特許第5967552号(P5967552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5967552マイクロポンプまたはノーマルオフ型(NORMALLY−OFF)マイクロバルブ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967552
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】マイクロポンプまたはノーマルオフ型(NORMALLY−OFF)マイクロバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/17 20060101AFI20160728BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20160728BHJP
   F16K 31/126 20060101ALI20160728BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20160728BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   F16K7/17 Z
   G01N37/00 101
   F16K31/126 Z
   C12M1/34 B
   C12M1/00 A
【請求項の数】16
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-549822(P2013-549822)
(86)(22)【出願日】2012年1月20日
(65)【公表番号】特表2014-510878(P2014-510878A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】EP2012050835
(87)【国際公開番号】WO2012098214
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2014年10月24日
(31)【優先権主張番号】11151705.8
(32)【優先日】2011年1月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514311520
【氏名又は名称】バイオカーティス ナムローゼ フェンノートシャンプ
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123319
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175190
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 裕明
(72)【発明者】
【氏名】ペンターマン,ロエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン イームレン,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ウィンベルガー−フリードル,ラインホルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン アーメロンゲン,ヘンリック
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−017949(JP,A)
【文献】 特表2008−545102(JP,A)
【文献】 特表2010−507431(JP,A)
【文献】 特開2007−040322(JP,A)
【文献】 特表2009−526969(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0096423(US,A1)
【文献】 特表2002−514716(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/080850(WO,A1)
【文献】 特開2007−170469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/14; 7/16;7/17
F16K 31/12−31/165
C12M 1/00− 3/10
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体デバイスに使用されるノーマルクローズ型マイクロバルブであって、
本体部分、弁座、出口開口部、入口、および予備圧縮または予備伸張された1つ以上の可撓性のを備えるノーマルクローズ型マイクロバルブであり、
前記予備圧縮または予備伸張された1つ以上の可撓性のは、前記予備圧縮または予備伸張により1つ以上のがノーマルクローズ状態で弁座に当接するよう
に配置されており
前記本体部分は、入口チャネルと出口チャネルを有し、
前記入口チャネルと前記出口チャネルは、前記弁座の周囲で前記膜の面に対して75〜105°の角度で弁室に入り、
前記バルブは、前記1つ以上の膜に加えられる真空力によって開弁する
ノーマルクローズ型マイクロバルブ。
【請求項2】
前記膜が無孔膜である、
請求項1に記載のノーマルクローズ型マイクロバルブ。
【請求項3】
キャビティ、チャネル、本体部分、シールリング、接着剤、流量絞り、コントローラ、およびフレームの1つ以上を有する、
請求項1または2に記載のノーマルクローズ型マイクロバルブ。
【請求項4】
前記弁座の幅が予備圧縮または予備伸張された1つ以上の可撓性の膜の幅より小さく、
前記のそれぞれが前記弁座より大きい部位を有する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のノーマルクローズ型マイクロバルブ。
【請求項5】
前記マイクロバルブが、前記予備圧縮または予備伸張された1つ以上の可撓性の膜のそれぞれの部位に前記本体部分を流体密に固定する手段をさらに備え、
前記部位は前記弁座より大きく、前記流体密に固定する手段が両面接着テープである、
請求項4に記載のノーマルクローズ型マイクロバルブ。
【請求項6】
少なくとも前記マイクロバルブの開弁を補助する外力の印加を可能にするように構成された開口部を有する、
請求項1〜のいずれか一項に記載のノーマルクローズ型マイクロバルブ。
【請求項7】
前記開口部が、前記弁座と接触する側から遠隔している、前記予備圧縮または予備伸張された1つ以上の可撓性の膜の側に流体圧を印加できるように構成されており、
前記流体圧が真空である、
請求項に記載のノーマルクローズ型マイクロバルブ。
【請求項8】
前記弁座の高さが、前記出口開口部の第1の高さの1.1〜5倍である、
請求項1〜のいずれか一項に記載のノーマルクローズ型マイクロバルブ。
【請求項9】
前記1つ以上の膜が、エラストマーおよび熱可塑性樹脂を含む群から選択される材料を含む、
請求項1〜8のいずれか一項に記載のノーマルクローズ型マイクロバルブ。
【請求項10】
前記1つ以上の膜が初期サイズの1倍超〜10倍以下の伸度まで予備伸張される、
請求項1〜9のいずれか一項に記載のノーマルクローズ型マイクロバルブ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のバルブを備える、
マイクロ流体素子。
【請求項12】
被覆層、前記被覆層の下の第1のパターン層、前記第1のパターン層の下の中間層、および前記中間層の下の第2のパターン層を含む4層以下の層と、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の1つ以上のバルブとを備える
マイクロ流体デバイス。
【請求項13】
試料投入部、および/または1つ以上の処理部、または1つ以上の容器、またはフィルタ、マイクロアクチュエータ、シール、エントランス、出口、入口、付勢手段の1つ以上を備える、
請求項12に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項14】
前記デバイスが、バイオセンサ、カートリッジの1つ以上である、
請求項12または13に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項15】
前記デバイスが、検出器を前記マイクロ流体デバイスに隣接して配置し、
細胞培養のため、1種以上の分子および/またはイオン、薬物、DNA、RNA、核酸、核酸配列、細胞膜または細胞膜断片、細胞小器官、抗体、ホルモン、グルコース、インスリン、酵素、真菌、細菌、ウイルス、および磁性粒子の有無および/または量の検出を行うことを可能にする検出ウィンドウを有する、
請求項12〜14のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項16】
細胞培養のため、アレイ内で、アッセイ中に、1種以上の分子および/またはイオン、薬物、DNA、RNA、核酸、核酸配列、ホルモン、グルコース、インスリン、酵素、真菌、細菌、ウイルスの有無および量を検出する、および/またはそれらを単離する、および/または精製するための、
