(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【0013】
本発明の一実施形態に係る光ディスク装置1は、光ディスク媒体に記録された情報を読み取る装置であって、
図1に示すように、媒体支持部11と、スピンドルモータ12と、光学ピックアップ13と、送りモータ15と、駆動回路16と、信号出力回路17と、サーボ信号処理部18と、記録信号処理部19と、制御部20と、を備えている。
【0014】
光ディスク装置1による情報読み出しの対象となる光ディスク媒体Mは、情報が記録されるデータ記録層と、その両側からデータ記録層を保護する保護層と、が積層されて構成される。以下では、データ記録層のデータが記録される面を信号面という。光ディスク装置1は、光ディスク媒体Mに記録された情報を読み取るだけでなく、光ディスク媒体Mに対して情報を書き込み可能に構成されてもよい。さらに、光ディスク装置1は、CDや、DVD、Blu−ray Discなど、複数種類の光ディスク媒体Mに記録された情報を読み取り可能に構成されてもよい。
【0015】
媒体支持部11は、光ディスク媒体Mを回転可能に支持する。また、この媒体支持部11は、スピンドルモータ12から伝達される動力によって光ディスク媒体Mを回転させる。
【0016】
光学ピックアップ13は、光ディスク媒体Mに対してレーザー光を照射し、照射した光の光ディスク媒体Mでの反射光を検出して、検出した反射光に応じた出力信号を出力する。
図2は、光学ピックアップ13の内部構成の一例を示す図である。この図の例においては、光学ピックアップ13は、発光素子31と、偏光ビームスプリッタ32と、球面収差補正機構33と、立ち上げミラー35と、対物レンズ36と、フォトディテクタ37と、対物レンズ駆動部38と、を備えている。球面収差補正機構33は、コリメータレンズ33aと、コリメータレンズ駆動部33bと、を含んで構成されている。
【0017】
発光素子31は、所定波長のレーザー光を出力する半導体レーザー素子である。発光素子31から出射された出射光は、偏光ビームスプリッタ32及びコリメータレンズ33aを通過した後、立ち上げミラー35で反射される。さらに、立ち上げミラー35で反射された出射光は、対物レンズ36によって、対物レンズ36から焦点距離Fだけ離れた位置に集光され、光ディスク媒体Mによって反射される。
【0018】
光ディスク媒体Mにより反射された反射光は、対物レンズ36を通過した後、立ち上げミラー35で反射され、偏光ビームスプリッタ32によってフォトディテクタ37側に導かれる。フォトディテクタ37は、複数の受光素子により構成される。光ディスク媒体Mからの反射光がこれらの受光素子に到達すると、フォトディテクタ37は、複数の受光素子のそれぞれが受光した光の強度に応じた信号を出力信号として出力する。
【0019】
球面収差補正機構33は、対物レンズ36の球面収差を補正するための機構である。コリメータレンズ駆動部33bは、アクチュエータ等により構成され、コリメータレンズ33aをレーザー光の光軸方向に沿って前後に駆動する。コリメータレンズ駆動部33bがコリメータレンズ33aを光軸方向に沿って移動させることにより、対物レンズ36の球面収差の量が変化する。コリメータレンズ33aの位置を適切に調整することで、対物レンズ36の球面収差を補正することができる。
【0020】
対物レンズ駆動部38は、アクチュエータ等により構成され、対物レンズ36を、光ディスク媒体Mの径方向(以下、トラッキング方向という)、及び、光ディスク媒体Mの表面に垂直な方向(以下、フォーカス方向という)の2つの方向に沿って移動させる。対物レンズ駆動部38が対物レンズ36をフォーカス方向に沿って移動させることにより、対物レンズ36から光ディスク媒体Mの表面までの距離が変化する。
【0021】
送りモータ15は、光学ピックアップ13全体をトラッキング方向に沿って移動させる。この送りモータ15の駆動によって、光学ピックアップ13は、光ディスク媒体Mの中心近傍の位置から外周近傍の位置まで移動可能になっている。
【0022】
