特許第5967656号(P5967656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967656
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】運搬車のブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B62B 5/04 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
   B62B5/04 C
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-271937(P2012-271937)
(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公開番号】特開2014-117961(P2014-117961A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103404
【氏名又は名称】オーエム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088993
【弁理士】
【氏名又は名称】板野 嘉男
(74)【代理人】
【識別番号】100107917
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 英俊
(72)【発明者】
【氏名】松本 晃穂
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−127281(JP,U)
【文献】 特表2010−500243(JP,A)
【文献】 実開昭62−083780(JP,U)
【文献】 実公昭48−024141(JP,Y1)
【文献】 特開2011−235865(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第1232144(GB,A)
【文献】 米国特許第4073369(US,A)
【文献】 特開2008−266011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車に車輪を取り付けた運搬車のブレーキ装置であり、このブレーキ装置が台車と床面との間に設けられるものであって、適宜に操作されてブレーキを作動、非作動させる操作部材と、操作部材の動きに連動してスライドして頂面に傾斜する作用面を有するスライドカムと、バネで下方に付勢されてスライドカムの作用面の作用で昇降するブレーキ部材と、ブレーキ部材に取り付けられてスライドカムの作用面に当接している被作動部材とからなり、操作部材の所定の操作でスライドカムが被作動部材の下動を許容し、ブレーキ部材をバネの力で床面に押し付けることを特徴とする運搬車のブレーキ装置。
【請求項2】
操作部材がペダル軸に固定されて台車の側方に設けられる二つの踏面を有するフットペダルであり、各踏面を踏むとペダル軸を正逆に所定角度回転させるとともに、ペダル軸にレバーが設けられており、レバーがリンクでスライドカムに連結されている請求項1の運搬車のブレーキ装置。
【請求項3】
操作部材の操作が非ブレーキ操作のとき、スライドカムの作用面の傾斜は最高位であってブレーキ部材は床面から持ち上げられており、ブレーキ操作にすると、スライドカムがスライドして作用面の傾斜が下がり、被作動部材も下がってブレーキ部材はバネの力で床面を押圧している請求項1又は2の運搬車のブレーキ装置。
【請求項4】
ブレーキ部材がローラを回転可能に外嵌する連結軸で連結されて左右に二つあり、スライドカムの作用面がローラに対して下から接触している請求項1〜3いずれかの運搬車のブレーキ装置。
【請求項5】
ペダル軸とブレーキ部材との間に上方に固定歯板が、下方に移動歯板が設けられるとともに、固定歯板と移動歯板との間に両歯板に噛合するピニオンが設けられ、リンクがピニオンに枢着され、移動歯板にスライドカムが連結されている請求項2〜4いずれかの運搬車のブレーキ装置。
【請求項6】
運搬車が台車の上面と床面との間が30mm程度しかない低床型である請求項1〜5いずれかの運搬車のブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に車高の低い(低床型)運搬車のブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運搬車における荷台となる台車は車輪を有しており、運搬車を移動させるには台車を手で押して車輪を回転させて走行する。この場合、特に、積荷の関係で台車の車高を低くしなければならないことがある。人が床面に立った状態で積荷の所定の高さにアプローチしなければならないようなときである。ところで、車輪にはブレーキを掛けたり、外したりすることができるのはもちろんであるが、車輪にブレーキ板のようなものを当ててその回転を止めるような構造のもの(下記特許文献1)では、床面との摩擦抵抗が小さいことから、滑って移動することがある。