請求項12〜15のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオセンサ、マイクロ流体デバイスに使用されるマイクロバルブおよび/またはマイクロポンプ、このようなデバイスの使用、およびマイクロ流体素子に関する。本発明は、とりわけ診断用のマイクロ流体カートリッジに関する。マイクロ流体カートリッジは、空気圧機器の並列空気圧インターフェース・プレート、マイクロ流体カートリッジと空気圧機器との間を接続するインターフェース・プレート、このようなカートリッジとこのようなインターフェース・プレートとを備えるマイクロ流体カートリッジ内部における流体作動のためのシステムに挿入されるカートリッジであってもよく、空気圧機器に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサは、生物試料中の分子および/またはイオン、例えば、タンパク質、薬物、DNA、RNA、ホルモン、グルコース、インスリン、酵素、真菌、細菌などの検出に使用される。センサは診断用に使用することができるが、例えば、血液、尿、および唾液中の治療薬または乱用薬物も検出することができる。
【0003】
このような試験は、多くの異なる状況で、例えば治療現場で医療用に、または任意の所望の場所で、例えば道端で乱用薬物(DOA)用に使用されるように開発されている。どの場合も堅牢で高信頼性且つ高感度のデバイスが必要とされるが、このようなデバイスは測定後に廃棄する必要もあるため、低コストでなければならない。
【0004】
このような生化学的アッセイの実施には、ある程度の流体操作が必要であり、標的分子がセンサ表面に結合できるように、少なくとも試料流体を検出デバイスに導入しなければならない。流体という用語は、流動体(fluidum)を意味し、液体、気体、およびこれらの組み合わせを意味し得る。アッセイの種類に応じて、多少とも複雑なマイクロ流体システムが設計される。試料は本来汚染性を有するものであるため、試料が機器に接触してはならず、また試料は測定中および測定後、例えば、カートリッジ内に安全に貯蔵されなければならない。
【0005】
完全に集積化されたマイクロ流体オン・チップ生化学システムまたはラボ・オン・チップシステムの開発に重点が置かれてきた。これらのマイクロ流体システムにおける問題は、ポンプやバルブなどのマイクロアクチュエータを通常必要とする、異なる反応室に流入出する流体の操作である。ポンプ圧送や弁調節は多くの方法で行うことができ、マイクロバルブ概念の概要は、Oh & Ahn、およびLaser & Santiagoによるマイクロポンプの概説(K.W.Oh & C.H.Ahn,‘A review of microvalves’,J.Micromech.Microeng.16(2006)R13−R39およびD.J.Laster & J.G.Santiago,‘A review of micropumps’,J.Micromech.Microeng.14(2004)R35−R64)に記載されている。
【0006】
医療診断または他の用途における集積カートリッジには、(生)化学試薬の確実な貯蔵が重要である。例えば、貯蔵中に湿潤試薬が蒸発および/または漏出してはならない。細菌や真菌を保有する酸素または周囲空気と全くまたは少ししか接触してはならないものもある。ノーマルクローズ型(normally−closed)のバルブが好ましい。従って、マイクロアクチュエータ、即ち、個々にアドレス可能なバルブおよびポンプを使用する能動的流体操作に基づくマイクロ流体システムの課題は、チップまたはカートリッジ
などのデバイスを使用する前の液体の貯蔵である。チップ/カートリッジがアドレスされていない、即ち、機能していないときの、望ましくない流体の流動および混合を防止するために、試薬室を封止する必要がある。さらに、貯蔵寿命が長くなるように、この封止は高品質でなければならない、即ち、カートリッジが(分析)機器内に存在しておらず、そのため動力式封止デバイスを作動させることができない時、長期間にわたり、高温でも、揮発性成分の透過が少なく、漏れがないものでなければならない。他の特徴は、使用時にこれらのシールがカートリッジおよび機器内に存在する手段で容易に開封しなければならないことである。コストが低くなり、且つあまり複雑にならないように、シールの破壊に機械的穿刺または局所加熱のような追加の要素を必要とせず、流体作動のために存在する流体作動手段を使用することが好ましい。既知のバルブまたはマイクロポンプを図1に示す。アクチュエータを使用してダイアフラムの底部を圧力室の中に圧入することにより、ダイアフラムは機械的に閉弁される。マイクロポンプ内で、アクチュエータは前後に移動する。バルブとして、それは、通常、アクチュエータにより閉弁されるまで開弁している。このようなバルブまたはマイクロポンプに関する問題は、とりわけ複数のバルブが存在するときの、アクチュエータと圧力室または穴(「1」で示す)の位置合わせである。
【0007】
様々な文献にバルブおよびその使用が記載されている。
【0008】
米国特許出願公開第2010137784(A1)号明細書は、弁座と、弁座上に配置され、内側部分を有する膜とを備える一方向弁を記載しており、使用中、膜の内側部分が弁座から選択的に偏倚し、そのため膜の一方側から他方側に流路が形成されて弁が開弁するが、膜の外側周縁部は内側部分より剛性が高いため、膜の偏倚は実質的に内側部分だけに制限される。この一方向弁が注入システムのポンプに使用され得る。この文献にはノーマルクローズ型バルブは記載されていない。膜は有孔である。弁は、弁を作動させる流体圧に依存する。さらに、使用される膜は2種類の材料からなりかなり複雑である。
【0009】
米国特許出願公開第2010171054(A1)号明細書は、少なくとも第1の流体分岐流路と、制御チャネル内の制御圧力により制御されるマイクロバルブとを備える集積マイクロバルブシステムを記載している。マイクロバルブは第1の流体分岐流路内の流体流量を制御するように構成されている。流量絞り機構が制御ポートと制御チャネルとの間に配置されており、マイクロバルブの所定の開閉応答特性を与えている。好ましくは流量絞り機構は、並列に配置された収縮チャネルと膨張チャネルとを備える。各チャネルは逆止弁と流量絞りとを備え、これは、マイクロバルブに異なる開閉応答特性を与えるように、異なる流量制限を有してもよい。
【0010】
この文献にはノーマルクローズ型バルブは記載されていない。バルブの動作には膨張および収縮が必要である。このシステムは動力源がないと信頼性に欠け、例えば、バルブを遮断状態に保つために圧力を適切に維持しなければならない。
【0011】
米国特許出願公開第2007275455(A1)号明細書はバルブ付きマイクロ流体工学デバイスを記載しており、マイクロ流体工学細胞培養デバイスおよびデバイスを組み込むシステムが開示されている。バルブ付きマイクロ流体工学デバイスは、基板、液体がデバイス内の1つのステーションから別のステーションに移動できるマイクロチャネル、およびマイクロチャネルを流通する流体の流量を制御するために開弁状態と閉弁状態との間で切り換えられるように構成された空気圧マイクロバルブを備える。マイクロバルブは3枚の可撓性膜で形成され、その1つはバルブに印加される空気圧に応答し、他の2つはより封止性の高いチャネル断面を形成するように変形する。細胞培養デバイスは、デバイスの個々のウェルへの細胞の制御分注(loading)およびウェル内での細胞培養成分の交換を可能にする弁調節を提供する。
【0012】
米国特許出願公開第2007237686(A1)号明細書は膜弁を記載しており、マイクロ流体デバイス用の遮断弁構造が提供されている。デマルチプレクサーを使用して遮断弁構造をアドレスすることができる。膜弁および遮断弁構造を使用して、プロセッサを含む空気圧論理回路を形成することができる。
【0013】
米国特許出願公開第2010151565(A1)号明細書は、1つ以上の核酸配列を含む試料中の標的ヌクレオチド配列の有無および/または量を検出するためのカートリッジを記載している。カートリッジは、互いに接続可能な第1の構成要素と第2の構成要素とを備え、第1の構成要素は少なくとも第1の流体開口部と第1の封止面とを備え、第2の構成要素は少なくとも第2の流体開口部と第2の封止面とを備える。第1の構成要素と第2の構成要素が接続すると第1の流体開口部と第2の流体開口部は流体連通し、第1の封止面と第2の封止面は、第1の流体開口部と第2の流体開口部との流体連通を封止するように互いに対して移動可能である。この発明は、カートリッジが第2の封止面を第1の封止面の方向に付勢する付勢手段を備えることを特徴とする。
【0014】
米国特許出願公開第2010078584(A1)号明細書は、基板と弾性膜とを備える弁デバイスを記載しており、膜は少なくとも弁領域の周囲で基板に接合されている。基板は第1のチャネルと第2のチャネルとを備え、これらは両方とも弁領域で終端し、第1のチャネルは弁領域に第1のチャネル端面を有し、第2のチャネルは弁領域に第2のチャネル端面を有し、第1のチャネル端面の面積は第2のチャネル端面の面積よりかなり大きい。
【0015】
