(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967536
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】ワンタッチキャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 41/18 20060101AFI20160728BHJP
B65D 35/44 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
B65D41/18
B65D35/44 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-190238(P2012-190238)
(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-46939(P2014-46939A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 茂雄
【審査官】
吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−081988(JP,A)
【文献】
特開2008−56313(JP,A)
【文献】
実開昭63−166947(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/18
B65D 35/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋を成す天板(1)と、該天板の外周縁に連結して胴部側面を形成する側板(2)と、前記天板(1)の裏面(1a)に垂直に設けられ側壁部(3b)の開口端に沿って該開口端から天板裏面(1a)の方向に向けて複数の切り欠き(3c)が周設された内筒部(3)とを備え、該内筒部(3)が容器口部(10)に嵌合して容器口元部(10b)を天板裏面(1a)によって閉栓するように作用し該容器口部(10)に対し繰り返し着脱可能に構成されたワンタッチキャップであって、
前記内筒部(3)の前記側壁部(3b)には、該内筒部(3)の内側と外側を連通する貫通穴(3d)が、前記切り欠き(3c)の先端位置よりも前方側で前記天板裏面(1a)近傍に設けられていることを特徴とするワンタッチキャップ。
【請求項2】
前記貫通穴(3d)が、前記天板裏面(1a)を壁面の一つとする断面矩形状に形成され、貫通穴(3d)の天板裏面(1a)に対向する壁面が、前記側壁部(3b)の内側から外側に向けて天板裏面(1a)との間隔を狭める傾斜面に形成されている請求項1記載のワンタッチキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワンタッチキャップ、特に、容器口部に繰り返し着脱されるワンタッチキャップにおいてキャップと容器口部が嵌め合う部分に内容物が少しずつ堆積してキャップと容器口部の嵌合を阻害することを好適に防止するワンタッチキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
胴部が略円柱状(楕円柱状も含む)または略多角柱状などの中空キャップで、天板裏面に容器口部に嵌合する内筒部が垂直に設けられ、ユーザーがキャップ側板を横方向に摘むことにより、キャップに離脱する力が働き内筒部と容器口部の嵌合が解除されキャップは容器口部から離脱され、他方、ユーザーがキャップを容器口部に押し付けることにより内筒部と容器口部が嵌合しキャップは容器口部に装着されるように構成された、繰り返し着脱可能なワンタッチキャップが広く用いられている(例えば、特許文献1の
図6を参照。)。
【0003】
これらワンタッチキャップでは、容器口部の外周面に設けられた外周突起に内筒部の開口端近傍に設けられた内周突起(内周爪)が引っ掛かることにより、天板裏面によって容器口部出口(口元部)が閉栓され、一方、ユーザーがキャップ側板を摘むことにより、側板が容器肩部のテーパ面にそって上昇して、内筒部の切り欠き間において側壁部の連動(ベント)を誘起し、これにより内筒部の開口端が拡径して内筒部の内周突起が容器口部の外周突起から離脱し、容器口元部が開栓されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−329995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のワンタッチキャップでは、容器口部から内容物(中身)が吐出される過程において、粘性のある内容物が容器口元部に若干残り、キャップと容器口部が嵌合する毎に、キャップと容器口部が嵌め合う部分(天板裏面および内筒部の側壁部)に内容物が少しずつ堆積(蓄積)して、終いには、
