(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スクープフィーダは、前記ロータリーキルンにおいて、「その排出端から全長の2/10離れた位置」〜「その排出端から全長の5/10離れた位置」に設けられており、該スクープフィーダを介して前記石炭を投入することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のロータリーキルンの操業方法。
前記ロータリーキルンの炉内温度は、その排出端の鉱石温度で700〜900℃であり、且つ、その装入端の排ガス温度で250〜400℃であることを特徴とする請求項3又は4に記載のロータリーキルンの操業方法。
【背景技術】
【0002】
鉄とニッケルの合金であるフェロニッケル製錬において、原料のニッケル酸化鉱(以下、単に「鉱石」ともいう。)は、ニッケルを1〜3重量%含むとともに、約40重量%の水分を含むものであり、その形状は最大直径20mm以上の塊を含む泥状である。
【0003】
このため、フェロニッケル製錬においては、先ず、原料であるニッケル酸化鉱を処理する最初の工程として、最大直径20〜100mm以上の塊を破砕し、その鉱石に含まれる塊の最大直径を20〜100mm以下とする工程が設けられている。そしてまた、この鉱石を電気炉で還元、熔解してフェロニッケルを得る前に、その鉱石中に含まれる水分を取り除くことが必要となる。
【0004】
この鉱石中の水分の除去は、先ず、乾燥用ロータリーキルンを用いて鉱石中の水分を25〜35重量%まで除去した後、乾燥・還元用ロータリーキルンを用いて、残りの水分を除去する。この乾燥・還元用ロータリーキルンでは、水分が取り除かれるとともに、鉱石の部分的な還元も行われる。
【0005】
上述の鉱石中の水分を取り除き、鉱石の部分還元を行うにあたり、乾燥・還元用ロータリーキルンに求められる滞留時間としては2〜3時間程度である。ロータリーキルンの回転数は、駆動装置の摩耗等から1rpm程度が好ましい。また、このロータリーキルンの滞留時間とロータリーキルンの回転数から、フェロニッケル製錬におけるロータリーキルンは内径5m前後、全長100〜150m程度のものが用いられることが多い。
【0006】
この乾燥・還元用ロータリーキルンにおいて、鉱石中の水分の除去と、鉱石を部分的に還元するために必要な熱は、ロータリーキルン排出端に設けられたバーナーで焚かれる重油等の燃焼熱と、ロータリーキルン装入端から投入される石炭等の燃焼熱による。
【0007】
ロータリーキルン内に投入された石炭は、鉱石に対して5%程度の割合で投入され、ロータリーキルン内の鉱石層に分散して、緩やかに燃焼していく。この燃焼によって生じた熱が鉱石層に伝わり、鉱石を乾燥させていく。このようなロータリーキルン内の温度は、装入端で最も低く、排出端に近づくに従って高くなり、中央部から排出端手前で最高となり、常温のフリーエアーが入ってくる排出端では僅かに低下する。
【0008】
ところで、このロータリーキルンにおいて、鉱石処理量を増加させるためには、すなわち、水分の除去量を引き上げるためには、上述のバーナーで焚く重油等の量と、ロータリーキルン装入端から投入する石炭等の量を増加させることが必要となる。
【0009】
しかしながら、ロータリーキルン排出端に設けられたバーナーで焚く重油等量を増加させると、バーナーのフレームからロータリーキルン内壁に伝わる輻射熱が増加するため、このバーナーのフレームが形成される位置では、ロータリーキルン内壁の温度が上昇する。そして、このロータリーキルン内壁温度が鉱石の融点を超えると、鉱石が部分的に熔解し始めてロータリーキルン内壁に付着し、この内壁に付着した鉱石が操業を続けるに従い徐々に成長し、ロータリーキルンの内壁にリング状の付着物(以下、「ベコ」という。)を形成する。このベコは、操業の途中でロータリーキルン内壁から剥離して落下し、ロータリーキルン内をロータリーキルン排出端まで移動した後に排出されるが、しばしばロータリーキルン排出端に設けられた鉱石排出用シュートを詰まらせる。この詰まりを解消するためには、操業を停止させる必要があり、ロータリーキルンの稼働率を低下させる主な要因となっていた。
