(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967645
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】車両におけるスピーカ装置の設置構造
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20160728BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
H04R1/02 102B
B60R11/02 S
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-130075(P2012-130075)
(22)【出願日】2012年6月7日
(65)【公開番号】特開2013-176030(P2013-176030A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2015年3月5日
(31)【優先権主張番号】特願2012-11804(P2012-11804)
(32)【優先日】2012年1月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512104889
【氏名又は名称】ブループリント アコースティックス ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BLUEPRINT ACOUSTICS PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】多田 新
【審査官】
武田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−508001(JP,A)
【文献】
特開平11−225388(JP,A)
【文献】
特表2009−538007(JP,A)
【文献】
特開平05−344580(JP,A)
【文献】
特開2008−085528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/02
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室と隔壁によって画され、当該車室より前方に位置する車両前方空間部にスピーカ装置が設けられ、
前記スピーカ装置における振動板の音出力側空間と車室前方部とが前記隔壁を貫通する音導ポートにて連通され、
前記スピーカ装置における前記振動板の前記音出力側空間と逆側の背圧側空間と車両外部とが前記車両前方空間部を画する壁部を貫通する排気用ポートにて連通された車両におけるスピーカ装置の設置構造。
【請求項2】
前記車両前方空間は、当該車両のエンジンが搭載されたエンジンコンパートメントである請求項1記載の車両におけるスピーカ装置の設置構造。
【請求項3】
前記排気用ポートは、当該車両のウォーターボックスとの境界において前記エンジンコンパートメントを画する壁部を貫通し、該エンジンコンパートメントと車両外部とを連通させる請求項2記載の車両におけるスピーカ装置の設置構造。
【請求項4】
前記スピーカ装置は、前記振動板の一方側に配置される第1フレーム体と前記振動板の他方側に配置される第2フレーム体とが接合固定され、
磁気ギャップの形成された磁気回路が、前記振動板に対向して前記第1フレーム体に固定され、
ボイスコイルユニットのボイスコイルが前記磁気回路の前磁気ギャップに配置されるように、該ボイスコイルユニットが前記振動板の内周縁部に固定された構造となり、
前記スピーカ装置における前記振動板と前記第2フレーム体との間の空間が前記音出力側空間として、前記音導ポートによって前記車室前方部に連通され、
前記振動板と前記第1フレーム体との間の空間が前記背圧側空間として、前記排気用ポートによって車両外部に連通された請求項1に記載の車両におけるスピーカ装置の設置構造。
【請求項5】
前記スピーカ装置は、前記振動板の一方側に配置される第1フレーム体と前記振動板の他方側に配置される第2フレーム体とが接合固定され、
磁気ギャップの形成された磁気回路が、前記振動板に対向して前記第1フレーム体に固定され、
ボイスコイルユニットのボイスコイルが前記磁気回路の前磁気ギャップに配置されるように、該ボイスコイルユニットが前記振動板の内周縁部に固定された構造となり、
前記スピーカ装置における前記振動板と前記第1フレーム体との間の空間が前記音出力側空間として、前記音導ポートによって前記車室前方部に連通され、