これらのマイクロバルブの欠点は、これらが1気圧を超える圧力に耐えられないことである。また、これらのマイクロバルブは高温で使用することもできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、マイクロバルブ、マイクロポンプ、マイクロ流体デバイス、このようなデバイスの使用、マイクロ流体素子、またはこのようなマイクロバルブを備えるバイオセンサ、バイオリアクターもしくはマイクロ全分析システム(Micro−Total Analysis system)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、弁座、出口開口部、入口、および予備伸張または予備圧縮された1つ以上の可撓性のセパレータ、好ましくは膜またはダイアフラムを備えるマイクロ流体デバイスに使用されるノーマルクローズ型マイクロバルブに関し、予備伸張または予備圧縮された1つ以上の可撓性セパレータは、予備伸張または予備圧縮により1つ以上のセパレータがノーマルクローズ状態で弁座に当接するように配置されている。セパレータとして無孔の膜またはダイアフラムを使用することができる。これには、マイクロバルブの動作が、バルブを作動させる流体圧に依存せず、さらに、より確実な閉弁状態が得られるという利点がある。
【0018】
このようなバルブは、マイクロポンプ、マイクロ流体デバイスなどにマイクロ流体素子として使用することができる。本発明の実施形態は、例えば、迅速で、高感度で、安価な試験が必要な任意のバイオセンシング用途に適用することができる。それは、診断用および生命科学用のカートリッジに適用することもできる。
【0019】
従って、本発明は、化学センサ、バイオセンサ、バイオリアクターに使用されるバルブを提供し、分子/イオンを検出するためのマイクロ流体デバイス、ならびにマイクロ全分析システムなどのシステムにおける使用を含む。このようなバイオセンサ、バイオリアク
ターおよびシステムは、一般に、試料採取部、1つ以上の試薬容器、これらを相互接続するマイクロ流体チャネル、および本発明の実施形態による少なくとも1つのバルブを有する。
【0020】
このようなものとして、本発明の実施形態は、他の望ましい特性を損なうことなく、上記の欠点および/または問題の1つ以上を克服することができる。
【0021】
本発明の実施形態によるバルブはカートリッジに使用することができ、事実上漏れをなくすことができるが、これは従来技術のバルブと比較して顕著な改善である。本設計での実験は、バルブの漏れによる不良を示さなかった(>100個のカートリッジを試験した)。
【0022】
高い信頼性は、主に弁膜の予備伸張または予備圧縮によるものと考えられる、即ち、膜は、動力源の必要性を必要とすることなく弁座に当接するように付勢される。任意選択により、膜を弁座にさらに圧接することができる。弁座から遠隔した膜の側に圧力を印加すると、バルブの漏れ圧力、即ち、チャネル内に生じる圧力がさらに上昇する。
【0023】
カートリッジは、試料採取部、試薬容器などの容器、フィルタ、ポンプ、混合室、反応器室の1つ以上を含んでもよい。カートリッジは使い捨てカートリッジであってもよい。
【0024】
例えば、本発明は、一実施形態では、自動濃縮プロトコルに使用できるバルブを提供することができる。このプロトコルは、バルブを備え、任意選択により、体液試料などの流体試料、例えば、0.1〜10mlまたは1〜5mlの全血試料、尿試料、唾液試料、精子試料、痰試料、創傷滲出液試料、涙液試料、呼気試料などから、DNAもしくはRNAなどの病原体遺伝情報、または病原体タンパク質、病原体に対して産生された抗体もしくは抗体の分画、病原体脂質、病原体細胞膜もしくはその一部、ウイルスもしくはその一部などを単離、同定、および/または精製するように構成されている診断デバイス、例えば、カートリッジの形態の診断デバイスで実施することができる。他の試料は、汚染空気または汚染水試料などの空気または水試料から得ることができる。カートリッジは、例えば、フィルタを含むことができる。フィルタは、例えば、哺乳類、爬虫類または鳥類または昆虫類の細胞の溶解などの選択的細胞溶解の後、インタクトな病原体またはその一部を濾去することができる。例えば、洗浄手段を設けることができ、手段は、洗浄後、フィルタ上で病原体を溶解することができ、DNAまたはRNAなどの遺伝情報を溶出して、さらに精製、および任意選択により、例えばPCRによる増幅が行われるように設けられる。多量の流体試料、例えば、血液試料を濾過法と組み合わせて使用するには、1気圧を超える圧力に耐えることができる本発明の実施形態で提供されるような高信頼性のバルブが必要である。十分なスループット時間を得るためにはこれらの高圧が必要である。
【0025】
本発明の実施形態の予備伸張または予備圧縮された膜は、バルブがノーマルオフ状態のとき、弁座に封止接触する。例えば、封止接触により、チャネルから試薬室を封止することができる。本発明の実施形態によるバルブの特徴は:
−予備伸張または予備圧縮された可撓性の膜またはダイアフラムおよび対応する弁座;
−バルブがノーマルクローズ型であり、従って、それが試薬の貯蔵に好適であること;
−バルブを開弁するために、真空などの力を膜(空気圧作動)の外側(流体チャネル側と反対側)に印加する;
−任意選択により、バルブはポンプおよび/または他のマイクロ流体素子の一部となっている;および
−セパレータの予備伸張または予備圧縮を、任意選択により閉弁状態でのセパレータへの圧力の印加と組み合わせることができ、それにより、約0.5〜2気圧の圧力を使用して漏れを示さない非常に信頼性の高いバルブが得られる;
の1つ以上であってもよい。
【0026】
弁座のサイズ、例えば、高さ、幅、または厚みを増加することにより、膜をさらに予備伸張または予備圧縮して、閉弁状態における耐漏洩性を増大することにより、さらに信頼性を向上することができる。
【0027】
このように耐漏洩性の増大を提供するために、本発明の一実施例では、予備伸張または予備圧縮された状態にあるとき、可撓性膜を両面接着テープ層でバルブの本体に接着させることができる。
【0028】
代替の独立した本発明は、本体部分、膜、および弁座を備えるマイクロバルブを備え、本体部分は入口チャネルと出口チャネルとを有し、入口チャネルと出口チャネルは弁座の周囲で膜の面に対して45〜135°、好ましくは75〜105°、より好ましくは80〜100°、例えば90°、即ち、実質的に垂直の角度で弁室に入る。バルブ本体は、1層以上の材料、例えば、プラスチックで製造されてもよく、その一例としてPMMAがあり、入口チャネルおよび出口チャネルの少なくとも一部はバルブ本体を通る通路により形成される。
【0029】
本発明はまた、本発明の実施形態のいずれかによるバルブ、本発明の実施形態のいずれかによるマイクロ流体素子または本発明の実施形態のいずれかによるマイクロ流体デバイスの1つ以上を備えるマイクロ全分析システムなどのシステムも備える。
【0030】
図を参照して本発明の前述および他の態様をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】従来技術のバルブの断面図である。
図2】本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイスの一例である。
図3】実施形態本発明のいずれかによるバルブを備える、本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイスの一例である。
図4】本発明の実施形態のいずれかによるバルブを備える、本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイスの一例である。
図5a-b】本発明の一実施形態によるデバイスの2つのパターン層の一例である。
図5c】本発明の一実施形態によるデバイスの2つのパターン層の一例である。
図6a-h】本発明の一実施形態の断面図である。
図6i-l】本発明の一実施形態の断面図である。
図7a-b】本発明の実施形態によるカートリッジおよび本テーブルの写真である。
【0032】
本発明の実施形態により提供されるダイアフラム弁または膜弁は、2つ以上のポートを有するバルブ本体と、ダイアフラム(または膜)と、「サドル」または弁座とを備え、ダイアフラムは「サドル」または弁座上でバルブを閉弁する。ダイアフラム弁はアクチュエータで制御することができる。
【0033】
本発明の実施形態により提供されるダイアフラムポンプまたは膜ポンプ弁は、ダイアフラムまたは膜の往復動作と、逆止弁などの好適なバルブとの組み合わせを使用して流体を圧送する容積型ポンプである。
【0034】
液体は、液体、気体、プラズマ、およびこれらの組み合わせなどの、互いに流過することができる分子または粒子を含む物質の集合体であると考えられる。
【0035】
体液は、広義に解釈されるべきであり、生きている生物または死んだ生物から得られる液体または気体を含む。それは、ヒトまたは哺乳動物に限定されるものではなく、病原体を保有し得る任意の生物、例えば、脊椎動物と無脊椎動物の両方、例えば、鳥類、哺乳類、爬虫類、齧歯類、昆虫類、魚類、貝類を含む。
【0036】
本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、「セパレータ」という用語は、流体区画を他の区画から分離する要素を指す。これを達成するために、セパレータは、好ましくは有孔ではない。本発明の実施形態によれば、セパレータは孔のない永久層であり、流体がこの層を通過して流体室から別の要素に、例えば、マイクロバルブの外側に移動することはできない。
【0037】
本発明によれば、「予備伸張された」とは、セパレータは、作動前、バルブの動作準備が整い、休止状態に、即ち、バルブ内にあるとき、張力のかかった状態にあることを意味する。セパレータをバルブ内に取り付けるとき、弁座でセパレータを拡張させることにより予備伸張を達成することができる、および/またはセパレータを弁座上の所定の位置に配置する前にセパレータに張力をかけるまたはセパレータを拡張させることができる。
