特許第5967644号(P5967644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5967644プレス成形装置及びプレス成形品の成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967644
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】プレス成形装置及びプレス成形品の成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/18 20060101AFI20160728BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20160728BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20160728BHJP
【FI】
   B29C43/18
   B29C43/34
   B29K105:08
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-81520(P2012-81520)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-208847(P2013-208847A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】591079487
【氏名又は名称】広島県
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川 正巳
(72)【発明者】
【氏名】藤井 敏男
(72)【発明者】
【氏名】西田 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘之
(72)【発明者】
【氏名】松葉 朗
(72)【発明者】
【氏名】松永 尚徳
(72)【発明者】
【氏名】河野 洋輔
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−068534(JP,A)
【文献】 特開平08−112869(JP,A)
【文献】 特開平02−219612(JP,A)
【文献】 特開平09−039010(JP,A)
【文献】 特開昭63−159022(JP,A)
【文献】 実開昭57−011021(JP,U)
【文献】 特開平03−142223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00−43/58
B29C 39/00−39/44
B29C 51/00−51/46
B25B 1/00−11/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続繊維を複合したシート状をなす加熱状態の繊維強化プラスチック材の一方の面を挟圧保持するホルダ面を有するダイと、
該ダイに対向配置され、上記繊維強化プラスチック材の他方の面を挟圧保持するホルダとを備え、
上記ダイ及びホルダには、成形部にコーナー部を有するプレス成形品の成形部に対応する孔部が形成され、
上記ホルダの孔部には、パンチが進退可能に配置され、
上記ダイ及び上記ホルダを互いに接近させて上記繊維強化プラスチック材を挟圧保持した型閉じ状態で、上記パンチを進出させることにより、上記繊維強化プラスチック材を所定形状にプレス成形するプレス成形装置であって、
上記ダイのホルダ部及び上記ホルダの少なくとも一方の孔部周りの上記コーナー部に対応する部分を除く箇所には、型閉じ状態で上記ダイのホルダ部及び上記ホルダの他方とで上記繊維強化プラスチック材を上記成形部の成形開始時から成形終了時に亘って挟圧保持しておく複数の挟持部が互いに離間して設けられ、
該各挟持部間の上記コーナー部に対応する箇所には、上記ダイ及び上記ホルダの型閉じ状態で上記パンチが上記ダイの孔部へ進出する際に、上記挟持部に対応する部分を除く箇所から上記孔部に向かって流動する上記繊維強化プラスチック材を上記挟持部に挟持される部分に侵入させないように滞留させる侵入阻止凹部が凹設されていることを特徴とするプレス成形装置。
【請求項2】
成形部にコーナー部を有するプレス成形品の成形方法であって、
連続繊維を複合したシート状をなす加熱状態の繊維強化プラスチック材における上記コーナー部の両側に対応する部分を上記成形部の成形開始時から成形終了時に亘って挟圧保持した型閉じ状態で、
