(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967649
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】乾留炭の製造方法、高炉の操業方法、およびボイラの運転方法
(51)【国際特許分類】
C10B 57/00 20060101AFI20160728BHJP
C10L 9/08 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
C10B57/00
C10L9/08
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-206775(P2012-206775)
(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-62152(P2014-62152A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】大本 節男
(72)【発明者】
【氏名】中川 慶一
(72)【発明者】
【氏名】濱田 務
(72)【発明者】
【氏名】坂口 雅一
【審査官】
▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−204693(JP,A)
【文献】
特開平6−207933(JP,A)
【文献】
特表2010−523935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B,C10L
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料石炭を乾留して乾留炭を製造する乾留炭の製造方法であって、
前記原料石炭の工業分析データおよび元素分析データを取得し、
前記工業分析データの1つである、または前記元素分析データに基づきデュロンの式で求められる発熱量Aと、前記工業分析データに基づく燃料比Bと、前記元素分析データに基づく炭素含有量に対する水素含有量Cと、前記元素分析データに基づく炭素含有量に対する酸素含有量Dとを用い、以下の(1)式で表される演算により、前記原料石炭の乾留温度Tを導出し、
前記原料石炭の乾留温度Tに基づき前記原料石炭を乾留する温度を設定する
ことを特徴とする乾留炭の製造方法。
T=t1+aA+bB+cC+dD ・・・(1)
ただし、前記t1が切片であり、前記a、前記b、前記c、前記dが係数であり、450≦t1≦475、0.145≦a≦0.155、−640≦b≦−610、1600≦c≦1700、−540≦d≦−500を満たしている。
【請求項2】
請求項1に記載された乾留炭の製造方法により製造された乾留炭を粉砕してなる微粉炭を高炉設備の羽口へ吹き込む高炉吹込み炭として利用する
ことを特徴とする高炉の操業方法。
【請求項3】
請求項1に記載された乾留炭の製造方法により製造された乾留炭をボイラの燃料として利用する
ことを特徴とするボイラの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭を乾留して乾留炭を製造する乾留炭の製造方法、高炉の操業方法、およびボイラの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原料石炭(原炭)は水銀を含有しており、原炭の水銀含有量を低減する技術が検討されている。例えば、下記の特許文献1には、原炭の加熱温度と原炭中の水銀放散量との関係を示す原炭中の水銀放散特性に基づき原炭を所定の温度で加熱処理することで、水銀含有量の少ない低水銀炭を製造する低水銀炭の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,403,365号(例えば、第3図など参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1は、イーグル・ビュート鉱山で産出した原炭の水銀放散特性による低水銀炭の製造方法しか開示せず、他の鉱山で産出した原炭などから低水銀炭を製造する場合には、当該原炭の水銀放散特性に関するデータが特殊なデータであって実験によって取得する必要があることから、データ取得作業自体が煩雑であり、製造コスト増を招いてしまう可能性があった。
【0005】
