(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記刃部は、前記刃部の基端に一体に設けられた支持部を介して前記基部に固定されており、前記支持部は、前記流路と連通した貫通孔を有することを特徴とする請求項8記載の穿刺器具。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
1.第1実施形態
図1に示す穿刺器具10は、基部12と、穿刺部14とを備え、合成樹脂、例えば熱可塑性樹脂で形成されている。本図に示す基部12は、円盤形状に形成されている。基部12の一側表面に穿刺部14が形成されている。
【0011】
穿刺器具10は、薬剤を導く流路18が形成されていてもよい。本実施形態の場合、流路18は、基部12の厚さ方向へ貫通する穴で構成されている。
【0012】
穿刺部14は、複数の刃部16Aからなる。穿刺部14は、機械的強度を向上するため、表面に金属膜を形成してもよい。
【0013】
図2に示すように、刃部16Aは、扁平であって、正面視において先端部17が山形に形成されている。本実施形態の場合、刃部16Aは、正面視において、先端部17が緩やかに湾曲しており、基端へ行くにしたがって幅方向に広がり、全体としてサメの歯のように山形状に形成されている。刃部16Aは、平面視において、略楕円形状を有する。また刃部16Aは、側面視において、基端が厚く形成されていると共に、基端から先端に向かって先細形状に形成されている。本図に示す刃部16Aは、側面視において、ハマグリの側面に似た形状を有する。
【0014】
このように形成された刃部16Aは、先端部17の方向(
図2B中、矢印方向)を揃えた状態で基部12上に配置されており、穿刺部14を形成している(
図1)。
【0015】
穿刺器具10は、一般的な射出成型により作製することができる。金型(図示しない)は、穿刺器具10の形状に合わせて複数の金型を組み合わせて形成するのが好ましい。例えば刃部16Aは、厚さ方向に二分割された金型により形成することができる。そして当該金型内に溶融した熱可塑性樹脂を流し込み、所定時間保持した後、金型を開くことにより、穿刺器具10を得ることができる。
【0016】
上記のように構成された穿刺器具10は、基部12の他側が薬剤を保持するデバイス(図示しない)に装着される。そして穿刺部14を皮膚に接触させて、長手方向に押し付けながら、一方向例えば左右(
図2B中、矢印方向)にスライドさせる。そうすると穿刺部14は、皮膚の角質層を穿刺する。これにより、基部12に形成された流路18を通じて基部12の他側表面から一側表面へ導かれた薬剤は、穿刺部14によって切り裂かれた皮膚の切り口を通じて経皮的に投与される。
【0017】
本実施形態の場合、穿刺部14を構成する刃部16Aは、扁平であって、正面視において先端部17が山形に形成されていることにより、従来の針形状に比べ変形しにくく、しかも皮膚に刺さりやすい。これにより刃部16Aは、皮膚に押し付けた状態で一方向に力が加わることにより、皮膚を切り裂くことができる。したがって穿刺器具10は、皮膚を切り裂くことができる複数の刃部16Aからなる穿刺部14を備えることにより、より確実に皮膚を穿刺することができる。
【0018】
また刃部16Aは、側面視において基端が厚く形成されていると共に、基端から先端に向かって先細形状に形成されていることにより、皮膚に押し当てた際、先端が変形するのをより抑制することができる。
【0019】
2.第2実施形態
次に第2実施形態に係る刃部を説明する。本実施形態に係る刃部は、薬剤浸透部が形成されている点が、上記第1実施形態と異なる。以下、本実施形態に係る刃部について、
図2と同様の構成について同様の符号を付した
図3を参照して説明する。
【0020】
図3に示す刃部16Bは、扁平であって、正面視において先端部17が山形に形成されて、薬剤浸透部としての拡幅部20が設けられている。拡幅部20は、刃部16Bの基端から先端に向かって直線状に形成された凸条で構成される。拡幅部20は、刃部16Bの両表面であって、正面視における略中央にそれぞれ形成されている。
【0021】
