特許第5967712号(P5967712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967712
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】ブロー成形装置のダイヘッド構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/22 20060101AFI20160728BHJP
   B29C 49/42 20060101ALI20160728BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20160728BHJP
   B29C 47/28 20060101ALN20160728BHJP
【FI】
   B29C49/22
   B29C49/42
   B29C49/04
   !B29C47/28
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-260811(P2012-260811)
(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-104692(P2014-104692A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(73)【特許権者】
【識別番号】000136723
【氏名又は名称】株式会社プラコー
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕児
(72)【発明者】
【氏名】松浦 邦男
(72)【発明者】
【氏名】濱田 隆
(72)【発明者】
【氏名】今井 隆
(72)【発明者】
【氏名】青木 和義
(72)【発明者】
【氏名】武石 淳
【審査官】 向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−099475(JP,A)
【文献】 特開平08−300408(JP,A)
【文献】 特開2000−141450(JP,A)
【文献】 特開2000−006200(JP,A)
【文献】 特表平05−509048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00〜49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクを成形するブロー成形装置の多層構成のパリソンを押出すダイヘッド構造において、
該ダイヘッドは、多層構成のパリソンの各層の材料を押出すダイが層の数と同じ数を縦方向に積層し、上記ダイヘッドの中心部に各ダイから流入する各層の材料が合体した上記パリソンが流下するとともに、上記各ダイを上下方向に連通するパリソン流路を形成し、
上記各ダイには、それぞれの側面からパリソンの各層のそれぞれの材料を注入して、上記パリソン流路にパリソンの各層の材料を押出す材料流路を形成し、
上記ダイヘッドの内部に冷却媒体の流路を形成し、
上記多層構成のパリソンは、接着剤層を2層含み、上記ダイヘッドは、上記2層の接着剤層を形成する2個の接着剤層ダイを有し、該2個の接着剤層ダイは1台の押出成形機から分流機を経由して接着剤が供給され、上記2個の接着剤層ダイへの接着剤の供給は、上記分流機で制御されることを特徴とするブロー成形装置のダイヘッド構造。
【請求項2】
上記冷却媒体の流路は、多層構成の上記ダイとダイとのそれぞれの積層面に形成した請求項1に記載のブロー成形装置のダイヘッド構造。
【請求項3】
上記冷却媒体の流路を構成する各ダイの表面には、表面積を増加させるための凹凸が形成された請求項2に記載のブロー成形装置のダイヘッド構造。
【請求項4】
上記冷却媒体の流路は、冷却媒体の流入路と排出路が対向せずに形成された請求項2に記載のブロー成形装置のダイヘッド構造。
【請求項5】
上記接着剤の供給量の制御は、上記分流路の温度と流路径の制御で行う請求項1に記載のブロー成形装置のダイヘッド構造。
【請求項6】
上記ダイヘッドは、側面及び、又は上下面にヒータが取付けられた請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のブロー成形装置のダイヘッド構造。
【請求項7】