駆動回路16は、サーボ信号処理部18から入力される制御信号に従って、スピンドルモータ12、送りモータ15、コリメータレンズ駆動部33b、及び対物レンズ駆動部38を駆動する駆動信号を出力する。この駆動回路16からの駆動信号に応じて、スピンドルモータ12の回転速度が変化することによって、光ディスク媒体Mの回転速度が制御される。また、この駆動回路16からの駆動信号に応じて対物レンズ駆動部38及び送りモータ15が駆動することによって、対物レンズ36の媒体回転軸からの距離、及び対物レンズ36の媒体表面までの距離が制御される。
【0023】
信号出力回路17、サーボ信号処理部18、記録信号処理部19、及び制御部20は、例えば、光学ピックアップ13から出力されるアナログ信号を処理するアナログ回路、アナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器、及び当該変換により得られたディジタル信号を処理するDSP(Digital Signal Processer)やマイクロコンピュータなどによって実現される。
【0024】
信号出力回路17は、フォトディテクタ37が出力するアナログ信号に基づいて、各種の信号を出力する。具体的に、信号出力回路17は、各受光素子からの出力信号を所与のゲイン(増幅率)で増幅して得られる増幅信号に対して演算を行うことによって、フォーカスエラー信号(FE信号)、トラッキングエラー信号(TE信号)、データ再生用のRF信号などを出力する。フォーカスエラー信号は、光ディスク媒体Mの信号面と対物レンズ36の焦点位置との間のフォーカス方向のずれを表す信号である。トラッキングエラー信号は、対物レンズ36の焦点位置と光ディスク媒体Mのトラック位置との間のトラッキング方向のずれを表す信号である。また、信号出力回路17は、複数の受光素子の出力信号を増幅して全加算することで得られるプルイン信号(PI信号)も出力する。
【0025】
サーボ信号処理部18は、信号出力回路17が出力するPI信号、FE信号、TE信号などに基づいて、サーボ制御用の各種の信号を生成し、制御部20に出力する。また、サーボ信号処理部18は、制御部20から入力される指示に従って、駆動回路16に対して対物レンズ駆動部38や送りモータ15、スピンドルモータ12を駆動させるための制御信号を出力する。
【0026】
特にサーボ信号処理部18は、制御部20からの指示に応じてサーボ制御を実行する。具体的に、サーボ信号処理部18は、制御部20からサーボ制御開始の指示が入力されると、信号出力回路17から入力されるFE信号に応じて対物レンズ駆動部38を制御する制御信号を出力することにより、対物レンズ36のフォーカス方向の位置調整を行うフォーカスサーボ制御を行う。これにより、対物レンズ36のフォーカスが光ディスク媒体Mの信号面に一致する状態が維持される。また、サーボ信号処理部18は、信号出力回路17から入力されるTE信号に応じて対物レンズ駆動部38を制御する制御信号を出力することにより、対物レンズ36のトラッキング方向の位置を変化させるトラッキングサーボ制御を行う。これにより、対物レンズ36のフォーカスがデータ記録層内のトラックに追従するように、対物レンズ36が媒体表面に対して相対移動する。このように、サーボ信号処理部18が実行するサーボ制御によって、光ディスク媒体Mの表面に対する対物レンズ36の相対位置が制御されることにより、光学ピックアップ13が光ディスク媒体Mから情報を読み取り可能な状態が維持され、その間に情報の読み出しが行われる。
【0027】
記録信号処理部19は、信号出力回路17が出力するRF信号に基づいて、光ディスク媒体Mに記録された情報を示すディジタル信号を復調して、制御部20に出力する。また、記録信号処理部19は、光学ピックアップ13による光ディスク媒体Mに記録された情報の読み取り精度に関する評価値(RF振幅やジッター値など)を算出し、制御部20に対して出力する。
【0028】
