特許第5967689号(P5967689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967689
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】テープタイプ使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/56 20060101AFI20160728BHJP
   A61F 13/62 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   A61F13/56 211
   A61F13/62 110
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-216085(P2011-216085)
(22)【出願日】2011年9月30日
(65)【公開番号】特開2013-74974(P2013-74974A)
(43)【公開日】2013年4月25日
【審査請求日】2014年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】越智 美幸
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−028703(JP,A)
【文献】 特表平10−511575(JP,A)
【文献】 特開2009−241601(JP,A)
【文献】 特開2011−104433(JP,A)
【文献】 実開平06−079721(JP,U)
【文献】 特開平11−299832(JP,A)
【文献】 特開2005−319139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背側の両側部に設けられたファスニングテープが腹側外面に係止されることで装着されるように構成された、テープタイプ使い捨ておむつにおいて、
前記ファスニングテープは、前記背側の両側部に固定されたテープ取付部と、このテープ取付部から突出するテープ本体部とを有し、このテープ本体部に、表面に多数の係止ピンを有するフック材が幅方向に複数並設されるか、又は幅方向に複数のフック材に分割可能なフック材連結体が設けられており、かつ少なくともテープ本体部における前記フック材の間の部分が幅方向に弾性伸縮する伸縮部分とされており、
前記フック材の係止ピンが一部潰され、フック材の係止幅がフック材の幅より狭くされることにより、前記ファスニングテープの先端側に向かうにつれて段階的又は連続的に各フック材の前記幅方向の係止幅が広くなっており、かつそれにより、前記ファスニングテープの先端側に向かうにつれて段階的又は連続的に各フック材の係止力が強くなっているものである、
ことを特徴とするテープタイプ使い捨ておむつ。
【請求項2】
各フック材は縦に細長い形状を有している、請求項1記載のテープタイプ使い捨ておむつ。
【請求項3】
テープ取付部及び前記テープ本体部は、幅方向に1.5〜3.0倍に伸長可能で、かつ1.5倍まで伸長する際に要する引張強さが1.0〜7.0N/50mmの伸縮不織布により形成されている、請求項1又は2記載のテープタイプ使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記テープ本体部の先端部は、前記フック材が設けられておらず、かつ前記伸縮部分よりも伸縮し難い低伸縮部分とされている、請求項3記載のテープタイプ使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記テープ取付部の少なくとも一部は、前記伸縮部分よりも伸縮し難い低伸縮部分とされている、請求項3記載のテープタイプ使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記テープ本体部のウエスト側縁部、股間側縁部及びこれらの間の中間部のうち、中間部に前記フック材が設けられ、ウエスト側縁部及び股間側縁部には前記フック材が設けられておらず、かつウエスト側縁部及び股間側縁部は前記伸縮部分よりも伸縮し難い低伸縮部分とされている、請求項3記載のテープタイプ使い捨ておむつ。
【請求項7】
前記フック材は、前記テープ本体部におけるウエスト側の端から股間側の端まで延在している、請求項1〜5のいずれか1項に記載のテープタイプ使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープタイプ使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なテープタイプ使い捨ておむつは、背側の両側部にファスニングテープがそれぞれ設けられるとともに、腹側外面にターゲットテープが設けられており、ファスニングテープをターゲットテープに係止することで装着を行うものである(例えば特許文献1参照)。ファスニングテープには、腹側外面に対する係止手段として、粘着剤を用いるものもあるが、粘着剤は係止力が弱く、繰り返して係止すると粘着力が低下するため、現在ではメカニカルファスナー(面ファスナー)のフック材(オス材)を用いることが多くなっている。