また、原炭から水銀を除去して低水銀炭を得ることだけを目的として単純に設定した温度で当該原炭を加熱処理すると、原炭中の揮発分が過剰に取り除かれて、得られた石炭の着火性を低下させてしまう可能性があった。
【0006】
ところで、高炉設備の羽口に吹き込む高炉吹込み炭やボイラの燃料として原炭のうちの高品位石炭(高質炭)が利用されているが、当該高質炭と比較して安価である、褐炭や亜瀝青炭や瀝青炭などのような低品位石炭(低質炭)を利用することが検討されている。前記低質炭は、水分含有量が多く単位重量当たりの発熱量が前記高質炭と比較して低いため、加熱処理して乾燥や乾留されることにより、単位重量当たりの発熱量を高めた乾留炭としている。前記低質炭も水銀を含有することから、前記乾留炭も水銀含有量を少なくすることが求められる可能性がある。
【0007】
このようなことから、本発明は、前述した課題を解決するために為されたものであって、煩雑な作業を行わなくても、水銀含有量を低減する一方、揮発分の含有量の過度の低減を抑制した乾留炭を製造することができる乾留炭の製造方法、高炉の操業方法、およびボイラの運転方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決する第1の発明に係る乾留炭の製造方法は、原料石炭を乾留して乾留炭を製造する乾留炭の製造方法であって、前記原料石炭の工業分析データおよび元素分析データを取得し、前記工業分析データの1つである、または前記元素分析データに基づきデュロンの式で求められる発熱量Aと、前記工業分析データに基づく燃料比Bと、前記元素分析データに基づく炭素含有量に対する水素含有量Cと、前記元素分析データに基づく炭素含有量に対する酸素含有量Dとを用い、以下の(1)式で表される演算により、前記原料石炭の乾留温度Tを導出し、前記原料石炭の乾留温度Tに基づき前記原料石炭を乾留する温度を設定することを特徴とする。
T=t1+aA+bB+cC+dD ・・・(1)
ただし、前記t1が切片であり、前記a、前記b、前記c、前記dが係数であり、450≦t1≦475、0.145≦a≦0.155、−640≦b≦−610、1600≦c≦1700、−540≦d≦−500を満たしている。
【0009】
上述した課題を解決する第2の発明に係る高炉の操業方法は、前述した第1の発明に係る乾留炭の製造方法により製造された乾留炭を粉砕してなる微粉炭を高炉設備の羽口へ吹き込む高炉吹込み炭として利用することを特徴とする。
【0010】
上述した課題を解決する第3の発明に係るボイラの運転方法は、前述した第1の発明に係る乾留炭の製造方法により製造された乾留炭をボイラの燃料として利用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る乾留炭の製造方法によれば、原料石炭の工業分析データや元素分析データやデュロンの式で得られる発熱量、燃料比、炭素含有量に対する水素含有量、炭素含有量に対する酸素含有量を上述の(1)式に代入して得られた原料石炭の乾留温度Tとなるように、原料石炭を乾留する温度を設定するだけで、水銀含有量を低減する一方、揮発分の含有量の過度の低減を抑制した乾留炭を製造することができる。原料石炭の工業分析データや元素分析データが特殊なデータではなく当該原料石炭の品質として最も基本的に使われるデータであることから、原料石炭中の水銀放散特性に関するデータを取得するなどの煩雑な作業を行う必要がなくなる。
【0012】
本発明に係る高炉の操業方法およびボイラの運転方法によれば、乾留炭自体が水銀含有量を低減したものであることから、当該乾留炭が燃焼して生じる燃焼排ガスの水銀含有量を大幅に低減することができる。前記乾留炭が揮発分の含有量の過度の低減を抑制したものであることから、当該乾留炭の着火性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る乾留炭の製造方法による乾留温度の設定手順を表すフローチャート図である。
【
図2】本発明に係る乾留炭の製造方法の手順を表すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る乾留炭の製造方法、高炉の操業方法、およびボイラの運転方法について説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
本実施形態では、
図1および
図2に基づき具体的に説明する。
【0015】
本実施形態では、