刃部16Bは、扁平であって、正面視において先端部17が山形に形成されていることにより、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに刃部16Bは、皮膚を切り裂いた際、拡幅部20によって皮膚に形成された切り口を広げる。薬剤は、刃部16B及び拡幅部20によって広げられた切り口を通じて皮膚内に浸透していく。これにより薬剤がより効率的に投与され得る。
【0022】
薬剤浸透部は、拡幅部20に限らず、例えば
図4に示すように溝22で構成されていてもよい。本図に示すように、溝22は、刃部16Cの基端から先端に向かって直線状に形成された溝22で構成される。溝22は、刃部16Cの両表面であって、正面視における略中央にそれぞれ形成されている。刃部16Cは、皮膚を切り裂いた際、溝22によって切り口と刃部16Cとの間に隙間が形成される。薬剤は、当該隙間を通じて皮膚内に浸透していく。これにより薬剤がより効率的に投与され得る。
【0023】
また刃部16Cは、溝22の基端における基部に、流路を形成してもよい。当該流路は、基部を厚さ方向に貫通する穴で形成するのが好ましい。これにより刃部16Cは、皮膚を切り裂いた際、流路を通じて基部の他側表面から一側表面へ導かれた薬剤を、溝22から切り裂かれた皮膚の切り口へ導くことにより、より効率的に投与することができる。
【0024】
3.第3実施形態
本実施形態においては、刃部は、この刃部の基端に一体に設けられた支持部を備えた有刃薬剤供給体の刃先を構成している。複数の有刃薬剤供給体によって、穿刺器具の穿刺部が構成される。こうした穿刺器具においては、刃部は支持部を介して基部に固定されることとなる。以下、刃先として刃部を有する有刃薬剤供給体について、
図5を参照して説明する。
【0025】
本穿刺器具は、シリンジなどに取り付けて使用することで注射のように薬液を供給できる。本穿刺器具は、薬液を供給するための貫通穴を備えている。
図5に示すように有刃薬剤供給体30Aにおいては、刃部36の基端に支持部38Aが一体に設けられている。有刃薬剤供給体30Aは、刃先を構成する刃部36で皮膚を切り裂いて切り口を形成する。
【0026】
刃部36は、第1実施形態の刃部16Aとほぼ同様の構成である。刃部36は、扁平であって、正面視において先端部37が山形に形成されている。刃部36は、平面視においては略楕円形状を有する。刃部36は、正面視において、先端部37が穏やかに湾曲して基端へ行くにしたがって幅方向に広がり、全体としてサメの歯のように山形状である点も、第1実施形態の刃部16Aとほぼ同様である。ただし本実施形態においては、刃部36は有刃薬剤供給体30Aの刃先を構成しているので、刃部36の大きさは第1実施形態の刃部16A(
図2)より小さい。有刃薬剤供給体30Aは、正面視全体としては、刃部16Aと同等の形状、大きさとなるように構成することができる。追って説明するように、支持部38Aはある程度の厚さが求められることから、有刃薬剤供給体30Aの厚さは、刃部16Aより大きくなる。
【0027】
支持部38Aは、図示しない基部と刃部36との間に介在して刃部36を支持する。さらに支持部38Aは、追って説明するように、基部から導かれる薬剤を刃部36または切り口に供給する。本実施形態の場合、支持部38Aは、正面視において等脚台形状である。支持部38Aは、刃部36の基端に一体に設けられているので、支持部38Aの上端が刃部36の基端と一致している。支持部38Aの内部には貫通孔32が設けられるので、支持部38Aは、ある程度の厚さが求められる。本実施形態においては、支持部38Aは、平面視において底面が略円形状に形成されている。
【0028】
貫通孔32は、基部の流路から刃部36に薬剤を供給し得るように、支持部38Aの内部に形成されている。貫通孔32の一端は流路に連通し、貫通孔32の他端は刃部36に達している。これによって、基部の流路および支持部38Aの貫通孔32を介して、基部の他側表面から刃部36に薬剤を直接導くことができる。貫通孔32の横方向の断面形状は特に限定されないが、本実施形態においては略円形状である。
【0029】
扁平であって先端部37が山形状の刃部36が上端に一体に設けられるとともに、こうした刃部36に薬剤を導くための貫通孔32を内部に形成できれば、支持部38Aの形状は特に限定されず、任意の形状で構成することができる。刃部36の下端に一体に設けられた支持部38Aを備え、刃部36を刃先として備えた複数の有刃薬剤供給体30Aは、穿刺器具の穿刺部を構成する。