フック材は、シート状の基部の表面にJ字状やキノコ状の係止ピンが多数形成されているものであり、全体が樹脂で形成されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010−540125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フック材は特に硬質な部材であり、このような硬質な部材が装着状態でおむつの腹側の両側部のうちのある程度の領域を占めると、その領域が硬質部分となり、身体表面の曲面に追従変形できずに装着者の肌に硬く当たり、装着感が悪化したり、肌が赤くなったりするおそれがある。特にファスニングテープのフック材の係止位置には、上前腸骨棘及び腸骨稜により形成される膨らみが位置することが多く、このこともフック材の硬質な装着感を助長する一因となっている。
【0005】
この問題点は、フック材の面積を小さくすることにより解決することができるが、その場合、係止力が低下してしまう。
そこで、本発明の主たる課題は、係止力を損ねずに、フック材に起因する硬質な装着感を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
背側の両側部に設けられたファスニングテープが腹側外面に係止されることで装着されるように構成された、テープタイプ使い捨ておむつにおいて、
前記ファスニングテープは、前記背側の両側部に固定されたテープ取付部と、このテープ取付部から突出するテープ本体部とを有し、このテープ本体部に、表面に多数の係止ピンを有するフック材が幅方向に複数並設されるか、又は幅方向に複数のフック材に分割可能なフック材連結体が設けられており、かつ少なくともテープ本体部における前記フック材の間の部分が幅方向に弾性伸縮する伸縮部分とされており、
前記フック材の係止ピンが一部潰され、フック材の係止幅がフック材の幅より狭くされることにより、前記ファスニングテープの先端側に向かうにつれて段階的又は連続的に各フック材の前記幅方向の係止幅が広くなっており、かつそれにより、前記ファスニングテープの先端側に向かうにつれて段階的又は連続的に各フック材の係止力が強くなっているものである、
ことを特徴とするテープタイプ使い捨ておむつ。
【0007】
(作用効果)
本発明のファスニングテープは、先端部を摘まんで引張ると、伸縮部分が伸長してフック材間の間隔が広がるため、このフック材間隔を広げた状態で腹側外面に係止することができる。よって、全体としての係止面積を維持しつつ、個々のフック材の面積を小さくすることができるため、係止力を損ねることなく、フック材に起因する硬質な装着感を軽減することができる。特に、フック材の間の部分が伸縮するため、単に複数のフック材を設けるのとは異なり、各フック材が腹側外面に対してより深くしっかりと食い付き、かえって係止力は非常に高いものとなる。さらに、フック材の間の部分は柔軟な伸縮部分となるため、単に複数のフック材を設けるのとは異なり、身体表面の凹凸に対する追従性が顕著に向上し、例えば捻じれや曲りに対しても良好に追従する。
また、本発明のファスニングテープは、伸長状態で係止されることから、先端側ほど剥がれやすい。よって、このようにファスニングテープの先端側に向かうにつれて段階的又は連続的に各フック材の係止力を強くするのが好ましい。この場合、ファスニングテープの先端側に向かうにつれて段階的又は連続的に各フック材の係止力を強くするために、フック材の係止ピン形状、数等を異ならすこともできるが、異なる仕様のフック材を使用するとコストが嵩む。そこで、上述のように、各フック材の係止幅を異ならしめることによって、ファスニングテープの先端側に向かうにつれて段階的又は連続的に各フック材の係止力を強くするのは好ましい。
特に、各フック材の係止幅を異ならしめるために、幅の異なるフック材を貼り付ける形態を採用すると製造が困難となるため、フック材の係止ピンを一部潰して、フック材の係止幅をフック材の幅より狭くすることによって、ファスニングテープの先端側に向かうにつれて段階的又は連続的に各フック材の係止力を強くするのは好ましい。
【0008】
<請求項2記載の発明>
各フック材は縦に細長い形状を有している、請求項1記載のテープタイプ使い捨ておむつ。
【0009】
(作用効果)
このように各フック材を縦に細長い形状とすることにより、フック材の数を多くできるだけでなく、フック材を有する部分の追従変形性に優れるようになる。
【0010】
<請求項3記載の発明>
テープ取付部及び前記テープ本体部は、幅方向に1.5〜3.0倍に伸長可能で、かつ1.5倍まで伸長する際に要する引張強さが1.0〜7.0N/50mmの伸縮不織布により形成されている、請求項1又は2記載のテープタイプ使い捨ておむつ。
【0011】
(作用効果)
伸縮部分はどのような素材・構造で形成しても良いが、テープ取付部及び前記テープ本体部が伸縮不織布からなる構造とすると、素材変更だけで伸縮部分を構成することができるため好ましい。
【0012】
<請求項4記載の発明>