図2に示すように、原料石炭である原炭11を低酸素雰囲気中(酸素濃度:5体積%以下)で加熱(例えば、110〜200℃×0.1〜1時間)して乾燥する(乾燥工程S21)ことにより水分を除去した後、低酸素雰囲気中(酸素濃度:2体積重量%以下)で加熱(乾留温度T×0.1〜1時間)して乾留する(乾留工程S22)ことにより、揮発分(例えば、H
2O,CO
2、タール、Hgなど)などを乾留ガスや乾留油として除去してから、低酸素雰囲気中(酸素濃度:2体積%以下)で冷却(50℃以下)する(冷却工程S23)ことにより、乾留炭12を製造している。
【0016】
ここで、上述した乾留温度Tは、以下に示す(1)式に基づき設定される。
【0017】
T=t1+aA+bB+cC+dD ・・・(1)
ただし、Tは乾留温度(℃)を示し、Aは発熱量(到着ベース)(kcal/kg)を示し、Bは燃料比を示し、Cは炭素含有量(wt%)に対する水素含有量(wt%)(H/C)を示し、Dは炭素含有量(wt%)に対する酸素含有量(wt%)(O/C)を示し、t1は切片(定数)を示し、a,b,c,dはそれぞれ係数を示す。
【0018】
ただし、前記t1、前記a、前記b、前記c、前記dはそれぞれ以下の表1に示す範囲に設定される。
【0020】
つまり、前記t1、前記a、前記b、前記c、前記dはそれぞれ、450≦t1≦475、0.145≦a≦0.155、−640≦b≦−610、1600≦c≦1700、−540≦d≦−500を満足している。
【0021】
前記原炭11として、例えば、褐炭、亜瀝青炭、瀝青炭などが用いられる。前記原炭の組成分析値である、全水分(到着ベース)の重量%(wt%)、水分(気乾)の重量%(wt%)、灰分の重量%(wt%)、揮発分の重量%(wt%)、固定炭素の重量%(wt%)は、特殊なデータではなく、原炭の品質として最も基本的に使われるデータであって、原炭の産出時や使用時などで実施される、例えばJIS M8812(2004)に規定される工業分析により得られるデータである。また、前記原炭の組成分析値である、炭素含有量(wt%)、水素含有量(wt%)、窒素含有量(wt%)、全硫黄含有量(wt%)、酸素含有量(wt%)、全水銀含有量(mg/kg)も、特殊なデータではなく、原炭の品質として最も基本的に使われるデータであって、原炭の産出時や使用時などで実施される、例えばJIS M8813(2004)に規定される元素分析により得られるデータである。前記原炭11の発熱量は、原炭の品質として最も基本的に使われるデータであって、原炭の産出時や使用時などで実施される、例えばJIS M8814(2004)に規定される工業分析により得られるデータである。
【0022】
前記原炭11の燃料比は、上述した工業分析で得られる固定炭素と揮発分の比(固定炭素wt%/揮発分wt%)である。
【0023】
また、上述した原炭11の発熱量は、上述したJIS M8813(2004)に規定される元素分析により得られた各元素(炭素、水素、酸素、硫黄)の重量%を用いてデュロン(Dulong)の式である以下に示す(2)式により得ることも可能である。
【0024】
H=81W
C+342.5(W
H−W
O/8)+22.5W
S ・・・(2)
ただし、前記Hは発熱量を示し、前記W
Cは原炭中の炭素の重量%を示し、前記W
Hは原炭中の水素の重量%を示し、前記W
Oは原炭中の酸素の重量%を示し、前記W
Sは原炭中の硫黄の重量%を示す。
【0025】
つまり、
図1に示すように、原炭11の工業分析データや元素分析データを取得し(原炭の分析データ取得工程S11)、前記工業分析データの1つである発熱量、または前記元素分析データに基づきデュロンの式である上述の(2)式で求められる発熱量と、前記工業分析データに基づく燃料比と、前記元素分析データに基づく炭素含有量に対する水素含有量と、前記元素分析データに基づく炭素含有量に対する酸素含有量とを用い、上述の(1)式で表される演算により(乾留温度演算工程S12)、前記原炭の乾留温度Tを導出し、前記原炭の乾留温度Tとなるように前記原炭11を乾留する温度を設定する(乾留温度設定工程S13)だけで、水銀含有量を低減する一方、揮発分の含有量の過度の低減を抑制した乾留炭12を製造することができる。原炭11の工業分析データや元素分析データが特殊なデータではなく当該原炭11の品質として最も基本的に使われるデータであることから、原炭11中の水銀放散特性に関するデータを取得するなどの煩雑な作業を行う必要がなくなる。