図3に示すように、内筒部3の内周突起3aが容器口部10の外周突起10aに容易に係合することが出来ず、その結果、キャップと容器の嵌め合いが出来にくくなるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術の課題に鑑みなされたものであって、容器口部に繰り返し着脱されるワンタッチキャップにおいてキャップと容器口部が嵌め合う部分に内容物が少しずつ堆積してキャップと容器口部の嵌合を阻害することを好適に防止するワンタッチキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の課題を解決する請求項1記載の発明の手段は、蓋を成す天板(1)と、該天板の外周縁に連結して胴部側面を形成する側板(2)と、前記天板(1)の裏面(1a)に垂直に設けられ側壁部(3b)の開口端に沿って
該開口端から天板裏面(1a)の方向に向けて複数の切り欠き(3c)が周設された
内筒部(3)とを備え、該
内筒部(3)が容器口部(10)に嵌合して容器口元部(10b)を天板裏面(1a)によって閉栓するように作用し該容器口部(10)に対し繰り返し着脱可能に構成されたワンタッチキャップであって、
前記内筒部(3)の前記側壁部(3b)
には、該内筒部(3)の内側と外側を連通する貫通穴(3d)
が、前記切り欠き(3c)の先端位置よりも前方側で前記天板裏面(1a)近傍に設け
られていることを特徴とする。
【0008】
請求項1記載の上記構成では、内筒部の側壁部の天板裏面近傍
、すなわち上記切り欠きの先端よりも前方側で天板裏面に近い位置に上記貫通穴を設けたことにより、キャップと容器口部が嵌合する際、
容器口元部と天板裏面で挟まれて径方向外側に押し出された残留内容物が、
横に位置する貫通穴を通って内筒部の
天板裏面近傍で内側から径方向外側に好適に逃げることが出来るようになる。これにより、キャップと容器口部が嵌合する度に、容器口元部およびキャップ天板裏面等に残留した内容物が
、その都度、内筒部の内側から上記貫通穴を通って内筒部の
天板裏面近傍で径方向外側に
順次押し出されるため、
特にキャップと容器口部
の嵌め合
いで重要な容器口元部の端面およびその外周面付近に内容物が堆積しなくなり、その結果、キャップと容器口部の嵌め合いが出来にくくなるという問題は好適に改善されるようになる。
なお、上記構成において、貫通穴が天板裏面を壁面の一つとする断面矩形状に形成され、該貫通穴の天板裏面に対向する壁面が側壁部の内側から外側に向けて天板裏面との間隔を狭める傾斜面に形成された構成とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のワンタッチキャップによれば、以下に記す効果がある。
(1)容器口部に対し繰り返し着脱可能なワンタッチキャップにおいて、容器口元部およびキャップ天板裏面等に残留した内容物が、キャップと容器口部の嵌合の度に
、その都度、横に位置する上記貫通穴を通って内筒部の
天板裏面近傍で内側から径方向外側に
順次押し出されるため、キャップと容器口部
の嵌め合
いで重要な容器口元部の端面およびその外周面付近に内容物が堆積しなくなり、その結果、キャップと容器口部の嵌合を阻害することがなくなる。
(2)キャップ内筒部の側壁部に
、切り欠きの先端位置よりも前方側に別個に上記貫通穴を設けるという、複雑な改造ではなく既存の金型および製造設備を流用したシンプルな改造を適用することが出来るため、1パーツで構成され
、貫通穴の後方側に別個に形成されることで開口端側を拡径状に弾性変形させる複数の切り欠きによるキャップの着脱機能を安定させると共に、コストの低減も図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のワンタッチキャップと容器口部が嵌合した状態を示す要部断面図である。
【
図3】従来のワンタッチキャップと容器口部が嵌合した状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。
【0012】
図1−2は、本発明のワンタッチキャップ100を示す説明図である。なお、
図1は、本発明のワンタッチキャップ100と容器口部10が嵌合した状態を示す要部断面図であり、
図2は、本発明に係る内筒部3を示す斜視図である。