【0038】
本発明によれば、「予備圧縮された」とは、セパレータは、作動前、バルブの動作準備が整い、休止状態に、即ち、バルブ内にあるとき、圧縮された状態にあることを意味する。セパレータをバルブ内に取り付けるとき、弁座でセパレータを圧縮させることにより予備圧縮を達成することができる、および/またはセパレータを弁座上の所定の位置に配置するときセパレータを圧縮状態で設置することができる。
【0039】
従って、予備伸張と予備圧縮の両方に関して、セパレータは、ノーマルクローズで受動的な状態で弾性ポテンシャルを有する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
特定の実施形態に関して、特定の図面を参照して本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。記載する図面は概略図に過ぎず、本発明を限定するものではない。図面中、要素の幾つかのサイズは、説明の目的で誇張されており、縮尺通りに描かれていない場合がある。単数形の名詞を指すとき、不定冠詞または定冠詞、例えば、「1つの(a)」または「1つの(an)」、「その(the)」を使用する場合、特記しない限り、これはその名詞の複数形を含むものとする。
【0041】
特許請求の範囲で使用する「備える(comprising)」という用語は、その後に記載される手段に限定されるものと解釈されるべきではない;即ち、それは他の要素または工程を排除するものではない。従って、「手段AおよびBを備えるデバイス」という表現の範囲は、構成要素AおよびBだけからなるデバイスに限定されるべきではない。それは、本発明に関して、デバイスに関連する構成要素がAおよびBだけであることを意味する。
【0042】
さらに、本明細書および特許請求の範囲における第1、第2、および第3などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも順番または時系列順を表すために使用されていない。このように使用される用語は適切な状況下で互換性があり、本明細書に記載の本発明の実施形態は本明細書に記載または図示するもの以外の順番でも動作できるものと理解されたい。
【0043】
さらに、本明細書および特許請求の範囲における上部、底部、上、および下などの用語
は説明の目的で使用され、必ずしも相対的位置を表すために使用されていない。このように使用される用語は適切な状況下で互換性があり、本明細書に記載の本発明の実施形態は本明細書に記載または図示するもの以外の配置方向でも動作できるものと理解されたい。
【0044】
本発明は、任意選択により、外力を印加することなく閉弁状態に保たれるノーマルクローズ型のバルブに関する。さらに確実にするために、外力を印加することができる。
【0045】
第1の態様によれば、本発明は、弁座、出口開口部、入口、および予備伸張または予備圧縮された1つ以上の可撓性のセパレータ、好ましくは膜またはダイアフラムを備える、マイクロ流体デバイスに使用されるノーマルクローズ型マイクロバルブに関し、予備伸張または予備圧縮された1つ以上の可撓性のセパレータは、予備伸張または予備圧縮により1つ以上のセパレータがノーマルクローズ状態で弁座に当接するように配置されている。
【0046】
利点は、とりわけ、バルブを遮断状態に保つために圧力を使用しなくても、ノーマルクローズ型バルブは閉弁し、受動的であり、即ち、無動力であり、従って電池または他の動力源に依存しないことである。これは、能動的な閉弁力の印加を必要とする従来技術の設計(これは、それらが動力源を必要とし、非受動的デバイスであることを意味する)より優れている。さらに、マイクロチャネルはバルブの本体を通る通路として設けられてもよく、このような通路設計は、従来のMEMS技術または射出成形などのマクロ技術を使用した加工が容易である。
【0047】
セパレータとして無孔の膜またはダイアフラムを使用することができる。これには、マイクロバルブの動作が、バルブを作動させる流体圧に依存せず、さらに、より確実な閉弁状態が得られるという利点がある。
【0048】
バルブは、カートリッジ、とりわけ、診断用カートリッジなどの使い捨てカートリッジに使用することができる。検出器を使用する場合、それはバルブと共に基板上に搭載されてもよいが、好ましくは、それはカートリッジ外に配置され、これにより設計および実装が比較的容易になる。これは、高価なおよび/または高性能の検出部を机上サイズに製造することができると共にカートリッジが小型で使い捨てとなることを意味する。
【0049】
出口および入口開口部は、ある用途に必要な量の流体の通過を可能にするように構成される。
【0050】
一実施例では、本バルブは、キャビティ、チャネル、本体部分、シールリングなどのシール部材、接着剤、流量絞りなどの流量調整器、コントローラ、およびフレームの1つ以上を有する。機能性に鑑みて、本バルブには流体を貯蔵するまたは流体を通過させるキャビティまたは容器などが設けられる。1つ以上のキャビティが存在してもよい。またキャビティを反応室および/または検出室として使用することもできる。通常、本デバイスの様々な部分、例えば、キャビティ、バルブ、調整器などは1つ以上のチャネルで接続され、流体の通過が可能になっている。通常、チャネルはマイクロチャネルである、即ち、直径が1〜100μmである。バルブは、通常、例えば、中実体の本体部分を有し、これは通常、プラスチックなどから形成されるが、これらに限定されるものではない。様々な機能を果たすためにおよび/または流体の貯蔵のために、バルブの一部は1つ以上の封止部材を有する。通常、様々な層は、接着剤、例えば、両面接着剤で接合される、または層は本質的におよび/または接着剤を添加することにより接着することができる。流量のために、流量絞りなどの流量調整器を1つ以上設けることができる。また必要とする様々な機能を果たすためのコントローラが存在してもよい。コントローラは、搭載マイクロコントローラであってもよい。マイクロコントローラは、電池などの搭載動力源で動力供給されてもよく、または光電池もしくは太陽電池もしくは他の任意の環境発電デバイスを備えてもよい。
【0051】
一実施例では、本バルブはさらに本体部分を備え、弁座の幅は、予備圧縮または予備伸張された1つ以上の可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムの幅より小さく、各セパレータは弁座より大きい部位を有する。このようなものとして、セパレータ、例えば、膜またはダイアフラムはバルブを完全に被覆し、漏れを防ぐように弁座にしっかりと当接することができ、十分に予備圧縮または予備伸張することができ、圧力などの外力がかかった状態でも依然として動作することができ、その圧力は(相対的に)負圧であってもよい。
【0052】
一実施例では、マイクロバルブは、予備圧縮された予備伸張された1つ以上の可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムのそれぞれの部位に、本体部分を流体密に固定する手段をさらに備え、その部位は弁座より大きい。一実施形態では、好ましくは流体密に固定する手段は両面接着テープである。このように流体密に固定することにより、貯蔵寿命が長くなり、より高い圧力の使用が可能となり、それにより、例えば、機能性が向上する。
【0053】
本発明に、または本明細書に記載したもの以外の種類の膜に使用できる独立した実施例では、バルブに、入口チャネルと出口チャネルとを有する本体部分、および弁座と膜が設けられ、入口チャネルと出口チャネルは弁座の周囲で膜の面に対して45〜135°、好ましくは75〜105°、より好ましくは80〜100°、例えば90°、即ち、実質的に垂直の角度で弁室に入る。このようなチャネルを通路として設けることができ、従って、従来の半導体またはMEMS加工により設けることができる。このようなものとして、より堅牢な設計が提供され、その損傷のリスクが低下し、貯蔵寿命が延び、漏れが減少する。
【0054】
一実施例では、本バルブは、少なくともマイクロバルブの開弁を補助する外力の印加を可能にするように構成された開口部を有する。このようなものとして、バルブは作動し、様々な機能を果たすことができる。開口部は、卓上型検出器に使用されるように構成されてもよい。
【0055】
一実施例では、開口部は、予備圧縮または予備伸張された1つ以上の可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムの、弁座と接触する側から遠隔している側に流体圧を印加できるように構成されている。流体圧は、好ましくは真空である。流体圧は通常、例えば、検出中、本バルブを備えるデバイスの下にある卓上型検出器内に存在するポンプなどの手段によって提供される。
【0056】
一実施例では、弁座の高さは、出口開口部の第1の高さの1.1〜5倍、好ましくは1.2〜2.5倍、例えば1.5〜2倍である。弁座の高さを増加することにより、セパレータ、例えば、膜またはダイアフラムは弁座により密接して固定され、それにより貯蔵寿命が延び、漏れが防止される。さらに、バルブをより高圧で動作させることができる。所望の効果を達成するために高さを大きくし過ぎる必要がなく、高さは、使用する膜の種類に幾分依存することが実験的に分かった。高さの増加が小さい場合、無視できる程度の効果しか認められない。高さを20%以上増加することによりかなりの効果が認められることが実験的に分かった。