【0026】
したがって、本実施形態に係る乾留炭の製造方法によれば、各種石炭の水銀放散特性を分析する必要がなく煩雑な作業が不要であり、原炭の品質として最も基本的に使われるデータである工業分析データや元素分析データを用い上述の(1)式を演算して導出された原炭の乾留温度Tとなるように原炭11を乾留する温度を設定するだけで、水銀含有量を低減する一方、揮発分の含有量の過度の低減を抑制した乾留炭を製造することができる。
【0027】
上述した本実施形態に係る乾留炭の製造方法で製造された乾留炭を粉砕して微粉化した微粉炭を高炉設備の羽口に吹き込む高炉吹込み炭として利用することにより、当該乾留炭自体が水銀含有量を低減したものであることから、石炭中の水銀量含有量を少なくする処理をしていないPCI炭を単純に微粉化してなる、従来の微粉炭を高炉吹込み炭として利用する場合よりも、当該乾留炭が燃焼して生じる燃焼排ガスの水銀含有量を大幅に低減することができる。前記乾留炭が揮発分の含有量の過度の低減を抑制したものであることから、当該乾留炭の着火性の低下を抑制することができる。
【0028】
上述した本実施形態に係る乾留炭の製造方法で製造された乾留炭をボイラの燃料として利用することにより、当該乾留炭自体が水銀含有量を低減したものであることから、石炭中の水銀含有量を少なくする処理をしていない原炭を単純に乾留などして得られる、従来の石炭をボイラの燃料として利用する場合よりも、ボイラの燃焼排ガスに含まれる水銀量を低減することができる。前記乾留炭が揮発分の含有量の過度の低減を抑制したものであることから、当該乾留炭の着火性の低下を抑制することができる。
【実施例】
【0029】
本発明に係る乾留炭の製造方法、高炉の操業方法およびボイラの運転方法の作用効果を確認するために行った実施例を以下に説明するが、本発明は、各種データに基づいて説明する以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0030】
[確認試験1]
上述した実施形態に係る乾留炭の製造方法において、原料石炭として、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭に適用した場合に、上述の(1)式の演算により導出される乾留温度Tに基づき前記原料石炭を乾留する温度を設定することで、水銀含有量を低減する一方、揮発分の含有量の過度の低減を抑制した乾留炭を製造することができるかを確認するための試験1を行った。
【0031】
本確認試験1では、まず、試験体1(瀝青炭)、試験体2(亜瀝青炭)、試験体3(褐炭)に関し、下記の表2に示す工業分析データや元素分析データを取得し、前記工業分析データの1つである発熱量と、前記工業分析データに基づく下記の表3に示す燃料比と、前記元素分析データに基づく下記の表3に示す炭素含有量に対する水素含有量と、前記元素分析データに基づく下記の表3に示す炭素含有量に対する酸素含有量とを用い、上述の(1)式で表される演算により、下記の表5に示す試験体1〜3の乾留温度Tを導出した。ただし、(1)式における、t1、a、b、c、dに関し、下記の表4に示す数値範囲となるようにした。また、比較のため、試験体2と同じ炭種および成分であるが、下記の表4に示すように、係数aのみを、試験体1〜3の場合と異なる数値であって、上述の実施形態における係数aの数値範囲外である0.128とした場合を比較体1とした。
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】
【0037】
続いて、上述の試験体1〜3を上述の表5に示す乾留温度で乾留したところ、表6に示すように、試験体1〜3の各石炭で、乾留後の燃料比が3以下となり、水銀除去率が75%以上となることが確認された。上述の比較体1を上述の表5に示すように269℃で乾留したところ、表6に示すように、乾留後の燃料比が3以下の1.35であったが、水銀除去率が50%であり、試験体1〜3と比べて低いことが明らかとなった。
【0038】
