、7.35〜7.2(m,2H,フェニル)、6.57(s,2H)、5.37(s,2H)、3.05(s,2H)。
【0121】
実施例6
[0131]この実施例は、本発明の実施形態による膜の調製に適切なジブロックコポリマーの調製を例証するものである。
【0122】
[0132]実施例3からのGrubbs第三世代(G3)触媒(34.4mg、0.039mmol)を、フッ化ポリマー樹脂−シリコン隔膜頂部開口型キャップを備えた40mLバイアルに秤量した。触媒を、アルゴンで脱気したジクロロメタン(DCM)(60mL)に溶解し、カニューレを介して、スターラーバーを備えた清浄な1LのRBFに移した。第一のモノマー(1.5g、3.85mmol)のDCM(86mL)中の溶液を、アルゴンで脱気し、触媒溶液中へ移し、30分間撹拌した。第一のモノマーから形成されたホモポリマーの1〜2mLのアリコートを、分子量特性解析のために、30分後に取得した。第二のモノマー(7.9g、32.8mmol)のDCM(208mL)中の溶液を、アルゴンで脱気し、RBF内の成長ホモポリマー溶液中へ移し、フラスコの内容物をさらに60分間撹拌した。その後、ジブロックコポリマーの黄色溶液にエチルビニルエーテル(2mL)を加えて、重合を終結させた。結果として得られたポリマーをメタノール(2L、2X)中で沈殿させ、白色固体として純粋なポリマーを回収した。ポリマーを濾過し、真空下で室温にて乾燥した;収率(9.2g、98%)。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ(ppm)7.7〜7.25(m,3H,フェニル)、7.25〜6.8(m,2H,フェニル)、6.3〜5.9(ブロード,1H)、5.9〜5.3(ブロードm,1H)、5.3〜4.9(ブロードm,1H)、4.9〜4.2(ブロードm,1H)、3.6〜3.0(ブロードs,2H)、1.6〜1.4(ブロード,2H)、1.4〜1.0(s,26H)、0.88(t s,3H)。
【0123】
実施例7
[0133]この実施例は、実施例6において得られたジブロックコポリマー前駆体を水素化して本発明の一実施形態によるジブロックコポリマーを得る方法を例証するものである。
【0124】
[0134]ジブロックコポリマー前駆体をDCM中に溶解した(400mLに15g)。シリカゲル基材(10g、40〜63ミクロンフラッシュクロマトグラフィー粒子)を伴ったGrubbs第二世代触媒(480mg、565mmol)、及び前駆体溶液を、Parr高圧反応容器に移し、反応容器に水素ガス(1500psi)を充填した。反応容器を50℃に24時間加熱した。結果として得られたポリマー混合物を濾過し、メタノール(2x)中へ沈殿させて、白色沈殿物を得た(収率12g、80%)。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ(ppm)7.6〜7.45(m,3H,フェニル)、7.4〜6.8(m,2H,フェニル)、4.5〜3.55(ブロード m,2H)、3.5〜2.6(ブロード m,2H)、2.5〜1.6(ブロード s,2H)、1.6〜1.4(ブロード s,2H),1.4〜1.0(s,26H)、0.88(t s,3H)。
【0125】
実施例8
[0135]この実施例は、多角度レーザー光散乱及びゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてジブロックコポリマーの特性解析をする方法を例証するものである。
【0126】
[0136]実施例6において得られたホモポリマー及びジブロックコポリマーを、それらの分子量及び分子量分布特性について、以下の条件でのMALS−GPC法によって特性解析した。
【0127】
[0137]移動相:ジクロロメタン(DCM)
[0138]移動相温度:30℃
[0139]UV波長:245nm
[0140]使用カラム:PSS SVD Lux分析カラム(スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーネットワーク)3本。カラムは、1000A、100,000A及び1,000,000Aの孔径を有する、5マイクロメートルの固定相ビーズ、並びにガードカラムを有する。
[0141]流速:1mL/分
[0142]GPCシステム:UV及びRI検出器を有するwaters HPLC alliance e2695システム
[0143]MALSシステム:664.5nmのレーザーで動作する8つの検出器を有するDAWN HELEOS 8システム
【0128】
[0144]クロマトグラムを
図1に示す。ジブロックコポリマー前駆体2は、より高い分子量を有するため、ホモポリマー1よりも早く溶出した。本発明のジブロックコポリマー3も、より高い分子量を有するため、ホモポリマー1よりも早く溶出した。水素化されたコポリマー3は、水素化の分子量への影響が予想よりやや小さいため、コポリマー前駆体2に近い分子量を有している。
【0129】
実施例9
[0145]この実施例は、本発明の一実施形態による多孔性膜を調製する方法を例証するものである。
【0130】
[0146]実施例7からのジブロックコポリマーを含有するキャスティング溶液を、ジブロックコポリマーをDMF及びTHFと、清澄な溶液が得られるまで混合することによって調製した。溶液は、ジブロックコポリマー、DMF及びTHFを、質量%で15:51:34又は質量%で12:44:44のいずれかの比で含有していた。
【0131】
