(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967647
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】静電塗装用エアスプレーガン、静電塗装システムおよび静電塗装方法
(51)【国際特許分類】
B05B 5/025 20060101AFI20160728BHJP
B05D 1/04 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
B05B5/025 E
B05D1/04 A
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-158030(P2012-158030)
(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公開番号】特開2014-18712(P2014-18712A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】390028495
【氏名又は名称】アネスト岩田株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】岡川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 平
【審査官】
大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−129452(JP,A)
【文献】
特開2005−052830(JP,A)
【文献】
特表2005−501715(JP,A)
【文献】
特開2001−129453(JP,A)
【文献】
特開2009−136860(JP,A)
【文献】
特表2009−503643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B5/00−5/16,12/00−12/14
B05D1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置から与えられるエアに静電支援を行って塗料を噴霧する静電塗装用エアスプレーガンであって、
前記外部装置と通信を行う通信部と、
記憶領域に格納した種類情報を読み出して前記通信部を介して前記外部装置に供給する制御部と、
前記外部装置から与えられる制御信号に基づいて電荷量を昇圧し、昇圧した電荷を荷電電極を介して前記エアに与える昇圧部と、
前記エアに電荷を与えることにより、前記荷電電極から接地電位へと流れる戻り電流の電流値および前記通信部を介して前記外部装置から与えられる信号に基づいて、前記エアに与える電荷の電圧値を画面に表示する表示部を備え、
前記外部装置からの静電支援の制御信号を停止させるための電荷スイッチを前記静電塗装用エアスプレーガンの筐体に有し、
前記電荷スイッチが前記通信部を介さずに前記外部装置に接続されることを特徴とする静電塗装用エアスプレーガン。
【請求項2】
前記エアに与える電荷の電圧値を設定するための設定スイッチを筐体にさらに有することを特徴とする請求項1記載の静電塗装用エアスプレーガン。
【請求項3】
前記制御部は、前記通信部を介して前記外部装置と情報を交換することにより、前記荷電電極から接地電位へと流れる戻り電流の電流値および前記エアに与える電荷の値について、前記外部装置との間で設定が同期することを特徴とする請求項1記載の静電塗装用エアスプレーガン。
【請求項4】
前記制御部は、塗装の対象物に添付した記憶媒体から第2の種類情報を読み出し、前記通信部を介して前記外部装置に供給することを特徴とする請求項1記載の静電塗装用エアスプレーガン。
【請求項5】
制御装置と、前記制御装置からエアの供給および静電荷の制御を受けることでエアに静電支援を行って塗料を噴霧する静電塗装用エアスプレーガンを有する静電塗装システムであって、
前記静電塗装用エアスプレーガンは、
前記制御装置と通信を行う第1通信部と、
記憶領域に格納されている種類情報を読み出して前記第1通信部を介して前記制御装置に供給する第1制御部を具備しており、
前記制御装置は、
前記静電塗装用エアスプレーガンと通信を行う第2通信部と、