【0057】
一実施例では、セパレータ、例えば、膜またはダイアフラムは、PDMS、天然および合成ゴム、飽和および不飽和ゴム、ならびに熱可塑性樹脂などのエラストマーを含む群から選択される材料を含む。
【0058】
エラストマーは、例えば、一般に他の材料と比較して特に低いヤング率と高い降伏歪を有する、粘弾性(口語で「弾性」)を有するポリマーである。ヤング率は、1MNm−2未満、例えば、0.5MNm−2であってもよい。弾性ポリマーに由来するその用語は、ゴムという用語と互換的に使用されることが多いが、加硫物を指す場合、後者が好ましい。結合してポリマーを形成するモノマーはそれぞれ、通常、炭素、水素、酸素および/またはケイ素で構成されている。エラストマーは、通常、そのガラス転移温度より高温で存在する非晶質ポリマーであるため、かなりのセグメント運動が可能である。従って、ゴムは周囲温度で比較的柔軟であり(E〜3MPa)、変形可能である。それらの主な用途は、シール、接着剤、および可撓性成形品である。
【0059】
エラストマーの例としては、イオウ加硫により硬化することができる不飽和ゴム、例えば、天然ポリイソプレン、例えば、cis−1,4−ポリイソプレン天然ゴム(NR)およびtrans−1,4−ポリイソプレンガタパーチャ、合成ポリイソプレン(IRはイソプレンゴムを表す)、ポリブタジエン(BRはブタジエンゴムを表す)、クロロプレンゴム(CR)、ポリクロロプレン、Neoprene、Bayprenなど、ブチルゴム(イソブチレンとイソプレンとの共重合体、IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(クロロブチルゴム:CIIR、ブロモブチルゴム:BIIR)、スチレン−ブタジエンゴム(スチレンとブタジエンとの共重合体、SBR)、Buna Nゴムとも称されるニトリルゴム(ブタジエンとアクリロニトリルとの共重合体、NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、例えば、TherbanおよびZetpol、イオウ加硫により硬化することができない飽和ゴム、例えば、EPM(エチレンプロピレンゴム、即ち、エチレンとプロピレンとの共重合体)およびEPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム、即ち、エチレンとプロピレンとジエン成分との三元共重合体)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ポリアクリルゴム(ACM、ABR)、シリコーンゴム(SI、Q、VMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、フルオロエラストマー(FKMおよびFEPM)、例えば、Viton、Tecnoflon、Fluorel、AflasおよびDai−El、パーフルオロエラストマー(FFKM)、例えば、Tecnoflon PFR、Kalrez、Chemraz、Perlast、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、(Hypalon)、エチレン−酢酸ビニル(EVA)がある。他の様々な種類のエラストマーには:熱可塑性エラストマー(TPE)、例えば、Elastron、熱可塑性加硫物(TPV)、例えば、Santoprene TPV、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、および熱可塑性オレフィン(TPO)がある。他の例としては、レジリンおよびエラスチンなどのタンパク質、ならびにポリスルフィドゴムがある。また上記の材料の組み合わせも可能である。
【0060】
一実施例では、本バルブセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムは、初期サイズの1倍超〜10倍以下、好ましくは1.05〜7倍、より好ましくは1.1〜5倍、例えば、1.25〜2倍の伸度まで予備伸張される。使用するセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムの種類により、セパレータ、例えば、膜またはダイアフラムを5%大きい伸度〜約700%大きい伸度まで予備伸張することができる。改善を得るために、幾らかの予備伸張が必要であり、好ましくは5%以上が使用される。大きく予備伸張し過ぎると、材料の破裂など、または材料のクリープが起こる典型的な材料の限界に達し、その結果、バルブが開弁するが、これは望ましくない。実験的に、セパレータ、例えば、膜またはダイアフラムを10%〜100%、例えば、20%以上伸張するとき、最良の結果が得られる。
【0061】
第2の態様によれば、本発明は、本発明の実施形態によるバルブを備える、マイクロ流体素子、例えば、マイクロ流体ポンプに関する。ポンプとして動作するとき、セパレータ、例えば、膜またはダイアフラムの往復運動(例えば、真空の連続的印加)手段が一方向弁と組み合わせて設けられる。本バルブは、とりわけ、高温で使用するのにおよび/または
漏れの減少に適しており、このような用途を目的とするマイクロ流体素子が特に想定される。
【0062】
第3の態様によれば、本発明は、被覆層、被覆層の下の第1のパターン層、第1のパターン層の下の中間層、および中間層の下の第2のパターン層を含む4層以下の層と、1つ以上のバルブ、好ましくは本発明による1つ以上のバルブとを備えるマイクロ流体デバイスに関する。
【0063】
本発明の一実施例によれば、空気圧機器の並列空気圧インターフェース・プレート上に配置されるマイクロ流体カートリッジが提供される。カートリッジは、空気圧機器の空気圧圧送により流体が輸送される三次元流体チャネルを備える。さらに、マイクロ流体カートリッジは、可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムを備え、可撓性のセパレータは平面に広がり、可撓性のセパレータはカートリッジの外面を形成する。さらに、三次元流体チャネルは、カートリッジの内壁と可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムにより三次元で空間的に画定され、可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムに圧力または真空が印加されていないとき、可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムは基底状態または休止状態にある。カートリッジが並列空気圧インタ
ーフェース・プレート上に配置されるとき、可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムは、空気圧により、基底状態から可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムの面に垂直に二方向に変形可能である。
【0064】
換言すれば、流体は平面上を輸送されず、三次元液体チャネルに沿って移動する。
【0065】
さらに、可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムは、カートリッジの外面の一部となっている領域が空気圧により偏倚可能であってもよい。換言すれば、第1の領域で、可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムは流体チャネルにわたり、その第1の領域はカートリッジの外面の一部となっている。この例示的実施形態によれば、可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムはさらに、カートリッジの外面の下の第2の領域にも延び、第2の領域ではカートリッジの外側から、セパレータ、例えば、膜またはダイアフラムにアクセスすることができないようになっていてもよい。
【0066】
さらに、「可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムの基底状態」とは、可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムに圧力も真空も印加されていない状態を表す。可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムは、この状態からカートリッジの内側部分の方に偏倚することができ、またカートリッジから離間するように偏倚することもできる。これは、例えば、図2から分かり、図2では、可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムのセパレータに沿った異なる位置が上方および下方に偏倚すると、所望の液体輸送が行われる。換言すれば、可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムは、二方向に、即ち、流体チャネルの方に、および流体チャネルから離間するように偏倚することができる。
【0067】