制御部20は、例えばマイクロコンピュータによって構成され、実行モジュールと記憶素子とを含む。この制御部20の記憶素子には、実行するべきプログラムや各種パラメーターが格納され、実行モジュールは、当該記憶素子に格納されたプログラムに従って処理を行う。特に本実施形態において、制御部20は光ディスク媒体Mから情報を読み取る際にSAパラメーターの調整処理を行う。ここでSAパラメーターは、対物レンズ36の球面収差補正に関するパラメーターである。SAパラメーターの設定値が更新されると、制御部20は、コリメータレンズ駆動部33bを制御して、その設定値に対応する位置にコリメータレンズ33aを移動させる。これにより、対物レンズ36の球面収差が補正される。SAパラメーターの調整処理については後述する。
【0029】
また、制御部20は、パーソナルコンピュータや、家庭用ゲーム機本体、ビデオデコーダなどのホストに接続され、ホストからの要求に応じて、送りモータ15や対物レンズ駆動部38を駆動させる命令をサーボ信号処理部18に出力し、対物レンズ36の焦点(すなわち、光ディスク媒体M上における情報の読み取り位置)を光ディスク媒体M上の所望の位置へ移動させる。また、併せてスピンドルモータ12の回転速度を変更する命令をサーボ信号処理部18に出力し、光ディスク媒体Mの回転速度を調整する。そして、その状態において記録信号処理部19が出力する、光ディスク媒体Mから読み取られた信号から復調された信号を、ホスト側へ出力する。
【0030】
光ディスク装置1は、光ディスク媒体Mから情報を読み取る前に、SAパラメーターの望ましい設定値を算出する調整処理を行う。具体的に光ディスク装置1は、球面収差補正機構33を用いた調整処理によって、精度よく光ディスク媒体Mに記録された情報を読み出すことができると想定されるSAパラメーターの値(以下、最適値Soという)を算出する。そして、この調整処理によって算出された最適値SoをSAパラメーターに対して設定し、設定された最適値Soに応じた動作条件で読み取り動作を実行する。これにより光ディスク装置1は、読み取りエラーを生じさせずに、精度よく光ディスク媒体Mからの情報の読み出しを行うことができる。このSAパラメーターの調整処理は、例えば光ディスク装置1に新たに光ディスク媒体Mがセットされた場合などに実行される。光ディスク媒体Mの種別や個体差などによって、SAパラメーターの最適な設定値が異なるからである。
【0031】
ここで、調整処理の基本的な考え方について説明する。SAパラメーターを変化させると、対物レンズ36の球面収差補正の量が変化し、その程度に応じて光ディスク媒体Mからの情報の読み取り精度も変化する。SAパラメーターの設定値と、読み取り精度の評価値との間には、二次曲線で近似可能な関係が成立する。ここでは評価値として、RF信号の振幅値(RF振幅)を使用することとする。
図3は、SAパラメーターの設定値とRF振幅との間の関係の一例を示すグラフである。この図においては、横軸がSAパラメーターの設定値を、縦軸がRF振幅を、それぞれ示している。ここでは評価値としてRF振幅を用いているので、その値が大きいほど読み取り品質がよいことを示している。この
図3においては、SAパラメーターの設定値とRF振幅との関係が上に凸の放物線によって表されており、最適値Soは、放物線の頂点に対応する横軸の値になる。
【0032】
そこで、光ディスク装置1は、サンプルデータとして、SAパラメーターを少なくとも互いに異なる3個以上の設定値のそれぞれに設定した状態で、評価値を測定する。3個以上のサンプルデータが測定されると、光ディスク装置1は、最小二乗法などの手法でこれらのサンプルデータを近似する二次曲線を算出し、その頂点位置に対応するSAパラメーターの値を、最適値Soとして算出する。このようにして調整処理が実行されると、光ディスク装置1は、当該算出された最適値Soに基づいてコリメータレンズ駆動部34を駆動し、コリメータレンズ33の位置を調整する。
【0033】
さらに、本実施形態に係る光ディスク装置1は、以上説明したようなSAパラメーターの調整処理を、新たな光ディスク媒体Mが光ディスク装置1内にセットされたときだけでなく、例えば読み取り対象のデータ記録層を変更する際にも実行する。光ディスク装置1を使用していると、装置内の温度上昇等により対物レンズ36のレンズ特性が変化し、SAパラメーターの現在の最適値Soと最初に調整処理により設定された値との間にずれが生じるからである。