【0010】
ロータリーキルン内壁へのベコ形成の原因である、ロータリーキルン排出端に設けられたバーナーで焚く重油等の量を増加させないために、例えば特許文献1では、ロータリーキルンにおいて、途中の位置でスクープフィーダから粉炭を供給する方法により、バーナーで焚く重油等の量を増加させない技術が開示されている。
【0011】
しかしながら、この特許文献1に記載の技術は、ごみ処理用のキルンの技術であって、フェロニッケル製錬における乾燥・還元用のロータリーキルンには十分に適用することができない。すなわち、フェロニッケル製錬において用いられる原料は、ニッケル酸化鉱であり、また用いられる石炭の性質もゴミ処理用に用いられる粉炭とは大きく異なるものであり、この特許文献1に記載の技術で以って、ニッケル酸化鉱に対する乾燥・還元処理を効果的に且つ効率的に行うことはできない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るロータリーキルンの操業方法の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という。)について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。
【0025】
<ロータリーキルンの操業フロー>
本実施の形態に係るロータリーキルンの操業方法(以下、単に「操業方法」ともいう。)は、フェロニッケル製錬において、原料のニッケル酸化鉱に付着した水分の一部をドライヤーで除去した鉱石(乾燥鉱石)に対して、燃料の燃焼熱により水分を完全に除去する乾燥処理を施すとともに部分還元処理を施す工程(乾燥・還元工程)にて使用するロータリーキルン(乾燥・還元用ロータリーキルン)の操業方法である。
【0026】
図1は、鉱石の乾燥及び部分還元を行う向流加熱方式のロータリーキルンを用いた操業フローを示す概略図である。この
図1において、ロータリーキルン1では、前工程の乾燥工程にてドライヤー(ロータリードライヤー)により一部の付着水分が除去されたニッケル酸化鉱(乾燥鉱石)を原料とし、化石燃料の燃焼熱を利用して乾燥鉱石の水分を完全に除去して焼成するとともに部分的な還元処理を施し、焼成鉱石(焼鉱)を産出する。
【0027】
なお、ニッケル酸化鉱(酸化ニッケル鉱石)としては、特に限定されないが、ガーニエライト鉱等が好ましく用いられる。このガーニエライト鉱の代表的な組成としては、乾燥鉱換算でNi品位が2.1〜2.5重量%、Fe品位が11〜23重量%、MgO品位が20〜28重量%、SiO
2品位が29〜39重量%、CaO品位が0.5重量%未満、灼熱減量が10〜15重量%である。
【0028】
ロータリーキルン1において、その装入端1A(以下、「ロータリーキルン装入端1A」ともいう。)から乾燥鉱石が装入される。このロータリーキルン1に装入される乾燥鉱石は、上述したように、ドライヤーにより予備乾燥され付着水分の一部が除去された原料鉱石であり、その水分量の目安としては25〜35重量%程度である。
【0029】
また、ロータリーキルン1において、その排出端1B(以下、「ロータリーキルン排出端1B」ともいう。)には、バーナーが設けられており、重油等の化石燃料がそのバーナーにより焚かれて燃焼する。また、このロータリーキルン排出端1Bからは、化石燃料等の燃焼熱による乾燥・還元処理によって産出された焼鉱が排出される。なお、ロータリーキルンから排出された焼鉱は、その排出端1Bに設けられた鉱石(焼鉱)排出用のシュートから排出され、搬送手段により電気炉の炉上ビンまで搬送される。そして、その焼鉱が、電気炉内で還元、熔解されることによってフェロニッケルが生成する。
【0030】
このロータリーキルン1の操業においては、原料である乾燥鉱石の乾燥・還元処理にあたり、上述した化石燃料の燃焼熱とともに、鉱石に対して約5%程度の割合の量の石炭が投入され、その石炭がロータリーキルン内で燃焼されることによる燃焼熱も利用される。
【0031】
このとき、本実施の形態に係る操業方法においては、ロータリーキルン1の途中に設けたスクープフィーダを介して、その含有水分量を2〜5重量%に調整した石炭をロータリーキルン1内に投入することを特徴としている。