【0003】
もっとも確実なブレーキの方法は、下記特許文献2に見られるように、ブレーキ部材を床面に強く押し付けることである。そして、この構造におけるブレーキ部材の押付けはストロークを大きくとり、バネの力によることが好ましい。ブレーキ部材を一定のストロークで機械的に押し出すものでは、ブレーキ部材の押圧面のへたりや摩耗によって十分なブレーキ力が出なかったりするし、仮に床面が凹んだりしているときには、接地しないことがあるからである。このブレーキ構造は上記した低床型の運搬車でも同様である。なお、上記先行例のものは、バネを収容するケースがテレスコピック構造となっており、構造が複雑で横方向に大きなスペースを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−182587号公報
【特許文献2】特開2007−283902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上下方向にスペースが少ない低床型運搬車であっても、簡単な構造で床面に凹部があってもブレーキ部材をバネの力で強く床面に押し付けることができるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、台車に車輪を取り付けた運搬車のブレーキ装置であり、このブレーキ装置が台車と床面との間に設けられるものであって、適宜に操作されてブレーキを作動、非作動させる操作部材と、操作部材の動きに連動してスライドして頂面に傾斜する作用面を有するスライドカムと、バネで下方に付勢されてスライドカムの作用面の作用で昇降するブレーキ部材と、ブレーキ部材に取り付けられてスライドカムの作用面に当接している被作動部材とからなり、操作部材の所定の操作でスライドカムが被作動部材の下動を許容し、ブレーキ部材をバネの力で床面に押し付けることを特徴とする運搬車のブレーキ装置を提供したものである。
【0007】
これにおいて、本発明は、請求項2に記載した、操作部材がペダル軸に固定されて台車の側方に設けられる二つの踏面を有するフットペダルであり、各踏面を踏むとペダル軸を正逆に所定角度回転させるとともに、ペダル軸にレバーが設けられており、レバーがリンクでスライドカムに連結されている構成、請求項3に記載した、操作部材の操作が非ブレーキ操作のとき、スライドカムの作用面の傾斜は最高位であってブレーキ部材は床面から持ち上げられており、ブレーキ操作にすると、スライドカムがスライドして作用面の傾斜が下がり、被作動部材も下がってブレーキ部材はバネの力で床面を押圧している構成、請求項4に記載した、ブレーキ部材がローラを回転可能に外嵌する連結軸で連結されて左右に二つあり、スライドカムの作用面がローラに対して下から接触している構成、請求項5に記載した、ペダル軸とブレーキ部材との間に上方に固定歯板が、下方に移動歯板が設けられるとともに、固定歯板と移動歯板との間に両歯板に噛合するピニオンが設けられ、リンクがピニオンに枢着され、移動歯板にスライドカムが連結されている構成、請求項6に記載した、運搬車が台車の上面と床面との間が30mm程度しかない低床型である構成を提供する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によると、ブレーキ力はブレーキ部材のバネによる床面への押付けであるから、床面に凹み等があっても、ブレーキ部材は床面まで到達して床面を押し付ける。そして、この押付け力はバネの力を強くすることでいくらでも強くすることができる。したがって、積荷の重量が大きい場合であっても確実にブレーキを効かすことができる。また、構成部材が簡単でコストがかからないとともに、上下スペースが狭い低床型の運搬車にも適用できる。
【0009】
請求項2の構成によると、フットペダルの踏面はある程度の面積を確保できるし、請求項4の構成によると、ブレーキ力を高めるとともに、スライドカムの作用力をバランスできる。請求項5の構成によると、所謂、倍速機構を構成しており、スライドカムのストロークはピニオンのストロークの倍となり、スライドカムの傾斜の勾配を緩くできる。特に、バネを強くした場合、非ブレーキ状態にするときに、大きな力を必要とするが、勾配が緩いとその分軽くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ブレーキ装置のブレーキ状態の側面図である。
図2】ブレーキ装置の非ブレーキ状態の側面図である。
図3】ブレーキ装置の平面図である。
図4】ブレーキ部材の横断面図である。
図5】ブレーキ装置のブレーキ状態の他の例を示す側面図である。