前記テープ本体部の先端部は、前記フック材が設けられておらず、かつ前記伸縮部分よりも伸縮し難い低伸縮部分とされている、請求項3記載のテープタイプ使い捨ておむつ。
【0013】
(作用効果)
ファスニングテープは使用時に先端部を摘まんで引っ張ることが一般的であり、テープ本体部が伸縮不織布からなる場合、そのままでは摘み部分が伸縮することになり、つまみ難いおそれがある。よって、上述のように低伸縮部分を設けて摘み易くするのは好ましい。
【0014】
<請求項5記載の発明>
前記テープ取付部の少なくとも一部は、前記伸縮部分よりも伸縮し難い低伸縮部分とされている、請求項3記載のテープタイプ使い捨ておむつ。
【0015】
(作用効果)
テープ取付部が伸縮不織布からなる場合、そのままではテープの取付強度が低下し、破断するおそれがあるため、上述のように低伸縮部分を設けてテープの取付強度を高めるのは好ましい。
【0016】
<請求項6記載の発明>
前記テープ本体部のウエスト側縁部、股間側縁部及びこれらの間の中間部のうち、中間部に前記フック材が設けられ、ウエスト側縁部及び股間側縁部には前記フック材が設けられておらず、かつウエスト側縁部及び股間側縁部は前記伸縮部分よりも伸縮し難い低伸縮部分とされている、請求項3記載のテープタイプ使い捨ておむつ。
【0017】
(作用効果)
ファスニングテープは、フック材がテープ本体部の上下縁(ウエスト側及び股間側の端)まで存在しているものが一般的である。しかしながら、この従来一般的なものでは、フック材を有する部分ではファスニングテープの縁部まで非常に硬く、ファスニングテープの縁に肌が触れるとフック材の角や縁が当たってチクチクしたり、肌を傷付けたりするおそれがある。よって、テープ本体部のウエスト側縁部、股間側縁部及びこれらの間の中間部のうち、中間部に前記フック材を設け、ウエスト側縁部及び股間側縁部にはフック材は設けずに、フック材の角や縁の当たりを防止するのが好ましい。ただし、この場合、テープ本体部のウエスト側縁部及び股間側縁部と中間部とでは、フック材の有無により伸縮性が異なり、フック材の係止が不十分となるおそれがあるため、上述のようにウエスト側縁部及び股間側縁部を低伸縮部分とするのが好ましい。
【0018】
<請求項7記載の発明>
前記フック材は、前記テープ本体部におけるウエスト側の端から股間側の端まで延在している、請求項1〜5のいずれか1項に記載のテープタイプ使い捨ておむつ。
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【発明の効果】
【0024】
以上のとおり、本発明によれば、係止力が損なわれず、フック材に起因する硬質な装着感も軽減される、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】テープタイプ使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
図2】テープタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
図3図1の6−6線断面図である。
図4図1の7−7線断面図である。
図5図1の8−8線断面図である。
図6図1の9−9線断面図である。
図7図1の5−5線断面図である。
図8】ファスニングテープの(a)非伸長状態、(b)伸長状態を示す平面図である。
図9】伸長状態のファスニングテープの平面図である。
図10】伸長状態のファスニングテープの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。
<吸収性物品の例>
図1図7はテープタイプ使い捨ておむつの一例を示しており、図中の符号Xはファスニングテープを除いたおむつの全幅を示しており、符号Lはおむつの全長を示しており、断面図中の点模様部分はホットメルト接着剤の塗布部分を示している。
【0027】
このテープタイプ使い捨ておむつは、幅方向中央に沿って下腹部から股間部を通り臀部までを覆うように延在する部分であって、且つ身体側表面を形成する透液性トップシートと、外面側に位置する液不透過性シートとの間に吸収要素50が介在する部分である吸収性本体部10と、この吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収要素50を有しない部分である腹側エンドフラップ部EF及び背側エンドフラップ部EFとを有するものである。
【0028】
また、このテープタイプ使い捨ておむつは、吸収体の側縁よりも側方に延出する一対のサイドフラップ部SF,SFを有しており、背側におけるサイドフラップ部SF,SFにはファスニングテープ13がそれぞれ設けられている。
【0029】
より詳細には、吸収性本体部10ならびに各サイドフラップ部SF,SFの外面全体が外装シート12により形成されている。特に、吸収性本体部10においては、外装シート12の内面側に液不透過性シート11がホットメルト接着剤等の接着剤により固定され、さらにこの液不透過性シート11の内面側に吸収要素50、中間シート40、およびトップシート30がこの順に積層されている。トップシート30および液不透過性シート11は図示例では長方形であり、吸収要素50よりも前後方向および幅方向において若干大きい寸法を有しており、トップシート30における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部と、液不透過性シート11における吸収要素50の側縁より食み出る周縁部とがホットメルト接着剤などにより固着されている。また液不透過性シート11は透湿性のポリエチレンフィルム等からなり、トップシート30よりも若干幅広に形成されている。