【0032】
<投入する石炭の水分量とその燃焼率について>
ここで、ロータリーキルン1内に投入する石炭について、ロータリーキルン1内での燃焼率を向上させるために、投入する石炭中の水分とそのロータリーキルン1内での石炭の燃焼率について調査した。
図2は、石炭中の水分割合とロータリーキルン1内での石炭燃焼率の関係を示すグラフである。なお、石炭燃焼率(以下、単に「燃焼率」ともいう。)とは、実際に燃焼した部分の質量を石炭中の可燃部分の質量で割った値の百分率をいう。
【0033】
図2のグラフに示されるように、本発明者らは、フェロニッケル製錬における乾燥・還元工程で用いられるロータリーキルン1において、水分が2〜5重量%である石炭をロータリーキルン1に投入することで、その石炭の燃焼率が著しく向上することを見出した。
【0034】
従来、フェロニッケル製錬において用いられていた石炭としては、粒径が100mm以上であって、水分を10〜15重量%の割合で含むものであり、揮発分25〜40重量%、石炭から揮発分が抜けた後の石炭中の炭素(以下、「固定炭素」という。)40〜60重量%、灰分10〜20重量%であった。そのため、この石炭を、スクープフィーダを介してロータリーキルンの長手方向の中央部に投入した場合、約60分間のロータリーキルン内での滞留時間の間に、水分の蒸発にその多くの時間を要するようになるため、石炭の燃焼は揮発分と固定炭素の一部が燃焼するにとどまってしまう。このような石炭では、固定炭素の燃焼が未だ初期の段階であるため、固定炭素の大部分が未燃の状態でロータリーキルンから排出される。その結果、投入した石炭の燃焼率としては60%以下となる。
【0035】
なお、ここでの燃焼率の算定においては、フェロニッケル製錬において乾燥・還元用として一般的に用いられる、内径約4.5〜6.5m、全長約100〜150mのロータリーキルンを用いた場合を具体例とし、このロータリーキルンの略中間(中央部)の位置からスクープフィーダを介して石炭を投入する場合について示すものであり、この場合における石炭の滞留時間が約60分間となる。また、石炭の粒径とは、石炭を19mm、37.5mm、75mm、150mmの篩を用いて分級し、この値をロジン・ラムラー線図にプロットして、そのロジン・ラムラー線図から累積重量が50%となる径である。
【0036】
これに対して、水分が2〜5重量%となるまで乾燥させた石炭を投入することによって、その石炭がロータリーキルン1内に投入されてからロータリーキルン排出端1Bで排出されるまでの約60分の間に、石炭が100℃まで昇温した後に、この昇温に続いて起こる水分の蒸発に要する時間が非常に短くなる。すると、次に続く揮発分の燃焼の後、固定炭素の燃焼も効果的に生じさせることが可能となり、このようにして固定炭素が燃焼することで石炭そのもののさらなる昇温が加速される。固定炭素の燃焼は、高温であるほど促進されるため、このようにして水分量を調整した石炭を投入することで、その投入した石炭の燃焼率が著しく向上することになる。
【0037】
このように、本実施の形態に係る操業方法では、そのロータリーキルン1の途中に設けられたスクープフィーダを介して、その水分を2〜5重量%とした石炭を投入することによって、投入する石炭の燃焼率を向上させることができる。そして、これにより、重油等の化石燃料の量を増加させることなく、原料である乾燥鉱石に含まれる水分を効果的に除去することができ、効率的な乾燥・還元処理を行うことが可能となり、鉱石処理量を増加させることができる。
【0038】
石炭に含まれる水分割合として、5重量%を超える場合は、上述した理由により固定炭素の燃焼率が60%以下にとどまってしまい効率的な乾燥・還元処理を行うことができないため、好ましくない。一方で、その水分割合が2重量%未満の場合は、投入する石炭をスクープフィーダまで運ぶコンベア等の搬送設備において発塵が著しくなり、またその石炭の内の微粒のものが粉塵爆発を起こす可能性があるため、好ましくない。
【0039】
<投入する石炭の前処理>
図1の操業フローに示すように、ロータリーキルン1に投入する石炭は、粉砕機2によって所定の粒径となるように粉砕されたのち、乾燥機3によってその水分が2〜5重量%となるように乾燥される。