前記第2通信部を介して前記静電塗装用エアスプレーガンの前記種類情報を取得し、この種類情報に基づき前記静電塗装用エアスプレーガンの静電荷の制御を行う第2制御部を具備しており、
前記制御装置の前記第2制御部は、前記制御装置での第1エア圧力を取得し、前記静電塗装用エアスプレーガンの種類情報および前記静電塗装用エアスプレーガンでの第2エア圧力を前記第1通信部および第2通信部を介して取得し、これらの値に基づいて生成した制御信号を、エアの供給を当該制御装置に行っている外部のエア供給源に供給することで、エア圧力を制御することを特徴とする静電塗装システム。
【請求項6】
制御装置と、前記制御装置からエアの供給および静電荷の制御を受けることでエアに静電支援を行って塗料を噴霧する静電塗装用エアスプレーガンを有する静電塗装システムであって、
前記静電塗装用エアスプレーガンは、
前記制御装置と通信を行う第1通信部と、
記憶領域に格納されている第1の種類情報を読み出して前記第1通信部を介して前記制御装置に供給する第1制御部を具備しており、
前記制御装置は、
前記静電塗装用エアスプレーガンと通信を行う第2通信部と、
前記第2通信部を介して前記静電塗装用エアスプレーガンの前記第1の種類情報を取得し、この種類情報に基づき前記静電塗装用エアスプレーガンの静電荷の制御を行う第2制御部を具備しており、
前記静電塗装用エアスプレーガンは、塗装の対象物に添付した記憶媒体から第2の種類情報を読み出す検出部をさらに有しており、
前記第1制御部は、前記検出部を介して前記第2の種類情報を読み出し、前記第1通信部および前記第2通信部を介して前記制御装置の第2制御部に供給することを特徴とし、
前記制御装置の前記第2制御部は、前記第1の種類情報および当該第2の種類情報に基づき前記静電塗装用エアスプレーガンの静電荷の制御を行うことを特徴とする静電塗装システム。
【請求項7】
前記制御装置の前記第2制御部は、前記静電塗装用エアスプレーガンから接地電位へと流れる戻り電流を検出し、この電流値に基づく制御情報を前記第1通信部および第2通信部を介して前記静電塗装用エアスプレーガンの前記第1制御部に供給することを特徴とし、
前記静電塗装用エアスプレーガンは、前記第1制御部に与えられた前記制御情報に基づいて、荷電電極から接地電位へと流れる戻り電流の電流値を画面に表示する表示部をさらに有することを特徴とする請求項5又は請求項6記載の静電塗装システム。
【請求項8】
前記制御装置の前記第2制御部は、前記エアに与える電荷の電圧値に応じた制御情報を前記第1通信部および第2通信部を介して前記静電塗装用エアスプレーガンの前記第1制御部に供給することを特徴とし、
前記静電塗装用エアスプレーガンは、前記第1制御部に与えられた前記制御情報に応じた電圧値を表示する表示部をさらに有することを特徴とする請求項5又は請求項6記載の静電塗装システム。
【請求項9】
前記静電塗装用エアスプレーガンは、前記制御装置から与えられる制御信号に基づいて電荷量を昇圧し、昇圧した電荷を荷電電極を介して前記エアに与える昇圧部を具備するとともに、前記エアに与える電荷の電圧値を設定するための設定スイッチを筐体にさらに有しており、
前記第1制御部は、前記設定スイッチからの操作信号を前記第1通信部および前記第2通信部を介して、前記制御装置の第2制御部に供給し、
前記制御装置の第2制御部は、前記設定スイッチからの操作信号に基づいて、前記昇圧部に供給するための制御信号を出力することを特徴とする請求項5又は請求項6記載の静電塗装システム。
【請求項10】
前記静電塗装用エアスプレーガンは、前記制御装置から与えられる制御信号に基づいて電荷量を昇圧し、昇圧した電荷を荷電電極を介して前記エアに与える昇圧部を具備するとともに、前記静電支援を停止させるためのスイッチを筐体にさらに有しており、
前記制御装置の第2制御部は、前記スイッチからの操作信号を受けると当該操作信号に基づいて、前記静電塗装用エアスプレーガンの前記電荷を前記エアに与えるために前記昇圧部に供給するための制御信号を停止することを特徴とする請求項5又は請求項6記載の静電塗装システム。
【請求項11】
前記第1制御部および前記第2制御部は、前記第1通信部および前記第2通信部を介して相互に情報を交換することにより、荷電電極から接地電位へと流れる戻り電流の電流値および前記エアに与える電荷の電圧値について、前記静電塗装用エアスプレーガンおよび前記制御装置との間で設定が同期することを特徴とする請求項5又は請求項6記載の静電塗装システム。