【0034】
以下では、光ディスク媒体Mが2層のデータ記録層を含んでいるものとし、光ディスク装置1が読み取り対象のデータ記録層を変更する際に実行する制御について説明する。なお、以下では光ディスク装置1が読み取り対象のデータ記録層を変更する制御をデータ記録層変更制御という。また、2層のデータ記録層のうち、光学ピックアップ13から遠い側のデータ記録層のデータ記録面を第1信号面、光学ピックアップ13に近い側のデータ記録層のデータ記録面を第2信号面という。データ記録層変更制御は、第1信号面及び第2信号面の一方に対物レンズ36のフォーカスが合っている状態から、他方にフォーカスが合っている状態に遷移し、新たにフォーカスを合わせた信号面から情報の読み取りを開始するまでの制御である。
【0035】
まず、比較のために従来の光ディスク装置におけるデータ記録層変更制御の具体例について、
図4を用いて説明する。
図4は従来のデータ記録層変更制御の内容を説明するための図であって、横軸が時間経過を示している。また、ここでは第1信号面から第2信号面にフォーカス位置を変更する場合について説明する。
【0036】
データ記録層変更制御を開始する際、制御部20は、まずトラッキングサーボ信号をオフにする(時刻t1)。これにより、サーボ信号処理部18はそれまで実行していたトラッキングサーボ制御を終了する。続いて制御部20は、SAパラメーターの設定値を第1基準値S0から中間値Smに変更する。第1基準値S0は、第1信号面から情報を読み取る際に設定されるSAパラメーターの設定値であり、予め初期調整処理によって決定されたSAパラメーターの最適値であってよい。あるいは、予め制御部20の記憶素子に格納されている初期値であってもよい。また、第2信号面から情報を読み取る際に設定されるSAパラメーターの基準値を第2基準値S1と表記する。第2基準値S1も第1基準値S0と同様にして決定されてよい。中間値Smは第1基準値S0と第2基準値S1との間の値であって、コリメータレンズ33aの初期位置に対応する値である。この中間値Smは予め制御部20の記憶素子に格納された値であってよい。中間値Smは、後述するフォーカスジャンプを行うために、第1信号面及び第2信号面のどちらにフォーカスが合った状態でもFE信号のS字波形を検出可能な値になっている。
【0037】
SAパラメーターの設定値が中間値Smに変更されると、これに応じてコリメータレンズ駆動部33bがコリメータレンズ33aの位置を中間値Smに対応する位置(初期位置)に移動させる。コリメータレンズ33aの移動が終了すると、制御部20は対物レンズ駆動部38を制御してフォーカスジャンプを開始する(時刻t2)。このフォーカスジャンプは、対物レンズ36のフォーカスが第1信号面に合っている状態から、第2信号面に合っている状態に遷移する処理である。制御部20は、フォーカスジャンプの実行中に、第2信号面にフォーカスが合ったことを示すS字波形がFE信号に表れると、フォーカスサーボ信号をオンにする(時刻t3)。これによりサーボ信号処理部18は、第2信号面に対物レンズ36のフォーカスが合う状態を維持するフォーカスサーボ制御を開始する。
【0038】
その後制御部20は、SAパラメーターの設定値を中間値Smから第2基準値S1に変更する。これに応じて、コリメータレンズ駆動部33bはコリメータレンズ33aの位置を第2基準値S1に対応する位置に移動させる。コリメータレンズ33aの移動が完了すると(時刻t4)、制御部20はトラッキングサーボ信号をオンにしてトラッキングサーボ制御を開始させる。これにより、対物レンズ36の焦点位置は、第2信号面から情報を読み取り可能な位置に制御される。
【0039】
もし第2基準値S1が第2信号面から情報の読み取りを行う際のSAパラメーターの最適値になっていれば、この状態で第2信号面からの読み取りをすぐに開始することができる。しかしながら、光ディスク装置1の使用中における温度上昇などの影響によって、SAパラメーターの最適値は第2基準値S1から変化している可能性がある。そのため、ここでは制御部20は、あらためてSAパラメーターの調整処理を実行する。
【0040】