【0030】
さらに、この吸収性本体部10の両側には、装着者の肌側に突出(起立)する側部立体ギャザー60,60が設けられており、この側部立体ギャザー60,60を形成するギャザーシート62,62が、トップシート30の両側部上から各サイドフラップ部SF,SFの内面までの範囲に固着されている。
【0031】
以下、各部の素材および特徴部分について順に説明する。
(外装シート)
外装シート12は吸収要素50を支持し、着用者に装着するための部分である。外装シート12は、両側部の前後方向中央部が括れた砂時計形状とされており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。
外装シート12としては不織布が好適であるが、これに限定されない。不織布の種類は特に限定されず、素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布12相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10〜50g/m2、特に15〜30g/m2のものが望ましい。
【0032】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に液不透過性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この液不透過性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
【0033】
(トップシート)
トップシート30は液透過性を有するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを用いることができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0034】
(中間シート)
トップシート30を透過した排泄物を吸収体へ移動させ、逆戻りを防ぐために、トップシート30と吸収要素50との間に中間シート(セカンドシートもいわれる)40を設けることができる。この中間シート40は、排泄物を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した排泄物の吸収体からの逆戻りを防止し、トップシート30表面を肌触りを良くするものである。中間シート40は省略することもできる。
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材を用いることができる。中間シート40はトップシート30に接合するのが好ましく、その接合にヒートエンボスや超音波溶着を用いる場合は、中間シート40の素材はトップシート30と同程度の融点をもつものが好ましい。また、便中の固形分を透過させることを考慮するならば中間シート40に用いる繊維の繊度は5.0〜7.0dtexであるのが好ましいが、トップシート30における液残りが多くなる。これに対して、中間シート40に用いる繊維の繊度が1.0〜2.0dtexであると、トップシート30の液残りは発生し難いが、便の固形分が透過し難くなる。よって、中間シート40に用いる不織布の繊維は繊度が2.0〜5.0dtex程度とするのが好ましい。
図示の形態の中間シート40は、吸収要素50の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0035】
(側部立体ギャザー)
トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために、製品の両側に、使用面側に突出(起立)する側部立体ギャザー60、60を設けるのは好ましい。
この側部立体ギャザー60は、実質的に幅方向に連続するギャザーシート62と、このギャザーシート62に前後方向に沿って伸張状態で固定された細長状弾性伸縮部材63とにより構成されている。このギャザーシート62としては撥水性不織布を用いることができ、また弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。弾性伸縮部材は、図1及び図2に示すように各複数本設ける他、各1本設けることができる。
ギャザーシート62の内面は、トップシート30の側部上に幅方向の固着始端を有し、この固着始端から幅方向外側の部分は、液不透過性シート11の側部およびその幅方向外側に位置する外装シート12の側部にホットメルト接着剤などにより固着されている。この固着部分のうち固着始端近傍の幅方向外側において、ギャザーシート62と外装シート12とが対向する部分のシート間に、前後方向に沿って糸ゴム等からなる脚周り弾性伸縮部材64がそれぞれ設けられている。