【請求項12】
制御装置と、前記制御装置からエアの供給および静電荷の制御を受けることでエアに静電支援を行って塗料を噴霧する静電塗装用エアスプレーガンを有する静電塗装システムを用いた静電塗装方法であって、
前記静電塗装用エアスプレーガンにおいて、記憶領域に格納されている種類情報を読み出して前記制御装置に供給し、
前記制御装置において、前記静電塗装用エアスプレーガンから取得した種類情報に基づき前記静電塗装用エアスプレーガンの静電荷の制御を行うとともに、前記制御装置での第1エア圧力、前記静電塗装用エアスプレーガンの種類情報および前記静電塗装用エアスプレーガンでの第2エア圧力の値に基づいてエアの供給を当該制御装置に行っている外部のエア供給源のエア圧力を制御することを特徴とする静電塗装方法。
【請求項13】
制御装置と、前記制御装置からエアの供給および静電荷の制御を受けることでエアに静電支援を行って塗料を噴霧する静電塗装用エアスプレーガンを有する静電塗装システムを用いた静電塗装方法であって、
前記静電塗装用エアスプレーガンにおいて、記憶領域に格納されている第1の種類情報を読み出して前記制御装置に供給するとともに、塗装の対象物に添付した記憶媒体から第2の種類情報を読み出して前記制御装置に供給し、
前記制御装置において、前記静電塗装用エアスプレーガンから取得した前記第1の種類情報および前記第2の種類情報に基づき前記静電塗装用エアスプレーガンの静電荷の制御を行うことを特徴とする静電塗装方法。
【請求項14】
前記制御装置において、検出した前記静電塗装用エアスプレーガンから接地電位へと流れる戻り電流に基づく制御情報を前記静電塗装用エアスプレーガンに供給し、
前記静電塗装用エアスプレーガンにおいて、前記供給された制御情報に応じた電流値を筐体に設けた表示部に表示することを特徴とする請求項12又は請求項13記載の静電塗装方法。
【請求項15】
前記制御装置において、前記エアに与える電荷の電圧値に応じた制御情報を前記静電塗装用エアスプレーガンに供給し、
前記静電塗装用エアスプレーガンにおいて、前記供給された制御情報に応じた電圧値を表示部に表示することを特徴とする請求項12又は請求項13記載の静電塗装方法。
【請求項16】
前記制御装置において、前記静電塗装用エアスプレーガンの筐体に設けられた設定スイッチから供給される操作信号を前記静電塗装用エアスプレーガンに供給し、
前記静電塗装用エアスプレーガンにおいて、前記操作信号に基づいて電荷を前記エアに与えることを特徴とする請求項12又は請求項13記載の静電塗装方法。
【請求項17】
前記制御装置において、前記静電塗装用エアスプレーガンの筐体に設けられた前記静電支援を停止させるためのスイッチからの操作信号を供給され、この操作信号に基づいて前記静電塗装用エアスプレーガンの前記電荷を前記エアに与えるための制御信号の出力を停止することを特徴とする請求項12又は請求項13記載の静電塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に静電支援を伴って塗装を行う静電塗装用エアスプレーガンに関し、特に、制御装置との間で通信を行う静電塗装用エアスプレーガン、静電塗装システムおよび静電塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外部の制御装置により制御されている静電塗装用エアスプレーガンが知られている。このような静電塗装用エアスプレーガンにおいては、制御装置の操作部を操作することにより、例えば、静電気の電荷量を制御したり、エアの量を制御したりする。このとき、オペレータは、静電塗装用エアスプレーガンを操作しながら塗装しているので、できれば、各操作情報は外部の制御装置ではなく、静電塗装用エアスプレーガンの表示部に表示されている方が操作し易いし、各設定も静電塗装用エアスプレーガンの側から行える方が都合がよいと言える。
【0003】
特許文献1は、外部の制御装置に接続されて制御され、特定のパラメータを本体の表示部に表示する機能を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−136860号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、静電塗装用エアスプレーガンは、1種類だけではなく複数種類が用意されており、これらを車両の車種や塗装目的に合わせて適宜切り替えて使用される。このような場合、オペレータは、塗装目的に合わせてその都度、制御装置の各種の設定を行わなければならない。