カートリッジは、この実施形態および他の任意の実施形態では、例えば、使い捨てカートリッジであってもよく、空気圧機器とカートリッジとの間の空気圧による可逆的な相互接続によって行われる空気圧作動が可能であり、この相互接続は、可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムにより形成される。空気圧駆動装置は、低コストで高信頼性のカートリッジが得られるように、機器に集積化される。カートリッジ内の流体チャネルに収容される流体の作動は、カートリッジの主要面に取り付けられ得る可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムの偏倚により達成される。従って、カートリッジが空気圧インターフェース・プレートに取り付けられるときまたはそれに挿入されるとき、カートリッジの可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムと空気圧インターフ
ェース・プレートの一部により区画が形成される。これらの区画内の圧力は、別個の空気圧機器で発生させることができ、可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムの偏倚を決定し、その偏倚により流体が作動し、それにより移動が起こる。
【0068】
このマイクロ流体カートリッジは、空気圧作動の高出力と大きいストロークを利用すると同時に、カートリッジを単純且つ低コストに保ち、熱または音波振動のようなインターフェース・プレートを越える他の物理的輸送を容易に導入することができる。
【0069】
さらに、空気圧作動のために配管のような個々の固定を必要としないため、多数のアクチュエータを平坦な空気圧インターフェース・プレートに容易に集積化することができる。
【0070】
換言すれば、空気圧配管要素および圧力または真空発生要素がマイクロ流体カートリッジには存在せず、それに対応する相互接続するインターフェース・プレートにも存在しないため、多数のアクチュエータをインターフェース・プレートに容易に集積化することができる。換言すれば、平面状の空気圧インターフェース・プレートと接続すると、カートリッジ内に配管を必要とすることなくカートリッジ内で簡便且つ確実な流体の空気圧駆動が可能となり得る、平面状のマイクロ流体カートリッジが提供される。さらに、これは多数の空気圧要素に容易に拡張可能となり得ると共に、同じ平面内における熱、音響、または他のインターフェース・プレートの集積化が簡単になり得る。
【0071】
本発明のこの実施形態および他の全ての実施形態における空気圧要素という用語は、可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムが空気圧により作動する位置、即ち、バルブおよびポンプ、またはより一般的には相互作用領域を表す。本発明の利点はまた、位置を変え、近傍の位置を有することができるという可撓性である。
【0072】
空気圧機器でカートリッジ内の流体の作動を実現することは、提供されるマイクロ流体カートリッジの特徴と見なすことができる。空気圧駆動が可撓性カートリッジセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムを使用し、セパレータ、例えば、膜またはダイアフラムの下の空気圧室が可逆的に組み立てられるということは、重要である。これは、カートリッジと空気圧機器との間の分離面が空気圧室を横断することを意味する。
【0073】
換言すれば、カートリッジを取り除くと、空気圧供給チャネル、空気圧チャネル、および空気圧室が開放している。作動される膜の下の空気圧室は、カートリッジと機器のインターフェース・プレートとの組み合わせにより形成される。カートリッジを持ち上げると、圧力をそれ以上膜に伝達することができず、本発明による膜の作動には使用されない、機械的に固定される配管と対照的である。
【0074】
マイクロ流体カートリッジは空気圧機器と組み合わせて使用することができ、空気圧機器は、空気圧駆動用の供給チャネルを含み、流体チャネルを含むマイクロ流体カートリッジに対向する実質的に平坦なインターフェース・プレートを含む。流体チャネルは、カートリッジを機器に装着すると作動され得る可撓性層、例えば、膜またはダイアフラムなどのセパレータにより密閉される。可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムを上下動させることにより、カートリッジ内の容積が変化し、セパレータ、例えば、膜またはダイアフラムがチャネルを閉鎖し、流体チャネル内で弁機能を提供することができる。
【0075】
セパレータ、例えば、膜またはダイアフラムの偏倚のストロークは、例えば、次の図7から分かるように、空気圧機器の空気圧インターフェース・プレートに接触するときのセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムの位置および/またはカートリッジ内のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムの上の基板室に接触するときの位置との間の高さに
基づく(制御特徴)。
【0076】
換言すれば、マイクロ流体カートリッジは、流路を被覆する可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムを備える。それにより、可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムは、幾つかの流路を含み得る全流体チャネルシステムを被覆する。それはどこも完全な外面となっている必要はない。しかし、可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムがカートリッジの外面全体を形成する一実施形態も可能である。しかし、可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムは常にカートリッジに取り付けられている。カートリッジを空気圧機器に挿入した後、セパレータ、例えば、膜またはダイアフラムは機器にかかる空気圧により局所的に偏倚し、これにより流体がカートリッジ内の流路に沿って移動する。セパレータ、例えば、膜またはダイアフラムは局所的にカートリッジから離間するように吸引されまたはカートリッジの方に押圧されて、流路内およびセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムの下に可変の容積を形成し、この容積の変化に伴い流体がカートリッジの中を通って輸送される。さらに、カートリッジは、可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムと共に、流体を輸送することができる可変の容積を画定する壁を備えてもよい。従って、本発明は、カートリッジとカートリッジを処理する機器との間に比較的単純なインターフェース・プレートを使用して、マイクロ流体カートリッジ内での流体輸送を可能にする。接続する空気管の代わりに、流体がカートリッジ内を輸送されるように機器により偏倚する可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムにより、カートリッジと機器との間のインターフェース・プレートが形成される。
【0077】
カートリッジには空気圧素子または電気素子がないため、カートリッジは安価で高信頼性に製造することができる。
【0078】
可撓性のセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムとインターフェース・プレートとの組み合わせにより、空気圧の力だけでカートリッジをインターフェース・プレートに固定できる可能性がもたらされる。従って、空気圧機器により発生する空気圧の力の他に、例えば、ネジなどのような他の固定手段を必要としない可能性がある。そのような理由で、空気圧式インターフェース・プレートは並列インターフェースと称される。換言すれば、カートリッジとインターフェース・プレートとを備える閉鎖空気圧システム内で可撓性膜の偏倚が起こり、その偏倚の結果、固定される。膜の吸引により固定が起こる。
【0079】
卓上型診断装置用のカートリッジは、試薬を全て収容していなければならず、それらは診断に必要であり、最終診断結果に悪影響を及ぼすことなく長期間貯蔵できなければならない。診断結果は、好ましくは最大20分以内で得られなければならない。これは、カートリッジは、試薬を全部備えるだけでなく、診断に、および試薬を長期間安全に貯蔵するのに必要なマイクロ流体操作が行われるように設計されなければならないことも意味する。検出は、好ましくはカートリッジ自体では行われないが、この理由はそれによりカートリッジがより高価になるからである。むしろ卓上型診断装置内に配置され、ウィンドウを通してカートリッジにアクセスする、複雑で高性能で高精度の検出デバイスを有する方がよい。ウィンドウは、光学、赤外線、紫外線、核放射線、または電気、空気圧または磁気検出法用のウィンドウであってもよい。
【0080】
試薬の完全性を維持するためにカートリッジが動力源を含む場合、これは、カートリッジの寿命が短くなり、動力供給が消耗した後にカートリッジが使用されるリスクがあり、その結果、診断が不正確になる、即ち、それに伴い医療製品の信頼性が低下して、生命を脅かすおそれがある状況が生じる可能性があることを意味する。
【0081】
試薬の完全性を維持するために貯蔵中に動力源を使用する場合でも、電源を切った状況