脚周りにおいては、側部立体ギャザー60の固着始端より幅方向内側は、製品前後方向両端部ではトップシート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が糸ゴム63の収縮力により起立するようになる。おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして糸ゴム63の収縮力が作用するので、糸ゴム63の収縮力により側部立体ギャザー60が起立して脚周りに密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
図示形態と異なり、ギャザーシート62の幅方向内側の部分における前後方向両端部を、幅方向外側の部分から幅方向内側に延在する基端側部分とこの基端側部分の幅方向中央側の端縁から身体側に折り返され幅方向外側に延在する先端側部分とを有する二つ折り状態で固定し、その間の部分を非固定の自由部分とすることもできる。
【0036】
(吸収要素)
吸収要素50は、尿や軟便などの液を吸収保持する部分である。吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包装シート58とを有している。包装シート58は省略することもできる。吸収要素50は、その裏面においてホットメルト接着剤等の接着剤を介して液不透過性シート11の内面に接着することができる。
【0037】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。
【0038】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56は、高吸収性ポリマー粒子を含むのが好ましく、特に、少なくとも液受け入れ領域において、繊維の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。
吸収体56の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、繊維の集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が繊維の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が繊維の集合体を通り抜けて包装シート58上にある形態も排除されるものではない。
高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0039】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。繊維目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
この包装シート58は、図3に示すように、吸収体56の全体を包む形態のほか、その層の裏面及び側面のみを包装するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包装シートの構成要素となる)。必要ならば、吸収体56を、上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよいが、高吸収性ポリマー粒子の移動を防止でき難いので望ましい形態ではない。
【0040】
(ファスニングテープ)
図1図2及び図7に示されるように、端部がテープ取付部13Cとしておむつに取り付けられており、おむつ側縁から突出する先端側部分であるテープ本体部13Bには腹側に対する係止部として、メカニカルファスナーのフック材13Aが設けられている。ファスニングテープ13のテープ取付部13Cは、サイドフラップ部SFにおける内側層をなすギャザーシート62及び外側層をなす外装シート12間に挟まれ、かつホットメルト接着剤により両シート62,30に接着されている。また、フック材13Aはシート基材13Cに接着剤により通常は剥離しないように接合されている。
【0041】
フック材13Aは、その外面側に多数の係止ピン(突起)を有する。係止ピンの形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。
【0042】
乳幼児用おむつにおいては、テープ取付部13Cの寸法のうち、おむつの幅方向の長さX1は10〜50mm、特に20〜40mmであるのが好ましく、前後方向長さY1は、20〜100mm、特に40〜80mmであるのが好ましい。また、テープ本体部13Bの寸法のうち、おむつの幅方向の長さは30〜80mm、特に40〜60mmであるのが好ましく、前後方向の長さ(高さ)は20〜70mm、特に25〜50mmであるのが好ましい。なお、ファスニングテープ13の一部または全部が例えば略テーパ形状をなし、前後方向長さや幅方向長さが一定でない場合は、上記数値範囲は平均値にて定める。ファスニングテープ13の形状は、矩形形状などの左右対称形状でもよいが、幅広の取り付け部分と細長状の先端側部分からなる凸型形状であると、先端側部分の摘み部が摘みやすく、かつ左右の基部間の張力が広範囲に作用するため、好ましい。