具体的に、まず制御部20は、第2基準値S1が設定された状態で光ディスク媒体Mからの情報読み取りを行って、その読み取り精度に関する評価値(ここではRF振幅)を測定する(1回目の測定)。次に制御部20は、SAパラメーターの設定値を所定量だけ変化させる。そして、この変化に応じたコリメータレンズ33aの移動が完了すると(時刻t5)、2回目の評価値の測定を行う。さらに制御部20は、SAパラメーターを別の値に変化させ、この変化に応じたコリメータレンズ33aの移動が完了すると(時刻t6)、3回目の評価値の測定を行う。
【0041】
3回の測定を終えて3個のサンプリングデータが得られると、そのサンプリングデータを用いて制御部20は前述したような二次曲線近似を行い、現時点でのSAパラメーターの最適値Soを算出する(時刻t7)。そして、SAパラメーターの設定値を算出された最適値Soに変更する。この最適値Soに対応する位置へのコリメータレンズ33aの移動が完了すると(時刻t8)、第2信号面からの情報の読み取りが開始される。
【0042】
以上の説明では、SAパラメーターの調整処理にある程度の時間(時刻t4〜時刻t8)を要している。特に調整処理の実行中にはコリメータレンズ33aの移動と停止が複数回繰り返されるが、このようなコリメータレンズ33aの物理的な移動を伴う制御には時間を要する。そこで本実施形態に係る光ディスク装置1は、コリメータレンズ33aを特定の位置に移動させて停止した後に評価値の測定を行うのではなく、コリメータレンズ33aの移動を行っている最中に評価値を測定することによって、調整処理の時間短縮を図っている。
【0043】
以下、本実施形態におけるデータ記録層変更制御の具体例について、
図5を用いて説明する。この制御は、制御部20が記憶素子に格納しているプログラムに従って各部の制御を行うことにより、実現される。このプログラムは、各種のコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体に格納されて提供されてもよい。
【0044】
まず、時刻t11から時刻t13までの制御は従来の時刻t1から時刻t3までと同様である。すなわち、制御部20は、トラッキングサーボ信号をオフにし(時刻t11)、コリメータレンズ33aの位置を中間値Smに対応する位置(初期位置)に移動させる。そして、フォーカスジャンプを開始し(時刻t12)、第2信号面にフォーカスが合ったタイミングでフォーカスサーボ信号をオンにする(時刻t13)。
【0045】
その後、
図4の例と異なり、制御部20はSAパラメーターの設定値を中間値Smから目標値Stに変更する。目標値Stは、新たに読み取り対象とするデータ記録層に応じて決定される。ここでは具体例として、目標値Stは読み取り対象のデータ記録層に対応した基準値に所与のオフセット値を加算して決定されるものとする。すなわち、目標値Stはαをオフセット値としてSt=(S1+α)で算出される。オフセット値αは、温度変化などによってSAパラメーターの最適値Soが第2基準値S1からどの程度変動するかを予め調査することによって、その変動分を考慮した値に設定される。すなわち、第2信号面から読み取りを行う際の最適値SoがSm<So<(S1+α)を満たすように、αの大きさが決定されている。これにより、目標値Stに対応する位置までコリメータレンズ33aを移動する際に、対物レンズ36の球面収差が補正されて第2信号面からの情報の読み取り品質が最も高くなる位置をコリメータレンズ33aが通過することになる。
【0046】
さらに本実施形態では、目標値Stに対応する位置にコリメータレンズ33aが移動し終える時点(時刻t14)までの間に、コリメータレンズ33aの移動と並行して評価値を繰り返し測定する。すなわち、本実施形態では、コリメータレンズ駆動信号のオン状態が継続している間に測定を行うので、コリメータレンズ33aが停止した状態ではなく、コリメータレンズ33aが移動している最中(対物レンズ36の球面収差の量が変化している最中)に評価値の測定が行われることになる。具体的に、コリメータレンズ33aの移動中、記録信号処理部19は所定時間間隔でRF振幅の測定(サンプリング)を行う。なお、