【0030】
穿刺部として複数の有刃薬剤供給体30Aを備える穿刺器具は、第1実施形態と同様、一般的な射出成型により作製することができる。金型(図示しない)は、上述したように一体化された支持部38Aおよび刃部36が形成できるような、複数の金型を組み合わせて形成することが好ましい。例えば有刃薬剤供給体30Aは、貫通孔32を支持部38A内部に形成するためのロッドを備え、厚さ方向に二分割された金型により形成することができる。所定の金型を用いる以外は第1実施形態の場合と同様にして、本実施形態の穿刺器具を得ることができる。
【0031】
本実施形態においても刃部36は、扁平であって、正面視において先端部37が山形に形成されていることにより、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、有刃薬剤供給体30Aにおける支持部38A内部の貫通孔32は、図示しない基部の流路と連通して設けられている。流路に連通した貫通孔32を支持部38Aに有しているので、刃部36により皮膚が切り裂かれると、薬剤は、流路を通じて基部の他側表面から支持部38Aの貫通孔32内に導かれる。薬剤は、貫通孔32の開口端34から刃先の刃部36に供給されて、切り口から皮膚内に浸透していく。これにより、刃部36の近傍に薬剤が供給されるので、薬剤はより効率的に投与され得る。
【0032】
刃部36により皮膚が切り裂かれた後、穿刺器具を押し込むことにより有刃薬剤供給体30Aにおける貫通孔32の開口端34の少なくとも一部を切り口の中に挿入して、薬剤を投与することもできる。この場合には、基部の他側表面から流路を介して導かれた薬剤は、開口端34から切り口内に直接供給されることとなる。したがって、よりいっそう効率的に薬剤を投与することができる。
【0033】
支持部38Aにおける開口端34は1つに限定されず、複数の開口端を設けてもよい。例えば、開口端34は、
図6に示すように刃部36を挟んで支持部38Bの両側に設けることができる。有刃薬剤供給体30Bにおいても、支持部38Bは刃部36の基端に一体に設けられている。こうした支持部38Bを備えた有刃薬剤供給体30BのX矢視図は、
図6Bに示すとおりとなる。図示していないが、有刃薬剤供給体30AのY矢視図は、
図5Aの正面図と同様である。有刃薬剤供給体30Bにおける2つの開口端34は、
図6CのVIC断面図に示すように単一の貫通孔32の開口端としているが、別個の貫通孔の開口端としてもよい。開口端34が2つ存在することにより、貫通孔32を介して刃部36に供給される薬剤の量が増大するので、投与の効率はさらに高まることとなる。
【0034】
4.変形例
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
【0035】
例えば、
図7に示すように、正面視において略半円形状の刃部16Dを用いてもよい。この場合、刃部16Dは、扁平であって、正面視において先端部17が山形に形成されていることにより、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
また
図8に示すように、刃部16Eは、先端部17に鋸歯24を有してもよい。鋸歯24を有することにより刃部16Eは、より効率的に皮膚を切り裂くことができる。
【0037】
さらに
図9に示すように、刃部16Fは、板状の基端部26と、山形に形成された先端部28とを備えることとしてもよい。刃部16Fは、平面視において長円形状を有する。刃部16Fは、扁平であって、正面視において先端部28が山形に形成されていることにより、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに刃部16Fは、板状の基端部26を備えることにより、より機械的強度が向上するので、先端部28を鋭利に形成することができる。したがって刃部16Fは、より効率的に皮膚を切り裂くことができる。
【0038】