よって、本確認試験1によれば、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭の工業分析データおよび元素分析データを取得し、前記工業分析データの1つである発熱量と、前記工業分析データに基づく燃料比と、前記元素分析データに基づく炭素含有量に対する水素含有量と、前記元素分析データに基づく炭素含有量に対する酸素含有量とを用い、上述の(1)式のt1、a、b、c、dをそれぞれ450≦t1≦475、0.145≦a≦0.155、−640≦b≦−610、1600≦c≦1700、−540≦d≦−500とし、導出された乾留温度Tに基づき、前記原炭を乾留する温度を設定するだけで、水銀含有量を低減する一方、揮発分の含有量の過度の低減を抑制した乾留炭を得ることができることが確認された。
【0039】
また、比較体1では、上述の(1)式の係数aだけを上述の実施形態におけるaの数値範囲外としただけで、水銀含有量を大幅に(目的とするレベルまで)低減できないことから、上述の(1)式における切片t1や係数b、c、dを上述の実施形態における切片t1や係数b、c、dの数値範囲外としても、係数aだけを数値範囲外とした比較体1と同様に、適切な乾留温度範囲を得ることができず、水銀含有量を大幅に低減できないと推察される。
【0040】
[確認試験2]
上述した実施形態に係る乾留炭の製造方法において、原炭の水銀含有量および揮発分含有量に基づき求められ、水銀含有量を低減する一方、揮発分の含有量の過度の低減を抑制した乾留炭を得ることができる乾留温度(目標値)が、工業分析データおよび元素分析データを用い上述の(1)式の演算により導出される乾留温度(計算値)の範囲に含まれるかを確認するための試験2を行った。ただし、上述の(1)式における切片t1や係数a,b,c,dを、それぞれ450≦t1≦475、0.145≦a≦0.155、−640≦b≦−610、1600≦c≦1700、−540≦d≦−500とした。
【0041】
【表7】
【0042】
試験体Aは褐炭であり、上述の表7に示すように、乾留温度(目標値)が、工業分析データおよび元素分析データを用い上述の(1)式の演算により導出される乾留温度(計算値)の範囲に含まれることが明らかとなった。
【0043】
試験体Bは亜瀝青炭であり、上述の表7に示すように、乾留温度(目標値)が、工業分析データおよび元素分析データを用い上述の(1)式の演算により導出される乾留温度(計算値)の範囲に含まれることが明らかとなった。
【0044】
試験体Cは瀝青炭であり、上述の表7に示すように、乾留温度(目標値)が、工業分析データおよび元素分析データを用い上述の(1)式の演算により導出される乾留温度(計算値)の範囲に含まれることが明らかとなった。
【0045】
試験体Dは試験体Cと異なる瀝青炭であり、上述の表7に示すように、乾留温度(目標値)が、工業分析データおよび元素分析データを用い上述の(1)式の演算により導出される乾留温度(計算値)の範囲に含まれることが明らかとなった。
【0046】
試験体Eは試験体C,Dと異なる瀝青炭であり、上述の表7に示すように、乾留温度(目標値)が、工業分析データおよび元素分析データを用い上述の(1)式の演算により導出される乾留温度(計算値)の範囲に含まれることが明らかとなった。
【0047】
試験体Fは試験体C,D,Eと異なる瀝青炭であり、上述の表7に示すように、乾留温度(目標値)が、工業分析データおよび元素分析データを用い上述の(1)式の演算により導出される乾留温度(計算値)の範囲に含まれることが明らかとなった。
【0048】
よって、本確認試験2によれば、工業分析データおよび元素分析データを用い上述の(1)式の演算により導出される乾留温度(計算値)が、原炭の水銀含有量および揮発分含有量に基づき求められ、水銀含有量を低減する一方、揮発分の含有量の過度の低減を抑制した乾留炭を得ることができる乾留温度(目標値)を含むことから、前記乾留温度(計算値)で原炭を乾留することで、水銀含有量を低減する一方、揮発分の含有量の過度の低減を抑制した乾留炭を得ることができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る乾留炭の製造方法、高炉の操業方法、およびボイラの運転方法は、煩雑な作業を行わなくても、水銀含有量を低減する一方、揮発分の含有量の過度の低減を抑制した乾留炭を製造することができるので、製鉄産業や発電産業などにおいて極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
11 原炭(原料石炭)
12 乾留炭
S11 原炭の分析データ取得工程
S12 乾留温度演算工程
S13 乾留温度設定工程
S21 乾燥工程
S22 乾留工程
S23 冷却工程