図5では連続して行われる複数回の測定を一つの矩形によって表している。制御部20は、この時刻t13からt14までの期間の測定で得られた複数のRF振幅の値に基づいて、最適値Soを算出する。なお、ここでは
図4の例と異なり、評価値の測定を行う際にはトラッキングサーボ信号がまだオンになっていない。つまり、光ディスク媒体Mのトラックに対物レンズ36が追従していないことになる。そのため評価値として、情報読み取り時の信号波形の立ち上がりタイミングに関するジッター値ではなく、RF振幅を用いることとしている。
【0047】
最適値Soが算出されると、制御部20は算出された最適値SoにSAパラメーターの設定値を変更する。これに応じて、コリメータレンズ33aが最適値Soに対応する位置に移動する。移動が完了すると、制御部20はトラッキングサーボ信号をオンにして第2信号面からの情報の読み取りを開始する(時刻t15)。
【0048】
以下、制御部20が最適値Soを算出する処理の具体例について、説明する。
図6は、評価値の測定が行われる期間におけるコリメータレンズ33aの位置の変化を示している。同図に示すように、コリメータレンズ33aは、中間値Smに対応する位置から目標値Stに対応する位置(目標位置)まで一定方向に向かって略一定速度で移動する。制御部20は、このコリメータレンズ33aの移動中に測定が行われる期間を複数の単位期間に分割する。一例として、
図6では全体の測定期間がΔt1〜Δt9の9個の単位期間に分割されている。
【0049】
図7は、評価値(RF振幅)の測定結果の一例を示す図である。本実施形態では、コリメータレンズ33aの移動を停止させずに測定を行っているので、
図7に示すように、比較的短い時間間隔で何度も評価値の測定を行うことができる。ただし、トラッキングサーボ制御が行われていない状態での測定であること、コリメータレンズ33aを移動させながらの測定であることなどの要因で、測定結果にはばらつきが生じている。
【0050】
そこで制御部20は、単位期間ごとに、その単位期間内の測定によって得られた複数の評価値の代表値を算出する。代表値は、例えば複数の評価値の平均値であってよい。あるいは、一つの単位期間内に得られた複数の評価値をさらに複数のグループに分割し、各グループ内における評価値の最大値を取得し、この評価値の最大値を用いて代表値を算出してもよい。具体例として、一つの単位期間内において(N×M)回の測定が行われるものとする。この場合に制御部20は、N個の測定結果が得られるごとに、このN個の測定結果のうちの最大値を選出する。これにより、一つの単位期間につき、M個の最大値が得られることになる。制御部20は、このM個の最大値の平均値を、当該単位期間における測定結果の代表値とする。このように複数の評価値を単位期間ごとに統計的に処理して代表値を算出することによって、測定のばらつきを吸収することができる。また、以上説明したようにN個の測定結果の最大値を取得する方法によれば、測定条件がよい状態での評価値を抽出して、代表値の算出に用いることができる。
【0051】
なお、制御部20は、代表値を算出する際には、他の測定値から大きく異なる測定値を異常値として排除してもよい。例えば、一つの単位期間に得られた複数の測定値のうち、他の測定値から大きく外れて大きな値を持つ測定値を異常値として排除し、その他の測定値を用いて代表値を算出する。
【0052】
各単位期間の評価値の代表値が算出されると、制御部20はこの代表値を用いて最適値Soを算出する。具体的に制御部20は、各単位期間について、当該単位期間内におけるコリメータレンズ33aの移動範囲の中心位置を特定する。
図6のグラフ上のドットは、その特定された各単位期間におけるコリメータレンズ33aの中心位置を示している。そして、制御部20は、特定された中心位置に対応するSAパラメーターの値と、当該単位期間について算出された評価値の代表値とを対応づける。すなわち、その中心位置にコリメータレンズ33aが位置している状態で、測定によって評価値の代表値が得られたという想定で、最適値Soを算出する。