上記ダイヘッドは、積層された各ダイを連結ボルトと皿バネを介してナットで締め付けた請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のブロー成形装置のダイヘッド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクを成形するブロー成形装置の多層構成のパリソンを押出すダイヘッド構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用の燃料タンク等の合成樹脂製のタンクを成形するものとして、中空体を成形することの容易性からブロー成形方法が多く用いられてきた。
このブロー成形において、燃料タンクが耐ガス透過性や耐燃料油性を必要とするため多層パリソンが使用されている。図11に示すように、多層パリソンを押出するダイヘッド110は、多層用の環状ノズル111をもった多層リング112を使用している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この場合には、図12に示すように、多層パリソン101を押出するために同心円状に多数の材料流路120を有するダイヘッド110が使用され、各材料流路120には、それぞれ押出成形機140が取付けられている。
例えば、図13に示すように、それぞれ押出成形機140は、6層から構成される多層パリソン101の内層側から順に、内部本体層押出機141、内側接着剤層押出機142、バリヤ層押出機143、外側接着剤層押出機144、外部本体層押出機145、表皮層押出機146の6台の押出成形機を使用している。
このため、成形装置全体が大きくなり、膨大なスペースが必要となる。
【0004】
また、ダイヘッド110自体も、同心円状に多層パリソン101の層の数だけ材料流路120を形成する必要があるため、径方向にも大きくなるとともに、材料流路120がダイヘッド110の上方からノズル160まで流路が長くなっている。
そのため、ダイヘッド110の体積が大きくなり、ダイヘッド110を加熱したり冷却したりするときに時間がかかり、エネルギロスも大きくなる。
【0005】
さらに、材料流路120が長くなるため、多層パリソン101を構成する材料が材料流路120に滞留する材料も多く、多層パリソン101の押出を止めた場合には、材料が熱劣化を起こす場合がある。
また、図14に示すように、ダイヘッド110を加熱するときに、ダイヘッド110の側面にヒータ170を取付けて行っている。このときヒータ170の熱は、図14の矢印に示すように伝達されるが、材料流路120に熱伝導性の低い合成樹脂が存在するため、ダイヘッド110の加熱と冷却の時間がかかることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−99475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたものであり、パリソンを構成する合成樹脂の劣化が少なく、設備も小型化できるブロー成型機のダイヘッド構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、燃料タンクを成形するブロー成形装置の多層構成のパリソンを押出すダイヘッド構造において、
ダイヘッドは、多層構成のパリソンの各層の材料を押出すダイが層の数と同じ数を縦方向に積層し、ダイヘッドの中心部に各ダイから流入する各層の材料が合体したパリソンが流下するとともに、各ダイを上下方向に連通するパリソン流路を形成し、
各ダイには、それぞれの側面からパリソンの各層のそれぞれの材料を注入して、パリソン流路にパリソンの各層の材料を押出す材料流路を形成し、
ダイヘッドの内部に冷却媒体の流路を形成し、
多層構成のパリソンは、接着剤層を2層含み、ダイヘッドは、2層の接着剤層を形成する2個の接着剤層ダイを有し、2個の接着剤層ダイは1台の押出成形機から分流機を経由して接着剤が供給され、2個の接着剤層ダイへの接着剤の供給は、分流機で制御されることを特徴とするブロー成形装置のダイヘッド構造である。
【0009】