パンチを進出させることにより、上記繊維強化プラスチック材における上記コーナー部に対応する非挟持部分から上記パンチ側に向かって流動する上記繊維強化プラスチック材を上記挟持部分に侵入させないように上記非挟持部分に滞留させながらプレス成形し、成形部にコーナー部を有するプレス成形品を得ることを特徴とするプレス成形品の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続繊維を複合したシート状の繊維強化プラスチック材をプレス成形するプレス成形装置及び繊維強化プラスチック材からなるプレス成形品の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、自動車や飛行機といった機械及び構造物は、強度安全性の向上や軽量化による燃費向上等が求められ、これらの要求を達成するために、上記機械及び構造物の製造に使用する材料として、軽量で、且つ、優れた力学的特性を有する繊維強化プラスチック材が一般的に使用されている。
【0003】
該繊維強化プラスチック材の成形装置は様々なものがあり、その中の1つに連続繊維を複合したシート状の繊維強化プラスチック材をプレス成形するプレス成形装置がある。例えば、特許文献1のプレス成形装置は、繊維強化プラスチック材の一方の面を挟圧保持するホルダ面を有するダイと、該ダイに対向配置され、上記繊維強化プラスチック材の他方の面を挟圧保持するホルダとを備えている。上記ダイには、プレス成形品の成形部に対応する凹部が凹設され、上記ホルダには、プレス成形品の成形部に対応する孔部が形成されている。
【0004】
そして、上記ホルダの孔部には、パンチが進退可能に配置され、加熱したシート状の繊維強化プラスチック材を型開きした上記ダイ及びホルダ間に搬入し、上記ダイ及びホルダの型閉じ動作によりダイのホルダ部及びホルダで繊維強化プラスチック材の外周を挟持した状態で、上記パンチを上記ダイの凹部へ進出させることにより、上記繊維強化プラスチック材を所定形状にプレス成形するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−68532号公報(段落0014,0015欄、図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のプレス成形装置でプレス成形を行うと、プレス成形時に上記繊維強化プラスチック材の上記挟持部に対応する部分から上記孔部に向かって流動する材料のうち、成形部のコーナー部に対応する部分は、当該部分の両隣の材料の流動によって行き場が無くなって孔部に向かって流動し難くなるので、流動し易い部分とし難い部分とによって、成形後のプレス成形品における上記ダイ及びホルダの挟持部分に対応する部分の繊維が湾曲したり蛇行したりしてしまう。プレス成形品の繊維が湾曲したり蛇行すると、当該部分の物性値が低下してしまうので、所望する適用部品に適用できなくなるおそれがある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、繊維強化プラスチック材をプレス成形する際にプレス成形品の物性値が低下するのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、ダイ及びホルダの少なくとも一方に繊維強化プラスチック材を挟持する部分を複数離間した位置に設け、該各挟持する部分の間に凹部を設けたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、連続繊維を複合したシート状をなす加熱状態の繊維強化プラスチック材の一方の面を挟圧保持するホルダ面を有するダイと、該ダイに対向配置され、上記繊維強化プラスチック材の他方の面を挟圧保持するホルダとを備え、上記ダイ及びホルダには、成形部にコーナー部を有するプレス成形品の成形部に対応する孔部が形成され、上記ホルダの孔部には、パンチが進退可能に配置され、上記ダイ及び上記ホルダを互いに接近させて上記繊維強化プラスチック材を挟圧保持した型閉じ状態で、上記パンチを進出させることにより、上記繊維強化プラスチック材を所定形状にプレス成形するプレス成形装置において、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1発明では上記ダイのホルダ部及び上記ホルダの少なくとも一方の孔部周りの上記コーナー部に対応する部分を除く箇所には、型閉じ状態で上記ダイのホルダ部及び上記ホルダの他方とで上記繊維強化プラスチック材を上記成形部の成形開始時から成形終了時に亘って挟圧保持しておく複数の挟持部が互いに離間して設けられ、該各挟持部間の上記コーナー部に対応する箇所には、上記ダイ及び上記ホルダの型閉じ状態で上記パンチが上記ダイの孔部へ進出する際に、上記挟持部に対応する部分を除く箇所から上記孔部に向かって流動する上記繊維強化プラスチック材を上記挟持部に挟持される部分に侵入させないように滞留させる侵入阻止凹部が凹設されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、成形部にコーナー部を有するプレス成形品の成形方法をも対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0012】