[0147]基材として用いたガラス板又はポリエステル不織布(HIROSE 05TH)上に薄層フィルムをキャストして、7〜8ミル(すなわち約177〜200ミクロン)厚の湿潤膜フィルムをもたらした。湿潤フィルムを、60秒又は30秒の期間にわたって静置して、自己組織化ナノ構造を発現させ、それに続いて、イソプロパノールを含有する凝固浴に20℃で5分の期間にわたって浸漬した。フィルムを洗浄及び乾燥し、結果として得られた膜を原子間力顕微鏡(AFM)を用いて画像化して、それらのナノ構造を明らかにした。
【0132】
[0148]
図2Aは、ジブロックコポリマー、DMF及びTHFを質量%で15:51:34の比で含有する溶液から、凝固前の静置時間が60秒で調製された膜の表面のトポグラフィー(高さ)のAFM画像であり、
図2Bは、膜の相のAFM画像である。フィルムをキャストするための基材として、ガラスを用いた。
【0133】
[0149]
図3Aは、ジブロックコポリマー、DMF及びTHFを質量%で12:44:44の比で含有する溶液から、凝固前の静置時間が60秒で調製された膜の表面のトポグラフィー(高さ)のAFM画像であり、
図3Bは膜の相である。フィルムをキャストするための基材として、ガラスを用いた。
【0134】
[0150]
図4は、ジブロックコポリマー、DMF及びTHFを質量%で12:44:44の比で含有する溶液から、凝固前の静置時間が30秒で調製された膜の表面のAFM相画像である。フィルムをキャストするための基材として、ガラスを用いた。
【0135】
[0151]
図5は、ジブロックコポリマー、DMF及びTHFを質量%で15:51:34の比で含有する溶液から、前の静置時間が60秒で調製された膜の表面のAFM相画像である。フィルムをキャストするための基材として、ポリエステル不織布を用いた。
【0136】
[0152]
図7は、
図2AのAFM高さ画像から抽出した孔径の周期性のラインプロファイルである。
【0137】
[0153]
図8Aは、
図2Aの膜の表面のFE−SEM画像である。
【0138】
[0154]
図8Bは、
図2Aの膜の透視のFE−SEM画像である。
【0139】
[0155]
図9は、
図2Aの膜の断面のFE−SEM画像である。
【0140】
[0156]
図10は、
図3Aの膜の断面のFE−SEMである。
【0141】
[0157]AFM画像から、ジブロックコポリマーは、空気界面に円柱形態の孔を含む秩序化された構造に自己組織化し、秩序化された構造は、下にある多孔性支持体構造によって支持されていることが分かる。
【0142】
[0158]表面孔は、約40nm〜約70nmの範囲の狭い孔径を有し、円柱孔は、厚さ方向に約150mm〜約200mmの深さまで達している。
【0143】
[0159]本明細書において引用した刊行物、特許出願及び特許を含めた全ての参考文献は、各参考文献が参照によって組み込まれることが個々に具体的に示され且つその全体が本明細書に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0144】
[0160]本発明を説明する文脈における(とりわけ、以下の特許請求の範囲の文脈における)用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1つ(at least one)」並びに同様の指示対象の使用は、明細書中に特段示されていない限り又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈されるべきである。1つ又は複数の項目の列挙に続く用語「少なくとも1つ」の使用(例えば、「A及びBの少なくとも1つ」)は、明細書中に特段示されていない限り又は文脈と明らかに矛盾しない限り、列挙された項目から選択される1つの項目(A若しくはB)、又は列挙された項目の2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」は、特段記されていない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むが、限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書に特段示されていない限り、その範囲内の別個の値それぞれを個々に言及する簡略表記法としての役目を果たすことを意図したものにすぎず、別個の値それぞれが、本明細書に個々に記載されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書に特段示されていない限り又は文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書において提示される任意の例及び全ての例又は例示的な語(例えば「等」)の使用は、本発明をより良く明らかにすることを意図したものにすぎず、特許請求されていない限り、本発明の範囲を限定しようとするものではない。本明細書におけるいかなる語も、特許請求されていない要素を、本発明の実践のために不可欠なものとして示していると解釈されるべきではない。
【0145】
[0161]発明者らが知っているこの発明を実施するための最良の形態を含めて、本発明の好ましい実施形態を本明細書に記載する。以上の記載を読んだ当業者には、これらの好ましい実施形態の変形が明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がそのような変形を適宜採用することを予想しており、本発明者らは、本発明が具体的に本明細書に記載されたのとは異なって実践されることを意図している。従って、本発明は、本明細書に添付した特許請求の範囲に記載された主題の、準拠法によって許される全ての改変及び均等物を含む。さらに、上記の要素の、それらの全ての可能な変形における任意の組み合わせは、本明細書に特段示されていない限り又は文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。