【0040】
粉砕機2としては、特に限定されるものではないが、例えばロールクラッシャー、ジョークラッシャー、ジャイレトリ破砕機、ディスク破砕機等を用いることができる。
【0041】
ここで、投入する石炭の粒径としては、特に限定されないが、20〜100mm程度であることが好ましい。上述したように、フェロニッケル製錬においては、先ず原料であるニッケル酸化鉱の最大直径を20〜100mm以下とするように粉砕処理が行われる。したがって、ロータリーキルンに投入する石炭の粒径を20〜100mm程度とすることで、原料の鉱石の粒度と近似してくるようになり、このような石炭を投入することによって石炭が鉱石層に容易に分散され、原料となる乾燥鉱石の乾燥・還元処理をより効率的に進行させることができる。また、石炭の粒径を20〜100mm程度とすることによって、所望とする水分量とするための乾燥処理を均一に施すことが可能となる。
【0042】
石炭の粒径が20mm未満の場合、石炭を破砕する際に一部の石炭が粉状となり、この粉状の石炭が混じった状態となってしまうため、石炭をスクープフィーダまで搬送する過程において発塵が著しくなり、好ましくない。一方で、石炭の粒径が100mmを超える場合、石炭の固定炭素の燃焼が表面燃焼であることから、比表面積が小さくなることにより燃焼速度は下がり、燃焼率が低下する可能性があるため、好ましくない。
【0043】
なお、上述したように、石炭の粒径とは、石炭を19mm、37.5mm、75mm、150mmの篩を用いて分級し、この値をロジン・ラムラー線図にプロットして、そのロジン・ラムラー線図から累積重量が50%となる径である。
【0044】
乾燥機3としては、石炭の水分割合を2〜5重量%に調整できるものであれば特に限定されないが、例えばスチームチューブドライヤー等を用いることができる。
【0045】
このようにして、粉砕機2によって粉砕され、乾燥機3によって含有水分が2〜5重量%となるように調整された石炭が、ロータリーキルン1の途中に設けられたスクープフィーダを介して、そのロータリーキルン1内に投入される。なお、投入する石炭は、例えばコンベア等の搬送設備を用いてスクープフィーダに搬送される。
【0046】
<ロータリーキルンの構造(スクープフィーダ等について)>
ここで、ロータリーキルン1の構造について、より詳しく説明する。
【0047】
ロータリーキルン1は、その装入端1Aから排出端1Bに向かって下方に傾斜して設けられており、上述したように、装入端1Aから原料の乾燥鉱石が装入され、その乾燥鉱石がその回転する胴体部内を排出端1Bの方向へ移動する。一方、排出端1Bからは、その排出端1Bに設けられたバーナーで焚かれた化石燃料の燃焼熱が、乾燥鉱石とは逆方向に流れることで、乾燥鉱石を向流加熱する。
【0048】
このロータリーキルン1の大きさとしては、特に限定されないが、フェロニッケル製錬において乾燥・還元用として用いる場合には、内径4.5〜6.5m程度、全長100〜150m程度のものであることが好ましい。
【0049】
その内径が4.5m未満、または全長が100m未満のロータリーキルンでは、ロータリーキルン内で鉱石を乾燥し、部分的な還元を行うために必要な時間を十分に確保することが困難となり、効果的な処理を行うことができない可能性がある。一方で、その内径が6.5mを超え、または全長が150mを超えるロータリーキルンでは、そのロータリーキルンを設置するための設備投資や、維持するための費用が莫大となるため、経済効率性の観点から好ましくない。
【0050】
また、このロータリーキルン1においては、その乾燥鉱石の移動方向(ロータリーキルン1の長手方向)の途中の位置に、スクープフィーダが設けられている。
図3に、ロータリーキルン1におけるスクープフィーダが設けられた位置の断面(乾燥鉱石の移動方向に対して垂直方向の断面)構成図を示す。この
図3に示すように、ロータリーキルン1は、主として、回転する胴体部11と、その胴体部11を覆う外殻12とから構成されており、その胴体部11の所定の位置にスクープフィーダ13が設けられている。
【0051】