すなわち、第2の発明は、連続繊維を複合したシート状をなす加熱状態の繊維強化プラスチック材における上記コーナー部の両側に対応する部分を上記成形部の成形開始時から成形終了時に亘って挟圧保持した型閉じ状態で、パンチを進出させることにより、上記繊維強化プラスチック材における上記コーナー部に対応する非挟持部分から上記パンチ側に向かって流動する上記繊維強化プラスチック材を上記挟持部分に侵入させないように上記非挟持部分に滞留させながらプレス成形し、成形部にコーナー部を有するプレス成形品を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、成形部のコーナー部に対応する繊維強化プラスチック材が孔部に向かって流動する際に、行き場が無くなっても挟持部に挟持される部分に侵入せずに侵入阻止凹部に滞留するようになる。したがって、挟持部から孔部に向かう材料の流動が孔部周りに略均一となり、成形後のプレス成形品の上記挟持部に対応する部分の繊維が湾曲したり蛇行しなくなるので、成形後のプレス成形品における上記ダイのホルダ部及びホルダの挟持部に対応する部分の物性値の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るプレス成形装置の斜視図である。
図2】(a)は、図1のA−A線における断面図、(b)は、図1のB−B線における断面図であり、型開き状態でダイ及びホルダ間に繊維強化プラスチック材を搬入した直後の状態を示す。
図3図2の状態からダイ及びホルダを互いに接近させて繊維強化プラスチック材をダイのホルダ部とホルダとで挟持した直後の状態である。
図4図3の状態からパンチをダイの孔部に進出させて繊維強化プラスチック材を所定形状にプレス成形した直後の状態である。
図5図4の状態からダイ及びホルダを型開きした直後の状態である。
図6】本発明の実施形態に係るプレス成形装置で成形したプレス成形品であり、(a)は、プレス成形品全体の平面視の写真を、(b)は、プレス成形品を斜め上方から見た写真をそれぞれ示す。
図7】従来のプレス成形装置で成形したプレス成形品であり、(a)は、プレス成形品全体の平面視の写真を、(b)は、プレス成形品を斜め上方から見た写真をそれぞれ示す。
図8】本発明の実施形態の変形例におけるホルダ周りの拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0016】
図1乃至図5は、本発明の実施形態に係るプレス成形装置1を示す。該プレス成形装置1は、連続繊維が複合されたシート状の繊維強化プラスチック材10(図2参照)を加熱した状態でプレス成形して所定形状のプレス成形品20(図5及び図7参照)を得る装置であり、床面に設置された略直方体形状の基台3及び該基台3の上方に対向配置された昇降台4を有する装置本体2を備え、図示しない昇降機構により、上記昇降台4は上記基台3に対して上下に昇降可能となっている。
【0017】
上記昇降台4下面には、直方体形状のダイ5が取り付けられている。該ダイ5の中央下部には、上方が閉塞するとともに下方に開口するダイ孔部5aが形成され、該ダイ孔部5aは、上記プレス成形品20の成形部20aに対応している。
【0018】
また、上記ダイ孔部5a開口寄りの内側面には、矩形の環状突条部5bが突設され、上記ダイ孔部5aの開口周りには、型閉じ状態で上記繊維強化プラスチック材10の上面(一方の面)を挟圧保持するフラットなホルダ面5cが設けられている。
【0019】
さらに、上記ダイ孔部5aには、略直方体形状のカウンターパンチ6が上下に進退可能に配置されている。
【0020】
上記カウンターパンチ6下半部分の外周面は、上記環状突条部5bの先端位置に対応していて、上記カウンターパンチ6上半部分の外周面より内側に位置しており、上記カウンターパンチ6の上半部分及び下半部分の境目には、段差部6aが形成されている。そして、上記カウンターパンチ6が下方に進出する際、上記段差部6aが上記環状突条部5bに当接し、上記カウンターパンチ6がそれ以上下方への進出するのを規制するようになっている。
【0021】
上記ダイ孔部5a上方の閉塞部分と上記カウンターパンチ6上端との間には、複数の第1コイルバネ11が配設され、該各第1コイルバネ11は上記カウンターパンチ6を下方付勢している。
【0022】
上記基台3は、上側基台3aと、該上側基台3aに対向する下側基台3bとで構成され、当該上側基台3a及び下側基台3bの外周には、上記下側基台3bに対して上記上側基台3aを上方付勢する複数の第2コイルバネ12が互いに離間した位置に取り付けられている。