【0006】
特許文献1の従来技術は、複数の静電塗装用エアスプレーガンの種類を制御装置の方で自動的に認識することはできず、この種類情報に応じて、最適なエア制御や静電制御を自動的に行うことは開示されていない。
【0007】
本発明は、静電塗装用エアスプレーガンの種類に応じた最適な設定を自動的に行う静電塗装用エアスプレーガン、静電塗装システムおよび静電塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するための請求項1記載の発明は、外部装置から与えられるエアに静電支援を行って塗料を噴霧する静電塗装用エアスプレーガンであって、前記外部装置と通信を行う通信部と、記憶領域に格納した種類情報を読み出して前記通信部を介して前記外部装置に供給する制御部と、前記外部装置から与えられる制御信号に基づいて電荷量を昇圧し、昇圧した電荷を荷電電極を介して前記エアに与える昇圧部を具備することを特徴とする静電塗装用エアスプレーガンである。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記エアに電荷を与えることにより、前記荷電電極から接地電位へと流れる戻り電流の電流値を画面に表示する表示部をさらに有することを特徴とする請求項1記載の静電塗装用エアスプレーガンである。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記通信部を介して前記外部装置から与えられる信号に基づいて、前記エアに与える電荷の電圧値を表示する表示部をさらに有することを特徴とする請求項1記載の静電塗装用エアスプレーガンである。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記エアに与える電荷の電圧値を設定するための設定スイッチを筐体にさらに有することを特徴とする請求項1記載の静電塗装用エアスプレーガンである。
【0012】
請求項5記載の発明は、前記外部装置からの静電支援の制御信号を停止させるためのスイッチを筐体にさらに有することを特徴とする請求項1記載の静電塗装用エアスプレーガンである。
【0013】
請求項6記載の発明は、前記制御部は、前記通信部を介して前記外部装置と情報を交換することにより、前記荷電電極から接地電位へと流れる戻り電流の電流値および前記エアに与える電荷の値について、前記外部装置との間で設定が同期することを特徴とする請求項1記載の静電塗装用エアスプレーガンである。
【0014】
請求項7記載の発明は、前記制御部は、塗装の対象物に添付した記憶媒体から第2の種類情報を読み出し、前記通信部を介して前記外部装置に供給することを特徴とする請求項1記載の静電塗装用エアスプレーガンである。
【0015】
請求項8記載の発明は、制御装置と、前記制御装置からエアの供給および静電荷の制御を受けることでエアに静電支援を行って塗料を噴霧する静電塗装用エアスプレーガンを有する静電塗装システムであって、前記静電塗装用エアスプレーガンは、前記制御装置と通信を行う第1通信部と、記憶領域に格納されている種類情報を読み出して前記第1通信部を介して前記制御装置に供給する第1制御部を具備しており、
前記制御装置は、前記静電塗装用エアスプレーガンと通信を行う第2通信部と、前記第2通信部を介して前記静電塗装用エアスプレーガンの前記種類情報を取得し、この種類情報に基づき前記静電塗装用エアスプレーガンの静電荷の制御を行う第2制御部を具備することを特徴とする静電塗装システムである。
【0016】
請求項9記載の発明は、前記制御装置の前記第2制御部は、前記制御装置での第1エア圧力を取得し、前記静電塗装用エアスプレーガンの種類情報および前記静電塗装用エアスプレーガンでの第2エア圧力を前記第1通信部および第2通信部を介して取得し、これらの値に基づいて生成した制御信号を、エアの供給を当該制御装置に行っている外部のエア供給源に供給することで、エア圧力を制御することを特徴とする請求項8記載の静電塗装システムである。
【0017】