前記振動板と前記第2フレーム体との間の空間が前記背圧側空間として、前記排気用ポートによって車両外部に連通された請求項1に記載の車両におけるスピーカ装置の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ装置から発せられる音を車室前方からの音として乗員に聞かせることのできる車両におけるスピーカ装置の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された車載用スピーカ装置が知られている。この車載用スピーカ装置では、車室内の後部座席の下に低音用スピーカが設けられ、この低音用スピーカから車室内の前方のダッシュボードの下の空間まで延びる音響管が設けられている。このような構造の車載用スピーカ装置では、低音用スピーカから発せられた音が音響管を通してダッシュボードの下の空間から車室内に出力する。これにより、種々の計器及びナビゲーション装置やオーディオ装置等の車載機器が設けられた車室前方のダッシュボード内に低音用スピーカを設置しなくても、車室内の乗員は、低音用スピーカから発せられる低周波数帯域の音を車室前方からの音として聞くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−223697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の車載用スピーカ装置(車両における低音用スピーカの設置構造)では、低音用スピーカが車室内の後部座席の下に設けられているので、その後部座席の下から車室前方のダッシュボードの下の空間まで延びる音響管が長いものとなり、その構造が大がかりなものとなる。また、ダッシュボード内にスピーカ装置を設けることも考えられるが、特に、サブ・ウーファー等の低音用のスピーカ装置は、その容積も大きく、計器類、ナビゲーション装置、オーディオ装置等の車載機器が収容されるダッシュボード内にはその設置が難しい。
【0005】
本発明は、そのような事情に鑑みてなされたもので、簡単な構造にてスピーカ装置から発せられる音を車室前方からの音として乗員に聞かせることのできる車両におけるスピーカ装置の設置構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両におけるスピーカ装置の設置構造は、車室と隔壁によって画され、当該車室より前方に位置する車両前方空間部にスピーカ装置が設けられ、前記スピーカ装置における振動板の音出力側空間と車室前方部とが前記隔壁を貫通する音導ポートにて連通され
、前記スピーカ装置における前記振動板の前記音出力側空間と逆側の背圧側空間と車両外部とが前記車両前方空間部を画する壁部を貫通する排気用ポートにて連通された構成となる。
【0007】
このような構成により、車両前方空間部に設けられたスピーカ装置における振動板の振動による音が、当該振動板の音出力側空間から、前記車両前方空間と車室とを画する隔壁を貫通する音導ポートを通して車室前方部に導かれるので、乗員は、スピーカ装置からの音を車室前方からの音として聞くことができる。前記スピーカ装置が設けられた前記車両前方空間部と車室とは隔壁を挟んで隣接するので、その隔壁を貫通する前記音導ポートを比較的小規模なものにすることができる。
そして、車両前方空間部に設けられたスピーカ装置における振動板が振動する際に、前記車両前方空間部と車両外部とを画する壁部を貫通する排気用ポートを通して前記振動板の背圧側空間と車両外部との間で空気の出入りが可能となるので、前記振動板の振動が背圧側空間の空気によって邪魔されることなく、その振動板の振動に基づいた音が音導ポートを通して前記車室前方に有効に導かれるようになる。前記スピーカ装置が設けられた前記車両前方空間部と車両外部とは壁部を挟んで隣接するので、その壁部を貫通する前記排気用ポートを比較的小規模なものとすることができる。
【0010】
また、本発明に係る車両におけるスピーカ装置の設置構造において、前記車両前方空間は、当該車両のエンジンが搭載されたエンジンコンパートメントである構成とすることができる。
【0011】
このような構成により、エンジンコンパートメントに設けられたスピーカ装置における振動板の振動による音が、当該振動板の音出力側空間から、前記エンジンコンパートメントと車室とを画する隔壁を貫通する音導ポートを通して車室前方部に導かれるので、乗員は、スピーカ装置からの音を車室前方からの音として聞くことができる。前記スピーカ装置が設けられた前記エンジンコンパートメントと車室とは隔壁を挟んで隣接するので、その隔壁を貫通する前記音導ポートを比較的小規模なものにすることができる。
【0012】
更に、本発明に係る車両におけるスピーカ装置の設置構造において、前記排気用ポートは、当該車両のウォーターボックスとの境界において前記エンジンコンパートメントを画する壁部を通して、該エンジンコンパートメントと車両外部とを連通させる構成とすることができる。
【0013】