請求項1の本発明では、ダイヘッドは、多層構成のパリソンの各層の材料を押出すダイが層の数と同じ数を縦方向に積層し、ダイヘッドの中心部に各ダイから流入する各層の材料が合体したパリソンが流下するとともに、各ダイを上下方向に連通するパリソン流路を形成している。このため、ダイヘッドに同心円状の材料流路を多数形成する必要がなく、ダイヘッドの体積を小さくすることができるため、ダイヘッドの加熱と冷却を素早く行うことができる。さらに、ダイヘッド内の材料流路を短くすることができ、材料の無駄が少なくなる。また、燃料タンクを多層パリソンで容易に構成することができる。
さらに、各ダイを縦方向に積層したのみであるため、各ダイの分解、清掃が容易である。
【0010】
各ダイには、それぞれの側面からパリソンの各層のそれぞれの材料を注入して、パリソン流路にパリソンの各層の材料を押出す材料流路を形成した。このため、各ダイの側面から注入された材料を短い流路でダイヘッドの中心であるパリソンを形成するパリソン流路に合体させることができ、ダイヘッドを小型化できる。
【0011】
ダイヘッドの内部に冷却媒体の流路を形成したため、ダイヘッドの冷却を素早くすることができる。このため、ブロー成形機の起動、停止時間を短縮することができるとともに、パリソンの押出を途中で停止しても、押出材料のダイヘッド内での劣化を防止することができ、押出の停止時間が長時間にならなければ、ダイヘッド内の押出材料を取出さずにそのまま使用することができる。
多層構成のパリソンは、接着剤層を2層含み、ダイヘッドは、2層の接着剤層を形成する2個の接着剤層ダイを有し、2個の接着剤層ダイは1台の押出成形機から分流機を経由して接着剤が供給され、2個の接着剤層ダイへの接着剤の供給は、分流機で制御される。このため、接着剤を押出す押出成形機を1台にすることができ、ブロー成形装置の全体を小型化することができる。2層の接着剤層の供給量を分流機で制御して、2層の接着剤層のバランスをとることができる。
【0012】
請求項2の本発明は、冷却媒体の流路は、多層構成のダイとダイとのそれぞれの積層面に形成したブロー成形装置のダイヘッド構造である。
【0013】
請求項2の本発明では、冷却媒体の流路は、多層構成のダイとダイとのそれぞれの積層面に形成したため、ダイヘッドを構成する各ダイ毎に直接冷却することができ、素早くダイヘッド全体を冷却することができる。このため、多層パリソンの押出を止めても、各ダイに残留する材料の劣化を防止することができる。
【0014】
請求項3の本発明は、冷却媒体の流路を構成する各ダイの表面には、表面積を増加させるための凹凸が形成されたブロー成形装置のダイヘッド構造である。
【0015】
請求項3の本発明では、冷却媒体の流路を構成する各ダイの表面には、表面積を増加させるための凹凸が形成されたため、各ダイの冷却効率が向上し、ダイヘッドの冷却時間を短くすることができる。
【0016】
請求項4の本発明は、冷却媒体の流路は、冷却媒体の流入路と排出路が対向せずに形成されたブロー成形装置のダイヘッド構造である。
【0017】
請求項4の本発明では、冷却媒体の流路は、冷却媒体の流入路と排出路が対向せずに形成されたため、冷却媒体の流路で冷却媒体が乱流を起こして、冷却媒体が流路に均一に広がり、素早い均一な冷却をすることができる。
【0020】
請求項5の本発明は、接着剤の供給量の制御は、分流路の温度と流路径の制御で行うブロー成形装置のダイヘッド構造である。
【0021】
請求項5の本発明では、接着剤の供給量の制御は、分流路の温度と流路径の制御で行うため、分流路の構造が簡単であり、装置を小型化できるとともに、精密な制御をすることができる。
【0022】
請求項6の本発明は、ダイヘッドは、側面及び、又は上下面にヒータが取付けられたブロー成形装置のダイヘッド構造である。
【0023】
請求項6の本発明では、ダイヘッドは、側面及び、又は上下面にヒータが取付けられたため、ダイヘッドの加熱を素早く、均一に行うことができる。また、各ダイの材料流路が横方向に形成されたため、側面のヒータの加熱がブロー成形の材料により妨げることがなく、中心まで伝わることができる。
【0024】
請求項7の本発明は、ダイヘッドは、積層された各ダイを連結ボルトと皿バネを介してナットで締め付けたブロー成形装置のダイヘッド構造である。
【0025】
請求項7の本発明では、ダイヘッドは、積層された各ダイを連結ボルトと皿バネを介してナットで締め付けたため、各ダイを強固に締め付けることができるとともに、各ダイが熱膨張や熱収縮しても、皿バネが強固な締め付け力を維持することができる。
【発明の効果】
【0026】