で依然として悪影響が及ばないことが好ましい、即ち、電池が空になった後でも試薬の完全性を依然として維持するフォールバック機構があることが好ましい。
【0082】
エネルギー・スキャベンジングにより電池の寿命を延ばすことができ、これをカートリッジのオプションとして含むことができる。
【0083】
完全性を維持するために、本発明は、バルブセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムを弁座に当接させる、バルブセパレータ、例えば、膜またはダイアフラムの予備伸張または予備圧縮により開弁が防止されるノーマルオフ型バルブを提案する。これは、試薬の劣化防止に使用できる無動力の、即ち、受動的で安全なノーマルオフ型バルブを提供する。一実施例では、セパレータ、例えば、膜またはダイアフラムに側圧を印加し、確実性をさらに一層高めることができる。このようなものは、カートリッジ内に動力源を必要とし得る。一実施例では、カートリッジは予備加圧され、この場合は動力源を必要としない。他の実施例では、セパレータ、例えば、膜またはダイアフラムは圧縮される。
【0084】
上記はバイオリアクターにも適用される。
【0085】
一実施例では、本デバイスは本発明による1つ以上のバルブをさらに備える。このようなものとして、前述の利点が得られる。
【0086】
一実施例では、本デバイスは、容積が0.1〜10ml、好ましくは0.5〜5ml、例えば2〜3mlの容器を1つ以上備える。容器は、例えば、試薬容器、廃棄物容器、反応室などであってもよい。
【0087】
一実施例では、本デバイスは、本発明によるマイクロ流体素子、および/または試料投入部、および/または1つ以上の処理部を備える。試料採取するためにおよび/または試料をカートリッジに導入するために試料部を設けてもよい。さらに、検出などを得るために、分析部、機能部などの処理部を1つ以上設けてもよい。通常、試料を処理する必要がある、例えば、反応を行う必要がある、濾過を行う必要がある、分離を行う必要などがある。他の実施例では、(電子)制御部も存在する。
【0088】
一実施例では、本デバイスは、フィルタ、ポンプなどのマイクロアクチュエータ、シール、エントランス、出口、入口、および付勢手段の1つ以上を備える。このようなものは本バルブと同等である。
【0089】
一実施例では、本デバイスは、バイオセンサ、診断用カートリッジなどのカートリッジの1つ以上である。
【0090】
本デバイスの一実施例では、それは、任意選択により真空または圧力下に置かれ得るパッケージに入った、および/または任意選択により圧力を維持するための追加のシールを備える、使い捨てカートリッジの形態である。好ましくは、デバイスは使い捨てであり、通常はテーブルと組み合わせて、1回使用することができる。貯蔵寿命を延ばすために、圧力/真空を維持する追加の手段を設けてもよい。
【0091】
一実施例では、本デバイスは、検出器をマイクロ流体デバイスに隣接して配置し、細胞培養のため、1種以上の分子および/またはイオン、例えば、タンパク質、薬物、DNA、RNA、核酸、核酸配列、細胞膜または細胞膜断片、細胞小器官、抗体、ホルモン、グルコース、インスリン、酵素、真菌、細菌、例えば、病原性細菌、ウイルス、および磁性粒子の有無および/または量の検出を行うことを可能にする検出ウィンドウを有する。好ましくは、検出は、血液試料、例えば、ヒトの血液試料に関して行われる。またヒトの他
の体液も試験することができる。
【0092】
第4の態様によれば、本発明は、例えば、細胞培養のため、アレイ内で、またはアッセイ中に1種以上の分子および/またはイオン、例えば、タンパク質、薬物、遺伝情報、例えば、DNA、RNA、核酸、核酸配列、またはタンパク質、例えば、ホルモン、インスリン、酵素、または他の分子、例えば、グルコース、または生物、例えば、真菌、細菌、例えば、病原性細菌、ウイルスの有無および/または量を検出する、および/またはそれらを単離する、および/または精製するための使用に関する。
【0093】
第5の態様によれば、本発明は、本発明へのバルブ、本発明によるマイクロ流体素子、本発明によるマイクロ流体デバイスの1つ以上を備えるシステムに関する。
【0094】
図を参照して本発明をさらに説明し、説明には主に予備伸張された例示的な膜が含まれるが、本発明の範囲はそれにより限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。
【0095】
図1は、従来技術のバルブの断面図である。バルブは、中にチャネルを有する本体と、弁室とを有する。膜はバルブの一部を形成し、中央に、弁室を密封している状態で示されている。アクチュエータ(矢印参照)は、圧力を印加して膜を湾曲させ、それを弁座に当接させる。破線の円および数字(1)で示す領域は、設計の弱点に関し、この設計は特に示した領域で漏れが起こり易い。左から右まで、(閉鎖)チャネルが見える。
【0096】
この設計では、バルブに印加することができる最大圧力は、主にバルブ本体と膜との間の漏れにより決定される。これは主に入口チャネルと出口チャネルの位置によって起こり、設計に依存することが分かった。チャネルを膜層の真上に配置すると、カートリッジが局所的に容易に押しのけられる可能性があり、その結果漏れが起こり、カートリッジを卓上型検出器に固定された状態に保つために真空に保たれている周囲領域の圧力が上昇する。図2は、本発明の一実施形態によるマイクロ流体デバイスの一例である。その中に、片面テープなどの上(被覆)層(210)が示されている。上層の下に、成形またはレーザーパターン層などのパターン層(220)が存在する。パターン層はバルブの本体を提供し、成形できるおよび/または機械的に、電気的にもしくは化学的に加工できるPMMAなどの材料から製造されてもよい。パターン層の下に、両面接着テープが存在してもよい(図示せず)。その下に、第2のパターン層(230)が存在する。パターン層は、弁座を含むデバイスの機能の大部分を提供する。第2のパターン層の下に、可撓性の膜またはダイアフラムなどの封止部材(240)が存在する。可撓性膜は上記に示す材料で製造されてもよい。膜は、中央に示すバルブの一部も形成する。膜は有孔または多孔質ではない、即ち、それはセパレータとして機能する。膜は、弁座より大きい部位を有する。膜は好ましくは、その通常の受動的状態で正の力により膜が弁座に圧接されるように予備圧縮される。これは、図2に示すように凸状の部分またはドームが弁座に面するように膜を形成することにより、達成することができる。ドームのサイズは、その休止位置のときドームが弁座に当接するように圧縮されるように選択される。従って、ドームは、追加の動力源を必要とすることなく、弁座に当接して封止する。点線の矢印は、任意選択によりバルブを開弁するように印加される圧力/真空、または任意選択により膜にさらに圧力を提供し、封止を改善するように印加される圧力を示す。実線の矢印は、開弁時にバルブを通る流体の流動方向を示す。水平方向の点線は、本デバイスと卓上型検出デバイスとの間の分離線を示す。
【0097】
実施例から、本デバイスが中実の基部を有することが分かる。そのため、漏れることなく真空がより容易に印加され、さらに膜をより容易に且つよりしっかりと取り付けることができる。本マイクロ流体デバイスは任意選択により、卓上型デバイス(290)上に載
置され、それと共働するように構成され、卓上型デバイスは圧力/真空、診断などのその他の機能性を提供する。
【0098】
出口と入口は、実質的に垂直に、且つ、例えば、図1の従来技術と比較して異なる位置に配置されるため、真空などの外力の影響が減少しまたはさらにはその影響がなく、ずっと優れた漏れ防止が得られる。
【0099】
図2の卓上型デバイス290は、本デバイスを空気圧により駆動させる1つ以上の圧送手段を備えてもよい。
【0100】
一実施形態では、本発明は、従来技術のカートリッジと比較して層が1層少ないカートリッジを提供する。ゴム層などの膜層が、新規なカートリッジ設計の底層となる。膜は有孔または多孔質ではない、即ち、それは、バルブを外側から封止するように、セパレータとして機能する。例えば、4層(ゴム−テープ層−PMMA層−被覆層)を有し、そのうちの2層がパターン層であるカートリッジが提供される。他の利点は、カートリッジと卓上型検出デバイスとの間のインターフェースを、金属などの容易に清浄化できる材料から製造できることである。金属(卓上型デバイス上の)−ゴム接続(カートリッジ上の)がシールを提供することになる。このようなものとして、繰り返し使用できる堅牢なインターフェースが提供される。実験は、「経年劣化」作用(例えば、ゴム層)を示さなかった。他の利点は、バルブに安全に(漏れることなく)印加できる圧力が著しく高く(約1〜3気圧)、さらにその圧力を5気圧、またはさらにはそれより高圧に容易に上昇させることができることである。圧力の上昇によりその他の機能性、処理時間の改善などが可能になる。
【0101】
本発明の実施形態の他の利点は、標準化された一般的なプラットフォームが設けられ、多数の設計および用途が可能であるため、新規なカートリッジ設計および/またはその新規な用途の開発および製造が容易であるということである。従って、本設計は、様々な複雑なプロトコルの集積化、柔軟な設計、およびラピッドプロトタイピングを可能にする汎用のカートリッジ技術に関する。本発明者らは、1週間以内に新規な設計を実現し、試験できることを示した。換言すれば、本発明は、異なるプロトコルを実施するためのカートリッジを受容し、必要に応じておよび/または所望に応じて、混合、圧送、濾過、および加熱などの様々な機能を提供する、低コストのベンチトップ型プロトタイプ機器である一般的機器に関する。