ロータリーキルン1において、胴体部11内には、原料となる乾鉱鉱石が装入されて、その胴体部11の回転に伴って装入端1Aから排出端1Bへと乾燥鉱石が移動する。また、このロータリーキルン1においては、その胴体部11と外殻12とにより空間部12Rが形成されており、その外殻12に設けられた石炭供給口12Cを介して、その空間部12R内に石炭が装入される。
【0052】
スクープフィーダ13は、例えばL字形状の管で形成されており、L字形状の曲部を有する先端部13Aで石炭を掬い上げ、掬い上げた石炭をL字形状の直線部13Bを構成する管内に通過させて胴体部11内にフィードする。より具体的には、スクープフィーダ13は、所定の箇所で胴体部11に固定されており、L字形状の曲部を有する先端部13Aが胴体部11と外殻12とで形成される空間部(石炭装入空間部)12R内に位置している。このスクープフィーダ13では、スクープフィーダ13を固定した胴体部11の回転に伴って、空間部12R内に装入された石炭が先端部13Aを介して掬い上げられてスクープフィーダ13内に取り込まれる。そして、このスクープフィーダ13が胴体部11の回転に伴って胴体部11の上方部に位置したときに、重力の作用によって、スクープフィーダ13内に取り込まれた石炭がL字形状の直線部13Bを構成する管内を通過して、胴体部11内にフィードされる。
【0053】
このようにして、水分が2〜5重量%の石炭がロータリーキルン1の途中に設けられたスクープフィーダ13を介してロータリーキルン1内に投入され、燃焼される。
【0054】
このとき、ロータリーキルン1において、乾燥鉱石の移動方向(ロータリーキルン1の長手方向)におけるスクープフィーダ13の設置位置、すなわちスクープフィーダ13を介して投入される石炭の投入位置としては、その内部の温度が900〜1200℃程度となっているロータリーキルン1の位置とすることが好ましい。ロータリーキルン1において、その内部が900〜1200℃程度である位置にスクープフィーダ13を設置して石炭を投入することによって、石炭中の固定炭素を効率的に燃焼させることができる。
【0055】
ロータリーキルン1内の温度が900℃未満の位置に石炭を投入した場合、温度が低いために石炭の燃焼速度が遅くなる。このため、ロータリーキルン1内での約60分間の滞留時間内に石炭中の固定炭素まで燃焼させることが困難となり、石炭の燃焼率が悪くなる。一方で、ロータリーキルン1内の温度が1200℃を超える位置に石炭を投入すると、そのロータリーキルン1の内壁にベコが生じ易くなるため、好ましくない。
【0056】
また、上述した温度範囲にあるロータリーキルン1の位置の中でも、「ロータリーキルン排出端1Bからロータリーキルン全長の2/10離れた位置」〜「ロータリーキルン排出端1Bからロータリーキルン全長の5/10離れた位置」にスクープフィーダ13を設置して、そのスクープフィーダ13を介して石炭を投入することが、より好ましい。
【0057】
スクープフィーダ13の設置位置、すなわち石炭を投入する位置が、「ロータリーキルン排出端1Bからロータリーキルン全長の2/10離れた位置」よりも排出端1Bに近い場合では、投入された石炭のロータリーキルン1内での滞留時間が短くなる。そのため、石炭の温度が固定炭素を燃焼させるのに必要な温度に達することが難しくなり、その固定炭素を燃焼させることが困難になる。一方で、「ロータリーキルン排出端1Bからロータリーキルン全長の5/10離れた位置」よりも装入端1Aに近い場合では、ロータリーキルン1内の温度の低い箇所に石炭が投入されることになるため、燃焼する前に付着水が完全に除かれていない鉱石層の中に石炭が分散し、その石炭の表面が付着水を含んだ鉱石で覆われてしまう可能性があるため、その後に温度が上昇しても、空気との接触が十分でないために高い燃焼率を得ることが困難となる。
【0058】
<その他(ロータリーキルンの他の操業条件について)>
ロータリーキルン1の炉内温度としては、特に限定されるものではないが、ロータリーキルン排出端1Bにおける鉱石温度で700〜900℃、かつロータリーキルン装入端1Aにおける排ガス温度で250〜400℃であることが好ましい。
【0059】