【0043】
ファスニングテープ13は、背側のエンドフラップ部EFと吸収要素50の境界線上にファスニングテープ13のテープ取付部13Cが重なるように取り付けられていると、おむつ装着時に左右のファスニングテープ13の取り付け部分間に働く張力により、吸収要素50の背側端部がしっかりと体に押し当てられるため、好ましい。また、ファスニングテープ13の取り付け部分が、おむつの背側端部(後端部)と離れすぎていると、おむつ装着時に左右のファスニングテープ13のテープ取付部13C間に働く張力がおむつの背側端部にまで及ばないため、おむつの背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすい。従って、背側のエンドフラップ部EFの前後方向長さは、ファスニングテープ13のテープ取付部13Cの前後方向長さと同じか又は短いことが好ましい。
【0044】
特徴的には、図7及び図8に示すように、各ファスニングテープ13のテープ本体部13Bに、表面に多数の係止ピンを有するフック材13Aが幅方向に複数並設されており(図示しないが、ミシン目や薄肉線等により幅方向に複数のフック材13Aに分割可能なフック材連結体を一つ設ける形態でも良い)、かつテープ本体部13Bにおけるフック材13Aの間の部分、及びフック材13Aを有する部分の先端側及び基端側(換言すれば、テープ本体部におけるフック材が固定されていない部分の全体)が幅方向に弾性伸縮する伸縮部分とされている。伸縮部分はフック材13Aの間の部分だけでも良い。
【0045】
おむつの装着に際しては、背側のサイドフラップ部SFを腹側のサイドフラップ部SFの外側に重ねた状態で、ファスニングテープ13の先端部を摘まんで引張り、腹側F外面の適所に係止する。この際、ファスニングテープ13は、図8(a)に示す自然長の状態から図8(b)に示すように伸縮部分が伸長してフック材13A間の間隔が広がるため、このフック材13A間隔を広げた状態で腹側外面に係止することができる。よって、全体としての係止面積を維持しつつ、個々のフック材13Aの面積を小さくすることができるため、係止力を損ねることなく、フック材13Aに起因する硬質な装着感を軽減することができる。特に、フック材13Aの間の部分が伸縮するため、単に複数のフック材13Aを設けるのとは異なり、各フック材13Aが腹側外面に対してより深くしっかりと食い付き、かえって係止力は非常に高いものとなる。さらに、フック材13Aの間の部分は柔軟な伸縮部分となるため、単に複数のフック材13Aを設けるのとは異なり、身体表面の凹凸に対する追従性が顕著に向上し、例えば捻じれや曲りに対しても良好に追従する。
【0046】
各フック材13Aの寸法・形状は適宜定めるこができるが、縦に細長い形状を有していると、フック材13Aの数を多くできるだけでなく、フック材13Aを有する部分の追従変形性に優れるようになる。ただし、過度に細くなると係止力が低下するため、幅(おむつ幅方向の長さ)は2mm以上とするのが望ましく、通常の場合3〜6mm程度が望ましい。また、細いフック材13Aは、テープ本体部13Bに対する固定力も低下するため、各フック材13A及びテープ本体部13Bを重ねた状態で縦方向両端部にピンエンボス加工(加熱針を厚み方向に刺して溶着する加工)を施し、補強するのが好ましい。図中の符合19は、ピンエンボス加工により形成された孔を示している。
隣接するフック材13Aの間隔(おむつ幅方向)は、適宜定めることができるが、通常の場合0〜5mm程度が望ましく、特に0〜3mm程度が望ましい。
【0047】
伸縮部分は、どのような素材・構造で形成しても良く、例えばファスニングテープ13のうちテープ本体部13Bのフック材13Aを有する領域と他の領域とを別々の素材で形成しても良いが、ファスニングテープ13の基材、すなわちテープ取付部13C及びテープ本体部13Bを伸縮不織布からなる構造とすると、素材変更だけで伸縮部分を構成することができるため好ましい。伸縮不織布の伸縮性は適宜定めることができるが、幅方向に1.5〜3.0倍に伸長可能で、かつ1.5倍まで伸長する際にする引張強さが1.0〜7.0N/50mmの程度のものが好適である。伸縮不織布としては、例えば目付け20〜100g/m2、厚み1mm以下の、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布等を用いることができる。もちろん、ゴムシートや、二枚の不織布間に糸ゴム等の細長状弾性伸縮部材を伸長状態で挟んでホットメルト接着剤により固定したものを用いることもできる。
【0048】
ファスニングテープ13の先端部は、摘みとして機能するようにフック材13Aを設けないのが好ましい。しかし、テープ本体部13Bが伸縮不織布からなる場合、そのままでは摘み部分が伸縮することになり、つまみ難いおそれがある。よって、図8に示すように、テープ本体部13Bの先端部は、伸縮部分よりも伸縮し難い先端低伸縮部分14とし、摘み易くするのが好ましい。先端低伸縮部分14の幅は、ファスニングテープ13の幅の4%〜25%程度が好ましい。
【0049】