図6】ブレーキ装置のブレーキ状態の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1はブレーキ装置のブレーキ状態を示す側面図、図2は非ブレーキ状態を示す側面図、図3はブレーキ装置の平面図であるが、この運搬車は荷物を積む台車1と、台車1の裏面に取り付けられるケース2と、いずれもケース2に収容された床面3を強く押すブレーキ部材4と、ブレーキ部材4を操作する操作部材(本例ではフットペダル5)と、ブレーキ部材4に取り付けた被作動部材(本例ではローラ6)と、ローラ6に下から接触しているスライドカム7と、スライドカム7とフットペダル5の心棒であるペダル軸8に設けられたレバー9とを連結するリンク10等からなる。
【0012】
台車1は文字どおり荷物を積む台板であるが、本例は台車1の上面と床面3とが30mm程度の非常に低床型の運搬車を示している。ブレーキ部材4は下面にゴム等が取り付けられた筒体であり、ケース2内に左右二個が昇降可能に設けられている。また、ブレーキ部材4はバネ11で非常に強い力で下方に付勢されている。フットペダル5はペダル軸8で支えられて二つの踏面5a、5bを有しており、台車1の側方に設けられている。フットペダルの踏面5a、5bを踏むことで正逆に所定角度だけ回転し、踏面5bを踏むとブレーキ状態(図1の状態)になり、踏面5aを踏むと非ブレーキ状態(図2の状態)になる。
【0013】
ブレーキ部材4について若干補足すると、図4は横断面図であるが、ケース2の中には昇降ガイド12で倒れが規制されて昇降する二つのボックス13が幅方向に設けられており、このボックス13の下部にゴム等が取り付けられている。ブレーキ部材4の中心には心棒14が台車1から下方に向けて設けられており、この心棒14の周囲に上記したバネ11がコイル状に嵌合されている。また、左右のボックス13は連結軸15で連結されており、連結軸15の外周に回転可能なローラ6が嵌合され、ローラ6の下面にスライドカム7の頂面の作用面16が接触している。
【0014】
スライドカム7はリンク10でレバー9(フットペダル5)と連結されており、フットペダル5の踏面5aを踏めばスライドカム7の作用面16は最高位になっており、ブレーキ部材4はバネ11の力に抗して上方に上がっている。したがって、非ブレーキ状態となっている。一方、フットペダル5の踏面5bを踏めばリンク10やスライドカム7は図1等で右方に移動し、作用面15の傾斜は下がり、ブレーキ部材4はバネ11の力で下がり、床面3を強く押している。この状態がブレーキ状態であり、運搬車は動かない。また、ブレーキ部材4の下動は許容ストロークを十分にとってあり、バネ11の力によるものであるから、床面3に凹があっても強く押圧する。この場合、ローラ6の両側にブレーキ部材5を設けているから、一つのケース2に二つのブレーキ部材4があることになる。
【0015】
図5は他の例を示す側面図、図6は同じく平面図であるが、本例のものは、フットペダル5とローラ6との間に、倍速機構を設けたものである。具体的には、ケース2内に固定歯板17と移動歯板18を上下に配し、この間に両歯面17、18に噛合するピニオン19を配し、リンク10をピニオン19に枢着し、スライドカム7を移動歯面18に連結したものである(スライドカム7に歯形を形成してもよい)。これによると、スライドカム7のストロークはピニオン19のストロークの倍となるから、作用面16の勾配を緩くでき、ブレーキ部材4を引き上げるときの力がバネ11の力を強くしたとしても、軽い力でできる。
【0016】
ところで、以上のブレーキ構造は一つのセットを構成しており、一つのブレーキセットに二つのブレーキ部材4を配してブレーキの効きを強くしている。また、このブレーキセットは台車1の左右方向(並列)にも前後方向(直列)にも複数設けることができる。前者の場合はペダル軸8を延ばして同様なスライドカム7やブレーキ部材4を配せばよいし、後者の場合はスライドカム7を前後に延長してブレーキ部材4を配せばよい。いずれの場合でも、一つのフットペダル5で操作は可能である。このようにすることで、ブレーキ部材4を2×整数にでき、それだけ強いブレーキ力を得ることができる。台車1のサイズやそれに積む積荷の重量が大きくなると、非常に強いブレーキ力を要求されるから、それに応えられるようにしたものである。なお、場合によっては、ペダル軸8の端部に設けられるフットペダル5を台車1の左右に配してもよい。
【符号の説明】
【0017】
1 台車
2 ケース
3 床面
4 ブレーキ部材
5 操作部材(フットペダル)
5a フットペダルの踏面
5b 〃
6 被作動部材(ローラ)
7 スライドカム
8 ペダル軸
9 レバー
10 リンク
11 バネ
12 昇降ガイド
13 ボックス
14 心棒
15 連結軸
16 作用面
17 固定歯板
18 移動歯板
19 ピニオン
図1
図2
図3
図4
図5
図6