【0023】
上記上側基台3aの上面中央には、厚みのある略正方形板状のホルダ7が上記ダイ5に対向するように配置され、上記ホルダ7は、型閉じ状態で上記繊維強化プラスチック材10の下面(他方の面)を挟圧保持するようになっている。
【0024】
上記上側基台3a及び上記ホルダ7の各々の中央部分には、図2乃至図5に示すように、上記ダイ5のダイ孔部5aに対向する位置に略矩形状の基台孔部3c及びホルダ孔部7aが互いに連通形成され、当該基台孔部3c及びホルダ孔部7aは、上記プレス成形品20の成形部20aに対応している。
【0025】
上記ホルダ7上面の上記ホルダ孔部7a周りには、上記ダイ5及び上記ホルダ7の型閉じ状態で上記ダイ5のホルダ面5cとで上記繊維強化プラスチック材10を上記成形部20aの成形開始時から成形終了時に亘って挟圧保持しておく4つの挟持部7bが互いに離間して設けられている。
【0026】
該挟持部7bは、平面視で略矩形状をなしていて、上記ホルダ孔部7aの各辺に対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0027】
上記各挟持部7bの間、すなわち、上記ホルダ7の四隅には、平面視で略矩形状の侵入阻止凹部7cが凹設されている。
【0028】
上記基台孔部3c及びホルダ孔部7aには、上端に成形面8aを有する略直方体形状のパンチ8が進退可能に配置され、該パンチ8の下端は上記下側基台3bに固定されている。
【0029】
そして、型開き状態の上記ダイ5及びホルダ7間に加熱した上記繊維強化プラスチック材10を搬入した状態で、図示しない昇降機構により、上記昇降台4を下降させて上記ダイ5及びホルダ7を互いに接近させることにより、上記繊維強化プラスチック材10を上記ダイ5のホルダ面5c及びホルダ7の各挟持部7bで挟圧保持するようになっている。
【0030】
また、上記ダイ5及びホルダ7の型閉じ状態で、図示しない昇降機構により、さらに上記昇降台4を下降させると、上記各第2コイルバネ12の付勢力に抗して上記上側基台3aが下方に移動することにより上記パンチ8が上記ダイ孔部5aに進出するようになっていて、上記パンチ8の上記ダイ孔部5aへの進出動作により、上記繊維強化プラスチック材10を所定形状にプレス成形するようになっている。
【0031】
さらに、上記ダイ5及びホルダ7の型閉じ状態で上記パンチ8が上記ダイ5のダイ孔部5aへ進出する際に、上記繊維強化プラスチック材10の上記挟持部7bに対応する部分を除く箇所(非挟持部分10a)から上記ホルダ孔部7aに向かって流動する上記繊維強化プラスチック材10を上記挟持部7bに挟持される部分(挟持部分10b)に侵入させないように上記各侵入阻止凹部7cに滞留させるようになっている。
【0032】
次に、上記プレス成形装置1でシート状の繊維強化プラスチック材10からプレス成形品20を成形する方法について説明する。
【0033】
まず、上記繊維強化プラスチック材10を図示しない加熱炉等で加熱した後、図2に示すように、型開きしたダイ5及びホルダ7間に搬入して当該ホルダ7上に載置する。
【0034】
次に、図示しない昇降機構により、昇降台4を下降させて上記ダイ5を上記ホルダ7に接近させる。すると、図3に示すように、上記ダイ5のホルダ面5cが上記繊維強化プラスチック材10の上面に接触するとともに、上記ホルダ7の各挟持部7bが上記繊維強化プラスチック材10の下面に接触して、当該繊維強化プラスチック材10を上記ホルダ面5c及び上記各挟持部7bで挟圧保持する。
【0035】
しかる後、図示しない昇降機構により、さらに昇降台4をさらに下降させると、図4に示すように、ダイ5のホルダ面5cが繊維強化プラスチック材10を介してホルダ7を下方に押し下げる。
【0036】
すると、該ホルダ7及び上側基台3aが上記各第2コイルバネ12の付勢力に抗して下方に移動するのに伴って、上記パンチ8が上記ダイ孔部5aに進出するとともに、繊維強化プラスチック材10の反パンチ8側に接触するカウンターパンチ6が上記各第1コイルバネ11の付勢力に抗して上方に移動することにより、図5に示すように、成形部20aを有するプレス成形品20を得る。
【0037】
このとき、上記各挟持部7bは、上記繊維強化プラスチック材10を成形開始時から成形終了時に亘って挟圧保持していて、上記繊維強化プラスチック材10の上記各挟持部7bに対応する部分を除く箇所(非挟持部分10a)から上記ホルダ孔部7aに向かって流動する上記繊維強化プラスチック材10を上記挟持部7bに挟持される部分(挟持部分10b)に侵入させないように上記各侵入阻止凹部7cに滞留させる。
【0038】
その後、図示しない戻り止め機構により上側基台3aを固定するとともに、図示しない昇降機構により昇降台4を上昇させる。すると、上記ホルダ7からダイ5が離間するとともに、上記カウンターパンチ6が上記各第1コイルバネ11の付勢力で下方に移動して段差部6aが上記環状突条部5bに当接する。