ダイヘッドの内部に冷却媒体の流路を形成したため、ダイヘッドの冷却を素早くすることができるため、押出材料のダイヘッド内での劣化を防止することができ、ダイヘッド内の押出材料を取出さずにそのまま使用することができる。
各ダイには、側面からパリソンの各層の材料を注入して、パリソン流路にパリソンの各層の材料を押出す材料流路を形成したため、側面から注入された材料を短い流路でパリソンを形成する流路に合体させることができ、ダイヘッドを小型化できる。
多層構成のパリソンは、接着剤層を2層含み、ダイヘッドは、2層の接着剤層を形成する2個の接着剤層ダイを有し、2個の接着剤層ダイは1台の押出成形機から分流機を経由して接着剤が供給され、2個の接着剤層ダイへの接着剤の供給は、分流機で制御される。このため、接着剤を押出す押出成形機を1台にすることができ、ブロー成形装置の全体を小型化することができる。2層の接着剤層の供給量を分流機で制御して、2層の接着剤層のバランスをとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態であるブロー成形装置のダイヘッド構造の断面図である。
図2】本発明の実施の形態であるブロー成形装置のダイヘッド構造の接着剤の押出機と分流機の断面図である。
図3】本発明の実施の形態であるブロー成形装置のダイヘッド構造の押出機の部分の平面図である。
図4】本発明の実施の形態であるブロー成形装置のダイヘッド構造の材料流路とヒータの部分の断面図である。
図5】本発明の実施の形態であるブロー成形装置のダイヘッド構造の連結ボルトの部分の断面図である。
図6】本発明の実施の形態であるブロー成形装置のダイヘッド構造の冷却媒体の流路の部分の断面図である。
図7】本発明の実施の形態であるブロー成形装置のダイヘッド構造へ冷却媒体を送付する構成の模式図である。
図8】本発明の実施の形態であるブロー成形装置のダイヘッド構造のダイ表面の冷却空気流路の平面図である。
図9】本発明の実施の形態であるブロー成形装置で成形する燃料タンクの斜め上方からみた斜視図である。
図10】本発明の実施の形態であるブロー成形装置で成形する燃料タンクの外壁の層構成の拡大断面図である。
図11】従来のブロー成形装置のダイヘッド構造の断面図である。
図12】従来のブロー成形装置のダイヘッド構造の材料流路の拡大断面図である。
図13】従来のブロー成形装置のダイヘッド構造の押出機の部分の平面図である。
図14】従来のブロー成形装置のダイヘッド構造の材料流路とヒータの部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態である燃料タンク1を成形するブロー成形装置のダイヘッド構造について、図1図10に基づき説明する。本発明のブロー成形装置のダイヘッド構造は、自動車用の燃料タンク以外であっても、ブロー成形で形成される自動車以外の燃料タンクの成形についても、広く使用することができる。
【0029】
図9に示すように、本発明の実施の形態でブロー成形される燃料タンク1は、外壁は多層構成の合成樹脂で形成されている。そして、燃料タンク1は、車体のフロアパネルの下面等に取付けられ、その下面の形状に応じて凹凸が設けられるとともに、燃料タンク1は、その燃料タンク1に燃料ポンプ(図示せず)等を出し入れするためにポンプユニット取付孔4が上面に形成されている。また、燃料タンク1の側面又は上面には、インレットパイプ(図示せず)から燃料を注入する燃料注入孔5が形成されている。
さらに、燃料タンク1の上面には、内部の燃料蒸気を回収するホース等を接続する各所の取付孔6が形成されている。これらのため、燃料タンク1の外壁は、凹凸形状を有している。
【0030】
本実施の形態において、燃料タンク1は、ブロー成形で形成され、その外壁は、合成樹脂の多層構成で、図10に示すように、外側から順に表皮層1a、外部本体層1b、外部接着剤層1c、バリヤ層1d、内部接着剤層1e及び内部本体層1fから形成されている。
ブロー成形においては、上記の6層から構成されるパリソンが使用される。6層以外の層構成を有するパリソンを使用することもできる。また、後述するように、表皮層1aは外部本体層1bに再生部材や、フィラー等を混入する場合に使用されるが、表皮層1aを省略することもできる。
【0031】