請求項10記載の発明は、前記制御装置の前記第2制御部は、前記静電塗装用エアスプレーガンから接地電位へと流れる戻り電流を検出し、この電流値に基づく制御情報を前記第1通信部および第2通信部を介して前記静電塗装用エアスプレーガンの前記第1制御部に供給することを特徴とし、前記静電塗装用エアスプレーガンは、前記第1制御部に与えられた前記制御情報に基づいて、前記荷電電極から接地電位へと流れる戻り電流の電流値を画面に表示する表示部をさらに有することを特徴とする請求項8記載の静電塗装システムである。
【0018】
請求項11記載の発明は、前記制御装置の前記第2制御部は、前記エアに与える電荷の電圧値に応じた制御情報を前記第1通信部および第2通信部を介して前記静電塗装用エアスプレーガンの前記第1制御部に供給することを特徴とし、前記静電塗装用エアスプレーガンは、前記第1制御部に与えられた前記制御情報に応じた電圧値を表示する表示部をさらに有することを特徴とする請求項8記載の静電塗装システムである。
【0019】
請求項12記載の発明は、前記静電塗装用エアスプレーガンは、前記エアに与える電荷の電圧値を設定するための設定スイッチを筐体にさらに有しており、前記第1制御部は、前記設定スイッチからの操作信号を前記第1通信部および前記第2通信部を介して、前記制御装置の第2制御部に供給し、前記制御装置の第2制御部は、前記設定スイッチからの操作信号に基づいて、前記昇圧部に供給するための制御信号を出力することを特徴とする請求項8記載の静電塗装システムである。
【0020】
請求項13記載の発明は、前記静電塗装用エアスプレーガンは、前記静電支援を停止させるためのスイッチを筐体にさらに有しており、
前記制御装置の第2制御部は、前記スイッチからの操作信号を受けると当該操作信号に基づいて、前記静電塗装用エアスプレーガンの前記電荷を前記エアに与えるために前記昇圧部に供給するための制御信号を停止することを特徴とする請求項8記載の静電塗装システムである。
【0021】
請求項14記載の発明は、前記第1制御部および前記第2制御部は、前記第1通信部および前記第2通信部を介して相互に情報を交換することにより、前記荷電電極から接地電位へと流れる戻り電流の電流値および前記エアに与える電荷の電圧値について、前記静電塗装用エアスプレーガンおよび前記制御装置との間で設定が同期することを特徴とする請求項8記載の静電塗装システムである。
【0022】
請求項15記載の発明は、前記静電塗装用エアスプレーガンは、塗装の対象物に添付した記憶媒体から第2の種類情報を読み出す検出部をさらに有しており、前記第2制御部は、前記検出部を介して前記第2の種類情報を読み出し、前記第1通信部および前記第2通信部を介して前記制御装置の第1制御部に供給することを特徴とし、前記制御装置の前記第1制御部は、前記第1の種類情報および当該第2の種類情報に基づき前記静電塗装用エアスプレーガンの静電荷の制御を行うことを特徴とする請求項8記載の静電塗装システムである。
【0023】
請求項16記載の発明は、制御装置と、前記制御装置からエアの供給および静電荷の制御を受けることでエアに静電支援を行って塗料を噴霧する静電塗装用エアスプレーガンを有する静電塗装システムを用いた静電塗装方法であって、前記静電塗装用エアスプレーガンにおいて、記憶領域に格納されている種類情報を読み出して前記制御装置に供給し、前記制御装置において、前記静電塗装用エアスプレーガンから取得した種類情報に基づき前記静電塗装用エアスプレーガンの静電荷の制御を行うことを特徴とする静電塗装方法である。
【0024】
請求項17記載の発明は、前記制御装置において、前記検出した戻り電流に基づく制御情報を前記静電塗装用エアスプレーガンに供給し、前記静電塗装用エアスプレーガンにおいて、前記供給された制御情報に応じた電流値を筐体に設けた表示部に表示することを特徴とする請求項16記載の静電塗装方法である。
【0025】
請求項18記載の発明は、前記制御装置において、前記エアに与える電荷の電圧値に応じた制御情報を前記静電塗装用エアスプレーガンに供給し、前記静電塗装用エアスプレーガンにおいて、前記供給された制御情報に応じた電圧値を表示部に表示することを特徴とする請求項16記載の静電塗装方法である。
【0026】