また、テープ取付部13Cが伸縮不織布からなる場合、そのままではファスニングテープ13の取付強度が低下し、破断するおそれがある。よって、図8に示すように、テープ取付部13Cの少なくとも一部、特に幅方向中央側の部分を、伸縮部分よりも伸縮し難い取付部低伸縮部分15とし、ファスニングテープ13の取付強度を高めるのは好ましい。取付部低伸縮部分15の幅は、ファスニングテープ13の幅の7%〜40%程度が好ましい。
【0050】
さらにまた、ファスニングテープ13は、図9に示すように、テープ本体部13Bのウエスト側縁部、股間側縁部及びこれらの間の中間部のうち、中間部に前記フック材13Aを設け、ウエスト側縁部及び股間側縁部にはフック材13Aは設けずにおくことで、フック材13Aの角や縁が直接又は間接的に肌に当たるのを防止することができるが、その場合、テープ本体部13Bのウエスト側縁部及び股間側縁部と中間部とでは、フック材13Aの有無により伸縮性が異なり、フック材13Aの係止が不十分となるおそれがあるため、ウエスト側縁部及び股間側縁部を伸縮部分よりも伸縮し難い縁部低伸縮部分16とするのが好ましい。縁部低伸縮部分16の長さは、フック材13Aの長さの5%〜17%程度が好ましい。
【0051】
これらの低伸縮部分14〜16は、例えば伸縮部分よりも伸縮し難い低伸縮シート14Sを貼り付けることにより形成することができる。ただし、この場合における低伸縮シート14Sとしては、目付けは、20〜70g/m2程度で、フック材13Aよりも柔軟なものが好ましい。また、低伸縮部分14〜16は、上述の伸縮不織布等の伸縮素材を加熱加工により部分的に硬化させることによって形成することもできる。加熱加工としては、例えばヒートエンボスや超音波加熱等の接触加熱加工や、熱風加工等の非接触加熱加工を例示することができる。加熱加工は、アウトラインでもインラインでも加工でき、おむつ完成状態でも、製造途中でも加工できるため、製造の自由度及び容易性の点で優れたものとなる。低伸縮部分14〜16の伸縮性は、幅方向に1.3倍までとするのが好ましい。
【0052】
他方、ファスニングテープ13は、伸長状態で係止されることから、先端側ほど剥がれやすい。よって、このようにファスニングテープ13の先端側に向かうにつれて段階的又は連続的に各フック材13Aの係止力を強くするのが好ましい。この場合、フック材13Aの係止ピン形状、数等を異ならす(先端側に向かうにつれて段階的又は連続的に、係止ピンの数が多いフック材13Aを設ける、係止ピンの小さいフック材13Aを設ける、又はこれらを組み合わせる)こともできるが、異なる仕様のフック材13Aを使用するとコストが嵩む。そこで、図10(a)に示すように、各フック材13Aの幅を異ならしめることによって、ファスニングテープ13の先端側に向かうにつれて段階的又は連続的に各フック材13Aの係止力を強くする(係止幅を広げる)のは一つの好ましい形態である。なお、この形態は、各フック材13Aを同じものとする場合に好適であるが、フック材13Aの係止ピン形状、数等が異なる形態に適用しても良い。
【0053】
ただし、この図10(a)に示す形態では、幅の異なるフック材13Aを貼り付ける形態を採用すると製造が困難となるため、図10(b)に示すように、フック材13Aの係止ピンを一部潰して、フック材13Aの係止幅をフック材13Aの幅より狭くすることによって、ファスニングテープ13の先端側に向かうにつれて段階的又は連続的に各フック材13Aの係止力を強くするのは好ましい。図中の符号13Dは係止ピンを潰した部分を示している。なお、この形態は、各フック材13Aを同じ種類、同じ幅とする場合に好適であるが、フック材13Aの係止ピン形状、数等が異なる形態や、各フック材13Aの幅が異なる形態に適用しても良い。
【0054】
(ターゲットシート)
ファスニングテープ13の係止箇所の位置及び寸法は任意に定めることができる。乳幼児用おむつにおいては、係止箇所は、前後方向20〜80mm、幅方向150〜300mmの矩形範囲とし、その上端縁と腹側上縁との高さ方向離間距離を0〜60mm、特に20〜50mmとし、かつ製品の幅方向中央とするのが好ましい。
腹側Fにおけるファスニングテープ13の係止箇所には、係止を容易にするためのターゲット有するターゲットシート12Tを設けるのが好ましい。ターゲットシート12Tは、フック材13Aの係止ピンが絡まるようなループ糸がプラスチックフィルムや不織布からなるシート基材の表面に多数設けられたものを用いることができる。また、腹側Fにおけるファスニングテープ13の係止箇所が不織布からなる場合、例えば図示形態の外装シート12が不織布からなる場合には、ターゲットシート12Tを省略し、フック材13Aを外装シート12の不織布に絡ませて係止することもできる。この場合、ターゲットシート12Tを外装シート12と液不透過性シート11との間に設けてもよい。
【0055】
(エンドフラップ部)
エンドフラップ部は、吸収性本体部10の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ吸収要素50を有しない部分であり、前側の延出部分が腹側エンドフラップ部FFであり、後側の延出部分が背側エンドフラップ部EFである。