このような構成により、エンジンコンパートメントに設けられたスピーカ装置における振動板が振動する際に、前記エンジンコンパートメントとウォーターボックスとの境において前記エンジンコンパートメントを画する壁部を貫通する排気用ポートを通して前記振動板の背圧側空間と車両外部との間で空気の出入りが可能となるので、前記振動板の振動が背圧側空間の空気によって邪魔されることなく、その振動板の振動に基づいた音を音導ポートによって前記車室前方に有効に導くことができる。前記スピーカ装置が設けられた前記エンジンコンパートメントとウォーターボックスにおける車両外部とは壁部を挟んで隣接するので、その壁部を貫通する前記排気用ポートを比較的小規模なものとすることができる。
【0014】
また、本発明に係る車両におけるスピーカ装置の設置構造において、前記スピーカ装置は、前記振動板の一方側に配置される第1フレーム体と前記振動板の他方側に配置される第2フレーム体とが接合固定され、磁気ギャップの形成された磁気回路が、前記振動板に対向して前記第1フレーム体に固定され、ボイスコイルユニットのボイスコイルが前記磁気回路の前磁気ギャップに配置されるように、該ボイスコイルユニットが前記振動板の内周縁部に固定された構造となり、前記スピーカ装置における前記振動板と前記第2フレーム体との間の空間が前記音出力側空間として、前記音導ポートによって前記車室前方部に連通され、前記振動板と前記第1フレーム体との間の空間が前記背圧側空間として、前記排気用ポートによって車両外部に連通された構成とすることができる。
【0015】
このような構成により、車両前方空間部に設けられたスピーカ装置における振動板の振動による音が、当該振動板と第2フレーム体との間の音出力側空間から、前記車両前方空間と車室とを画する隔壁を貫通する音導ポートを通して車室前方部に導かれるので、乗員は、スピーカ装置からの音を車室前方からの音として聞くことができる。更に、前記スピーカ装置における振動板が振動する際に、前記車両前方空間部と車両外部とを画する壁部を貫通する排気用ポートを通して前記振動板と第1フレーム体との間の背圧側空間と車両外部との間で空気の出入りが可能となるので、前記振動板の振動が背圧側空間の空気によって邪魔されることなく、その振動板の振動に基づいた音が前記音導ポートを通して前記車室前方に有効に導かれるようになる。
【0016】
また、本発明に係る車両におけるスピーカ装置の設置構造において、前記スピーカ装置は、前記振動板の一方側に配置される第1フレーム体と前記振動板の他方側に配置される第2フレーム体とが接合固定され、磁気ギャップの形成された磁気回路が、前記振動板に対向して前記第1フレーム体に固定され、ボイスコイルユニットのボイスコイルが前記磁気回路の前磁気ギャップに配置されるように、該ボイスコイルユニットが前記振動板の内周縁部に固定された構造となり、前記スピーカ装置における前記振動板と前記第1フレーム体との間の空間が前記音出力側空間として、前記音導ポートによって前記車室前方部に連通され、前記振動板と前記第2フレーム体との間の空間が前記背圧側空間として、前記排気用ポートによって車両外部に連通された構成とすることができる。
【0017】
このような構成により、スピーカ装置における磁気回路及びボイスコイルユニットが配置される第1フレーム体41と振動板55との間の空間が、音導ポートを通して車室前方部につながっているので、磁気回路及びボイスコイルユニットの温度上昇を極力少なくさせることができる。このため、磁気回路及びボイスコイルユニットの熱による特性劣化を極力防止することができ、結果として、良好な音質の音を車室前方部から乗員に提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る車両におけるスピーカ装置の設置構造によれば、エンジンコンパートメント等として用いられる車両前方空間部と車室とを画する隔壁を貫通し、前記車両前方空間部に設けられたスピーカ装置における振動板の振動による音を車室前方部に導く音導ポートを比較的小規模なものにすることができるので、簡単な構造にてスピーカ装置から発せられる音を車室前方からの音として聞かせることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両におけるスピーカ装置の設置構造の基本的な構成を示す図である。
【
図2】
図1に示すスピーカ装置の設置構造におけるスピーカ装置の設置位置を立体的に示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態に係る車両におけるスピーカ装置の設置構造の基本的な構成を示す図である。
【
図6】本発明に係る設置構造にて車両に設置可能な他のスピーカ装置の外観を示す斜視図である。
【
図7】
図6に示すスピーカ装置の断面構造を示す立体断面図である。
【
図8】
図6に示すスピーカ装置の断面構造を示す断面図である。
【
図9】
図6に示すスピーカ装置の設置構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0021】