また、上記変形例に係る刃部16D〜16Fに、上記第2実施形態に示す薬剤浸透部を設けてもよいことはもちろんである。上記変形例に係る刃部16D〜16Fを適切な大きさとし、その下端に上記第3実施形態に示す支持部を一体に設けて、有刃薬剤供給体を構成することもできる。さらに、上記実施形態及び変形例に係る刃部を種々組み合わせて穿刺部を形成することとしてもよい。
【0039】
上記実施形態の場合、刃部は同じ大きさで形成されている場合について説明したが、本発明はこれに限られない。穿刺部は、中央の刃部が周縁の刃部より先端方向に突出していてもよい。このような形状の穿刺部は、基部の中央が、刃部の先端方向に向かって凸となるように形成することによって得られる。これにより穿刺器具は、穿刺部の全体において皮膚に対し略同じ深さの切り口を形成し得る。
【0040】
上記実施形態の場合、穿刺器具は合成樹脂で形成した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、ポリ乳酸生分解性樹脂、ステンレス、チタン、銀、金などの金属で形成することとしてもよい。合成樹脂を用いる場合と同様、ポリ乳酸生分解性樹脂で形成する場合も、機械的強度を高めるために刃部の表面に金属膜を設けることができる。金属により穿刺器具を形成する場合には、異なる金属の積層膜としてもよい。金属の積層膜においては、機械的強度をより高めるために、より強度の高いメッキが表面に設けられる。
【0041】
メッキは、ステンレス等の金属や合成樹脂からなる穿刺器具の強度を高めるために有効である。メッキは、例えば光沢クロム、ベロアクロム、光沢ニッケル、ベロアニッケル、光沢スズコバルト、ベロアスズコバルト、光沢金、ベロア金、三価クロム、光沢ノーブロイ、ベロアノーブロイ、ロジウムメッキ、および白金メッキから選択することができる。
【0042】
上記実施形態の場合、流路は基部の厚さ方向に形成された穴である場合について説明したが、本発明はこれに限らない。第1、第2実施形態における流路は、基部の側面に形成された溝であってもよい。
【0043】
上記実施形態の場合、薬剤は、基部に形成された流路を通じて基部の他側表面から一側表面へ導かれ、経皮的に投与される場合に加えて、基部に形成された流路から有刃薬剤供給体における支持部に設けられた貫通孔を通じて刃部へ導かれることによって、あるいは、支持部に設けられた貫通孔の開口端から切り口に直接供給することによって、切り口から経皮的に投与される場合について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、薬剤は、予め刃部に塗布されており、皮膚を切り裂くと同時に、切り口から経皮的に投与されることとしてもよい。
【0044】
上記実施形態の場合、基部は、円盤形状である場合について説明したが、本発明はこれに限らず、三角形や四角形の板状部材であってもよい。
【0045】
上記実施形態の場合、刃部は、正面視において先端部が緩やかに湾曲している場合について説明したが、本発明はこれに限らず、正面視において先端部は尖っていてもよい。
【0046】
上記実施形態では、刃部が側面視において、ハマグリの側面に似た形状を有する場合について説明したが、本発明はこれに限らない。
図10に示すように、刃部46は、側面視において、略二等辺三角形状を有することとしてもよい。また
図11に示すように、刃部48は、側面視において、厚く形成された基端と、先細形状の先端とを直線的に接続した形状を有することとしてもよい。
【0047】
第3実施形態においては、有刃薬液供給体30A,30Bの支持部38A,38Bは、内部に貫通孔32を形成することができれば、厚さは特に限定されない。
【0048】
また、刃部36は、有刃薬液供給体30A,30Bの先端部37のみならず、有刃薬液供給体30A,30Bの外縁の全域にわたって設けられていてもよい。
【0049】
第3実施形態は、第2実施形態と組み合わせることもできる。例えば、
図4に示したような溝22を両表面に形成し、この溝22の内側で開口するように貫通孔32を設けてもよい。この場合、溝22は、有刃薬液供給体30A,30Bの基端の下から1/3程度の高さから設けることができる。また、側面視における先端の角度は、約15°程度とすることができる。側面視において、溝22はストレート状に限定されず、約6°程度の角度を設けてもよい。