図8は、各単位期間におけるコリメータレンズ33aの中心位置と、評価値の代表値と、の間の関係の一例を示す図である。この図においては、9個の単位期間に対応して9個の評価値の代表値がプロットされている。この9個の測定データに対して、通常の調整処理の場合と同様の二次曲線近似を行うことによって、最適値Soが算出される。
【0053】
ここで、以上で説明したSAパラメーター調整処理の流れについて、
図9のフロー図を用いて説明する。
【0054】
まず制御部20は、コリメータ−レンズ33aを目標値Stに対応する位置(目標位置)まで移動させる駆動制御を開始する(STP1)。そして、コリメータレンズ33aが目標位置に到達したかを判定する(STP2)。目標位置に到達していなければ、RF振幅の測定を行い(STP3)、測定結果を制御部20内の記憶素子に一時的に記憶する。その後、STP2に戻って目標位置に到達したかを判定する。これにより、コリメータレンズ33aが目標位置に到達するまでの間に、RF振幅の測定が繰り返し実行されることになる。
【0055】
STP2でコリメータレンズ33aが目標位置に到達したと判定されると、STP3で得られた複数個のRF振幅の測定結果を用いて、前述したような統計的な処理により最適値Soを算出する(STP4)。最適値Soを算出し終えると、最適値Soに対応する位置(最適位置)までコリメータレンズ33aを移動させる駆動制御を開始する(STP5)。そして、コリメータレンズ33aが最適位置に到達したかを判定し(STP6)、到達すれば処理を終了する。
【0056】
以上説明した本実施形態に係る光ディスク装置1によれば、球面収差補正機構33によって対物レンズ36の球面収差の量を変化させながら、これと並行して評価値の測定を行うので、球面収差の量を固定した状態で評価値を測定する場合と比較して、複数回の測定を素早く行うことができる。そのため、読み取り対象となるデータ記録層を変更する場合にSAパラメーターの調整処理に要する所要時間を短縮することができる。特にデータ記録層変更制御を行う際には、SAパラメーターが中間値Smに設定された状態でフォーカスジャンプを行うため、フォーカスジャンプが実行された後、新たに情報を読み出す信号面に適した値までSAパラメーターを変更させる必要が必ず生じる。そのため、このSAパラメーターの変更によるコリメータレンズ33aの移動と並行して評価値を測定することにより、データ記録層変更制御に要する時間を短縮できる。
【0057】
なお、本発明の実施の形態は、以上説明したものに限られない。例えば以上の説明では、読み取り対象のデータ記録層を変更する際に実行するSAパラメーター調整制御について説明したが、その他の場合にも、同様の手順でSAパラメーター調整制御を実行してもよい。具体的に、光ディスク装置1は、新しい光ディスク媒体Mが装置内にセットされた場合に行う初期調整処理においても、以上説明したのと同様の手順でSAパラメーターの調整処理を実行してもよい。この場合にも、中間値Smが設定された状態でフォーカス検出を行った後、フォーカスが合った信号面に適した値にSAパラメーターの値を変更する必要がある。そのため、このSAパラメーターの変更に伴うコリメータレンズ33aの移動と変更して評価値を測定することで、初期調整処理を短時間で実行することができる。
【0058】
また、以上の説明では予め定められた目標値Stに対応する位置までコリメータレンズ33aを移動させながら測定を行うこととしたが、コリメータレンズ33aをどこまで移動させるかは事前に決定されていないこととしてもよい。この場合、コリメータレンズ33aを移動させながら並行して評価値の測定を行い、所定数の評価値が得られるごとに、あるいは所定の期間が経過するごとに、制御部20はそれまで得られた複数の評価値に対して統計処理を行ってその代表値を算出する。そして、算出される代表値が増加から減少に転じるなどの変化を示した場合、コリメータレンズ33aが最適値Soに対応する位置を通過したと推定されるので、コリメータレンズ33aの移動を停止させて、それまでに得られた代表値を用いて最適値Soを算出する。
【0059】
また、以上の説明では読み取り精度の評価値としてRF振幅を用いることとしたが、例えばトラッキングエラー信号やプルイン信号を評価値として用いてもよい。