本発明の第1の実施の形態に係る車両におけるスピーカ装置の設置構造は
図1及び
図2に示すように構成される。
【0022】
図1及び
図2において、車両100では、車室110と、該車室110の前方に位置し、エンジンが搭載されたエンジンコンパートメント120(車両前方空間部)とが防火壁112(隔壁)によって画されている。フロントウィンドウ113の下端縁に沿ってウォーターボックス130が形成され、フロントウィンドウ113の表面を流れ落ちる水がウォーターボックス130を通って車両外部に排出されるようになっている。ウォーターボックス130は、エンジンコンパートメント120と隣接しており、エンジンコンパートメント120が壁部121によってウォーターボックス130の空間(外部空間)から画されている。
【0023】
エンジンコンパートメント120には、スピーカ装置10が設けられている。スピーカ装置10は、エンジンコンパートメント120を車室110から画する防火壁112と、エンジンコンパートメント120をウォーターボックス130の空間から画する壁部121との双方に沿うように、ブラケット等の公知の構造により固定設置されている。スピーカ装置10の詳細構造については後述するが、スピーカ装置10から延びる音導ポート14が防火壁112を貫通して、その先端が車室110の前方のダッシュボード111内に至っている。また、スピーカ装置10から延びる排気用ポート15が壁部121を貫通して、その先端がウォーターボックス130の空間(車両外部)に至っている。
【0024】
スピーカ装置10は、
図3及び
図4に示すように構成されている。
【0025】
図3及び
図4において、略円盤状の第1フレーム体11の底部の略中央部に段差が形成されており、その段差によって位置決めされるように外ヨーク21が当該第1フレーム体11の底部に固定されている。外ヨーク21と内ヨーク22とによって磁石23が挟まれるとともに、相互に対向する内ヨーク22の外周面と外ヨーク21の内周面部分との間に隙間(磁気ギャップ)が形成されるように、それら外ヨーク21、内ヨーク22及び磁石23が組み立てられて磁気回路が形成されている。ボビン24aの先端にボイスコイル24bが巻かれてなるボイスコイルユニット24が、ボイスコイル24bが前記外ヨーク21と内ヨーク22との間の磁気ギャップ内に配置されるように、設けられている。
【0026】
コーン状の振動板25が、前述した磁気回路(外ヨーク21、内ヨーク22、磁石23)の側と逆側に突出するように配置され、振動板25の外周縁部がエッジ部26を介して第1フレーム体11の外周縁部に接着されている。また、前述したボイスコイルユニット24におけるボビン24aのボイスコイル24bが巻かれた部分と逆側の端縁部が振動板25の内周縁部に固定されている。ボイスコイルユニット24のボビン24aの開放端部がキャップ28により閉鎖されている。
【0027】
第2フレーム体12の外周縁部が、第1フレーム体11の外周縁部に、振動板25に固定されたエッジ部26がそれら外周縁部によって挟まれるように、固定されている。第2フレーム体12の上面の中央部には開口12aが形成されており、接着固定されたボイスコイルユニット24のボビン24aの端縁部と振動板25の内周縁部とが開口12aの略中央に配置される。前記ボビン24aの端縁部と振動板25の内周縁部との接着固定部分がダンパ27の内周縁部に接着固定され、そのダンパ27の外周縁部が第2フレーム体12の開口12aの周縁部に接着固定されている。これにより、ボイスコイルユニット24及び振動板25の内周縁部がダンパ27によって、ボイスコイルユニット24のボビン24aの長手方向に振動可能となるように、弾性支持された構造となる。
【0028】
第2フレーム体12には、開口12aを覆うように、カバー部材13が固定されている。カバー部材13の外周面の所定位置には端子16が固定されており、ボイスコイルユニット24のボイスコイル24bに電気的に接続されて延びるリード線29が、カバー部材13に形成された孔(図示略)を通してカバー部材13の外部に導き出されて端子16に接続されている。端子16に音信号が印加されることにより、該音信号に応じた電流がリード線29を通してボイスコイル24bに流れる。
【0029】
第1フレーム体11には、その周端縁所定部位から延びるように排気用ポート15が形成されている。この排気用ポート15内の空間は、振動板25と、前記磁気回路(外ヨーク21、内ヨーク22、磁石23)が固定された第1フレーム体11との間の空間E1につながっている。一方、第2フレーム体12には、その上面の前述した排気用ポート15と対向する部位から延びるように音導ポート14が形成されている。この音導ポート14内の空間は、振動板25と第2フレーム体12との間の空間E2につながっている。この空間E2が音出力側空間として機能して、振動板25の振動に応じた音(音波)が空間E2から音導ポート14を通るようになっている。また、振動板25と第1フレーム体11との間に形成された空間E1は、背圧側空間として機能して、振動板25の振動により振動する空間E1の空気が排気用ポート15を通して出入り可能となっている。