背側エンドフラップEFの前後方向長さは、前述の理由によりファスニングテープ13の取り付け部分の前後方向長さと同じか短い寸法とすることが好ましく、また、おむつ背側端部と吸収要素50とが近接しすぎると、吸収要素50の厚みとコシによりおむつ背側端部と身体表面との間に隙間が生じやすいため、10mm以上とすることが好ましい。
腹側エンドフラップ部EF及び背側エンドフラップ部EFの前後方向長さは、おむつ全体の前後方向長さLの5〜20%程度とするのが好ましく、乳幼児用おむつにおいては、10〜60mm、特に20〜50mmとするのが適当である。
【0056】
(背側伸縮シート)
図示形態では、両ファスニングテープ13間に、幅方向に弾性伸縮する帯状の背側伸縮シート70が設けられ、おむつ背側部におけるフィット性を向上させている。背側伸縮シート70の両端部は両ファスニングテープ13の取り付け部分と重なる部位まで延在されているのが好ましいが、幅方向中央側に離間していても良い。背側伸縮シート70の前後方向寸法は、ファスニングテープ13の取り付け部分の前後方向寸法と概ね同じにするのが適当であるが、±20%程度の寸法差はあってもよい。また、図示のように背側伸縮シート70が背側エンドフラップ部EFと吸収要素50の境界線と重なるように配置されていると、吸収要素50の背側端部がしっかりと体に押し当てられるため、好ましい。背側伸縮シート70は、ゴムシート等のシート状弾性部材を用いても良いが、通気性の観点から不織布や紙を用いるのが好ましい。この場合、伸縮不織布のような通気性を有するシート状弾性部材を用いることもできるが、図5に示すように、二枚の不織布等のシート基材71をホットメルト接着剤等の接着剤により張り合わせるとともに、両シート基材71間に有孔のシート状、網状、細長状(糸状又は紐状等)等の弾性伸縮部材72を幅方向に沿って伸張した状態で固定したものが好適に用いられる。この場合におけるシート基材71としては、外装シート12と同様のものを用いることができる。弾性伸縮部材72の伸張率は150〜250%程度であるのが好ましい。また、弾性伸縮部材72として細長状(糸状又は紐状等)のものを用いる場合、太さ420〜1120dtexのものを3〜10mmの間隔72dで5〜15本程度設けるのが好ましい。
【0057】
また、図示のように弾性伸縮部材72の一部が吸収要素50を横断するように配置すると、吸収要素50のフィット性が向上するため好ましいが、この場合は、弾性伸縮部材72が吸収要素50と重なる部分の一部又は全部を、切断等の手段により収縮力が働かないようにすると、吸収要素50の背側端部が幅方向に縮まないため、フィット性がさらに向上する。
【0058】
なお、弾性伸縮部材72は、シートの長手方向(おむつの幅方向)にシート基材71の全長にわたって固定されていてもよいが、おむつ本体への取り付け時の縮みやめくれ防止のため、シートの前後方向(おむつの幅方向)端部の5〜20mm程度の範囲においては、収縮力が働かないように、または弾性伸縮部材72が存在しないようにするとよい。
【0059】
背側伸縮シート70は、図示形態では、液不透過性シート11の幅方向両側ではギャザーシート62と外装シート12との間に挟まれ、且つ液不透過性シート11と重なる部位では、液不透過性シート11と吸収要素50との間に挟まれるように設けられているが、液不透過性シート11と外装シート12との間に設けても良いし、外装シート12の外面に設けても良く、またトップシート30と吸収要素50との間に設けてもよい。また、背側伸縮シート70はトップシート30の上に設けても良く、この場合、液不透過性シート11の幅方向両側ではギャザーシート62の上に設けても良い。また、外装シート12を複数枚のシート基材を重ねて形成する場合には、背側伸縮シート70全体を、外装シート12のシート基材間に設けても良い。
【0060】
<用語の説明>
用語「前後方向(縦方向)」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味し、「上下方向」とはおむつの装着状態、すなわちおむつの腹側部分と背側部分を重ね合わせるようにおむつを股間部で2つに折った際に幅方向と直交する方向を意味する。
また、用語「伸長率」は自然長を100%としたときの値を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、テープタイプ使い捨ておむつに利用可能なものである。
【符号の説明】
【0062】
11…液不透過性シート、12…外装シート、12T…ターゲットシート、13…ファスニングテープ、13A…フック材、13B…テープ本体部、13C…テープ取付部、14S…低伸縮シート、14…先端低伸縮部分、15…取付部低伸縮部分、16…縁部低伸縮部分、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、56…吸収体、58…包装シート、60…側部立体ギャザー、62…ギャザーシート、70…背側伸縮シート。
図1
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図10