ロータリーキルン1の炉内温度が、ロータリーキルン排出端1Bにおける鉱石温度で700℃未満、またはロータリーキルン装入端1Aの排ガス温度で250℃未満の場合には、ロータリーキルン1の内部全体の温度が低いため、投入した石炭中の固定炭素を燃焼させることが困難となる。また、ロータリーキルン1の炉内温度が、ロータリーキルン排出端1Bの鉱石温度で900℃を超え、またはロータリーキルン装入端1Aの排ガス温度で400℃を超える場合には、ロータリーキルン1の内部全体の温度が高過ぎることにより、その内壁におけるベコの発生量が増加するため、好ましくない。
【0060】
また、ロータリーキルン1の回転数、すなわちロータリーキルン1を構成する胴体部11の回転数としては、特に限定されるものではないが、0.5〜1.5rpm程度とすることが好ましい。
【0061】
ロータリーキルン1の回転数が0.5rpm未満では、ロータリーキルン1の内部での撹拌力が弱くなるため、投入した石炭が原料とする乾燥鉱石の中に埋まっている状態でゆっくりと円周方向を滑りながら、少しずつ装入端1A側から排出端1B側に移動するようになる。このような場合、石炭表面とロータリーキルン1内の空気との接触が十分でなくなるため、投入した石炭の燃焼効率が悪化する可能性がある。一方で、ロータリーキルンの回転数が1.5rpmを超えると、ロータリーキルン1の内部での撹拌力が強くなるため、ロータリーキルン1内に装入された原料の乾燥鉱石がロータリーキルン1内で舞い上がり、ダストとして排ガスと共に装入端1Aから排出される可能性があり、排出端1Bから得られる焼鉱の実収率が低下する。
【実施例】
【0062】
以下、本発明についての実施例を比較例と対比しながら説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0063】
[乾燥・還元用ロータリーキルンの操業]
フェロニッケル製錬において、内径4.8m、長さ105mのロータリーキルン(乾燥・還元用ロータリーキルン)を用いて、水分の一部が除去された乾燥鉱石に対する乾燥・還元処理を施す操業を行った。使用するロータリーキルンには、その長手方向の中央部にスクープフィーダを設置し、この乾燥・還元処理においては、そのスクープフィーダを介してロータリーキルン内に石炭を投入した。
【0064】
(実施例1)
実施例1では、投入する石炭を以下のように調整した。すなわち、先ず、ロールクラッシャーを用いて、その石炭の粒径が100mmとなるように破砕した。次に、破砕した石炭をスチームチューブドライヤーを用いて乾燥させ、その石炭に含まれる水分を5重量%に調整した。
【0065】
得られた石炭は、エプロンフィーダを用いて、ロータリーキルンの長手方向の中央部に設けられているスクープフィーダまで搬送し、そのスクープフィーダを介して、3.6t/hの投入速度で1.5rpmの回転数で回転しているロータリーキルン内へ投入した。
【0066】
石炭の投入位置、すなわちロータリーキルンにおけるスクープフィーダの設置位置としては、ロータリーキルン排出端から全長の2/10離れた位置(排出端から21m離れた位置)とした。この位置におけるロータリーキルン内の温度は1200℃であった。
【0067】
なお、このロータリーキルンの操業において、排出端に設けたバーナーの重油使用量は1710L/hとし、微粉炭使用量は2880kg/hとした。また、このロータリーキルンの炉内温度は、ロータリーキルン排出端の鉱石温度で900℃であり、またロータリーキルン装入端の排ガス温度で400℃であった。
【0068】
(実施例2)
実施例2では、ロータリーキルンへ投入する石炭を、その粒径が20mm、水分が2重量%となるように調整した。また、石炭の投入位置(ロータリーキルンにおけるスクープフィーダの設置位置)としては、ロータリーキルン排出端から全長の2/10離れた位置(排出端から21m離れた位置)とした。この位置におけるロータリーキルン内の温度は900℃であった。そして、調整した石炭を、そのスクープフィーダを介して、3.6t/hの投入速度で0.5rpmの回転数で回転しているロータリーキルン内へ投入した。それ以外は、実施例1と同様にして操業を行った。
【0069】
なお、ロータリーキルンの炉内温度は、ロータリーキルン排出端の鉱石温度で700℃であり、ロータリーキルン装入端の排ガス温度で250℃であった。