【0030】
このような構造(
図3及び
図4参照)のスピーカ装置10は、前述したように(
図1及び
図2参照)、エンジンコンパートメント120に、車室110との間の防火壁112とウォーターボックス130との間の壁部121に隣接して設けられている。そして、音導ポート14が防火壁112を貫通してその先端部が車室110のダッシュボード111内に至っており、スピーカ装置10の振動板25と第2フレーム体12との間の空間E2(音出力側空間:
図4参照)が、音導ポート14によって、車室110の前方部であるダッシュボード111内空間に連通されている。また、排気用ポート15が壁部121を貫通してその先端部がウォーターボックス130内の空間に至っており、スピーカ装置10の振動板25と第1フレーム体11との間の空間E1(背圧側空間:
図4参照)が、排気用ポート15によって、ウォーターボックス130内の空間(車両外部)に連通されている。
【0031】
上述したような本発明の第1の実施の形態に係る車両におけるスピーカ装置の設置構造では、車両100のエンジンコンパートメント120に設けられたスピーカ装置10の振動板25の振動による音が、当該振動板25と第2フレーム体12との間の空間E2(音出力側空間)から、エンジンコンパートメント120と車室110とを画する防火壁112を貫通する音導ポート14を通してダッシュボード111内(車室前方部)に導かれるので、乗員CRは、スピーカ装置10からの音を車室110の前方のダッシュボード111内からの音として聞くことができる。そして、スピーカ装置10における振動板25が振動する際に、エンジンコンパートメント120とウォーターボックス130の空間(車両外部)とを画する壁部121を貫通する排気用ポート15を通して振動板25と第1フレーム体11との間の空間E1(背圧側空間)と車両外部との間で空気の出入りが可能となるので、振動板25の振動が空間E1(背圧側空間)の空気によって邪魔されることなく、その振動板25の振動に基づいた音が音導ポート14を通して車室110のダッシュボード111内(車室前方)に有効に導かれるようになる。従って、乗員CRは、スピーカ装置10から発する音を車室110の前方からの音として明りょうに聞くことができる。
【0032】
そして、このような車両におけるスピーカ装置の設置構造によれば、スピーカ装置10が車室110ではなく、エンジンコンパートメント120に設けられるので、スピーカ装置10やスピーカ装置10からの音を車室110の前方に導くための機構によって車室110内の空間が狭められることが無い。また、エンジンコンパートメント120が車室と隣接しているので、スピーカ装置10から防火壁112を貫通して車室110の前方部に延びる音導ポート14も長くする必要がない。更に、エンジンコンパートメント120がウォーターボックス130とも隣接しているので、スピーカ装置10から壁部121を貫通してウォーターボックス130の空間に延びる排気用ポート15も長くする必要がない。このため、スピーカ装置10を車室110前方部に連通させる構造及びスピーカ10を車両外部に連通させる構造を比較的小規模なものにすることができる。従って、簡単な構造によりスピーカ装置10から発せられる音を車室110前方からの音として乗員CRに聞かせることができるようになる。
【0033】
本発明の第2の実施の形態に係るスピーカ装置の設置構造は、
図5に示すように構成される。この第2の実施の形態に係るスピーカ装置の設置構造では、スピーカ装置の構造が前述した第1の実施の形態のものと異なる。
【0034】
図5において、エンジンコンパートメント120に、スピーカ装置30が、当該エンジンコンパートメント120を車室110から画する防火壁112及び当該エンジンコンパートメント120をウォーターボックス130の空間から画する壁部121の双方に隣接するように固定設置されている。このスピーカ装置30は、エンクロージャー31内の空間が仕切り板32によって2つの空間E1とE2とに分割されている。スピーカ33は、空間E1に向けて音が発せられるように仕切り板32に固定されている。このようにスピーカ33が仕切り板32に固定されることにより、スピーカユニット33からの音が向けられる空間E1が音出力側空間となり、仕切り板32を挟んで空間E1と逆側の空間E2が背圧側空間となる。エンクロージャー31には、一方の空間E1(音出力側空間)から延びる音導ポート34が設けられると共に、他方の空間E2(背圧側空間)から延びる排気用ポート35が設けられている。スピーカ装置30から延びる音導ポート34は、防火壁112を貫通してその先端が車室110内のダッシュボード111内に至っている。また、スピーカ装置30から延びる排気用ポート35は、壁部121を貫通してその先端がウォーターボックス130の空間に至っている。