請求項19記載の発明は、前記制御装置において、前記静電塗装用エアスプレーガンの筐体に設けられた設定スイッチから供給される操作信号を前記静電塗装用エアスプレーガンに供給し、前記静電塗装用エアスプレーガンにおいて、前記操作信号に基づいて電荷を前記エアに与えることを特徴とする請求項16記載の静電塗装方法である。
【0027】
請求項20記載の発明は、前記制御装置において、前記静電塗装用エアスプレーガンの筐体に設けられた前記静電支援を停止させるためのスイッチからの操作信号を供給され、この操作信号に基づいて前記静電塗装用エアスプレーガンの前記電荷を前記エアに与えるための制御信号の出力を停止することを特徴とする請求項16記載の静電塗装方法である。
【発明の効果】
【0028】
静電塗装用エアスプレーガンの種類に応じた設定を自動的に制御装置の側で行うことができる静電塗装用エアスプレーガンを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係る静電塗装システムの構成の一例を示す概念図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る静電塗装システムの構成の一例を示す見取図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る静電塗装用エアスプレーガンを示す斜視図。
【
図4】本発明の一実施形態に係る静電塗装用エアスプレーガンの表示操作部の一例を示す図面であり、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る静電塗装用エアスプレーガンを示す断面図。
【
図6】本発明の一実施形態に係る制御装置の一例を示す正面図。
【
図7】本発明の一実施形態に係る静電塗装システムの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る静電塗装システムの構成の一例を示す概念図、
図2は、同じく静電塗装システムの構成の一例を示す見取図、
図3は、同じく静電塗装用エアスプレーガンを示す斜視図、
図4は、同じく静電塗装用エアスプレーガンの表示操作部の一例を示す図面であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、
図5は、同じく静電塗装用エアスプレーガンを示す断面図、
図6は、同じく制御装置の一例を示す正面図である。
【0031】
はじめに、
図1および
図2を用いて、本発明の一実施形態に係る静電塗装システムの構成を説明する。静電塗装システムは、塗料容器5を伴う静電塗装用エアスプレーガン1と、静電塗装用エアスプレーガン1のエア圧および静電支援の電荷量を制御するための制御装置2と、制御装置2に動作を制御されるエア供給源であるコンプレッサー3と、コンプレッサー3からのエア量を制御する電空バルブ4を有している。この静電塗装システムにより、車種情報を格納するICチップ6を伴った車両C等を対象にして、静電支援を行うことで塗装する。
【0032】
このような静電塗装用エアスプレーガン1を、さらに、
図1乃至
図5を用いて説明する。静電塗装用エアスプレーガン1は、塗料取入口47に塗料容器5が接続され、空気取入口45にエアチューブ7の一端が接続され他端が制御装置2のエア出力部66に接続される。また、通信線接続部46に制御装置2との間の配線L1,L2,L3が接続される。また、静電塗装用エアスプレーガン1は、トリガー43を有しており、トリガー43を操作することでエアが塗料を伴って噴霧する。
【0033】
また、このような静電塗装用エアスプレーガン1は、パネル部Pにおいて、
図4に示すように、静電支援を行っているかどうかを表示する電荷ランプ31と、荷電電極42から接地電位へと流れる戻り電流の電流値を例えば三段階で表示する電流値用LED32と、荷電電極42によりエアに帯電させる際の電圧値(一例として、85000V,60000V,40000V,30000V,20000V等)を表示する電圧値用LED33と、任意の操作情報を表示する液晶画面等のディスプレイ35を有している。さらに、静電塗装用エアスプレーガン1は、この電荷の電圧値を設定するための電荷設定スイッチ用の操作スイッチ14と、荷電電極42からの静電支援を停止するための電荷スイッチ15(
図5参照)を有している。
【0034】
このような静電塗装用エアスプレーガン1は、
図1および