【0070】
(比較例1)
比較例1では、粒径が100mmであり、水分が13重量%である石炭を投入した。それ以外は、実施例1と同様にして操業を行った。
【0071】
(比較例2)
比較例2では、粒径が120mmであり、水分が13重量%である石炭を用いた。また、石炭の投入位置(ロータリーキルンにおけるスクープフィーダの設置位置)としては、ロータリーキルン排出端から全長の1.8/10離れた位置排出端から18.9m離れた位置)とした。この位置におけるロータリーキルン内の温度は850℃であった。そして、石炭を、そのスクープフィーダを介して、3.6t/hの投入速度で0.4rpmの回転数で回転しているロータリーキルン内へ投入した。それ以外は、実施例1と同様にして操業を行った。
【0072】
なお、ロータリーキルンの炉内温度は、ロータリーキルン排出端の鉱石温度で650℃であり、ロータリーキルン装入端の排ガス温度で230℃であった。
【0073】
(比較例3)
比較例3では、ロータリーキルンへ投入する石炭を、その粒径が10mm、水分が1重量%となるように調整した。また、石炭の投入位置(ロータリーキルンにおけるスクープフィーダの設置位置)としては、ロータリーキルン排出端から全長の5.2/10離れた位置(排出端から54.6m離れた位置)とした。この位置におけるロータリーキルン内の温度は1300℃であった。そして、石炭を、そのスクープフィーダを介して、3.6t/hの投入速度で1.7rpmの回転数で回転しているロータリーキルン内に投入した。それ以外は、実施例1と同様にして操業を行った。
【0074】
なお、ロータリーキルンの炉内温度は、ロータリーキルン排出端の鉱石温度で950℃であり、ロータリーキルン装入端の排ガス温度で420℃であった。
【0075】
[操業結果]
下記表1に、各実施例及び比較例におけるロータリーキルンの操業結果をまとめて示す。なお、この評価において、『石炭燃焼率』とは、実際に燃焼した部分の質量を石炭中の可燃部分の質量で割った値の百分率である。また、『鉱石処理量』とは、ロータリーキルン装入端から装入した乾燥鉱石の1時間あたりの重量をいう。
【0076】
【表1】
【0077】
表1に示すように、実施例1及び実施例2における操業では、ロータリーキルン内に投入する石炭の水分を、それぞれ5重量%、2重量%に調整したことにより、従来法である比較例1(投入石炭の水分13重量%)における操業に比べて、鉱石処理量を1時間あたり1tも増加させることができた。このことは、実施例1及び実施例2にて投入した石炭の燃焼率が、比較例1に比べて5%も向上したことにより、石炭の燃焼による燃焼熱が高まり、より効果的に且つ効率的に鉱石を乾燥させることができたためと考えられる。具体的に、実施例1においては、その単位重量あたりの石炭から得られる熱量が、比較例1に比べて8%も大幅に増加した。
【0078】
一方で、比較例2では、表1に示すように、投入した石炭の燃焼率が53%と著しく低下し、その結果として鉱石の処理量も1時間あたり97tと減少してしまった。このことは、投入した石炭の水分が13重量%であったとともに、石炭投入位置、つまりスクープフィーダの設置位置を、その内部温度が850℃という比較的低温であるロータリーキルンの位置としたことにより、石炭の燃焼速度が著しく遅くなり、石炭中の固定炭素まで十分に燃焼されなかったために、石炭の燃焼率が低下したと考えられる。そして、燃焼率の低下により、石炭の燃焼による熱量が十分に得られず、鉱石に対する効率的な乾燥処理が行えなかったものと考えられる。
【0079】
また、比較例3では、石炭の水分が1重量%と少なく、またその粒径が10mmと非常に小さかったため、発塵が著しかった。さらに、投入した石炭の水分が1重量%であったとともに、その石炭の投入位置を、その内部温度が1300℃と非常に高温であるロータリーキルンの位置としたことにより、その石炭投入位置からロータリーキルン排出端にかけて内壁にベコが多量に生成し、このベコが剥離して落下した後に排出端にある鉱石(焼鉱)排出用のシュートを詰まらせる事態が生じた。そのため、操業を継続することができなかった。