【0039】
しかる後、型開きした状態のダイ5及びホルダ7間からプレス成形品20を搬出してプレス成形を終了する。
【0040】
次に、本発明のプレス成形装置1を用いて実験した結果について説明する。
【0041】
図6は、シート状の熱可塑性繊維強化プラスチック材10(板厚:1mm、2辺の各長さ:140mm)を上記プレス成形装置1でプレス成形して、扁平な直方体形状の成形部20a(高さ:20mm、2辺の各長さ:60mm)を成形した結果を示す。
【0042】
矢印Cの部分、すなわち、繊維強化プラスチック材10の上記各挟持部7bに対応する部分は、繊維が真っ直ぐなままで、成形前後で繊維配向が変化していない。これは、プレス成形時において、図6(b)に示すように、成形部20aのコーナー部に対応する部分(D部分)の行き場のない材料が矢印X1のように移動してC1部分に侵入することなく滞留するからだと考えられる。
【0043】
一方、図7は、シート状の熱可塑性繊維強化プラスチック材10(板厚:1mm、2辺の各長さ:140mm)を従来のプレス成形装置でプレス成形して、扁平な直方体形状の成形部20a(高さ:20mm、2辺の各長さ:60mm)を成形した結果を示す。
【0044】
この実験結果では、成形後に矢印Eの部分の繊維が大きく湾曲することを確認した。
【0045】
以上より、本発明では、成形部20aのコーナー部に対応する繊維強化プラスチック材10がホルダ孔部7aに向かって流動する際に、行き場が無くなっても各挟持部7bに挟圧保持される部分に侵入せず侵入阻止凹部7cに滞留するようになる。したがって、各挟持部7bからホルダ孔部7aに向かう繊維強化プラスチック材10の流動がホルダ孔部7a周りに略均一となり、成形後のプレス成形品20の上記挟持部7bに対応する部分の繊維が湾曲したり蛇行しなくなるので、成形後のプレス成形品20における上記ダイ5のホルダ面5c及びホルダ7の挟持部7bに対応する部分の物性値の低下を防止することができる。
【0046】
図8は、本発明の実施形態の変形例を示す。この変形例では、以下の点が上記で詳述した実施形態と異なっている。すなわち、変形例のホルダ7上面には、ホルダ孔部7aの4つの角部から外側方に略L字状に延びる4つの溝状の侵入阻止凹部7dが凹設され、上記ホルダ7の四隅に平面視で略矩形状の挟持部7eが設けられている。尚、上記侵入阻止凹部7dは、プレス成形時に繊維強化プラスチック材10が特に行き場を無くす部分(集まり易い部分)に対応している。
【0047】
そして、上記ダイ5及びホルダ7の型閉じ状態で上記パンチ8が上記ダイ5のダイ孔部5aへ進出する際に、上記繊維強化プラスチック材10の上記挟持部7bに対応する部分を除く箇所から上記ホルダ孔部7aに向かって流動する上記繊維強化プラスチック材10を上記挟持部7b、7eに挟持される部分に侵入させないように上記各侵入阻止凹部7dに滞留させるようになっている。
【0048】
尚、変形例のプレス成形装置1を用いて繊維強化プラスチック材10をプレス成形する方法は、上記繊維強化プラスチック材10の上記各挟持部7bに対応する部分を除く箇所から上記ホルダ孔部7aに向かって流動する上記繊維強化プラスチック材10を上記挟持部7bに挟持される部分に侵入させないようにするのが侵入阻止凹部7cではなく侵入阻止凹部7dである点が実施形態1と異なるだけで、その他は実施形態1と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0049】
したがって、本発明の変形例では、シート状の繊維強化プラスチック材10から直方体形状の成形部20aを成形する際、繊維強化プラスチック材10が特に行き場を無くす部分(集まりやすい部分)にだけ対応するように侵入阻止凹部7dを設けても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
尚、本発明では、侵入阻止凹部7c、7dをホルダ7に設けているが、ダイ5のホルダ面5cに設けてもいいし、ダイ5及びホルダ7の両方に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、連続繊維を複合したシート状の繊維強化プラスチック材をプレス成形するプレス成形装置及び繊維強化プラスチック材からなるプレス成形品の成形方法に適している。
【符号の説明】
【0052】
1 プレス成形装置
5 ダイ
5a ダイ孔(孔部)
5c ホルダ面
7 ホルダ
7a ホルダ孔(孔部)
7b 挟持部
7c、7d 侵入阻止凹部
8 パンチ
10 繊維強化プラスチック材
10a 非挟持部分
10b 挟持部分
20 プレス成形品
20a 成形部
図1
図2
図3
図4
図5
図8
図6
図7