図5に示すように、全体の動作を制御するマイクロコンピュータ等の制御部11を有しており、制御部11は、静電塗装用エアスプレーガンの種類を特定する種類情報を格納している記憶領域11−2を有している。さらに、制御部11は、静電塗装用エアスプレーガン1において、配線L2によるRS−232C等のシリアル通信を実現する通信部17が接続され、さらにエアラインのエア圧を検出する圧力センサ16が接続される。また、静電塗装用エアスプレーガン1は、制御部2の配線L1から駆動信号が供給され荷電電極42の昇圧を行う昇圧部12と、ICチップ6から車種情報を読み出すチップセンサ18を有している。
【0035】
次に、制御装置2を
図1および
図6を用いて、詳細に説明する。制御装置2は、全体の動作を制御する制御部20と、それぞれ制御部20に接続され、表示および操作を行う表示操作部22と、操作情報を外部に出力する状態出力部23と、コンプレッサー3および電空バルブ4と通信を行う通信部24と、静電塗装用エアスプレーガン1の通信部とRS−232C等のシリアル通信を行う通信部25と、静電塗装用エアスプレーガン1の昇圧部12に駆動信号を供給するべく制御部20から制御信号が供給される送電部26と、送電部26の出力に接続されるヒューズ21と、配線L1を介して静電塗装用エアスプレーガン1に接続され昇圧部12からの戻り電流を検出する戻り電流検出部28と、各部に電源を供給する電源部29を有している。また、制御装置2は、静電塗装用エアスプレーガン1の電荷スイッチ15が配線L3を介して制御部20に接続されている。
【0036】
また、制御装置2は、
図6に示すように操作パネルにおいて、電源ランプ51と、荷電ランプ52と、エラーランプ53と、電源スイッチ54と、キーロック55と、電流値表示部56と、表示部57と、操作スイッチ58と、操作スイッチ59と、操作スイッチ60と、エンターキー61と、モードランプ62と、電圧表示LED63と、設定値LED64と、出力端子65と、エア出力部66と、エア入力部67を有している。
【0037】
このような構成を有する静電塗装システムは、
図7に示すフローチャートに従って、電源投入時以降、以下のように動作処理を行う。なお、便宜上、制御装置2を先に説明するが制御装置2および静電塗装用エアスプレーガン1はそれぞれが自立的に平行して動作すると共に、通信機能によりセンサ等の検出値を共有し、各種操作情報や設定値の同期処理を行う。
【0038】
すなわち、制御装置2において、制御部20は、通信部25を介して静電塗装用エアスプレーガン1の通信部17と通信を行って、ガンの種類情報を認識する(S11)。制御部20は、認識したガンの種類情報に基づき、予め制御部20の記憶領域に用意されている種類情報に対応した設定情報を読み出し、最適な制御のパラメータを設定し、これらを適宜表示部57等に表示する(S12)。制御部20は、圧力センサ30の出力および戻り電流検出部28の出力等の検出部の出力を読み取る(S13)。制御部20は、通信部25を介して静電塗装用エアスプレーガン1の通信部17と通信を行い、各種のエア圧力等のセンサ情報や車体の車種情報を共有する(S14)。制御部20は、これらセンサ情報や車種情報に基づき、パラメータを設定して、電流値、電圧値、圧力値を決定して表示する(S15)。すなわち、制御部20は、先にガンの種類情報に基づき決定した制御のパラメータや、これらセンサ情報や車種情報に基づき、パラメータを設定し、コントロールパネル上の電流値表示部56に電流値を、電圧表示LED63に電圧値を夫々の値に見合う数のLEDを点灯させることで表示する。同様に、制御部20は、コントロールパネル上の電源ランプ51に電源のオンオフを表示し、静電支援の有無を荷電ランプ52に表示し、エラーの有無をエラーランプ53に表示し、動作モードをモードランプ62に表示する。また、制御部20は、これら決定した電流値、電圧値、エアの圧力のための制御量等を送電部26または通信部24または通信部25に出力することにより、静電塗装用エアスプレーガン1および制御装置2の間で電流値、電圧値等の表示を同期させる(S16)。
【0039】
また、制御部20は、さらに操作情報を認識する(S17)。そして、制御部20は、静電塗装用エアスプレーガン1側および制御装置2側において、変更操作を認識すると、パラメータ、電流値、電圧値、圧力値等を再度決定して、静電塗装用エアスプレーガン1に送信する(S19)と共に、ステップS16に進んで以降の処理を繰り返す。また、制御部20は、全ての作業が終了したと認識するまで、ステップS13に戻り、同様の処理を反復する(S20)。