表皮層1a、外部本体層1bは、耐衝撃性が大きく、燃料油に対しても剛性が維持される熱可塑性合成樹脂から形成され、高密度ポリエチレン(HDPE)から形成されることが好ましい。外部本体層1bが、無機フィラーを含有した場合には、外部本体層1bの表面を覆うため、表皮層1aが使用され、表面に無機フィラーが出ることがなく、表面を円滑にすることができる。
【0032】
表皮層1aと外部本体層1bと、後述する内部本体層1fに使用する高密度ポリエチレン(HDPE)は、例えば、具体的には以下のポリエチレンを使用することができる。
高密度ポリエチレン(HDPE)は、溶融流動速度(MRF:21.6kg/10min)が5〜7であって、密度(g/cm)が0.944〜0.950のものを使用することができる。
【0033】
外部本体層1bは、高密度ポリエチレン(HDPE)を主に含有する再生材を主材として形成してもよい。高密度ポリエチレン(HDPE)を主に含有する再生材は、例えば、使用後に回収された燃料タンク1を粉砕してリサイクルして使用する場合や、燃料タンク1の製造工程中で発生する製造工程中で発生する切れ端や不良品を粉砕してリサイクルして使用する場合がある。燃料タンク1は、主として高密度ポリエチレン(HDPE)から構成されているため、燃料タンク1を粉砕した再生材は、高密度ポリエチレン(HDPE)を主として有している。
これ等の再生材を100%使用する場合と、再生材に新材の高密度ポリエチレン(HDPE)を混合して使用する場合がある。
【0034】
バリヤ層1dは、燃料油の透過が極めて少ない熱可塑性合成樹脂から形成されている。バリヤ層1dを構成する熱可塑性合成樹脂は、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、半芳香族ナイロン(PPA)を使用することができるが、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)が好ましい。
バリヤ層1dを有するため、後述する内部本体層1fを浸透してきたガソリン等の燃料油を、バリヤ層1dで透過を防ぐことができ、大気中に燃料油が蒸発することを防止できる。
【0035】
バリヤ層1dとして、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を使用する場合は、ガソリンの透過防止性に優れるとともに、溶融成形が可能で加工性にも優れている。また、高湿度下においても、ガソリンの透過防止性に優れている。さらに、アルコールを含有するガソリンに対しても優れた透過防止性を有することができる。
【0036】
外部接着剤層1cは、外部本体層1bとバリヤ層1dの間に設けられて、この2層を接着し、内部接着剤層1eは、内部本体層1fとバリヤ層1dの間に設けられて、この2層を接着する。外部接着剤層1cと内部接着剤層1eは、同じ材料で形成され、高密度ポリエチレン(HDPE)とバリヤ層1dの両方に接着性を有する合成樹脂で形成される。このため、外部接着剤層1cと内部接着剤層1eは、バリヤ層1dと、外部本体層1b及び内部本体層1fとをそれぞれ強固に接着して、それぞれの層が一体的に密着して、燃料タンク1の燃料透過防止性と、強度を確保することができる。
【0037】
外部接着剤層1cと内部接着剤層1eに使用される接着性の熱可塑性合成樹脂としては、例えば、変性ポリオレフィン樹脂を使用することができ、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂、特に不飽和カルボン酸変性ポリエチレン樹脂が好ましい。これは、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸を共重合又はグラフト重合させることにより製造することができる。
内部本体層1fは、表皮層1aで述べたように、表皮層1aの使用するものと同じ材料である高密度ポリエチレン(HDPE)を使用する。
【0038】
そして、特にバリヤ層1d、外部接着剤層1cと内部接着剤層1eは、熱影響を受けやすいため、生産が停止する場合等で、ダイヘッド10中に樹脂が滞留したまま樹脂の流れが止まる場合には、樹脂が劣化してしまうため、ダイヘッド10において短時間で冷却することが必要である。
【0039】
次に、ブロー成形装置のダイヘッド構造について、図1図8に基づき説明する。
本実施の形態では6層構成のパリソン8を押出するものを例にとり説明するが、6層以外の多層パリソンについても使用することができる。