【0035】
このような本発明の第2の実施の形態に係るスピーカ装置の設置構造では、スピーカ装置30のエンクロージャー31内においてスピーカユニット33から前方の空間E1(音出力側空間)に向けて発せられた音が、防火壁112を貫通する音導ポート34を通してダッシュボード111内(車室前方部)に導かれるので、乗員CRは、スピーカ装置10からの音を車室110の前方のダッシュボード111内からの音として聞くことができる。そして、スピーカユニット33の振動板が振動して音が出力される際に、エンジンコンパートメント120とウォーターボックス130の空間(車両外部)とを画する壁部121を貫通する排気用ポート35を通してエンクロージャー31におけるスピーカユニット33の背後の空間E2(背圧側空間)と車両外部との間で空気の出入りが可能となるので、スピーカユニット33の背後の空気によって邪魔されることなくスピーカユニット33からの音が音導ポート34を通して車室110のダッシュボード111内(車室前方)に有効に導かれるようになる。従って、乗員CRは、スピーカ装置30から発する音を車室110の前方からの音として明りょうに聞くことができる。
【0036】
この場合も、スピーカ装置30が車室110内の隣接したエンジンコンパートメント120に設けられるので、エンジンコンパートメント120のスピーカ装置30から防火壁112を貫通して車室110内に至る音導ポート34及びスピーカ装置30から壁部121を貫通してウォーターボックス130の空間に至る排気用ポート35を長くする必要がない。このため、スピーカ装置30を車室110前方部に連通させる構造及びスピーカ装置30を車両外部に連通させる構造を比較的小規模なものにすることができる。従って、簡単な構造によりスピーカ装置30から発せられる音を車室110前方からの音として乗員CRに聞かせることができるようになる。
【0037】
前述した本発明の各実施の形態では、スピーカ装置10(30)が車室110の前方に位置するエンジンコンパートメント120に設けられるものであったが、エンジンが、車両100の後方に設けられるタイプの車両(ミッドエンジン・リアドライブ方式車両、リアエンジン・リアドライブ方式車両等)では、車室110より前方の、エンジンの搭載されていない、例えば、荷室として利用される車両前方空間部にスピーカ装置10(30)が設けられる。
【0038】
なお、例えば、第2の実施の形態(
図5参照)において、スピーカユニット33の背後の空間E2がスピーカユニット33の振動板による背圧を吸収できる程度に大きい容積が有る場合には、排気用ポート35を設けなくてもよい。
【0039】
また、前述した第1の実施の形態に係る設置構造にて車両に設置された
図3及び
図4に示す構造のスピーカ装置10に代えて、
図6乃至
図8に示す構造のスピーカ装置40を用いることができる。
【0040】
図6乃至
図8に示すスピーカ装置40では、
図3及び
図4に示すスピーカ装置10と同様に、第1フレーム体41の略中央部に形成された段差によって位置決めされるように、外ヨーク51、内ヨーク52及び磁石53にて構成される磁気回路50が固定されている。そして、ボビン54aの先端部分に巻かれたボイスコイル54bが磁気回路50の磁気ギャップ(外ヨーク51と内ヨーク52との間の隙間)に配置されるようにボイスコイルユニット54が設けられている。コーン状の振動板55が、磁気回路50の側と逆側に突出するように配置されている。振動板55の外周縁部がエッジ部56を介して第1フレーム体41の外周縁部に接着固定され、ボビン54aのボイスコイル54bが巻かれた部分と逆側の端縁部が振動板55の内周縁部に固定されている。そして、ボビン54aの開放端部がキャップ58により閉鎖されている。
【0041】
第2フレーム体42及びカバー体43が一体となって全体として1つのフレーム体が構成されている。これら第2フレーム体42及びカバー体43が、それらの外周縁部と第1フレーム体41の外周縁部とによって振動板55に固定されたエッジ部56を挟むようにして第1フレーム体41に接合固定されている。第2フレーム体42のカバー体43にて覆われる部分に開口42aが形成されており、ボイスコイルユニット54のボビン54aの端縁部が固定された振動板55の内周縁部が開口42aの略中央に配置されている。そして、ボビン54aの端縁部と振動板55の内周縁部との固定部分がダンパ57の内周縁部に接着固定され、そのダンパ57の外周縁部が第2フレーム体42の開口42aの周縁部に接着固定されている。これにより、ボイスコイルユニット54及び振動板55の内周縁部がダンパ57によって、ボビン54aの長手方向に振動可能となるように、弾性支持された構造となる。