【0102】
本設計は、技術の堅牢性を改善し、カートリッジの構成部品数を低減するカートリッジの改善を提供する。
【0103】
図3は、本発明の一実施形態によるバルブを備える、本発明の好ましい実施形態によるマイクロ流体デバイスの一例である。図2と同様に、上層(310)、第1のパターン層(320)、第2のパターン層(330)、膜(340)およびテーブルが示されている。パターン層はバルブの本体を提供し、成形できるおよび/または機械的に、電気的にもしくは化学的に加工できるPMMAなどの材料から製造されてもよい。第1のパターン層の下に、両面接着テープが存在してもよい(図示せず)。第1のパターン層と第2のパターン層は、バルブの本体を形成する。パターン層は、弁座を含むデバイスの機能の大部分を提供する。さらに弁座(350)が示されており、これは通常、第2のパターン層と同じ材料から形成される。第2のパターン層の下に、可撓性の膜またはダイアフラムなどの封止部材(340)が存在する。これを達成するために、膜は有孔または多孔質ではない、即ち、それはセパレータとして機能する。この実施形態では、バルブがノーマルクローズ型となるように、休止位置で膜が弁座に当接するように膜を予備伸張させる。弁座と膜の固定手段との共働により、後者は予備伸張された状態を維持することができる。膜は予備伸張されるため、それは場合によっては流体を収容する空間を封止することになる。このようなも
のとして貯蔵デバイスが形成される。可撓性膜は前述の材料で製造されてもよい。膜は、弁座より大きい部位を有する。バルブの本体と膜との間の封止を改善するために、膜を第2のパターン層に接着させてもよい。膜は好ましくは、その通常の受動的状態で正の力により膜が弁座に押し付けられるように予備圧縮される。点線の矢印は、任意選択によりバルブを開弁するように印加される圧力/真空、または任意選択により膜にさらに圧力を提供し、封止を改善するように印加される圧力を示す。実線の矢印は、開弁時にバルブを通る流体の流動方向を示す。水平方向の点線は、本デバイスと卓上型検出デバイスとの間の分離線を示す。
【0104】
実施例から、本デバイスは中実の基部を有することが分かる。そのため、漏れることなく真空がより容易に印加され、さらに膜をより容易に且つよりしっかりと取り付けることができる。本マイクロ流体デバイスは任意選択により、卓上型デバイス(390)上に載置され、それと共働するように構成され、卓上型デバイスは、圧力/真空、診断などのその他の機能性を提供する。図3の卓上型デバイス390は、本デバイスを空気圧により駆動させる1つ以上の圧送手段を備えてもよい。
【0105】
出口と入口は、実質的に垂直に、且つ、例えば、図1の従来技術と比較して異なる位置に配置されるため、真空などの外力の影響が減少しまたはさらにはその影響がなく、ずっと優れた漏れ防止が得られる。さらにこの実施形態では、バルブの出口と入口はバルブの主面に実質的に垂直であり、主面は図に垂直であるため、バルブはずっと堅牢であり、漏れが防止される。流体を含む本バルブは、漏れが認められることなく、6ヶ月超貯蔵することができる。これは大きな改善である。
【0106】
図4は、本発明によるバルブを備える、本発明によるマイクロ流体デバイスの一例である。図3と同様に、上層(410)、第1のパターン層(420)、第2のパターン層(430)、膜(440)および卓上型デバイス(490)が示されている。さらに弁座(450)が示されており、これは通常、第2のパターン層と同じ材料から形成される。追加の層451により、弁座のサイズ、即ち、厚みまたは高さが増加している。これにより、膜(440)の予備伸張が大きくなる。このようなものとして、さらに良好な封止が得られる。これを達成するために、膜は有孔または多孔質ではない、即ち、それはセパレータとして機能する。第2のパターン層に貼付された後、局所レーザーパターン形成により製造中にパターン形成され得るテープ層で追加の層を設けることができる。テープの上にPET保護層が存在してもよい。バルブの本体と膜との間の封止を改善するために、膜を第2のパターン層に接着させてもよい。他の詳細は、図3のデバイスについて記載した通りである。
【0107】
図5a、図5b、図5cは、本発明によるデバイスの2つのパターン層の一例である。ここで、チャネル(521)、通路(523)、試料採取部(524、534)、試薬室(522、532)、フィルタ(537)、出口/入口開口部(532)、廃棄物室(536)、およびバルブ(538)などの様々な細部を観察することができる。1層内のチャネルと容器が互いに連通するように、2層を一体に配置する。通常、層は、成形によりおよび/またはレーザーによりパターン形成される。さらにDNAなどの分析される分子(590)が示されている。
【0108】
図6は、本発明の実施形態によるバルブの非限定的概略図を示す。これらの実施例の本質は、弁座と、例えば、試薬室をチャネルから封止するために弁座の周囲で予備伸張される可撓性膜とを含むバルブである。これを達成するために、膜は有孔または多孔質ではない、即ち、それはセパレータとして機能する。主な特徴は、バルブが弁座と可撓性膜で構成されることであり、このバルブはノーマルクローズ型であり、従って試薬の貯蔵に好適である。バルブを開弁するために、交流真空(ac vacuum)などの機械的力を膜(例えば、空気圧作動)の外面(即ち、流体チャネルの反対側)に印加することができる。この構成を任意選択により閉弁状態での可撓性膜への圧力の印加と組み合わせて、約0.5〜2barの圧力を使用して漏れを示さない非常に信頼性の高いバルブを製造することができる。実験(>100個のカートリッジを試験した)は、バルブの漏れによる不良がなかった。
【0109】
図6a〜図6dは、本発明の実施形態によるバルブの断面図である。左側(図6a)に、閉弁状態(上)および開弁状態(下)(図6c)のバルブの断面図を示す。バルブを開弁するために、膜(640)の下の開口部に真空などの機械的力を印加する。これを達成するために、膜は有孔または多孔質ではない、即ち、それはセパレータとして機能する。膜の下方への移動は、卓上型検出デバイス690の開口部の上面によって制限される。これにより、バルブが開弁されるとき、膜の過度の伸張が防止される。過度の伸張は塑性変形またはクリープを引き起こす可能性があり、これにより、膜の解放時に、損失する力(losing force)が減少する。右側(図6b、図6d)に、チャネルに垂直な断面を示す。
【0110】
レーザーパターンPMMA層(620)などのパターン層を一体に積層して、バルブの本体を形成し、両面接着テープ層((650)、Nitto 5015P)などの層と、ゴム層((640)、ラテックス)などの膜を固定することにより、このようなカートリッジを構築することができる。弁座は、テープ層(651)上に存在するPET保護層などのテープ層を局所レーザーパターン形成することにより、構築することができる。第2のパターン層(650)を形成するとき、弁座のこの追加部分(651)を構築してもよい。デバイスの構築中に保護層を除去すると、PETが弁座上に局所的に残る。
【0111】
図6e〜図6h(上左〜下右)は、本発明の他の実施形態によるバルブの断面図である。左側(図6e)には、閉弁状態(上)と開弁状態(下)(図6g)のバルブの断面図を示す。この実施例では、チャネルは膜の面と平行に延びる。右側(図6f、図6h)には、閉弁状態(上)と開弁状態(下)のバルブの断面図を示し、さらに入口チャネルと出口チャネルが弁膜に対して垂直にまたはある一定の角度で形成されている。膜の面に平行に延びるそれらのチャネルは、前述の第1の層と第2の層との合わせ面を機械加工またはエッチングすることにより形成することができる。膜の面に対してある一定の角度でまたは垂直に延びるそれらのチャネルは、バルブ本体を通る通路として、例えば、レーザーパターン形成、エッチング、または他の形態の機械加工により形成することができる。図示する実施例では、入口チャネルと出口チャネルが両方とも膜と弁座との間に形成された弁室に入る。
【0112】
図6i〜図6l(上左〜下右)に、他の2つのバルブの実施形態を示す。左側(図6i、図6k)には、閉弁状態(上)と開弁状態(下)の弁座に入口チャネル/出口チャネルの1つが配置されているバルブの断面図を示す。右側(図6j、図6l)には、上記と類似する弁座に入口チャネルと出口チャネルの両方が配置されている。膜の面に平行に延びるそれらのチャネルは、バルブ本体(650)の上層と被覆層(610)との間に形成される。これらの実施例では、バルブは、予備伸張された膜(640)、チャネルと弁座とを有する流体部品(650)、膜と上層(610)とを結合しチャネルを封止する接着剤で構成される。
【0113】
図7a、図7bは、本カートリッジおよび本卓上型検出デバイスの写真であり、カートリッジは、矢印で示される卓上型検出デバイス上に配置され、真空により所定の位置に保持されるが、真空は、カートリッジを所定の位置に保持することとバルブを開弁することの両方に使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5a-b】
図5c
図6a-h】
図6i-l】
図7a-b】