図1に示すように、6層のパリソン8を押出成形するダイヘッド10は、6層の各層を形成する材料をそれぞれ押出する6個の円盤状のダイが縦方向に積み重ねられている
【0040】
すなわち、上から内部本体層1fを押出する内部本体層ダイ11と、内部接着剤層1eを押出する内部接着剤層ダイ12と、バリヤ層1dを押出するバリヤ層ダイ13と、外部接着剤層1cを押出する外部接着剤層ダイ14と、外部本体層1bを押出する外部本体層ダイ15と、表皮層1aを押出する表皮層ダイ16とから構成される。
【0041】
このため、従来のようにダイヘッド10に同心円状の材料流路を形成する必要がなく、ダイヘッド10の体積を小さくすることができるため、ダイヘッド10の熱容量が小さく、ダイヘッド10の加熱と冷却を素早く行うことができる。さらに、ダイヘッド10内の材料流路を短くすることができ、材料の劣化を防止できる。
また、このダイヘッド構造では、円盤状のダイを積み重ねるため、分解と清掃が容易である。
【0042】
内部本体層ダイ11は、2枚の円盤が重ね合わせて形成され、その重ね合わせて形成された界面に、内部本体層1fを形成する材料が流れる内部本体層材料流路21が内部本体層ダイ11の側面から後述するパリソン材料流路27まで形成されている。内部本体層ダイ11の中心部には、縦方向に円筒状にパリソン8が流下するパリソン材料流路27が形成されている。パリソン材料流路27は、上記6個のダイを連通して上下方向に形成されている。
【0043】
内部本体層ダイ11の側面の開口には、後述する内部本体層押出機41が接続され、内部本体層1fを形成する合成樹脂が内部本体層材料流路21に注入される。図1においては、バリヤ層1dを形成する合成樹脂押出するバリヤ層押出機43が記載されているが、内部本体層押出機41も同様に接続されている。
【0044】
そして、内部接着剤層ダイ12と、バリヤ層ダイ13と、外部接着剤層ダイ14と、外部本体層ダイ15と、表皮層ダイ16についても、それぞれ内部本体層材料流路21と同様に、内部接着剤層材料流路22、バリヤ層材料流路23、外部接着剤層材料流路24、外部本体層材料流路25、表皮層材料流路26が形成されている。さらに、内部本体層押出機41と同様に、それぞれ、接着剤層押出機42、バリヤ層押出機43、外部本体層押出機45、表皮層押出機46が各ダイの側面の開口に接続され、それぞれの層を形成する材料が注入される。接着剤層押出機42については後述する。
【0045】
それぞれのダイに注入された材料は、各ダイの中央に形成されたパリソン材料流路27に流入し、合流して6層のパリソンを形成し、ダイヘッド10の下に取付けられたノズル60のノズル流路61を通り、流下されてブロー成形金型に至り、ブロー成形品が形成される。このため、側面から注入された材料を短い流路でパリソン材料流路27に合体させることができ、ダイヘッド10を小型化できる。
【0046】
なお、図2に示すように、内部接着剤層ダイ12と外部接着剤層ダイ14には、1台の接着剤層押出機42から接着剤が供給される。即ち、接着剤層押出機42から供給された接着剤は、分流機50で分流されるとともに、供給量を制御されて、内部接着剤層ダイ12と外部接着剤層ダイ14に供給される。このため、接着剤を押出す接着剤層押出機42を1台にすることができ、ブロー成形装置の全体を小型化することができる。2層の接着剤層の供給量を分流機50で制御して、外部接着剤層1cと内部接着剤層1eのバランスをとることができる。
【0047】
接着剤層押出機42から供給された接着剤の制御は、分流機50の流入路51から分流した内部接着剤分流路52と外部接着剤分流路53の温度と流路径の制御で行う。即ち、内部接着剤分流路52と外部接着剤分流路53にそれぞれヒーター(図示せず)を取付けて、そのヒータを個別に制御するとともに、分流機50をスライドさせて、内部接着剤分流路52と外部接着剤分流路53が、各ダイの側面に開口する内部接着剤層材料流路22と外部接着剤層材料流路24にそれぞれ接続する接続面積を変えることにより制御する。このため、分流機50の構造が簡単であり、装置を小型化できるとともに、精密な制御をすることができる。
【0048】
内部接着剤層ダイ12と外部接着剤層ダイ14に材料を供給する接着剤層押出機42を1台にしたため、押出機を1台少なくして、全体で5台にすることができ、ブロー成形機全体のスペースを小さくすることができる。また、図3に示すように、押出機を5台にしたため、5台の押出機をダイヘッド10に対して一方側に寄せることができ、より一層ブロー成形機全体のスペースを小さくすることができる。