このワンタッチキャップ100は、蓋を成す天板1と、その天板の外周縁に連結して胴部側面を形成する側板2と、天板裏面1aに垂直に設けられ、容器口部10の外周面に係合して容器口元部10bを天板裏面1aによって閉栓する内筒部3とを具備して構成されている。特に、このワンタッチキャップ100では、内筒部3が容器口部10に嵌合する度に、容器口元部10bおよび天板裏面1a等に付着した粘性のある残留内容物RCが、内筒部3の側壁部3bと容器口部10の外周面との隙間に少しずつ堆積して、キャップと容器口部10の嵌め合いが出来にくくなることを好適に防止するために、内筒部3の側壁部3bの天板裏面1a近傍に、残留内容物RCを内筒部3の
天板裏面1a近傍で内側から径方向外側に逃がすための貫通穴3dが設けられている。この貫通穴3dを設けることにより、内筒部3と容器口部10が嵌合する度に、残留内容物RCが内筒部3の
天板裏面1a近傍で内側から径方向外側に押し出され、内筒部3の内周面と容器口部10の外周面との隙間に残留内容物RCが堆積しなくなる。その結果、容器口部10に繰り返し着脱され、容器口部10から内容物が繰り返し吐出される場合であっても、キャップと容器口部10の嵌合が好適に維持されるようになる。
【0013】
このワンタッチキャップ100も従来のワンタッチキャップと同様に、ユーザーが側板2を横方向に摘みながら、容器口部10を内筒部3の内部に押し込むことにより、内筒部3の内周突起3aが容器口部10の外周突起10aに引っ掛かり、容器口元部10bが天板裏面1aによって閉栓されることになる。他方、ユーザーが側板2を横方向に摘むことによって、側板2が容器肩部20のテーパ面に沿って上昇して、内筒部3の切り欠き3c間において側壁部3bの連動(ベント)を誘起し、これにより
切り欠き3cが延在する区間において内筒部3の開口端
側が拡径
変形して内筒部3の内周突起3aが容器口部10の外周突起10aから離脱し、容器口元部10bが開栓されることになる。
【0014】
内筒部3は、
図2に示すように、容器口部10の外周突起10aに係合する(引っ掛かる)内周突起3aと、
略円筒状の側壁部3b
の開口端側が
拡径状に弾性変形することを可能にする
、該開口端(後端側)から天板裏面1aの方向に切り欠かれた8個の切り欠
き3cと、容器口元部10bおよび天板裏面1a等に付着した残留内容物RCを内筒部3の
天板裏面1a近傍で内側から径方向外側に逃がすための
手段として、4個の断面矩形状の貫通穴3dを有している。
これらの貫通穴3dは、側壁部3bにおいて、軸心方向に途中まで切り欠かれた8個の切り欠き3cの先端位置よりも前方側で切り欠き3cの延長線上にあり、天板裏面(1a)を壁面の一つとし、8個の切り欠き3cに対して1個おきに配置されている。さらに、図1,2から明らかなように、断面矩形状の貫通穴3dにおいて、天板裏面1aに対向する壁面は、側壁部3bの内側から外側に向けて天板裏面1aとの間隔を狭める傾斜面に形成されている。
本実施の形態では、貫通穴3dの側壁部3bに沿った断面形状は矩形であるが、側壁部3bに沿った断面形状は矩形に限定されるのではなく、キャップが容器口部10に嵌合する際、残留内容物RCを内筒壁3の
天板裏面1a近傍で内側から径方向外側に逃がし、キャップと容器口部10の嵌め合いが良好に成される(すなわち、内筒部3の内周突起3aが容器口部10の外周突起10aに好適に引っ掛かる)限りにおいては、その形状については特に拘らない。また、貫通穴3dの開口面積、個
数についても、同様である。
【0015】
以上の通り、本発明のワンタッチキャップ100によれば、容器口元部10bに付着した残留内容物RCが、内筒部3と容器口部10が嵌合する度に、
横に位置する上記貫通穴3dを通って内筒部3の
天板裏面1a近傍で内側から径方向外側に押し出されるため、キャップ100と容器口部10が嵌め合う部分に内容物が徐々に堆積しなくなり、その結果、容器口部10に繰り返し着脱され、容器口部10から内容物が繰り返し吐出される場合であっても、キャップと容器口部の嵌合を阻害することがなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明のワンタッチキャップは、食品、歯磨き粉、医薬品または絵具等のチューブ容器のキャップに対し好適に適用される。
【符号の説明】
【0017】
1 天板
1a 天板裏面
1b 円周突起
2 側板
3 内筒部
3a 内周突起
3b 側壁部
3c 切り欠き
3d 貫通穴
10 容器口部
10a 外周突起
10b 容器口元部
20 容器肩部
RC 残留内容物
100 ワンタッチキャップ