【0040】
また、制御部20は、制御装置2における圧力センサ30によりエア圧力を取得し、静電塗装用エアスプレーガン1の種類情報および静電塗装用エアスプレーガン1での圧力センサ16によるエア圧力を通信部17,25を介して取得し、これらの値に基づいて制御信号を生成する。そして、制御部20は、この制御信号を通信部24を介してコンプレッサー3および電空バルブ4に供給してエア圧力を制御している。
【0041】
一方、静電塗装用エアスプレーガン1においては、制御部11は、制御部11の記憶部11−2に格納された静電塗装用エアスプレーガン1の種類情報を取得して、通信部17および通信部25を介して、制御部20に送信する(S21)。制御部11は、チップセンサ18を介して車両C上に設置されたICチップ6から車種情報を、圧力センサ16によりエアのエア圧等を検出する(S22)。制御部11は、制御装置2と通信部17,25を介しシリアル通信を行って、これらのセンサ情報を共有する(S23)。さらに制御部11は、制御装置2と通信部17,25を介しシリアル通信を行って、制御装置2が決定した電流値、電圧値、圧力値等を共有する(S24)。制御部11は、静電支援の際の表示すべき電流値、電圧値等の各種の情報を共有すると共に、ICチップ6からの車種情報や制御装置2と同じ内容の電流値を電圧値用LED33に、電圧値を電流値用LED32に夫々の値に見合う数のLEDを点灯させることで表示する(S25)。または、ディスプレイ35に直接表示することも好適である。さらに、制御部11は、操作の変更や検出結果の変化を検出すると(S26)、この変更や変化に応じて、制御信号や出力信号を通信部17,25を介して制御装置2の制御部20に送信すると共に、表示部13の表示素子に表示する(S27)。また、制御部11は、全ての作業が終了したと認識するまで、ステップS22に戻り、同様の処理を反復する(S28)。
【0042】
このように、本発明の一実施形態に係る静電塗装システムは、静電塗装用エアスプレーガン1の制御部11の記憶部11−2にガン固有の種類情報を保有しており、この種類情報を制御装置2の制御部20に送信することで、制御装置2において、そのガンの種類に最適な電圧値やエア圧等を自動的に設定することができる。同様に、ICチップ6からの車種情報を制御装置2の制御部20に送信することで、制御装置2において、その車種に最適な電圧値やエア圧等を自動的に設定することができると共に、操作に関する情報や助言をディスプレイ35に表示することも可能となる。これにより、制御装置2の側からではなく静電塗装用エアスプレーガン1の側からの、静電荷の制御やエア制御が可能となる。また、ディスプレイ35を操作機能をもったタッチパネル等にすることで、より直感的な操作を制御装置2からではなく静電塗装用エアスプレーガン1の側から行うことが可能となる。
【0043】
以上記載した様々な実施形態は複数同時に実施することが可能であり、これらの記載により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0044】
1…エアスプレーガン、2…制御装置、3…コンプレッサー、4…電空バルブ、5…塗料容器、6…ICチップ、7…エアチューブ、C…車体、11…制御部、11−2…記憶部、12…昇圧部、13…表示部、14…操作スイッチ、15…電荷スイッチ、16…圧力センサ、17…通信部、18…チップセンサ、20…制御部、21…ヒューズ、22…表示操作部、23…状態出力部、24…通信部、25…通信部、26…送電部、30…圧力センサ、P…パネル部、31…電荷ランプ、32…電流値用LED、33…電圧値用LED、34…電荷設定、35…ディスプレイ、42…荷電電極、43…トリガー、45…エア取入口、46…通信線接続部、47…塗料取入口、48…空気取入口、51…電源ランプ、52…荷電ランプ、53…エラーランプ、54…電源スイッチ、55…キーロック、56…電流値表示部、57…表示部、58…操作スイッチ、59…操作スイッチ、60…操作スイッチ、61…エンターキー、62…モードランプ、63…電圧表示LED、64…設定値LED、65…出力端子、66…エア出力部、67…エア入力部。