【0049】
図4に示すように、ダイヘッド10の加熱は、各ダイの側面に取付けたヒータ70により行う。ヒータ70は、図1に示すように、ダイヘッド10の上面に取付けることもできる。ヒータ70を各ダイの側面に取付けると、ヒータ70の熱は、各ダイを側面から横方向に中心に向かって伝達される。パリソン8を構成する樹脂の材料流路は横方向にあるため、ヒータ70の熱の伝導を妨げることがなく、ダイヘッド10の加熱を素早く、均一に行うことができる。このため、ダイヘッド10の急速昇温が可能である。
【0050】
図5に示すように、ダイヘッド10において、積層された各ダイを連結ボルト18とナット18aで各ダイを強固に締め付けている。ナット18aと内部本体層ダイ11との間には、皿バネ19を設けている。皿バネ19を設けたため、各ダイが熱膨張や熱収縮しても、皿バネ19が撓むことができ、強固な締め付け力を維持することができる。各ダイを連結ボルト18とナット18aで締め付けることは、各ダイの複数個所で均等に行う。
【0051】
各ダイの冷却は、ダイとダイとの積層面に形成した冷却媒体の流路で行う。冷却媒体に空気を使用した場合を例にとり説明する。図6に示すように、内部本体層ダイ11と内部接着剤層ダイ12の間に空気を流通させて冷却する後述する冷却空気流路30が形成されている。冷却空気流路30を内部本体層ダイ11と内部接着剤層ダイ12の間の積層面に形成したため、内部本体層ダイ11と内部接着剤層ダイ12を直接冷却することができ、素早くダイヘッドを冷却することができる。冷却空気流路30は、内部本体層ダイ11の下面と内部接着剤層ダイ12の上面に、各々冷却空気流路30の半分を形成し、両者を合体させて形成することができる。
【0052】
さらに、内部接着剤層ダイ12とバリヤ層ダイ13との間、バリヤ層ダイ13と外部接着剤層ダイ14との間、外部接着剤層ダイ14と外部本体層ダイ15との間、外部本体層ダイ15と表皮層ダイ16との間についても、それぞれ同様に冷却空気流路30が形成されている。このため、各ダイを直接冷却することができ、素早くダイヘッドを冷却することができる。
【0053】
冷却空気流路30と空気の流れについて図7図8で説明する。図8は、内部本体層ダイ11の下面に形成された冷却空気流路30である。冷却空気流路30は、空気流入路31、空気冷却路32及び空気排出路33から形成されている。
図7に示すように、空気は、コンプレッサ81からエアタンク80に送付され、エアタンク80からエアパイプ82により、各ダイの側面に形成された空気流入路31に送付される。
【0054】
図8に示すように、内部本体層ダイ11の下面において、冷却空気流路30は、側面から中心方向に向かって複数の空気流入路31が形成され、空気流入路31に沿って円弧状に空気冷却路32が多数形成されている。本実施の形態では、空気流入路31は、90度離れて放射状に4本形成され、さらに、空気流入路31と空気流入路31の間に側面から中心方向に向かって空気排出路33が4本形成されている。空気流入路31は内部本体層ダイ11の中心部付近まで形成され、空気排出路33は空気流入路31より短く形成されている。
【0055】
内部本体層ダイ11の下面には、円弧状の凹凸が形成されて空気冷却路32が形成されたため、内部本体層ダイ11の下面と空気との接触面積が増加して、空気と内部本体層ダイ11の冷却効率が向上し、ダイヘッド10の冷却時間を短くすることができる。
また、空気流入路31と空気排出路33は、対向せずに形成されている。このため、空気冷却路32で空気が乱流を起こして、空気冷却路32の全体に均一に広がり、素早い均一な冷却をすることができる。
このため、パリソン8の押出を途中で停止しても、押出材料のダイヘッド10内での劣化を防止することができ、押出の停止時間が長時間にならなければ、ダイヘッド10内の押出材料を取出さずにそのまま使用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 燃料タンク
8 パリソン
10 ダイヘッド
20 材料通路
30 冷却空気流路
40 押出機
50 分流機
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