【0042】
なお、ボイスコイル54bに電気的に接続されて延びるリード線59が、第1フレーム体41に形成された孔(図示略)を通して第1フレーム体41の外部に導き出されており、このリード線59を通して音信号がボイスコイル54bに供給される。
【0043】
第1フレーム体41には、その周端縁所定部位から延びるように音導ポート44が形成されている。この音導ポート44内の空間は、振動板55と、磁気回路50が固定された第1フレーム体41との間の空間E1につながっている。一方、1つのフレーム体を構成する第2フレーム体42及びカバー体43のカバー体43側には、
図7及び
図8には表れていないが、特に、
図6に示すように、その上面の前述した音導ポート44と対向する部位から延びるように排気用ポート45が形成されている。この排気用ポート45内の空間は、振動板55と第2フレーム体42及びカバー体43との間の空間E2につながっている。
【0044】
前述した第1フレーム体41と振動板55との間の空間E1が、音出力側空間として機能して、振動板55の振動に応じた音(音波)が空間E1から音導ポート44を通るようになっている。また、振動板55と第2フレーム体42及びカバー体43との間に形成された空間E2は、背圧側空間として機能して、振動板55の振動により振動する空間E2の空気が排気用ポート45を通して出入り可能となっている。
【0045】
前述した構造(
図6乃至
図8参照)のスピーカ装置40は、
図9に簡略して示すように、エンジンコンパートメント120内に設置される。そして、第1フレーム体41から延びる音導ポート44が防火壁112を貫通してその先端部が車室110のダッシュボード111内に至っており(
図1参照)、スピーカ装置40の振動板55と第1フレーム体41との間の空間E1(音出力側空間:
図8参照)が、音導ポート44によって、車室110の前方部であるダッシュボード111内空間に連通される。また、第2フレーム体42と一体となるカバー体43から延びる排気用ポート45が車室110の外部の空間(例えば、ウォーターボックス130)に至っており、スピーカ装置40の振動板55と第2フレーム体11及びカバー部材43とが一体なって構成するフレーム体との間の空間E2(背圧側空間:
図8参照)が、排気用ポート45によって、その車室110の外部の空間に連通される。
【0046】
前述したスピーカ装置40を前述したようにエンジンコンパートメント120に設置することにより、各実施の形態の場合と同様に、エンジンコンパートメント120(車両前方空間部)に設けられたスピーカ装置40における振動板55の振動による音が、音導ポート44を通して車室110のダッシュボード111内に導かれるので、車室110内の乗員CRは、スピーカ装置40からの音を車室110前方からの音として聞くことができる。そして、スピーカ装置40が設けられたエンジンコンパートメント120と車室110とは隔壁112を挟んで隣接するので、その隔壁112を貫通する音導ポート44を比較的小規模なものにすることができる。
【0047】
更に、磁気回路50(外ヨーク51、内ヨーク52、磁石53)及びボイスコイルユニット54(ボビン54a、ボイスコイル54b)が配置される第1フレーム体41と振動板55との間の空間E1が、音導ポート44を通して車室110内につながっているので、スピーカ装置40がエンジンコンパートメント120に設置されていても、磁気回路50及びボイスコイルユニット54の温度の上昇を極力少なくさせることができる。このため、磁気回路50及びボイスコイルユニット54の熱による特性劣化を極力防止することができ、結果として、良好な音質の音を車室110内に提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る車両におけるスピーカ装置の設置構造は、簡単な構造にてスピーカ装置から発せられる音を車室前方からの音として乗員に聞かせることができるという効果を有し、車両におけるピーカ装置の設置構造として有用である。
【符号の説明】
【0049】
10、30、40 スピーカ装置
11、41 第1フレーム体
12、42 第2フレーム体
13 カバー部材
14、44 音導ポート
15、45 排気用ポート
16 端子
21、51 外ヨーク
22、52 内ヨーク
23、53 磁石
24、54 ボイスコイルユニット
24a、54a ボビン
24b、54b ボイスコイル
25、55 振動板
26、56 エッジ部
27、57 ダンパ
28、58 キャップ
29、59 リード線
31 エンクロージャー
32 仕切り板
33 スピーカユニット
34 音導ポート
35 排気用ポート
43 カバー体
50 磁気回路
100 車両
110 車室
111 ダッシュボード
112 防火壁
113 フロントウィンドウ
120 エンジンコンパートメント
121 壁部
130 ウォーターボックス